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発明の名称 酸化アルミニウム被覆工具およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−156606
公開日 平成10年(1998)6月16日
出願番号 特願平8−334948
出願日 平成8年(1996)11月29日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
発明者 権田 正幸 / 石井 敏夫 / 植田 広志 / 島 順彦
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、酸炭化物、酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜、並びに少なくとも一層のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜が形成されている酸化アルミニウム被覆工具において、前記酸化膜のX線回析最強ピーク面が(110)面であることを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具。
【請求項2】 基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、酸炭化物、酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか1種の単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜、並びに少なくとも一層のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜が形成されている酸化アルミニウム被覆工具において、前記酸化膜のX線回析の(110)面による等価ピーク強度PR(110)が1以上であることを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具。
【請求項3】 前記α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときの酸化膜の平均粒径が2μm以下であり、前記膜厚が2.5μm以上のときの平均粒径が4μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸化アルミニウム被覆工具。
【請求項4】 前記α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の中心線平均面粗さRaが0.6μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
【請求項5】 前記α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときのその酸化膜の最大面粗さRmaxが2μm以下であり、前記膜厚が2.5μm以上のときの最大面粗さRmaxが3μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
【請求項6】 前記各膜間の密着性が高まるように、前記α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の格子縞と結合層の格子縞とが界面において連続していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
【請求項7】 前記α型酸化アルミニウムを主とする前記酸化膜の表面にチタンの窒化膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
【請求項8】 周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の一種以上とFe、Ni、Co、W、Mo、Crの一種以上とよりなる超硬質合金を基体とすることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
【請求項9】 周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のいずれか一種または二種以上からなる非酸化膜層と、前記非酸化膜層の成膜時に用いたガス構成を主として更に0.1〜5vol%の酸化性ガスを加え成膜温度950〜1020℃で成膜した周期律表のIVa、Va、VIa族金属の酸化物、酸炭化物、酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種または二種以上からなる薄層との組み合わせからなる結合層を成膜し、その上にα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜を成膜することを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、切削用及び耐摩耗用の酸化アルミニウム被覆工具とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、被覆工具は超硬質合金、高速度鋼、特殊鋼よりなる基体表面に硬質皮膜を化学蒸着法や、物理蒸着法により成膜することにより作製される。このような被覆工具は皮膜の耐摩耗性と基体の強靭性とを兼ね備えており、広く実用に供されている。特に、高硬度材を高速で切削する場合に、切削工具の刃先温度は1000℃前後まで上がるとともに、被削材との接触による摩耗や断続切削等の機械的衝撃に耐える必要があり、耐摩耗性と強靭性とを兼ね備えた被覆工具が重宝されている。
【0003】硬質皮膜には、耐摩耗性と靭性に優れた周期律表IVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる非酸化膜や耐酸化性に優れた酸化膜が単層あるいは多層膜として用いられる。非酸化膜では例えばTiC、TiN、TiCNが利用され、酸化膜では特にα型酸化アルミニウムやκ型酸化アルミニウム等が利用されている。炭化物、窒化物、炭窒化物等からなる非酸化膜の欠点は酸化され易いことであり、この欠点を補うため、非酸化膜上に耐酸化性に優れた酸化アルミニウム等の酸化膜を形成する多層膜構造を持たせることにより非酸化膜の酸化を防止することが行われている。
