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発明の名称 防臭・脱臭性を有する光触媒保持体及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−249212
公開日 平成10年(1998)9月22日
出願番号 特願平9−68973
出願日 平成9年(1997)3月7日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 繁喜
発明者 藤嶋 昭 / 橋本 和仁 / 中田 信之 / 新井 敏夫
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材の表面に陽極酸化皮膜を形成し、さらに該陽極酸化皮膜の細孔中及び/又はその表面に光触媒作用を有する半導体微粒子又は半導体微粒子を含有もしくは担持した塗料粒子が充填・担持されてなる防臭・脱臭性を有する光触媒保持体。
【請求項2】 光触媒作用を有する半導体微粒子を含む分散液又は塗料溶液中に、大気圧以下の圧力下、陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材を浸漬し、上記基材の陽極酸化皮膜の細孔中及び/又はその表面に半導体微粒子又は半導体微粒子を含有もしくは担持した塗料粒子を充填・担持させることを特徴とする防臭・脱臭性を有する光触媒保持体の製造方法。
【請求項3】 光触媒作用を有する半導体微粒子を含む分散液又は塗料溶液中に、陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材を浸漬し、電気泳動法により上記基材の陽極酸化皮膜の細孔中及び/又はその表面に半導体微粒子又は半導体微粒子を含有もしくは担持した塗料粒子を充填・担持させることを特徴とする防臭・脱臭性を有する光触媒保持体の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防臭・脱臭性を有する光触媒保持体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、アルミニウム又はアルミニウム合金を支持基材とし、その表面に形成した陽極酸化皮膜の細孔中及び/又はその表面に、光触媒作用を有する半導体微粒子、あるいは半導体微粒子を含有もしくは担持した塗料粒子を充填・担持させた防臭・脱臭性を有する光触媒保持体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】TiO2 に代表される光触媒作用を有する半導体微粒子がその光触媒作用により有機物を分解する性質を有することは知られており、この性質を利用して様々な抗菌・防黴・防汚・防臭・脱臭商品が考案されている。特に、防臭・脱臭に関しては、人間の感性に直接訴えかけるものとして様々な商品が開発されており、例えば、TiO2 光触媒を用いたフィルターや、光触媒を用いた空気清浄器が市販されている。また、防臭・脱臭に用いる光触媒の担持方法として、特開平8−281121号には、シリカゾル水溶液にTiO2 を分散させた分散溶液を用いて無機繊維紙にTiO2 を担持させる方法が記載され、また特開平8−266602号には、TiO2 と微細繊維よりなる凝集体水分散液と合成樹脂繊維の水分散液の混合液を湿式抄造法によりシート化し、合成繊維紙にTiO2 を担持させる方法が記載されている。さらに、金属系の支持体上に光触媒を担持させる方法としても、スパッタ法、ゾル−ゲル法等が考案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】光触媒を防臭・脱臭に利用する場合、その吸着性の点から、前記した従来技術のように、一般に紙や布等の繊維質の支持体に光触媒を担持させる必要があると考えられている。しかし、これらの多くは有機物からなっており、光触媒作用によって繊維自体が徐々に分解されてしまうため、長期間使用における安定性に問題がある。一方、光触媒作用に耐え得る金属材料等の支持体に光触媒を吸着・担持させた場合、その表面積が小さいため、必ずしも充分な防臭・脱臭効果は得られなかった。また、金属支持体と光触媒の充分な密着性が得られず、吸着・担持させた光触媒が剥離し易いという問題がある。さらに、スパッタ法等により金属支持体上に光触媒を担持させる場合、複雑な形状を有する支持体上に均一に光触媒膜をコーティングすることは困難である。
