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発明の名称 酸洗性に優れた熱延鋼板の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−43809
公開日 平成10年(1998)2月17日
出願番号 特願平8−201480
出願日 平成8年(1996)7月31日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】細江 利昭
発明者 藤田 毅 / 稲積 透 / 冨田 邦和 / 坂井 広義 / 田辺 義幸
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 熱間圧延して、640 ℃以上で巻取り、巻取った熱延コイルを、空冷時間(t) が下式(1) を満足するように空冷を行い、その後250 ℃以下まで2 ℃/min 以上の冷却速度で冷却することを特徴とする酸洗性に優れた熱延鋼板の製造方法。
18.1exp((148-W)/0.176CT) ≦t(min)≦8.313W+24.152 ・・・(1) 但し、CT:巻取温度( ℃) 、W :コイル重量(ton)【請求項2】 酸洗前に0.3%以上の塑性伸びを与えることを特徴とする請求項1記載の酸洗性に優れた熱延鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車部材、建材あるいは冷延鋼板素材等に用いられる熱延鋼板、特に酸洗性に優れた熱延鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車部材、建材あるいは冷延鋼板素材等に用いられる熱延鋼板の製造コストを低減するためには、生産効率を高めかつ歩留低下につながる表面欠陥の発生を最低限に抑える必要がある。なかでも酸洗脱スケール工程の高速化は、生産効率向上の鍵を握る重要な技術であり、酸洗性を向上するための種々の方法が検討されてきた。
【0003】また、熱延鋼板は、材質上の観点から、延性、時効性を劣化させる固溶C 、Nが固定されていることが望ましく、そのために、Al、B 、Ti、Nb等を含む鋼を用いて熱間圧延後高温で巻取る場合が多い。巻取温度が高い場合、スケール生成量が増大するため、酸洗性が劣化する。したがって、熱延鋼板の酸洗性の向上に際しては、巻取温度が高い場合においても、優れた酸洗性が得られることが必要であり、また、同時に材質上の考慮をすることも必要である。
【0004】酸洗性を向上する主な方法として、1)スケール生成を抑制する方法、2)スケールを溶解しやすい組成にする方法等がある。
【0005】1)のスケール生成を抑制する方法としては、例えば、特開平4-71722 号公報に、熱延コイルを巻取った後、1 時間以内は、酸素濃度4 % 以下の雰囲気にて徐冷し、その後400 ℃以下まで水冷してスケール生成を抑制する方法が提案されている。
【0006】2)のスケールを溶解しやすい組成にする方法として、スケール中のFeO の組成割合が高いと酸洗性が良好になり、Fe3O4 の組成割合が高いと酸洗性が劣化することに着目して、熱延鋼板のスケールについて、FeO の組成割合を高くすることが提案されている。例えば、特開平2-11720 号公報には、粗圧延後の被圧延材に1000℃以下Ar3 変態点以上の温度域で曲げ加工を施しかつこの温度域に10秒以上保持して、AlN を十分に析出させた後、仕上圧延を施し、次いで600 ℃以下の温度で巻取りFeO を残留させることにより、時効による材質劣化を防ぐとともに酸洗性を向上させる方法が提案されている。
【0007】また、特開平8-1229号公報には、熱延コイルを560 ℃以上で巻取った後、保熱装置内で保熱し、次いで、560 ℃以上の高温から200 ℃以下まで水冷することにより、スケール組成を酸洗性の優れるFeO に制御する技術が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記した公報に提案される方法には以下の問題がある。
【0009】特開平4-71722 号公報に提案の方法では、材質上の制約も考慮して、巻取り後1 時間以内は徐冷しているが、コイル重量が小さい場合、冷却速度が大きくなり、1 時間程度の徐冷では、必要な材質確保が困難になる。また、400 ℃以下までの冷却速度が小さい場合、スケールがFeO からFe3O4 へ変態することを抑制できない。さらに、冷却終了温度が300 〜400 ℃程度と高い場合は、その後の空冷中にスケールのFeO からFe3O4 への変態が完了し、酸洗性が著しく低下してしまう。また、雰囲気の酸素濃度を4%以下にするために、N2ガス等の不活性ガスを用いるため、製造コストが増大する。