【0004】この非酸化膜/酸化膜の多層膜構造の欠点は非酸化膜と酸化膜との間の密着性が低いこと、あるいは高温で機械強度が安定しないことである。前記酸化膜としてκ型酸化アルミニウム膜を用いた場合、このκ型酸化アルミニウムは前記非酸化膜との密着性は比較的良好でありしかも1000〜1020℃と比較的低温で成膜できる長所はあるものの、準安定状態のアルミナであるため高温での使用時にα型酸化アルミニウムに変態するため体積が変化し、膜中にクラックが入り、膜が剥がれるという欠点がある。これに対して、前記酸化膜としてα型酸化アルミニウムを用いた場合、このα型酸化アルミニウムは高温でも安定なアルミナ膜であり高温特性に優れる長所があるものの、非酸化膜の上に直接成膜するためには高温で成膜する必要があり、α型酸化アルミニウムの結晶粒径が大きくなり機械特性が低下する欠点がある。
【0005】このため従来より、前記非酸化膜の表面を酸化させ酸化膜生成の基点を形成した後に酸化アルミニウムを形成することにより1000〜1020℃と比較的低温でα型酸化アルミニウムを得る手法が常用されている。図4はこのような非酸化膜と酸化膜の界面近傍を模式的に示したものであり、基体側に形成された非酸化膜3とα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1との間に結合層2が表記されている。上記のように結合層2は一般に非酸化膜3の表面を酸化させることにより作製され、その厚さは1μm以下と薄い。このため、一見非酸化膜3の上に直接酸化膜1が形成されているように見えるが、本発明では非酸化膜3上に形成された酸化層をその機能と特性を明確にするためその製法に関わらず全て結合層2として表記する。
【0006】上記のように結合層2を非酸化膜3表面の酸化により形成した後成膜したα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1は密着強度が充分ではなく、切削時に酸化膜1がその下地である非酸化膜3から早期に剥がれる事故が発生することがある。このためα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1と基体側に形成された非酸化膜3との間の密着強度を高めるために結合層2の形成方法に種々の工夫がなされてきた。例えば、特開平06−316758号では鋳鉄に対する切削性能を向上させるため、下地にTiCN層(図4の3)を形成した後、酸化ポテンシャルがH2Oの20ppm未満の濃度であるH2キャリアガスを用い、CO2、CO及びAlCl3の順序に反応ガスを順次供給することによりアルミナの核形成を開始させ、核形成時の温度を約1000℃にしてα−アルミナ膜を形成することにより、(012)面からの等価X線強度TC(012)が1.3より大きいアルミナ層を提案している。この場合、TiCN層(図4の3)の表面にまず酸化ポテンシャルがH2Oの20ppm未満の濃度であるH2キャリアガスおよびCO2ガス、COガスを流すことによりTiCN層表面が酸化されることにより結合層(図4中の2)が形成され、その後、更にAlCl3を加えて流すことによりα−アルミナ膜が形成されているものと考えられる。
【0007】また、酸化アルミニウム自体の耐摩耗性および耐欠損性を高めるために、アルミナの成膜時にH2SガスおよびSO2ガスを添加した反応ガスを用いたり(特開平06−31503号)あるいはH2SガスおよびSO2ガスに加えて更に20〜30vol%のCO2を用いることにより(特開平07−108405号)、主ピークである(030)面のX線回折ピーク強度I(030)と(104)面のX線回折ピーク強度I(104)との比がI(030)/I(104)>1、あるいはこれに加えて更に(012)面のX線回折ピーク強度I(012)がI(012)/I(030)>1なる関係にあるα型結晶を主体にした結晶構造の酸化アルミニウムを提案している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は超硬等の基板上にα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜を含む多層膜を形成して作製した切削工具を切削テストし、その破損部を詳細に評価した結果、上記のようにα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1が下地である非酸化膜3との界面の結合層部分(図4中の2)から剥がれたり、酸化膜自体にクラックが入り結晶粒が脱落したりしていることがわかった。本発明が解決しようとする課題はα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1とその下地(基体側の膜)である非酸化膜3との間にあり両膜に直接接触する結合層2の両界面の密着性あるいは結合層2自体の機械強度やα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1自体の機械強度を高めることにより、切削特性等の品質が安定した酸化アルミニウム被覆工具を提供することである。
【0009】一般に、前記結合層2はTiC、TiN、TiCN膜等より成る非酸化膜3の表面をH2OとCO2との混合ガスにより酸化することにより作製しているが次のように品質の良いα型酸化アルミニウムを主とした酸化膜被覆工具を安定して生産することは困難である。即ち、結合層2成膜時に、CO2等による酸化性ガスの濃度が高いと主にTi23(X線パターンはASTM No.10−63参照)やTi35(ASTMNo.11−217)あるいはTiO2(ASTMファイル No.21−1276)が形成され、下地との密着強度が低く、酸化層(結合層)自体がもろく機械強度が低くなる欠点が生じる。一方、CO2等による酸化性ガスの濃度を下げてTi23、Ti35、TiO2が形成されないように非酸下膜3の酸化を行うと下地であるTiC、TiN、TiCN等の非酸化膜3表面の酸化が不十分になり、酸化アルミニウムの成膜温度が1020℃以下ではκ型酸化アルミニウムが形成されα型酸化アルミニウムが安定して形成されず、一方酸化アルミニウムの成膜温度を1030℃以上にするとα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1の粒径が粗大化するとともに、中心線平均面粗さRaや最大面粗さRmaxも荒くなり被覆工具の特性が低下する欠点が生じる。
