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発明の名称 多角形断面エンドミル
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−113808
公開日 平成10年(1998)5月6日
出願番号 特願平8−289076
出願日 平成8年(1996)10月11日
代理人
発明者 吉年 成恭 / 岡西 良祐 / 紺谷 康夫
要約 目的
焼き入れ材などの高硬度材の切削、特に高速かつ長時間の仕上げ切削に適当で、かつ製作が容易でエンドミルを提供することを目的とする。

構成
多角形断面エンドミルにおいて、その工具材質を刃部の部分においては超硬質焼結合金であって、その先端に円弧状の底刃をもつように構成し、前記エンドミルの底刃がボール刃で、断面が外周切れ刃部の断面と相似形とすることにより構成する。
特許請求の範囲
【請求項1】 工具本体の外周に複数の切れ刃が形成され、前記切れ刃部の軸直角断面形状が3角形以上の多角形状をなすと共に、各頂点が工具軸線方向に作る稜が仮想円筒に内接する切れ刃を形成する多角形断面エンドミルであり、その工具材質が少なくとも刃部の部分は一体の素材からなる超硬質焼結合金であって、かつ上記切れ刃の先端に円弧状の底刃をもつことを特徴とする多角形断面エンドミル。
【請求項2】 請求項1記載の多角形断面エンドミルにおいて、底刃がボール刃であって、前記ボール刃の断面が外周切れ刃部の断面と相似であることを特徴とする多角形断面エンドミル。
【請求項3】 請求項2記載の多角形断面エンドミルにおいて、ボール刃を構成する多角形の稜の回転方向側に、前記稜に近接して1または2の、断面が略V字状の刃溝を設けたことを特徴とする多角形断面エンドミル。
【請求項4】 請求項1、2または3記載の多角形断面エンドミルにおいて、外周刃の後端側に直径が刃径より小さい逃がし部を連接させ、前記逃がし部の断面が外周切れ刃部の断面と相似であることを特徴とする多角形断面エンドミル。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切れ刃部の軸直角断面が多角形からなるエンドミルに関するもので、特に焼入れ鋼材などの高硬度材を高速で切削する用をなすエンドミルに関する。
【0002】
【従来の技術】フライス盤などの工作機械を用いて、焼入れ鋼材などの高硬度材を切削する用をなすエンドミルとして、例えば特開平3−26413号に示されているエンドミル(以下、従来品1という。)があり、切れ刃部の軸直角断面が多角形であってその各頂点が軸方向に延在する稜を切れ刃として用いるエンドミルが知られている。前記エンドミルは、超硬合金を工具材料とし、6角形のものが示されているが、この場合切れ刃の構成はすくい角がマイナス60°、逃げ角が30°となり、エンドミルには常套の刃溝を有しないという特徴がある。また、CBN、ダイヤ等の硬質焼結体を用いたドリルやエンドミル(以下、従来品2という。)に着目すると、その形状は概ねハイスや超硬合金で用いられた形状を用いており、外周刃、刃溝、底刃等を必須の構成としている。(例として、特公平2−34726号)
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】高硬度材の切削加工に対する期待は多岐の分野で高まりつつあり、一層容易に短時間で切削できることが求められている。しかしながら、従来品1においては工具材料に超硬合金を用いているため、たとえ硬質コーティングを施したとしても被削材硬さとの硬度差は僅少であって、切削条件あるいは工具寿命において満足できない場合がある。従来品2では、製造コストが高く、また加工性が悪いため、加工コストが上昇して、他の対策を講じざるを得ないという問題があった。
【0004】
【本発明の目的】本発明は以上の欠点をなくし、製作が容易で焼き入れ材などの高硬度材の切削特に高速かつ長時間の仕上げ切削に適当なエンドミルを提供するものである。
【0005】
【問題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達成するために、工具本体の外周に複数の切れ刃が形成され、前記切れ刃部の軸直角断面形状が3角形以上の多角形状をなすと共に、各頂点が工具軸線方向に作る稜が仮想円筒に内接する切れ刃を形成する多角形断面エンドミルであり、その工具材質が少なくとも刃部の部分は一体の素材からなる超硬質焼結合金であって、かつ上記切れ刃の先端に円弧状の底刃をもつようにしたものである。ここで、この底刃がボール刃であって、前記ボール刃の断面が外周切れ刃部の断面と相似としたものである。さらに、ボール刃を構成する多角形の稜の回転方向側に、前記稜に近接して1または2の、断面が略V字状の刃溝を設けたものである。また、外周刃の後端側に直径が刃径より小さい逃がし部を連接させ、前記逃がし部の断面が外周切れ刃部の断面と相似であるという特徴を与えたものである。
