米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 加工処理操作 -> 日本鋼管株式会社

発明の名称 脱硫剤及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−43544
公開日 平成10年(1998)2月17日
出願番号 特願平8−202170
出願日 平成8年(1996)7月31日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外4名)
発明者 三浦 孝一 / 前 一廣 / 稲富 淳 / 吉沢 純治 / 山根 哲博
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、石灰石、方解石、アラゴナイト、ドロマイトのうちの少なくとも1つを原料とする脱硫剤であって、CaOを主成分とし、少なくとも内部にミクロ孔を有し、さらに表面に開口するとともに内部のミクロ孔に連通するマクロ孔を有するマクロポーラスな粒子を含むことを特徴とする脱硫剤。
【請求項2】 前記ミクロ孔の径が10〜100nmの範囲内にあり、前記マクロ孔の径が0.5×103 〜1×104 nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の脱硫剤。
【請求項3】 前記粒子の径が0.1〜5mmであることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一方に記載の脱硫剤。
【請求項4】 生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、石灰石、方解石、アラゴナイト、ドロマイトのうちの少なくとも1つを原料とする組成物を粉砕して小粒径の微粉粒子とし、これを加圧成型あるいは造粒した後に水蒸気中でシンタリングするか、又は混合焼成するか、又はスラリー焼成することにより、CaOを主成分とし、少なくとも内部にミクロ孔を有し、さらに表面に開口するとともに内部のミクロ孔に連通するマクロ孔を有するマクロポーラスな粒子とすることを特徴とする脱硫剤の製造方法。
【請求項5】 シンタリング処理する場合は処理時間を5分間以上とすることを特徴とする請求項4記載の脱硫剤の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、広くは排ガス処理やガス精製の分野に係り、特に石炭のガス化時のような高温下におけるガス中の硫黄を除去するための脱硫剤及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、石炭の加圧流動床ガス化炉の燃焼トッピングサイクルでは、石炭とともに脱硫剤を供給し、1000℃までの高温度領域で石炭をガス化するとともに、ガス中に含まれるH2 S等の硫黄分を下式にしたがって硫化カルシウムとして除去する。この硫化カルシウムは最終的に酸化されて硫酸カルシウムとして回収される。この場合に脱硫剤としては石灰石又はドロマイトの粉粒物が使用される。このような従来技術は「石炭技術総覧(1993年刊、電力新報社発行)」の第114 〜115 頁に記載されている。
【0003】
CaO+H2 S→CaS+H2 O (脱硫反応)
一方、石炭の流動層燃焼では、石灰石などの流動媒体中に石炭を分散させ、炉内で石炭を燃焼させると同時にこれを脱硫することによって排煙脱硫装置を必要としない石炭の燃焼が行われる。この場合の反応は下式に示すようである。
【0004】
CaCO3 →CaO+CO2 (か焼反応)
CaO+SO2 +1/2O2 →CaSO4 (脱硫反応)
このような従来技術は「石炭技術総覧(1993年刊、(株)電力新報社発行)」の第107 〜109 頁に記載されている。
