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発明の名称 表面被覆超硬工具
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−109207
公開日 平成10年(1998)4月28日
出願番号 特願平8−281755
出願日 平成8年(1996)10月3日
代理人
発明者 植田 広志 / 井上 洋明
要約 目的
表面被覆超硬工具の色調に着目し、見栄えのする表面被覆超硬工具を提供することを目的とする。

構成
超硬合金に硬質被覆層を形成してなる表面被覆超硬工具において、最外層はTiとNを必ず含むTi化合物層とし、かつ、その色調を色度a*は0.4〜7、色度b*は37〜47、明度L*は56〜78、とすることにより構成する。
特許請求の範囲
【請求項1】 超硬合金に硬質被覆層を形成してなる表面被覆超硬工具において、被覆層の最外層はTiとNを必ず含むTi化合物層とし、かつ、その色調は(1)色度a*が0.4〜7、(2)色度b*が37〜47、(3)明度L*が56〜78、の範囲にあることを特徴とする表面被覆超硬工具。
【請求項2】 請求項1記載の表面被覆超硬工具において、該最外層の厚さを0.2〜2μmとしたことを特徴とする表面被覆超硬工具。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、旋削用に使用するスローアウェイチップに関し、特に最外層にTiN、TiCN等を被覆したチップに関する。
【0002】
【従来の技術】工具表面に硬質皮膜を形成した表面被覆工具において、最表面の皮膜をTiN、TiCN等の有色の層とし、見栄えの良い黄金色の工具とすることが一般的に行われている。これは単に工具の見栄えを良くするだけでなく、工具刃先の使用・未使用の判別を容易にし、また、例えば特公昭52−5406号に記載されるように工具種類の識別を容易にする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】最外層にTiN層等を設けることの他の利点として、比較的軟質であるために欠損が生じにくい、化学的に安定であるため耐溶着性に優れる、TiCと較べ摩擦係数が小さい、などがある。反面、欠点として比較的軟質のため耐摩耗性に劣る、Al23等と較べ耐酸化性に劣る、などがある。本発明者等は最外層の厚さについて検討したところ、TiN層等を薄く設けても上記利点は十分得られることがわかった。また、上記欠点についてもTiN層等の下の層(以下、TiN下層と云う)として、Al23層、TiCN層等を設けることで十分カバーできることがわかった。
【0004】しかし、最外層のTiN層等を薄く設けるとTiN層等表面にTiN下層の影響が現れやすい。例えばTiN層等表面の粗さが大きくなり、くすんだ色調となる場合があるが、これでは化粧被覆としての価値が半減してしまう。さらに、この色調の変化はTiN下層の状態を反映しているので、工具の性能とも密接に関係していることがわかった。本発明は表面被覆超硬工具の色調を規定することにより見栄えのする外観を有し、しかも安定した高性能を有する表面被覆超硬工具を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】そのため、超硬合金に硬質皮膜を形成してなる表面被覆超硬工具において、最外層はTiとNを必ず含むTi化合物層とし、かつ、その色調、すなわち色度a*(赤方向)が0.4〜7、色度b*(黄方向)が37〜47、明度L*が56〜78、の範囲としたものである。また、TiN又はTiCN層の厚さとしては0.2〜2μmとした。
【0006】
【作用】上記色調を計数化するためJIS Z8729に基づき、様々なスローアウェイチップを測定し、色調と工具性能の関係を調べ、またその色調をより識別性の高い輝くような色とするため成膜のパラメーターや、皮膜の層構造、基体の表面状態等を検討した。
【0007】本発明者等はまず、色調の問題は単に最外層のTiNのみの改善では解決できるものではなく、その理由として、TiN下層の表面状態に影響されTiN層等の色調が変化する点を見いだした。そしてTiN下層を粒度が広い範囲に分布した比較的粗い粒子とすることで明るい色調となり識別性が向上すること、しかも性能が優れた工具となること、がわかった。