【0004】従って、本発明の目的は、前記のような問題を解決し、光触媒作用に対して安定な金属支持体上に光触媒を充分な量で、かつ高い密着強度で担持させ、優れた防臭・脱臭効果を長期間にわたって安定的に発揮できる光触媒保持体を提供することにある。さらに本発明の目的は、上記のような優れた特性を有する光触媒保持体を容易に、また比較的低コストで製造でき、しかも複雑な形状の支持体にも均一に光触媒を担持させることができる防臭・脱臭性光触媒保持体の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材の表面に細孔を有する陽極酸化皮膜を形成し、さらに該陽極酸化皮膜の細孔中及び/又はその表面に光触媒作用を有する半導体微粒子あるいは半導体微粒子を含有もしくは担持した塗料粒子が充填・担持されてなる防臭・脱臭性を有する光触媒保持体が提供される。さらに本発明によれば、上記のような防臭・脱臭性を有する光触媒保持体の製造に好適な方法も提供される。その一つの方法においては、光触媒作用を有する半導体微粒子を含む分散液又は塗料溶液中に、大気圧以下の圧力下、陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材を浸漬し、上記基材の陽極酸化皮膜の細孔中及び/又はその表面に半導体微粒子又は半導体微粒子を含有もしくは担持した塗料粒子を充填・担持させることを特徴としており、他の方法においては、光触媒作用を有する半導体微粒子を含む分散液又は塗料溶液中に、陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材を浸漬し、電気泳動法により上記基材の陽極酸化皮膜の細孔中及び/又はその表面に半導体微粒子又は半導体微粒子を含有もしくは担持した塗料粒子を充填・担持させることを特徴としている。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材(以下、アルミ基板と略称する)上に多孔質の陽極酸化皮膜を形成し、この細孔中に真空含浸法あるいは電気泳動法によってTiO2 等の光触媒作用を有する半導体微粒子又は半導体微粒子を含有もしくは担持した塗料粒子(以下、光触媒と総称する)を吸着・担持させることを特徴としている。陽極酸化皮膜は、表面に直径約5〜100nmの細孔が無数に開いた絶縁性の多孔質膜であり、通常の金属表面に比べて表面積が極めて大きい。従って、この陽極酸化皮膜の細孔中あるいはさらに表面にTiO2 等の光触媒を吸着・担持させることによって、単位面積当りに担持される光触媒の量がかなり多くなり、平坦な金属板上に光触媒膜を形成したものと比べて防臭・脱臭効果が極めて高くなる。また、陽極酸化皮膜及びアルミ基板共に光触媒作用に対して安定であるため、従来の合成繊維基材のように光触媒作用によって分解するというようなことはなく、優れた防臭・脱臭効果を長期間にわたって安定して発揮させることができる。
【0007】また、光触媒は陽極酸化皮膜の細孔中に吸着・担持されているため、光触媒とアルミ基板の密着強度が高く、長期の耐久性にも優れている。それに加えて、陽極酸化皮膜の膜厚や孔径、担持させる光触媒の量を制御することによって、光触媒作用を任意に調整することが可能となる。さらに、支持体基材として成形性に優れるアルミ基板を用いていると共に、陽極酸化、真空含浸、電気泳動の各処理がいずれも湿式で実施できるため、様々な形状の光触媒保持体を形成できる。すなわち、本発明に従って光触媒保持体を製造した後に種々の形状に成形加工することができ、また、予め複雑な形状に押出成形・加工されたアルミ基板を陽極酸化し、光触媒を吸着・担持させることもできる。従って、本発明の光触媒保持体は、任意の形状、構造、模様の防臭・脱臭性置物、防臭・脱臭性ペン立て、防臭・脱臭性ケース等の全ゆる商品形態に適用できるだけでなく、パネル材、枠材、框材等のアルミ建材にも適用でき、例えば防臭・脱臭性パネル、防臭・脱臭性建具ユニットなどの形態で使用できる。
