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発明の名称 複層塗膜の形成方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−314662
公開日 平成10年(1998)12月2日
出願番号 特願平9−148567
出願日 平成9年(1997)5月21日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰
発明者 蛭田 修 / 舘 和幸
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 塗料組成物を被塗物に1回塗装することによって,第1樹脂により大気側に形成される上層と,第2樹脂により被塗物側に形成される下層とよりなる複層構造の塗膜を形成する方法であって,上記塗料組成物は,皮膜を形成することが可能な樹脂よりなる上記第1樹脂と,皮膜を形成することが可能な樹脂よりなる上記第2樹脂とを含有していると共に,上記第1樹脂と上記第2樹脂の表面張力をそれぞれFA ,FB [dyn/cm]とし,被塗物の表面張力をFS [dyn/cm]とした場合に,これらが,|FA −FS |>|FB −FS |の条件を満足するものであり,かつ,上記塗料組成物を上記被塗物に塗布した後,上記塗料組成物の硬化工程を行う前には,上記第1樹脂を大気側に,上記第2樹脂を被塗物側にそれぞれ配向させるために上記塗料組成物を所定温度以上に保持する配向工程を行うことを特徴とする複層塗膜の形成方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【技術分野】本発明は,塗料組成物を1回塗装することによって,被塗物表面上に複層構造の塗膜を形成する方法に関する。
【0002】
【従来技術】塗料には,アクリル樹脂,ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂等,種々の樹脂が使用されている。これらの樹脂は,上塗り用塗料に求められる機能と,下塗り用塗料に求められる機能との両方を兼ね備えていないのが通常である。即ち,例えばアクリル樹脂は,耐化学薬品性等の外部からの攻撃に対する耐性に優れていることから,上塗り塗料用樹脂として幅広く利用されている。しかしその反面,被塗物表面との結合が弱く付着不良が生じやすいという問題がある。一方,例えばエポキシ樹脂は,被塗物表面との結合が強く付着性に優れていることから,下塗り塗料用樹脂として幅広く利用されているが,耐候性に問題がある。
【0003】また,これらの偏った特性を樹脂改質により改善しようとした場合には,本来有していた優れた機能に問題が生じやすくなる。例えば,アクリル樹脂やポリエステル樹脂においては,付着不良の問題を解決するために,被塗物表面との結合が強くなるような樹脂改質を行うと,これによって本来有していた優れた耐水性や耐化学薬品性等に問題が生じやすくなる。
【0004】また,異なった機能を有する複数の樹脂を混合して塗料として用いることも考えられる。しかしこの場合,通常は,それぞれの樹脂が層分離しないため,塗膜内においてほぼ均一に分布し希釈された状態となる。そのため,それぞれの樹脂が有する優れた機能も希釈された状態となり,十分に発揮されない。
【0005】したがって,従来から,上記各機能を備えた樹脂を基本樹脂とした塗料は,混合せずに単独で使用されている。そして,異なった機能を有する樹脂を基本樹脂とした塗料を,順次2種以上塗り重ねることにより,塗装系として実用上満足する性能を得ている。
【0006】例えば,まず被塗物との付着性に優れた樹脂を基本樹脂とした塗料を下塗りし,その上に,耐候性等に優れた樹脂を基本樹脂とした塗料を上塗りしている。この場合,2回以上の塗布工程および乾燥硬化工程等が必要となる。そのため,製造コストが高くなることは避けられない。
【0007】そこで,本発明者らは,本出願以前において,異なった機能を有する2種類の樹脂よりなる混合樹脂塗料を用い,塗膜の深さ方向において2層に分離させた複層構造を形成させることを検討した。その結果,それぞれの樹脂の溶解性パラメータと,各樹脂1分子中に含まれる酸素原子,窒素原子,硫黄原子,及びそれらの原子を含む原子団または基の蒸発エネルギーの総和量をコントロールすることにより,混合樹脂の上下層への好適な分離を促進することを見出した。
