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発明の名称 液体噴射ノズル
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−6222
公開日 平成10年(1998)1月13日
出願番号 特願平8−155800
出願日 平成8年(1996)6月17日
代理人
発明者 厚主 成生 / 福丸 文雄
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】内部を流動体が流れる管部を具備し、該管部から圧力付勢された流動体を噴射するためのノズルにおいて、前記流動体と接触する管部内壁をラマン分光スペクトルにおいて1340±40cm-1と1160±40cm-1にピークが存在し、且つ1160±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH1 、1340±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH2 とした時、H1 /H2 で表されるピーク強度比が0.05乃至2の硬質炭素膜により被覆したことを特徴とする液体噴射ノズル。
【請求項2】前記硬質炭素膜は、非柱状組織からなることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ノズル。
【請求項3】前記管部と前記硬質炭素膜との間に、少なくともダイヤモンドと金属炭化物を含有する中間層が存在することを特徴とする請求項1記載の液体噴射ノズル。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、研磨粒子や研削粒子を含んだ液体を高圧下で噴射させて加工を行うウオータージェット加工装置用のノズルや、インクを噴射させて印字を行うインクジェットプリンタ装置のヘッドノズル、セラミックスラリー等の硬質物質を含む液体を型内に射出して成形する射出成形用のノズルなどに使用される液体噴射ノズルに関するものである。
【0002】
【従来技術】一般に、流動体と接する面には少なからず摩耗が生じ、特に流動体を高速で流したり、流動体中に硬度の高い物質が含まれている場合には、摩耗は加速度的に進行する。
【0003】例えば、ウオータージェット加工装置におけるノズルは、高圧の水を細径のノズルにて噴出させるために摩耗が激しく、アルミナやガーネットなどの研削粒子を含む場合にはさらに摩耗は増大する。このため、ウオータージェット加工装置のノズルは、従来より金属やセラミックス等の材料によって形成されてきたが、その加工速度や加工力を高めるために流動体の高速化等が進むにつれてさらに高い耐摩耗性が要求され、最近では、管内部に粒径0.1〜2μmの柱状晶の微細なダイヤモンド層を化学蒸着させたもの(特開平6−8146号)、円柱状の基体にCVDダイヤモンドを析出させ基体を溶解除去し、得られたダイヤモンドチューブの外周を超硬合金で強度補強したもの(実公平6−34936号)、環状基体の内面にCVD法ダイヤモンド層を形成したもの(特開昭63−315597号)等が提案されている。
【0004】また、液体インクに圧力を付与してノズルより噴射させて印字を行うインクジェットプリンタのノズルにおいても、ノズル部端面の耐摩耗性や耐インク性を向上させるために、オリフィス端部にダイヤモンド状カーボンを被覆することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のダイヤモンド膜は、膜表面にダイヤモンド粒による1〜20μmの凹凸が存在する。このような表面の凹凸は、流動体との接触によって流動体の流れが乱されたり、それと同時に膜に過度の応力が加わりダイヤモンド膜が剥離する等の問題が生じるために、ダイヤモンド膜面を研磨して平滑性を高める必要があった。ところが、ダイヤモンド膜はそもそも高硬度であるために、研磨加工が難しく、しかも微細なノズル内面を研磨加工するのは困難であった。
【0006】また、従来のダイヤモンド膜は、表面の凹凸に加え、ダイヤモンド結晶粒間や膜内部にボイドが存在しており、流動体との接触によって表面が研磨されてボイドが表面に露出すると、流動体の流れが変化したり、印字性能が低下するなど長期にわたり安定した性能が発揮できない等の問題があった。しかも、ダイヤモンド結晶の配列が柱状であると、膜の強度に異方性が生じ、膜の厚み方向へのクラックが発生しやすい等の問題があった。
【0007】このような問題に対しては、例えば、ダイヤモンド膜を形成する基板に特定の傷つけ処理を行いダイヤモンド膜の密着性を高めたり(特開昭61−201698号公報)、基体の表面にダイヤモンド層を介してダイヤモンド状カーボン膜を形成して膜表面のボイドを無くしたり(特開平3−28373号公報)、ダイヤモンドとグラファイトで構成される硬質炭素膜を形成して表面の平滑性と摺動性を高める(特開平5−277807号公報)などが提案されている。
