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発明の名称 無機質成形板の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−264123
公開日 平成10年(1998)10月6日
出願番号 特願平9−71687
出願日 平成9年(1997)3月25日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
発明者 中嶋 資郎
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 セメントと繊維類とを主原料とする無機質成形板を製造する方法において、前記主原料を乾燥状態又は含水率60%以下の状態で混合した成形原料を成形コンベア上に散布して裏面層を形成し、前記主原料を水と混合して作製したスラリーを抄造装置で抄造して無機質シート状物を成形し、この無機質シート状物を粗砕分散手段で粗く粉砕しながら前記裏面層の上面に分散積層して中間層を形成し、この中間層の上面に、前記裏面層と同じく、前記主原料を乾燥状態又は含水率60%以下の状態で混合した成形原料を散布して表面層を形成して3層構造の積層無機質マットを形成し、この積層無機質マットをプレス成形して、これを硬化養生することを特徴とする無機質成形板の製造方法。
【請求項2】 前記裏面層と表面層を形成する成形原料に配合する繊維類は長さ5mm〜30mmの長繊維を使用することを特徴とする請求項1に記載の無機質成形板の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、3層構造の積層無機質マットをプレス成形する無機質成形板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、住宅の外装材や屋根材として無機質成形板が多用されている。この無機質成形板の製造方法は、セメントと繊維類等を配合した成形原料を用いて湿式法(抄造法)又は乾式法により無機質マットを成形し、これをプレス成形して表面に凹凸模様柄のある無機質成形板を成形するようにしている。意匠性の高い彫の深い凹凸模様柄をプレス成形するためには、無機質マットの厚みを厚くする必要があり、更に、耐久性向上の観点から無機質成形板の強度向上も望まれている。
【0003】そこで、特開平4−364902号公報に示すように、3層構造の積層無機質マットをプレス成形して無機質成形板を製造することが提案されている。この公報の積層無機質マットの製造方法は、成形ベルト上に補強繊維配合のセメントスラリーを層状に供給して裏面層を形成し、この裏面層の上面に、乾燥したセメント配合物を層状に供給して中間層を形成し、更に、この中間層の上面に、裏面層と同じく、補強繊維配合のセメントスラリーを層状に供給して表面層を形成して3層構造の積層無機質マットを形成するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記積層無機質マットの成形方法では、裏面層と表面層の双方をセメントスラリーで形成するため、裏面層と表面層の双方を脱水する必要がある。裏面層のセメントスラリーは、成形ベルトを通して脱水できるが、表面層のセメントスラリーは成形ベルトを通して脱水することが困難であるため、表面層のセメントスラリーは、中間層の乾燥セメント配合物に水分を含ませる程度の少量しか供給することができず、表面層の厚みが極めて薄くなる。また、中間層の乾燥セメント配合物を多くすると、この乾燥セメント配合物を湿潤させるのに必要な水分量も増えるが、この水分量を確保するために表面層のセメントスラリーを多くすると、セメントスラリーが中間層上から流れ出してしまう。従って、中間層の乾燥セメント配合物もあまり多くすることができず、中間層も薄くなってしまう。この結果、積層無機質マット全体の厚みが薄くなり、その分、凹凸模様成形性の低下や強度低下を招く。
【0005】本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、厚い積層無機質マットを容易に成形でき、凹凸模様成形性と強度とを共に向上できる無機質成形板の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の請求項1の無機質成形板の製造方法によれば、主原料を乾燥状態又は含水率60%以下の状態で混合した成形原料を成形コンベア上に散布して裏面層を形成し、主原料を水と混合して作製したスラリーを抄造装置で抄造して無機質シート状物を成形し、この無機質シート状物を粗砕分散手段で粗く粉砕しながら前記裏面層の上面に分散積層して中間層を形成し、この中間層の上面に、前記裏面層と同じく、前記主原料を乾燥状態又は含水率60%以下の状態で混合した成形原料を散布して表面層を形成して3層構造の積層無機質マットを形成し、この積層無機質マットをプレス成形して、これを硬化養生するものである。