【0005】また、乾式排煙脱硫では、炉内に石灰石の粉を吹き込み、上記と同様の反応に従って排煙中に含まれるSO2 を除去する。このような従来技術は「世界の排煙浄化技術(平成2年刊、(財)石炭技術研究所発行)の第83頁に記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記の従来技術は、か焼反応で生成されたCaOによるSO2 やH2 Sの吸収率が低すぎ、いずれも実用的ではない。例えばSO2 に対して理論量の2倍程度の石灰を用いたとしても従来の脱硫率はせいぜい30%程度にとどまっている。このように従来技術では脱硫剤としてのCaOの利用効率が低く、多量の脱硫剤を消費するので運転コストが高くなる。
【0007】さらに、都市ゴミ焼却工場から排出される廃ガス中に含まれるHClのような酸性ガス成分を除去する方法として、石灰石粉を焼却炉内に吹き込み、電気集じん機で除去する石灰法が知られている。しかしながら、石灰法では「世界の排煙浄化技術(平成2年刊、(財)石炭技術研究所発行)の第239 〜240 頁に記載されているように、CaOのモル比2での除去率はHClが50〜70%、SO2が40〜50%程度にとどまり、除去率がきわめて低い。
【0008】本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、H2 S,SO2 ,HClのような成分ガスを効率よく除去することができ、低コストで製造することができる脱硫剤及び脱硫剤の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る脱硫剤は、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、石灰石、方解石、アラゴナイト、ドロマイトのうちの少なくとも1つを原料とする脱硫剤であって、CaOを主成分とし、少なくとも内部にミクロ孔を有し、さらに表面に開口するとともに内部のミクロ孔に連通するマクロ孔を有するマクロポーラスな粒子を含むことを特徴とする。
【0010】本発明に係る脱硫剤の製造方法は、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、石灰石、方解石、アラゴナイト、ドロマイトのうちの少なくとも1つを原料とする組成物を粉砕して小粒径の微粉粒子とし、これを加圧成型あるいは造粒した後に水蒸気中でシンタリングするか、又は混合焼成するか、又はスラリー焼成することにより、CaOを主成分とし、少なくとも内部にミクロ孔を有し、さらに表面に開口するとともに内部のミクロ孔に連通するマクロ孔を有するマクロポーラスな粒子とすることを特徴とする。
【0011】ここで、原料の1つとしてあげた石灰石については次のように定義する。石灰石は、岩石名称としては石灰岩と呼称するが、方解石(カルサイト)、アラゴナイト(あられ石)、ドロマイト(白雲石又は苦灰石)などの炭酸塩鉱物を50%以上含む堆積岩の一種をいう(「石灰石の用途と特性」第3頁、昭和61年4月1日 石灰石鉱業協会発行)。
【0012】従来は石灰石のなかのCaCO3 は高温下でのか焼反応で分解されCaOとなり、これが脱硫剤としてH2 SあるいはSO2 と反応して脱硫が進行する。しかし、図1のaに示すような1mm程度の石灰石粒子やCaO粒子従来の脱硫剤ではCaO粒子の表面が厚さ50μm程度の反応生成物で覆われてしまい、脱硫剤の全部が脱硫に有効利用されず、その利用効率が低い。
【0013】石灰石を微粉化することにより脱硫反応に寄与する表面積を増大化し、脱硫剤としての利用効率を向上させることも考えられるが、流動層反応器内で利用しようとすると滞留時間を確保することができなくなるので、実際には理論的な脱硫効率を得ることができず実用的ではない。
【0014】ところで、石灰石は平均直径が数10nmのミクロ孔を有しており、脱硫反応はそのミクロ孔の内部で進行すると推定されている。しかし、CaSO4 やCaSのような反応生成物は体積膨張率が大きいので、脱硫の初期段階において粒子表面に開口するミクロ孔が反応生成物で塞がれてしまい、脱硫反応がそれ以上先に進行しなくなる。
