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発明の名称 木質様部材の製法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−286868
公開日 平成10年(1998)10月27日
出願番号 特願平9−99410
出願日 平成9年(1997)4月16日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外2名)
発明者 上手 正行
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 セルロース系粉粒を、酸化アンチモン粉末で被覆処理し、得られた被覆処理セルロース系粉粒とポリ塩化ビニル系樹脂を混合し、次いで押出成形または射出成形して木質様部材を成形することを特徴とする木質様部材の製法。
【請求項2】 押出成形に際して、押出ダイスから押し出された半溶融状態の成形品の表面にエンボスロールを押し当て、成形品表面に微細な凹凸模様を形成することを特徴とする請求項1記載の木質様部材の製法。
【請求項3】 射出成形に際して、成形金型としてその成形面に微細な凹凸が形成されたものを用いて、成形品表面に微細な凹凸模様を形成することを特徴とする請求項1記載の木質様部材の製法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば住宅の回り縁、幅木、雨樋などの建築材料、車輌の内装部材などに用いられる木質様部材の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、合成樹脂成形物に、天然木材に近い特性を付与することによって、木材の代替材料とする種々の試みがなされている。その方法の一つとして、合成樹脂に木材粉末などのセルロース系粉粒を配合して成形品とする方法が挙げられる。このような木材代替材料は、住宅の内装材、家具材料、構造材料などとして用いられる。
【0003】しかしながら上記方法では、セルロース系粉粒が溶融樹脂中で樹脂との馴染みが悪く凝集しやすいため樹脂内での分散が不均一となり、成形体の強度や外観の低下を招くことがある。さらに、セルロース系粉粒が成形機内面に引っかかり、いわゆる「ビルトアップ」の原因となったり、成形機内面に傷をつけたりするという問題点があった。また、セルロース系粉粒は加熱によって酸性ガスを発生するため、成形機が徐々に腐食しその寿命を短縮するという問題点があった。さらに、セルロース系粉粒から発生する酸性ガスが上記樹脂の劣化反応を促進して成形体が変色してしまうことがあった。
【0004】これらの問題点を解決する方法としては、発生する酸性ガスを尿素系樹脂で中和処理して無害化する方法が開示されている(特開昭55−116752号公報、特開昭61−2505号公報)。しかしながら、この方法は、尿素系樹脂に由来する臭気が製品に残存するため特に住宅用内装材の製造には不向きであった。また、白色無機顔料等をボールミルを用いて木粉表面を被覆することにより、酸性ガスの発生を抑制する方法が開示されている(特開平5−177610号公報)が、この方法では、酸性ガスの発生を抑えることができるものの、その程度が十分ではない不都合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】よって、本発明の課題は、セルロース系粉粒の添加による上述の不都合を解消し、セルロース系粉粒からの酸性ガスの発生を抑え、成形性の低下を防止し、かつ優れた木質感を有する木質様部材を製造することができる製法を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題は、セルロース系粉粒を、酸化アンチモン粉末で被覆処理し、得られた被覆処理セルロース系粉粒とポリ塩化ビニル系樹脂を混合し、次いで押出成形または射出成形して木質様部材を成形する木質様部材の製法によって解決できる。また、押出成形に際して、押出ダイスから押し出された半溶融状態の成形品の表面にエンボスロールを押し当てる方法、あるいは射出成形に際して、成形金型としてその成形面に微細な凹凸が形成されたものを用いる方法により、成形品表面に微細な凹凸模様を形成して木質感を高めることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。本発明において用いられるセルロース系粉粒とは、木材、バカス、稲わら、パルプなどを機械的に粗粉砕し、これをさらに磨砕処理して得られた粒状のものであって、その粒径が好ましくは50〜200μm程度であるものを指称し、なかでも栂、松、ラワン、ヒノキなどの木材から得られたものが好適である。粒径が200μmを越えると成形時に成形機内でつまりを生じやすくなり、50μm未満となると木質感が乏しくなる。また、このセルロース系粉粒は、その含水率が10重量%以下、好ましくは2重量%以下とすることが成形時における発泡を防止できて好ましい。
【0008】セルロース系粉粒は、まず、粉末状の酸化アンチモンによって被覆処理される。この酸化アンチモンとしては、少なくとも平均粒径がセルロース系粉粒の平均粒径より小さいものが用いられ、特に、平均粒径が0.1〜30μmのものを用いるのが好ましい。この平均粒径が0.1μm未満であると取り扱いが困難となり、30μmを越えると成形時にセルロース系粉粒からの酸性ガス放出を抑える効果が不足する。ここで用いられる酸化アンチモンとしては、汎用のものを用いてよい。なお、本明細書において、平均粒径とは、当該粉粒体の累積重量%分布の50重量%通過径を指すものとする。
【0009】この被覆処理は、セルロース系粉粒と酸化アンチモンを、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどの高速混合装置やボールミル、シェイカー、ライカイ機などに投入し、温度25〜80℃、0.5〜2時間撹拌、混合する方法などによって行われる。上記酸化アンチモンの使用量は、セルロース系粉粒100重量部に対し0.5〜20重量部とするのが好ましい。この使用量が0.5重量部未満ではセルロース系粉粒の被覆処理が十分に行われず、20重量部を越えると成形品の成形性が低下する。
【0010】この処理により、セルロース系粉粒の粒子の表面に酸化アンチモンの粉末が付着し、その表面がまんべんなく被覆された状態となる。そして、このセルロース系粉粒表面に形成された酸化アンチモンの薄膜によって、酸性ガスの放散が完全に防止される。
【0011】この被覆処理されたセルロース系粉粒は、ついでポリ塩化ビニル系樹脂組成物と混合される。ここで用いられるポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂を主体とし、これに熱安定剤、可塑剤、充填材、着色剤、滑剤等の加工用添加剤を配合したものである。上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、従来から知られているののを使用することができ、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと塩化ビニル以外の重合性単量体との共重合体、塩化ビニル以外の重合体に塩化ビニルをグラフトさせたグラフト共重合体;これらの(共)重合体を従来公知の方法で被塩素化して得られた塩素化塩化ビニル系樹脂;前記(共)重合体および塩素化塩化ビニル系樹脂の複合物等が挙げられる。