【0007】この製造方法によれば、裏面層と表面層の双方を乾燥状態又は含水率60%以下の成形原料で形成する。従って、裏面層と表面層について、従来のようなスラリーの脱水の問題やスラリー流出の問題が発生することなく、必要な厚みの裏面層と表面層を容易に形成できる。また、中間層については、スラリーを抄造装置で抄造して作った無機質シート状物を粗く粉砕しながら裏面層の上面に分散積層して中間層を形成するため、スラリーの抄造により中間層の成形原料の混合が十分になされ、密度バラツキの少ない均質な中間層が形成されると共に、中間層の脱水処理や湿潤処理が不要であり、必要な厚みの中間層を容易に形成できる。
【0008】更に、請求項2のように、前記裏面層と表面層を形成する成形原料に配合する繊維類は、長さ5mm〜30mmの長繊維を使用することが好ましい(従来の一般的な繊維長は2.5mm以下である)。このように、長い繊維類を用いることで、繊維類による補強効果を高めることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1に基づいて抄造装置10の構成を説明する。無端の濾過ベルト11は、帯状の濾布や通水性のフェルトにより構成され、駆動ローラ12、複数のテンションローラ13,22を介して大径の円筒状回転体14に掛け渡されている。濾過ベルト11は、円筒状回転体14の周面上端から駆動ローラ12へ向ってほぼ水平方向に走行し、濾過ベルト11で抄造された無機質シート状物を水平方向に搬送するようになっている。また、駆動ローラ12から円筒状回転体14へ至る濾過ベルト11の走行経路中には、ホイッパーロール15と濾過ベルト洗浄装置16が設けられている。ホイッパーロール15は、散水機能を有する回転体で構成され、濾過ベルト11に散水しながら濾過ベルト11の表面の残留物を掻き取って濾過ベルト11の目詰りを防止する。
【0010】一方、円筒状回転体14は、多孔状又は網目状に形成され、下半部が貯溜槽17内に貯溜されている成形原料のスラリー18に浸されている。この貯溜槽17の底部には、スラリー18を攪拌して均一化するための複数の攪拌機19が設けられている。
【0011】円筒状回転体14の内部は、90°ピッチで4つの領域■〜■に区画され、領域■,■がスラリー18の液面下に没して吸着領域となっている。この円筒状回転体14に掛け渡された濾過ベルト11は、テンションローラ22によって吸着領域■,■に密着するようにテンションが加えられている。一方、領域■,■はスラリー41の液面以上の高さに位置し、領域■が脱水領域となり、領域■が非減圧領域となっている。これら4つの領域■〜■は、円筒状回転体14が回転しても回転せず、一定位置に固定されている。
【0012】この円筒状回転体14の中心に設けられたロータリバルブ20には、円筒状回転体14の外周面に吸引力を作用させるための多数の吸入パイプ(図示せず)が放射状に設けられている。この円筒状回転体14の吸着領域■,■は、ロータリバルブ20を介して真空ポンプ(図示せず)等に接続され、その真空吸引力によって濾過ベルト11に厚地の無機質シート状物を吸着できるようになっている。また、脱水領域■は、ロータリバルブ20を介して高圧ブロワ(図示せず)の吸込み口に接続され、大きな吸込風量で減圧脱水できるようになっている。一方、非減圧領域■は減圧されず、従って、この非減圧領域■では、濾過ベルト11が円筒状回転体14に吸着されずに済み、円筒状回転体14の周面上端から濾過ベルト11をスムーズに搬送方向に真っ直ぐ引き出すことができるようになっている。
【0013】また、円筒状回転体14で吸着・脱水された無機質シート状物を搬送する濾過ベルト11の下面側には、脱水ボックス21が設けられ、この脱水ボックス21をナッシュポンプ(図示せず)等で真空引きすることによって、濾過ベルト11上の無機質シート状物が減圧脱水される。
【0014】以上のように構成した抄造装置10の下方から前方のスペースを利用して、成形コンベア23が上り勾配となるように傾斜設置されている。この成形コンベア23も、抄造装置10の濾過ベルト11と同じく、帯状の濾布や通水性のフェルトにより構成され、駆動ローラ24と従動ローラ25との間に掛け渡されている。この成形コンベア23の下部側には、後述する表1の組成の裏面層用の成形原料を収容するホッパ26が設置され、このホッパ26の排出口には、裏面層用の成形原料を成形コンベア23上に分散供給して裏面層Aを形成する成形原料排出ロール27が設けられている。このホッパ26内には、成形原料供給装置28から裏面層用の成形原料が搬送コンベア29によって送られてくる。
