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発明の名称 有機液体混合物用分離膜およびそれを用いた分離装置および方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−180057
公開日 平成10年(1998)7月7日
出願番号 特願平9−304987
出願日 平成9年(1997)10月20日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
発明者 峯岸 進一 / 藤井 能成
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 分離操作により有機液体混合物の組成を変化させるのに用いる分離膜であって、平均直径が0.5〜50nmの範囲にある微細孔を有していることを特徴とする有機液体混合物用分離膜。
【請求項2】 有機液体混合物がパラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素のうち、いずれか2つ以上の炭化水素成分を含んでいる、請求項1の有機液体混合物用分離膜。
【請求項3】 有機液体混合物がパラフィン系炭化水素とオレフィン系炭化水素の混合物である、請求項1の有機液体混合物用分離膜。
【請求項4】 有機液体混合物がナフサ、ガソリン、灯油、軽油である、請求項1ないし3のいずれかに記載の有機液体混合物用分離膜。
【請求項5】 素材が有機液体混合物に対して耐久性がある有機高分子である、請求項1ないし4のいずれかに記載の有機液体混合物用分離膜。
【請求項6】 素材がポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンスルフォンまたはポリイミドである、請求項5の有機液体混合物用分離膜。
【請求項7】 分離膜が中空糸膜である、請求項1ないし6のいずれかに記載の有機液体混合物用分離膜。
【請求項8】 分離膜が平膜である、請求項1ないし6のいずれかに記載の有機液体混合物用分離膜。
【請求項9】 分離膜が管状膜である、請求項1ないし6のいずれかに記載の有機液体混合物用分離膜。
【請求項10】 請求項1ないし9のいずれかに記載の分離膜を用いていることを特徴とする、有機液体混合物用分離装置。
【請求項11】 請求項1ないし9のいずれかに記載の分離膜を用いて膜蒸留することを特徴とする、有機液体混合物の分離方法。
【請求項12】 分離操作を膜蒸留法により行い、該膜蒸留法において膜の透過側を不活性ガスで掃引して蒸気圧勾配駆動力を維持する、請求項11の有機液体混合物の分離方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機液体混合物の組成を変化させるのに使用する分離膜、およびそれを用いた分離装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】膜分離技術は、食品工業や医療分野、海水淡水化や超純水生成分野等の水処理分野等をはじめとして様々な分野で利用されているが、これまで特に水系を中心に発達し、工業化されてきた。膜分離技術は、省資源・省エネルギーおよび低環境負荷技術として注目されている分離技術であり、この膜分離技術を非水系分野、例えば石油精製プロセスや石油化学工業分野へ適用することが近年研究され始めている。
【0003】石油精製プロセスや石油化学工業分野における分離は、蒸留法を主体とする既存の分離技術を組み合せた方法で行なわれており、省資源・省エネルギーおよび低負荷環境の立場からは、より有利な分離技術を開発し適用することが求められている。このような背景から膜分離技術を石油精製プロセスや石油化学工業分野の技術として開発し実用化することが求められている。
【0004】特開平2−2852号、特開平2−2854号公報は、芳香族成分と非芳香族成分を分離するためのポリウレア/ウレタン膜を開示している。特開平2−138136号公報は、ポリエチレングリコール含浸親水性膜を用いて芳香族炭化水素を芳香族炭化水素と飽和炭化水素の混合物から分離する方法を開示している。特開平3−77634号公報は、架橋ポリウレタン膜で芳香族成分と非芳香族成分を分離する方法を開示している。特開昭62−234523号公報は、高分子複合膜による炭化水素混合ガス分離方法を開示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来技術は、必ずしも、有機液体に対して十分な耐久性を有し、かつ分離性能と膜透過速度をともに満足し、既存分離設備より経済的に有利な膜及び膜プロセスとは言えない。また、石油精製プロセスの場合、処理量が大量であるため、ガス状態の分離ではエネルギー的に不利になる。これらの理由から、現状では、石油精製プロセスや石油化学工業に膜分離技術を本格的に応用した例はない。
