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発明の名称 無機分離膜の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−5557
公開日 平成10年(1998)1月13日
出願番号 特願平8−166240
出願日 平成8年(1996)6月26日
代理人
発明者 大嶋 仁英 / 積 洋二
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】セラミック多孔質支持管の外表面に、アルミニウムのアルコキシドとシリコンのアルコキシドをアルコール溶媒中で複合化した複合アルコキシドに、前記アルミニウムまたはシリコンのアルコキシドのいずれか多い方の1molに対して5〜100molの水と、アルコールとの混合溶液を添加して得られる複合ゾルを付着させ、乾燥後、400〜700℃の温度で焼成することを特徴とする無機分離膜の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種混合気体等の混合流体から特定成分を分離するのに好適な無機分離膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より各種濾過分離膜あるいは透過膜等には有機材料をはじめとする各種材料からなる多孔質体が用いられてきたが、耐熱性や耐薬品性、耐衝撃性、耐摩耗性等の要求が高くなるにつれ、熱的、化学安定性及び機械的に優れた各種無機多孔質体が注目されるようになってきた。
【0003】かかる耐熱、耐薬品性、耐圧に優れた多孔質の無機分離膜の性能は、該膜を形成するに用いた材料の細孔径や細孔容積、細孔径分布に影響されるものであり、例えば、分子量の差が大きいH2 とN2 、H2 とCO等の分離に際しては、クヌッセン拡散支配となるように、多孔質膜の細孔径を数10Åから数100Å程度に制御する必要があり、一方、分子量の差が小さいCO2 とN2 などの分離に際しては、表面拡散支配となるように、多孔質膜の細孔径を10Å以下に制御する必要がある。
【0004】具体的には、ゾルゲル法で作製されるAl2 3 膜は、アルコキシドを多量の水で加水分解して得られたゾルを多孔質支持管の外表面に付着させ、乾燥、焼成して付与することにより多孔質膜を比較的簡便に作製でき、得られたAl2 3多孔質膜の細孔径は、直径が数10Å程度の比較的小さな細孔を有するものとなる。
【0005】また、SiO2 、TiO2 等の膜は、アルコキシドをアルコール溶媒中で加水分解して得られるゾルを利用することで、ガラス基板等の表面が平滑な基板上に容易にそれらの膜を作製することができ、その膜も数Å程度の細孔を有するものとなっている(特開平5−117053号公報、特開平7−313853号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記Al2 3 膜は細孔径が数10Å程度であり、分子量の差が小さい混合気体を表面拡散支配に基づき分離するのに適用するには、Al2 3 膜の細孔径が大き過ぎるという課題があった。
【0007】一方、前記SiO2 、TiO2 等の膜は、アルコキシドをアルコール溶媒中で加水分解して得られるゾルを利用して多孔質基板上に浸漬塗布しても、該基板内への浸透で膜が形成されなかったり、たとえ膜が形成されてもクラック、剥離等の発生が見られるという課題があった。
【0008】
【発明の目的】本発明は前記課題に鑑み成されたもので、その目的は、微細な孔径を有した多孔質な支持体表面に、細孔径が10Å以下のクラックや剥離等がなく、特定ガス成分の透過率が高い、即ち、特定成分の分離係数の高い多孔質膜を形成することができる無機分離膜の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、多孔質なセラミック支持管の表面にアルミニウムのアルコキシドとシリコンのアルコキシドをアルコール溶媒中で複合化し、加水分解して得られるゾルを付着させ、乾燥した後、焼成するという一連の操作を繰り返し行うことにより、クラックや剥離等が発生しないAl2 3 −SiO2 複合膜を作製することができ、該膜は特定ガス成分の分離係数が向上することを見いだした。
【0010】即ち、本発明の無機分離膜の製造方法は、アルミニウムのアルコキシドとシリコンのアルコキシドをアルコール溶媒中で複合化して複合アルコキシドを作製し、該複合アルコキシドを前記アルミニウムまたはシリコンのアルコキシドのいずれか多い方の1molに対して5〜100molの水と、アルコールとを混合した溶液で加水分解して複合ゾルを調製し、該複合ゾルを多孔質のセラミック支持管の外表面に付着させ、乾燥した後、400〜700℃の温度で焼成して付与することを特徴とするものである。
【0011】