【0015】また、抄造装置10の下方には散水ノズル35が設置され、この散水ノズル35からの散水によって成形コンベア23上の裏面層Aの成形原料が湿らされる。抄造装置10の濾過ベルト11の搬送方向前端部の下方には、一対の粗砕分散用回転体30(粗砕分散手段)が設けられ、濾過ベルト11上で抄造された無機質シート状物が両粗砕分散用回転体30の間を通って成形コンベア23上へ落下する過程で、該無機質シート状物が両粗砕分散用回転体30で粗く粉砕され、成形コンベア23上の裏面層Aの上面に分散積層されて中間層Bが形成される。
【0016】この場合、濾過ベルト11の搬送方向前端部から無機質シート状物を確実に落下させるために、濾過ベルト11の搬送方向前端部の内側に位置する駆動ローラ12を多孔状又は網目状に形成し、その内部にブロワ(図示せず)等からエアーを送り込むことで、濾過ベルト11の搬送方向前端部から無機質シート状物をエアーブローにより強制的に落下させるようにしている。
【0017】一方、成形コンベア23の上部側には、後述する表1の組成の表面層用の成形原料を収容するホッパ31が設置され、このホッパ31の排出口には、表面層用の成形原料を成形コンベア23上の中間層Bの上面に分散供給して表面層Cを形成する成形原料排出ロール32が設けられている。このホッパ31内には、成形原料供給装置33から表面層用の成形原料が搬送コンベア34によって送られてくる。また、ホッパ31の搬送方向前方には散水ノズル36が設置され、この散水ノズル36からの散水によって成形コンベア23上の表面層Cの成形原料が湿らされる。尚、散水ノズル36に代えて、成形原料のスラリーを散布するスラリー散布装置を設置しても良い。
【0018】散水ノズル36の搬送方向前方にはロールプレス37が設置されている。このロールプレス37は、成形コンベア23と同じ速度で回転され、3層の成形原料の積層物がロールプレス37によって圧縮成形され、3層構造の積層無機質マット38が形成される。ロールプレス37の下方には、成形コンベア23を挟んで脱水ボックス39が設けられ、この脱水ボックス39をナッシュポンプ(図示せず)等で真空引きすることによって、ロールプレス37で圧縮成形される積層無機質マット38が減圧脱水される。尚、ロールプレス37に代えて、平板プレスを用いても良い。
【0019】以上のように構成した成形装置を用いて3層構造の積層無機質マット38を成形する方法を説明する。各層の成形原料の組成は、次の表1に示すようになっている。
【0020】
【表1】

【0021】裏面層Aと表面層Cの成形原料に配合する長繊維は、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等、長さ5mm〜30mmの合成繊維集束材や、耐アルカリ性ガラス繊維の長さ10mm〜25mmのチョップドストランドを使用すれば良い。長繊維の長さは、長くなるほど補強効果が高まるが、その反面、長くなるほど長繊維どうしが絡みやすくなって均一に分散しにくくなるため、分散性と補強効果とを両立させるには5mm〜30mmの繊維長が適当である。中間層Bの成形原料には、これらの長繊維を配合しない。これは、成形原料のスラリー中では長繊維どうしが絡み合ってかたまりやすく、分散性に問題が生じるためである。
【0022】裏面層Aと表面層Cの成形原料は、乾燥状態又は含水率60%以下の状態で混合され、成形原料供給装置28,33内に収容される。そして、この成形原料供給装置28,33内の成形原料が搬送コンベア29,34によってホッパ26,31内に投入される。裏面層用のホッパ26の排出口から成形原料排出ロール27によって裏面層用の成形原料が成形コンベア23上に均一に分散供給され、裏面層Aが形成される。この裏面層Aは、成形コンベア23によって搬送される途中で、散水ノズル35からの散水によって湿らされる。
【0023】一方、中間層Bを形成する成形原料を水と混合してスラリー18を作製し、このスラリー18を抄造装置10の貯溜槽17に貯溜し、無端の濾過ベルト11を掛け渡した円筒状回転体14を貯溜槽17内のスラリー18に浸して回転させながら、円筒状回転体14内を減圧することにより、スラリー18中で濾過ベルト11の表面に成形原料を連続的に吸着しながら搬送する。これにより、濾過ベルト11に吸着された無機質シート状物が濾過ベルト11の搬送方向前端部まで連続して搬送される。