【0010】また、上記のように下地である非酸化膜3を酸化させて結合層2を作製するのではなく、非酸化膜3の上にTiCO、TiNO、TiCNO等の結合層2を新たに成膜させる方法として次のものが提案されている。特開昭63−195268号ではアルミナ膜の内層として0.5μm厚さのTiCNO膜を図4の結合層2として1100℃や1030℃で成膜し、その後アルミナ膜1をそれぞれ960℃と1000℃で成膜しており、特開平02−30406号では膜厚1μmのTiCO膜やTiCNO膜を図4の結合層2として成膜した後にアルミナ膜1を形成している。また、特開平05−345976号では膜厚0.5μmと3μmで粒径0.2〜1.5μmのTiCNO膜やTiCO膜をTiCl4やCO、H2、N2ガスを用いて結合層2として1000℃で成膜した後、アルミナ膜1を1000℃で成膜している。これら結合層2を別個に成膜する従来例の特徴はそれぞれ結合層2の成膜温度がアルミナ膜の成膜温度よりも高いこと(特開昭63−195268号)、結合層2の膜厚が1μmと厚いこと(特開平02−30406号)、結合層2の成膜時にCOガスを用いていること(特開平05−345976号)である。結合層2の成膜時に、CO2やH2O等の酸化性ガスが多すぎたり成膜温度が高すぎたりすると結合層2中の酸素の含有量が多くなりすぎ上記と同様に下地の非酸化膜3との密着性が低下するとともに、結合層2自体の機械強度が低くなる欠点が現れ、結合層2の膜厚が1μmと厚いと結合層を構成する酸化膜自体の機械強度が低いため結合層内で破断する欠点が現れ、CO2ガスの代わりにCOガスを用いると結合層2中の含有酸素量が不十分になりα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1が安定して形成されなくなる欠点が現れた。上記のように、本発明の課題は下地の非酸化膜3と酸化膜1とを結合する膜厚の薄い結合層2の密着性と機械強度特性とを改善することにより、非酸化膜3との密着性が良いとともに、粒径が小さく機械強度の優れたα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1を持つ、長寿命の酸化アルミニウム被覆工具およびその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記知見に基づき鋭意検討した結果、下地であるTiC、TiN、TiCN等の非酸化膜3とα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1との間に形成する薄い結合層2を改質することで非酸化膜3およびα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1との密着性を改善し、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1の(110)面のX線ピーク強度を強くするとともに、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1の結晶粒径を微細化することにより機械特性が改善されて前記の問題点が解消することを見出し、本発明に想到した。
【0012】すなわち本発明は、基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、酸炭化物、酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜、並びに少なくとも一層のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜が形成されている酸化アルミニウム被覆工具において、前記酸化膜のX線回析最強ピーク面が(110)面であることを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具である。また、基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、酸炭化物、酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜、並びに少なくとも一層のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜が形成されている酸化アルミニウム被覆工具において、前記酸化膜のX線回析の(110)面による等価ピーク強度PR(110)が1以上好ましくは1.5以上であることを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具である。また、前記α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときの酸化膜の平均粒径が2μm以下であり、その膜厚が2.5μm以上のときの平均粒径が4μm以下であることを特徴とするものである。また、前記α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の中心線平均面粗さRaが0.6μm以下好ましくは0.5μm以下であることを特徴とするものであり、また、前記酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときのその酸化膜の最大面粗さRmaxが2μm以下であり、前記膜厚が2.5μm以上のときの最大面粗さRmaxが3μm以下であることを特徴とするものである。また、前記各膜間の密着性が高まるように、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜(図4中の1)の格子縞と、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜と直接接触する結合層(図4中の2)の格子縞とが界面において連続していることを特徴とするものである。ここで、格子縞とは、透過電子顕微鏡(TEM)で結晶を高倍率で観察したときに得られる格子像の縞模様の縞のことを云う。二つ以上の相接する膜(結晶)の格子像を撮影しようとした時、これらの膜の結晶方位が共に透過電子顕微鏡の入射ビームと大略平行な時にのみ両者の結晶の格子像が同時に観察される。α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1の格子縞と結合層2の各格子縞とが界面において連続しているということは即ち両結晶の結晶方位が共に入射ビームに大略平行であり、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1と結合層2の両者がエピタキシャルの関係にあることを示している。両膜の結晶方位が平行でなく片一方の結晶方位のみが透過電子顕微鏡の入射ビームに平行なときは、その結晶のみの格子像が得られ、平行でないもう片一方の結晶の格子像は得られない。また、両結晶の結晶方位が平行であっても両結晶が直接接触しておらず他の物質が介在している場合には、両結晶の格子像は得られるものの間にある介在物により格子縞が途中で中断し両者の格子縞は連続しない。また、本発明はα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の表面にチタンの窒化膜が形成されていることを特徴とするものである。また、本発明は周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の一種以上とFe、Ni、Co、W、Mo、Crの一種以上とよりなる超硬質合金を基体とすることを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具である。
