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発明の名称 ろう付性に優れた熱交換器および該熱交換器の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−175061
公開日 平成10年(1998)6月30日
出願番号 特願平8−352698
出願日 平成8年(1996)12月14日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
発明者 兵庫 靖憲 / 桃崎 博人 / 当摩 建
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 アルミニウムまたはアルミニウム合金製ヘッダー部とチューブとの接合部が、過共晶のAl−Si系合金ろうと母材との融合により形成されていることを特徴とするろう付性に優れた熱交換器【請求項2】 Al−Si系合金は、重量%で、Si:13越〜60%を含有することを特徴とする請求項1記載のろう付性に優れる熱交換器【請求項3】 アルミニウムまたはアルミニウム合金製ヘッダー部にチューブを接合する際に、過共晶のAl−Si系合金粉末ろう材を用いてろう付することを特徴とする熱交換器の製造方法【請求項4】 アルミニウムまたはアルミニウム合金製ヘッダー部のチューブ接合予定部に、過共晶のAl−Si系合金粉末ろう材を付着させるとともに、該ヘッダー部にチューブを組み込み、前記ろう材を加熱してチューブとヘッダー部とを接合することを特徴とする熱交換器の製造方法【請求項5】 ろう材は、Al−Si系合金粉末とフラックスとの混合物からなることを特徴とする請求項3または4に記載の熱交換器の製造方法
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製のヘッダー部とこれに接続されたチューブとを有するろう付性に優れた熱交換器および該熱交換器の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に知られている熱交換器の構造を例示すると、図3に示すように、2つのパイプ状ヘッダー部1、1が複数のチューブ2…2で連結されており、該チューブ2…2間には放熱フィン3、3が配置されている。上記熱交換器を製造する際には、一般に、チューブ2を図4に示すようにブレージングシートで構成されたヘッダー部1の穴1a内に挿入するとともに、チューブ2、2間にブレージングシートで構成された放熱フィン3を配置して熱交換器用部材を組立て、これらを加熱することによりチューブ2と放熱フィンをろう付し、さらにヘッダー部1とチューブ2とを管状継手にてろう付する。なお、ヘッダー部1とチューブ2との管状継手は、組立を用意に行えるように隙間を大きく設定しており、この隙間を冷媒漏れが生じることなく完全に接合できるように、継手部分に置きろうやさしろうを供給することも行われている。なお、上記置きろうには、接合部の形状に拘わらず配置が容易で、作業も用意に行うことができる粉末ろう材が適している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ヘッダー部とチューブとの接合部の隙間を完全に充填するためには、ヘッダー部とチューブとの接合予定部に多量の粉末ろう材を塗布しなければならず、例えば、チューブとフィンとを粉末ろう材で接合する場合の塗布量の約5〜8倍ほどが必要になる。しかし、粉末ろう材の塗布量を増加させる場合、一度のコート(フローコート法等)で塗布できる塗布量に限界があるため、重ね塗りが必要となり塗布回数が増加して製造コストアップを招くという問題がある。また、粉末ろう材は高価なため使用量が増加すると材料コストもアップする。また、ろう材の塗布量が多くなると、必然的にろう材層も非常に厚くなり、熱交換器組立時に他部材との擦れや振動等によりろう材が脱落し易い。その脱落した箇所はろう付不良の原因となるため、接合用部材の取り扱いに注意が必要となり作業性に劣るという問題もあった。本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、少ないろう材使用量によって良好にろう付することができ、したがって製造時の部材の取り扱いも容易なろう付性に優れた熱交換器および該熱交換器の製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明のうち、第1の発明のろう付性に優れた熱交換器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製ヘッダー部とチューブとの接合部が、過共晶のAl−Si系合金ろうと母材との融合により形成されていることを特徴とする。第2の発明のろう付性に優れた熱交換器は、第1の発明において、Al−Si系合金が、重量%で、Si:13越〜60%を含有することを特徴とする。