【作用】本発明の無機分離膜の製造方法によれば、多孔質なセラミック支持管の外表面に、アルミニウムのアルコキシドとシリコンのアルコキシドをアルコール溶媒中で複合化し、水分量を前記アルミニウム及びシリコンのアルコキシドのいずれか多い方の1molに対して5〜100molの割合で添加することにより加水分解して得られるゾルを付着させ、乾燥、焼成することから、存在するアルコキシドの反応基であるアルコキシル基のほとんど全てが水と反応するのに十分以上の水を添加することにより、重縮合が三次元的に発達し、強固なネットワーク構造を有するゾルが得られ、乾燥、焼成後においても、クラックや剥離等の発生のないAl2 3 −SiO2 複合膜を得ることができ、その上、該膜の細孔はÅオーダーの細孔径を有するようになり、特定成分の分離係数を向上させることができることになる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の無機分離膜の製造方法について詳述する。
【0013】本発明は、セラミック多孔質支持管の外表面に、アルミニウムとシリコンの各アルコキシドをアルコール等の有機溶媒中で複合化し、この複合アルコキシドを加水分解することで作製した複合ゾルを浸漬等の手段で付着させ、該付着物を乾燥した後、大気中で焼成することにより、微細な細孔径を有する複合膜の作製が可能となり、また、特定ガス成分に対する透過効率が向上した無機分離膜が得られるというものである。
【0014】本発明において、アルミニウムとシリコンの各アルコキシドの複合化は、各アルコキシドをアルコール溶液中で加熱還流することにより作製できるが、より好ましくは、各アルコキシドの加水分解の反応速度には大きな違いがあるため、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを塩酸等の無機酸を用いてアルコール溶液中で部分加水分解することにより調製された部分加水分解ゾルと、アルミニウムセカンダリーブトキシド等のトリアルコキシアルミニウムとを混合攪拌することにより作製できる。
【0015】更に、より加水分解の反応速度の早いアルミニウムのアルコキシドに対しては、アルミニウムのアルコキシドのアルコール溶液中にアルコキシドの水に対する反応性を低下せしめる化合物を添加することが好ましい。
【0016】前記アルコキシドの水に対する反応性を低下せしめる化合物とは、R1 2 NCH2 CH2 OH(式中、R1 またはR2 はそれぞれ、H、CH3 、C2 5 、CH3 CH2 OHのいずれか一つ)で表されるエタノールアミン、あるいはβ−ジケトン、無水酢酸、アセト酢酸エステル、ジカルボン酸エステル等が挙げられる。
【0017】また、前記化合物、即ち、安定化剤の添加量は、その量が0.1モルより少ないと実質的に安定化剤としての効果がないため、アルミニウムのアルコキシド1molに対して0.1mol以上であることが好ましい。
【0018】一方、前記アルミニウムあるいはシリコンの各アルコキシドのアルコール溶液としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等の一価のアルコールもしくはエチレングリコール、プロピレングリコール等の二価のアルコールが用いられる。
【0019】以上のように、アルミニウムとシリコンのアルコキシドを複合化した複合アルコキシドのアルコール溶液に、これを加水分解するためにアルミニウムもしくはシリコンのアルコキシドのいずれか多い方の1molに対して5〜100molの水と、アルコールとの混合溶液を滴下することにより、複合ゾルを作製することができる。
【0020】前記水の量をアルミニウムもしくはシリコンのアルコキシドのいずれか多い方の1molに対して5〜100molと限定するのは、作製した複合ゾルをセラミック多孔質支持管の外表面に付着させる際、前記水の量が5molより少ないとゾルの重縮合が3次元的に発達せず、ゾル自身の構造が弱く、そのまま前記多孔質支持管の外表面に付着させて乾燥、焼成の過程を経ると、それらの過程での収縮によるクラックや剥離等の発生を避けることが事実上不可能となり、逆に100molを越えると得られるゾルはコロイド状のゾルとなり、細孔径が増大したり、実質的にゾルの濃度が低下し、多孔質なセラミック支持管内へのゾルの浸透が増え、成膜が困難になるためである。
【0021】また、本発明において用いられる多孔質なセラミック支持管は、一般にα−Al2 3 多孔質管が用いられるが、これ以外にもZrO2 、SiO2 、Si3 4 、ガラス等の各種セラミック支持管を用いることができ、その細孔径は0.01〜10μm、好ましくは0.05〜2μmであることが好ましい。
【0022】このような多孔質なセラミック支持管の外表面へ複合ゾルを付着させるには、該複合ゾル中にセラミック支持管を浸漬し、乾燥、焼成してAl2 3 −SiO2 複合膜を付与することができる。
【0023】また、前記Al2 3 −SiO2 複合ゾル中への浸漬、及びそこからの引き上げは定速モーターを用いて行うことができ、その後、室温条件下で乾燥させ、次いで400〜700℃の温度で約0.5〜10時間、焼成する。
【0024】前述のような一連の操作は、一回に付与される膜成分が厚いと乾燥、焼成時に発生する収縮によりクラックや剥離等を避けることができないため複数回繰り返し行うことが好ましいが、前記複合ゾルの溶媒として用いたアルコール等で該ゾルを希釈することにより、一回に付与される膜成分を薄くする必要がある。
【0025】
【実施例】以下、本発明の無機分離膜の製造方法を詳細に述べる。
【0026】(実施例1)アルミニウムセカンダリーブトキシド0.25molを2メトキシエタノール0.75molに溶解したものに、ケイ酸エチル1molに2メトキシエタノール4molと水1molと硝酸0.07molとを混合した溶液を添加して作製した部分加水分解ゾルを加えて複合アルコキシドを作製した。
