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発明の名称 切削インサート
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−128605
公開日 平成10年(1998)5月19日
出願番号 特願平8−290431
出願日 平成8年(1996)10月31日
代理人
発明者 石田 琢也
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】すくい面と逃げ面の間の稜辺に切刃を形成し且つノーズ部のブレーカー溝内の中央部位にブレーカー突起を形成してなる切削インサートにおいて、該ブレーカー突起の両側の切刃からブレーカー突起にかけて平面視で湾曲状に連なる複数の巾細堤を設けたことを特徴とする切削インサート。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属材料などの切削加工に用いられ、特にシャフト外周の切削加工、鉄板材の切削加工に適した切削インサートに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】シャフトの外周加工を行う場合には、図4に示すようにシャフトSの一端面の中心を回転させてHの尖頭に点接触させ、この他端を旋盤のチャックCに保持させてシャフトSを回転させながら切削を行う。加工するシャフトSの形状としては、図5に示すように幾つかの段部Dを有しているものが多い。このようなシャフトSの加工の場合、シャフトSの軸方向の切削では切削インサート10を押す動きとなり、これに対して垂直方向の切削では切削インサート10を引く動きにより切削が行われる。
【0003】このような切削加工の場合、押しの加工と引きの加工では当然ながら切屑の流れる方向が異なる。即ち、押しの加工の場合、切屑は切削インサート10のノーズ部の切刃先端から離れていく方向に流れるのに対して、引きの加工の場合、切屑はノーズ部の切刃先端の方向に流れていく。
【0004】従来の切削インサートでは、特に鉄板材などの難削材を加工するために、ノーズ部にブレーカ溝を設け、さらに該ブレーカ溝内に突起を形成し、これらの作用により切屑をカールさせるようにしたものが主流であったが、押しの加工にも引きの加工にも、両方ともに安定した切屑処理を行えるものがほとんどなかった。
【0005】また、シャフトSの段部Dを加工する際、その隅部には若干のR面が通常残っているが、水平方向から垂直方向へ或いはその反対方向に加工方向を変化させるとき、一時的に切り込み量が増大する。このため、切屑がブレーカー突起で曲げられることなく延びたまま排出されてしまうことがあった。そして、排出された切屑が回転センターH(図4参照)に絡みついて作業を中断させたり、あるいは刃先に絡みついて切刃欠損の原因となる場合があったが、この問題に対しても有効な解決策を講じたものがなかった。
【0006】
【発明の目的】上記従来技術の課題に鑑み、本発明は特に鉄板材などの難削材からなるシャフト外周の切削加工に適した切削インサートであって、シャフトの外周を切削インサートで軸方向に押す加工のみでなく、切削インサートを垂直方向に引く加工においても切屑を確実にカールさせ安定的に排出することができ、また、段部隅部位を加工する際の急激な切り込み量の変化に対しても、切屑を確実にカールさせ安定的に排出することができる切削インサートを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記従来技術の課題を解決するため本発明の切削インサートは、ノーズ部のブレーカー溝内の中央部位にブレーカー突起を形成し、さらに該ブレーカー突起の両側の切刃から上記ブレーカー突起にかけて平面視で湾曲状に連なる複数の巾細堤を設ける。
【0008】
【作用】本発明の切削インサートは、引きの加工においても押しの加工においても、切屑がブレーカー突起に確実に当たり、カールして安定的に排出されるよう切刃からブレーカー突起にかけて平面視で湾曲状に連なる複数の巾細堤を設けたものある。 すなわち、引きの加工の場合には、ノーズ先端側に向かおうとする切屑を湾曲状の巾細堤で無理なくブレーカー突起に誘導し、他方、押しの加工の場合には、巾細堤がノーズ先端から離れる方向に向かおうとする切屑をカールさせる応力を付勢するための補助突起の役割を果たし、ブレーカー突起と協働して切屑を安定的に排出する。
【0009】なお、上記巾細堤が一の切刃側に一つのみ設けられている場合には、引きの加工の際の切屑誘導作用、押しの加工の場合の補助突起作用ともに不十分となる恐れがある。
