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発明の名称 チタンクラッド鋼板の溶接方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−94875
公開日 平成10年(1998)4月14日
出願番号 特願平8−254906
出願日 平成8年(1996)9月26日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】高野 茂
発明者 浅沼 直行 / 井上 正 / 深井 英明 / 高野 俊夫 / 崎山 哲雄 / 松野 隆
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】(イ)溶接されるチタンクラッド鋼板の突き合わせ部の合わせ材(チタン)を除去する工程と、(ロ)前記合わせ材の除去された部分の母材(鋼板)に開先を設ける工程と、(ハ)前記開先の設けられた母材を溶接する工程と、(ニ)前記母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分の少なくとも両端部に、その表面が前記チタンクラッド鋼板の表面にほぼ一致し、その側面が前記チタンクラッド鋼板の側面にほぼ一致し、その幅が前記母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分の幅にほぼ一致するようにチタンのスペーサを挿入する工程と、(ホ)前記チタンのスペーサを、表面においては隣接する前記チタンクラッド鋼板の合わせ材に、側面においては隣接する前記チタンクラッド鋼板の合わせ材と前記母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分に溶接する工程と、(ヘ)前記母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分を覆うようにチタンの当て板を、前記チタンのスペーサと前記隣接するチタンクラッド鋼板の合わせ材に溶接する工程を有してなり、かつ前記チタンのスペーサの側面における異材溶接を不活性ガス雰囲気中でろう材を用いてプラズマ溶接またはTIG溶接で行うことを特徴とするチタンクラッド鋼板の溶接方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チタンクラッド鋼板の溶接方法、特に耐海水腐食性に優れる溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】チタンクラッド鋼板は、非常に優れた耐食性を有するチタン(合わせ材と呼ばれる)を強度部材である鋼板(母材と呼ばれる)の表面に接合させた鋼板で、チタン単体に比べてコスト的にも有利なため使用環境の厳しい海洋構造物、化学プラント、発電プラントなどの分野でその用途を拡大しつつある。しかし、以下に述べるような溶接上の問題などがあるため、未だ大量使用されるまでには至ってない。
【0003】チタンクラッド鋼板を通常の方法で溶接すると、チタンと鋼の異種金属が溶融する部分(異材溶接部と呼ばれる)には脆弱な鉄とチタンからなる金属間化合物やチタンの酸化物や炭窒化物が多量に生成するため溶接部が割れやすくなる。そのため、チタンクラッド鋼板の溶接には、真空内ろう付け法や金属間化合物を生成しないようなインサート材を挿入する拡散接合法が用いられているが、高価な真空装置や貴金属のインサート材を用いるためコスト高になる、大きさに制約がある、施工現場での溶接ができないなどの問題がある。
【0004】こうした溶接上の問題を解決するために、従来より幾つかの方法が提案されている。
【0005】図2に、特開平2ー280969号公報や特開平2ー280970号公報に記載されているチタンクラッド鋼板の溶接方法を示す。図2で、1はチタンクラッド鋼板、2は合わせ材、3は母材、4は母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分、5はチタンのスペーサ、6はチタンの当て板、7は異材溶接部を表す。
【0006】図2の(a)に示された方法は、溶接されるチタンクラッド鋼板1の突き合わせ部の合わせ材2を除き、合わせ材2の除かれた母材3に開先を設け、母材3を溶接し、合わせ材2と同質のチタンのスペーサ5を母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分4に挿入して隣接するチタンクラッド鋼板1の合わせ材2に溶接する方法である。この場合、溶接条件によっては、溶接部側面に異材溶接部7が形成される恐れがある。
【0007】図2の(b)では、(a)の方法でチタンのスペーサ5を母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分4に挿入した後、チタンのスペーサ5を溶接せずに、チタンの当て板6を母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分4を覆うように隣接するチタンクラッド鋼板1の合わせ材2に溶接する方法である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図2の(a)に示された方法では、側面に異材溶接部7が形成されて脆弱な金属間化合物などが生成されると溶接不良が起きたり、チタンのスペーサ5と母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分4の界面が溶接されてないため側面から腐食性ガスや海水などが浸入し耐食性が損なわれる恐れがある。
【0009】また、広幅のチタンクラッド鋼板を用いた場合には、チタンのスペーサ5を母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分4に、幅を合わせて挿入することは容易でなく作業性が著しく阻害されるといった問題もある。
【0010】図2の(b)に示された方法では、異材溶接部がないため溶接不良の起こる心配はないが、(a)の場合と同様にチタンのスペーサ5と母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分4の界面が溶接されてないため側面から腐食性ガスや海水などが浸入する恐れがある。
