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発明の名称 硬質膜被覆工具及び硬質膜被覆ロール並びに硬質膜被覆金型
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−315011
公開日 平成10年(1998)12月2日
出願番号 特願平9−125743
出願日 平成9年(1997)5月15日
代理人
発明者 石井 敏夫 / 島 順彦 / 久保田 和幸
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 基体表面にTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を被覆した硬質膜被覆工具において、前記硬質膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が1〜7の範囲にあることを特徴とする硬質膜被覆工具。
【請求項2】 前記硬質膜を形成する結晶粒の横方向の結晶粒径(b)の平均値が0.1〜0.4μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の硬質膜被覆工具。
【請求項3】 基体表面にTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を被覆した硬質膜被覆工具において、前記硬質膜を形成する結晶粒の横方向の結晶粒径(b)の平均値が0.1〜0.4μmの範囲にあることを特徴とする硬質膜被覆工具。
【請求項4】 前記硬質膜被覆工具がエンドミル型切削工具またはスローアウェイ型切削工具であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の硬質膜被覆工具。
【請求項5】 ロール基体表面にTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を被覆した硬質膜被覆ロールにおいて、前記硬質膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が1〜7の範囲にあることを特徴とする硬質膜被覆ロール。
【請求項6】 金型基体表面にTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を被覆した硬質膜被覆金型において、前記硬質膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が1〜7の範囲にあることを特徴とする硬質膜被覆金型。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、切削性及び/または耐磨耗性、耐酸化性が要求される硬質膜被覆工具、硬質膜被覆ロール、硬質膜被覆金型に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より硬質膜被覆工具の耐摩耗性、耐欠損性を改善するために物理蒸着法(以下、PVDと称する。)、ないし化学蒸着法(以下、CVDと称する。)によりTiC、TiN、TiCN、CrN等の周期律表IVa,Va,VIa族の炭化物、窒化物、炭窒化物の硬質膜を被覆した工具が多く用いられている。特にPVD法で作製されたものは成膜温度が500℃前後と低いために成膜された硬質膜と例えば超硬材、サーメット材等からなる基体との反応により生じる欠陥が少なく、基体強度を活かすことができるので最近ではミリング用スローアウェイチップ、エンドミル等に多く用いられている。
【0003】しかしながら、最近では加工速度の高速化や高硬度材の加工が要求されてきており、前記Ti系の炭化物、窒化物、炭窒化物では耐酸化性が劣るため工具表面が高温になる加工条件において硬質膜の劣下が激しく、硬質膜からの粒子の脱落、ヒートクラック、チッピング等が発生して工具寿命が短くなるという問題がある。これに対してTiとAlを主とする代表的な複合窒化物である(Ti,Al)N膜は高温での耐酸化性が前記Ti系の炭化物、窒化物、炭窒化物よりなる硬質膜よりも優れており、工具表面が高温になる高速加工領域でも優れた性能を発揮し、また、ビッカース硬度が2300〜3000と高く耐摩耗性が優れているため加工工具に多用されてきている。
