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発明の名称 アルミニウム合金粉末ろう材および該粉末ろう材を用いたろう付方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−323792
公開日 平成10年(1998)12月8日
出願番号 特願平9−296322
出願日 平成9年(1997)10月14日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
発明者 兵庫 靖憲 / 桃崎 博人 / 当摩 建
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 Al、Si、Znの1種以上を構成成分とする1種または2種以上の粉末からなり、該粉末成分は、合計量においてAl−Si−Zn系過共晶組成を有することを特徴とするアルミニウム合金粉末ろう材【請求項2】 合計量でSiを15越〜60重量%、Znを5〜30重量%含有することを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金粉末ろう材【請求項3】 粉末は、Al−Si合金、Al−Si−Zn合金、Al−Zn合金、SiまたはSi合金、ZnまたはZn合金からなる群から選択された1種以上からなることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金粉末ろう材【請求項4】 Al−Si−Zn三元系過共晶合金粉末とSi粉末からなる混合粉末で構成されていることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金粉末ろう材【請求項5】 重量%で、Si:13〜45%、Zn:6〜35%を含み、残りがAlと不可避不純物からなる組成を有するAl−Si−Zn三元系過共晶合金粉末とSi粉末からなる混合粉末で構成されたことを特徴とする請求項4記載のアルミニウム合金粉末ろう材【請求項6】 前記Al−Si−Zn三元系過共晶合金粉末の平均粒径は5〜100μmの範囲内にあり、前記Si粉末の平均粒径は1〜50μmの範囲内にあり、かつAl−Si−Zn三元系過共晶合金粉末の平均粒径はSi粉末の平均粒径よりも相対的に大きい平均粒径を有することを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金粉末ろう材【請求項7】 1種以上の粉末とろう付用フラックスとが混合されていることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金粉末ろう材【請求項8】 アルミニウム部材を被ろう付材としてろう付する方法であって、請求項1〜7のいずれかに記載の粉末ろう材を塗布材としてアルミニウム部材の表面に塗布する工程と、塗布材および被ろう付材を加熱して、塗布材と粉末ろう材が塗布されたアルミニウム部材の表面部の一部とを溶融させる工程と、溶融した前記材料を凝固させて、被ろう付材をろう付するとともにアルミニウム部材の表面にZn含有層を形成する工程とを有することを特徴とするろう付方法【請求項9】 前記塗布材はろう付用フラックスとバインダ樹脂と溶剤を含んでおり、アルミニウム部材への塗布前に、これらを混合してスラリー状にしたことを特徴とする請求項8記載のろう付方法【請求項10】 ろう付前のアルミニウム部材の表面に、Zn被膜が形成されていることを特徴とする請求項8記載のろう付方法
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アルミニウムやアルミニウム合金からなるアルミニウム部材をろう付する際に用いられる粉末ろう材および該粉末ろう材を用いたろう付方法に関するものであり、熱交換器等の製造に適している。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム製の部材を接合する方法として、ろう材を粉末状にし、これを接合面に塗布してろう付する粉末ろう材が開発されている(例えば米国特許第3971501号)。該粉末ろう材は、塗布する接合部の形状等の制約が小さく、複雑形状品のように従来のろう材では配置が困難な箇所にも容易に適用できるものとして注目されている。