【0013】また、本発明の製造方法は、周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のいずれか一種または二種以上からなる非酸化膜層と、前記非酸化膜層の成膜時に用いたガス構成を主として更に0.1〜5vol%好ましくは0.5〜3vol%の酸化性ガスを加え成膜温度950〜1020℃で成膜した周期律表のIVa、Va、VIa族金属の酸化物、酸炭化物、酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種または二種以上からなる薄層との組み合わせからなる結合層を成膜し、その上にα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜を成膜することを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は本発明品の酸化アルミニウム被覆工具の皮膜部分を試料面にして2θ−θ走査法によりX線回析パターンを測定したときの一例を示したものである。X線源にはCuのKα1(波長λ=1.5405A)を用いた。本発明品は、従来品と同様に基体表面にTiNとTiCNを成膜した後、TiC層を薄く成膜しそのまま連続してTiCの成膜に用いた構成ガスにさらにCO2ガスを追加して反応させてTiCO層を成膜することによりTiC層/TiCO層よりなる結合層を作製した後、その表面上にα型酸化アルミニウムを成膜したものである。図中にはα−Al23のX線ピークのみピーク面を表記し、他の形成化合物によるピーク(例えばTiCN等。)のピーク名は表記していない。図1より、本発明品はα−Al23のX線ピークの(110)面が他のピークに比べ強いピークを示し、(012)ピークや(030)ピークの強度は弱く、(110)のピーク強度を越えないことがわかる。α−Al23の(hkl)面からのX線ピーク強度を定量的に評価するために次式により(hkl)面による等価ピーク強度PR(hkl)とTC(hkl)とを定義した。ここでI(hkl)は(hkl)面による実測時のX線回折強度を表し、I0(hkl)はASTMファイル No.10−173 (Powder Diffraction File Published by JCPDS International Center for Diffraction Data)に記載されているX線回折強度であり、配向が等方的である粉末粒子の(hkl)面からのX線回折強度を表している。TC(hkl)は特開平06ー316758号中の定義と同一であり、PR(hkl)は更に(124)、(030)のピークまで含めて同様の定義を行ったものである。PR(hkl)、TC(hkl)はともに、ASTMのデータに記載された等方粒子のX線ピーク強度に対する、X線回折で実測した皮膜の(hkl)面からのX線回折ピーク強度の相対強度を示しており、PR(hkl)、TC(hkl)の値が大きい程(hkl)面からのX線ピーク強度が他のピーク強度よりも強く、(hkl)方向に測定サンプルが配向していることを示す。
PR(hkl)={I(hkl)/I0(hkl)}/[Σ{I(hkl)/I0(hkl)}/8]但し、(hkl)=(012)、(104)、(110)、(113)、(024)、(116)、(124)、(030)
TC(hkl)={I(hkl)/I0(hkl)}/[Σ{I(hkl)/I0(hkl)}/6]但し、(hkl)=(012)、(104)、(110)、(113)、(024)、(116)
具体的には、図1のPR(110)は5.04であり、図1の(110)のX線ピーク強度が粉末粒子が示す(110)X線ピーク強度よりも5.04倍強いことを示している。なお、2θが20〜80°の範囲内には上記の8ピーク以外に(006)、(202)、(211)、(122)、(018)ピークも存在するがこれらのピーク強度はI0が10以下でありピーク強度Iの少しの変化でI/I0が大きく変動するためPR(hkl)、TC(hkl)の計算には含めなかった。
【0015】本発明品の酸化膜表面の平均結晶粒径は(株)日立製作所製の走査電子顕微鏡(S−2300)の写真により測定し、膜厚が2.5μm未満のときは2μm以下であり、膜厚が2.5μm以上のときは4μm以下であった。また、中心線平均面粗さRaは0.6μm以下であり、また、最大面粗さRmaxは酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときは2μm以下であり、膜厚が2.5μm以上のときは3μm以下であった。
【0016】また、本発明品の一例であるα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜と本酸化膜に直接接触しているTiC/TiCO結合層及びその下のTiCN膜との界面近傍を(株)日立製作所製の透過電子顕微鏡(H−9000UHR)により観測したところ、後述の図3のように膜間の各界面において格子縞が連続していることが確認された。図5にこの格子縞の連続状況を模式的に示す。図5はあくまで以下に述べる原子レベルでの膜の成膜状況を説明するために示すものであり、各界面における格子縞の連続性は、格子縞間にわずかのずれ(不整合性)が許容され、格子縞の連続状況、格子縞間隔、個数等は図5に限定されるものでないことは言うまでもないことである。