【0008】また、ダイヤモンド膜の研磨方法として、例えば、ダイヤモンド膜と金属体とを接触させ非酸化性雰囲気中で加熱し摺動させる方法(特開昭63−144940号公報)、ダイヤモンド膜を加熱下で流動性金属と接触させる方法(特開平2−160700号公報)等も提案されている。
【0009】しかしながら、上記の先行技術によれば、密着性を高めるために成膜前に別途処理が必要でありながら、充分な密着性が得られておらず,また,膜質をダイヤモンド中にグラファイトやダイヤモンド状カーボンなどを混入させる場合,ダイヤモンド膜そのものの硬度が低下しダイヤモンドの優れた特性が発揮されないという問題があった。
【0010】また、研磨方法として金属体や流動性金属と接触させる方法では、研磨するための装置が複雑になり、しかも細径のノズル内面の研磨には適さない等の問題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するための方法について検討を重ねた結果、ラマン分光スペクトルにおいて1340±40cm-1と1160±40cm-1にピークが存在する硬質炭素膜は、成膜状態において表面が平滑で従来のようなダイヤモンド結晶粒による凹凸がなく、しかも膜表面および内部にボイドが存在しないという特性を有することから、内部を流動体が流れる管部を具備し、その管部先端から高圧に付勢された流動体を噴射するためのノズル内面に前記硬質炭素膜を形成することにより、高圧印加状態での流動体と接触した場合においても、膜剥離等の発生がなく、高い耐摩耗性を実現することができることを知見し、本発明に至った。
【0012】即ち、本発明の液体噴射ノズルは、内部を流動体が流れる管部を具備し、該管部から高圧に付勢された流動体を噴射するためのノズルにおいて、前記流動体と接触する管部内壁をラマン分光スペクトルにおいて1340±40cm-1と1160±40cm-1にピークが存在し、且つ1160±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH1 、1340±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH2 とした時、H1 /H2 で表されるピーク強度比が0.05乃至2の硬質炭素膜により被覆したことを特徴とするものであり、また、前記硬質炭素膜は、非柱状組織からなること、さらには、前記管部と前記硬質炭素膜との間に、少なくともダイヤモンドと金属炭化物を含有する中間層が存在することを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明における液体噴射ノズルとしては、具体的には、研磨粒子や研削粒子を含んだ液体を高圧下で噴射させて加工を行うウオータージェット加工装置用のノズルのように、非常に過酷な条件に晒される場合の他、インクを噴射させて印字を行うインクジェットプリンタ装置のヘッド、セラミック粉末などの硬質物質を含むスラリーを型内に射出して成形する射出成形機における射出ノズルなどに適用されるものである。
【0014】本発明における液体噴射ノズルの典型的な構造を図1に示した。図1によれば、噴射ノズル1は、流動体が流れる管部2を具備するもので、管部2の端部3から高圧に付勢された流動体が噴射される。本発明によれば、図1のノズルにおいて、高圧に付勢された流動体と直接接触するノズル1内面に、ダイヤモンドを主とする硬質炭素膜4を形成したものである。
【0015】一般に知られるダイヤモンド膜は、高純度ダイヤモンドからなり、炭素原子間がSP3 混成で結合された構造からなり、ラマン分光スペクトルにおいて、1340±40cm-1にのみピークを有するものであり、場合によってSP2 混成で結合されたグラファイト構造の炭素等を含む場合は、1500〜1600cm-1付近にブロードなピークを有する場合もある。また、このダイヤモンド膜は、ダイヤモンド結晶粒が大きいことにより、結晶の自形による成膜後の表面の凹凸が大きく、結晶粒界が存在し、また薄膜内部にボイドが多量に存在する。
【0016】これに対して、本発明において形成された硬質炭素膜は、ラマン分光スペクトルにおいて、1340±40cm-1に加え、1160±40cm-1にピークを有するものである。この1160±40cm-1のピークは、ダイヤモンド構造からなるものの、その粒子径が0.1μm以下、特に0.08μm以下の極めて微細な結晶のダイヤモンド粒子からなるためにその結晶の周期が短いことを意味するものと考えられる。
【0017】従って、本発明における硬質炭素膜は、ダイヤモンド結晶が極めて微細な粒子により構成されるために従来のようなダイヤモンド結晶自形による膜表面に凹凸がなく成膜された表面はボイドもなく非常に平滑性に優れているために、あらゆるノズル内面形状に整合した平滑で緻密な膜面を形成でき、しかも研磨を行う必要がない。仮に、高精度の表面が要求され、膜表面を研磨する必要がある時も、従来のダイヤモンド膜に比較してわずかな研磨で平滑なボイドのない膜面を形成できる。