【0010】特開平2-11720 号公報に提案の方法では、シートバーをコイル状に巻取ることにより曲げ加工を施すため、コイル外周側ほど曲げ半径が大きくなり、歪量が減少する。その結果、AlN の析出形態はコイル外周側ほど粗大、内周側ほど微細になり、粒成長性に差異が生じるため、コイル長手方向の材質変動が大きくなるという問題がある。また、シートバーをコイル状に巻取るための装置が必要になり、設備コストがかかるとともに生産効率も低下する。
【0011】特開平8-1229号公報に提案の方法では、コイルは巻取り後直ちに保熱カバー内に保管され、コイル全体の温度を560 ℃以上に保たなければならず、現状の熱間圧延工程において、連続的に製造される多量のコイルを保温するカバーは長大になり、設備投資が莫大になる。また、保熱装置内が酸化雰囲気の場合、保熱中のスケール生成が著しいので、酸洗性が低下する。
【0012】本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、巻取り温度が高い場合であっても、低コストで、生産性が高く、また熱延ままでの材質劣化がなく、酸洗性に優れた熱延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記状況に鑑み、熱延コイルの冷却中の炭窒化物の析出挙動およびスケール組成の変態挙動を詳しく調査した。その結果、巻取温度およびコイル重量に応じて熱延後のコイルの空冷時間を制御するとともに、その後の冷却条件を規定することにより、材質を劣化することなく、熱延鋼板のスケール組成を制御して酸洗性を大幅に向上できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0014】請求項1記載の発明は、熱間圧延して、640 ℃以上で巻取り、巻取った熱延コイルを、空冷時間(t) が下式(2) を満足するように空冷を行い、その後250 ℃以下まで2 ℃/min 以上の冷却速度で冷却する酸洗性に優れた熱延鋼板の製造方法である。
【0015】
18.1exp((148-W)/0.176CT)≦t(min)≦8.313W+24.152 ・・・(2) 但し、CT:巻取温度( ℃) 、W :コイル重量(ton)また、請求項2 記載の発明は、請求項1 記載の発明において、酸洗前に0.3%以上の塑性伸びを与える酸洗性に優れた熱延鋼板の製造方法である。
【0016】本発明者らは、熱延ままでの材質劣化のない酸洗性に優れた熱延鋼板の製造方法を詳細に検討した。本発明の作用効果と数値限定理由について説明する。
巻取温度:Ti、Nb、B 、Al等を含む極低炭素鋼あるいは低炭素アルミキルド鋼等を用いた軟質の熱延鋼板は、固溶C 、N を固定するために、熱間圧延で高温で巻取られる場合が多い。巻取温度が640 ℃以上になると、スケール生成量の増大にともない酸洗性が著しく劣化し、酸洗工程において能率が大幅に低下する。本発明では、640 ℃以上の温度で巻取られた酸洗性の劣る熱延鋼板において、特に酸洗性を向上する効果が大きいので、640 ℃以上の温度で巻取られる熱延鋼板を対象とする。
【0017】なお、巻取温度が750 ℃を超えるとスケール生成量が極めて著しくなるので、酸洗性の改善効果は相対的に小さくなる。したがって、本発明では、巻取温度が750 ℃以下の場合に、酸洗性の向上効果がより優れる。
【0018】空冷時間:空冷時間は、以下の理由により、前記式(2) で規定される範囲に限定した。
【0019】熱延鋼板は、巻取り後の空冷中にAlN 、BNあるいはTiC 、NbC 等の窒化物、炭化物を析出させ、安定した材質を確保する必要がある。しかし、空冷時間が短いと析出が十分になされず、優れた材質を得ることができない。一方、空冷時間が長くなると、材質の問題は無くなるが、スケール組成が酸洗性に劣るFe3O4 に変化してしまい、酸洗脱スケールの能率が著しく低下する。
