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発明の名称 条切りキャンバの推定方法および条切りキャンバの少ない鋼板の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−15617
公開日 平成10年(1998)1月20日
出願番号 特願平8−174483
出願日 平成8年(1996)7月4日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】潮谷 奈津夫
発明者 藤掛 政久 / 福村 勝 / 杉田 進一 / 木部 洋 / 内村 孝
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 鋼板を熱間圧延後または熱間矯正後に加速冷却して製造するに当たり、前記加速冷却後の前記鋼板の温度分布が板厚方向にほぼ一様となる復熱終了後に前記鋼板の表面温度分布を測定して前記鋼板上に設定された条切り線上で前記鋼板が冷却後に条切りされた時のキャンバを推定する方法において、条切り材を長手方向に細分割したスライスを幅方向に不均一に加速冷却した際の、前記復熱終了後における前記スライスの幅方向表面温度変化と、前記加速冷却後にホットレベラにより前記鋼板を矯正して製造する場合には前記矯正後の、前記矯正を行わずに製造する場合には前記復熱終了後の幅方向に不均一な内部応力により発生する前記スライスの冷却後条切りキャンバの曲率との関係を、あらかじめ計算手段により求めておき、前記鋼板の表面温度分布から前記条切り材の幅方向表面温度変化の長手方向分布を算出し、前記条切り材の幅方向表面温度変化の長手方向分布から、前記関係を用いて矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の前記内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバの曲率の長手方向分布を求め、前記曲率の長手方向分布から前記条切り材における矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の前記内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバのたわみ曲線を計算し、更に、前記鋼板の表面温度分布が鋼板冷却後に一様温度となることにより発生する条切りキャンバのたわみ曲線を計算し、前記条切りキャンバのたわみ曲線を前記矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の前記内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバたわみ曲線に加算して条切り材のキャンバを求めることを特徴とする条切りキャンバの推定方法。
【請求項2】 鋼板の表面温度分布を加速冷却開始時および復熱終了後に測定し、前記鋼板の矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の幅方向に不均一な内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバの曲率の長手方向分布を、条切り材を長手方向に細分割したスライスを幅方向に不均一に加速冷却する際の、加速冷却開始時における前記スライスの幅方向表面温度変化をパラメータとした、復熱終了後における前記スライスの幅方向表面温度変化と、矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の前記内部応力により発生する前記スライスの冷却後条切りキャンバの曲率との関係を、あらかじめ計算手段により求めておき、前記加速冷却開始時の鋼板表面温度分布から条切り材の幅方向表面温度変化の長手方向分布を算出し、更に、前記復熱終了後の鋼板表面温度分布から条切り材の幅方向表面温度変化の長手方向分布を算出し、算出した前記加速冷却開始時および前記復熱終了後の前記二つの条切り材の幅方向表面温度変化の長手方向分布から、前記関係を用いて求めることを特徴とする請求項1記載の条切りキャンバの推定方法。
【請求項3】 矯正後の幅方向に不均一な内部応力により発生する前記スライスの冷却後条切りキャンバの曲率を、復熱終了後、または、復熱終了後および加速冷却開始時の前記スライスの幅方向表面温度変化と矯正前の幅方向に不均一な内部応力により発生する前記スライスの冷却後条切りキャンバの曲率との関係をあらかじめ計算手段により求めておき、鋼板の表面温度分布の測定から得られた、復熱終了後、または、復熱終了後および加速冷却開始時の条切り材の幅方向表面温度変化から、前記関係を用いて矯正前の条切りキャンバの曲率を求め、前記曲率に0〜1の値を取る残存率を乗ずることにより求めることを特徴とする請求項1または2記載の条切りキャンバの推定方法。