【0006】有機液体混合物の組成を変化させることができれば、ガソリンのオクタン価を向上させたり、軽油のセタン価を向上できる。また、膜で目的成分を完全に分離することができなくとも、蒸留設備に入る前の原料組成を変えておくだけで経済的には有利であり、さらに蒸留プロセスを膜プロセスで置き換えることができれば経済的に有利になることは言うまでもない。また、ガソリンからベンゼン等の有害物質を除去できれば低環境負荷の観点から有利である。さらに、オレフィンの分離・濃縮ができればポリマーや石油化学製品の経済的に有利な原料製造方法を提供することができる。
【0007】本発明の課題は、このような観点から、とくに石油精製プロセスや石油化学工業の分野に工業的に適用して好適な、有機液体混合物用分離膜、およびそれを用いた分離装置および方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の有機液体混合物用分離膜は、分離操作により有機液体混合物の組成を変化させるのに用いる分離膜であって、平均直径が0.5〜50nmの範囲にある微細孔を有していることを特徴とするものからなる。
【0009】また、本発明に係る有機液体混合物用分離装置および方法は、このような分離膜を用いた装置、および、このような分離膜を用いて膜蒸留する方法からなる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の望ましい実施の形態について説明する。まず、本発明において適用する膜蒸留法は、微細孔を有する膜を介して液体混合物からある成分を選択的に富化した蒸気として得る膜分離技術で、膜の一次側に液体混合物を供給し、二次側を減圧するか窒素等の不活性ガスまたは液体で掃引する方法である。本発明における膜蒸留法は上述のいずれの方法でもよいが、二次側を減圧にする方法は、大容量の装置を高い真空度に保つ必要があり、エネルギー的に不利になるので、不活性ガスまたは温度差を有する液体で掃引する方法が有利である。
【0011】本発明で対象となる有機液体混合物は、例えば、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素のうち、いずれか2つ以上の炭化水素成分を含むものである。また、硫黄化合物、窒素化合物、酸素化合物、金属化合物などの非炭化水素成分を含んでいても差し支えない。この有機液体混合物の例としては、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】ここで、パラフィン系炭化水素とは、Cn 2n+2の分子式の飽和鎖状化合物で、分枝のないn-パラフィンと枝分かれしたイソパラフィンとがあり、具体的には、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、2-メチルブタン、2,2-ジメチルプロパンなどが挙げられる。オレフィン系炭化水素とは、二重結合を有する炭化水素で、二重結合1個の場合はCn 2nの一般式で示される鎖状炭化水素であり、具体的には、例えば、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンなどが挙げられる。ナフテン系炭化水素とは、1分子中に少なくとも1個の飽和環を含む炭化水素で、炭素数5個のシクロペンタンと、炭素数6個のシクロヘキサンが最も基本となる環状化合物であり、一般式はCn 2nである。芳香族系炭化水素とは、1分子中に少なくとも1個の芳香族環を含む炭化水素のことで、具体的には、例えば、ベンゼンやベンゼンに側鎖のついたトルエン、キシレンなどの単環化合物である。
【0013】有機液体混合物の温度は、膜の耐熱性の範囲内であれば特に限定されないが、有機液体混合物の粘度が極端に高くなるような温度は好ましくない。
【0014】本発明で使用される分離膜は、平均孔径0.5〜50nm、好ましくは0.5〜20nm、さらに好ましくは1〜10nm、特に好ましくは4〜10nmの微細孔を有していることを特徴とする。この微細孔の平均孔径の範囲は、ケルビン式r=-2Vσ/[RTln(P/P0)]でおおよそ推定することができる。ここで、r は凝縮半径、Vは液体の分子容、σは液体の表面張力、Rは気体定数、Tは絶対温度、P0 は飽和蒸気圧、Pは毛管凝縮を起こす圧力である。すなわち、分離膜の微細孔の平均細孔径がケルビン式から求められる範囲にあれば、ある成分が分離膜の微細孔内で毛管凝縮を起こし、微細孔を閉塞するので、他の成分の透過が阻止され、高い分離性能が得られる。しかしながら、膜の孔径には分布があるので、必ずしもケルビン式から推定される平均孔径を有する膜が高い分離性能を発現するかどうかわからない。そこで、ケルビン式から推定される平均孔径を有する膜の性能を調査、検討したところ、多くの分離膜において、平均孔径が0.5〜50nmの範囲にあれば、高い分離性能が得られることがわかった。
【0015】膜の平均孔径は、以下に述べる方法で測定する。すなわち、膜の透水性(Lp)と水の膜透過速度(Jv)から、次式の関係を使って計算して求める。
Jv=LpΔPLp=(H/L)[Rp2/(8η)]ここで、ΔP :膜間圧力差、H :含水率、L :膜厚、Rp:平均細孔半径、η:水の粘性である。