【0008】即ち,耐候性に優れたアクリル樹脂等を上層(大気側)に,被塗物表面との付着性に優れたエポキシ樹脂等を下層(被塗物側)に分離することが促進できた。そこで,これらについて先に出願した(特開平7−316439)。ここで,溶解性パラメータとは,樹脂の相溶性および分離を制御する因子のことをいい,通常SP値と呼ばれる。2つの樹脂が相溶するかどうかは,それぞれの樹脂のSP値の差の大小により決まる。
【0009】また,上記原子団(基)の蒸発エネルギーの樹脂1分子当たりの総和量は,被塗物が金属材の場合の被塗物表面と樹脂との親和性を制御する因子のことをいう。上記総和量が高い方の樹脂が,被塗物表面と樹脂との親和性が高く,被塗物側に配向する。
【0010】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記溶解性パラメータと,蒸発エネルギーの総和量をコントロールして複層構造の塗膜を形成する方法においては,次の問題がある。即ち,被塗物が金属材の場合には,それぞれの樹脂の上記の蒸発エネルギーの総和量をコントロールすることにより,複層構造の塗膜が形成可能である。しかし,被塗物が金属材以外,特にプラスチック材の場合には,蒸発エネルギーの総和量をコントロールしても,必ずしも複層塗膜の形成を行うことはできない。
【0011】これは,以下の理由によると考えられる。即ち,上記の複層構造の塗膜形成においては,樹脂と被塗物表面との親和性が大きな影響を及ぼしていると考えられる。そして,被塗物が金属材の場合にはその表面が親水性であるため,上記親和性の尺度として,上記蒸発エネルギーの総和量を用いることができる。
【0012】しかし,金属以外の他の被塗物,特にプラスチックの場合には,その表面が疎水性である。そのため,上記親和性を上記の蒸発エネルギーの総和量で見積もることができない。それ故,プラスチック等の疎水性の被塗物に対しては,上記の蒸発エネルギーの総和量によって複層塗膜の形成を制御することはできない。
【0013】また,上記従来の複層塗膜の形成方法においては,次の問題もある。即ち,複層塗膜の形成が可能な塗料組成物を塗料として用いても,2つの樹脂の2層分離が不十分となる場合がある。この場合には,樹脂の濃度分布が緩やかな傾斜構造を呈した塗膜が形成されてしまう。
【0014】混合された状態で塗布された2つの樹脂を二層に分離するためには,各樹脂をそれぞれの所望の層へ向けて流動させることが必要である。しかしながら,塗料組成物の塗布後から塗料の流動が停止するまでの時間は,通常は約20分間と短い。そのために,2つの樹脂が十分に分離しきらない場合がある。この場合には,各樹脂の優れた機能を十分に発揮することができない。
【0015】この対策として,塗料粘度を低くして樹脂を動きやすくする方法をとることが考えられる。例えば,樹脂の分子量を低くすること,または塗料の固形分を低くすることによって塗料粘度を低くすることができる。しかしながら,この対策方法は,塗膜性能面および塗装性能面からそれぞれ制限されるため,常に,複層構造の塗膜形成を促進できるとは限らない。
【0016】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,1回の塗装工程で複層構造の塗膜を確実に形成し得る方法,特にプラスチック材に対して複層塗膜を確実に形成する方法を提供しようとするものである。
【0017】
【課題の解決手段】本発明は,塗料組成物を被塗物に1回塗装することによって,第1樹脂により大気側に形成される上層と,第2樹脂により被塗物側に形成される下層とよりなる複層塗膜を形成する方法であって,上記塗料組成物は,皮膜を形成することが可能な樹脂よりなる上記第1樹脂と,皮膜を形成することが可能な樹脂よりなる上記第2樹脂とを含有していると共に,上記第1樹脂と上記第2樹脂の表面張力をそれぞれFA ,FB [dyn/cm]とし,被塗物の表面張力をFS [dyn/cm]とした場合に,これらが,|FA −FS |>|FB −FS |の条件を満足するものであり,かつ,上記塗料組成物を上記被塗物に塗布した後,上記塗料組成物の硬化工程を行う前には,上記第1樹脂を大気側に,上記第2樹脂を被塗物側にそれぞれ配向させるために上記塗料組成物を所定温度以上に保持する配向工程を行うことを特徴とする複層塗膜の形成方法にある。
【0018】本発明は,樹脂の表面張力に着眼し,表面張力が異なる2種類の樹脂を有する塗料を被塗物に塗布した後,硬化するまでの間における,樹脂の動き易さを検討した結果生まれたものである。即ち,それぞれの樹脂の表面張力と被塗物表面の表面張力との差を制御した混合樹脂系においては,上記表面張力の差が大きい方の樹脂(第1樹脂)が上層に,上記表面張力の差が小さい方の樹脂(第2樹脂)が下方に分離するという特性を見い出し,本発明に至ったものである。