【0017】本発明品のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の密着性や機械特性が優れる理由は明確ではないが次のことが考えられる。本発明品のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜は図1のようにX線回析時の(110)面ピーク強度が強く、α型酸化アルミニウムの(110)面が母材と平行方向に強く配向しているものである。本発明の製造方法により作製すると、下地の非酸化膜(図4中の3)や結合層(図4中の2)およびα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜(図4中の1)の間にエピタキシャルの関係が成立し、即ち各膜が界面において連続的に形成(格子縞が連続的に形成)されるため、α型酸化アルミニウムの(110)面が面内に強く配向し、同時に、下地の非酸化膜3や結合層2と酸化膜1との界面に空孔や、大きな欠陥が非常に生じにくく、膜相互の密着性が高くなるものと考えられる。このような意味で、前記格子縞の連続性(エピタキシャルの関係)はすべての界面で成立する必要はなく、透過電子顕微鏡により結合層近傍を5万倍で観察したときに上記格子縞の連続性(エピタキシャルの関係)が認められる領域が存在すれば、本発明による優れた作用効果を獲得することができる。本発明において下地に用いるTiC、TiN、TiCN等の非酸化膜(図4中の3)及び結合層(図4中の2に対応し、例えば、TiC/TiCO、TiN/TiNO、TiCN/TiCNO等。)の両者はfcc結晶構造を持っており、これらの膜がエピタキシャルに成長するとα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜3は(110)方向に配向しやすくなるものと考えられる。また、(110)面による等価X線ピーク強度PR(110)が1以上好ましくは1.5以上であることにより、通常は粉末状にして測定する等方的に配向したα型酸化アルミニウムが示す(110)X線ピーク強度(即ち、ASTMファイルNo.10−173に記載されているX線強度)よりも本発明品の(110)X線ピーク強度が1倍以上好ましくは1.5倍以上であり、(110)面が1倍以上好ましくは1.5倍以上配向していることになり、上記の理由で密着性が優れることがわかる。本発明において、(110)ピーク強度が強いときは(012)ピーク強度や(030)ピーク強度は相対的に弱くなる傾向がみられる。PR(110)の強度が大略1倍以上の時、TC(012)は1.3以下であり、PR(110)の強度が大きくなるとともにTC(012)値は小さくなり、PR(110)=8付近ではTC(012)は約0.1になる。PR(110)が1以上では、(030)ピークと(104)ピークの強度比I(030)/I(104)は0〜9.97と値がばらつき、(012)ピークと(030)ピークの強度比I(012)/I(030)は0.08〜63.06と値がばらつきPR(110)とI(030)/I(104)やI(012)/I(030)との相関は見られなかった。本開発品は(110)ピークが特に強く(030)ピークや(012)ピークは相対的に弱くなっており、(030)ピークや(012)ピークの強度が大きい特開平06−31503号や特開平07−108405号のアルミナ膜とは本質的に異なるものであることがわかる。
【0018】本発明方法で作製すると非酸化膜と結合層およびα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜とがエピタキシャルに成長するため、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜を比較的低温度で密着性高く成膜出来る。したがって、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の平均結晶粒径をこの酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときは2μm以下、前記膜厚が2.5μm以上のときは4μm以下に成膜出来、また、前記酸化膜の中心線平均面粗さRaを0.6μm以下、最大面粗さRmaxを前記酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときは2μm以下でかつその膜厚が2.5μm以上のときは3μm以下にする事が出来る。上記のように、本発明ではα型酸化アルミニウムを主とした酸化膜の粒径と中心線平均面粗さRa、最大面粗さRmaxが小さいため切削加工等の工具として使用したときの摩擦が少なく、膜の磨耗や脱粒が少なくなり、優れた機械特性が得られたものと考えられる。同様の理由で膜表面の中心線平均面粗さRaは0.5μm以下が望ましく、α型酸化アルミニウムを主とした酸化膜の磨耗や脱粒が更に少なくなり工具特性が更に向上する。
【0019】次に、本発明による新規な酸化アルミニウム被覆工具を得る製造方法について解説する。本発明は、周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のいずれか一種または二種以上からなる非酸化膜(図4中の3)を成膜した後、まず周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のいずれか一種または二種以上からなる非酸化層を薄く成膜し、そのまま連続してこの非酸化膜の成膜を構成したガスを主として更に0.1〜3.0vol%の酸化性ガスを加えて成膜温度950〜1020℃で成膜することにより結合層(図4中の2)を成膜した後、その上にα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜(図4中の1)を成膜するものである。このように成膜する事により、まず周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のいずれか一種または二種以上からなる非酸化層(図4中の2−2)を薄く成膜することにより下地である非酸化膜3とのエピタキシャル関係が得やすくなり非酸化膜3と結合層2との間に高い密着性が得られ、更に連続して酸化性ガスを加えて成膜した層(図4中の2−1)によりα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1との間にエピタキシャル関係が得やすくなり結合層2と酸化膜1との間に高い密着性が得られるのが本発明による製造方法の特徴であり、膜剥がれを起こし難く、長寿命の酸化アルミニウム被覆工具を製造することができる。この時、結合層内を連続的に成膜するため途中で追加する酸化性ガス量は全ガス流量の0.1〜5vol%である必要がある。酸化性ガス量が0.1vol%未満では結合層表面の酸素量が少ないため結合層上にκ型酸化アルミニウムが出来やすくなり、安定してα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜が成膜出来ず、5vol%を越えると結合層の酸化が進みすぎTi23、Ti35、TiO2等が多く成膜されるため結合層自体の機械的強度が低下しα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜が結合層内で剥離しやすくなる欠点が生じる。また、成膜温度が950℃未満の時は緻密な結合層を成膜出来ず膜剥がれを生じやすく、1020℃を越える時は結合層の結晶粒が粗くしかも酸化が進みすぎ膜剥がれを生じやすくなる。また、本発明のα型酸化アルミニウムの成膜にはAlCl3やH2、CO2、H2S等のガスを用い酸化膜を成膜でき、毒性や腐食性の高いSO2ガスを用いる必要はなく、またCO2ガス量も通常の流量である20vol%以下で成膜出来るため安定してα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜を成膜することができる。