【0005】第3の発明の熱交換器の製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製ヘッダー部にチューブを接合する際に、過共晶のAl−Si系合金粉末ろう材を用いてろう付することを特徴とする。第4の発明の熱交換器の製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製ヘッダー部のチューブ接合予定部に、過共晶のAl−Si系合金粉末ろう材を付着させるとともに、該ヘッダー部にチューブを組み込み、前記ろう材を加熱してチューブとヘッダー部とを接合することを特徴とする。第5の発明の熱交換器の製造方法は、第3または第4の発明において、ろう材が、Al−Si系合金粉末とフラックスとの混合物からなることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の熱交換器は、自動車用等の各種用途に使用することができ、本発明としては特に用途が限定されるものではない。また、その具体的構造においても、ヘッダー部とチューブとの接合部分を有することが必要であるが、その継手形態やその他の構造について特に限定されるものでもない。
【0007】なお、本発明の過共晶Al−Si系合金ろうは、Siを主成分とするAl合金であり、Si以外に少量の添加元素を含有するものであってもよい。また、当然にSiのみを含有し、残部が不純物およびAlからなるものであってもよい。共晶点になるSi含有量はその他の添加成分によっても異なるが、通常は、重量%で12%前後であり、本発明としては13%越〜60%をSi含有量の望ましい範囲としている。
【0008】ここで、Si含有量が13%以下であると、ろう材は共晶または亜共晶合金となり、母材を溶解させる作用が十分に得られず、ろう材量を低減する効果が小さいため下限を13%越とするのが望ましい。一方、Si含有量が60%を越えると、母材に対する侵食が過度になり強度低下等の問題が生じ、またろう材の融点が1150℃以上となり、粉末ろう材の製作時の溶解が困難となるため、Si含有量としては13越〜60wt%を望ましいものとした。なお、同様の理由で下限を15%越、上限を45%とするのが一層望ましく、さらには下限を20%、上限を30%とするのが一層望ましい。これらの望ましい範囲では、母材に対する適度な溶解が生じるため、良好なろう付性を維持したままでろう材量を効果的に減少させることが可能になる。
【0009】上記観点から成分を定めたAl−Si系合金は、常法により粉末化することができ、適当な粒径(例えば、最大粒径75μm)に調整する。このアルミニウム合金粉末は、所望によりフラックスと混合して粉末ろう材とすることができ、これらは適宜の混合比で混合される。上記フラックスには、フッ化物や塩化物フラックス等を用いることができるが本発明としては、特にその種別が限定されるものではない。
【0010】上記粉末ろう材を接合部に付着させる際には、各種溶剤やバインダを混合して付着を容易にすることができる。溶剤としては、水、アルコール類(特に炭素数1〜8の脂肪族アルコール)などを用いることが出来る。また、バインダーとしては、接合部の特性を低下させないで、粉末を良好に固着できるものであればよく、カルボキシル基を有する水溶性高分子化合物または、アクリル系、メタクリル系樹脂等を挙げることができる。上記した合金粉末は、適当に混合されて、接合材に付着させる。その方法も本発明としては特に限定されないが、例えば、スプレー法、シャワー法、フローコーター法、ロールコータ法、刷毛塗り法、浸漬法といった手段を利用することができる。
【0011】本発明の製造方法においては、図1に示すようにヘッダー部1の穴1aにチューブ2を差し込むとともに、ヘッダー部1におけるチューブ2の接合予定部4の周囲を取り囲むように上記粉末ろう材5を付着させ、さらに図3に示すようにこれらに放熱フィン3を配置して熱交換器用組立体を得る。粉末ろう材5を付着させた後は、適当な雰囲気で適温に加熱して、ろう材を溶解させる。この際の加熱温度としては580〜620℃が望ましい。580℃以下ではろう材および母材の一部溶解が進まず、良好なろう付が難しく、一方、620℃を越えると、著しい侵食のため、上記温度範囲が望ましい。本発明に用いられる過共晶合金のろう材は、Siが過剰となっているのでろう付時にそのSiが母材に拡散流入し母材の融点を低下させその一部を溶融(浸食)する。この溶融した母材の一部が塗布されていた粉末ろうとともに流動し、図2に示すようにこれらが融合して両部材1、2間の隙間充填やフィレットの形成をして接合部6を形成する。すなわち、母材の一部もろうとして作用し接合に必要なろう材量を補完するので、ろう付性を損なうことなく粉末ろう材の塗布(必要)量を減少させることができる。その結果、粉末ろう材の使用量、塗布回数を低減することでコストダウンが可能になる。さらに、ろう材付着厚を減少できるので、熱交換器組立時のろう材の脱落が少なくなり、取り扱いが容易になって作業効率が向上する。
