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発明の名称 多孔質分離膜及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−249175
公開日 平成10年(1998)9月22日
出願番号 特願平9−57542
出願日 平成9年(1997)3月12日
代理人
発明者 積 洋二 / 大嶋 仁英
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】シリコンアルコキシドと、フェニル基を有するシリコンアルコキシドとの混合アルコキシドを加水分解して得た前駆体ゾルの焼成体から成り、該焼成体がシリコン(Si)の側鎖にフェニル基が結合したシロキサン結合を有することを特徴とする多孔質分離膜。
【請求項2】シリコンアルコキシドと、Si原子に直接結合した1乃至2個のフェニル基を有するシリコンアルコキシドをアルコール溶媒中で混合し、得られた混合アルコキシドを加水分解し、一般式が【化1】

で表される前駆体ゾルを作製した後、該前駆体ゾルを無機多孔質支持体に塗布して乾燥し、次いで酸化性雰囲気中、300〜600℃の温度で焼成することを特徴とする多孔質分離膜の製造方法。
【請求項3】前記シリコンアルコキシドと、フェニル基を有するシリコンアルコキシドとの混合割合が、モル比で90対10から30対70の範囲内であることを特徴とする請求項2記載の多孔質分離膜の製造方法。
【請求項4】前記無機多孔質支持体が、γ−アルミナ膜を被覆した多孔質のα−アルミナ支持体であることを特徴とする請求項2記載の多孔質分離膜の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種気体混合物あるいは液体混合物等の混合流体から特定成分を分離するに際して透過率及び選択率の両方の特性に優れ、薄膜化が容易で高い膜強度を有する多孔質分離膜及びその製造方法に関するもので、とりわけ大気中や各種燃焼排気ガスあるいは反応ガス中から酸素(O2 )や二酸化炭素(CO2 )を分離する、特に高温の二酸化炭素(CO2 )を優先的に分離する耐熱性に優れた気体用分離膜に好適なシリカ質の多孔質分離膜及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、各種気体混合物あるいは液体混合物等の混合流体から特定成分を濾過分離する薄膜や、触媒等の機能性材料用担体、更には電解隔壁、各種充填材等には有機材料をはじめとする各種材料から成る多孔質体が用いられてきた。
【0003】しかしながら、前記多孔質体に対する耐熱性や耐薬品性、耐衝撃性、耐摩耗性等の耐久性の要求が更に高くなるにつれ、機械的及び熱的、化学的安定性により優れた各種無機多孔質体が特に注目されるようになり種々検討されている。
【0004】その結果、前記無機多孔質体を各種用途に適用した場合、その性能は無機多孔質体を形成するのに用いた材料自体が有する細孔径や細孔容積、細孔径分布、特定の物質との親和性、反応性等の特性に大きく影響されることが明らかとなってきた。
【0005】そこで前記無機多孔質体の要求性能を実現する方法として、例えばシリカ膜はゾルゲル法や、CVD法、水熱合成法等の各種製造方法が採用できるが、なかでも金属アルコキシドを原料とするゾルゲル法は高価な製造装置を必要とせず、比較的容易に無機多孔質体を製造できることから多くの研究がなされている。
【0006】しかしながら、前記無機多孔質体は、例えば多孔質膜を用いた気体分離の分野では安全かつ簡便なことからその適用範囲が拡がり、特定のガス成分の分離濃縮技術は各種燃焼機関をはじめ、食品工業や医療用機器、更には廃棄物処理等の分野で注目されているが、特定のガス成分の分離を目的に、無機多孔質体の細孔径を制御するだけでは安定した大きな分離効率は得られず、前記産業分野の諸要求を完全には満足していない。