【0027】次に、この複合アルコキシドに、水15molと2メトキシエタノール3molの混合溶液を滴下して複合ゾルを作製した後、更に、溶媒である2メトキシエタノール15molを加えて希釈し、成膜用複合ゾルを作製した。
【0028】かくして得られた成膜用複合ゾルを用いて、気孔率39%、細孔径0.3μmのα−Al2 3 多孔質支持管の外表面に浸漬法により前記成膜用複合ゾルを付着させ、室温で乾燥後、500℃で焼成する操作を15回繰り返し、Al2 3−SiO2 複合膜を付与したα−Al2 3 多孔質支持管を作製した。
【0029】一方、前記複合アルコキシドに滴下する混合溶液の水の量を1molに減少させ、複合ゾル作製後に希釈用の2メトキシエタノールを添加しない以外は前述と同様にしてα−Al2 3 多孔質支持管の外表面に10回製膜したものを比較例とした。
【0030】前述の如くして作製した本発明のAl2 3 −SiO2 複合膜は、約1μmの厚さを有するクラック、剥離等の欠陥のないものであるのに対して、比較例の複合膜は約1μmの厚さを有するものの、膜表面全体にわたってクラックが発生した。
【0031】また、前記各Al2 3 −SiO2 複合膜について、室温でCO2 とN2 ガスの透過速度(透過率)及びCO2 /N2 分離係数(透過係数比)をそれぞれ測定したところ、本発明のAl2 3 −SiO2 複合膜ではCO2 透過速度が2.5×10-9mol/(m2 ・Pa・sec)、N2 透過速度が1.4×10-9mol/(m2 ・Pa・sec)となり、CO2 /N2 分離係数は1.79であるのに対して、比較例ではCO2 透過速度が3.0×10-9mol/(m2 ・Pa・sec)、N2 透過速度が3.7×10-9mol/(m2 ・Pa・sec)となり、CO2 /N2 分離係数は0.80であった。
【0032】(実施例2)次に、アルミニウムセカンダリーブトキシド1molを2メトキシエタノール3molに溶解し、更に安定化剤としてトリエタノールアミンを1mol添加して作製した混合溶液に、ケイ酸エチル0.25molに2メトキシエタノール1molと水0.25molと硝酸0.0175molから成る混合溶液を添加して作製した部分加水分解ゾルを加えて複合アルコキシドを作製した。
【0033】かくして得られた複合アルコキシドに、水5molと2メトキシエタノール3molから成る混合溶液を滴下して複合ゾルを作製し、更に、溶媒である2メトキシエタノール15molを加えて希釈して成膜用複合ゾルを作製した。
【0034】その後、気孔率39%、細孔径0.3μmのα−Al2 3 多孔質支持管の外表面に、浸漬法により前記成膜用複合ゾルを付着させ、室温で乾燥した後、500℃の温度で焼成する操作を15回繰り返し、Al2 3 −SiO2 複合膜を付与したα−Al2 3 多孔質支持管を作製した。
【0035】一方、前記複合アルコキシドに滴下する混合溶液の水の量を1molに減少させ、複合ゾル作製後に希釈用の2メトキシエタノールを添加しない以外は前述と同様にしてα−Al2 3 多孔質支持管の外表面に10回製膜したものを比較例とした。
【0036】前述の如くして作製した本発明のAl2 3 −SiO2 複合膜は、約1μmの厚さを有するクラック、剥離等の欠陥のないものであるのに対して、比較例の複合膜は約1μmの厚さを有するものの、膜表面全体にわたってクラックが発生した。
【0037】また、前記各Al2 3 −SiO2 複合膜について、室温でCO2 とN2 ガスの透過速度(透過率)及びCO2 /N2 分離係数(透過係数比)をそれぞれ測定したところ、本発明のAl2 3 −SiO2 複合膜ではCO2 透過速度が1.7×10-9mol/(m2 ・Pa・sec)、N2 透過速度が1.2×10-9mol/(m2 ・Pa・sec)となり、CO2 /N2 分離係数は1.42であるのに対して、比較例ではCO2 透過速度が2.3×10-9mol/(m2 ・Pa・sec)、N2 透過速度が1.8×10-9mol/(m2 ・Pa・sec)となり、CO2 /N2 分離係数は0.78であった。
【0038】実施例1及び実施例2の結果から分かるように、本発明のAl2 3 −SiO2 複合膜は、クラック等の欠陥を有する比較例と比べてもほほ同程度の透過速度であるにもかかわらず、比較例がクヌッセン拡散程度の分離係数しか示さないのに対して、本発明のAl2 3 −SiO2 複合膜は比較例の約2倍のCO2 /N2 分離係数を有していることが分かる。
【0039】
【発明の効果】叙述の如く、本発明の無機分離膜の製造方法によれば、α−Al2 3 多孔質支持管の外表面に、アルミニウムとシリコンの複合アルコキシドに、前記アルミニウムとシリコンの各アルコキシドのいずれか多い方の1molに対して、5〜100molの水とアルコールとの混合液を加えて加水分解し、得られた複合ゾルを繰り返し製膜することにより、クラックや剥離等の欠陥がなく、特定成分のガス成分の分離係数を向上させることができ、各種混合気体等の混合流体を成す共存成分に対する特定成分の透過率が高い、即ち、特定成分の分離係数の高い無機分離膜が得られる。




 

 


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