【0012】なお、本粉末ろう材の代わりに純Si粉末の使用も考えられるが、純Si粉末を用いた場合、母材の一部を浸食しろうとなってフィレットを形成する前に母材深さ方向への浸食が著しく、母材厚さの極端に薄い箇所ができるため、腐食による貫通孔が発生し易くなったり、接合部材の強度低下を招いたりして耐食面、強度面において問題が生ずるため使用は困難である。したがって、Al−Si系合金においてもSiが過量のものは上記と同様の理由で避ける必要がある。ここで、母材の許容溶融量を考えると、母材の板厚等によっても異なるが、強度の低下および耐食性の低下を避けるという観点から、母材における溶融深さが0.5mm未満であるのが望ましい。なお、本発明の粉末ろう材でろう付する場合、母材の一部がろうとなってろう付後の母材板厚が減少するので、板厚がある程度厚い部材(例えば板厚0.5mm以上)へのろう付に適している。
【0013】
【実施例】熱交換器におけるヘッダー部とチューブとのろう付性を評価するため、以下の試験片を用いたシミュレーション試験を行った。すなわち、表1に示すように、Si量を変えたアルミニウム合金粉末(最大粒径75μm)を用意し、さらに、フラックスとしてフッ化物系フラックス、バインダとしてアクリル系樹脂を用意し、これらを重量比で10:1:1で混合して粉末ろう材を調製した。また、比較例として純Siを同じく粉末ろう材として用意した。
【0014】上記粉末ろう材を用い、塗布量を変えて図5に示す逆T字型隙間充填性試験を行った。具体的には、JIS A3003合金を相手材10として水平に置き、同じくJIS A3003合金を母材11として両面に上記粉末ろう材をフローコート法によって塗布した後、これを相手材10上にT字状に配置するとともに、その設置面の一端に棒状のスペーサ12を配置して相手材10と母材11との間に小隙間13を形成した。これらを600℃×5分で加熱して不活性雰囲気中でフラックスを用いたろう付を行うと、ろう材が溶解して上記小隙間13にろう付部(接合部)14が形成された。なお、ろう付部14は、粉末ろう材と母材11および相手材10の一部が溶融して形成されていた。ろう付後、図6、7に示すようにろう付部14の充填長さLと最大侵食深さDとを測定し、その結果を表1に示した。また、ヘッダー部、チューブともにJIS A3003合金で構成された実機の熱交換器に対し、上記と同じろう材を同量、接合予定部に塗布して上記と同条件でろう付試験を行い、ヘッダー部とチューブとの接合状態を観察した。その結果、接合部でのリーク無をろう付良好、リーク有をろう付不良と判定し、これらの結果も合わせて表1に示した。
【0015】
【表1】

【0016】表から明らかなように、ろう材Si含有量を15wt%以上とした試験片では、少ない塗布量、塗布回数で良好なろう付性(隙間充填性)が得られており、母材の溶解量(最大侵食深さ)も適度に得られている。特にSi含有量20〜30wt%では最大浸食深さが比較的浅く、良好なろう付接合部を得ることができる。これに対し、Si含有量が60wt%を越えるものや純Siでは、最大侵食深さが深く、母材が過度に侵食されていることが示されている。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の熱交換器によれば、ヘッダー部とチューブとの接合部が過共晶のAl−Si系合金ろうと母材との融合により形成されているので、ろう材の使用量を相対的に少なくでき、しかも接合部分が確実かつ強固にろう付されている。なお、上記ろうを、重量%で、Si:13越〜60%を含有するものとすれば、過度な母材の溶解が防止され母材の溶融量が適度になるので、母材の溶融に伴う強度低下や耐食性の低下を招くことなく良好なろう付性を得ることができる。
【0018】また、本発明の熱交換器の製造方法によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製ヘッダー部にチューブを接合する際に、過共晶のAl−Si系合金粉末ろう材を用いてろう付するので、従来公知のろう材よりも一段と少ないろう材量で、ヘッダー部とチューブの接合部での良好なろう付性を得ることができる。よって、粉末ろう材の使用量および塗布回数を低減することができ、ろう付け性を損なうことなく製造コストを大幅に低減することができる。なお、上記製造に際し、チューブ接合予定部に、過共晶のAl−Si系合金粉末ろう材を付着させるとともに、該ヘッダー部にチューブを組み込み、前記ろう材を加熱してチューブとヘッダー部とを接合すれば、ろう材が付着された母材の一部が効果的かつ適度に溶融し、上記作用が一層確実になる。また、ろう材として、Al−Si系合金粉末とフラックスとの混合物からなるものを使用すれば、ろう付工程でのフラックス塗布工程を省略でき、かつ、ろう付時に上記合金粉末の表面酸化皮膜が効果的に除去されて、良好なろう付が一層容易になる。




 

 


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