【0015】そこで、本発明の脱硫剤2では、図1のc及び図2に示すように、ミクロ孔4をもつ多数の一次粒子2aをシンタリング処理(あるいは混合焼成またはスラリー焼成)により焼結・凝集させ、ミクロ孔4に連通するマクロ孔3を形成することによりマクロポーラスな二次粒子2bとし、粒子内部まで脱硫反応に寄与しうるようにした。すなわち、H2 S,SO2 ,HClのような成分ガスは先ずマクロ孔3のなかに侵入し、次いでミクロ孔4に侵入するので、マクロ孔3は反応生成物によって容易に塞がれず、ミクロ孔4に対してガスが十分に供給され続ける。このため、脱硫反応の末期に至るまで反応生成物によって塞がれないでマクロ孔3に連通するミクロ孔4が存在しうるので、粒子中心部まで脱硫反応に寄与するようになり、脱硫剤の利用効率が飛躍的に増大する。なお、図2中に模式的に示した一次粒子2aの直径Dは約50μmである。
【0016】なお、図4及び図5から明らかなように、ミクロ孔の径は10〜100nmの範囲内にあり、マクロ孔の径は0.5×103 〜1×104 nmの範囲内にあることが好ましい。
【0017】また、脱硫剤の粒子径は0.1〜5mmの範囲にあることが望ましい。粒子径の下限値を0.1mmとした理由は、これを下回る粒子径では流動床内で粒子が浮遊しやすく、流動床内における粒子の滞留時間を確保することができなくなるからである。一方、粒子径の上限値を5mmとした理由は、これを上回る粒子径では流動床内で粒子が自由に動きまわらなくなり、脱硫反応が促進されなくなるからである。
【0018】さらに、シンタリング処理は900±50℃の温度域に少なくとも5分間以上保持する必要がある。5分間未満の処理では一次粒子2aの十分な焼結・凝集が進行しないからである。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。石灰石粒子のグレインサイズがH2 Sの脱硫特性に及ぼす影響について次のように実施例試料及び比較例試料をそれぞれ調整して調べた。
【0020】先ず、青森県尻屋産の石灰石を53μm以下に粉砕したもの(以下、原試料ライム(SP)という)、あるいはCaCO3 ,CaO,Ca(OH)2 の粉末をそれぞれ圧力100kg/cm2 の条件で加圧成型した後、あるいは造粒した後に、以下の各種方法でそれぞれ処理し、その後に粉砕し、ふるい分けして粒径1000〜850μmのマクロポーラスなCaO粒子からなる試料をそれぞれ調製した。
【0021】上記の原試料ライム(SP)を900℃の温度で、スチーム分圧0.5atmという条件下で10分間シンタリングし、第1試料(ライム(スチーム10分))を得た。
【0022】同様に、原試料ライム(SP)を900℃の温度で、スチーム分圧0.5atmという条件下で20分間シンタリングし、第2試料(ライム(スチーム20分))を得た。
【0023】原試料ライム(SP)にシリカゲルを10重量%混合し、これを900℃の温度で、スチーム分圧0.5atmという条件下で20分間シンタリングし、第3試料(ライム(Si))を得た。
【0024】原試料ライム(SP)にCaCl2 を1重量%混合し、これを窒素ガス中で900℃まで熱分解し、第4試料(ライム(CaCl2 ))を得た。CaCO3 粉末を900℃の温度で、スチーム分圧0.5atmという条件下で20分間シンタリングし、第5試料(CaCO3 (スチーム))を得た。
【0025】CaCO3 粉末にシリカゲルを10重量%混合し、これを900℃の温度で、分圧0.5atmという条件下で20分間シンタリングし、第6試料(CaCO3 (Si))を得た。
【0026】CaO−水スラリーを窒素ガス中で900℃まで熱分解し、第7試料(CaO−スラリー)を得た。Ca(OH)2 −水スラリーを窒素ガス中で900℃まで熱分解し、第8試料(Ca(OH)2 −スラリー)を得た。
【0027】さらに、比較試料として青森県尻屋産の石灰石を下記3種類の粒径に調整し、これらを第9試料(ライム(LP))、第10試料(ライム(MP))、第11試料(ライム(SP))としてそれぞれ用いた。