【0004】(Ti,Al)N膜では従来次のような検討が行われている。例えば、特公平4−53642では耐摩耗性を向上させるためTiとAlの複合炭化物固溶体、複合窒化物固溶体、複合炭窒化物固溶体のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上の複層硬質膜を表面に被覆した切削工具が提案され、特公平5−67705では(Al,Ti)(N,C)硬質膜のAl量を増加することにより酸化開始温度を上昇させる提案がなされている。また、特開平1−252304では硬質膜の付着性を高めるために炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタンからなる0.5〜10μmの付着強化層を介してTiとAlの複合炭化物、複合炭窒化物、複合窒化物等からなる硬質被覆層を形成することが提案されている。しかしながら、この提案では(Ti,Al)N膜等の組成や膜構成が検討されているのみであり、(Ti,Al)N膜組織を制御することにより硬質膜被覆工具としての硬度、耐酸化性、切削性等の改善を目的とした検討は何らなされていない。次に、カソードアーク方式のイオンプレーティング方法を用いて形成した硬質膜被覆工具において硬質膜組織と切削特性との関係を検討したものとしては特公平7−74426があり、これにはTiカソード電極を用いてガス圧力:1×10-3〜3×10-1Torr(約0.13Pa〜40Pa)、基体(基板)バイアス電圧:50〜1500Vの成膜条件でTiN膜を膜厚方向に指向した緻密な繊維状組織を有する硬質膜を形成して耐磨耗性を改善することが記載されている。しかしながら特公平7−74426ではTiN膜のみを検討しており、TiとAlの固溶体である(Ti,Al)N膜に関しては検討していない。また、その硬質膜の組織を緻密な繊維状とのみ記載しているだけで硬質膜を構成する結晶粒形態についての具体的記載は全く見られない。
【0005】硬質膜の結晶粒形態と耐久性能との相関については上記硬質膜被覆工具の他、硬質膜被覆ロールや硬質膜被覆金型でもこれまでのところ解明されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のようにTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物からなる硬質膜の結晶粒形態と硬質膜特性との相関が明確でなく、この硬質膜を被覆した工具の特性が製造ロットにより大きく変動するという問題があった。このため、本発明者らはTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜の組織に関して詳細な検討を行い、硬質膜被覆工具の耐酸化性、硬度、切削特性等が前記硬質膜の組織によって大きく変わることを見出した。したがって、本発明の課題は、TiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を被覆した硬質膜被覆工具において切削特性や耐摩耗性に優れた長寿命の硬質膜被覆工具を提供することである。
【0007】次に、基体表面に上記のTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物からなる硬質膜を被覆した硬質膜被覆ロールまたは硬質膜被覆金型においても、上記の硬質膜被覆工具と同様にこの硬質膜の結晶粒形態と硬質膜特性との相関が明確でなく、この硬質膜を被覆したロールまたは金型の製造ロット毎の品質変動が大きいという問題があった。したがって、この問題に対する本発明の課題はTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を被覆した硬質膜被覆ロールまたは硬質膜被覆金型において耐摩耗性、耐酸化性に優れた長寿命の硬質膜被覆ロールまたは硬質膜被覆金型を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発明の硬質膜被覆工具は、基体表面にTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を被覆した硬質膜被覆工具において、前記硬質膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が1〜7の範囲にあることを特徴とする。従来に比して本発明のものが安定に長寿命である理由は明確でないが本発明者らは次のように推定している。TiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物等のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜で形成した硬質膜の優れている点はその硬質膜が酸化を受ける状態において一部が安定な酸化アルミニウムに変化し、この酸化アルミニウム部分によりその硬質膜の内部側への酸化の進行が抑制されることであると一般に考えられている。しかしながら、実際の前記硬質膜は多数の結晶粒からなるため結晶粒界を酸素が拡散し各結晶粒が個別に酸化される。