【0008】前記したように、本発明の光触媒保持体は、アルミ基板の陽極酸化皮膜の細孔中及び/又は表面に、光触媒作用を有する半導体微粒子、例えば、TiO2 が存在している。この半導体微粒子に太陽光線や蛍光灯の光が照射されると、TiO2 表面に正孔(h+ )や電子(e- )が生じて光触媒作用を示し、水や各種の有機物の分解が行われる。すなわち、アセトアルデヒド、アンモニア、メルカプタン等の悪臭成分を分解することができ、それによって防臭・脱臭作用を示す。また、この正孔の作用により水が酸化されOHラジカルを、また、電子の作用により空気中の酸素が還元され、O2-イオンを生ずる。これらの活性酸素は優れた殺菌作用を有し、その結果、黴等が生じにくくなる。従って、本発明に係る光触媒保持体は、防臭・脱臭作用だけでなく、抗菌・防黴・防汚性も示し、抗菌・防黴・防汚性の防臭・脱臭商品の形態としても利用できる。
【0009】さらに、TiO2 等の半導体粒子の表面に金属イオンが存在する時は、光照射によって生じた電子の作用によって種々の金属イオンの還元が行われ、陽極酸化皮膜の細孔中に金属を析出させることが可能となる。すなわち、銀や銅などの抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物を析出させれば、夜間、蛍光灯の明かりが消えても抗菌・防黴性が維持されることになる。また、ニッケルやスズ等、従来、電解着色によって析出させていた金属を析出させれば、電解浴や電源を使用することなしに着色が行える。さらに、溶液中でイオン化しこれが還元された状態で機能を発揮するような機能性材料であれば、同様に該機能性材料を陽極酸化皮膜の細孔中に析出させることが可能となり、様々な機能性アルミ製品の作製が行える。
【0010】以下、本発明について詳しく説明すると、光触媒を充填させるアルミ基板の陽極酸化皮膜としては、通常の陽極酸化処理によって形成した陽極酸化皮膜の細孔径は一般に50nm以下であり、光触媒の充填が困難であるので、細孔径の大きな陽極酸化皮膜を有するアルミ基板を用いる必要がある。このような細孔径の大きな陽極酸化皮膜を形成する方法としては種々の方法が知られているが、まず、一つの方法においては、アルミ基板を例えば硫酸、リン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸等の鉱酸又は有機酸の1種又は2種以上の酸水溶液中、例えばリン酸5〜30%、シュウ酸3〜40%を含有する電解浴中で高電圧で陽極酸化し、該アルミ基板表面に通常の細孔径より大きい細孔を有する陽極酸化皮膜を形成させる。一般にDC150V〜220Vの高電圧で陽極酸化した場合、通常120nm以上の細孔径を有する陽極酸化皮膜が得られ、該細孔内に前記光触媒を充填できる。すなわち、陽極酸化処理の電圧が150V未満の場合、光触媒の充填に充分な大きさの細孔が得られにくいので好ましくなく、一方、220Vを超えると陽極酸化皮膜の強度等の物性に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0011】また、他の方法としては、まずアルミ基板を前記鉱酸又は有機酸の1種又は2種以上の酸水溶液中で陽極酸化し、該アルミ基板の表面に多孔質陽極酸化皮膜を形成させる。電解条件としては、35V以上、好ましくは50〜160Vの高電圧電解によりセルサイズ及び細孔径の大きな陽極酸化皮膜を得る。次いで、リン酸、硫酸、シュウ酸、スルファミン酸の1種又は2種以上の酸水溶液、好ましくはリン酸3〜10%の水溶液に浸漬して皮膜細孔の拡大処理を行う。このような方法により、最終的には50nm以上、好ましくは100〜1000nm、孔の深さ3〜10μm程度の細孔に調整して、本発明の光触媒の充填に適する多孔質陽極酸化皮膜を得る。また、皮膜細孔の拡大処理の時間を短縮するために、リン酸3〜10%の水溶液中で、浸漬と交流系電解の処理を交互に短時間間隔で繰り返すことにより、該皮膜細孔の拡大処理を比較的短時間に行うことができる。
【0012】前記陽極酸化皮膜の細孔中に充填される半導体としては、電子と正孔の移動度が比較的大きく、上記のような光触媒作用を有する半導体であればいずれも使用可能であり、例えばTiO2 、SrTiO3 、ZnO、CdS、SnO2 等が挙げられるが、これらの中でも特にTiO2 が好ましい。半導体微粒子を含有又は担持した塗料粒子を使用する場合、その塗料にはフッ素系、シリケート系、アクリル系、ポリエステル系やポリウレタン系等があるが、半導体微粒子が均一に分散し、好ましくは建材の塗料としても適度な強度と密着性を有するものであれば特に限定されず、用途に応じて適宜選定することができる。また、前記塗料の中でもフッ素系、シリケート系等の無機系塗料が、その耐酸化力の点からより好ましい。
