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発明の名称 木質材の寸法安定化処理方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−86106
公開日 平成10年(1998)4月7日
出願番号 特願平9−122375
出願日 平成9年(1997)5月13日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
発明者 西尾 治郎 / 木村 高志 / 瀬戸 友加里
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 木質材に対して加熱乾燥処理を予め施して自然状態による含水率より低い含水率とし、該加熱乾燥処理が施された木質材を密封空間内に収容し、該密封空間内に高圧水蒸気を供給することにより該木質材の寸法安定化を図ることを特徴とする木質材の寸法安定化処理方法。
【請求項2】 処理すべき木質材が、挽材や単板のように自然木から製板した材料であり、その材料に対して高周波加熱によって予め加熱乾燥処理を施すことを特徴とする請求項1記載の木質材の寸法安定化処理方法。
【請求項3】 前記密封空間は予め加熱された状態とされることを特徴とする請求項1又は2記載の木質材の寸法安定化処理方法。
【請求項4】 前記密封空間から真空引きを行い、該密封空間を減圧した後に前記高圧水蒸気の供給を行うことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の木質材の寸法安定化処理方法。
【請求項5】 前記密封空間内で木質材を加圧圧縮しながら前記処理を行なうことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の木質材の寸法安定化処理方法。
【請求項6】 前記密封空間は2枚のプレス盤の間に形成されることを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の木質材の寸法安定化処理方法。
【請求項7】 前記密封空間への高圧水蒸気の供給及び/又は密封空間の真空引きを該プレス盤を介して行なうことを特徴とする請求項6記載の木質材の寸法安定化処理方法。
【請求項8】 前記プレス盤と木質材との間に高圧水蒸気の供給及び真空引きのための別部材を配置し、該別部材を介して密封空間への高圧水蒸気の供給及び/又は密封空間の真空引きを行なうことを特徴とする請求項6記載の木質材の寸法安定化処理方法。
【請求項9】 予め施す加熱乾燥処理によって木質材の含水率を当初の含水率よりも1〜2%以上低くすることを特徴とする請求項1ないし8いずれか記載の木質材の寸法安定化処理方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は木質材の寸法安定化処理方法に関し、特に、木質材の内部に高圧水蒸気を供給することにより木質材の寸法安定性を向上させるようにした木質材の処理方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】木材は水分の吸放出により膨潤又は収縮する。このことは無垢の挽き板、木材薄板(厚さ0.2mm〜10mm程度)やパーチクルボード、MDF、OSB、合板等でも同様である。建築用あるいは家具用材料として木質材を用いる場合には、環境により木質材が膨潤又は収縮することは好ましくなく、環境に左右されない寸法安定性を持つことが望まれる。
【0003】そのための対策として、プレス盤で木質材を上下に挟持してオートクレーブ内に入れ、高圧水蒸気で数分間処理して木質材の寸法安定化を図る方法等が行われている。しかし、この方法は設備が大がかりであることに加え、木質材内部(中央部)への高圧水蒸気の浸透が難しく、木質材の中央部と周辺部での処理状態が異なる場合が生じる。
【0004】本出願人は、その不都合を解消すべく多くの実験と研究を行い、従来の木材処理で用いられる熱盤を持つ平盤プレスの熱盤間に、自然乾燥状態にある処理すべき木質材を配置し、さらにその周囲に弾性シリコン材等の弾性密封材料とさらにその周囲にステンレス材等の所要の厚さ規制治具とを配置して密封した後、上下の熱盤に設けた蒸気供給孔から高圧水蒸気を供与して、木質材に含まれる水分を水蒸気化させ、木質材の寸法安定化を図る方法を提案した(特開平6−238616号公報)。この処理方法は、通常の熱盤を持つ平盤プレスを用いて木質材の寸法安定化処理を行うことから、処理が簡素化される利点を有する。