【0011】本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、溶接部に溶接不良を引き起こすような金属間化合物などが生成されることがなく、しかも腐食性ガスや海水などの浸入により耐食性の損なわれる恐れがない簡便なチタンクラッド鋼板の溶接方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題は、(イ)溶接されるチタンクラッド鋼板の突き合わせ部の合わせ材(チタン)を除去する工程と、(ロ)前記合わせ材の除去された部分の母材(鋼板)に開先を設ける工程と、(ハ)前記開先の設けられた母材を溶接する工程と、(ニ)前記母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分の少なくとも両端部に、その表面が前記チタンクラッド鋼板の表面にほぼ一致し、その側面が前記チタンクラッド鋼板の側面にほぼ一致し、その幅が前記母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分の幅にほぼ一致するようにチタンのスペーサを挿入する工程と、(ホ)前記チタンのスペーサを、表面においては隣接する前記チタンクラッド鋼板の合わせ材に、側面においては隣接する前記チタンクラッド鋼板の合わせ材と前記母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分に溶接する工程と、(ヘ)前記母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分を覆うようにチタンの当て板を、前記チタンのスペーサと前記隣接するチタンクラッド鋼板の合わせ材に溶接する工程を有してなり、かつ前記チタンのスペーサの側面における異材溶接を不活性ガス雰囲気中でろう材を用いてプラズマ溶接またはTIG溶接で行うことを特徴とするチタンクラッド鋼板の溶接方法により解決される。
【0013】メインの溶接は、合わせ材を除いて開先を設けた母材同士の溶接のため、溶接不良などの問題は生じない。
【0014】母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分の少なくとも両端部に、その表面がチタンクラッド鋼板の表面にほぼ一致し、その側面がチタンクラッド鋼板の側面にほぼ一致し、その幅が合わせ材の除去された部分の幅にほぼ一致するようにチタンのスペーサを挿入し、表面においては隣接するチタンクラッド鋼板の合わせ材に、側面においては隣接するチタンクラッド鋼板の合わせ材と母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分に溶接すれば、チタンのスペーサを挿入した部分においては表面や側面から腐食性ガスや海水などの浸入が起こることはない。
【0015】ここで、ほぼ一致するとは、次に行われるチタンの当て板で表面を覆う際に支障にならず、チタンのスペーサの挿入が比較的容易に行え、かつ溶接が可能な程度に近接していることを意味する。
【0016】チタンのスペーサの側面における異材溶接を、不活性ガス雰囲気中で行えば、チタンの酸化物や炭窒化物が生成されることなく、また、鉄やチタンと金属間化合物を形成しないろう材を用い、しかも短時間溶接が可能なプラズマ溶接またはTIG溶接で行えば、脆弱な鉄とチタンからなる金属間化合物の生成も著しく抑制されるので割れなどの溶接不良が起こることがない。
【0017】さらに、母材の溶接部を含む合わせ材の除去された部分を覆うようにチタンの当て板を、チタンのスペーサと隣接するチタンクラッド鋼板の合わせ材に溶接すれば、チタン同士の溶接のため溶接不良が起こることはなく溶接部全体の耐食性を確保できる。また、チタンの当て板を用いれば、チタンのスペーサの挿入は母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分の両端部のみでよいので、作業性が著しく改善される。
【0018】
【発明の実施の形態】図1に、本発明であるチタンクラッド鋼板の溶接方法の1実施の形態を示す。図1で、1はチタンクラッド鋼板、2は合わせ材、3は母材、4は母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分、5はチタンのスペーサ、6はチタンの当て板、7は異材溶接部を表す。また、図1の(a)は合わせ材2を除いて母材3同士を溶接した後の状態を、(b)は母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分4にチタンのスペーサ5を挿入し溶接した後の状態を、(c)は母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分4をチタンの当て板6で覆い溶接した後の状態を表す。
【0019】まず、図1の(a)に示すように、溶接されるチタンクラッド鋼板1の突き合わせ部分から合わせ材2を除き、合わせ材2の除去された母材3同士をTIG溶接する。
【0020】次に、図1の(b)に示すように、母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分4の両端部にチタンのスペーサ5を挿入し、表面においては隣接するチタンクラッド鋼板1の合わせ材2になめ付け溶接し、側面においては隣接するチタンクラッド鋼板1の合わせ材2と母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分4にArやHeなどの不活性ガス雰囲気中で溶接部をシールドしながらろう材を用いてTIG溶接したり、上記シールドガスに加えてArガスをセンターガスとしてろう材を用いてプラズマ溶接する。このとき、ろう材としては、JIS Z3261、JIS Z3262、JIS Z3263、JIS Z3264、JISZ3265、JIS Z3266、JIS Z3267、JIS Z3268などに規定されたものを用いることができる。また、ろう材にはSnやZnを添加してもよい。
【0021】最後に、図1の(c)に示すように、母材溶接部を含む合わせ材の除去された部分4を覆うようにチタンの当て板6を、チタンのスペーサ5と隣接するチタンクラッド鋼板1の合わせ材2にチタンまたはチタン合金の溶材を用いて重ね隅肉溶接する。
【0022】本発明法はいずれの種類のチタンクラッド鋼板にも適用できる。なお、本発明法における母材同士の溶接時に、チタンクラッド鋼板の鋼板側を構造物表面に溶接などにより貼り付ければ、表面がチタンで覆われた耐食性に優れる構造物を建造できる。
【0023】
【発明の効果】本発明は以上説明したように構成されているので、溶接部に溶接不良を引き起こすような金属間化合物などが生成されることがなく、しかも腐食性ガスや海水などの浸入により耐食性の損なわれる恐れがない簡便なチタンクラッド鋼板の溶接方法を提供できる。
【0024】本発明である溶接法を適用し、海洋構造物の表面をチタンクラッド鋼板で覆えば、耐海水腐食性に優れる構造物を構築できる。




 

 


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