【0013】使用する半導体微粒子、あるいは半導体微粒子を含有もしくは担持した塗料粒子の粒径は、1nm〜700nm、好ましくは5nm〜300nmの粒径に調整することが好ましい。半導体微粒子を塗料に含有もしくは担持させる場合、半導体微粒子を前記塗料粒子の粒径よりも小さくすることは明らかである。粒径が1nmよりも小さくなると量子サイズ効果によりバンドギャップが大きくなり、高圧水銀灯等の短波長光を含む照明下でないと光触媒性能が得られないといった問題がある。また、粒径があまりに小さ過ぎると取り扱いが困難であったり、分散性が悪くなるという問題も生じてくる。取り扱い性の点からは5nm以上の粒径が好ましい。一方、粒径が700nmを超えると、アルミ基板の陽極酸化皮膜の細孔への充填が難しくなる。
【0014】前記半導体微粒子のアルミ基板陽極酸化皮膜細孔中への充填方法としては、半導体微粒子の分散液中での電気泳動法等を好適に用いることができる。例えば、半導体微粒子の表面に極性を発現させて(例えば、界面活性剤を粒子表面に吸着させたり、溶液のpHを半導体微粒子の等電点よりも大きくするなどして)、半導体微粒子10〜30重量%を水溶液中に分散させて水分散体浴を作成し、この浴中で、陽極酸化皮膜を形成したアルミ基板を陽極として直流電解(電圧30〜200V)して陽極酸化皮膜の細孔中に半導体微粒子を充填する電気泳動法などが採用できる。電気泳動法としては、直流電圧を低電圧より高電圧へ一定の昇圧速度で所定時間走査する直流電圧走査法、及び定電圧で所定時間電解する直流定電圧法等を採用できる。
【0015】半導体微粒子を含有もしくは担持した塗料粒子を用いる場合、該塗料粒子が電気泳動すれば前記の場合と同様の方法で陽極酸化皮膜の細孔中に光触媒を充填することができる。また、塗料中に陽極酸化皮膜を形成したアルミ基板を浸漬する方法でも可能である。更に、通常の大気圧下で塗料中に浸漬しても陽極酸化皮膜の細孔中に光触媒が充填できないような場合は、適当な真空容器中に陽極酸化皮膜を形成したアルミ基板を設置し、内部を真空排気した後、塗料を導入し、真空中で又は減圧下で陽極酸化皮膜を形成したアルミ基板を塗料に浸漬する方法等が採用できる。
【0016】以上のような方法により、図1に示すように、陽極酸化皮膜1の細孔2中に光触媒3を充填したアルミ基板が得られる。図1のように陽極酸化皮膜の上端部まで光触媒を充填したものは、防臭・脱臭作用に加えて抗菌・防黴・防汚性を目的とした場合の態様である。すなわち、図2に示すように陽極酸化皮膜1の細孔2の下部にのみ光触媒3を充填したような場合では、菌やカビ、汚れ物質が陽極酸化皮膜の細孔中を光触媒表面まで拡散しなければ抗菌・防黴・防汚性が発現できないため、良好に前記特性を発現させるには陽極酸化皮膜の上端部まで光触媒を充填し、アルミ基板の表面で抗菌・防黴・防汚性が発現できるようにすることが望ましい。また、さらには図3に示すように、光触媒3で陽極酸化皮膜1の凹凸をコーティングしたような態様も可能である。この場合、細孔2中に充填されていない光触媒が剥離し易いが、光触媒で被覆された面積は図1、図2よりも大きくなり、また、陽極酸化皮膜の細孔は気体分子であれば容易に出入りできることなどから、防臭・脱臭には最も適した態様である。また、抗菌・防黴・防汚性は図1と図2の中間程度である。
【0017】さらに、光触媒を充填した後に該光触媒作用によって銀や銅などの抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物を析出させることにより、前述したように暗時であっても抗菌・防黴効果が発現されるようにすることもできる。抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物を析出させる方法は、硝酸銀や硫酸銅などの銀や銅などの抗菌性金属を含む適当な化合物の溶液、あるいは、これにエタノールやEDTA等の適当な還元剤を添加した溶液を調製し、一つの方法としては、陽極酸化皮膜の細孔中に光触媒を充填したアルミ基板を該溶液中に浸し、紫外線ランプやブラックライト等で紫外線を照射すると、光触媒作用によって生じた電子により抗菌性金属イオン又は抗菌性金属化合物イオンが還元され、光触媒表面に抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物が析出する。