【0007】かかる諸要求を満足するために、例えば多孔質ガラス表面に特定のシランカップリング剤を反応させたり、あるいは更にアミノ化合物等の塩基性化合物を反応させた、透過速度が速く、高い選択性を有する多孔質気体分離膜や、芳香族環上の水素の一部が特定のポリオルガノシロキサン鎖で置換された構造を有するポリスルホン系グラフト共重合体より成り、とりわけ酸素(O2 )及び二酸化炭素(CO2 )の透過分離性に優れ、また水と有機物との混合流体から有機物を効果的に分離できる分離膜等、有機無機複合膜が提案されている(特開平1−90015号公報、特公平6−92483号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記分離膜はいずれも室温から数十℃の比較的低温で反応させて有機官能基を含有する有機無機複合膜を形成したものであるため、前記反応温度以下の比較的低温度域での混合流体から特定成分を分離するには優れた特性を発揮するものの、例えば各種燃焼排気ガスあるいは反応ガス等、300℃にも及ぶ環境からの高温の二酸化炭素(CO2 )の分離回収等では、シリコン−アルキル基結合が酸化されてシロキサン結合の再配列が起こる等、高温により微細孔構造が変質してしまう結果、安定したガス分離特性が得られなくなるという課題があった。
【0009】
【発明の目的】本発明は前記課題に鑑み成されたもので、その目的は、各種気体混合物あるいは液体混合物等の混合流体から特定成分を分離するに際して、透過率及び選択率の両方の特性に優れ、薄膜化が容易で高い膜強度を有し、とりわけ大気中や各種燃焼排気ガスあるいは反応ガス中から酸素(O2 )や二酸化炭素(CO2 )を分離する、特に高温の二酸化炭素(CO2 )を優先的に分離する耐熱性に優れた気体用分離膜に好適なシリカ質の多孔質分離膜及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、シリコンアルコキシドと、フェニル基を有するシリコンアルコキシドとの混合アルコキシドを加水分解して作製した一般式が【0011】
【化1】

【0012】で表される前駆体ゾルを、一定条件で焼成し、Siの側鎖にフェニル基が結合したシロキサン結合を有する焼成体とすることにより、従来よりはるかに耐熱性が向上し、かつ分離膜としての諸特性が上回ることを見いだした。
【0013】即ち、本発明の多孔質分離膜は、シリコン(Si)の側鎖にフェニル基が結合したシロキサン結合を有する、シリコンアルコキシドとフェニル基を有するシリコンアルコキシドとの混合アルコキシドから成る一般式が【0014】
【化1】

【0015】で表される前駆体ゾルの焼成体であることを特徴とするものである。
【0016】また、その製造方法は、アルコール溶媒中でシリコンアルコキシドと、Si原子に直接結合した1乃至2個のフェニル基を有するシリコンアルコキシドを混合して混合アルコキシドを作製し、得られた混合アルコキシドを加水分解して前記前駆体ゾルとし、それを無機多孔質体に塗布後、酸化性雰囲気中で乾燥し、300〜600℃の温度で焼成することを特徴とするものである。
【0017】特に、前記シリコンアルコキシドと、フェニル基を有するシリコンアルコキシドとの混合割合は、モル比で80対20から30対70の範囲内であることがより望ましく、また前記無機多孔質支持体も、γ−アルミナ膜を被覆した多孔質のα−アルミナ支持体であることがより望ましいものである。
【0018】
【作用】本発明の多孔質分離膜及びその製造方法によれば、シリコンアルコキシドと、フェニル基を有するシリコンアルコキシドとの混合アルコキシドを加水分解した前駆体ゾルの焼成体で、該焼成体はフェニル基が均一に分散したシロキサン結合を有するものであること、即ち、多孔質分離膜の形成時に600℃までの高温で熱処理してもフェニル基が膜中に残存することから、それ故に大気中または各種燃焼排気ガスや反応ガス中から、300℃にも及ぶ高温の二酸化炭素を優先的に分離できるとともに、耐熱性の高い分離膜となる。
【0019】また、300〜600℃での熱処理により、アルコキシル基はほとんど焼失するがフェニル基はその大部分が残存するため、特に、フェニル基は電子供与性の強い有機官能基のために極性分子のCO2 と親和性があり、それ故に細孔壁にフェニル基を有する多孔質分離膜は、表面拡散機構により優先的に高いCO2 ガス透過性を示す。
【0020】また、前記多孔質分離膜の製造方法で得られる前駆体ゾルは、一般式として【0021】
【化1】

【0022】で表される構造となることから、フェニル基を有するシリコンアルコキシドのみで作製される前駆体ゾルに比べ、結合手の多いシリコンアルコキシドが含まれる分だけ膜強度の強いゲル膜を与えることができる。
