米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 加工処理操作 -> 京セラ株式会社

発明の名称 樹脂加工用部材
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−15952
公開日 平成10年(1998)1月20日
出願番号 特願平8−169533
出願日 平成8年(1996)6月28日
代理人
発明者 厚主 成生 / 福丸 文雄
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】樹脂と接する表面に硬質炭素膜を被覆してなる加工用部材であって、前記硬質炭素膜が、ラマン分光スペクトルにおいて1340±40cm-1と1160±40cm-1にピークが存在し、且つ1160±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH1 、1340±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH2 とした時、H1 /H2 で表されるピーク強度比が0.05乃至2であることを特徴とする樹脂加工用部材。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネイト、ポリブタジエン、ポリエステル、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、EVA樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラニン樹脂、ナイロン、ゴムなどの樹脂を所定形状に成形するための型材や、切削加工等の各種加工に使用される部材に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来より、樹脂などの素材を所定の形状に加工するために用いられる部材、例えば、樹脂を所定形状の型材に流し加熱下で圧力を印加して成形するのに用いられる型材や加圧部材、また樹脂を切削加工または切断加工して所定形状に加工するのに用いられる工具や切断刃物としては、一般に鋼が用いられており、昨今では、アルミニウム合金や超硬合金なども使われるようになってきた。
【0003】樹脂の加工も、量産化に伴い加工速度が速くなるにつれ加工用部材にはさらに高い耐久性が要求される。その場合、加工用部材には、耐摩耗性、樹脂の耐溶着性、離型性等の特性が要求される。特に、耐摩耗性の点では、鋼や超硬合金の表面にAl2 3 などのセラミックスからなる硬質な膜を形成することも行われている。
【0004】一方、近年に至り、Al2 3 などのセラミック膜よりもさらに高硬度の膜として、CVD法等により形成されるダイヤモンド膜が注目されており、その優れた耐摩耗性から各種応用が進められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Al2 3 などのセラミックスからなる硬質膜は、CVD法等により形成されるが、これらのセラミック膜は、結晶粒子が1μm以上と大きく、その成膜された表面には凹凸が存在し、この凹凸によって樹脂が溶着する等の問題があった。そのために、成膜された表面を研磨加工して表面を平滑化する必要があった。
【0006】また、ダイヤモンド膜は、通常マイクロ波CVD法等の気相成長法により成膜されるものであり、膜自体はダイヤモンド粒による多結晶体から構成されるものであり、その膜の表面硬度は10,000以上の硬度を有するものであり、セラミック膜よりもさらに優れた耐摩耗性を有する。
【0007】しかしながら、従来のダイヤモンド膜も、膜表面にダイヤモンド粒による1〜20μmの凹凸が存在し、これにより樹脂と接触する際に、樹脂成分が表面に溶着したり、樹脂との離型性に劣るという問題があり、ダイヤモンド膜の優れた耐摩耗性を発揮できないという問題があった。しかもダイヤモンド膜の場合、高硬度であるために研磨加工が難しく、ダイヤモンド砥石を用いて研磨しても長時間を要したり、あるいは過度の研磨を行うとダイヤモンド膜が剥離する等の問題があった。
【0008】また、表面の凹凸に加え従来のダイヤモンド膜中には、ダイヤモンド結晶粒間に多数のボイドが存在し、徐々に摩耗が進むにつれ膜表面にボイドが露出し、樹脂の溶着や離型不良が発生し、加工品の仕上げ面不良を生じるという問題があった。
【0009】このような問題に対しては、基体の表面にダイヤモンド層を介してダイヤモンド状カーボン膜を形成して膜表面のボイドを無くしたり(特開平3−28373号公報)、工具の刃先すくい面をダイヤモンドとグラファイトで構成される硬質炭素膜を形成して表面の平滑性と摺動性を高める(特開平5ー277807号公報)などが提案されている。また、ダイヤモンド膜の研磨方法として、例えば、ダイヤモンド膜と金属体とを接触させ非酸化性雰囲気中で加熱し、摺動させる方法(特開昭63ー144940号公報)、ダイヤモンド膜を加熱下で流動性金属と接触させる方法(特開平2ー160700号公報)などが提案されている。