【0028】
粒径 試料 850〜1000μm 第9試料(ライム(LP))
250〜350μm 第10試料(ライム(MP))
53μm以下 第11試料(ライム(SP))
次に、脱硫、酸化試験及び試料のキャラクタリゼーションについてそれぞれ説明する。
【0029】図3に示す熱天秤6を用いて上記の各試料を石英管8内に装入し、下部開口9から石英管8内に窒素ガスを導入しながら電気炉7により加熱した。加熱条件は、室温から900℃までは毎分10℃の速度で昇温し、900℃の温度域で試料が完全にCaOになるまで焼成した。この焼成後、2080ppmのH2 Sガスを含むヘリウムガスを毎分50ccの流量で流し、そのときの重量変化から脱硫速度を測定した。
【0030】一方、熱天秤6と質量分析計(図示せず)を直結した装置を用いて、脱硫終了後の試料を22%O2 雰囲気中で900℃の条件下で酸化した後に、ヘリウムガス中で脱離する実験を実施し、重量変化およびSO2 ガス生成速度をそれぞれ測定した。使用した熱天秤6の反応器部分は、図3に示すように、反応管内に石英製の内管8を挿入し、天秤部6aに反応ガスが侵入しないようにしてH2 Sなどの腐食性ガス中での実験に使用できるように工夫した。また、調製した試料及び脱硫、酸化反応後の試料について、水銀ポロシメータによる細孔容積分布測定、表面形状のSEM観察、X線回析による脱硫、酸化、熱分解後の化合物形態変化の追跡調査を実施した。
【0031】次に、図4及び図5を参照しながら上記の各種試料の細孔容積分布について説明する。図4及び図5は、横軸に試料の粒子に含まれる細孔の径dp(nm)をとり、縦軸に単位質量あたりに含まれる細孔の容積−dv/dlogdp(cc/g・nm)をとって、各種試料の細孔容積分布を調べた結果をそれぞれ示す特性線図である。調査対象とした試料は、石灰石をベースに粒径の異なるもの(第9試料ライム(LP)、第11試料ライム(SP))、第1試料(ライム(スチーム10分))、第2試料ライム(ライム(スチーム20分))、第4試料ライム(ライム(CaCl2 ))、第7試料(CaO−スラリー)、第8試料(Ca(OH)2 −スラリー)である。
【0032】ここで、図4中にて小粒径ライム(SP)の2μm付近のピークは粒子間隙の大きさを示している。平均粒径1mmの大粒径ライム(LP)試料では、マクロ孔は存在せずミクロ細孔のみが存在するが、第1試料ライム(スチーム10分)、第2試料ライム(スチーム20分)では第11試料ライム(SP)の粒子間の同程度のマクロ孔が形成されている。また、シンタリングの進行に伴ないミクロ孔が50nmから80nm程度まで拡大していることが判明した。
【0033】一方、第4試料ライム(CaCl2 )では、ミクロ細孔が完全に消失し、サブミクロンの細孔が新たに形成されている。一例として、第2試料ライム(スチーム20分)粒子のSEM写真を図6に示し、第9試料ライム(LP)粒子のSEM写真を図7に示す。
【0034】この写真から明らかなように、大粒径の第9試料ライム(LP)では表面が滑らかで一体となっており1μm以上の孔はほとんど認められない粒子構造を呈することが認められた。
【0035】さらに、第2試料ライム(スチーム20分)では、数ミクロンから数十ミクロンまでの粒子が合一し、数ミクロンのマクロ孔が形成されていることが認められた。これらの観察結果は、図4に示す細孔容積分布と一致しており、小粒径の石灰石を加圧成型後に、単に水蒸気中で10分間程度シンタリングするだけで容易に1ミクロン程度の細孔を有するマクロポーラスな脱硫剤を製造できることを示している。また、これら調製した試料はいずれも十分な硬度を有するものであった。
【0036】次に、図5に示す第7試料(CaO−スラリー)および第8試料(Ca(OH)2 −スラリー)の細孔容積分布と石灰石から調製した第11試料ライム(SP)のそれとを比較すると、前二者ではミクロ孔は数十nmからサブミクロンまでかなり広範囲にわたり分布する細孔と、数ミクロン程度のマクロ孔とが混在していることが判明した。このようにブロードな細孔分布は、水に一部溶解した状態のスラリーを焼成したためであると考えられる。