この場合、抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物の析出量は、溶液中の抗菌性金属イオンの量、すなわち調製した溶液の濃度や還元剤の濃度、紫外線の照射時間によって制御される。また、別の方法としては、前記溶液を陽極酸化皮膜の細孔中に光触媒を充填したアルミ基板表面にスプレー法等で塗布した後、紫外線を照射する方法がある。この方法では、水溶液中の抗菌性金属イオンの量、すなわち調製した溶液の濃度や還元剤の濃度、塗布量によって抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物の析出量が制御できる。また、いずれの方法においても、光触媒の表面を抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物で完全に被覆してしまうと光触媒作用が発現できなくなるため、表面を被覆しない程度の析出量に制御する必要がある。
【0018】抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物を析出させる場合、図4に示すように陽極酸化皮膜1の細孔2内にその上端部まで光触媒3を充填した後に抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物4をアルミ基板表面に析出させることも、図5に示すように光触媒3を陽極酸化皮膜1の細孔2内部にのみ充填しておき、陽極酸化皮膜の細孔中に抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物4を析出させることもできる。また、図6に示すように光触媒3で陽極酸化皮膜1の凹凸をコーティングした後に、この光触媒表面に抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物4を析出させることもできる。図4の場合、抗菌・防黴効果は高いが、抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物が表面に析出しているため、抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物が剥離するなど効果の持続性に劣ることがある。図5のような場合は、抗菌・防黴効果は図4の場合よりも低下するが、抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物が陽極酸化皮膜の細孔中に入っているため、剥離し難く、効果の持続性は図4の場合よりも向上する。図6の場合、抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物が表面から陽極酸化皮膜細孔内にまで析出しているため、表面に析出した抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物が剥離しても、細孔内の抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物は剥離し難いため、効果の持続性は図5の場合と同等である。どのような態様を採用するかは、抗菌・防黴効果とその寿命から適当な態様を選択すれば良い。
【0019】また、従来一般に、電解着色によって陽極酸化皮膜の細孔中にニッケル、スズ、銅等の金属を析出させ、アルミ基板の着色が行われているが、本発明によれば、前述の抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物に限らず、電解着色によって析出させていた金属も前述の抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物の析出と同様の方法で陽極酸化皮膜の細孔中に析出させることができ、それによって種々の色に着色された製品を製造できる。また、この場合の析出金属量の制御、すなわち、色調の制御は、前述の抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物の析出量制御と同様の方法で実施できる。着色については、前述したように陽極酸化皮膜の細孔中に光触媒を充填したアルミ基板表面に、金属イオンを含有する溶液をスプレー法等の適当な方法で塗布した後、紫外線を照射する方法を採用する。例えば、図7に示すように、コンベア等の搬送装置5でアルミ基板6を搬送しながら、噴霧器7により金属イオンや適当な還元剤を含有する溶液をスプレーし、その後、紫外線照射装置8により紫外線を照射する製造工程とすれば、従来の電解浴を用いたバッチ式とは異なり、連続式の製造工程となり、生産性が向上するばかりか、電解着色で必要とされる巨大な電解浴や電源が全く不要になる。