【0010】しかしながら、上記の先行技術によれば、膜質をダイヤモンド中にグラファイトやダイヤモンド状カーボンなどを混入させる場合、ダイヤモンド膜そのものの硬度が低下しダイヤモンドの優れた特性が発揮されないという問題があった。また、研磨方法として金属体と接触させて加熱する方法では、研磨するための装置が複雑になり、生産性に劣るという問題があった。
【0011】したがって、本発明の目的は、成膜後の表面平滑性に優れ、耐摩耗性を損なうことなく、樹脂との接触においても優れた耐溶着性および離型性を有する長寿命の加工用部材を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するための方法について検討を重ねた結果、樹脂を加工するための部材であって、該加工部材の前記樹脂または前記ゴムに接する部材表面に、ラマン分光スペクトルにおいて1160±40cm-1と1340±40cm-1にピークが存在する硬質炭素膜を形成すると、極めて優れた耐摩耗性を有し、しかも緻密性と表面平滑性に優れるために摩擦係数が小さく、樹脂との接触による溶着や離型不良の発生のない優れた加工用部材が得られることを見出し本発明に至った。
【0013】即ち、本発明の樹脂加工用部材は、樹脂に接する部材表面に、ラマン分光スペクトルにおいて1340±40cm-1と1160±40cm-1にピークが存在し、且つ1160±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH1 、1340±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH2 とした時、H1 /H2 で表されるピーク強度比が0.05乃至2の硬質炭素膜を被覆したことを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明における加工用部材は、樹脂と接する加工用部材表面に、ラマン分光分析のスペクトルチャートにおいて1160±40cm-1と1340±40cm-1にピークが存在する硬質炭素膜を形成したものである。
【0015】一般に知られるダイヤモンド膜は、炭素原子間がSP3 混成で結合された構造からなり、ラマン分光スペクトルにおいて、1340±40cm-1にのみピークを有するものであり、場合によってSP2 混成で結合されたグラファイト構造の炭素等を含む場合は、1500〜1600cm-1付近にブロードなピークを有するものである。
【0016】これに対して、本発明における硬質炭素膜は、1340±40cm-1に加え、1160±40cm-1にピークを有するものである。この1160±40cm-1のピークは、ダイヤモンド構造からなるものの、微細な結晶のダイヤモンド粒子からなるためにその結晶の周期が短いことを意味するものと考えられる。従って、本発明における硬質炭素膜は、ダイヤモンド結晶が極めて微細な粒子により構成されるものであり、そのために従来のようなダイヤモンド結晶自形による凹凸がなく成膜された表面はボイドもなく非常に平滑性に優れている。なお、この硬質炭素膜中には、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲の微量でグラファイト構造を含んでいてもよい。
【0017】よって、上記硬質炭素膜を加工用部材表面に形成する場合において、あらゆる形状の母材の表面に形成しても、母材表面形状に整合した平滑で緻密な膜面を形成できるため、母材表面を所望の平滑面に仕上げておくことにより、母材表面形状に合致した平滑性に優れた硬質炭素膜を形成することができる。仮に、膜表面を研磨する必要がある時も従来のダイヤモンド膜に比較してわずかな研磨で平滑なボイドのない膜面を形成できる。
【0018】例えば、表面粗さの小さい平滑な成形面を有する成形金型の成形面にこの硬質炭素膜を形成すると、高硬度で表面欠陥のない成形面が得られるため、耐摩耗性に優れ、摩擦係数が小さく、離型性も優れるため、再現よく、所望の樹脂成形品を得ることができる。また、切削加工等において、工具の一部が樹脂と摺動する場合、その摺動部を平滑化して上記硬質炭素膜を形成すると、高速な摺動においても耐摩耗性に優れ、樹脂の凝着がない。また、樹脂の切削加工用部材の刃先に該硬質炭素膜を形成すると、高硬度で表面欠陥のない刃先が得られるため、切削性能を劣化させることがない。
【0019】本発明における硬質炭素膜のラマン分光スペクトルにおける1160±40cm-1のピーク強度について具体的に説明する。図1に示すように得られたラマンスペクトルの曲線において、1100cm-1と1700cm-1の位置間で斜線を引き、これをベースラインとして、1160±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の高いピーク強度をH1 、1340±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の高いピーク強度をH2 とする。このときH1 /H2 で表されるピーク強度比が0.05乃至2であることが重要である。
