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発明の名称 被覆切削工具
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−100004
公開日 平成10年(1998)4月21日
出願番号 特願平8−258144
出願日 平成8年(1996)9月30日
代理人
発明者 荻野 俊彦
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】超硬合金母材表面に、Tiの窒化物、炭化物又は炭窒化物の単層または複層、およびTiの窒化物または酸窒化物およびAlの酸化物または酸窒化物からなる複合化合物固溶体層を順次配した硬質被覆膜を備えてなる被覆切削工具。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フライス加工工具等の切削工具の母材表面に、耐摩耗性の優れた硬質被覆膜を形成した被覆切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】超硬合金よりなる切削工具には、耐摩耗性を向上させるため工具母材表面にTi等の窒化物や炭化物よりなる硬質被覆膜を形成することが行われている。
【0003】その方法としては、CVD法(化学的蒸着法)及びPVD法(物理的蒸着法)の他、イオンプレーティング法やスパッタリング法によりTiN,TiAlN,,TiAlC,或いはTiAlCN等の被覆が行われてきた。
【0004】特公平4−53642号は、このような被覆切削工具に関連した発明で、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された基体部材の表面に、(Ti,Al)C,(Ti,Al)N,および(Ti,Al)CNのうちの1種の単層または2種以上の被覆からなる硬質被覆層をCVD法やPVD法などを用いて、0.5〜10μm の平均層厚で蒸着してなる耐摩耗性のすぐれた表面被覆工具を内容としたものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら近年、切削速度の一層の高速化が要望されており、切削条件がより過酷化する傾向にある為、従来の被覆切削工具よりもさらに耐摩耗性を向上せしめた切削工具が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者は、上述のような観点から、従来の被覆超硬合金の耐摩耗性を向上させるべく鋭意検討を続けた結果、Ti,Alの複合化合物固溶体層に変更を加え、耐摩耗性を顕著に向上させることができることを見出した。すなわち、Ti,Alの複合化合物固溶体層をTiの窒化物または酸窒化物およびAlの酸化物または酸窒化物からなるものとし、Al2 3 、Al2 3 N中にTi化合物を分散固溶させたことによって、耐酸化性に加え、耐欠損性および耐摩耗性が優れ、しかも、この複合化合物固溶体層を母材表面に形成したTiN,TiC或いはTiCNの単層乃至複層よりも外側に形成することによって耐摩耗性を顕著に向上する。
【0007】この発明は、上記研究結果にもとづいてなわれたものであって、超硬合金母材表面に、Tiの窒化物、炭化物又は炭窒化物の単層または複層、およびTiの窒化物または酸窒化物およびAlの酸化物または酸窒化物からなる複合化合物固溶体層〔以下、(Ti,Al)(N,O)層という〕を順次配した硬質被覆膜を備えてなる被覆切削工具に特徴を有するものである。
【0008】また、上記(Ti,Al)(N,O)層において、母材表面側にTiを多く存在せしめ、外側に離れていくほどTiが減少し、最外部分ではAlが主となるような構成とすることにより、複合化合物固溶体層とその下のTi化合物層との密着性を高めることができ、結果として耐欠損性を高めることができる。そして、このような構成に加え、上記(Ti,Al)(N,O)と上記Ti化合物の層の間に、(Ti,Al)N層を介在させることにより、この効果をさらに助長することができる。
【0009】なお、上記(Ti,Al)N層の厚みとしては、耐摩耗特性と耐欠損性の両特性の観点から0.5μm 以下であることが望ましい。
【0010】
【実施例】つぎに、この発明の被覆切削工具を実施例により具体的に説明する。
【0011】実施例1JIS SDKN1203に適合した形状であり且つ京セラ製KW10材種の超硬製の切削工具(以下チップと呼ぶ)を母材として、公知のCVD法によって多層硬質膜を形成し、これを実施例品1とした。膜構成をTiN+TiC+(Ti,Al)(N,O)とし、膜厚を約3.0μmとした(刃先仕様:R面0.03)。
【0012】このチップをMSD45160Rのカッターに搭載し、該カッターを用い、以下の条件で切削試験を行って主切刃VB 摩耗量と主切刃VB MAX 摩耗量を測定した。
【0013】[切削条件]
被削材:FCD45鋳込材(125W×300L,φ40×4穴)
切削速度:V=250m/min切り込み:f=2m送り :d=0.3mm/rev乾式切削時間:35分その結果、主切刃VB 摩耗量が0.18mmで、主切刃VB MAX 摩耗量が0.25mmであった。