【0020】ところで、巻取温度が高いものほど窒化物、炭化物の析出が促進されるため、コイルの空冷時間は短時間になる。また、コイル重量の大きいものほど冷却速度が小さく高温で保たれるため、窒化物、炭化物の析出が十分に生じ、コイルの空冷時間は短時間になる。すなわち、コイルの空冷時間は、コイル重量および巻取温度に大きく依存し、前式(2) で規定される範囲よりも空冷時間が短い場合、炭化物または窒化物の析出が不十分になり、材質の劣化を生じる。また、空冷時間が前記式(2) に規定される範囲よりも長い場合、スケール組成が酸洗性に優れるFeO 主体の組成から酸洗性に劣るFe3O4 主体の組成へ変化してしまうため、酸洗脱スケール性が著しく劣化し、酸洗工程の能率が大幅に低下する。
【0021】空冷後冷却速度:重量% で、C:0.030%、Si:0.01%、Mn:0.20%、P:0.010%、S:0.009%、sol.Al:0.050% 、N:0.0032% 、残部Feおよび不可避不純物からなるアルミキルド鋼鋼片を仕上温度(FT)870 ℃で熱間圧延を終了し、巻取温度(CT)680 ℃で巻取った熱延コイルについて、60min の空冷を行った後、冷却速度を種々に変化させて冷却したときのスケール組成の変化をX 線回折により調査した。冷却速度は、スプレー水冷により、水量を種々に変えて変化させた。コイル重量は16ton である。調査結果を図1 に示す。
【0022】通常、巻取り後のコイルは室温まで空冷するため、冷却速度が極めて遅く、一般に0.6 ℃/min 以下である。この場合、図1 より、FeO の大半が酸洗性の劣るFe3O4 に変態している。また、酸洗性の優れるFeO の残留についてみた場合、図1より、冷却速度が2℃/min 以上でFe3O4 量を超える量のFeO の残留が認められ、冷却速度が5 ℃/min 以上になると大半のFeO を残留させることができ、また冷却速度が10℃/min 以上になると、ほとんどがFeO になる。
【0023】したがって、優れた酸洗性を得るには、冷却速度を2℃/min 以上にする必要があり、より好ましい冷却速度は5 ℃/min 以上、さらに好ましい冷却速度は10℃/min 以上である。なお、50℃/min を超えるような冷却速度であっても、酸洗性が損なわれないが、このような冷却速度を得るには、設備が大型化し、設備コストがかかるため、経済的には上限を50℃/min 程度にすることが望ましい。
【0024】冷却終了温度:前記と同様の成分組成のアルミキルド鋼鋼片について仕上温度(FT)870 ℃で熱間圧延を終了し、巻取温度(CT)680 ℃で巻取った熱延コイルについて、60min の空冷を行った後、10℃/min の冷却速度で種々の温度までスプレー水冷による冷却を行い、さらに、室温まで空冷してスケール組成をX 線回折により調査した。ここでコイル重量は16ton である。調査結果を図2 に示す。
【0025】図2より、コイル冷却終了温度が250 ℃を超えると、その後の室温までの空冷中にFeO のほとんどが酸洗性の劣るFe3O4 に変態してしまうので、酸洗性を向上できない。コイル水冷終了温度が250 ℃以下になると、その後の空冷中にFe3O4に変態することが少なくなるので、FeO の大半が残留し、また、コイル冷却終了温度が200 ℃以下になるとほとんどのFeO が残留する。
【0026】したがって、優れた酸洗性を得るには、コイル冷却終了温度は、250 ℃以下にする必要があり、より好ましい温度は200 ℃以下である。また、次工程の酸洗ラインへの装入温度を考慮すると100 ℃以下にすることがさらに好ましい。
【0027】塑性伸び:スケール組成がFe3O4 の場合、スケール強度が高くかつ密着性も高いため、酸洗前の鋼板に2%の表面歪を付与しても酸洗性の向上が認められない。しかし、本発明では、スケール強度の低いFeO の割合が高いので、酸洗前の鋼板に歪を付与すると、表面スケールに亀裂が導入されて、酸洗液による溶解、剥離が促進されて、酸洗性をさらに向上することができる。
【0028】付与する歪量として、0.3 % 以上の塑性伸びを付与すると、例えば酸洗液の濃度や温度が低いより厳しい酸洗条件であっても、酸洗性の向上効果が十分得られる。
【0029】しかし、5%を超える塑性伸びを付与すると、熱延ままで使用される場合の延性が低下するので、塑性伸びは5%以下にすることが好ましい。
【0030】前記により製造された熱延鋼板は、巻取り温度が高い場合であっても、熱延ままでの材質劣化がなく、酸洗性に優れる。また、熱延コイルを収納する設備を必要としないので、低コストで生産性が高い。