【0003】上記のろう付に使用される粉末ろう材としては、ろう付されるアルミニウム部材よりも融点が低いAl−Si共晶合金が用いられる。また、ろう付部の耐食性を改善するために、米国特許第5547517号に示されるように、Al−Si共晶合金に少量のZnを添加したり、米国特許第5251374号に示されているのように、Al−Si共晶合金とZnとの混合粉末をろう材として使用している。上記では、Znの添加量は最大で5重量%であり、Znを混合する場合でも混合量は最大で3重量%である。なお、例外的に、平成8年日本特許公開第314177号には、Znを10〜50重量%添加したAl−Si−Zn粉末ろう材が提案されており、平成7年日本特許公開第88689号には、Znを20重量部以下含むろう付用組成物が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ろう材に含まれるZn成分は、Al−Si成分に比べて融点が低いため、ろう付時に優先的に融解し、塗布部分からフィレット形成予定部等に移動して凝縮しやすい。このため、Znが移動してZn濃度が低下したろう材塗布部分では、Znによる防食効果が十分に得られないことになる。これに対し、Znを多く含むろう材を用いることが考えられるが、上記のようにしてZnが凝縮した部分でZn濃度が必要以上に高くなり、Znによる作用が過度になって、Znが凝縮したフィレット部等で侵食が起こるなどして耐食性が悪くなるという問題がある。
【0005】上記のように、粉末ろう材にZnを含ませても防食効果は十分に得られないため、自動車用熱交換器のように厳しい耐食性を要求される場合には、予め、ろう付するアルミニウム部材の表面に、Zn溶射膜を形成したり、欧州特許公開第0140267号に示されるようにZn析出層を形成する方法が採られている。しかし、これらの方法は、作業工程が増加して製造コストがアップするという難点がある。また、粉末ろう材でろう付する際に、大きな隙間がある接合部(例えば熱交換器のチューブとヘッダーの接合部など)や大きなフィレットの形成が必要な接合部などは、ろう付に必要なろう材量が著しく増すために粉末ろう材の塗布量も同様に増すことになる。粉末ろう材の塗布量を増加した場合、一度のコート(フローコート法等)で塗布できる塗布量に限界があるため、重ね塗りが必要となり塗布回数が増加して製造コストアップを招くという問題がある。また、粉末ろう材は高価なため使用量が増加すると材料コストもアップするという問題がある。
【0006】上記問題点に対しては、本発明者達の研究により、過共晶のAl−Si系合金粉末ろう材を使用すると、ろう付時に母材が侵食(溶融)され、その侵食された母材の一部が塗布されていた粉末ろう材とともに、ろうとして作用するので、良好なろう付性を維持したままで粉末ろう材の使用量および塗布回数を低減できることが判明している。なお、PCT公開WO94/29072及び平成8年日本国特許公表第511201号には、Siを多く含むろう材についての記載はあるが、過共晶合金として上記作用を積極的に得ることは明示されていない。
【0007】しかしながら、Al−Si系過共晶合金をろう材として用いると、Si晶出物の、カソードによる局部腐食や孔食型の腐食形態により、ろう付後の接合部や粉末ろう材塗布部における耐食性が低下するという問題があり、この問題を回避するためには、前記したZn溶射膜の形成等の煩雑な工程の必要性が一層増すものと考えられている。これらの問題のため、粉末ろう材の使用は、経済性に劣ると考えられている。
