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発明の名称 スローアウェイドリルおよびドリルインサート
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−217019
公開日 平成10年(1998)8月18日
出願番号 特願平9−19354
出願日 平成9年(1997)1月31日
代理人
発明者 津田 祐一
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】凹部付切刃を外刃先端側とし、凹部無し切刃を内刃先端側とすべくほぼ円柱状をした工具本体の先端にインサートを装着してなるスローアウェイドリル。
【請求項2】多角形状をした板状体の少なくとも上面稜辺部に凹部付切刃と凹部無し切刃を併設してなるドリルインサート。
【請求項3】多角形状をした板状体の少なくとも上面稜辺部に切刃が形成されてなるドリルインサートにおいて、上記多角形の少なくとも一つの隅角部に一対のコーナーR部(5)(6)を有する突出部を備えるとともに、該突出部の切刃に凹部を形成してなるドリルインサート。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、穴加工用のスローアウェイドリルとそのドリルインサートに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】穴加工を行うドリル工具として、工具本体の先端部に相互の回転軌跡が交叉するように外径側の外刃インサートと内径側の内刃インサートが着脱自在に装着されたものが用いられてきた。
【0003】図6は、そのようなドリル工具に用いられる従来のドリルインサート20と該ドリルインサート20をドリル工具本体Tに装着した際の配置を示す。
【0004】このドリルインサート20は多角形板状体であり、上面21の稜辺部に切刃が形成されたものを示し、同図に示すように一本のスローアウェイドリルの工具本体Tに2個が、それぞれ外刃インサート22、内刃インサート23として、同一回転方向に上面21、21を向けて装着される。また、外刃インサート22、内刃インサート23に形成された切刃のうち底切刃25となった切刃の回転軌跡が相交わり、且つ、工具本体Tの中心軸T1から側面T2までをカバーする。
【0005】このような従来のドリルインサート20には、切刃に凹部を設けたものと切刃に凹部を設けていないものの両方があったが、いずれも外刃インサート22として用いられる場合の使用切刃と、内刃インサート23として用いられる場合の使用切刃との区別なく、全切刃同形状でどちらでも用いることができるようにしたものであった。
【0006】従来のドリルインサート20のうち図6のように切刃に凹部26を設けたものは、凹部26が切屑を幅方向に湾曲させる結果、内刃インサート23がカバーする穴底面からの切屑も細かく分断してしまう。しかし、内刃インサート23側は切屑の排出速度が遅いので分断された切屑が滞留し、切刃と穴底面との間や工具本体Tと加工穴壁面との間に入り込み不具合を起こすことがあった。他方、図7に示すような切刃に凹部を設けていないドリルインサート20は、特にステンレス材などの難削材の場合に外刃インサート22がカバーする穴底面からの切屑が長く伸びてしまい、外刃インサート22側の切屑排出速度が速いので、切屑が工具本体に絡みつき不具合を起こしてしまうことがあった。
【0007】また、図6(b)中、矢印は、上記ドリルインサート20を装着したスローアウェイドリルにより切削加工を行った場合に上記外刃インサート22と内刃インサート23のそれぞれに発生するラジアル方向の荷重力の合成力Nを示し、図に示すように上記従来のドリルインサート20では内刃インサート23にかかるラジアル方向荷重が中心軸T1から内刃インサート23の底切刃25に沿って発生するのに対し、外刃インサート22は外壁を切削するコーナーR部24が受ける切削抵抗により、コーナーR部24と工具本体Tの中心軸T1を結ぶ半径を基準として逆回転方向(+の方向)に発生する。
【0008】この結果、上記ラジアル方向の荷重力の合成力は内刃インサート23の側に向き、すなわち加工中に穴径が小さくなる方向にたわみ、ワークからドリル工具を抜く際、外刃インサート22が穴壁と接触し、仕上げ面を傷付けると同時に、早送りで抜けば外刃インサート22のコーナーR部24が壁に強くあたり、他方、切削送りで抜けば接触回数が増え外刃インサート22のコーナーR部24の損傷が大きくなる恐れがあった。
【0009】
【発明の目的】上記従来技術の課題に鑑み、本発明は、まず、難削材の加工でも切屑のつまりや切屑の絡みを引き起こさない優れた切屑処理性能を有するスローアウェイドリルを提供することを目的とする。
【0010】また、このようなスローアウェイドリルに装着するドリルインサートであって、外刃インサートにも内刃インサートとしても使用できるドリルインサートを提供することを目的とする。
【0011】また、本発明の別の目的は、外刃インサートとして用いた場合、ワークからドリル工具を抜く際に外刃インサートと穴壁とが接触したりせず、良好な仕上げ面に加工することができ、且つ、難削材の加工でも切屑の絡みを引き起こさない優れた切屑処理性能を有したドリルインサート、および、そのようなドリルインサートを用いたスローアウェイドリルを提供することを目的とする。