【0023】更に、多孔質のα−アルミナ支持体表面に表面粗さの小さなγ−アルミナ膜を被覆し、その上に前記前駆体ゾルを塗布することにより、厚さが極めて薄い膜を得ることができ、高いガス透過率を示す分離膜とすることが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の多孔質分離膜及びその製造方法について詳述する。
【0025】本発明は、シリコンアルコキシドと、Si原子に直接結合した1乃至2個のフェニル基を有するシリコンアルコキシドをアルコール等の有機溶媒中で混合し、この混合アルコキシドを室温で加水分解することにより均質で安定な前駆体ゾルが得られ、該ゾルを乾燥後、300〜600℃の温度で焼成することにより、Siの側鎖にフェニル基が均一に分散され結合したシロキサン結合を有するシリカ質の多孔質分離膜が得られるというものである。
【0026】本発明における多孔質分離膜は、前記焼成過程でシロキサン結合が過度に進むことを前駆体ゾル中に分散させたフェニル基の立体障害により阻止して細孔構造を形成したものである。
【0027】従って、連続した細孔の網目構造を形成するためにはフェニル基が十分に分散しており、かつ分離膜としての稼働する際の各種条件下で構造変化が起こらない様に、細孔近傍部以外は十分にシロキサン結合が発達して焼結した構造となっていることが望ましく、そのためには多孔質分離膜中に残留するフェニル基の量は、原料のフェニル基を有するシリコンアルコキシドの全フェニル基の70%以上であることがより望ましいものである。
【0028】また、本発明においてシリコンアルコキシドと、フェニル基を有するシリコンアルコキシドの混合アルコキシドは、両アルコキシドをアルコール溶液中で加熱還流することにより作製できる。
【0029】更に、フェニル基をゲル中に十分に分散させるためには、反応性の低いシリコンアルコキシドを予め部分加水分解した後、フェニル基を有するシリコンアルコキシドを添加して複合ゾルを作製し、続いて全体を加水分解して混合アルコキシドとしても良い。
【0030】前記シリコンアルコキシドとフェニル基を有するシリコンアルコキシドとの混合割合は特に限定されるものではなく、両アルコキシドが併存すれば良いが、多孔質分離膜の分離特性と成膜性の点からは、モル比で80対20から30対70の範囲内であることがより好適である。
【0031】前記混合アルコキシドに用いるSi原子に直接結合したフェニル基を有するシリコンアルコキシドは、Si原子が飽和炭化水素のCやO、N原子等と結合した化合物に比べ、600℃の熱処理でもフェニル基が焼失し難く焼成体中に残存するため、例えば、大気中又は各種燃焼排気ガスや反応ガス中から、300℃にも及ぶ高温の二酸化炭素(CO2 )等を優先的に分離できる耐熱性の高い分離膜を作製する上で欠くことができないものである。
【0032】また、前記フェニル基を有するシリコンアルコキシドにおいて、Si原子に直接結合する前記フェニル基の数は、多孔質分離膜の成膜性の点からフェニル基以外のアルコキシル基が少なくとも2個以上必要であることから、その数は1乃至2個に限定される。
【0033】一方、前記フェニル基を有するシリコンアルコキシドに含有されるフェニル基の量が全アルコキシドの10〜50%の範囲では、該含有量が多いほど透過係数比は大きくなるが、含有量が50%を越えると、フェニル基を有するアルコキシドの割合が多くなることにより、成膜性が低下して膜内に微小な欠陥が生じるためと考えられるが、透過係数比は逆に小さくなる傾向を示す。
【0034】更に、本発明におけるシリコンアルコキシドとしては、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラノルマルブトキシシラン等が挙げられ、他方のフェニル基を有するシリコンアルコキシドとしては、フェニルトリメトキシシランやフェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0035】特に、ゲル膜の乾燥性及び原料の経済性の点からは、シリコンアルコキシドはテトラエトキシシランが、フェニル基を有するシリコンアルコキシドはフェニルトリエトキシシランが望ましい。
【0036】また両アルコキシドの混合溶媒のアルコールとしては、メタノールやエタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等が挙げられ、ゲル膜の濡れ性、乾燥性、原料の溶解性並びに人体への安全性の点からは、エタノールが最適である。