【0019】上記第1樹脂および第2樹脂は,いずれも皮膜を形成することが可能な樹脂を用いる。即ち,これらの樹脂溶液を塗布し,溶液中の溶媒を常温もしくは加熱によって除去したときに皮膜を形成しうる樹脂を用いる。このような樹脂としては,例えば,アクリル樹脂,アルキド樹脂,アミノアルキド樹脂,エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,塩素化ポリオレフィンなど塗料用に用いられる種々の樹脂がある。
【0020】また,上記第1樹脂と第2樹脂との組み合わせは,それぞれの樹脂が上記条件を満たすものであれば,同じ樹脂でも異なる樹脂でも組み合わせることができる。ただし,上記第1樹脂および第2樹脂は,塗料として溶液状態で均一に混合できることが必要である。また,上記塗料組成物に架橋剤を添加して架橋型塗膜を形成させることもできる。架橋剤を添加する塗料においては,架橋剤と反応するために,樹脂中に官能基を含有させる必要がある。
【0021】また,上記第1樹脂と第2樹脂とは,これらの表面張力をそれぞれFA ,FB[dyn/cm]とし,被塗物の表面張力をFS [dyn/cm]とした場合に,|FA −FS |>|FB −FS |の条件を満足するように選択する。即ち,ある樹脂を第1樹脂として選択した場合には,その第1樹脂と被塗物との表面張力の差の絶対値よりも,その絶対値が小さい樹脂を第2樹脂として選択する。
【0022】なお,第1樹脂と第2樹脂の表面張力は,それぞれの樹脂について,平滑な表面を有する皮膜を形成させ,その表面の接触角を測定することにより得られる。また,固体である被塗物の表面張力は,平滑な被塗物表面の接触角を測定することにより得られる。なお,接触角の測定には既知の表面張力を有する液体を用いる必要がある。
【0023】次に,上記塗料組成物を被塗物に塗装する場合には,塗布工程の後,硬化工程の前に,上記配向工程を行う。この配向工程は,上記塗料組成物を被塗物に塗布した状態において,樹脂が流動可能な状態にある間に,上記第1樹脂を大気側に,上記第2樹脂を被塗物側にそれぞれ配向させるための工程である。具体的には,塗布された塗料組成物を所定温度以上に保持する。
【0024】保持する所定温度としては,30℃以上であることが好ましい。30℃より低い温度の場合には,樹脂の流動を促進することが困難である。また,上記所定温度が高すぎる場合には,ワキ等の塗膜欠陥が発生しやすくなる。そのため,その上限は,50℃以下,より好ましくは40℃以下にした方がよい。また,30℃以上であれば,温度を変動させてもよい。
【0025】また,所定温度での保持時間は1分以上であることが好ましい。1分未満の場合には,十分な配向を行うことができないという問題がある。
【0026】また,塗布した塗料組成物の上記所定温度への昇温は,塗布直後に速やかに行うことが好ましい。具体的には塗布後1分以内に所定温度にすることが好ましい。塗布後1分以上低温に放置した場合には,樹脂の流動を十分に促進させることができず,十分な配向を行うことができないおそれがある。即ち,上記配向工程は,塗料組成物を塗布後1分以内に30℃以上の温度とすることが好ましく,30℃以上であれば温度を変動させてもかまわない。なお,上記配向工程後の硬化工程では,架橋剤の種類に応じて,例えば室温または60℃〜250℃の温度に保持し,塗膜を複層構造のまま硬化させる。
【0027】また,上記第1樹脂および第2樹脂それぞれの分子量については,塗装可能な範囲内であれば特に制限はないが,樹脂の流動性向上による複層構造形成の促進の観点からは,樹脂の分子量が低いほど好ましい。一方,樹脂の分子量を低くすれば,一般的に塗膜の耐候性や耐化学薬品性等が劣ってくる。これらの特性の劣化を防止するためには,樹脂の分子量は,数平均分子量で約2000以上であることが必要である。したがって,上記第1樹脂および第2樹脂それぞれの分子量は,数平均分子量で2000以上であることが好ましい。
【0028】次に,上記第1樹脂と第2樹脂の配合割合としては,第1樹脂/第2樹脂重量比が,固形分換算で5/95〜95/5の範囲であることが好ましい。これにより,それぞれの樹脂の機能を発現させることができる。一方,上記範囲外とした場合には,少ない方の樹脂の機能を十分に発現させることが困難となる。また,上記塗料組成物には,顔料,紫外線吸収剤,光安定剤,表面調整剤等の通常塗料に用いられる添加剤を添加することができる。
【0029】また,上記塗料組成物を塗布する方法については,特に限定はない。また,塗膜厚さについても特に制限はないが,5μm以上が好ましい。これにより,上記塗料組成物の機能を発現させることができる。なお,塗膜の最大厚さについては,塗膜欠陥が発生しない程度であれば特に制限はない。
