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発明の名称 チタンクラッド鋼板の溶接方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−80773
公開日 平成10年(1998)3月31日
出願番号 特願平8−236857
出願日 平成8年(1996)9月6日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】高野 茂
発明者 浅沼 直行 / 井上 正 / 稲積 透 / 深井 英明 / 松野 隆 / 崎山 哲雄 / 高野 俊夫
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】(イ)溶接されるチタンクラッド鋼板の突き合わせ部の両端部を除いた部分の合わせ材(チタン)を除去する工程と、(ロ)前記合わせ材の除去された部分の母材(鋼板)に開先を設ける工程と、(ハ)前記開先の設けられた母材を溶接する工程と、(ニ)前記チタンクラッド鋼板の突き合わせ部の両端部を溶接する工程と、(ホ)前記母材の溶接部の周囲に隣接するチタンクラッド鋼板の表面に、チタンの当て板を、前記母材の溶接部全体を覆うように溶接する工程を有してなり、かつ前記合わせ材の除去された部分の母材の溶接において、その両端部をなめ付け溶接し、しかも前記チタンクラッド鋼板の突き合わせ部の両端部の溶接において、チタンと鋼が溶融する側面の異材溶接部を不活性ガス雰囲気中でAgーCu系の溶材を用いてプラズマ溶接またはTIG溶接することを特徴とするチタンクラッド鋼板の溶接方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チタンクラッド鋼板の溶接方法、特に耐海水腐食性に優れる溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】チタンクラッド鋼板は、非常に優れた耐食性を有するチタン(合わせ材と呼ばれる)を強度部材である鋼板(母材と呼ばれる)の表面に接合させた鋼板で、コスト的にも有利なため使用環境の厳しい海洋構造物、化学プラント、発電プラントなどの分野でその用途を拡大しつつある。しかし、以下に述べるような溶接上の問題などがあるため、未だ大量使用されるまでには至ってない。
【0003】チタンクラッド鋼板を通常の方法で溶接すると、チタンと鋼の異種金属が溶融する部分(異材溶接部と呼ばれる)には脆弱な金属間化合物やチタンの炭窒化物が生成するため、溶接部が割れやすくなる。そのため、チタンクラッド鋼板の溶接には、真空ろう付け法や金属間化合物を生成しないようなインサート材を挿入する拡散接合法が用いられているが、高価な真空装置や貴金属のインサート材を用いるためコスト高になる、大きさに制約がある、施工現場での溶接ができないなどの問題がある。
【0004】こうした溶接上の問題を解決するために、従来より幾つかの方法が提案されている。例えば、特開平2ー280969号公報や特開平2ー280970号公報には、溶接される突き合わせ部の合わせ材を除き、合わせ材の除かれた母材に開先を設け、母材を溶接し、合わせ材と同質のチタンをスペーサとして溶接部に被せる方法や、さらにその上をチタンの当て板で覆う方法が開示されている。
【0005】いずれの場合も、母材溶接部とスペーサとは全面接合されないので両者の間には隙間が存在する。そのため、海洋構造物の脚柱のスプラッシュゾーンなどに用いられると、溶接部の両端部ではこの隙間より海水が浸入し溶接部の腐食が生じたり、また、溶接を通常の方法で行っているため上述したような脆弱な金属間化合物などが生成し割れが生じるといった問題がある。
【0006】そこで、特開平5ー185237号公報や特開平6ー15453号公報には、こうした溶接部の腐食や割れを防止する方法が提案されている。
【0007】図2に、特開平5ー185237号公報に記載されたチタンクラッド鋼板の溶接方法を示す。図2で、1はチタンクラッド鋼板、2は合わせ材、3は母材、4は母材溶接部、5は当て板、6は異材溶接部、7はクラッドスペーサ、8は切り込みを表す。また、図2の(a)は母材2を溶接した後の状態を、(b)は母材溶接部4の端部の切り込み8にクラッドスペーサ7を挿入し溶接した後の状態を、(c)は母材溶接部4およびその周辺部をチタンの当て板5で覆い溶接した後の状態を表す。
【0008】まず、図2の(a)に示すように、溶接されるチタンクラッド鋼板1の突き合わせ部から合わせ材2を除き、合わせ材2の除去された母材3には開先を設けるとともに、その端部に切り込み8を入れ、母材3を溶接する。
【0009】メインの溶接が母材3同士の溶接となるため、強度上の問題が生じることはない。
【0010】次に、図2の(b)に示すように、母材溶接部4の端部にできた切り込み8にチタンクラッド鋼板1と同質のクラッドスペーサ7を挿入し溶接する。このとき、チタンと鋼が溶融する側面の異材溶接部6の溶接を、不活性ガス雰囲気中でAgーCu系溶材を用いてプラズマ溶接やTIG溶接で行う。
【0011】クラッドスペーサ7を端部に挿入して溶接しているため、隙間より海水などが浸入することはない。また、異材溶接部6においては、その溶接が不活性ガス雰囲気中で行われるため酸化物や窒化物が生成することなく、しかも低融点化の図れるAgーCu系溶材を用いて溶接速度の速いプラズマ溶接やTIG溶接で行われるためチタンと鉄の反応が抑制され、それらの金属間化合物などが生成することもない。
【0012】最後に、図2の(c)に示すように、母材溶接部4に隣接するチタンクラッド鋼板1の表面と切り込み8に挿入されたクラッドスペーサ7の表面に、合わせ材2と同質のチタンからなる当て板5を、母材溶接部4全体を覆うように隅肉溶接する。