したがって、図3に模式的に示すように硬質膜厚(t)および硬質膜の横方向の結晶粒径(b)が一定の場合は、図3(イ)に示すように硬質膜の結晶粒径の縦横比(a/b)が小さいほど横方向の粒界の面積が増加するので各結晶粒の表面積が増加し結晶粒界から結晶粒内部へ酸素が拡散し易くなり酸化が進むことになる。逆に図3(ロ)のように硬質膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)が大きいほど結晶粒の表面積が小さくなり硬質膜の酸化が抑制される。本発明者の検討によれば、例えば前記硬質膜を破断して観察した面の結晶粒群の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が1未満の場合は1〜7にある場合に比べて前記硬質膜の粒界の面積比率が大きいので前記硬質膜の酸化が進み易くなるとともに結晶粒中に微小なクラック、欠けが発生し易くなり耐酸化性が急激に低下してしまうことがわかった。このことを踏まえて、本発明では耐酸化性を確保するために前記縦/横比(a/b)の平均値が1以上好ましくは1.5以上とする必要があることがわかった。また、この縦/横比(a/b)の平均値が1から7へと大きくなるにつれて前記硬質膜の硬度が徐々に低下し、7を越えると緻密性と硬度とが低下して硬質膜被覆工具として実用に耐え得る耐磨耗性を維持することが困難であることがわかった。
【0009】また、本発明の硬質膜被覆工具では例えば前記硬質膜を破断して観察した面の結晶粒群の横方向の結晶粒径(b)の平均値が0.4μmを越えると硬質膜の結晶粒内に微小なクラックが発生し易くなり、このクラックを通路にして酸素が容易に拡散しクラック部分から硬質膜の酸化が進むとともに欠け易くなるので好ましくない。また、図4の模式図に示すように、結晶粒径の縦方向粒径(a)が一定の硬質膜を一定膜厚(t)だけ形成した場合、横方向の結晶粒径(b)が小さい図4の(ロ)は図4の(イ)に比べて粒界面積が大きくなり粒界を通路にして酸素が容易に拡散するので粒界部分から硬質膜の酸化が進行し耐摩耗性が低下してしまうことになる。特に、結晶粒径(b)が0.1μm未満ではこの耐磨耗性の低下が顕著で好ましくない。また、結晶粒径(b)が0.4μmを越えると結晶粒が粗大になり結晶粒中に微小クラックが入り耐酸化性が低下する欠点が生じる。したがって、本発明の硬質膜被覆工具では硬質膜の横方向の結晶粒径(b)の平均値を0.1〜0.4μmとするのが好ましい。
【0010】また、本発明の硬質膜被覆工具は、前記硬質膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が1〜7の範囲にあるとともに、前記硬質膜の横方向の結晶粒径(b)の平均値が0.1〜0.4μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0011】本発明の硬質膜被覆エンドミル型切削工具では要求されている高硬度被削材用途の厳しい条件をクリアするために、硬質膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値を1.5〜4とすることで高硬度化を達成するとともにこの1.5〜4の範囲で良好な切削特性および長寿命が付与できることを確認した。また、本発明の硬質膜被覆スローアウェイ型切削工具では要求されている高硬度被削材用途の厳しい条件をクリアするために、硬質膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値を3〜6とすることで高硬度・高密着性化を達成するとともにこの3〜6の範囲で良好な切削特性および長寿命が付与できることを確認した。
【0012】また、本発明はロール基体表面にTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を被覆した硬質膜被覆ロールにおいて、前記硬質膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が1〜7の範囲にあることを特徴とする硬質膜被覆ロールである。この構成により、硬質膜被覆ロールとして良好な耐磨耗性が付与されるとともに圧延時のクラック発生等を抑制できる。