【0005】本発明者らは、上記処理方法を実施していく過程において、木質材の比重や厚さ・大きさ、その表面状態等によっては、木質材の内部に高圧水蒸気が均一に供与されず、その結果、所期の寸法安定性が達成されない場合があることを経験した。特に、無垢の挽き板や木材薄板のように自然木から製板した板材は、導管や仮導管の相互間に存在して水分移動を促す壁孔(ピット)が閉塞していることから、前工程における乾燥処理時に内部の水分が外部に出にくく乾燥に時間がかかり、また、高圧水蒸気が内部に入りにくく所期の寸法安定性を達成することが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】その不都合を解消すべくさらに実験研究を行い、さらに改良された木質材の寸法安定化処理方法として、2枚のプレス盤の間に木質材を挟持し、一方のプレス盤側から高圧水蒸気を木質材に向けて供給し、他方のプレス盤側からは真空引きを行なうことを特徴とする木質材の寸法安定化処理方法を先に提案している(特願平8−45173号)。この処理方法によれば、高圧水蒸気が木質材内部まで確実に透過して均一に供給されやすくなることから、処理木質材に均質なかつ高い寸法安定性を付与することが可能となる。
【0007】上記した高圧水蒸気による木質材の寸法安定化処理は、木質材に高い寸法安定性をもたらすと共に、フェノールやホルマリンのような薬剤を使わず、処理後も薬剤が残らないクリーンな処理方法であることからも有用なものである。そして、本発明者らの実験によれば、約150〜230℃に近い温度の高圧水蒸気を密封空間内に供給して処理対象の木質材を約180〜200℃に近い温度まで昇温させ、それにより、木質材の含水率分の水分を水蒸気化させることにより有効に処理が進行することを経験した。
【0008】そのような高温の高圧水蒸気を得るには高いエネルギーが必要であり、処理コストを高騰させないために、必要とされる高圧水蒸気量はできるだけ少なくすることが望まれる。そのために、従来、密封空間からの高圧水蒸気の漏れを無くす等の処理装置側の構造的手当てについては十分な配慮がなされてきているが、高圧水蒸気の供給量との観点から処理すべき木質材そのものへの配慮は特になされてきていない。また、合板やパーチクルボード等のような木質加工材料の製造に用いられる接着剤によっては、長時間にわたる高圧水蒸気処理により接着剤が劣化することも起こりうる。
【0009】すなわち、これまでの木質材の高圧水蒸気処理では、低くても8〜10%程度の含水率であり、温度が15〜25℃程度である常温、常態にある木質材をそのまま熱盤プレス間等に形成された密封空間に配置するようにしており、当該木質材に含まれる水分が水蒸気化する温度までに木質材を昇温させ、かつ、高い含水率の水分を高圧水蒸気化するのに、高いコストをかけて製造した約150〜230℃程度の高圧水蒸気(飽和水蒸気又は過熱水蒸気)の持つエネルギーを主として使用していることを考慮すると、処理時間の面及びエネルギー損失の面の双方の観点から、さらに改良すべき点のあることを認識した。処理すべき木質材が無垢の挽き板や木材薄板のように自然木から製板した板材の場合には、前記のように内部水分が発散しにくいこと、高圧水蒸気が侵入しにくいこと、から、特に改良すべき点のあることを認識した。すなわち、本発明は、エネルギー効率及び処理時間の観点からさらに改良された木質材の寸法安定化処理方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、本発明によれば、基本的に、木質材に対して加熱乾燥処理を予め施して自然状態による含水率より低い含水率とし、該加熱乾燥処理が施された木質材を密封空間内に収容し、該密封空間内に高圧水蒸気を供給することにより該木質材の寸法安定化を図るようにすることにより達成される。
【0011】本発明において、処理すべき木質材に特に制限はなく、単板等の無垢材や合板だけでなく、中質繊維板(MDF)、配向性ストランドボード(OSB)やパーチクルボード(PB)等の木質加工材料も処理可能である。単板等の無垢材の場合に、プレス盤により加圧圧縮を施しながら本発明の処理を行なうことは圧密化処理とともに寸法安定化処理を行うことができることから、特に有効である。