【0020】本発明のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜は、必ずしも最外層である必要はなく、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の上に更に少なくとも一層のチタン化合物(例えばTiN層等。)を被覆しても良い。
【0021】本発明における被覆方法には既知の成膜方法を適用することが可能である。例えば、通常の化学蒸着法(熱CVD)、プラズマを付加した化学蒸着法(PACVD)等を用いることができる。用途は切削工具に限るものではなく、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜を含む単層あるいは多層の硬質皮膜により被覆された耐摩耗材や金型、溶湯部品等でも良い。酸化膜はα型酸化アルミニウム単相に限るものではなく、α型酸化アルミニウムが主であれば、他の酸化物、例えばα型酸化アルミニウムとκ型酸化アルミニウムとの混合膜やγ型酸化アルミニウム、θ型酸化アルミニウム、δ型酸化アルミニウム、χ型酸化アルミニウム等、他の酸化アルミニウムとの混合膜あるいはα型酸化アルミニウムと酸化ジルコニウム等他の酸化物との混合膜であっても同様の効果が得られる。なお、本発明のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜とは、80vol%以上のα型酸化アルミニウムを含むものをいう。
【0022】次に本発明による被覆工具を実施例によって具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0023】(実施例1)WC72%,TiC8%,(Ta,Nb)C11%,Co9%(%はいずれも重量%を示す。)の組成よりなる切削工具用超硬基板をCVD炉内にセットし、その表面に、化学蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiNを900℃でまず形成し、次に、H2キャリヤーガスとTiCl4ガスとCH3CNガスを原料ガスに用い6μm厚さのTiCN膜を900℃で成膜することにより非酸化膜(図4中の3)を形成した後、950〜1020℃でH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとCH4ガスとをトータル2,200ml/分を5〜30分間流してまず成膜し、そのまま連続して本構成ガスに更に2.2〜110ml/分のCO2ガスを追加して5〜30分間成膜することによりTiC層とTiCO層とが薄く積層されたTiC/TiCO結合層(図4中の2)を作製した。その後、続いてAl金属小片を詰め350℃に保温した小筒中にH2ガスを流量310ml/分とHClガス130ml/分とを流すことにより発生させたAlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2ガス100ml/分とをCVD炉内に流し1010〜1020℃で反応させることにより所定の厚さの酸化アルミニウム膜(図4中の1)を成膜し本発明品を作製した。酸化アルミニウム膜の成膜時にSO2ガスは流さなかった。
【0024】作製した膜のX線回折は理学電気(株)製のX線回折装置(RU−300R)を用いて2θ−θ法により2θが20〜90°の範囲内で測定した。X線源にはKα1線のみを用い、装置に内蔵されたソフトによりKα2線とノイズとを除去して測定した。
【0025】実施例1において、TiC/TiCO結合層まで成膜した後、AlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2ガス100ml/分とを流し1020℃で酸化アルミニウムを成膜したときの代表的な2つのX線回折測定結果を図1、図2に示す。図中にはα−Al23のX線ピークのみピーク面を表記し、他の形成化合物のピーク(例えばTiCN等。)のピーク名は表記していない。図1、2よりα(110)ピークが強く、α(012)やα(104)、α(030)等のピークは小さいことがわかる。図1の場合I(030)/I(104)<1、I(012)/I(030)>1であり、図2の場合I(030)/I(104)>1、I(012)/I(030)>1となっている。同様に測定した実施例1の本発明品のPR(110)とTC(012)およびI(030)/I(104)、I(012)/I(030)の評価結果を表1にまとめる。
【0026】
【表1】

【0027】酸化アルミニウム膜の平均粒径は酸化アルミニウム膜表面を図6(a)に示す通り倍率5000倍でSEM写真に撮り(写真上の倍率は5000×0.8=4000倍)、この図6(a)に対応した図6(b)の模式図に示すように寸法が70mm×85mmのSEM写真上に上から16.5mm,35mm,52.5mmの各位置に横方向に引いた直線と写真の対角線を結んだ直線二本、計五本を引き、各直線内にある結晶粒の数から次式により平均粒径を求めた。
平均粒径(μm)=(直線の総長さ(mm))/(直線内の結晶粒の総数(ケ))×0.25上記図6(a),図6(b)は上記平均粒径の測定の一例を示したもので、直線の総長さは475mm、直線内の結晶粒の総数は85ケであり、平均結晶粒径は1.4μmであった。酸化アルミニウム膜表面の中心線平均面粗さRaはVeeco Instrumens Inc.社製の触診型の表面粗さ計DEKTAK8000を用いて測定長0.25mmで測定し、最大面粗さRmaxはLasertec(株)社製のレーザー顕微鏡1LM11を用いて測定長18μmで測定した。その時の酸化アルミニウム膜厚は表面粗さを測定した試料の破断面を倍率5000倍でSEM写真に撮り測定した。上記測定長18μmでRmaxを測定することにより異物等による測定誤差を抑えアルミナ膜本来のRmaxを測定できた。これらの評価結果を表1にまとめる。