【0018】そのために、本発明の液体噴射ノズルは、ダイヤモンドの優れた硬度を損なうことなく、流動体との接触において優れた耐摩耗性を発揮し、ノズル内面の摩耗を防止することができる。しかも、膜表面に凹凸がなく、膜表面や膜内部にボイドがないために、流動体との接触において過度の応力が膜に付与されることがないために膜の剥離がなく、しかも流動体が膜表面に凝着することなく、また流動体の流れに影響を与えることがない等の効果を奏するものである。
【0019】本発明における硬質炭素膜のラマン分光スペクトルにおける1160±40cm-1のピーク強度について具体的に説明する。図1に示すように得られたラマンスペクトルの曲線において、1100cm-1と1700cm-1の位置間で斜線を引き、これをベースラインとして、1160±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の高いピーク強度をH1 、1340±40cm-1に存在するピークのうち最も強度の高いピーク強度をH2 とする。このときH1 /H2 で表されるピーク強度比が0.05乃至2であることが重要である。
【0020】このピーク強度比が小さすぎると、ダイヤモンド結晶粒子が大きく成長し過ぎ、膜中にボイドが発生したり膜表面に凹凸が生じることとなり、耐摩耗性が低下したり膜剥離が発生したり、さらには流動体の流れに影響を及ぼす可能性がある。また、ピーク強度比が大きすぎると非晶質ダイヤモンドの存在が増加し、硬質炭素膜自体の硬度が低下し耐摩耗性が低下する場合がある。このピーク強度比は特に0.1乃至1.0であることが望ましい。
【0021】本発明の液体噴射ノズルによれば、上記硬質炭素膜は、所定の管基体の表面に被覆されたものであることが望ましい。その場合、硬質炭素膜は、基体との密着性が高いことが要求される。硬質炭素膜を形成し得る基体材種としては、例えば、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックス、チタン合金、超硬合金、サーメット、ステンレス鋼などの金属が挙げられる。これらの中でも膜との密着性の点で、窒化ケイ素や炭化ケイ素を主とする焼結体、Ti合金、WC基超硬合金、サーメットからなることが最も望ましい。
【0022】また、本発明によれば、基体表面と硬質炭素膜との間に、少なくともダイヤモンドと金属炭化物との複合体からなる中間層を介在させることにより、さらに硬質炭素膜と基体との密着性を高めることができる。
【0023】このような中間層の介在によって硬質炭素膜と母材との密着強度が向上する理由は次のように考えられる。原子同士は電子を介在することにより結合されているが、一般に、原子間の電子が一方に存在して電気的な結び付きにより結合しているイオン結合よりも、電子を双方の原子で共有している共有結合の方が強い結合力を持つ。ダイヤモンドは炭素の共有結合により構成されているので強い結合力を有している。したがって、ダイヤモンドと異種化合物との密着強度を向上させるためには類似の結合様式である共有結合性の化合物であることが望ましいと考えられる。またダイヤモンドの成分である炭素を含む化合物の方がより整合性がよいと思われる。金属炭化物は数多く存在するがその多くはイオン性結合を主体としたものである。共有結合性炭化物としては炭化ケイ素や炭化ホウ素があるが、本発明の液体噴射ノズルにおいては炭化ケイ素が最も望ましい。
【0024】さらに、この硬質炭素膜は、ノズル基体の表面に1〜10μmの厚みで形成されることが望ましく、しかも硬質炭素膜表面は、表面粗さ(Rmax)が1μm以下であることが望ましく、本発明に従えば、硬質炭素膜を成膜段階で1μm以下、特に0.5μm以下の表面粗さに制御できる。
【0025】本発明において、液体噴射ノズルの内面に硬質炭素膜を作製する方法としては、従来より炭素膜を生成手段として、マイクロ波や高周波によりプラズマを発生させて所定の基体表面に炭素膜を形成する、いわゆるプラズマCVD法あるいは熱フィラメント法が主流である。しかしながら、プラズマCVD法では、600〜1000℃の比較的高温で成膜する必要があるために、ダイヤモンド粒が大きくなりやすくダイヤモンド結晶の自形による凹凸が発生しやすい。しかも、プラズマCVD法では、成膜時の圧力が高く、プラズマ発生領域が小さく、プラズマ密度が低すぎるために、基体が複雑な構造を有する場合や曲面構造を有する場合、その構造に沿った均一なプラズマが得られず、膜厚分布が不均一になりやすい。一方、熱フィラメントCVD法でも、フィラメントが切れやすく、また膜厚のバラツキを抑制するために母材の形状に合わせてフィラメントを設置する必要があり、装置が汎用性に欠けるなどの欠点を有している。