【0012】上記塩化ビニル以外の重合性単量体としては、反応性二重結合を有するものであれば特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4、4−ジメチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンの他、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、フェニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル類、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンなどのジエン類、アリルトリアルキルシラン類などが挙げられ、これらは単独で用いられても良く、二種以上が併用されてもよい。
【0013】上記グラフト共重合体に使用される上記塩化ビニル以外の重合体としては、特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いられても良く、二種以上が併用されていてもよい。
【0014】上記ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、小さくなると得られる成形体の機械的物性が不足し、大きくなると成形時の溶融粘度が高くなって成形が困難になるので、400〜2000が好ましく、特に400〜1200がより好ましい。
【0015】上記熱安定剤としては、バリウム、鉛、カルシウムなどの金属と高級脂肪酸、芳香族カルボン酸とからなる金属石ケン系安定剤、ジブチルチンマレート、ジオクチルチンメルカプチドなどの有機スズ系安定剤、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ステアリン酸鉛などの鉛系安定剤が用いられる。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどのフタル酸エステル、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバシエートなどの脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、エポキシ系可塑剤、塩素化パラフィンなどが用いられる。充填剤には、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、珪藻土などが用いられる。着色剤としては酸化鉄等の茶色顔料や、カーボンなどの黒色顔料、酸化チタンなどの白色顔料などを用いてよい。滑剤としては、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、高級アルコール系滑剤、アミド系滑剤、エステル系滑剤、金属石ケン系滑剤などが用いられる。
【0016】これらの各種添加剤は、上述のポリ塩化ビニル系樹脂に添加、混合されてポリ塩化ビニル系樹脂組成物(コンパウンド)とされる。混合は、高速攪拌機、バンバリミキサーなどによって行われる。上述の添加剤の使用量は、特に限定されるものではなく、通常の使用量の範囲内で適宜選択される。ただし、セルロース系粉粒を被覆する酸化アンチモンは、樹脂等に添加するとこれを難燃化する作用を示すものであるので、難燃剤使用量をその分減量することができる。また、これらの各種添加剤は、被覆処理されたセルロース系粉粒とポリ塩化ビニル系樹脂とを混合する際に、これらに添加することもできる。
【0017】被覆処理されたセルロース系粉粒とポリ塩化ビニル系樹脂との混合は、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサーなどによって行われる。両者の混合比は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、被覆処理セルロース系粉粒5〜80重量部とされ、5重量部未満では木質感を得ることができず、80重量部を越えると成形が困難となる。
【0018】ついで、この混合物は、押出成形または射出成形されて、目的とする木質様部材が製造される。押出成形には、通常の押出成形機が用いられ、これには、単軸押出機、2軸押出機があるが、なかでも2軸異方向回転型押出機がこの発明の製法に好適である。これは、2軸異方向回転型押出機が多量の添加剤を配合したポリ塩化ビニル系樹脂の押出成形に好適であるためである。押出条件は、ダイス温度が170〜180℃程度とされ、押出ダイスは、T−ダイ、丸ダイあるいは異型ダイ、中空異型ダイなどが用いられる。押出成形品の形状は、限定されず、板状、パイプ状、中空角筒状など任意であってよい。
【0019】押出成形を採用する場合には、ダイスから押し出された半溶融状態の成形品にエンボスロールを押し当て、エンボスロール表面に設けられた微細な凹凸模様を成形品表面に転写することもできる。具体的には、例えば、ダイスから押し出されたシート状で、温度100〜150℃程度の半溶融状の成形品を2本のロールで挟み込み、冷却する際にその一方のロールにエンボスロールに用いる方法などが採用される。エンボスロールには金属ロールまたはシリコーンゴムなどのゴムロールが用いられる。エンボスロールの表面の凹凸は、成形品である木質様部材の木質感を高めるためのものであるため、その深さは10〜50μmで十分であり、凹凸の配列、配置も必ずしも規則的である必要はない。
【0020】射出成形を採用する場合には、通常の射出成形機、例えば、インラインスクリュ式射出成形機などが使用される。成形金型には、二枚型、三枚型、スタック型などのものが、またランナー方式にはホットランナーなどが用いられる。成形条件は、金型温度30〜50℃、樹脂温度160〜180℃、射出時間20〜50秒、射出圧力1000〜1500kg/cm2とされるが、成形品の寸法、形状によっては、これ以外の条件としてもよい。また、成形金型内での樹脂圧力を射出工程では低くし、保圧工程において高くする低圧成形法によって内部応力の小さい成形品を得ることもできる。
【0021】また、成形金型として、成形品の少なくとも表面となる部分に対応する成形金型表面に微細な凹凸を設けた金型を用い、これにより成形品である木質様部材の表面に微細な凹凸模様を形成し、木質感を一層高めることが可能である。この成形金型の凹凸も、成形品の木質感を高めるためのものであるので、その凹凸の深さは10〜50μmとされ、その配列、配置も不規則のものであってもよい。
【0022】このような木質様部材の製法にあっては、セルロース系粉粒の表面が酸化アンチモンで被覆されるので、成形時に加熱されても、その内部から酸性ガスが外部に放散されることがなく、ポリ塩化ビニル系樹脂の劣化分解反応による製品の変色や、成形機内面の腐食を防止できる。
【0023】さらに、セルロース系粉粒が被覆処理されることにより、セルロース系粉粒はポリ塩化ビニル系樹脂に均一に分散し、凝集することがなく、セルロース系粉粒の配合による成形機内での詰まりが防止でき、しかも得られる木質様部材の強度や外観が向上する。また、押出成形時にエンボスロールを押し当てることあるいは射出成形時に微細な凹凸を形成した成形金型を用いることによって、木質様部材に天然木材と同様の自然な質感が得られ、一層木質感が高められる。
【0024】また、難燃化作用のある酸化アンチモンを用いることによって、製品に高い難燃性を持たせることができる。また、不快な臭気を発する物質を含まないので、住宅の内装材としても使用可能な製品を得ることができる。
【0025】上記製法によって得られた木質様部材は、例えば住宅の回り縁、幅木、外装材、床材、壁材、ドア枠、窓枠、家具等の化粧板、車両の内装部材などに好適に用いられる。
【0026】以下、具体例を示す。
(セルロース系粉粒の被覆処理)表1に示した配合量のセルロース系粉粒と酸化アンチモンとを、スーパーミキサーに投入し、温度40〜80℃で約1時間混合し、被覆処理を行い、3種の配合物を製造した(試料No.1〜3)。また同時に、酸化アンチモンによる被覆処理を施さないセルロース系粉粒を用意した(試料No.4)。セルロース系粉粒としては、建材用木材を乾燥し、粉砕し、さらに磨砕処理した含水量3.0重量%、平均粒径100μmのものを使用した。
【0027】
【表1】