【0028】表1より本発明品はPR(110)が1以上でありTC(012)は1.3以下であること、I(030)/I(104)とI(012)/I(030)とはPR(110)と相関が無くそれぞれ0.154〜4.369と0.082〜11.693と値がばらつき一貫性がないことがわかる。また、PR(110)が大きくなるにつれて粒径/膜厚の比が若干大きくなっていくことがわかる。また、表1より本発明品の平均粒径が酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときは2μm以下であり、膜厚が2.5μm以上のときは4μm以下であること、中心線平均面粗さRaは0.6μm以下であり、最大面粗さRmaxは酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときは2μm以下であり、膜厚が2.5μm以上のときのRmaxは3μm以下であることがわかる。
【0029】(実施例2)上記実施例1の手順で、0.3μm厚さのTiNを900℃で、6μm厚さのTiCN膜を900℃で形成した後、TiC/TiCO結合層を950〜1010℃で成膜した。次いで、AlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2ガス100ml/分およびH2Sガス8ml/分とをCVD炉内に流し1010℃で酸化アルミニウムを成膜し、その後、H2ガス4l/分とTiCl4ガス50ml/分とN2ガス1.3l/分を流し1010℃で窒化チタニウム膜を形成した時の本発明品の代表的な3つのX線回折測定結果を図7、図8、図9に示す。また、この実施例2による本発明品の評価結果を表2にまとめる。
【0030】
【表2】

【0031】図7、8、9よりα(110)ピークが強く、α(012)やα(104)、α(030)等のピークは小さいことがわかる。この相対的に弱いα(012)、α(104)、α(030)ピークに関し、図7の場合I(030)/I(104)<1、I(012)/I(030)>1であり、図8の場合I(030)/I(104)>1、I(012)/I(030)<1であり、図9の場合I(030)/I(104)>1、I(012)/I(030)>1となっていることがわかる。
【0032】表2よりH2Sガスを用いて酸化アルミニウム膜を成膜した本発明品はPR(110)が1以上でありTC(012)は1.3以下であること、I(030)/I(104)とI(012)/I(030)とはPR(110)と相関が無くそれぞれ0.059〜7.580,0.082〜63.060と値がばらつき一貫性がないことがわかる。また、表2より本発明品の平均粒径が酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときは2μm以下であり、かつ膜厚が2.5μm以上のときは4μm以下であること、中心線平均面粗さRaは0.6μm以下であり、最大面粗さRmaxは酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときは2μm以下であり、かつ膜厚が2.5μm以上のときは3μm以下であることがわかる。
【0033】本発明品の表1中のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜(図4中の1に対応。)及び結合層(図4中の2に対応。)と非酸化膜(図4中の3に対応。)近傍の破断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)で観察した写真を図10と図11に示す。図10は倍率2万倍で、図11は5万倍で結合層付近を撮影したものである。図10、図11を始めとする本発明品の破断面のFE−SEM写真より、本発明品は、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜と下地である非酸化膜との間に厚さが100〜500nmで粒径が20〜160nmの結合層が形成されていることがわかる。図12は上記本発明品の結合層近傍の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。図中、非酸化膜であるTiCNの結晶粒(図12中B4,B5はその一部)上に結合層(図12中B6,B7はその一部)が形成されその上にα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜が形成されている。図3は図12のa部、即ち、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜と結合層との界面近傍の格子像写真を示したもので、写真の上方向から順に、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜/結合層の界面、結合層が写っている。図3よりα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜と結合層との界面において格子縞が連続していることがわかる。なお、図3はα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜/結合層の界面がTEM写真面に垂直ではなく斜めに写っているものである。また、図12における結合層と下地の非酸化膜との界面(図12中のb付近)を透過電子顕微鏡(TEM)で同様に観測した結果、結合層と非酸化膜とは互いにエピタキシャルの関係にあり、格子が連続的に成長していることが確認された。図13は本発明品の表2中の試料22について結合層とα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜との界面近傍を観察したものである。図13の上方向が酸化膜の上面方向で、図13の中央部に結合層の格子面が見られ、その両側にα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の格子面が見られる。結合層と図中右側のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の粒子及び結合層と図中左側のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の粒子との両界面において格子縞が連続していることがわかる。なお、図13の左側の界面はα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜/結合層の界面がTEM写真面に比較的垂直に写っているものである。