【0020】アルミ基板の着色に前記のような光触媒作用を利用する場合、陽極酸化皮膜1の細孔2中への光触媒3の充填は図2に示すような態様が好ましい。図2に示すような光触媒の充填状態であれば、着色用金属9は図8に示すように陽極酸化皮膜1の細孔2中に析出し、従来の電解着色によって析出させた金属と同等の密着力が確保できる。また、着色にのみ光触媒作用を利用し、以後、光触媒作用による抗菌・防黴・防汚性が不要という場合は、その後さらに、図9に示すように、従来のアルミ基板の表面処理と同様に陽極酸化皮膜1の封孔(半封孔)処理を行い、耐食性や耐久性を向上させることができる。このような封孔処理を施しても、細孔内が大気と連通状態にあれば防臭・脱臭性を示す。
【0021】また、図8に示すような充填状態でも、光触媒作用によって防臭・脱臭性や抗菌・防黴・防汚性を示すが、さらに光触媒作用を向上させる場合は、図10に示すように、着色用金属9の析出後に再度光触媒3を陽極酸化皮膜上端部まで充填する。特に光触媒に用いる半導体がTiO2 であれば、このTiO2 は殆ど透明であるため、下部に析出させた着色用金属の色調を変化させることがなく、また着色用金属によって様々な色調が選択できる上に、充分な防臭・脱臭性や抗菌・防黴・防汚性を示すことになる。また、有機系の塗料を陽極酸化皮膜の細孔中に析出した後、光触媒を形成する場合、その光触媒作用によって有機塗料自体が分解し退色現象を引き起こすが、金属による着色であれば光触媒作用に対して安定であり、長期に亘って色調を維持しつつ、良好な防臭・脱臭性や抗菌・防黴・防汚性を示すことができる。
【0022】
【実施例】以下、実施例を示して本発明の効果についてさらに具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。
【0023】実施例1リン酸20%、シュウ酸5%を含有する30℃の電解浴中でアルミ基板を陽極として直流200Vを印加して陽極酸化処理を行い、孔径約250nm、孔の深さ約5μmの細孔を有する陽極酸化皮膜を生成させた。次いで、光触媒であるTiO2 の微粉末(平均粒径10nm)を10重量%混入し均一に分散させたシリケートをエタノールで10倍に希釈し、光触媒担持塗料を作製し、1気圧(試料1)又は0.2気圧(試料2)の圧力下で、前記陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基板を塗料に浸漬し、静かに引き上げた後、大気圧中、150℃で30分間保持し前記シリケートを反応させ、光触媒を担持したシリカ塗膜をコーティングした。また、比較の為に陽極酸化皮膜を形成していないアルミ基板を用いて、同様に1気圧(比較例1)又は0.2気圧(比較例2)の条件で、前記試料と同様に光触媒を担持したシリカ塗膜をコーティングした。
【0024】膜厚測定及び表面粗さ測定:上記試料1〜2及び比較例1〜2の陽極酸化皮膜上の光触媒膜の膜厚及び表面粗さを触針接触式膜厚計で測定した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0025】防汚性評価1:上記試料1〜2及び比較例1〜2の表面に0.1mg/cm2 になるようにサラダ油を均一に塗布し、100Wの紫外線ランプで紫外線を照射し、サラダ油が完全に分解されるまでの時間を測定した。その結果を表2に示す。
【表2】

【0026】密着性評価:上記試料1〜2及び比較例1〜2の光触媒膜の密着性をスコッチテープ試験(JIS H 8602の5.8項に記載のセロハン粘着テープを用いた塗膜の付着性試験)を行い、また、JIS H 8504に規定する方法にしたがってスクラッチ試験を行った。その結果を表3に示す。
【表3】

【0027】防汚性評価2:試料1〜2の基材表面の光触媒膜を#1200のサンドペーパーで完全に剥離させた後、前述の防汚性評価1と同様の方法でサラダ油が完全に分解されるまでの時間を測定した。その結果を表4に示す。
【表4】