【0012】本発明において、処理すべき木質材に対して予め加熱乾燥処理が施される。加熱方法としては、従来の木質材の加熱乾燥処理に用いられている方法、例えば、熱風循環式ドライヤー、ジェットドライヤー、赤外線(遠赤外線、近赤外線)ドライヤー、熱プレス、あるいはマイクロウェーブを含む高周波加熱等の加熱手段を用いる加熱方法を任意に用いることができる。加熱処理によって木質材を昇温させる温度は、常温より高い温度であれば一応の目的は達せられるが、好ましくは50℃程度から高圧水蒸気による寸法安定化処理温度(約150〜230℃程度)の範囲である。
【0013】また、被処理木質材が無垢の挽き板や木材薄板のように自然木から製板した板材の場合には、予め施す加熱乾燥処理をマイクロウェーブを含む高周波加熱で行うことは効果的である。上記高周波加熱として、例えば電極板の機能を備えた上下熱盤を加熱状態として被処理材を挟み、熱盤加熱と高周波加熱とを同時に行うようにしてもよく、高周波加熱単独で行ってもよい。
【0014】上記無垢の材料(挽き板や木材薄板)の場合、その木口近辺や表面付近はドライヤー等の加熱によって水分は蒸発するが、無垢材料内部は、蒸気の抜け(蒸発)が悪いことから、高周波加熱によって内部蒸気圧は上昇し、それにより無垢材の内部に加熱水蒸気処理がなされた状態となる。従って、無垢材料の場合、前工程の加熱乾燥処理として高周波加熱を用いることは、加熱水蒸気処理の効率の面で一層効果がある。
【0015】この加熱処理による乾燥程度は、処理木質材の自然乾燥による含水率より低い含水率であれば任意であり、そのときの処理木質材の絶乾含水率に近づく程処理効果は増大する。本発明者の実験によれば、自然乾燥における含水率から1〜2%程度低い含水率であっても有意な結果が得られた。
【0016】本発明において、前記のようにして加熱乾燥処理された木質材は密封空間内に収容される。密封空間は、高圧水蒸気の供給が可能であり、また、好ましくは真空引きが可能であることを条件に、従来用いられている木質材処理用の耐圧型圧力容器による密封空間であってもよく、木質材の圧締や複合材の製造に従来用いられる平盤プレスに装着されるプレス盤の間に形成される密封空間であってもよい。
【0017】前記耐圧型圧力容器又はプレス盤は、熱源を有するもの、有しないものいずれであってもよいが、熱源を有するものが特に推奨される。熱源としては、耐圧型圧力容器あるいはプレス盤に組み込まれたヒーター、加熱蒸気、バンドヒーター等の電気的加熱手段、マイクロウェーブを含む高周波加熱、等任意であり、該熱源によって前記密封空間は予め昇温状態とされ、そこに加熱乾燥処理された木質材が収容される。昇温温度は、好ましくは、加熱乾燥処理された木質材の温度と同じかそれよりも高い温度であり、より好ましくは高圧水蒸気による寸法安定化処理が進行する温度範囲である。なお、被処理木質材が無垢の挽き板や木材薄板のように自然木から製板した板材の場合には、マイクロウェーブを含む高周波加熱による前工程の昇温処理をすることは望ましい。
【0018】加熱乾燥処理済みの木質材を収容後に、密封空間内は好ましくは真空引きされる。そして、真空引きされて減圧された密封空間内に、高圧水蒸気が供給される。密封空間がプレス盤の間に形成され、かつ、プレス盤が外部に連通する多数の細孔を有するものである場合には、一方のプレス盤の該細孔を従来公知の高圧水蒸気発生源に適宜の配管及び弁手段等を介して接続し、他方のプレス盤の細孔を従来公知の好ましくは耐熱性の真空ポンプ等の真空引き源にやはり適宜の配管及び弁手段等を介して接続する。好ましくは、真空引き側の配管には吸引ブロアーが配置される。それにより、プレス盤を介して木質材に高圧水蒸気を供給し、かつ真空引きすることが可能となる。もちろん、真空引き側の配管からの真空引きにより密封空間を所定の減圧状態とし、その状態で真空引きを停止し、該減圧状態とされた密封空間に高圧水蒸気を供給するようにしてもよい。また、真空引きをすることなく、所定の寸法安定化処理を行ってもよい。密封空間が耐圧容器に形成される場合には、前記高圧水蒸気発生源に接続する配管を該耐圧容器に接続し、また、好ましくは真空ポンプ等の真空引き源に接続する配管を該耐圧容器に接続するかあるいは減圧バルブを取り付ける。