【0016】また、分離膜の形態は平膜、菅状膜、中空糸膜等のいずれの形状のものでもよく、さらに分離膜モジュールの形態も平板型、スパイラル型、プリーツ型、菅状型、中空糸型等いずれの形態でも本発明に用いることができる。特に膜の自己支持性と機械的・力学的特性、およびモジュールの構成要素が少なく、耐溶剤性の観点から有利な中空糸膜が好ましい形状である。
【0017】分離膜の素材は、有機液体混合物に対して耐久性がある有機高分子であれば特に限定されない。このような高分子素材の例としては、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンスルフォン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等を挙げることができる。
【0018】
【実施例】以下に、より具体的な実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1平均細孔径4.8nm、外径 456μm、内径 315μmのポリアクリロニトリル中空糸膜を約20cmの長さに切り、20本を束ねてガラス製のミニモジュールに挿入し、両端をエポキシ接着剤でポッティングし、試験用膜モジュールを作製した。有効膜面積は 3.8×10-3m2であった。この試験用モジュールを使って、1−デセンとn−デカンを等モル混合した有機液体混合物の分離実験を行なった。有機液体混合物は約55℃に温調して中空糸膜の内側に膜面線速度0.2m/秒の流量で供給した。中空糸膜の外側には窒素ガスを膜面線速度0.9m/秒で流し、液体窒素のコールドトラップで透過蒸気を凝縮回収した。この透過液成分の濃度をガスクロマトグラフィーで測定したところ、1−デセンのモル濃度が61mol%であった。分離係数は 1.5で、気液平衡のレベルを越えた分離が起こった。膜透過速度は0.14kg/(m2・hr) であった。
【0019】実施例2平均細孔径46nm、外径1023μm、内径 731μmのポリフッ化ビニリデン中空糸膜を約20cmの長さに切り、8本を束ねてガラス製のミニモジュールに挿入し、両端をエポキシ接着剤でポッティングし、試験用膜モジュールを作製した。有効膜面積は 3.1×10-3m2であった。この試験用モジュールを使って、1−デセンとn−デカンを30:70のモル比で混合した有機液体混合物の分離実験を行なった。有機液体混合物は約55℃に温調して中空糸膜の内側に膜面線速度0.2m/秒の流量で供給した。中空糸膜の外側には窒素ガスを膜面線速度1.0m/秒で流し、液体窒素のコールドトラップで透過蒸気を凝縮回収した。この透過液成分の濃度をガスクロマトグラフィーで測定したところ、1−デセンのモル濃度が37mol%であった。分離係数は 1.4で、気液平衡のレベルを越えた分離が起こった。膜透過速度は0.29kg/(m2・hr) であった。
【0020】比較例1平均細孔径0.38nm、外径 433μm、内径 308μmのポリアクリロニトリル中空糸膜を約20cmの長さに切り、20本を束ねてガラス製のミニモジュールに挿入し、両端をエポキシ接着剤でポッティングし、試験用膜モジュールを作製した。有効膜面積は 4.8×10-3m2であった。この試験用モジュールを使って、1−デセンとn−デカンを等モル混合した有機液体混合物の分離実験を行なった。有機液体混合物は中空糸膜の内側に膜面線速度0.2m/秒の流量で供給され、中空糸膜の外側に窒素ガスを膜面線速度1.1m/秒で流し、液体窒素のコールドトラップで透過蒸気を凝縮回収した。分離実験を5時間継続したが、透過蒸気をほとんど回収することはできなかった。
【0021】比較例2平均細孔径55nm、外径1286μm、内径 812μmのポリフェニレンスルフォン中空糸膜を約20cmの長さに切り、8本を束ねてガラス製のミニモジュールに挿入し、両端をエポキシ接着剤でポッティングし、試験用膜モジュールを作製した。有効膜面積は 4.3×10-3m2であった。この試験用モジュールを使って、1−デセンとn−デカンを等モル混合した有機液体混合物の分離実験を行なった。有機液体混合物は中空糸膜の内側に膜面線速度0.2m/秒の流量で供給され、中空糸膜の外側に窒素ガスを膜面線速度1.0m/秒で流し、液体窒素のコールドトラップで透過蒸気を凝縮回収した。この透過液成分の濃度をガスクロマトグラフィーで測定したところ、透過液組成に変化はなく、分離は起こらなかった。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の分離膜およびそれを用いた装置および方法によれば、毛管凝縮の効果を利用して高い分離性能と膜透過速度を達成でき、有機液体混合物組成を効率的に変化させることができる。この膜分離技術は、容易に工業的に適用でき、大量の処理量が要求される石油精製プロセスや石油化学工業の分野に極めて有用な技術である。




 

 


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