【0010】また、上記巾細堤が一つの切刃側に複数設けられていることによる作用として、段部の隅部位を加工する際など急激に切り込み量が変化する場合などでも、ノーズ先端より離間した位置にも巾細堤が形成されているので切屑処理が確実に行われるということがある。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1乃至図3に本実施形態の切削インサート10を示し、この切削インサート10の全体形状はノーズ部4の刃先角度が小さめとなった菱形形状をなし、すくい面1と逃げ面2の間の稜辺に切刃3が形成されている。
【0012】また、上記ノーズ部4には、切刃先端5に連続してブレーカ溝6そして該ブレーカ溝6の中央部位には座り面7に連続するブレーカー突起8が形成されている。
【0013】図3の拡大図に示すように、上記切削インサート10は、引きの加工においても押しの加工においても、切屑がブレーカー突起8に確実に当たり、カールして安定的に排出されるよう切刃3からブレーカー突起8にかけて平面視で湾曲状に連なる複数の巾細堤9を設けたものあり、引きの加工の場合には、ノーズ部4の切刃先端5に向かおうとする切屑を湾曲状の巾細堤9で無理なくブレーカー突起8に誘導し、他方、押しの加工の場合には、巾細堤9がノーズ部4の切刃先端5から離れる方向に向かおうとする切屑をカールさせる応力を付勢するための補助突起の役割を果たし、ブレーカー突起8と協働して切屑を安定的に排出する。なお、この巾細堤9の巾としては、1mm〜3mm、また巾細堤9の湾曲形状につき曲率半径はR=0.7mm〜3.5mmの範囲にあることが好ましい。
【0014】また、シャフトの段部隅部位を加工する際など急激に切り込み量が増大する場合でも、上記巾細堤9が一つの切刃3の側に複数並んでいるのでノーズ部4の切刃先端5から離れた位置にも存在し、切屑全体が良好にカールされ、安定的に排出される。
【0015】なお、上記巾細堤9の巾が1mm未満の場合、巾細堤9とその隣接する部位の強度が著しく低下してしまう恐れがあり、他方、3mmより大きい場合、巾細堤9と巾細堤9の間に切屑の一部が沈み込み難くむしろ全体的に巾細堤9の上に切屑が乗り上げてしまうので、前記引きの加工の際の切屑誘導作用、押しの加工の場合の補助突起作用ともに不十分となる恐れがある。
【0016】また、上記巾細堤9の湾曲形状につき曲率半径Rが0.7mm未満の場合、湾曲カーブがきつ過ぎて切削抵抗が増大する恐れがあり、他方、曲率半径Rが3.5mmより大きい場合には、湾曲カーブが緩すぎて前記引きの加工の際の切屑誘導作用が不十分となる恐れがある。
【0017】本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができる。
【0018】
【実施例】
実施例1上記図1乃至図3に示す切削インサート10において、上記巾細堤9の巾を2mmとし、またその湾曲形状につき曲率半径Rを3mmとし、以下の切削条件で加工試験を行い、その結果を肉眼で評価した。
【0019】切削条件V=150m/mind=1〜4mm(可変)
f=0.3mm/rev被削材:FC25スリーブ材工具形状:DNMG150412切削液:有りこれに対して比較例として、巾細堤9を設けていない以外は上記実施例品と同一形状の切削インサートを用いて上記同様の加工試験を行った。
【0020】これらの結果、上記実施例品は切屑処理も良好であったのに対し、比較例品では、切屑が延びたまま排出される傾向があった。
【0021】実施例2上記図1乃至図3に示す切削インサート10において、巾細堤9の湾曲形状につき曲率半径を2mmとし、かつ、その巾を表1に示すようにした切削インサート10を用意し、実施例1と同様の切削条件で加工試験を行い、その結果を肉眼で観察した。結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】以上の結果から、巾細堤の巾として1〜3mmの範囲が好ましいことが判った。
【0024】実施例3上記図1乃至図3に示す切削インサート10において、巾細堤9の湾曲形状につき表2に示すようにし、かつ、その巾を1.5mmとした切削インサート10を用意し、実施例1と同様の切削条件で加工試験を行い、その結果を肉眼で観察した。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】以上の結果から、巾細堤の曲率半径Rとして0.7〜3.5mmの範囲が好ましいことが判った。
【0027】
【発明の効果】叙上のように、本発明の切削インサートは、ノーズ部のブレーカー溝内の中央部位にブレーカー突起を形成し、さらに該ブレーカー突起の両側の切刃から上記ブレーカー突起にかけて平面視で湾曲状に連なる複数の巾細堤を設けたことにより、シャフトの外周を切削インサートで軸方向に押す加工のみでなく、切削インサートを垂直方向に引く加工においても切屑を確実にカールさせ安定的に排出することができ、また、段部隅部位を加工する際の急激な切り込み量の変化に対しても、切屑を確実にカールさせ安定的に排出することができる、という優れた効果を奏するものである。




 

 


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