【0020】このピーク強度比が小さすぎると、ダイヤモンド結晶粒子が大きく成長し過ぎ、膜中にボイドが発生したり膜の表面粗さが大きくなり、耐摩耗性が低下したり樹脂の溶着や仕上げ面不良が発生しやすくなる。また、ピーク強度比が大きすぎると非晶質ダイヤモンドの存在が増加し、硬質炭素膜自体の硬度が低下し耐摩耗性が低下する場合がある。このピーク強度比は0.1乃至1.0であることが望ましい。
【0021】本発明における加工用部材によれば、上記硬質炭素膜は、所定の加工用部材母材表面に被覆されたものであることが望ましい。その場合、硬質炭素膜は、母材との密着性が高いことが要求される。硬質炭素膜を形成し得る母材材種としては、例えば、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックス、チタン合金、超硬合金、サーメット、ステンレス鋼などの金属が挙げられる。
【0022】これらの中でも加工用部材母材として適当な強度を必要とするために、WC基超硬合金、サーメットまたは窒化ケイ素を主とする焼結体、チタン合金からなることが最も望ましい。
【0023】また、本発明によれば、硬質炭素膜の母材との密着性を高める上で、母材表面と硬質炭素膜との間に、少なくともダイヤモンドと金属炭化物との複合体からなる中間層を介在させることにより、極めて密着性の良い硬質炭素膜を形成することができる。
【0024】このような中間層の介在によって硬質炭素膜と母材との密着強度が向上する理由は次のように考えられる。原子同士は電子を介在することにより結合されているが、一般に、原子間の電子が一方に存在して電気的な結び付きにより結合しているイオン結合よりも、電子を双方の原子で共有している共有結合の方が強い結合力を持つ。ダイヤモンドは炭素の共有結合により構成されているので強い結合力を有している。したがって、ダイヤモンドと異種化合物との密着強度を向上させるためには類似の結合様式である共有結合性の化合物であることが望ましいと考えられる。またダイヤモンドの成分である炭素を含む化合物の方がより整合性がよいと思われる。金属炭化物は数多く存在するがその多くはイオン性結合を主体としたものである。共有結合性炭化物としては炭化ケイ素や炭化ホウ素があるが、本発明の加工用部材においては炭化ケイ素が最も望ましい。
【0025】このような金属炭化物とダイヤモンドが混在する中間層を硬質炭素膜と母材との間に形成することにより、硬質炭素膜と母材との密着強度が向上する。またこのダイヤモンドと、金属炭化物は層分離して存在しているのではなく、ダイヤモンドの周りを金属炭化物が取り囲むような構造を呈し、ダイヤモンドが島状に分布した構造となるためにいわゆるアンカー効果によっても密着性が向上する。
【0026】従来より炭素膜を生成する手段としては、マイクロ波や高周波によりプラズマを発生させて所定の基体表面に炭素膜を形成する、いわゆるプラズマCVD法あるいは熱フィラメント法が主流である。しかしながら、プラズマCVD法では、プラズマ発生領域が小さいために、成膜できる面積が小さく、成膜できる面積が一般に直径20mm程度であり、加工用部材としての応用が限られる。また圧力が高すぎるか、もしくはプラズマ密度が低すぎるために基体が複雑な構造を有する場合や曲面構造を有する場合、その構造に沿った均一なプラズマが得られず、膜厚分布が不均一になりやすい。一方、熱フィラメントCVD法では、フィラメントが切れやすく、また膜厚のバラツキを抑制するために母材の形状に合わせてフィラメントを設置する必要があり、装置が汎用性に欠けるなどの欠点を有している。
【0027】これに対して、プラズマCVD法におけるプラズマ発生領域に磁界をかけた、いわゆる電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD法によれば、低圧下(1torr以下)で高密度のプラズマを得ることができるために、プラズマを広い領域に均一に発生させることができ、通常のプラズマCVD法に比較して約10倍程度の面積に均一に膜の形成を行うことができる。
【0028】よって、ここでは、電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD法(ECRプラズマCVD法)を例にとって説明する。この方法では、内部に所定の母材が設置された反応炉内に反応ガスを導入すると同時に2.45GHzのマイクロ波を導入する。それと同時にこの領域に対して875ガウス以上のレベルの磁界を印加する。これにより電子はサイクロトロン周波数f=eB/2πm(但し,m:電子の質量、e:電子の電荷,B:磁束密度)にもとづきサイクロトロン運動を起こす。この周波数がマイクロ波の周波数(2.45GHz)と一致すると共鳴し、電子はマイクロ波のエネルギーを著しく吸収して加速され、中性分子に衝突、電離を生じせしめて高密度のプラズマを生成するようになる。この時の母材の温度は150〜1000℃、炉内圧力1×10-2〜1torrに設定される。