【0037】以上、石灰石をシンタリング、CaO,Ca(OH)2 スラリーを焼成するだけで、種々のミクロ孔分布と数ミクロン程度のマクロ孔をもつCaO主成分の脱硫剤を調製できることが明らかになった。
【0038】次に、図8を参照しながら各種のマクロポーラスな脱硫剤によるH2 Sに対する脱硫能について説明する。図8は、横軸に経過時間をとり、縦軸に未反応Caのモル分率をとって、各種脱硫剤をH2 Sガスと反応させた時のCa基準の未反応率の経時変化を示す特性線図である。図中にて縦軸の値が1のときはすべてがCaOの状態を表わし、ゼロの時はすべてCaSになった状態を表わす。まず、比較試料である第9試料(ライム(LP))、第10試料(ライム(MP))、第11試料(ライム(SP))を構成する石灰石粒子の粒径の影響に着目すると、図中にて破線でそれぞれ示すように、粒径が小さくなるほど脱硫速度が速くなる。
【0039】次に、約1mmの粒子径に調製したマクロポーラスな各脱硫剤の脱硫速度を比較すると、同じ粒子径の第9試料ライム(LP)に比べて圧倒的に脱硫速度が速く、第4試料ライム(CaCl2 )以外は硫化反応が約30分間で完結しており、これは第11試料ライム(SP)とほぼ同等の脱硫能を示している。とくに、第8試料(Ca(OH)2 −スラリー)、第3試料(ライム(Si))は、第11試料ライム(SP)より短い時間で反応が完結している。
【0040】第2試料ライム(スチーム20分)について完全硫化後(脱硫後)の粒子のSEM写真を図9に示す。前出の図6及び図7の硫化前(脱硫前)の粒子構造と比べて、マクロ孔には変化が認められず、脱硫末期であってもガスが十分粒内を通過できる状態にあることがわかる。
【0041】一方、第9試料ライム(LP)のように大粒径でミクロ孔のみしか存在しない試料では非常に脱硫速度が遅くなる。また、図4に示すように、第4試料ライム(CaCl2 )のようにミクロ孔が完全に消失しマクロ孔のみの試料では、若干硫化速度が遅くなる。この理由は、脱硫反応が基本的にグレインのミクロ孔内にH2 Sガスが侵入して進行すると考えると次のように推測される。径1mmの粒子全体にミクロ孔しか存在しない第9試料ライム(LP)では、H2 Sガスはミクロ孔を通過するしかなく、ミクロ孔内の大きな物質移動抵抗によって脱硫速度が遅い。また、マクロ孔ばかりでミクロ孔の存在しない第4試料ライム(CaCl2 )では、H2 Sガスは各グレインの表面には迅速に到達するもののグレイン表面から内部へ侵入していくことが困難になり脱硫速度が低下したものと考えられる。このことから、脱硫速度を増加させるには、適当な大きさ(数十nm程度)のミクロ孔を有する10μm程度のグレインが結合して数μm程度のマクロ孔を有する粒子を調製すればよいことが判明した。その方法として、小粒子の水蒸気中でのシンタリング、各種無機物の混合焼成、Ca(OH)2 スラリーの焼成などの手段が有効であることが示された。
【0042】次に、図10を参照しながらSO2 ガスを用いて上記実施例の脱硫剤の脱硫能を調べた結果について説明する。図10は横軸に経過時間をとり、縦軸に未反応Caのモル分率をとって、各種脱硫剤をSO2 ガスと反応させた時のCa基準の未反応率の経時変化を示す特性線図である。図中にて縦軸の値が1のときはすべてがCaOの状態を表わし、ゼロの時はすべてCaSO4 になった状態を表わす。なお、成分ガスとして2453ppmのSO2 を含む条件下で調べた。
【0043】図から明らかなように、第2試料(ライム(スチーム20分))の脱硫性能は目標とする第11試料(ライム(SP))のそれに近いものが得られた。また、図中にて破線で示す第8試料(Ca(OH)2 −スラリー)の脱硫性能は目標とする第11試料(ライム(SP))のそれを上回ることが判明した。