【0012】また、難削材の加工でも切屑のつまりや切屑の絡みを引き起こさない優れた切屑処理性能を有するスローアウェイドリルを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記従来技術の課題を解決するため、本発明は、スローアウェイドリルの穴底面側に向く切刃のうち、外刃インサートの切刃(凹部付切刃)のみに凹部を形成した。また、このようなスローアウェイドリルの外刃インサートとしても、内刃インサートとしても用いることができるようドリルインサートに凹部付切刃と凹部無し切刃を併設した。
【0014】さらに、本発明は、ドリルインサートにおいて多角形の隅角部に一対のコーナーR部(5)(6)を有する突出部を備えるとともに、該突出部の切刃に凹部を形成した。加えて、スローアウェイドリルにこのようなドリルインサートを装着し、かつ、上記突出部を備えた切刃を穴底面側に向けるようにした。
【0015】
【作用】本発明の請求項1のスローアウェイドリルDは、図3に示すように外刃インサート8の前記凹部10を設けている凹部付切刃(外切刃4)が穴底側に向くようにドリルインサート1を配置し、他方、内刃インサート9の前記凹部10を設けていない凹部無し切刃(内切刃3)が穴底側に向くようにドリルインサート1を配置する。
【0016】切削加工時、外刃インサート8がカバーする穴底面からの切屑は排出速度が早くステンレス材などの難削材では伸びて工具本体Tに絡みつきやすい性質を有するが、切屑が上記凹部10により細かく分断されるので絡みつきなく良好に排出される。他方、内刃インサート9がカバーする穴底面からの切屑は排出速度が比較的遅いので長く伸びても工具本体Tには絡みにくい性質を有し、したがって、凹部のない切刃(内切刃3)により、細かく切断されて加工穴内に滞留するのではなく長めに伸びて排出され、且つ、工具本体Tには絡みつかない。
【0017】また、本発明の請求項2のドリルインサート1は、図1に示すように少なくとも一つの切刃(内切刃3、3)を除く他の切刃(外切刃4、4)に凹部10を形成したことを特徴とするもので、図3に示すように工具本体Tの外径側に配置する外刃インサート8および内刃インサート9の両方に用いられるものであり、図3のように配置することにより上述の作用を奏し、加えて、同形状のドリルインサートを内刃インサート9にも外刃インサート8にも用いることができるという利点がある。
【0018】次に、図1に示す本発明の前記請求項3のドリルインサート1は、多角形の隅角部に一対のコーナーR部5、6を有する突出部7を備えるとともに、該突出部7の切刃(外切刃4)に凹部10を形成したことを特徴とする。
【0019】そして、図3に示すようにこのドリルインサート1を工具本体Tの先端において、上記突出部7が穴底側に向くように外径側の外刃インサート8として用いる本発明の請求項4のスローアウェイドリルによれば、図4に示すように外刃インサート8のラジアル荷重の方向Nが回転方向側(−の方向)に向き、これにより上記合成力方向Nは中心軸T1から外刃インサート8側に向かう。
【0020】したがって、工具本体Tは外刃インサート8側に撓むこととなり、その結果、加工径が大きくなる。すなわち、工具本体Tを加工穴から引き抜く際に、外刃インサート8と穴壁とが接触することなく引き抜くことができる。
【0021】また、請求項3のドリルインサート1および請求項4のスローアウェイドリルDの別の作用として、前記突出部7の一対のコーナーR部のうち内側のコーナーR部5が切屑を幅細に分断されるが、突出部7に形成された前記凹部10により切屑が幅方向に湾曲し且つ切屑のカール半径が小さくなるので、ステンレスなどの難削材であっても切屑を折れやすくするという作用がある。
【0022】なお、本発明のドリルインサート1は図5に示すように全周に凹部10を設け外刃インサート8専用としてもよい。この場合、同図に示すように、内刃インサート9として別形状のインサートを用い、凹部10を設けていない内切刃3を穴底側に向けると、前述のように内刃インサート9からの切屑の処理も良好となる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図を用いて説明する。図1は、本実施形態によるドリルインサート1を示し、このドリルインサート1は多角形をなし、上面2の稜辺部に切刃が形成され、これら切刃のうちインサートの中心軸に対して点対称関係にある2辺が内切刃3としてへの字状に形成され、また残る二辺が外切刃4であり、該外切刃4の一方端、すなわち多角形の隅角部の位置には、一対のコーナーR部5,6が形成され外方に若干突き出た突出部7が形成されている。
【0024】なお、ここでコーナーR部5,6とは、曲線部分に連続する直線がなす角が直角に近く、60°〜105°の範囲のものを言う。
【0025】また、上記外切刃4には、上記突出部7とそれ以外の部位のそれぞれに凹部10が形成されている(凹部付切刃)。
【0026】図2〜図4に上記ドリルインサート1を用いた本実施形態のスローアウェイドリルDを示し、図2に示すように、上記図1のドリルインサート1はスローアウェイドリルDを構成する工具本体Tの外径側に配置する外刃インサート8および内径側に配置する内刃インサート9の両方に用いらることができるものである。