【0013】また、本発明は金型基体表面にTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を被覆した硬質膜被覆金型において、前記硬質膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が1〜7の範囲にあることを特徴とする硬質膜被覆金型である。この構成により、硬質膜被覆金型として良好な耐磨耗性を付与できるとともに長期にわたって一定の寸法を有した成形体を安定に製作可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明者等は基体表面にTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を被覆した硬質膜被覆工具、硬質膜被覆ロール、硬質膜被覆金型などで前記硬質膜の結晶形態と硬度、耐酸化性、密着性、切削性、耐磨耗性、寿命等との相関を種々検討した結果、これらの性質が前記硬質膜を形成する結晶粒の粒径の縦/横比(a/b)の平均値および横方向の結晶粒径の平均値(b)に大きく依存することを見出したものである。本発明において、結晶粒の縦方向とは前記硬質膜が成膜されている基体表面に対して実質的に垂直な方向であり、結晶粒の横方向とは基体表面に対して実質的な接線の平行方向をいう。
【0015】硬質膜を被覆した従来のエンドミル型切削工具ではHRC50を越える高硬度の鋼材を切削すると硬質膜の相対的な硬度不足によりその表面が摩耗したり、切削熱により硬質膜被覆工具の切削部分が500〜800℃に達しその部分の硬質膜が酸化して摩耗が進む場合があるが、本発明のエンドミル型切削工具では上記の通り十分に実用に耐え得る硬質膜の耐磨耗性と耐酸化性とを備えることが容易であり、安定して工具寿命を改善できる。また、硬質膜を被覆した従来のスローアウェイ型切削工具では切削熱によりその工具の切削部分が800℃以上に達する場合があり、したがってその硬質膜の耐酸化性が工具寿命を決定する要因となっているが、本発明のスローアウェイ型切削工具では硬質膜が優れた耐酸化性を有しているので工具寿命を安定して延ばすことができる。
【0016】さらに、硬質膜を被覆した圧延用ロール、金型等においても硬質膜の硬度と耐酸化性とが耐久寿命を延ばす上で極めて重要であり、この硬質膜の硬度が低いと表面の摩耗が進み、耐酸化性が劣るとこの圧延用ロールまたは金型の使用時に発生する摩擦熱により被覆した硬質膜の酸化が進行するのでやはり摩耗が進むことになるが、本発明の硬質膜被覆ロールまたは硬質膜被覆金型では上記の通り硬質膜の結晶形態を最適に制御することで良好な耐磨耗性および耐酸化性を付与可能で耐久寿命を改善することができる。
【0017】本発明における硬質膜の被覆方法としてはカソードアーク方式のイオンプレーティング方法以外に既知の成膜方法を適用する事も可能である。例えば、スパッタ法とカソードアーク方式のイオンプレーティング法とを併用した方式等を用いてもよい。
【0018】また、TiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜で構成される本発明の硬質膜は例えば(Ti,Al)N、(Ti,Al)C、(Ti,Al)CN等の単層に限定されるものではなく、基体と硬質膜との密着性を高めるために例えば基体上にTiNやTiC膜をまず成膜し、その上にTiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を形成してもよい。また、TiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜と上記以外の他の化合物(例えばTiC膜等。)の単層膜とを積層した多層膜としてもよい。さらに、本発明では主含有元素であるTiとAlの他に、第三元素X(例えばY,Zr,Mg,Cr,Si,Ta,B,V,Nbのうちのいずれか一種の元素)を加えた例えば(Ti,Al,Si)Nに代表される複合窒化物(Ti,Al,X)N、例えば(Ti,Al,Zr)Cに代表される複合炭化物(Ti,Al,X)C、例えば(Ti,Al,Si)CNに代表される複合炭窒化物(Ti,Al,X)CNのいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜で硬質膜を構成することも有効である。また、本発明の用途は切削工具や圧延ロール、金型に限るものではなく、耐磨耗性が要求されるとともに表面が高温になり高温域での耐酸化性が要求されるものには適用可能であることは明らかである。
【0019】次に本発明を下記実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0020】(実施例1)WCとCoを主成分とする超硬合金製基体表面に、カソードアーク方式のイオンプレーティング装置によりバイアス電圧20〜200V、成膜圧力0.5〜3Pa、基体(基板)温度525℃の成膜条件で厚さ2μmの(Ti,Al)N硬質膜を成膜してエンドミル型の切削工具を作製した。作製したエンドミル型切削工具の切削テストは被削材にHRC60のSKD11材を用い、切削速度20m/分、1刃あたりの送り50μm、切り込み深さ15mm(軸方向)×0.8mm(径方向)の条件により乾式で行い、平均逃げ面磨耗幅が0.1mmになるまでの可能切削距離により切削特性を評価した。