【0034】次に、実施例1および実施例2の条件で製作した本発明品の切削工具各5個を用いて、鋳物の被削材を以下の条件で1時間連続切削した後にアルミナ膜の剥離状況を倍率200倍の光学顕微鏡により観察し、評価した。
被削材 FC25(HB230)
切削速度 300m/min送り 0.3mm/rev切り込み 2.0mm水溶性切削油使用この切削試験の結果、上記本発明品はいずれも1時間連続切削後もアルミナ膜の剥離が見られず切削工具として優れていること、また、PR(110)が1.5以上の時は1.5時間連続切削後もアルミナ膜の剥離が見られず更に優れていることが判明した。また、上記本発明品の切削工具各5個を以下の条件で断続切削し、1,000回衝撃切削後に刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察し、評価した。
被削材 SCM材切削条件 100 m/min送り 0.3 mm/rev切り込み 2.0 mm切削試験後、上記本発明品はいずれも刃先に欠損不良を発生すること無く使用でき、長寿命であった。また、PR(110)が2以上で、中心線平均面粗さRaが0.5μm以下の時は1,500回衝撃切削後にも刃先に欠損不良を発生すること無く使用でき更に優れていることが判明した。
【0035】(従来例1)結合層の作製方法の差異によるα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の諸特性及び切削特性への影響を明らかにするために、本発明品と同様にWC72%、TiC8%、(Ta、Nb)C11%、Co9%(%はいずれも重量%を示す。)の組成よりなる切削工具用超硬基板の表面に0.3μm厚さのTiN膜と6μm厚さのTiCN膜を形成した後、H2キャリヤーガスとTiCl4ガスとCH4ガスを原料ガスに用い1010℃で5〜30分間反応させTiC膜を成膜した後、TiCl4ガスとCH4ガスとを止め、作製したTiC膜上にH2キャリヤーガスとCO2ガスとを流して1010℃で15分間TiC膜を酸化することにより結合層を作製した。その後、実施例1と同一の条件で1020℃でH2ガス、AlCl3ガスおよびCO2ガスにより所定の厚さの酸化アルミニウム膜を成膜した従来品を作製した。
【0036】上記従来例1において、結合層を作製した後、1020℃でH2ガス、AlCl3ガスおよびCO2ガスにより酸化アルミニウム膜を作製した従来品をX線回析したところ、図14に示されるX線回析パターンが得られた。図14の場合、α−Al23のX線回析ピーク強度は(116)、(104)、(012)、(113)の順に強く、(110)ピークは弱いことがわかる。作製したこの従来例品において、上記実施例と同様に測定したPR(110)、TC(012)、I(030)/I(104)、I(012)/I(030)、結晶の平均粒径、中心線平均面粗さRa、最大面粗さRmaxを表3にまとめる。
【0037】
【表3】

【0038】表3より、この従来例のものはPR(110)が1未満であり、I(030)/I(104)とI(012)/I(030)とは0.122〜1.302と0.268〜3.044と1前後でばらつき、その平均粒径は酸化膜の膜厚が2.5μm未満のときも2μmを越えることがあり、膜厚が2.5μm以上のときは4μmを越えることがあることがわかる。また、中心線平均面粗さRaは膜厚が2.5μm以上の領域で0.6μmを越えており、最大面粗さRmaxも酸化膜の膜厚が2.5μm未満でも2μmを越え、かつ膜厚が2.5μm以上では3μmを越えることがあることがわかる。
【0039】(従来例2)また、従来例1と同様にして結合層を作製した後、1010℃でAlCl3ガス、H2ガス、CO2ガス、H2Sガスとにより所定の厚さの酸化アルミニウム膜を成膜し、その後、H2ガス4l/分とTiCl4ガス50ml/分とN2ガス1.3l/分を流し1010℃で窒化チタニウム膜を形成した従来品の代表的なX線回折結果を図15に示す。図15のα−Al23の場合、X線回析のピーク強度は(012)、(024)、(116)、(030)の順に強く、(110)ピークは弱いことがわかる。この作製した従来例品を、上記実施例と同一条件で測定したPR(110)、TC(012)、I(030)/I(104)、I(012)/I(030)、結晶の平均粒径、中心線平均面粗さRa、最大面粗さRmaxを表4にまとめる。
【0040】
【表4】

【0041】表4より、H2ガス、AlCl3ガス、CO2ガスおよびH2Sガスとを用いて1010℃で酸化アルミニウム膜を成膜した従来例2のものはいずれもPR(110)が1未満であり、I(030)/I(104)、I(012)/I(030)はそれぞれ0.289〜1.547と3.184〜7.836と1を越えていることもあることがわかる。
【0042】上記従来例品の切削工具各5個を用いて上記実施例と同一の連続切削テストを行った結果、従来例品はいずれも10分間連続切削後にアルミナ膜の剥離が見られた。また、上記従来例品の切削工具各5個を上記実施例と同一条件で断続切削し、1,000回衝撃切削後に刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察した結果、いずれにも大きな欠けが発生しており、切削工具として劣っていることが判明した。
【0043】以上より、酸化アルミニウム膜自体の成膜方法は同一であっても結合層の作成方法を変化させることによりその上に成膜される酸化アルミニウム膜の諸特性を制御出来ることがわかる。また、結合層はTiC/TiCOに限るものではなく、TiN/TiNO、TiCN/TiCNOのいずれかまたはこれらを組み合わせた複数層でも上記実施例と同様の作用効果が得られた。また、下地膜はTiCNに限るものではなく、結合層中の非酸化膜(図4中の2ー2、例えばTiC/TiCO結合層中のTiC)と同一物(TiC)でも上記実施例と同様の作用効果が得られた。
【0044】
【発明の効果】上述のように、本発明品によれば、基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、酸炭化物、酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜上に、X線回析の(110)面ピーク強度が強い、すなわち(110)面配向が強いα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜が形成されていることにより膜の密着性が良く、機械特性の優れた長寿命の酸化アルミニウム被覆工具が実現できる。




 

 


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