【0026】これに対して、プラズマCVD法におけるプラズマ発生領域に磁界をかけた、いわゆる電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD法によれば、150〜700℃の比較的低温で成膜し、低圧下(1torr以下)で高密度のプラズマを得ることができるために、プラズマを広い領域に均一に発生させることができ、通常のプラズマCVD法に比較して約10倍程度の面積に均一に膜の形成を行うことができる。
【0027】本発明における硬質炭素膜は、この電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD法(ECRプラズマCVD法)によって形成される。この方法では、内部に所定の母材が設置された反応炉内に反応ガスを導入すると同時に2.45GHzのマイクロ波を導入する。それと同時にこの領域に対して875ガウス以上のレベルの磁界を印加する。これにより電子はサイクロトロン周波数f=eB/2πm(但し,m:電子の質量、e:電子の電荷,B:磁束密度)にもとづきサイクロトロン運動を起こす。この周波数がマイクロ波の周波数(2.45GHz)と一致すると共鳴し、電子はマイクロ波のエネルギーを著しく吸収して加速され、中性分子に衝突、電離を生じせしめて高密度のプラズマを生成するようになる。この時の母材の温度は150〜700℃、炉内圧力1×10-2〜1torrに設定されるのがよい。
【0028】かかる方法によれば、成膜時の母材温度、炉内圧力および反応ガス濃度を変化させることにより成膜される硬質炭素膜の成分や組織等が変化する。具体的には、炉内圧力が高くなるとプラズマの領域が小さくなり、膜の成長速度が下がるが結晶性は向上する傾向にある。また、反応ガス濃度が高くなると、膜を構成する粒子の大きさが小さくなり、結晶性が悪くなる傾向にある。これらの条件を具体的には後述する実施例に記載されるように適宜制御することにより、前述したH1 /H2 比を制御することができる。また、上記のようにして作製されるH1 /H2 比が0.05以上の硬質炭素膜は、従来のダイヤモンド膜とは異なり、非柱状組織からなるものであり、柱状組織に比較して強度の異方性がなく、厚み方向へのクラックの発生も抑制される。
【0029】上記の成膜方法において、本発明における硬質炭素膜を形成する場合、硬質炭素膜は、原料ガスとして水素と、炭素含有ガスを用いる。用いる炭素含有ガスとしては、例えば、メタン、エタン、プロパンなどのアルカン類、エチレン、プロピレンなどのアルケン類、アセチレンなどのアルキン類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類、シクロプロパンなどのシクロパラフィン類、シクロペンテンなどのシクロオレフィン類などが挙げられる。また一酸化炭素、二酸化炭素、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトンなどの含酸素炭素化合物、モノ(ジ、トリ)メチルアミン、モノ(ジ、トリ)エチルアミンなどの含窒素炭素化合物なども炭素源ガスとして使用することができる。これらは一種単独で用いることもできるし、二種以上で併用することもできる。
【0030】また、前述したようなダイヤモンドと炭化ケイ素の混合物からなる中間層を形成するには、所望により基体表面にダイヤモンド生成条件で1〜5時間程度保持してダイヤモンド核発生処理を行った後、反応ガスとして、水素と、炭素含有ガスおよびケイ素含有ガスを導入する。前記ケイ素含有ガスとしては、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素などのハロゲン化物、二酸化ケイ素などの酸化物の他に、モノ(ジ、トリ、テトラ、ペンタ)シラン、モノ(ジ、トリ、テトラ)メチルシランなどのシラン化合物、トリメチルシラノールなどのシラノール化合物などが挙げられる。これらは一種単独で用いることもできるし、二種以上で併用することもできる。
【0031】上記のようにして形成される中間層は、ダイヤモンドと金属炭化物が層状に分離して存在しているのではなく、ダイヤモンドの周りを金属炭化物が取り囲むような構造を呈するもので、ダイヤモンドが島状に分布した構造となるためにいわゆるアンカー効果によっても密着性が向上すると考えられる。
【0032】なお、本発明に基づきノズル内面に硬質炭素膜を形成するには、プラズマ発生領域に設置されたノズル基体の管内に強制的にダイヤモンド生成用ガスを導入して成膜を行うか、またはノズルを管を縦割りの2分割構造体とし、分割されたノズルの管内面に硬質炭素膜を形成した後、それらを張り合わせて接合することによってノズルを形成することもできる。また、硬質炭素膜を形成する箇所としては、必ずしもノズルの管内の全面に施す必要はなく、ノズル内の特にオリフィス部分等のように耐摩耗性が特に要求される部分にのみ形成することも当然可能である。