【0028】(セルロース系粉粒とポリ塩化ビニル系樹脂との混合)これら4種のセルロース系粉粒を、ポリ塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル単独重合体、平均重合度1000)100重量部、炭酸カルシウム50重量部、三塩基性硫酸鉛2重量部、ステアリン酸鉛2重量部、ジオクチルフタレート3重量部、着色顔料(酸化鉄)0.3重量部からなる組成物に対して20重量部配合し、スーパーミキサーで10分間攪拌し、混合して混合物とした。
【0029】(押出成形)この混合物を下記仕様の2軸押出機に供給し、下記成形条件で成形し、平板状の成形体(試料No.A〜D)を得た。なお、冷却ロールの2番ロールにシリコーンゴム製のエンボスロールを用い、成形体表面に微細な凹凸を形成した。

【0030】得られた成形体について、その表面状態を評価し、滑らかで自然な木質感があるものを○とし、不自然なざらつきがあり、肌荒れ状態のものを×とした。また、成形性については、成形加工時に押出機内で詰まりが生じたものを×とし、そうでないものを○で評価した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】表2の結果から、木質感に富んだ優れた木質様部材を押出成形法によって良好に安定して生産できることがわかる。
【0033】(射出成形)上記混合物を下記の成形条件で成形し、箱状の成形品を得た(試料No.イ〜ニ)。成形金型として、そのキャビティ面に深さ約10μmのエンボスを設けたものを使用した。
成形条件シリンダノズル温度:170℃金型温度:50℃樹脂温度:170℃射出時間:30秒成形サイクル:100秒【0034】得られた成形体について、その表面状態を評価し、滑らかで自然な木質感があるものを○とし、不自然なざらつきがあり、肌荒れ状態のものを×とした。また、成形性については、成形加工時にシリンダ内で詰まりが生じたものを×とし、そうでないものを○と評価した。結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】表3の結果から、本発明によれば木質感に富んだ優れた木質様部材を射出成形によって良好に安定して生産することができたことがわかる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の製法によれば天然木材の自然な質感をそのまま有する木質様部材を安定して効率よく製造することができる。




 

 


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