【0008】本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、その一つの目的は、煩雑な工程を必要とすることなくろう付部の耐食性を向上させることができる新規なろう材および改良されたろう付方法を提供することにある。また、他の目的は、上記目的に伴ってろう材の使用量の増加を必要とせず、さらに、積極的にろう材使用量を低減できる新規なろう材および改良されたろう付方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明のアルミニウム合金粉末ろう材のうち第1の発明は、Al、Si、Znの1種以上を構成成分とする1種または2種以上の粉末からなり、該粉末成分は、合計量においてAl−Si−Zn系過共晶組成を有することを特徴とする。第2の発明のアルミニウム合金粉末ろう材は、第1の発明において、合計量でSiを15越〜60重量%、Znを5〜30重量%含有することを特徴とする。第3の発明のアルミニウム合金粉末ろう材は、第1の発明において、粉末は、Al−Si合金、Al−Si−Zn合金、Al−Zn合金、SiまたはSi合金、ZnまたはZn合金からなる群から選択された1種以上の粉末であることを特徴とする。第4の発明のアルミニウム合金粉末ろう材は、第1の発明において、Al−Si−Zn三元系過共晶合金粉末とSi粉末からなる混合粉末で構成されていることを特徴とする。第5の発明のアルミニウム合金粉末ろう材は、第4の発明において、重量%で、Si:13〜45%、Zn:6〜35%を含み、残りがAlと不可避不純物からなる組成を有するAl−Si−Zn三元系過共晶合金粉末とSi粉末からなる混合粉末で構成されたことを特徴とする。第6の発明のアルミニウム合金粉末ろう材は、第4の発明において、前記Al−Si−Zn三元系過共晶合金粉末の平均粒径は5〜100μmの範囲内にあり、前記Si粉末の平均粒径は1〜50μmの範囲内にあり、かつAl−Si−Zn三元系過共晶合金粉末の平均粒径はSi粉末の平均粒径よりも相対的に大きい平均粒径を有することを特徴とする。第7の発明のアルミニウム合金粉末ろう材は、第1の発明において、1種以上の粉末とろう付用フラックスとが混合されていることを特徴とする。
【0010】また第8の発明の、アルミニウム合金粉末ろう材を用いたろう付方法は、アルミニウム部材を被ろう付材としてろう付する方法であって、上記第1〜7のいずれかの発明の粉末ろう材を塗布材としてアルミニウム部材の表面に塗布する工程と、塗布材および被ろう付材を加熱して、塗布材と粉末ろう材が塗布されたアルミニウム部材の表面部の一部とを溶融させる工程と、溶融した材料を凝固させて、被ろう付材をろう付するとともにアルミニウム部材の表面にZn含有層を形成する工程とを有することを特徴とする。第9の発明のろう付方法は、第8の発明において、アルミニウム部材への塗布前において、塗布材にろう付用フラックスとバインダ樹脂と溶剤を含み、これらを混合してスラリー状にしたことを特徴とする。第10の発明のろう付方法は、第8の発明において、ろう付前のアルミニウム部材の表面に、Zn被膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】すなわち、本発明者らは、従来、粉末ろう材に含ませた場合に十分な耐食性向上効果を発揮し得なかったZnを過共晶のAl−Si合金に含有させることにより、ろう材量の増加を招くことなく耐食性を大幅に向上させられることを見出し本発明を完成するに至ったものである。
【0012】なお、上記粉末ろう材は、過共晶となるために、合計量においてSiを所定量含有しなければならない。共晶点は、他の成分の含有量も影響するので、一義的に規定できないが、例えば、重量%で15%越と規定することができ、これによりろう材は過共晶となる。この過共晶のろう材は、Siが過剰となっているのでろう付時にそのSiが被ろう付部材に拡散流入し被ろう付部材の融点を低下させその一部を溶融(侵食)することになる。この溶融した被ろう付部材の一部が塗布されていた粉末ろうとともに流動し、接合部の隙間充填やフィレットの形成をする。すなわち、被ろう付部材の一部もろうとすることで接合に必要なろう材量を確保するため粉末ろう材の塗布量を低減させることができる。なお、Si量が過小でろう材が共晶または亜共晶になると、被ろう付材を溶解させる作用が得られない。