【0033】
【実施例】
(実施例)電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD装置の炉内に、ノズル基体として、窒化ケイ素質焼結体(Y2O33重量%、Al2O3 4重量%含有)、Ti合金(Ti−6%Al−4%V)からなるジェットノズル(内径2mm)を設置した。
【0034】そして、H2 297sccm、CH4 3sccmのガスを用いてガス濃度1%で、ノズル管内に強制的に導入し、基体温度650℃、炉内圧力0.1torrで3時間処理して、ダイヤモンド核を発生させた後、原料ガスとしてH2 ガス、CH4 ガスおよびSi(CH3 4 ガスを用いて、H2 297sccmCH4 3sccmSi(CH3)4 0.3sccmの割合でガス濃度1%、母材温度650℃、炉内圧力0.05torrの条件で電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマCVD法により最大2kガウスの強度の磁場を印加させ、マイクロ波出力3.0kWの条件で10時間成膜して、ダイヤモンドと炭化ケイ素が混在した厚さ1.0μmの中間層を形成した。
【0035】また、表1中、試料No.4,10については、中間層形成をH2 ガス 300sccmSi(CH3)4ガス 0.3sccmのガス比とする以外は前記と全く同様にして、炭化ケイ素からなる中間層を1μmの厚みで形成し、同様に評価を行った。
【0036】次に、中間層の上に、純度99.9%以上のH2 ガス、CH4 ガス、CO2 ガスを用いて、表1に示すガス比、ガス濃度、母材温度、炉内圧力で成膜を行い、5μmの硬質炭素膜を形成した。
【0037】成膜した硬質炭素膜に対して、膜表面のラマン分光スペクトル分析を行い、ラマン分光スペクトルチャートから1100cm-1と1700cm-1の位置間で線を引き、これをベースラインとし、1160±40cm-1に存在する最大ピークのピーク強度をH1 、1340±40cm-1に存在する最大ピークのピーク強度をH2 として、H1 /H2 で表される強度比を算出した。尚、表1中、試料No.3と試料No.8についてチャートを図2、図3に示した。なお、ラマン分光分析における発振源として、レーザーはArレーザー(発振線488.0nm)を用いた。
【0038】得られたジェットノズルをウオータージェット加工装置に取付け、ジェット圧力3000kg/cm2 、水に対して混入砥粒として#80(80メッシュ通過粉末)のアルミナ粉末を添加し、砥粒0.3kg/分の噴射条件で5分間噴射させた。そして、試験前後のノズル噴出口の内径変化を測定し、径の変化量を摩耗量として表1に示した。
【0039】(比較例1)硬質炭素膜を被覆しない超硬合金(WC90重量%−TiC4重量%−Co6重量%)および焼結ダイヤモンドからなるノズルを用いて、実施例1と同様の試験を行いその結果を表1の試料No.14、No.15に示した。
【0040】(比較例2)ノズル基体として実施例において用いたTi合金を用いて、マイクロ波CVD法によって、中間層形成を実施例と同じガス比で、ガス濃度1%、母材温度950℃、炉内圧力30torrの条件で10時間成膜した後、さらに表1に示す条件で成膜し5μmの硬質炭素膜を形成した。これらのノズルについても、実施例1と同様の試験を行い、その結果を表1試料No.8に示した。
【0041】
【表1】

【0042】表1の結果によれば、H1 /H2 が0.05〜2の硬質炭素膜を形成した本発明のノズル(試料No.2〜6、9〜11、13)は、いずれも非柱状組織からなるもので、表面粗さがRmax0.2μm以下の平滑性に優れるもので膜中にはボイドなどの発生も全くないものであった。そして、試験においても耐摩耗性に優れ膜の剥離等の発生もほとんど観察されなかった。
【0043】また、比較例として超硬合金では、摩耗量が大きく、焼結ダイヤモンドにおいても摩耗が大きいものであった。また、マイクロ波CVD法等で作製された硬質炭素膜や、成膜条件によってH1 /H2 の比率が0.05よりも小さい試料No.1、8では、いずれも柱状組織からなるもので表面に凹凸が観察され、いずれも表面粗さがRmax1μmを越えるものであり、試験において一部に膜剥離が観察された。またH1 /H2 の比率が2よりも大きい試料No.7、12では、硬質炭素膜の硬度が低下し耐摩耗性が低いものであった。
【0044】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の液体噴射ノズルは、硬質炭素膜がボイドがなく平滑性に優れるために、流動体の接触において耐摩耗性に優れるとともに、膜の剥離等を防止できる。しかも、流動体の流れに影響がなく、耐久性に優れたノズルを提供できる。




 

 


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