【0030】次に,本発明の作用につき説明する。本発明の複層塗膜の形成方法においては,上記特定の表面張力特性を有する第1樹脂と第2樹脂を含有する上記塗料組成物を用いる。そのため,被塗物がプラスチック材のように疎水性のものであっても,所望の第1樹脂を大気側の上層に第2樹脂を被塗物側の下層に積極的に配向させることができる。
【0031】即ち,被塗物と上記樹脂との親和性は,被塗物表面の表面張力と上記樹脂の表面張力の差の大小によって決まる。具体的には,被塗物と樹脂の表面張力の差が小さいほど,被塗物と樹脂との親和性は高い。そのため,被塗物が,例えばプラスチック材のようにその表面が疎水性である場合においても,上記第1樹脂及び第2樹脂の上記被塗物との表面張力の差を調整することにより,第1樹脂,第2樹脂のそれぞれと被塗物との親和性を容易に制御することができる。
【0032】それ故,上記被塗物との表面張力差をそれぞれ制御した第1樹脂と第2樹脂を有する塗料組成物は,被塗物に塗布された状態で,上記表面張力の差による親和力の影響によって,第1樹脂は上層へ,第2樹脂は下層へ配向する。これにより,得られる塗膜は,第1樹脂よりなる上層と第2樹脂よりなる下層とよりなる複層構造の塗膜となる。したがって,前述した蒸発エネルギーの総和をもってコントロールした場合に成し得ることができなかったプラスチック材への複層塗膜の形成も,上記表面張力の差を制御することにより,容易に成し得ることができる。
【0033】また,本発明においては,塗料組成物を塗布した後,硬化工程前に上記配向工程を施す。この配向工程においては,塗布された塗料組成物を,樹脂が流動しやすい所定温度以上に保持する。そのため,上記表面張力特性を有するそれぞれの樹脂は,上記親和力の差に従ってスムーズに移動し,上下層への配向が促進される。それ故,各樹脂の配向が十分に行われる前に硬化されてしまうという不具合を防止することができ,確実に複層塗膜を得ることができる。
【0034】このように,本発明の複層塗膜の形成方法においては,被塗物の表面張力に合わせて,塗料組成物に含有する第1樹脂及び第2樹脂の表面張力特性を調整することにより,被塗物が親水性であるか疎水性であるかに関わらず,容易に複層塗膜を形成することができる。そのため,疎水性であるプラスチック材に対しても,付着性に優れると共に耐候性や耐化学薬品性等の実用特性に優れた所望の複層塗膜を,容易に形成することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
実施形態例次に,本発明の実施形態例につき,2つの実施例と2つの比較例を用いて説明する。本例においては,塗料組成物としてアクリル樹脂と塩素化ポリプロピレンを含有する塗料組成物を下記のごとく作製して用いた。また,被塗物としてはポリプロピレン板を用いた。
【0036】そして,後述する実施例,比較例においては,評価の便宜上,被塗物の表面張力値を変化させることにより,各樹脂と被塗物との表面張力差を変更した。なお,「%」とあるのは,特にことわりのない限り,「重量%」を意味する。まず,実施例および比較例において用いる樹脂の種類について述べる。
【0037】(1)アクリル樹脂メタクリル酸イソブチル350g,メタクリル酸2−エチルヘキシル200g,およびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル195gを用いて,常法のラジカル重合により,耐候性に優れるアクリル樹脂を製造した。これを樹脂Aとする。樹脂Aの表面張力は36.7[dyn/cm]であった。
【0038】(2)塩素化ポリプロピレン被塗物としてのポリプロピレン材との付着性に優れる,日本製紙(株)製のスーパークロン842LM(塩素化率22.5%)を用いた。これを樹脂Bとする。樹脂Bの表面張力は32.3[dyn/cm]であった。
【0039】次に,樹脂Aと樹脂Bを固形分比で9:1の割合で配合し,さらに,硬化剤としてビューレット変性ヘキサメチレンジイソシアネートを当量比OH/NCOが1/1になるように添加した。その後,トルエンを用いてフォードカップNo.4において20秒(20℃)となるように粘度調節を行い,実施例および比較例に用いる塗料組成物を得た。
【0040】実施例1本例は,被塗物として,表面張力が30.1[dyn/cm]であるポリプロピレン板を用いた。したがって,塗料組成物における各樹脂と被塗物との表面張力の差の絶対値は,後述の表1に示すごとく,樹脂Aの方が大きい。また,被塗物への塗装工程は,乾燥膜厚が20〜25μmとなるようにスプレー塗装後,温度40℃で10分間放置する配向工程を施し,その後80℃で30分間乾燥することにより行った。