【0037】次に、前記混合アルコキシドの加水分解方法は、特に限定されることなく公知あるいは周知の手段を用いることができるが、添加する水の量は全アルコキシドに対し、1〜10倍モルの範囲が望ましい。
【0038】これは、加水分解用の水の量が1倍モルより少ないと成膜後の焼成で十分にシロキサン結合が発達せず、機械的強度が低い膜となる傾向があり、条件によっては割れ等の欠陥が発生する恐れがあり、逆に前記水の量が10倍モルを越えると、得られた前駆体ゾルの安定性が低下する傾向がある。
【0039】また、この加水分解は、両アルコキシドを混合した後、同時に行っても良く、他に、シリコンアルコキシドのみを先に部分的に加水分解し、その後、フェニル基を有するシリコンアルコキシドを混合した後、全体を加水分解しても良い。
【0040】次に、無機多孔質支持体に多孔質分離膜を形成する方法としては、特に限定されることなく公知あるいは周知の各種手段を適用できるが、例えば前記前駆体ゾルを、加水分解時に用いた溶媒で所定の濃度に希釈した後、該希釈液中に予めγ−アルミナ膜を被覆した多孔質α−アルミナ支持体を浸漬して引き上げて塗布するか、あるいは前記支持体に直接塗布した後、乾燥し、次いで酸化性雰囲気中、300〜600℃の温度で焼成することで作製しても良い。
【0041】本発明の多孔質分離膜は、要求される透過率及び選択率を満足し、実用的な強度と耐熱性を有するためには、膜の厚さは0.5μm以下、特に0.1〜0.3μm程度が望ましく、無機多孔質支持体とともに用いることが望ましい。
【0042】一方、前記無機多孔質支持体としては、特に限定されるものではないが、分離膜を支持するに十分な強度を有し、焼成においても前駆体ゾルと反応せず、少なくとも膜の焼成温度範囲で十分な耐熱性を有する多孔質体であればいかなるものでも良い。
【0043】例えば、セラミックスやガラス、金属等が挙げられ、とりわけα−アルミナ等の多孔質セラミックスは耐熱性、耐薬品性等の点で好ましいものであるが、多孔質α−アルミナ自体を支持体として用いた場合、その大きな孔径と表面粗さ故に割れ等の欠陥のない膜を作製するには数μmの膜厚が必要となり、透過率の著しい低下を招くことになる。
【0044】従って、孔径と表面粗さを制御したγ−アルミナ膜を中間層としてα−アルミナ多孔質体に担持した支持体を採用するのが最適である。
【0045】また、前駆体ゾルを塗布した後の焼成温度は、300℃未満の温度では乾燥ゲル膜中のアルコキシル基を完全に除去し、シロキサン結合をより強固にすることができず、600℃を越える温度では焼結が進み、分離に必要な細孔が消失することから、300〜600℃の温度範囲に限定され、とりわけ分離特性の点ではその温度は400〜500℃がより好ましい。
【0046】また、膜の欠陥を防ぐため、前駆体ゾルの塗布と焼成の操作を数回繰り返しても良い。
【0047】本発明の多孔質分離膜は、分離、濃縮する対象となる混合流体が気体の場合には、例えば酸素や二酸化炭素は勿論、水素やヘリウム、窒素、一酸化炭素、メタン、エタン、プロパン等の混合物が、前記混合流体が液体の場合には、分離膜と反応あるいは溶解しないものであればいずれも適用可能であり、例えば水や各種有機液体が挙げられ、更にはそれらと汚泥等の無機物質を含む混合物等の分離にも適用可能なことは言うまでもない。
【0048】その上、本発明の多孔質分離膜は、300℃を越える広い範囲の温度域で使用可能であるが、分離膜の耐熱性や耐久性の点から室温〜400℃の温度範囲が好適に用い得るものである。
【0049】
【実施例】以下、本発明の多孔質分離膜及びその製造方法を以下のようにして評価した。先ず、200mlフラスコにテトラエトキシシランを18.7g(モル比0.9)及びフェニルトリエトキシシランを2.4g(モル比0.1)と、32.2gのエタノールを乾燥したグローブボックス内で攪拌して混合アルコキシドを作製した。
【0050】次に、前記混合アルコキシドをグローブボックスから取り出して室温で撹袢しながら、HCl(モル比0.05)を含む水7.2g(モル比4)とエタノール4.6gの混合溶液をゆっくり滴下して加水分解し、更に3時間攪拌した後、該溶液にエタノールを加え、濃度を0.5mol/kgに調整して前駆体ゾルを作製した。