次に、このエンドミル型切削工具の(Ti,Al)N膜の縦方向の結晶粒径(a)と横方向の結晶粒径(b)とを、上記切削テストを行ったエンドミル型切削工具と同一条件で成膜した同一形状のエンドミル型切削工具のエンド刃部分の(Ti,Al)N膜において測定した。この結晶粒径(a),(b)の測定は上記(Ti,Al)N膜の破断面を(株)日立製作所製のFEーSEM(Sー800)により倍率20,000倍で膜の横方向長さ23cmの写真に撮り、写真内にある結晶粒子の縦方向粒径(a)、横方向粒径(b)、縦/横結晶粒径比(a/b)とを個別に測定した後、それらの平均値を求めた。また、上記縦/横比(a/b)値の平均値は二捨三入して0.5単位で用いた。
【0021】図1に実施例1の(Ti,Al)N膜における結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値と切削可能距離との関係を示した。図1から、実施例1のエンドミル型切削工具は(Ti,Al)N膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が1〜7のときに切削可能距離が10mを上回り良好な切削特性を有していることがわかる。
【0022】(実施例2)バイアス電圧を60V〜200Vとした以外は実施例1と同様にして作製したエンドミル型切削工具の(Ti、Al)N膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値を実施例1と同様にして測定したところ、その(a/b)の平均値は1.5〜4の範囲に入っていて、この実施例2のエンドミル型切削工具では図1に併記した通りその(a/b)の平均値1.5〜4において切削可能距離が20m以上であり更に良好な切削特性になっていることがわかった。
【0023】(比較例1)比較のため、バイアス電圧を10Vあるいは220Vとした以外は実施例1と同様にして作製したエンドミル型切削工具の(Ti、Al)N膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が0.5および7.5の比較材を作製し、実施例1と同一条件で切削試験を行った。(a/b)の平均値が0.5のときの切削可能距離は7m、また、(a/b)の平均値が7.5のときの切削可能距離は9mとなりいずれも実施例1のものより切削特性が劣ることがわかった。
【0024】(実施例3)実施例1と同様にWCとCoを主成分とする超硬合金製基体表面に、カソードアーク方式のイオンプレーティング装置によりバイアス電圧80〜160V、成膜圧力1〜2Pa、基体(基板)温度450〜600℃の条件で厚さ2μmの(Ti,Al)N膜を成膜し、エンドミル形状の切削工具を作製し、実施例1と同一条件で切削試験を行った。このエンドミル型切削工具において(Ti,Al)N膜の縦/横比(a/b)の平均値と横方向粒径(b)と切削特性とを実施例1と同様にして評価したところ、(a/b)の平均値は1〜5、横方向の結晶粒径(b)の平均値は0.1〜0.4μmであった。図2にこの実施例3のエンドミル型切削工具における横方向の結晶粒径(b)と切削可能距離との関係を示した。図2から、横方向の結晶粒径(b)が0.1〜0.4μmのときに切削可能距離が20m以上となり実施例1、2に比べてさらに良好な切削特性が得られることがわかる。なお、上記成膜条件の範囲外で成膜し、横方向粒径(b)が0.1μm未満および0.4μmを越えるといずれも切削可能距離は20m未満となり切削特性が低下する傾向を示した。
【0025】(実施例4)WCとCoを主成分とする超硬合金製基体表面に、カソードアーク方式のイオンプレーティング装置によりバイアス電圧20〜200V、成膜圧力0.5〜3Pa、基板温度525℃の成膜条件で厚さ2μmの(Ti,Al)N膜を成膜し、スローアウェイチップ型切削工具を作製した。この実施例4のスローアウェイ型切削工具の切削性は、被削材にSKD61材(HRC45のもの)を用いて切削速度100m/分、送り0.1mm/刃、切り込み量2.0mmとしてフライス切削テストを行いその(Ti,Al)N膜に剥離が発生するまでの切削可能距離により評価した。また、実施例1と同様にしてその(Ti,Al)N膜の破断面を構成する結晶粒径の縦横比(a/b)の平均値を求めた。図5にこの(a/b)の平均値と切削可能距離との関係を示した。図5より、この実施例4のスローアウェイ型切削工具における前記縦/横比(a/b)の平均値が1〜7のときにフライス切削可能距離は1m以上であり良好な切削特性になっていることがわかる。