【0029】かかる方法によれば、成膜時の母材温度、炉内圧力および反応ガス濃度を変化させることにより成膜される硬質炭素膜の成分等が変化する。具体的には、炉内圧力が高くなるとプラズマの領域が小さくなり、膜の成長速度が下がるが結晶性は向上する傾向にある。また、反応ガス濃度が高くなると、膜を構成する粒子の大きさが小さくなり、結晶性が悪くなる傾向にある。これらの条件を具体的には後述する実施例に記載されるように適宜制御することにより、前述したH1 /H2 比を制御することができる。
【0030】上記の成膜方法において、本発明の加工用部材を作製する場合、硬質炭素膜は、原料ガスとして水素と、炭素含有ガスを用いる。用いる炭素含有ガスとしては、例えば、メタン、エタン、プロパンなどのアルカン類、エチレン、プロピレンなどのアルケン類、アセチレンなどのアルキン類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類、シクロプロパンなどのシクロパラフィン類、シクロペンテンなどのシクロオレフィン類などが挙げられる。また一酸化炭素、二酸化炭素、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトンなどの含酸素炭素化合物、モノ(ジ、トリ)メチルアミン、モノ(ジ、トリ)エチルアミンなどの含窒素炭素化合物なども炭素源ガスとして使用することができる。これらは一種単独で用いることもできるし、二種以上で併用することもできる。
【0031】また、前述したようなダイヤモンドと炭化ケイ素の混合物からなる中間層を形成するには、所望により加工用部材母材表面にダイヤモンド生成条件で1〜5時間程度保持してダイヤモンド核発生処理を行った後、反応ガスとして、水素と、炭素含有ガスおよびケイ素含有ガスを導入する。前記ケイ素含有ガスとしては、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素などのハロゲン化物、二酸化ケイ素などの酸化物の他に、モノ(ジ、トリ、テトラ、ペンタ)シラン、モノ(ジ、トリ、テトラ)メチルシランなどのシラン化合物、トリメチルシラノールなどのシラノール化合物などが挙げられる。これらは一種単独で用いることもできるし、二種以上で併用することもできる。
【0032】このように、本発明の加工用部材における硬質炭素膜は、微粒組織のダイヤモンドを主体とするものであるために、緻密質でかつ膜表面にボイド等の欠陥がなく平滑性に優れたものである。したがって樹脂を加工する部材表面にこの硬質炭素膜を形成すると、硬質炭素膜の表面の平滑性を高めるための研磨工程を必要とせず、あるいは研磨してもわずかな加工で平滑な膜面を形成することができる。
【0033】しかも、耐摩耗性、摺動性、離型性、および樹脂の耐溶着性に優れ、加工品の良好な仕上げ面と加工用部材の長寿命化を図ることができる。
【0034】また、部材表面と硬質炭素膜との間に、少なくともダイヤモンドと金属炭化物とを含む中間層を介在させることにより、硬質炭素膜の母材への密着性を高め、さらに加工用部材の長寿命化を図ることができる。
【0035】
【実施例】
(実施例1)電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD装置の炉内に、成形型として、窒化ケイ素質焼結体(Y2O33重量%、Al2O3 4重量%含有)、超硬合金(WC90重量%−TiC4重量%−Co6重量%)、チタン合金(Ti−6Al−4V)を母材材種とした成形金型を設置して硬質炭素膜の成膜を行った。
【0036】そこに、H2 297sccm、CH4 3sccmのガスを用いて、ガス濃度1%、母材温度650℃、炉内圧力0.1torrで3時間処理して、ダイヤモンド核を発生させた後、原料ガスとしてH2 ガス、CH4 ガスおよびSi(CH34 ガスを用いて、H2 297sccmCH4 3sccmSi(CH3)4 0.3sccmの割合でガス濃度1%、母材温度650℃、炉内圧力0.05torrの条件で電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマCVD法により最大2kガウスの強度の磁場を印加させ、マイクロ波出力3.0kWの条件で10時間成膜して、ダイヤモンドと炭化ケイ素が混在した厚さ1.0μmの中間層を形成した。
【0037】また、表1中、試料No.4,10については、中間層形成をH2 ガス 300sccmSi(CH3)4ガス 0.3sccmのガス比とする以外は前記と全く同様にして、炭化ケイ素からなる中間層を1μmの厚みで形成し、同様に評価を行った。