【0014】比較例1実施例1と同様に、膜構成をTiN+TiC+(Ti,Al)Nとし、膜厚を約2.2μmとした(刃先仕様:R面0.03)チップを作製し、これを比較例品1とした。この比較例品1を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
【0015】この結果、主切刃VB 摩耗量が0.22mmで、主切刃VB MAX 摩耗量が0.28mmと、いずれも実施例品1よりも摩耗量が多かった。
【0016】実施例2実施例品1の構成において刃先仕様をC面とした実施例品2を作製した。これら実施例品1と実施例品2のチップをMSD45160Rのカッターに搭載し、該カッターを用い、以下の条件で切削試験を行って主切刃VB 摩耗量と主切刃VB MAX 摩耗量を測定した。
【0017】[切削条件]
被削材:FCD45鋳込材(125W×300L,φ40×4穴)
切削速度:V=250m/min切り込み:f=2m送り :d=0.2mm/rev乾式切削時間:35分その結果、実施例品1の主切刃VB 摩耗量が0.15mmで、主切刃VB MAX 摩耗量が0.15mmであり、実施例品2の主切刃VB 摩耗量が0.12mmで、主切刃B MAX 摩耗量が0.14mmであった。
【0018】実施例3前記実施例品1、実施例品2および比較例品1のそれぞれのチップををC面とした実施例品2を作製した。これら実施例品1と実施例品2のチップをMSD45160Rのカッターに搭載し、該カッターを用い、以下の条件で切削試験を行って主切刃VB 摩耗量と主切刃VB MAX 摩耗量を測定した。
【0019】[切削条件]
被削材:FC350鋳込み材(125W×300L,φ40×4穴)
切削速度:V=250m/min切り込み:f=2m送り :d=0.2mm/rev乾式切削時間:60分その結果は、以下のとおりであった。
【0020】
主切刃VB 摩耗量(mm) 主切刃VB MAX 摩耗量(mm)
実施例品1 0.14 0.39 実施例品2 0.14 0.23 比較例品1 欠損 欠損 このように、実施例品はいずれも低摩耗量であり、他方、比較例品は途中で欠損してしまった。
【0021】実施例4JIS SDKN1203に適合した形状であり且つ京セラ製KW10材種の超硬製の以下チップを母材として、公知のCVD法によって下記のような多層硬質膜を形成し、それぞれ実施例品3、実施例品4、実施例品5とした。
【0022】
膜構成 膜厚 実施例品3 TiN+TiC+(Ti,Al)N+(Ti,Al)(N,O) 3.5μm (Ti,Al)N膜は0.2 μm以下 実施例品4 TiN+TiC+(Ti,Al)N+(Ti,Al)(C,N,O) 3.5μm (Ti,Al)N膜は0.2 μm以下 実施例品5 TiN+TiC+(Ti,Al)(N,O) 3.5μm (Ti,Al)(N,O)は25μmすなわち、実施例品3は(Ti,Al)(N,O)膜の直下に(Ti,Al)N層を形成したものであり、これに対して実施例品5は(Ti,Al)N層を形成していない。また、実施例品3の(Ti,Al)(N,O)膜の代わりに実施例4では(Ti,Al)(C,N,O)膜を形成した。
【0023】これら実施例品1と実施例品2のチップをMSD45160Rのカッターに搭載し、該カッターを用い、以下の条件で切削試験を行って主切刃VB 摩耗量と主切刃VB MAX 摩耗量を測定した。
【0024】[切削条件]
被削材:FCD45鋳込み材(125W×300L,φ40×4穴)
切削速度:V=250m/min切り込み:f=2m送り :d=0.2mm/rev乾式切削時間:80分その結果は、以下のとおりであった。
【0025】
主切刃VB 摩耗量(mm) 主切刃VB MAX 摩耗量(mm)
実施例品3 0.24 0.33 実施例品4 0.27 0.41 実施例品5 0.32 0.46この結果から明らかなように、(Ti,Al)(N,O)と前記Ti化合物の層の間に、(Ti,Al)N層を介在させることにより、耐摩耗特性を向上せしめることができた。なお、上記(Ti,Al)N層の厚みとしては、同様の試験の結果、耐摩耗特性と耐欠損性の両特性の観点から0.5μm 以下であることが望ましいことが判った。
【0026】また、実施例品3〜5について硬質被覆膜のEPMA組成分析を行ったところ、実施例品3について、上記(Ti,Al)(N,O)層において、母材表面側にTiを多く存在せしめ、外側に離れていくほどTiが減少し、最外部分ではAlが主となるような構成となっていることが確認された。実施例品3の耐摩耗性が優れていたことの理由として、このようなTiの傾斜的分布があることが考えられる。
【0027】なお、本発明はこれら実施例の形態に限定されるものでなく、例えば表面にさらにTiN膜を形成するなど、本発明の目的を逸脱しない限り、任意の形態にすることができるのは言うまでもない。
【0028】
【発明の効果】叙上のように、本発明によれば、Al2 3 、Al2 3 N中にTi化合物を分散固溶させた(Ti、Al)(N,O)層を母材表面に形成したTiN,TiC或いはTiCNの単層乃至複層よりも外側に形成したことにより、切削工具の耐摩耗性、耐欠損性が顕著に向上させた。したがって、経済的であるとともに、切削速度の一層の高速化にも十分対応していくことができる。




 

 


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