【0041】実施例2本例は,上記実施例1におけるスプレー塗装後の配向工程の温度を,30℃に変更した。それ以外は実施例1と同様にした。
【0042】比較例1本比較例は,実施例1の被塗物に代えて,表面張力が35.4[dyn/cm]であるポリプロピレン板を用いた。したがって,塗料組成物における各樹脂と被塗物との表面張力の差の絶対値は,後述の表1に示すごとく,樹脂Bの方が大きい。また,被塗物への塗装工程は,実施例1と同様に行った。
【0043】比較例2本比較例は,実施例1におけるスプレー塗装後の配向工程を実施せず,室温20℃に10分間放置した。それ以外は実施例1と同様にした。
【0044】次に,上記実施例及び比較例において得られた各塗装板について,塗膜内に複層構造が形成されているか否かを測定した。具体的には,塗膜断面における塩素化ポリプロピレン(樹脂B)の分布について,電子線ブローブ微小分析(EPMA)を用い,塩素元素の塗膜深さ方向の線分析を行った。
【0045】なお,EPMAの分析視野は,塗膜がプラスチックなどの有機材料の場合,最小でも半径2μmと大きい。そのため,塩素が被塗物表面側および大気側に配向していたとしても,被塗物と塗膜の界面,および塗膜と大気の界面では,実際の濃度の半分しか検出されない。したがって,以下に示す測定結果の図1,図2では,それぞれの界面での塩素化ポリプロピレン濃度は,実際の濃度の半分になっている。そのため,図1,図2においては,測定結果を実線E1,C2により示すと共に,参考のため,実際の濃度の測定値を点線E2,C2によりそれぞれ示した。
【0046】実施例1の塗装板における,塗膜断面での塩素化ポリプロピレン(樹脂B)の分布を図1に示す。図1は,横軸に被塗物表面からの距離を,縦軸に樹脂Bの濃度をとり,測定結果を曲線E1により示したものである。同図より知られるごとく,実施例1では,ポリプロピレン材との付着性に優れる樹脂Bが下層(被塗物側)に配向し,耐候性に優れる樹脂Aが上層(大気側)に配向し,それぞれの樹脂の機能が発揮され得る複層構造の塗膜が形成されていた。なお,実施例2についても,実施例1と同様の複層構造の塗膜が得られていた(図示略)。
【0047】次に,比較例1の塗装板における,塗膜断面での塩素化ポリプロピレン(樹脂B)の分布を図2に示す。図2は,図1と同様に,樹脂Bの濃度測定結果を曲線C1により示したものである。同図より知られるごとく,比較例1では,上記実施例1の場合と逆の樹脂分布となり,樹脂Bが上層,樹脂Aが下層に配向された状態となっていた。
【0048】次に,比較例2の塗装板においては,塗膜断面での塩素化ポリプロピレン(樹脂B)の分布が上層から下層まで変化の少ない滑らかな分布となった(図示略)。このことは,比較例2においては,樹脂Aと樹脂Bとが略均一に混じり合って分布していることを示している。これらの塗膜構造の測定結果を,その他の条件と共にまとめて表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】表1より知られるごとく,樹脂Aと被塗物表面の表面張力の絶対値差|FA −FS |が,樹脂Bと被塗物表面の表面張力の絶対値差|FB −FS |よりも大きい場合(実施例1,2)の場合には,スプレー塗装後に30℃以上の配向工程を施すことにより,確実に樹脂Aを上層,樹脂Bを下層に配向させることができる。
【0051】これに対し,比較例1のように,上記|FA −FS |と上記|FB −FS |の大きさが逆転した場合には,樹脂Aと樹脂Bの配向方向が逆となってしまう。また,比較例2のように,上記|FA −FS |と上記|FB −FS |の大きさを正常に調整してあっても,上記配向工程の温度を20℃に保持した場合には,樹脂Aと樹脂Bとが上下に分離して配向することなく,塗布した状態の均一構造のまま硬化してしまう。
【0052】以上の結果から,塗料組成物に含有する2種類の樹脂の被塗物との表面張力を調整し,かつ,塗装工程において上記配向工程を設けることにより,プラスチック材(ポリプロピレン板)に対しても所望の複層塗膜を形成することができることがわかる。
【0053】
【発明の効果】上述のごとく,本発明によれば,1回の塗装工程で複層構造の塗膜を確実に形成し得る方法,特にプラスチック材に対して複層塗膜を確実に形成する方法を提供することができる。




 

 


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