【0051】その後、濃度を0.5mol/kgに調整した前駆体ゾル溶液に、予め、外径3mm、長さ250mmのα−アルミナ多孔質管(気孔率40%)の両端外周面をそれぞれ110mmづつガラス被覆し、中心部30mmには厚さ2μmのγ−アルミナを被覆した無機多孔質支持体を、30秒間浸漬し、5mm/秒の速度で引き上げ、室温で1時間乾燥した。
【0052】続いて50℃/時間の割合で500℃まで昇温し、1時間保持した後、室温まで冷却する操作を5回繰り返し、γ−アルミナ層上にシリカ質の膜を被着して評価用試料を作製した。
【0053】また、前記テトラエトキシシランとフェニルトリエトキシシランのモル比を種々変更したもの、及びフェニルトリエトキシシランに代えてジフェニルジエトキシシランを用いて前記同様にして評価用試料を作製した。
【0054】尚、フェニル基を有するシリコンアルコキシドを混合せず、テトラエトキシシランのみで前記同様にして作製したものを比較例とした。
【0055】かくして得られた評価用試料をガス透過率測定装置に取り付け、該試料の管内側に50cc/分のヘリウムガスを、外側には窒素及び二酸化炭素ガスの1/1混合ガスを100cc/分の割合で流し、試料の膜部を30℃、100℃、200℃及び300℃にそれぞれ加熱し、前記膜を透過してくる窒素ガス及び二酸化炭素ガスの比率(透過係数比)をガスクロマトグラフィで評価するとともに、試料の管内外の出口ガス流量からそれぞれの透過率を求めた。
【0056】また、前記評価用試料の膜がSiの側鎖にフェニル基が結合したシロキサン結合を有することを確認するため、拡散反射法による赤外線吸収スペクトル測定を行ったところ、シリカの赤外線吸収スペクトルとは別の1600〜1610cm-1の波数にフェニル基の赤外線吸収ピークが認められ、本発明の多孔質分離膜ではいずれもフェニル基の存在が確認できた。
【0057】本発明の多孔質分離膜を代表するものとしてシリコンアルコキシドとフェニル基を有するシリコンアルコキシドの混合割合がモル比で70対30から成り、500℃で焼成したバルク体試料の赤外線吸収スペクトル測定記録図を図1に示す。
【0058】一方、前記バルク体の細孔径をAr吸着法により測定し、その細孔径分布を図2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】表から明らかなように、比較例の試料番号29乃至32のCO2 /N2 透過係数比は、細孔壁と透過ガスとの相互作用が無い時の理論的透過率(クヌッセン拡散による透過率)である0.8とほとんど等しい値の0.83〜0.92を示している。
【0061】それに対して、本発明ではCO2 /N2 透過係数比が300℃の高温でも5.1以上と極めて大きな透過係数比が得られており、これはフェニル基がCO2 ガスに対し大きな親和性を有していることに加え、図2に示すように本発明の多孔質分離膜が1nm以下の非常に狭い細孔径分布を有していることから、高いCO2 選択性を示したものと考えられる。
【0062】尚、本発明の多孔質分離膜及びその製造方法は前記実施例に限定されるものではない。
【0063】
【発明の効果】叙上の如く、本発明の多孔質分離膜及びその製造方法によれば、シリコンアルコキシドと、フェニル基を有するシリコンアルコキシドを混合し、この混合アルコキシドを加水分解することにより得た前駆体ゾルを乾燥後、300〜600℃の温度で焼成して作製したSiの側鎖にフェニル基が結合したシロキサン結合を有するシリカ質の多孔質分離膜は、フェニル基とSi原子が直接結合した構造を有するため、膜形成時、600℃までの高温で熱処理してもフェニル基は膜中に残存してフェニル基近傍のシロキサン結合が過度に進むことが抑制されることから、1nm以下の微細孔構造が保持される。
【0064】その結果、各種気体混合物あるいは液体混合物等の混合流体から特定成分を分離するに際して透過率及び選択率の両方の特性に優れ、薄膜化が容易で高い膜強度を有し、とりわけ大気中や各種燃焼排気ガスあるいは反応ガス中から酸素(O2 )や二酸化炭素(C2 )を分離する、特に、300℃以上の高温の二酸化炭素(CO2 )を優先的に分離する膜が得られ、表面粗さの小さいγ−アルミナ膜を被覆した多孔質のα−アルミナ支持体を用いて分離膜を形成した場合には、0.5μm以下の極めて厚さの薄い欠陥のない耐熱性に優れた分離膜が得られ、高いガス透過率を要求される気体用分離膜に好適となる。




 

 


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