なお、上記作用を十分に得るためにはSi量を20%以上とするのが望ましく、さらには25%以上とするのが一層望ましい。一方、Si量が過度になると、被ろう付材の深さ方向への侵食が著しくなり、被ろう付材に厚さの極端に薄い箇所ができて接合部材の強度低下を招いたり、腐食による貫通孔が発生し易くなったりして、強度面、耐食面において問題が生ずる。特に、ろう材にはZnが含有されているので、Siによる侵食が起こると、該侵食部にZnが優先的に取り込まれて侵食作用が一層顕著になる。また、Si量が60%を越えるろう材では、融点が1150℃以上となり、粉末ろう材の製作時の溶解が困難となる。このため、Si量は60%以下とするのが望ましく、さらに、Si量を50%以下とするのが一層望ましく、45%以下とするのがさらに望ましい。
【0013】なお、過共晶粉末ろうはろう材塗布部分の母材を溶解(侵食)するため、ろう材に含有させているZnが溶解した母材中へ流入しやすい。そのためその溶解した母材はZn濃度が高くなり、ろう材塗布部分の表面には高Zn濃度でかつ濃度差の小さいZn含有層が形成される。また、Zn含有層から母材深部に向けてZnが拡散するため、ろう材塗布部にはZn含有層+Zn拡散層が形成され防食に有効なZnが含有される深さは深くなる。このため、従来のように当初は最も耐食性が良く、次第に耐食性が低下するという現象を抑制することができる。また、フィレットを形成するために流動したろうは、流動中にも常に新しい母材を浸食するのでろう中のZnは希釈され濃度は低下する。よって、流動してくるろうはZn濃度が低くフィレット部のZn濃度はろう材塗布部分に比べ低くなる。このため、フィレット部でZn濃度が高くなってフィレット部での耐食性が著しく低下してフィンが脱落する等の現象が避けられる。また、フィレット部のZn濃度は相対的にろう材塗布部分よりも低くなるため、ろう材塗布部分が犠牲陽極としても作用し、フィレットの耐食性を一層向上させる。
【0014】一方、Znが十分に含有されたろう材塗布部分では、腐食形態は確実に面状型となり深さ方向への腐食進行を防止することができ、耐食性を向上させることができる。なお、過共晶ろうは被ろう付部材の一部もろうとするため、溶融ろうの量が塗布した粉末ろうの量よりも増加する。よってZn量を少量とした場合には、Znが希釈されて十分な耐食性が得られないことになる。このため、Znの含有量を合計量で5越%とするのが望ましい。なお、同様の理由でZn含有量を8%以上とするのが望ましく、さらに10%以上とするのが一層望ましく、またさらに15%以上とするのが一層望ましい。一方、Znの含有量が過度になると、被ろう付材の腐食速度が速くなり、耐食性が低下する。このため、Znの合計量は30重量%以下とするのが望ましく、さらに25重量%以下とするのが望ましい。
【0015】また、本発明者らは、上記した本発明の効果に対し、過共晶のAl−Si−Zn合金単独でなく、2種以上の混合粉末においても同様の効果が得られることを見出した。この混合粉末においては、合計量において、Al−Si−Zn過共晶合金と同等のものであればよく、上記したSiおよびZnの含有量の規定を合計量としてそのまま適用することができる。混合粉末は、Al−Si合金、Al−Si−Zn合金、Al−Zn合金、SiまたはSi合金、ZnまたはZn合金からなる群から選択された2種以上の粉末により構成することができる。なお、この群における各合金の成分や選択に際しての各合金の混合量が限定されるものではなく、要は、合計量において所望の成分のAl−Si−Zn過共晶合金と同等のものであればよい。ただし、上記した被ろう付材の溶解作用を確実かつ、より均等に得るために、上記群におけるAl−Si合金またはAl−Si−Zn合金は過共晶であるのが望ましい。このため、上記群からの選択に際しては、これら過共晶合金の少なくとも一方を選択するのが望ましい。