【0019】高圧水蒸気の供給及び真空引きの他の方法として、上下のプレス盤と木質材との間に、多数の細孔を有しかつ耐圧性、耐熱性を有する別部材を配置して行なうようにしてもよい。その場合には、一方の前記別部材を高圧水蒸気発生源に接続し、他方の前記別部材を真空引き源に接続する。それにより、前記別部材の細孔を介して木質材に高圧水蒸気を供給し、かつ真空引きすることが可能となる。この種の別部材の好ましい態様は処理すべき木質材を収容できる内部空間を持つ箱状部材と該内部空間を密閉する蓋部材とから構成される。
【0020】2枚のプレス盤間に密封空間を形成する方法には、例えば、処理すべき木質材の4周に、処理後の木質材の厚さよりも幾分高さの高い弾性密封材料を配置し、上下のプレス盤を接近させることにより、該弾性密封材料によって囲まれた内部空間が密封空間となるような方法は有効である。該弾性密封材料としては、プレス盤あるいは前記別部材から噴出する高圧水蒸気を外方に漏出しないだけの密封機能を持ちかつ耐熱性と圧縮性のある材料であれば使用可能であるが、シリコン弾性パッキン材は特に好ましい。その際に、好ましくは、2枚のプレス盤間に処理後の木質材の厚さを規制するための厚さ規制治具を配置する。厚さ規制治具の材料は必要な剛性と耐熱性を持つ部材であればよく、アルミ材、ステンレス材等が好ましく用いられる。他の方法として、例えば方形状をなす厚さ規制治具の下端又は上端あるいは両方に前記弾性密封材料と同様なシリコンパッキンのような密封材料を一体に取り付け、それを上下いずれかのプレス盤にボルト等で取り付けるような方法によることもできる。また、前記のように、別部材として箱状部材と蓋部材とからなるものを用いる場合には、それ自体で厚さが規制された密封空間を形成することが可能である。必要に応じて、プレス盤と木質材との間に細かいメッシュの金網等の網状物を配置するようにしてもよく、それにより、噴出される水蒸気の木質面への分散化が可能となり、均一な水蒸気供与が期待できる。
【0021】高圧水蒸気の供給は、高圧水蒸気発生源側の回路を開き、好ましくは150℃以上の飽和水蒸気又は過熱水蒸気(飽和水蒸気より高い温度の水蒸気)を密封空間内に噴出させる。特に、真空引きを行う場合には、噴出する高圧水蒸気は、噴出力に加えて吸引力の作用を受け、運動エネルギーが増大する。それにより、従来法よりも短時間で木質材の内部にまで高圧水蒸気が確実に透過し、かつ等しくかつ均一に行き渡る。その結果、寸法安定化処理が速やかにかつ全域にわたり迅速に進行する。
【0022】本発明において、木質材は予め加熱乾燥処理が施されており、自然乾燥状態であるよりも高温状態とされかつ低含水率とされている。それにより、高圧水蒸気処理が開始する温度までに木質材が昇温する時間は短縮され、また、木質材の含水率分の水蒸気化に要する供給高圧水蒸気のエネルギーの量を低減できる。それにより、高圧水蒸気処理でのエネルギーの損失は回避され、処理時間も短縮される。
【0023】前記したように、真空引きを行い密封空間を減圧状態とした後に、バルブを遮断しかつ真空引きを停止し、減圧状態とされた密封空間内に高圧水蒸気を供給して木質材に高圧水蒸気を浸透させるようにしてもよい。この場合には、高圧水蒸気の外部への放出が確実に抑制されることから、蒸気のロスを無くすことができる。さらに、前記のようにして減圧状態とされた密封空間内に高圧水蒸気を所定量供給した後に、再び真空引きをしながら高圧水蒸気の供給を行うようにしてもよく、この場合には、高圧水蒸気の有効利用と共に処理の迅速化が可能となる。
【0024】なお、処理条件は対象となる木質材の種類及び寸法等によって実験的に最適値が定められるが、高圧水蒸気の圧力は数kgf/cm2 〜30kgf/cm2 、温度は150℃〜230℃程度が好ましい。
【0025】本発明において処理すべき木質材の初期厚さは、所望の最終製品の厚さとほぼ同じ厚さあるいは若干薄いものであってもよく、又は、若干厚いものであってもよい。前者の場合はいわゆる圧密処理は施されないが、後者の場合は圧密処理と共に寸法安定化処理が施される。