【0013】チタンの当て板5で母材溶接部全体が覆われるので、溶接部全体の耐食性は確保される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平5ー185237号公報や特開平6ー15453号公報に記載された方法では、切り込みを作製したり、クラッドスペーサを切り込み部へ挿入したりする手間がかかったり、溶接個所が多いため作業性が著しく阻害される。
【0015】本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、溶接部の腐食や割れの発生を招くことなく、しかも作業性を阻害しない簡便なチタンクラッド鋼板の溶接方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題は、(イ)溶接されるチタンクラッド鋼板の突き合わせ部の両端部を除いた部分の合わせ材を除去する工程と、(ロ)前記合わせ材の除去された部分の母材に開先を設ける工程と、(ハ)前記開先の設けられた母材を溶接する工程と、(ニ)前記チタンクラッド鋼板の突き合わせ部の両端部を溶接する工程と、(ホ)前記母材の溶接部の周囲に隣接するチタンクラッド鋼板の表面に、チタンの当て板を、前記母材の溶接部全体を覆うように溶接する工程を有してなり、かつ前記合わせ材の除去された部分の母材の溶接において、その両端部をなめ付け溶接し、しかも前記チタンクラッド鋼板の突き合わせ部の両端部の溶接において、チタンと鋼が溶融する側面の異材溶接部を不活性ガス雰囲気中でAgーCu系の溶材を用いてプラズマ溶接またはTIG溶接することを特徴とするチタンクラッド鋼板の溶接方法により解決される。
【0017】メインの溶接は、合わせ材を除いて開先を設けた母材同士の溶接のため、溶接強度上の問題は生じない。
【0018】合わせ材の除去された部分の母材の溶接において、その両端部をなめ付け溶接すると、それに隣接する突き合わせ部端部のチタンクラッド鋼板との反応が起こり難く、脆弱な金属間化合物の生成を抑制できる。
【0019】溶接部の両端部では、合わせ材の除去されてないチタンクラッド鋼板がそのまま用いられているので、隙間が生じることはなく海水などの浸入を防止できる。
【0020】また、チタンと鋼が溶融する側面の異材溶接部が不活性ガス雰囲気中でAgーCu系の溶材を用いてプラズマ溶接またはTIG溶接されているため、割れの発生することもない。
【0021】母材の溶接部の周囲に隣接するチタンクラッド鋼板の表面に、チタンの当て板を前記母材の溶接部全体を覆うように溶接するので、溶接部全体の耐食性は確保される。
【0022】本発明法は、チタンクラッド鋼板の突き合わせ部において両端部を除いた部分の合わせ材を除去して溶接するだけでよいので、簡便であり、また溶接個所も少ないので作業性が損なわれることもない。
【0023】なお、合わせ材の除去された母材の溶接部と合わせ材の除去されてない端部のチタンクラッド鋼板の溶接部の割合は、母材溶接部の溶接強度が十分に確保されるように、母材に使われる鋼板の種類や溶接法によって適宜決められる必要がある。
【0024】
【発明の実施の形態】図1に、本発明であるチタンクラッド鋼板の溶接方法の1実施の形態を示す。図1で、1はチタンクラッド鋼板、2は合わせ材、3は母材、4は母材溶接部、5は当て板、6は異材溶接部を表す。また、図1の(a)は合わせ材2を除いた母材3とその両端部のチタンクラッド鋼板1を溶接した後の状態を、(b)は母材溶接部4の周囲をチタンの当て板5で覆って溶接した後の状態を表す。
【0025】まず、図1の(a)に示すように、溶接されるチタンクラッド鋼板1の突き合わせ部分から、その両端部を除いて合わせ材2を除き、合わせ材2の除去された母材3と突き合わせ部端部のチタンクラッド鋼板1を別々に溶接する。
【0026】合わせ材2の除去された母材3の溶接おいては、その両端部を、チタンクラッド鋼板1の合わせ材との異材溶接を避けるためになめ付け溶接し、両端部以外をTIG溶接する。
【0027】一方、突き合わせ部端部のチタンクラッド鋼板1の溶接においては、合わせ材2表面をなめ付け溶接し、チタンと鋼が溶融する側面の異材溶接部6をArやHeなどの不活性ガス雰囲気中で溶接部をシールドしながらAgーCu系の溶材を用いてTIG溶接したり、上記シールドガスに加えてArガスをセンターガスとしてAgーCu系の溶材を用いてプラズマ溶接する。このとき、AgーCu系溶材としては、JIS Z3261に規定されているBAg8またはBAg8A系のものを用いることができる。また、これらの溶材にSnやZnを適宜添加してもよい。
【0028】次に、図1の(b)に示すように、母材溶接部4の周囲に隣接するチタンクラッド鋼板1の表面に、チタンの当て板5を、母材溶接部4全体を覆うように隅肉溶接する。
【0029】本発明法はいずれの種類のチタンクラッド鋼板にも適用できる。なお、本発明法における母材同士の溶接時に、チタンクラッド鋼板の鋼板側を構造物表面に溶接などにより貼り付ければ、表面がチタンで覆われた耐食性に優れる構造物を建造できる。
【0030】
【発明の効果】本発明は以上説明したように構成されているので、溶接部の腐食や割れの発生を招くことなく、しかも作業性を阻害しない簡便なチタンクラッド鋼板の溶接方法を提供できる。
【0031】本発明である溶接法を適用し、海洋構造物の表面をチタンクラッド鋼板で覆えば、耐海水腐食性に優れる構造物を構築できる。




 

 


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