【0016】なお、上記群において、Al−Si合金またはAl−Si−Zn合金を過共晶とする場合には、これら合金におけるSi含有量も、上記Al−Si−Zn過共晶合金におけるSi規定量を適用することができる。ただし、Znに関する下限については、上記Al−Si−Zn過共晶合金に対し規定されるZn量を適用することができるが、上限については、多くのZnを含有させようとしても、溶解時にZnが著しく酸化して酸化亜鉛となり、それ以上はろう材中に固溶せず、製造が困難になるので、上限を30%にするのが望ましく、さらには20%とするのが一層望ましい。このため、Znは、必要量または補完量をZn粉末として含ませる方が多くのZnを含有させることが可能になる。
【0017】上記観点から成分を定めた本発明のろう材は、機械粉化、アトマイズ法、遠心噴霧法等の常法の方法により粉末化することができ、その場合、適当な粒径(例えば、1〜100μm)に調整する。なお、粒径が大きすぎると、ろう材塗布層の厚さが不均一になりやすく、製品寸法に差がですぎしてしまいろう付け不良の原因になりやすい。この粒径の調整に際しては、混合粉末中にSiを含む場合には、Si粉末の粒径を他の粉末の粒径よりも小さくするのが望ましい。これは、Si粉末は被ろう付材への侵食が著しいため、Si粉末の粒径を他の粉末の粒径よりも小さくすることにより、混合粉末中にSiを均一に分散させ、よってSi粉末による被ろう付材の局部侵食を低減して、被ろう付材表面の侵食を均等かつ穏やかにする必要があるためである。したがって、Si粉末と他の材料の粉末との混合粉末によりろう材を構成する場合には、他の粉末の平均粒径は5〜100μmの範囲内にあり、Si粉末の平均粒径は1〜50μmの範囲内にあり、かつSi粉末の平均粒径は、他の粉末のの平均粒径よりも相対的に小さいのが好ましい。さらには、上記において、他の粉末の平均粒径は10〜70μmの範囲内にあり、Si粉末の平均粒径は1〜30μmの範囲内にあり、かつSi粉末の平均粒径が他の粉末の平均粒径よりも小さいのが一層望ましい。さらに一層望ましくは、他の粉末の平均粒径が15〜40μmの範囲内にあり、Si粉末の平均粒径は1〜20μmの範囲内にあり、かつSi粉末の平均粒径が他の粉末の平均粒径よりも小さいことである。なお、上記混合粉末の粒径の規定については、例えば、Al−Si−Zn三元系過共晶合金粉末とSi粉末との混合粉末に適用することができる。
【0018】上記単独または混合粉末は、所望によりろう付用フラックスと混合して粉末ろう材とすることができ、これらは適宜の混合比で混合される。例えば、単独または混合されたアルミニウム合金粉末20〜1重量部に対し、フラックス1〜2重量部を混合したものを使用することができる。なお、本発明において、フラックスを混合する場合に、この混合比に限定されるものではない。また、上記フラックスには、KAlF4,K2AlF5・5H2O,K3AlF6,AlF3等のフッ化物やNaCl,KCl,LiCl,ZnCl2等の塩化物フラックス等を用いることができるが本発明としては、特にその種別が限定されるものではない。さらに、上記粉末ろう材を被ろう付材に塗布して付着させる際には、各種溶剤やバインダを混合して付着を容易にすることができる。溶剤としては、水、アルコール類(特に炭素数1〜8の脂肪族アルコール)などを用いることが出来る。また、バインダとしては、接合部の特性を低下させないで、粉末を良好に固着できるものであればよく、カルボキシル基を有する水溶性高分子化合物または、アクリル系、メタクリル系樹脂等を挙げることができる。なお、これら溶剤、バインダの混合比率は適宜選定することができる。上記した粉末ろう材は、適当に混合されて、被ろう付材に付着させる。その付着方法として、例えば、スプレー法、シャワー法、フローコーター法、ロールコータ法、刷毛塗り法、浸漬法といった手段を利用することができるが、本発明としては、付着方法が特定の方法に限定されるものではない。なお、本発明のろう材を付着させる被ろう付材は、少なくとも一方が、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム部材であればよく、アルミニウム合金にあっても、特にその組成が限定されるものではない。また、アルミニウム部材は、その製造履歴が特に限定されるものではない。