【0026】所定の高圧水蒸気の噴出を終えた後にすぐ解圧を行なってもよく、しばらく所定時間放置して解圧を行ってもよい。解圧は一定時間をかけて徐々に行うようにしてもよく、また熱盤に冷却水を供給していわゆるコールドの状態で行ってもよい。実験によれば徐々に解圧を行う場合よりもコールド状態で解圧を行う場合のほうが得られた最終製品の寸法変化率は小さくかつ表面状態も滑らかなものであった。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明をさらに詳細に説明する。図1は本発明の木質材の寸法安定化処理方法を実施する装置の一例を示している。図において、1a、1bは、従来の木材処理で用いられる平板プレスに装着されると同様のプレス盤であり、それぞれに熱源としてのヒータ2a、2bが設けられ、さらに、処理すべき木質材Wと衝接することとなる表面部分には多数の細孔3a、3bが形成されている。上方のプレス盤1aに形成された細孔3aは配管4a及び開閉弁Vを介して高圧水蒸気発生源Sに接続しており、下方のプレス盤1bに形成された細孔3bは配管4bを介して真空ポンプVPに接続している。真空ポンプに変えてブロアー(図1には示されない)を用いてもよい。
【0028】この装置を用いて本発明による処理方法を実施するに際しては、まず、従来知られた熱風ドライヤー(図示されない)等により加熱されて昇温しかつ自然乾燥状態よりも含水率が低くされた平板状の木質材Wを、下方のプレス盤1bの該細孔3bが形成されている位置に載置する。一方、上方のプレス盤1aには前記木質材Wを収容できる位置にステンレス材等からなる方形状の厚さ規制治具10をネジ止め(図示されない)等により固定する。なお、11は厚さ規制治具10の上端縁及び下端縁に取り付けた弾性シール材である。この厚さ規制治具10は下方のプレス盤1bに固定的に取り付けてもよい。厚さ規制治具10の高さは、木質材Wの厚さと同じであるか幾分高い又か低いものとする。
【0029】次に、プレス盤1a、1bを該厚さ規制治具10により規制されるまで接近させ、停止させる。図示しないが、前記のように木質材Wの周囲に密封材料を配置して、プレス盤1a、1bの間に密封空間を形成するようにしてもよい。
【0030】その状態で高圧水蒸気発生源S側の配管4aに設けた開閉弁Vを開き、プレス盤1aに形成した細孔3aから高圧水蒸気を噴出させる。必要に応じて、真空ポンプVP(又は、ブロアー)を作動させて、下方のプレス盤1bに形成した細孔3bから真空引きを行なう。予め真空引きをして減圧状態とした後で、高圧水蒸気の噴出を行ってもよい。細孔3aから木質材Wに向けてあるいは密封空間に向けて噴出する水蒸気は、噴出力に加えて吸引力による力を受け、木質材の木質材Wの内部にまで容易にかつ均一に到達することができる。さらに、真空引きが行なわれていることから、外部に高圧水蒸気が漏洩することはなく、高圧水蒸気の無駄を無くすと共に周囲の安全も補償される。他の方法として、高圧水蒸気の噴出を行う直前の減圧状態で真空ポンプVPを停止し、その状態で高圧水蒸気の噴出を行ってもよい。
【0031】所望量の高圧水蒸気の噴出を終えた後、あるいは、その直前に、真空ポンプVP(又は、ブロアー)を停止し、解圧及び冷却工程を行なうことにより、本発明による木質材の寸法安定化処理方法は終了する。
【0032】図2は本発明の木質材の寸法安定化処理方法を実施する装置の他の例を示している。この例は、プレス盤に外部に連通する細孔が設けられていない平板プレスを本発明の処理方法に用いる場合に好適な例であり、蒸気噴出用の細孔23aを有する平板状の第1の別部材20aがネジ21aを用いて上方のプレス盤1aに固定され、さらに、真空引き用の細孔23bを有する平板状の第2の別部材20bがネジ21bを用いて下方のプレス盤1bに固定されている。そして、それぞれの細孔23a、23bは、図1に示した装置の場合と同様に、高圧水蒸気発生源S及び真空ポンプVPに接続している。この装置の使用方法は図1の場合と実質的に同じである。
【0033】図3は本発明の木質材の寸法安定化処理方法を実施する装置のさらに他の例を示している。この装置は、図2に示した装置と比較して、第2の別部材30bが上方側を開放した開放空間35を持つ有底箱状の耐圧容器である点、及び、該第2の別部材30bの上端面にはパッキン36が取り付けられている点で相違している。この装置では、厚さ規制治具10や密封材を別途配置することなく、プレス盤の間に容易に密封空間を形成することができる利点がある。