【0028】表1からわかるように、試料1〜2と比較例1〜2の光触媒膜の膜厚は殆ど同じであったが、表面粗さは、試料2が試料1や比較例1〜2と比較して大きかった。一方、表2において、試料1と比較例1〜2のサラダ油の分解に必要な時間は殆ど同じであったが、試料2の場合のみ所要時間が多少長くなっている。これらの結果は、試料2の光触媒膜が、陽極酸化皮膜の細孔中に充填されただけでなく、陽極酸化皮膜の凹凸全体をコーティングしたことを示している(前記図3に示した態様)。この場合、光触媒膜は、陽極酸化皮膜の凹凸の状態を反映するため、試料1と比較して表面が粗くなる。また、大気圧下では陽極酸化皮膜の細孔中に光触媒が入り込めず、それ故、基材表面に平坦な光触媒膜が形成されたため、試料1では、陽極酸化皮膜を形成していない比較例1〜2と同等な表面粗さになったものである。また、防汚性評価1において、試料2は光触媒の表面被覆率が小さく、また、サラダ油の粘性が高くて陽極酸化皮膜の細孔に入り込み難いために、サラダ油の分解に時間を要したことがわかる。
【0029】表3に示すように、試料1〜2においては膜の剥離が認められなかった。これは、陽極酸化皮膜上に光触媒膜を形成する場合、そのコーティング圧力が大気圧下であっても減圧下であっても、陽極酸化皮膜のアンカー効果によって膜の密着性が向上したことを示している。比較例1〜2において膜の剥離が認められたことから、陽極酸化皮膜を形成していない基板を用いた場合、膜の密着性はコーティング圧力に依存しないことを示している。また、表4からわかるように、試料1では全くサラダ油を分解できなかったが、試料2では、表2に示した結果よりも所要時間は長くなったが、サラダ油を分解しており、防汚性を発揮している。試料1は、表面にのみ光触媒膜が存在し、それが全て剥離してしまったために防汚性が失われたが、試料2では、たとえ表面の光触媒膜が剥離しても陽極酸化皮膜細孔内に充填された光触媒膜が存在するため、防汚性が失われないことを示しており、光触媒膜の耐久性及び光触媒作用の持続性は、試料2の方が試料1よりも格段に優れていることがわかる。以上から、0.2気圧という必ずしも高真空ではない条件で半導体微粒子を含んだ塗料をコーティングすることにより、陽極酸化皮膜の細孔中に光触媒が入り込み、光触媒作用を発揮しながらも、該光触媒が陽極酸化皮膜の細孔中に充填されているため、その脱落もなく非常に強く密着していることが確認できた。
【0030】ガス分解試験:試料1〜2及び比較例1〜2及び何ら処理を施していないアルミ板について、有機ガス分解能を確認するため、0.5リットルの密閉容器中に各々4cm2 の試料を入れ、更に各容器中に濃度100ppmになるようにアセトアルデヒドを注入した。その後、試料上に強度1mW/cm2 の紫外線をブラックライトを使用して照射した。照射開始から60分後の各容器中のガス組成をガスクロマトグラフで測定し、反応後のアセトアルデヒド濃度を測定した。その結果を表5に示す。
【表5】

【0031】表5から、試料2が最もアセトアルデヒドの濃度が少なくなっており、その他の試料はほぼ同等の値となった。すなわち、試料2が最も多量のアセトアルデヒドを分解したことがわかる。また、単なるアルミ板の場合は、全くアセトアルデヒドが分解されなかったことがわかる。表5に示されるようにアセトアルデヒド濃度に差異が生じた原因は、各試料に対する光触媒の担持状態に差異があるためである。すなわち、試料2のみが陽極酸化皮膜の細孔中にまで光触媒が充填されていることに対し、その他の試料は表面に平坦な光触媒膜が形成されているためである。試料2では、陽極酸化皮膜の細孔中に光触媒が充填されているため、表面積が増加するとともに単位面積当りに担持されている光触媒の量自体が増加したために、単なる平坦な光触媒膜に比べ気相での反応性が増加したものである。
【0032】実施例2上記実施例1での試料1〜2及び比較例1の試料を0.01モル/リットルの硝酸銀水溶液0.5リットルに浸漬し、100Wの紫外線ランプで紫外線を照射し、試料1〜2及び比較例1の試料上に0.1mg/cm2 の銀を析出させた。
【0033】密着性試験:得られた試料1〜2及び比較例1の試料について、前記実施例1の場合と同様にスコッチテープ試験、スクラッチ試験を実施した。その結果を表6に示す。
【表6】

【0034】防黴性試験1:試料1〜2及び比較例1の試料について、JIS Z 2911の5に記載の一般工業製品の防黴性試験に基づき、試料1〜2及び比較例1の表面に胞子懸濁液を塗布し、温度28℃、湿度95%中に28日間放置し、黴の発生状態を観察した。また、光の照射の有無による防黴性の差異を観察するため、各々の試料について20W蛍光灯で光を照射した場合と、光を全く照射しない場合について防黴性試験を実施した。その結果を表7に示す。表7中には、黴の試料表面の被覆率を示す。