さらに、アルミニウム部材の表面には、予めZn被膜を形成しておくことも可能である、Zn被膜の形成方法も特に限定されるものではなく、溶射や浸漬メッキ等の適宜の方法を採用することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】図1は、本発明材及び本発明法を適用した熱交換器を示すものであり、以下に適用例を説明する。なお、これにより、本発明の適用範囲が以下のものに限定されるものではない。該熱交換器は、いずれもJIS A3003Al合金からなる、ヘッダー部1,1と、チューブ2…2と、放熱用に波形に形成されたフィン3…3とを組み立てることにより製造されている。この組立に際し、各接合部には、上記した本発明の粉末ろう材が使用されている。該粉末ろう材は、Al−Si−Zn過共晶合金となるように調製され、アトマイズ法等により所定の粒径に粉末化され、接合部に塗布される。図2は、該粉末ろう材7を表面に塗布したヘッダー1の孔4に、同じく粉末ろう材7を表面に塗布したチューブ2を挿入した状態を示している。粉末ろう材を付着させた後は、組立体を適当な雰囲気で適温に加熱して、ろう材7を溶解させる。この際の加熱温度としては580〜620℃が望ましい。580℃以下ではろう材7および被ろう付け材の一部溶解が進まず、良好なろう付が難しく、一方、620℃を越えると、著しい侵食が生じるため、上記温度範囲が望ましい。また、加熱保持時間としては1〜10分が挙げられる。
【0020】図3は、本発明のろう材によりろう付されたヘッダー1とチューブ2との接合部を示すものであり、接合部には、十分な量のフィレット6が形成されている。また、粉末ろう材が塗布されたヘッダー1およびチューブ2の表面には、溶解した被ろう材が再度凝固した凝固層1aおよび2aが形成されている。ろう材に含まれるZnは、一部は上記接合部に持ち去られ、残部はろう材塗布部において上記凝固層1a、2aに適度かつ均等な濃度で含有され、該部の表面部で面状腐食を促進してSi晶出物による局部腐食や孔食を防止し、結果として耐食性を改善する。なお、接合部におけるZn濃度は塗布部におけるものよりも低く、部分的なZn凝集は認められない。なお、本発明の粉末ろう材でろう付する場合、母材の一部がろうとなってろう付後の母材板厚が減少するので、板厚がある程度厚い部材(例えば板厚0.5mm以上)へのろう付に適しているが、本発明が板厚0.5mm以上の部材への適用にのみ限定されるものではない。また、本発明の適用分野も上記に限定されるものではなく、各種用途への適用が可能である。
【0021】
【実施例】
(実施例1)次に、本発明の効果を確認するために、以下の評価試験を行った。表1に示すように、Si量、Zn量を変えたアルミニウム合金粉末(最大粒径75μm、平均粒径20〜30μm)を用意し、さらに、フラックスとしてフッ化物系フラックス、バインダとしてアクリル系樹脂を用意し、これらを重量比で10:1:1で混合して粉末ろう材を調製した。また、比較例として発明の範囲外のAl−Si系合金またはAl−Si−Zn系合金粉末ろう材を用意した。上記粉末ろう材を用い、塗布量を変えて図4に示す逆T字型隙間充填性試験を行った。具体的には、JIS A3003合金からなり、縦:30mm、横:60mm、板厚:1.5mmの寸法を有する相手材10を水平に置き、同じくJIS A3003合金からなり、縦:30mm、横:50mm、板厚:1mmの寸法を有する母材11の両面に上記粉末ろう材をフローコート法によって塗布した後、これを相手材10上にT字状に配置するとともに、その設置面の一端に棒状で直径2mmのスペーサ12を配置して相手材10と母材11との間に小隙間13を形成した。
【0022】これら相手材10、母材11、スペーサ12を600℃×5分で加熱して不活性雰囲気中でろう付を行った。このろう付により、ろう材と母材および相手材の一部が溶解して上記小隙間13に、充填長さLが30mmになるようにろう付部14を形成し、そのろう付に要したろう材の塗布量を測定した。また、ろう付後、図5、6に示すようにろう付部の最大侵食深さDを測定し、その結果を表1に示した。さらに、前記逆T字型ろう付け組立体に、酸性塩水に塩化第2銅を0.26g/l含む試験液(液温50℃)を試験室温度50℃にて連続噴霧(480時間)するCASS試験を行い、ろう材塗布部での腐食深さおよび腐食形態を調査し、また、フィレット部では腐食形態を調査し、これらの結果を表1に示した。