【0038】次に、中間層の上に、純度99.9%以上のH2 ガス、CH4 ガス、CO2 ガスを用いて、表1に示すガス比、ガス濃度、母材温度、炉内圧力で成膜を行い、4μmの硬質炭素膜を形成した。
【0039】成膜した硬質炭素膜に対して、膜表面のラマン分光スペクトル分析を行い、ラマン分光スペクトルチャートから1100cm-1と1700cm-1の位置間で線を引き、これをベースラインとし、1160±40cm-1に存在する最大ピークのピーク強度をH1 、1340±40cm-1に存在する最大ピークのピーク強度をH2 として、H1 /H2 で表される強度比を算出した。尚、表1中、試料No.3と試料No.8についてチャートを図1、図2に示した。なお、ラマン分光分析における発振源として、レーザーはArレーザー(発振線488.0nm)を用いた。また、表面粗さ(Rmax)を測定し表1に示した。
【0040】得られた成形型を用いて、ポリプロピレンの成形を最高100万回繰り返し行った。成形回数と凝着に関する結果を表1に示す。
【0041】(比較例1)硬質炭素膜を被覆しない超硬合金を用いて、実施例1と同様の成形試験を行い、その結果を表1試料No.17に示した。
【0042】(比較例2)型母材として実施例において用いた窒化ケイ素質焼結体および超硬合金を用いて、マイクロ波CVD法によって、中間層形成を実施例と同じガス比で、ガス濃度1%、母材温度950℃、炉内圧力30torrの条件で10時間成膜した後、さらに表1の試料No.8、13に示す条件で成膜し4μmの硬質炭素膜を形成した。これについて、実施例1と同様の樹脂成形試験を行い、その結果を表1試料No.8、13に示した。
【0043】
【表1】

【0044】表1の結果によれば、H1 /H2 が0.05〜2の硬質炭素膜を形成した本発明の加工用部材(試料No.2〜6、9〜11、14〜15)は、表面粗さがRmax0.2μm以下の平滑性に優れるもので膜中にはボイドなどの発生も全くないものであった。そして、成形試験においても耐摩耗性に優れるとともに樹脂のの溶着等もなく成形品も良好な仕上げ面を形成することができた。また硬質炭素膜の密着性の点では、ダイヤモンドと炭化ケイ素からなる中間層を形成した型材では、成形試験100万回後も全く剥離は認められなかったが、中間層が炭化ケイ素のみからなる試料No.4、10では、試験後に一部に炭素膜の剥離が観察された。
【0045】また、比較例として従来の超硬合金では5000回程度で樹脂の溶着がみられ、離型性も劣化した。また、マイクロ波CVD法等で作製された硬質炭素膜や、成膜条件によってH1 /H2 の比率が0.05よりも小さい試料No.1、8、13では、いずれも表面粗さがRmax1μmを越えるものであり、成形試験において樹脂の溶着および離型性劣化が発生した。またH1 /H2 の比率が2よりも大きい試料No.7、12、16では、硬質炭素膜の硬度が低下し試験後に1〜2μmの膜の摩耗が観察された。
【0046】(実施例2)実施例1で用いた窒化ケイ素、チタン合金および超硬合金からなるピン(ピン先端の曲率半径R=4.763mm)を母材材種とし実施例1と同様にして中間層1μmおよび硬質炭素膜5μmを成膜を行った。なお、X線回折測定により中間層からはいずれもダイヤモンドと炭化ケイ素の存在が確認された。
【0047】得られたピンに対して、摺動特性をピンオンディスク法により評価した。摺動試験の条件は、室温、大気中、無潤滑において、荷重39.2N、摺動速度2m/sec、24時間で行った。ディスクにはポリエチレンを用いた。摺動試験は、ピン先への樹脂の凝着や硬質炭素膜の剥離などが発覚した時点で試験を停止し、耐久摺動回数と停止原因を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】本発明品(試料No.19〜21、24〜26)は、24時間の摺動試験を行っても溶着も発生しなかった。一方、中間層が炭化ケイ素のみからなる(試料No.25)では、24時間の摺動試験には耐えうるが、一部に膜剥離が観察された。
【0050】また、超硬合金(試料No.28)は30分程度で、ラマン分光スペクトルのピーク強度比(H1 /H2 )が小さい試料No.18、23は15〜18時間でそれぞれ凝着が生じた。一方、ラマン分光スペクトルのピーク強度比(H1 /H2 )が大きい試料No.22、27は試験後にいずれも3μmの膜が摩滅が生じた。
【0051】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の加工用部材は、硬質炭素膜がボイドがなく、平滑性に優れるために、耐摩耗性、耐溶着性に優れるので、加工用部材、特に仕上げ加工用の加工用部材としての長寿命化を図ることができる。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013