【0031】また、本発明の前記効果は上記以外の製造条件の影響は受けない。例えば、連続鋳造後の鋼片は、そのまま直送して、または常温まで冷却後再加熱した後あるいは常温まで冷却することなく再加熱した後熱間圧延を行っても前記の効果が得られる。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明の熱延鋼板は、常法により、溶製した鋼を鋳造、熱間圧延して得た熱延鋼板を640 ℃以上の温度で巻取り、次いで巻取った熱延コイルについて、前記したような所定条件で冷却して製造することができる。
【0033】熱間圧延は、連続鋳造後の鋼片を、そのまま直送して行ってもよく、または常温まで冷却後再加熱した後あるいは常温まで冷却することなく再加熱した後に行ってもよい。
【0034】酸洗前の鋼板に付与する塑性伸びは、曲げ、ストレッチあるいはスキンパス等による単独の歪またはこれらの歪を組み合わせたものであってもよい。塑性伸びは、通常使用されるスケールブレーカーにより付与することができ、塑性伸び率は、通常使用されるスケールブレーカーの塑性伸び率、例えば調質圧延機による伸び率、ローラーレベラーやテンションレベラーの伸び率である。
【0035】本発明により製造された熱延鋼板の酸洗に使用する酸洗液は特に限定されず、各種の酸洗液において優れた酸洗性を示す。
【0036】
【実施例】
[実施例1]表1に示す成分組成と残部Feおよび不可避不純物からなる重量の異なる鋼片を熱間圧延し、巻取温度を変えて巻取った後、空冷時間、空冷後冷却速度および冷却終了温度を変化させて冷却した後、さらに室温まで空冷して得た熱延鋼板について、酸洗性と機械的性質を調査した。
【0037】酸洗性は、塩酸酸洗ラインにおいて脱スケール試験を行い、スケール残りが発生しない限界ライン速度( 最大速度300mpm) により評価した。塩酸酸洗ラインの酸洗液は10%HClで、液温85℃とした。また、スケールブレーカー( ローラレベラー) による伸び率( 塑性伸び率)はゼロとした。
【0038】機械的性質は、塩酸酸洗ラインに通板前の熱延鋼板から採取した試験片について、引張試験を行い、伸び率により評価した。
【0039】
【表1】

【0040】調査結果を表2 〜表5 に示す。なお、表2、表3 、表4 、表5 は、それぞれ表1 のA 鋼、B 鋼、C 鋼、D 鋼についての調査結果である。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】表2、表3、表4、表5から、本発明の請求項1 記載の発明の範囲を満足する本発明例の鋼板は、コイル重量、巻取温度が同じ条件の本発明範囲を満足しない比較例の鋼板に比べて、いずれも高い伸び率、高い酸洗ライン速度が得られている。
【0046】[実施例2]表2、表3、表4、表5のそれぞれNo.1、8 、22の条件で製造した熱延鋼板について、スケールブレーカー( ローラレベラー) により種々の塑性伸びを付与した後、塩酸酸洗ラインにおいて、脱スケール試験を行い酸洗性を調査した。塩酸酸洗ラインの酸洗液は7 %HClで、液温60℃とした。酸洗性は、実施例1 と同様に、スケール残りが発生しない限界ライン速度(最大速度300mpm)により評価した。調査結果を表6、表7に示す。
【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】表6、表7から、塑性伸びが0.3%以上で本発明の請求項2 記載の発明の範囲を満足する本発明例2 の鋼板は、塑性伸びが0.3%を下回る以外は同一条件の本発明例1 の鋼板に比べて、より高い酸洗ライン速度が得られており、また、実施例1の場合より、酸洗液が低濃度、低温であるにもかかわらず、スケール残りを発生することなく、最大の酸洗ライン速度で操業することができた。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、巻取り温度が高い場合であっても、熱延ままでの材質劣化がなく、酸洗性に優れた熱延鋼板を製造することができる。また、熱延コイルを収納する設備を必要としないので、低コストで生産性が高い。
【0051】本発明により製造された熱延鋼板を酸洗した場合、高速で脱スケールすることができるので、酸洗脱スケール工程を高速化することができる。
【0052】本発明により製造された熱延鋼板は自動車部材、建材あるいは冷延鋼板素材等の用途の使用に好適である。




 

 


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