【0026】(実施例5)バイアス電圧を20〜80Vとした以外は実施例4と同様にして厚さ2μmの(Ti,Al)N膜を被覆したスローアウェイ型切削工具を作製した。この実施例5の(Ti,Al)N膜の破断面を構成する結晶粒径の縦横比(a/b)の平均値を上記実施例1と同様にして求めたところ3〜6になっていた。さらに、実施例4と同一条件でフライス切削試験を行った結果を図5に併記した。図5より、(a/b)の平均値が3〜6のときに切削可能距離が2m以上となり実施例4よりも更に良好な切削特性が得られることがわかる。
【0027】(比較例2)比較のため、バイアス電圧を10Vあるいは220Vとした以外は実施例4と同様にして作製したスローアウェイ型切削工具の(Ti、Al)N膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が0.5および7.5の比較材を作製し、実施例4と同一条件でフライス切削試験を行った。(a/b)の平均値が0.5のときのフライス切削可能距離は0.6mであり実施例4、5に比べて切削特性が劣ることがわかった。また、その(a/b)の平均値が7.5のときのフライス切削可能距離は0.9mとなりやはり実施例4、5に比べて切削特性が劣ることがわかった。
【0028】(実施例6)WCとCoを主成分とする超硬合金製ロール基体表面に、カソードアーク方式のイオンプレーティング装置を用いてバイアス電圧60V、成膜圧力0.5Paの条件で厚さ2μmの(Ti,Al)C硬質膜を成膜した硬質膜被覆ロールを作製した。実施例1の(Ti,Al)N膜と同様にして求めたこの(Ti,Al)C膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値は1で、横方向粒径(b)は0.2μmであった。次に、この実施例6の硬質膜被覆ロールと前記超硬合金製ロール基体のままで何も被覆していない従来品とのロール特性を下記条件の圧延テストにより評価した。
被圧延材:SUS304被圧延材寸法:1.0mm厚さ×15.0mm幅×250m長さ圧延温度:900℃圧延速度:150m/分圧下率:30%この実施例6の硬質膜被覆ロールは上記圧延テスト後も圧延部の摩耗が無く良好な肌を示していたが、硬質膜を被覆しない従来品のロールでは圧延部表面に多数のクラックと摩耗とが発生してこの実施例6のものよりロール特性が大きく劣っていることがわかった。
【0029】(実施例7)WCとCoを主成分とする金型用の超硬合金製基体表面に、カソードアーク方式のイオンプレーティング装置を用いてバイアス電圧100V、成膜圧力2.0Paの条件で厚さ2μmの(Ti,Al)CN硬質膜を成膜した硬質膜被覆金型を作製した。実施例1の(Ti,Al)N膜と同様にして求めたこの(Ti,Al)CN膜の結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値は5で、横方向粒径(b)は0.2μmであった。この実施例7の硬質膜被覆金型と前記金型用の超硬合金製基体のままで何も被覆していない従来品とに対して下記条件の成形テストを行い耐久性を評価した。
被成形粉:磁性粉成形圧力:1.5Ton/cm2実施例7の硬質膜被覆金型では上記磁性粉を1,000回成形したあとでも摺動部表面に摩耗傷は見られず金型としての寿命が十分に長いことがわかった。しかし、本発明の硬質膜を被覆しない従来品の金型では50回成形した段階で金型の摺動部表面に摩耗傷が多数生じるとともにその摩耗傷部分に磁性粉が付着し、これ以上表面状態の良好な成形体を得られない状態となった。また、この実施例7の硬質膜被覆金型は上記のような粉末の成形以外の用途:例えば射出成形、ブロー成形、圧縮成形などにおけるプラスチック、ゴム、セラミックス、ボンド磁石等の成形用金型としても有用なものであることが確認されている。
【0030】上記の通り、本発明はエンドミル、スローアウェイ工具、圧延ロール、金型などに極めて有用なものであり、またこれら以外の他の硬質膜被覆部品の用途にも容易に適用可能である。また、硬質膜を被覆する基体は上記超硬合金に限るものではなく例えば公知の超硬合金、サーメット材、高速度鋼に代表される特殊鋼などでも有効である。
【0031】
【発明の効果】上述の通り、本発明によれば、TiとAlを主とする複合窒化物、複合炭化物、複合炭窒化物のいずれか一種の単層硬質膜または二種以上からなる多層硬質膜を被覆した硬質膜被覆工具、硬質膜被覆ロール、硬質膜被覆金型において、前記硬質膜を形成する結晶粒径の縦/横比(a/b)の平均値が1〜7及び/または横方向の結晶粒径(b)の平均値を0.1〜0.4μmの範囲に制御したことにより、長寿命の硬質膜被覆工具、硬質膜被覆ロール、硬質膜被覆金型が実現できる。




 

 


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