【0023】
【表1】

【0024】表1から明らかなように、ろう材Si含有量を15wt%越とした試験片では、少ない塗布量、塗布回数で良好なろう付性(隙間充填性)が得られており、母材の溶解量(最大侵食深さ)も適度に抑えられている。特にSi含有量を20〜30wt%としたものでは最大浸食深さが比較的浅く、良好なろう付接合部を得ることができる。これに対し、Si含有量が60wt%を越えるものでは、最大侵食深さが深く、母材が過度に侵食されていることが示されている。また、上記特性が得られるものでもZnを全く含有しないか、少量含有するものでは、孔食の発生が見られ、腐食が深く進行している。これに対し、Znを適量含有するものは、腐食深さが顕著に浅くなっている。なお、Znを30%を越えて過剰に含有するものでは面状で、かつ深く侵食された。したがって、上記実施例によりSi、Znを適量含有する粉末ろう材を用いた場合に、塗布部分およびフィレットともに良好な耐食性を得ることができ、しかも少ないろう材量で良好にろう付できることが明らかになった。
【0025】(実施例2)次に、Al合金溶湯をアトマイズして、表2に示される成分組成および平均粒径をもったAl−Si−Zn三元系合金粉末を作製し、これらAl−Si−Zn三元系合金粉末に対して、表に示される平均粒径を有する純Si粉末を混合してSi量およびZn量が合計で表に示される値となる本発明ろう付け用混合粉末(以下、本発明混合粉末という)1〜10および比較ろう付け用混合粉末(以下、比較混合粉末という)1〜5を作製した。さらに、Al−Si二元系合金の従来粉末を用意した。これら本発明混合粉末1〜10、比較混合粉末1〜5および従来粉末を10重量部に対してフラックス:1重量部、バインダー:1重量部の割合で混合し、スラリー状ろう材を作製した。なお、比較混合粉末1〜5は、構成成分のうちのいずれかの成分含有量がこの発明の範囲から外れたものである。上記ろう材粉末を実施例1と同様に試験材に塗布し、同条件でろう付を行った後、人工海水および酢酸からなる試験液を50℃の温度下で30分間噴霧した後、30分間噴霧を停止して湿潤雰囲気下に保持する操作を20日間繰り返すSWATT試験を行い、腐食深さ及び腐食形態を調査し、それらの結果を表2に示した。
【0026】
【表2】

【0027】表2に示される結果から、本発明混合粉末1〜10で作製したろう材の接合部は、従来粉末(比較粉末No.6)で作製したろう材の接合部に比べて塗布量および腐食深さが格段に小さく、さらに腐食形態も本発明混合粉末1〜10はいずれも面状であるに対し、従来粉末で作製したろう材はろう材塗布量が多量に必要であり、またその接合部は孔食となって耐食性に劣ることが分かる。さらにこの発明の範囲から外れた比較粉末(混合粉末)No.1〜5は、ろう材塗布量、最大侵食深さ、耐食性のいずれかの特性の内の少なくとも1つの特性が劣るので好ましくないことが分かる。なお、本発明混合粉末を用いたものでは、実施例1と同様に、フィレット部での耐食性も良好であった。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のアルミニウム合金粉末ろう材によれば、過共晶のアルミニウム合金にZnを含有させて使用するので、ろう材塗布部にZnが適度に含有されたZn含有層が確実に形成され、その結果、被ろう付材表面の腐食形態が面状となり腐食の深さ方向への進行が防止されて優れた耐食性を発揮する。また、従来公知のろう材よりも一段と少ないろう材量で、同等もしくはそれ以上のろう付性を得ることができるので、工業上有用な効果をもたらす。




 

 


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