【0006】
【作用】本発明は工具材料として汎用性の高い超硬合金に比べて、一層硬さが高く、高硬度材切削用途に適当とされるCBNあるいはダイヤモンドなどの超硬質焼結合金を、高硬度材用エンドミルに適用することに鑑みてなされたものである。すなわち、これらの超高硬度材用として超硬質焼結合金はきわめて高い硬さをもつものの比較的もろい性質を示し、特にバインダー量の少ないものほど顕著である。また材料の寸法形状に制限があるうえ、被加工性が悪くて工具形状を自由に得られないため、通常の刃溝をもったエンドミルを形成しにくく、使用上においても断続切削となるエンドミル加工では切削中にチッピングを生じやすいため微小切削用など限られた用途にしか利用できないものであった。しかし、技術の進歩により、超硬質焼結合金の製造範囲が拡大され、かつ工具製造技術の革新もあって、本発明に至ったものである。
【0007】エンドミルには通常底刃が欠かせないが、この部分は先端欠損を防止するためにコーナに丸みを設けたり、曲面切削を行なうためにボール刃とする場合がある。本発明においては、円弧状の底刃においても多角形断面を与えることによって切れ刃強度を確保するとともに、エンドミルの製作を簡便にしたものである。また、ボール刃においては、多角形断面のみであると切り屑を切削した壁面にこすりつける作用をなすため、多角形の稜の回転方向側に近接してV字状の刃溝を設けて、切り屑排除を促進する。同様に、外周切れ刃の後端に逃がしを設ける場合も多角形断面を与えることで外周刃、底刃を同一挙動で工作ができ、極めて都合がよいのである。
【0008】超硬質焼結合金はその高い硬さ故に被加工性が悪くて工具形状を自由に得られない。したがって、極力加工代を小さくした工具形状が望ましい。本発明によれば、多角形断面であるから例えば丸材から製作する際であっても、最も一般的な平砥石による加工ですみ、直径の大きな砥石が使用できて能率がよく、また製作するエンドミルの直径が多種であっても、1種類の砥石で製作できる便宜がある。また、多角形断面の素材から前記エンドミルを製作する場合はほとんど円弧状の底刃を設けるのみで工具を完成させることができる。
【0009】
【実施例】図1、図2は本発明の一実施例である。工具材料はCBN焼結体をシャンクとなる超硬合金に固着したものであって、ボール半径2mm、刃径は4mm、刃長7mm、全長55mm、刃部の断面形状は正6角形としたボールエンドミルである。ここでは、直刃の場合を示しているが、工具本体1の外周部には、軸直角断面が正6角形の各頂点が軸線方向に作る稜2が切れ刃を形成していて、工具本体1の先端にはこれに連続して円弧状にボール刃が形成している。ここでボール刃には多角形稜2から回転方向に近接して2枚のV字状の刃溝5を配置し、切削性を高めてある。この本発明品を同じ寸法の図3に示すコーティング超硬合金製の高硬度材用刃形をもつ2枚刃のボールエンドミルと、硬さHRC62に調質した冷間金型用合金鋼の切削により比較した。ここで切り込みはラジアル方向に0.05mmとし乾式切削を行った。その結果、耐久性において従来品の3倍以上、切削仕上げ面粗さにおいても明かに本発明のエンドミルが優れた成績を示している。すなわち、従来のコーティング超硬合金製の2枚刃ボールエンドミルでは、6mの切削で切れ刃の摩耗が著しくなり、8mでは切削を中止せざるを得なかった。本発明品は従来のエンドミルの2倍以上の高速切削が可能で、同時に送り速度を上げることができ、切削距離が増すこととあわせて加工時間を短くできるという効果を奏するものである。
【0010】ここで多角形の角数および底刃の刃数は被削材の硬さ、工具材質、工具直径を勘案して適宜設計することができる。外周刃は直刃に限ることはなく、図4のようにねじれ角を設けてもよい。ボール刃は実施例では2枚刃をノーズでわずかに切り離す形状としたが、図5に示すように1点に結んでもよく、このときはV字の位置合わせがしやすく、研削が容易に行なえる便宜がある。図6は外周刃の後端に逃し部を一実施例であって、上下方向送りを加えた3次元加工の場合、あるいは外周刃の刃長より長い側平面を切削する場合に食い込みきずを防止して精度のよい加工面を得る効果がある。
【0011】
【発明の効果】以上のように、工具材質が超硬質焼結合金であって、かつ円弧状の底刃としてあるから、高硬度の被削材であってもチッピングを抑制して高速切削が可能であり、かつ工具寿命を長くすることが可能となった。また、円弧状の底刃をボール刃としたものは、V字状の刃溝とあいまって曲面加工における切削性を高め、さらに外周刃の後端に逃し部を設けることで曲面や側平面の加工において良質の仕上げを行なえるようになった。




 

 


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