【0034】図4は本発明の木質材の寸法安定化処理方法を実施する装置のさらに他の例を示している。図2に示した装置と比較して、第2の別部材30bが上方側を開放した開放空間35を持つ有底箱状の耐圧容器である点、及び、第1の別部材30aは該開放空間35の断面形状とほぼ同じ断面形状を有する挿入用凸部31aを有し、該挿入用凸部31aの先端面にまで細孔33aは達している点、で相違している。そして、前記第1の別部材30aの凸部31aの周囲にはパッキン36が取り付けられる。この装置では、プレス盤の間に容易に密封空間を形成することができると共に、プレス盤1a、1bの距離を調整することにより、異なった厚さの木質材Wに対しても寸法安定化処理を施すことができる利点がある。
【0035】前記したように、密封空間内を減圧することは必ずしも必要でなく、場合によっては、上下のプレス盤から密封空間内に高圧水蒸気を噴出するようにしてもよい。また、一方のプレス盤から真空引きを行い、他方のプレス盤から高圧水蒸気の供給を行うように説明したが、上下のプレス盤の双方から真空引きを行い、所定の減圧が得られた後に、バルブ操作を行って真空引きを停止し、減圧状態とされた密封空間内に、上下のプレス盤の双方から高圧水蒸気を供給するようにしてもよい。図5は木質材の寸法安定化処理方法を実施する他の態様を説明するものであり、この態様では、プレス盤1a、1bの間に木質材Wを配置するに当たってメッシュ100程度の金網61、61を介装させる。このようにすることにより、供給する水蒸気の分散化が確実となり、高圧水蒸気処理の均一化が促進される。
【0036】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明を説明する。
〔実施例1〕寸法が15×300×1800mmで、常温での含水率8.2%であるパーチクルボードを、熱盤温度150℃、13.56MHz、出力200V、8kwの高周波プレスで4分間加熱処理を行い、含水率3.4%にまで下げ、それを、熱盤加熱の手段により195℃に加熱した内容積16×330×1850mmの耐圧容器内に配置した。なお、配置直前のパーチクルボードの温度は147℃であった。
【0037】この耐圧容器内を700mmHgまで減圧した後、真空引きを停止し、容器内部に14kgf/cm2 、195℃の飽和水蒸気を15分間噴出した。蒸気の供給を停止した後、解圧バルブを開いて常圧に戻し、処理済の木質材を取り出した。
【0038】〔比較例1〕寸法が15×300×1800mmで、常温での含水率8.2%であるパーチクルボードをそのまま、熱盤加熱の手段により195℃に加熱した内容積16×330×1850mmの耐圧容器内に配置した。
【0039】この耐圧容器内を700mmHgまで減圧した後、真空引きを停止し、容器内部に14kgf/cm2 、195℃の飽和水蒸気を25分間噴出した。蒸気の供給を停止した後、解圧バルブを開いて常圧に戻し、処理済の木質材を取り出した。
【0040】〔実施例2〕寸法が15×300×1800mmで、常温での含水率7.7%であるMDFを150℃の熱風循環式ドライヤーによって、30分で含水率3.5%にまで下げた後に、それを、蒸気加熱の手段により205℃に加熱した内容積16×330×1850mmの耐圧容器内に配置した。配置直前のMDFの温度は146℃であった。
【0041】この耐圧容器内を750mmHgまで減圧した後、真空引きを停止し、容器内部に17.5kgf/cm2 、205℃の飽和水蒸気を10分間噴出した。蒸気の供給を停止した後、解圧バルブを開いて常圧に戻し、処理済の木質材を取り出した。
【0042】〔比較例2〕寸法が15×300×1800mmで、常温での含水率7.7%であるMDFをそのまま、蒸気加熱の手段により205℃に加熱した内容積16×330×1850mmの耐圧容器内に配置した。
【0043】この耐圧容器内を700mmHgまで減圧した後、真空引きを停止し、容器内部に17.5kgf/cm2 、205℃の飽和水蒸気を20分間噴出した。蒸気の供給を停止した後、解圧バルブを開いて常圧に戻し、処理済の木質材を取り出した。
【0044】〔実施例3〕図1に示すプレス盤を用い、両プレス盤の表面には2mmφの細孔を40mm間隔で縦横に形成した。上方のプレス盤の細孔群を高圧水蒸気発生源に接続し、下方のプレス盤の細孔群を真空ポンプに接続した。