【0027】図3および図4は、上記ドリルインサート1を工具本体Tに装着した時の配置例を示す。図3は工具本体Tの側面T2側から見た透視配置図、そして図4は工具本体Tの底面側から見た配置図である。なお、図3中、点線で示す外刃インサート8は、外刃インサート8の軌跡と内刃インサート9の軌跡の関係を示すためのもので、実線で表す外刃インサート8が180°回転した位置で示している。
【0028】これらの図に示すように、ドリルインサート1は同一形状の外刃インサート8と内刃インサート9として2個が一本の工具本体Tに装着され、両者は同一回転方向に上面2を向けて装着される。すなわち、図4のように外刃インサート8の上面2と内刃インサート9の上面2は180°反対方向に向いた状態となっている。そして、図3に示すように、外切刃4と内切刃3の回転軌跡が交わり且つ工具本体Tの中心軸T1から側面T2までをカバーするように設置される。
【0029】また、上記外刃インサート8については、側面T2近傍に上記突出部7が位置し且つ上記突出部7と凹部付切刃である外切刃4とが穴底面側に向くように装着し、他方、内刃インサート9については、凹部無し切刃である内切刃3を穴底面側に向けて装着する。
【0030】このように構成されるスローアウェイドリルDは、切削加工時、外刃インサート8がカバーする穴底面からの切屑は排出速度が早くステンレス材などの難削材では伸びて工具本体Tに絡みつきやすい性質を有するが、切屑が上記凹部10に幅方向に湾曲しその結果、切屑細かく分断されるので絡みつきなく良好に排出される。他方、前記内刃インサート9によれば穴底面側に上記凹部がないので切屑が細かく切断されて加工穴内に滞留することはなく、かえって、凹部のない切刃(内切刃3)により、切屑が長めに伸びて排出される。そして、内刃インサート9がカバーする穴底面からの切屑は排出速度が比較的遅いので長く伸びても工具本体Tには絡みにくい性質を有するので、内刃インサート9からの切屑は工具本体Tに絡みつかない。
【0031】また、前述のように構成されるドリルインサート1およびスローアウェイドリルDは、多角形の隅角部に一対のコーナーR部5,6を有する突出部7を外刃インサート8の穴底面側に配設することにより、外刃インサート8のラジアル荷重の方向が回転方向側(−の方向)に向き、これにより上記合成力方向Nは中心軸T1から外刃インサート8側に向かう。したがって、工具本体Tは外刃インサート8側に撓むこととなり、その結果、外刃インサート8と穴壁とが接触することなくスローアウェイドリルDをワークから抜くことができる。
【0032】すなわち、図4中、直線矢印は、上記外刃インサート8および内刃インサート9として設置された前記ドリルインサート1につき、切削加工中に外刃インサート8にかかるラジアル荷重力と内刃インサート9にかかるラジアル荷重力の和としての合成力の方向(合成力方向N)を示し、同図に示すように該合成力は中心軸T1から外刃インサート8の上面2を基準として回転反対方向側(+の方向)に発生する。
【0033】また、本発明のドリルインサート1の別の作用として、穴底側に対向する外刃インサート8の突出部7を構成するコーナーR部5,6のうち、内切刃3とは連続していない内側のコーナーR部6が穴底側からの切屑を幅細に分断する。しかしながら、一般に切屑が幅狭の場合、切屑が長く延びてしまい排出性が悪くなる傾向があるが、突出部7の外切刃4に凹部10を形成し、切屑の断面形状を波形とすることによって切屑が短めに切断されやすいようにしてあり、これにより最適な切屑処理が可能となった。ちなみに、外切刃4には突出部7以外の部位にも凹部10を補助的に形成している。
【0034】なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、発明の目的を逸脱しない限り、任意の形態とすることができる。例えば、本発明のドリルインサート1は図5に示すように全周に凹部10を設け外刃インサート8専用としてもよい。
【0035】この場合、同図に示すように、内刃インサート9として別形状のインサートを用い、凹部10を設けていない内切刃3を穴底側に向けると、前述のように内刃インサート9からの切屑の処理も良好となる。また、ドリルインサート1の概略形状として四角形以外の多角形状のものであっても良い。
【0036】
【発明の効果】叙上のように本発明は、スローアウェイドリルの穴底面側に向く切刃のうち、外刃インサートのみを凹部付切刃としたことにより、難削材の加工でも切屑のつまりや切屑の絡みを引き起こさない優れた切屑処理性能を実現した。
【0037】また、凹部付切刃と凹部無し切刃を併設したドリルインサートによれば上記スローアウェイドリルの外刃インサートにも内刃インサートとしても使用できるので便利である。
【0038】また、本発明は、ドリルインサートにおいて多角形の隅角部に一対のコーナーR部(5)(6)を有する突出部を形成し且つ該突出部の切刃に凹部を形成したことにより、このようなドリルインサートを外刃インサートとして用いたスローアウェイドリルの場合、ワークからドリル工具を抜く際に外刃インサートと穴壁とが接触したりせず、良好な仕上げ面に加工することができ、且つ、難削材の加工でも切屑の絡みを引き起こさない優れた切屑処理性能も実現した。
【0039】以上のように、本発明は格段に優れた効果を奏するものである。




 

 


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