【表7】

【0035】防黴性試験2:試料1〜2の光触媒膜を#1200のサンドペーパーで完全に剥離させた後、前述の防黴性試験1と同様の方法で防黴性試験を実施した。その結果を表8に示す。表8中には、黴の試料表面の被覆率を示す。
【表8】

【0036】銀を析出させた試料は薄茶色になっており、光触媒作用によって種々の金属によるアルミ基板の着色が行えることを示している。また、表6及び実施例1の場合の表3からわかるように、銀の密着性は、その銀が付着している光触媒膜とアルミ基板の密着力の影響を受けており、比較例1〜2においては光触媒と基板の間で剥離しており、たとえ銀と光触媒の密着力が強くても基板から光触媒ごと剥離しては実際に使用することはできない。試料1〜2の場合は、光触媒膜の剥離が認められず、また、銀の剥離も認められなかった。これらは、表3に示されるように、光触媒膜の密着性が陽極酸化皮膜のアンカー効果で向上したこと及び光触媒膜と銀の密着性が充分であることを示している。
【0037】また、表7から明らかなように、試料2の光照射無しの場合のみ、他の試料と比較して若干黴の発育面積が広かった。これは、他の試料では、試料の表面のみに銀が析出していることに対し、試料2では陽極酸化皮膜の細孔中に銀が入り込み、表面被覆率が減少しているために防黴効果が低下したものである。しかし、この程度の防黴性の差異が実使用時に問題になることは有り得ない。また、光照射を行った場合では、銀の抗菌・防黴効果と光触媒の抗菌・防黴効果の両方が発揮されるため、全く黴の発育は認められなかった。また、基材表面をサンドペーパーで研磨し、表面に付着している光触媒膜を完全に剥離させると、試料1ではアルミ基板自体の色調に戻ったが、試料2では陽極酸化皮膜表面を露出させても薄茶色のままであった。また、表8に示されるように、試料2の防黴効果は維持されており、陽極酸化皮膜細孔中に光触媒及び銀が充填されていることにより、試料2の防黴性効果の耐久性、持久性が試料1よりも格段に優れていることがわかる。これらの結果から、陽極酸化皮膜の細孔中に光触媒を充填し、さらに該光触媒の光触媒作用を利用して前記細孔中に銀を析出させた試料は、銀の剥離・脱落等の問題が無く、また、暗時、光照射時において充分な防黴効果を示すことが確認できた。
【0038】
【発明の効果】以上のように、本発明の防臭・脱臭性の光触媒保持体は、アルミ基板の表面に陽極酸化皮膜を形成し、さらにこの表面積の大きな多孔質の陽極酸化皮膜の細孔中に光触媒作用を有する半導体微粒子あるいは半導体微粒子を含有もしくは担持した塗料粒子を充填したものであるため、単位面積当りに担持される光触媒の量がかなり多くなり、平坦な金属板上に光触媒膜を形成したものと比べて優れた防臭・脱臭性や抗菌・防黴・防汚性を示す。また、陽極酸化皮膜及びアルミ基板共に光触媒作用に対して安定であるため、従来の合成繊維基材のように光触媒作用によって分解するというようなことはなく、優れた防臭・脱臭効果を長期間にわたって安定して発揮させることができる。また、光触媒は陽極酸化皮膜の細孔中に吸着・担持されているため、光触媒膜とアルミ基板の密着強度が高く、長期の耐久性にも優れている。それに加えて、陽極酸化皮膜の膜厚や孔径、担持させる光触媒の量を制御することによって、光触媒作用を任意に調整することが可能となる。さらに、支持体基材として成形性に優れるアルミ基板を用いていると共に、陽極酸化、真空含浸、電気泳動の各処理がいずれも湿式で実施できるため、様々な形状の光触媒保持体を形成できる。従って、本発明の光触媒保持体は、任意の形状、構造、模様の防臭・脱臭性商品や防臭・脱臭・抗菌・防黴・防汚性のパネル、建具ユニットなどの建材としても有利に用いることができる。また、アルミ基板の電解着色に用いられている種々の金属を陽極酸化皮膜細孔中に析出できることから、電解着色法よりも生産性に優れた方法で防臭・脱臭性アルミ建材の着色が行える。さらに、抗菌性金属又は抗菌性金属を含む化合物や着色用金属以外にも種々の機能性物質を光触媒作用を利用して陽極酸化皮膜細孔中に析出させることが可能であり、防臭・脱臭性に優れた種々の機能性アルミ製品が提供できる。




 

 


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