【0045】処理材として寸法が15×300×1800mmで、常温での含水率7.1%であるOSBを170℃の熱風循環式ドライヤーよって30分で2.9%にまで下げたものを、ヒータにより200℃に加熱された下方のプレス盤に形成した細孔群上に配置し、やはり200℃に加熱された15mm厚さの密封用方形枠付きの上方のプレス盤を移動して、50kgf/cm2 のプレス圧で圧締した。配置直前のOSBの温度は167℃であった。
【0046】次に下方プレス盤に形成した細孔群に連続する真空ポンプを稼働させながら、上方プレス盤に形成した細孔群から15kgf/cm2 、200℃の飽和水蒸気を12分間噴出させた。真空ポンプを停止し、蒸気の供給も停止した後、解圧し処理済の木質材を取り出した。
【0047】〔比較例3〕処理材として寸法が15×300×1800mmで、常温での含水率7.0%であるOSBをそのまま用い、かつ、飽和水蒸気の供給を22分間行った以外は、実施例3と同様にして処理を行った。
【0048】〔実施例4〕図1に示すプレス盤を用い、両プレス盤の表面には2mmφの細孔を40mm間隔で縦横に形成した。上方のプレス盤の細孔群を高圧水蒸気発生源に接続し、下方のプレス盤の細孔群を真空ポンプに接続した。
【0049】処理材として寸法が15×300×1800mmで、常温での含水率7.1%である杉挽板を、熱盤温度150℃、13.56MHz、出力200V、8kwの高周波プレスで4分間加熱処理を行い、含水率5.1%にまで下げたものを、電気ヒータにより200℃に加熱された下方のプレス盤に形成した細孔群上に配置し、やはり200℃に加熱された15mm厚の密封用方形枠付きの上方のプレス盤を移動して、50kgf/cm2 のプレス圧で圧締した。配置直前の杉挽板の温度は147℃であった。
【0050】プレス盤を下降後、熱盤間を密封状態にし700mmHgまで減圧して真空引きを停止し、該減圧状態の密封空間に上方プレス盤に形成した細孔群から15kgf/cm2 、200℃の飽和水蒸気を15分間噴出させた。蒸気の供給も停止した後、解圧し処理済の木質材を取り出した。
【0051】〔比較例4〕処理材として寸法が15×300×1800mmで、常温での含水率7.0%である杉挽板をそのまま用い、かつ、飽和水蒸気の供給を25分間行った以外は、実施例4と同様にして処理を行った。
【0052】〔比較例5〕処理材として寸法が15×300×1800mmで、常温での含水率7.1%である杉挽板を、150℃の熱風循環式ドライヤーによって30分で含水率4.0%にまで下げたものを用い、かつ、飽和水蒸気の供給を15分間行った以外は、実施例4と同様にして処理を行った。
【0053】〔評価試験〕前記の実施例品1〜4、比較例品1〜5、及び、実施例及び比較例で用いた木質材であって無処理のものについて、厚さ膨張率及び曲げ強度(kgf/cm2)を測定した。その結果を表1に示す。
【0054】なお、厚さ膨張率は(T1 −T0 )/T0 ×100であり、ここで、T0 =絶乾時の厚さ、T1 =飽水時の厚さである。なお、杉挽き板に関しては、R方向(放射方向)の膨張率を測定した。
【0055】
【表1】

【0056】〔考察〕表1に示されるように、本発明品では、前もって木質材の温度を上げかつ含水率を下げておくことにより、そのような前処理を施さずに高圧水蒸気処理を行うものと比較して、短い処理時間でありながら、同等の膨張率及び更に高い曲げ強度のものが得られる。また、実施例品4と比較例品4、5とからわかるように、挽板の場合には予備加熱乾燥手段として高周波加熱が有効に機能しており、同じ処理時間でも実施例品4の方が処理効果が高い。
【0057】
【発明の効果】本発明による木質材の寸法安定化処理方法によれば、従来法に比較して、短い高圧水蒸気処理時間で同等の処理効果を上げることができる。それにより、高圧水蒸気の製造にかかるコストを低減でき、処理単価を下げることができる。また、高圧水蒸気処理に要する時間が短縮されることから、密封材料等の寿命を長期化することが可能となり、処理設備側のコストも低減できる。さらに、加熱処理時間が短縮されることから、木質材に使用された接着剤の劣化や木質材そのものの劣化を回避することができる。




 

 


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