【0008】以下に、数値限定した理由を説明する。色度a*(赤方向)を0.4〜7とした理由は、0.4を下回ると(赤方向のマイナス方向は緑色)寒色系となり、7を越えると暖色系が強くなりすぎるため0.4〜7とした。さらに好ましい範囲は2〜5である。色度b*(黄方向)を37〜47とした理由は、37を下回ると(黄色方向のマイナス方向は青色)寒色系となり、47を越えると黄色味が強くなりすぎるため37〜47とした。さらに好ましい範囲は40〜44である。明度L*を56〜78とした理由は、56を下回ると(白方向のマイナス方向は黒色)黒みが強くなり、78を越えると白色が強くなりすぎるため56〜78とした。さらに好ましい範囲は61〜72である。更に、TiN層の厚さを0.2〜2μmとしたのは、0.2μm未満では十分な色調を付与する事が出来ず、2μmを越えると厚みが増すにつれてTiN粒子そのものが成長し粗粒化して明度が劣化するため0.2〜2μmの範囲とした。
【0009】
【実施例】以下、実施例に基づき本願発明を詳細に説明する。
実施例1原料粉末としてWC、Co、TiC、TiCN、TaC等を用意し、JISM20相当の組成となるように所定量を配合後、ボールミルにて湿式混合、乾燥、圧粉成形、焼結、研削加工の各工程を経てCNMG120408型の切削用チップを製作し、基体とした。本発明例1として、基体をCVD装置にセットし、公知の方法で内層としてTiN、中間層としてTiCN、外層としてAl23、最外層としてTiNを0.5μmそれぞれ設けた。このときの成膜パラメーターを調整し、特にAl23層の結晶粒子の粒度を約0.5μmから約6μmと広い範囲に分布した、平均粒度約3μmのAl23とした。このチップを分光測色計で色度・明度を測定した結果、色度a*=3.7、色度b*=42.0、明度L*=67.4であり、やや黄味が強く、非常に明るい黄金色のチップが得られた。比較例2として本発明例1と同様の基体をCVD装置にセットし、公知の方法で内層としてTiN、中間層としてTiCN、外層としてAl23、最外層としてTiNを0.5μmそれぞれ設けた。このときの成膜パラメーターを調整し、特に外層のアルミナの成膜を、その下の層であるTiC膜の(200)面とエピタキシャル成長させ、アルミナ層のアルミナ粒が平均粒径約1.3μmの一様な粒子となるように成膜した場合、そのチップを分光測色計で色度・明度を測定した結果、色度a*=1.7、色度b*=35.7、明度L*=62.4であり、艶があるものの本発明例1より暗い色調のチップが得られた。
【0010】本発明例1および比較例2を用いて旋削による切削試験1、2を行った。切削試験1の諸元は被削材:S53C、切削速度:180m/min、送り:0.4mm/rev、切り込み:2mm、湿式とした。以上の諸元にてチップの逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの切削時間で評価した。結果は本発明例1では130分の切削が可能であったのに対し、比較例2では110分であった。切削試験2の諸元は被削材:FC25、切削速度:300m/mim、送り:0.3mm/rev、切り込み:2mm、湿式とした。切削試験1と同様、逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの時間で評価した。結果は本発明例1では75分の切削が可能であったのに対し、比較例2では30分であった。
【0011】実施例2次にTiN層の厚さの影響を見るため、TiN蒸着時間を変化させ、TiN層の厚さによる色調の変化を測定した。その結果、TiN層の厚さが0.2μm未満では、TiN下層の影響が有り、特に下層に黒色のTiCがある場合には明度L*=47となり、全体に黒ずんだ色調となった。また同様にTiN層の厚さを0.5μmとした場合には、特に下層に黒色のTiCがある場合でも明度L*=62となり、全体に美しい黄金色のチップが得られた。またTiN層の厚さを2μmとした場合には、明度L*=63となり、全体に美しい黄金色のチップが得られた。更にTiN層の厚さを厚くし3μmとした場合には、明度L*=58となり、全体に鈍い黄金色のチップとなった。
【0012】実施例3次に、実施例1と同様な方法で最外層のみをTiCNに変えて成膜した。そのチップを分光測色計で色度・明度を測定した結果、色度a*=7、色度b*=25、明度L*=65.1であり、若干赤みがかった色調のチップが得られた。
【0013】実施例4次に、TiN下層にTiCN膜を一定時間蒸着し、続いてTiNを0.5μm蒸着した。そのチップの色調を測定した。その結果、TiCN層を間に設けることにより、TiN蒸着時のTiN下層の影響が少なくなり色度a*=5.1、色度b*=38.5、明度L*=62.4となり、全体に美しい黄金色のチップが得られた。
【0014】
【発明の効果】本願発明品は、明るい色調を呈しているため使用・未使用のコーナーの識別性が良好であるばかりでなく、工具としての切削性能においても優れた特性を有する。特に、鋳鉄、鋳鋼などの切削において顕著な寿命の向上が見られた。




 

 


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