【0024】そして、濾過ベルト11の搬送方向前端部からエアーブローにより無機質シート状物が落下し、その途中で、粗砕分散用回転体30で粗く粉砕され、成形コンベア23上の裏面層Aの上面に均等に分散積層されて、均一厚みの中間層Bが形成される。
【0025】表面層用のホッパ31の排出口から成形原料排出ロール32によって表面層用の成形原料が中間層Bの上面に均一に分散供給され、表面層Cが形成される。この表面層Cは、成形コンベア23によって搬送される途中で、散水ノズル36からの散水によって湿らされる。
【0026】このようにして3層に積層された成形原料の積層物がロールプレス37によって圧縮成形され、3層構造の積層無機質マット38が形成される。この積層無機質マット38は、次工程の凹凸模様付与プレス工程へ搬送され、積層無機質マット38が平板プレスの型板(図示せず)でプレス成形され、図2に示すように表面層Cに凹凸模様柄を有する無機質成形板38’が成形される。この後、無機質成形板38’は、加熱硬化養生工程へ搬送され、温度80℃、湿度90〜95%の雰囲気中で8時間加熱硬化された後、無機質成形板38’の表面からの水分蒸発を防ぐようにラッピングして、70℃の雰囲気中で15時間養生される。この後、無機質成形板38’は、塗装等の化粧仕上げ工程を経て製品化される。
【0027】尚、養生方法は上記方法に限定されず、通常のオートクレーブによる養生を行っても良い。
【0028】本発明者は、以上のようにして製造した実施例の無機質成形板38’の物性を測定したところ、次の表2に示す測定結果が得られた。
【0029】
【表2】

【0030】この表2において、比較例1は、下記の表3の配合のスラリーをフローオン抄造機(濾過ベルト上にスラリーを供給する方式の抄造機)で抄造して無機質シート状物を形成し、この無機質シート状物をメイキングロールに8層巻き付けて、これを切断・展開して得た無機質マットを平板プレスの型板でプレス成形した後、実施例と同様の硬化養生を行って作製した無機質成形板である。
【0031】
【表3】

【0032】また、比較例2は、上記表3の配合のスラリーをフローオン抄造機で抄造して無機質シート状物を形成し、この無機質シート状物をメイキングロールに1層巻き付けて、これを剥離・粉砕して成形コンベア上に分散積層してロールプレスで圧縮成形し、この無機質マットを平板プレスの型板でプレス成形した後、実施例と同様の硬化養生を行って作製した無機質成形板である。
【0033】これら比較例1,2と実施例の物性を比較すると、前記表2に示すように、実施例は、比較例1のメイキングロールによる多層積層方式に比べ、全ての物性が優り、無機質成形板の表面に彫の深い凹凸模様を形成できることが判明した。また、実施例は、比較例2と比べ、曲げ強度が大幅に改善されることが判明した。
【0034】尚、上記実施形態では、濾過式の抄造装置10を用いたが、これに代えて、フローオン抄造機又はハチェック式の抄造機を用いたり、或は、傾斜型の長網式抄造機を用いて無機質シート状物を形成するようにしても良い。
【0035】また、本発明の積層無機質マット38の成形方法で用いる成形原料の組成は、上記表1に限定されず、セメントと繊維類を配合した種々の組成の成形原料に本発明の成形方法を適用可能である。
【0036】また、上記実施形態では、濾過ベルト11の搬送方向前端部から無機質シート状物を確実に落とすために、エアーブロー方式を採用したが、濾過ベルト11の搬送方向前端部の近傍に掻き取りロールを設置し、この掻き取りロールの回転によって濾過ベルト11の搬送方向前端部から成形原料を掻き落とすようにしても良い。
【0037】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の無機質成形板の製造方法によれば、裏面層と表面層とを乾燥状態又は含水率60%以下の成形原料で形成し、中間層を、抄造装置で抄造された無機質シート状物を粉砕して形成したので、従来のようなスラリーの脱水の問題やスラリー流出の問題が発生することなく、必要な厚みの裏面層と表面層を容易に形成できると共に、密度バラツキの少ない均質な中間層を厚く形成することができて、厚い3層構造の積層無機質マットを容易に成形でき、凹凸模様成形性と強度とを共に向上できる。
【0038】更に、請求項2では、前記裏面層と表面層を形成する成形原料に配合する繊維類として、長さ5mm〜30mmの長繊維を使用したので、長繊維の分散性を確保しながら長繊維による補強効果を高めることができて、一層の強度向上が可能になる。




 

 


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