【0044】次に、図11〜図14を参照しながらSO2 やH2 S等を吸収した脱硫剤の酸化特性について説明する。図8及び図10に示したもののうち脱硫能が良好だった脱硫剤について脱硫終了後900℃で酸化を行った。一例として、第2試料ライム(スチーム20分)を用いた実験での重量変化及びSO2 ガス生成速度の経時変化を図11に示す。図11は横軸に経過時間(分)をとり、縦軸にCaO粒子の重量(mg)とSO2 ガス分子の生成速度をとって、各種雰囲気下における脱硫剤の重量変化とSO2 ガス生成速度をそれぞれ示す特性線図である。図から明らかなように、酸化反応の開始とともに重量は急激に増加し、数分経過後はゆっくりと増加する。この重量変化に伴って反応初期には急激にSO2 ガスが生成するが、開始から10分間程度経過するとSO2 ガスは生成しなくなった。
【0045】次に、雰囲気ガスを空気からヘリウムガスに切り換えると、重量は徐々に減少するとともに再び大量のSO2 の生成が観察された。これらの変化に伴う試料の形態変化をX線回折分析計で分析した結果を図12に示す。図12の最上段のグラフは第2試料ライム(スチーム20分)を900℃で焼成したのちH2 Sガスで完全に脱硫したときの試料の形態を示す。また、図12の中段のグラフは完全に硫化された試料を部分的に酸化したのち空気中で室温まで冷却した後の試料の形態を示す。さらに、図12の最下段のグラフは完全に硫化された試料を中段のグラフと同様に酸化したのちヘリウムガス中で熱分解したときの試料の形態を示す。以上の結果からCaSの酸化は下式(1),(2)の反応からなることが考えられる。
【0046】
CaS+2O2 →CaSO4 …(1)
2CaS+3O2 →2CaO+2SO2 …(2)
エアからヘリウムガスに切り換えた時には、さらに下式(3)の反応が起こると推定される。
【0047】
CaSO4 →CaO+SO2 +0.5O2 …(3)
図12の最下段のグラフにCaSO4 ピークが存在しないことからヘリウムガス中での熱分解によって、CaCO4 は全て上式(3)の反応によってCaOになると考えられる。よって、(1)式および(2)式に従って、各時間における重量変化、SO2 ガス生成速度から、酸化に伴う脱硫剤の形態変化の様子を計算により求めることができる。
【0048】脱硫実験から含めてこのように算出したCaの利用率の経時変化を図13及び図14に示す。図13及び図14は、横軸に経過時間(分)をとり、縦軸にCa分布と未反応Caのモル分率をそれぞれとって、第2試料ライム(スチーム20分)と第11試料ライム(SP)とにつきCa利用率の経時変化をそれぞれ調べた結果を示す特性線図である。
【0049】熱分解時の重量減少あるいはSO2 の生成量から上式(3)に従って計算したCaSO4 の量は、図13及び図14中のCaCO4 の生成量と一致しており(1)式と(2)式に基づく計算は妥当であるといえる。いずれの試料からも酸化初期に急激にCaSO4 とCaOを生成するが、それ以上の反応はあまり進行しなかった。CaSO4 とCaOの転化率は、第11試料ライム(SP)の場合55%であるのに対し、第2試料ライム(スチーム20分)では72%であった。酸化反応ではCaCO4 が生成されるとかなり体積が増加するので、図4の細孔容積分布の結果から推察してミクロ孔径が倍近くある第2試料ライム(スチーム20分)の方が酸化され易かったものと考えられる。実際には、ミクロ孔がブロードな第8試料(Ca(OH)2 −スラリー)が最も酸化反応性が優れていると考えられた。
【0050】
【発明の効果】本発明は、従来のものよりも脱硫効率が飛躍的に高く、かつ、低コストで簡便に製造することができる脱硫剤及びその製造方法を提供する。とくに、微粉砕した小粒径の石灰石粒子を水蒸気中でシンタリングするなどの種々の方法を用いてミクロ孔を拡げると同時に1ミクロン程度のマクロ孔を多量に有するマクロポーラスな脱硫剤を提供することができる。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013