【請求項4】 幅方向表面温度変化を表す量として、幅方向表面温度分布を直線で最小二乗近似したときの勾配である幅方向表面温度勾配を用い、矯正前あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の幅方向に不均一な内部応力により発生する前記スライスの冷却後条切りキャンバの曲率を、復熱終了後、または、復熱終了後および加速冷却開始時の前記幅方向表面温度勾配から下記式を用いて求めることを特徴とする請求項1、2または3記載の条切りキャンバの推定方法。一般部条切り材は、C={(−17.65+0.326t)Tg+(−11.12+0.222t)Tgo}×10-6エッジ部条切り材の左エッジは、C={(−10.7+0.19t)Tg+(0.40−0.0068t)}×10-6エッジ部条切り材の右エッジは、C={(−10.7+0.19t)Tg−(0.40−0.0068t)}×10-6ただし、C:矯正前あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の幅方向に不均一な内部応力により発生するスライスの冷却後の条切りキャンバ曲率(1/mm)(長手方向を見て左に凸のキャンバを引き起こす曲率が正)
t:板厚(mm)
Tg:復熱終了後の幅方向表面温度勾配(℃/mm)(左から右へ温度が増加する場合が正)
Tgo:加速冷却開始時の幅方向表面温度勾配(℃/mm)
【請求項5】 鋼板の加速冷却時に鋼板両縁上に遮蔽板を配置し、前記遮蔽板を前記鋼板の幅方向に突出または退去させて前記鋼板のエッジ部の冷却水量を制御してあるいは幅方向に冷却水の吐出水量密度分布を調整して前記鋼板のエッジ部の冷却水量を制御して冷却するに当たり、請求項1から4のうちのいずれか1つの方法により鋼板の条切りキャンバを推定し、前記推定値に基づいて前記遮蔽板の突出量を制御するあるいは前記冷却水の吐出水量密度分布を制御することを特徴とする条切りキャンバの少ない鋼板の製造方法。
【請求項6】 請求項1から4のうちのいずれか1つの方法により鋼板の条切りキャンバを推定し、前記推定値が許容値を超えている場合には、以後の製造工程において前記鋼板の残留応力を低減する手段を適用することを特徴とする条切りキャンバの少ない鋼板の製造方法。
【請求項7】 鋼板を熱間圧延後または熱間矯正後に加速冷却し、次いで、ホットレベラにより矯正して製造するに当たり、前記矯正時に塑性変形率λを0.5以下で矯正を行うことを特徴とする条切りキャンバの少ない鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、熱間圧延後または熱間矯正後に加速冷却されて製造される鋼板の条切りキャンバの推定方法および条切りキャンバの少ない鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱間圧延直後の鋼板を水冷する加速冷却法は、高強度、高靱性および溶接性の優れた厚鋼板を製造できるため、造船用および建材用などの各種高張力鋼板の製造に実用化されている。
【0003】このような加速冷却法では、冷却過程で板幅方向に不均一な冷却が生じやすく、不均一な冷却が起こると鋼板には複雑な残留応力や大きな変形が発生する。変形に関しては、ホットレベラ矯正やその他の矯正手段によって板形状を平坦にすることができ、その平坦度合いを平坦度計または目視によって確認することができるが、鋼板に内在する残留応力を測定することは困難である。
【0004】造船用のロンジ材や建材のボックス柱を製造するための長尺材を得るために、加速冷却された鋼板は、300mm〜500mm程度の幅で長手方向に切断されることが多い。これを条切りと呼び、分別された板を条切り材と呼ぶ。外見上は平坦でも、上述した残留応力を内在する鋼板を条切りすると、残留応力が開放されるため、条切り材には面内および面外の曲がり変形が発生する。面外の曲がり変形は、板厚が小さいため容易に矯正できるが、条切り材の幅は300mm〜500mmと大きいため面内の曲がり変形を矯正することは困難であり、造船材や建材の製造上大きな問題となる。このような面内の曲がり変形は条切りキャンバと呼ばれる。
【0005】条切りキャンバの発生の様子を図1に示す。図1において、1は条切り材、2は条切りキャンバを各々示している。条切りキャンバの主な発生原因は、加速冷却過程で板が幅方向に均一に冷却されないためであり、また、鋼板エッジ部の条切り材においては、それに加えて、加速冷却前にエッジ部の温度がエッジ部に隣接しないエッジ部以外の部分(以下、「一般部」という)より低くなっているためで、それによって長手方向の残留応力が幅方向に不均一となるためである。条切りすると長手方向の残留応力が開放されるが、その分布が幅方向に不均一なため応力開放によって発生する長手方向歪も幅方向に不均一となり、条切り材に面内の横曲がりが発生するのである。従って、条切りキャンバを防ぐためには、幅方向の冷却を制御する手段および残留応力を低減する手段が有効である。
【0006】条切りキャンバは、鋼板エッジ部の条切り材で発生しやすく、これを小さくするための幅方向の冷却を制御する手段として、鋼板両エッジ部に遮蔽板を配置する方法がある。図2〜図4は遮蔽板突出量によるエッジ部温度分布グラフと条切りキャンバの変化を説明する図である。遮蔽板を鋼板幅方向に突出させて鋼板エッジ部の水量を制御し、エッジ部の温度分布を調整する。遮蔽板を使用しない(または遮蔽板突出量小)と、エッジ部には加速冷却前に温度降下があり、更に、冷却中に過冷されるため、エッジ部条切り材の温度分布は、図2のようになり、鋼板の外側に凸のキャンバが発生する。遮蔽板を鋼板の内側に突出させていくとエッジ部の冷却水が遮蔽されるため、温度分布はフラットになっている。キャンバは次第に減少して、ついには、キャンバは発生しなくなる(図3参照)。それ以上に遮蔽板を突出させると、鋼板の内側方向に凸のキャンバが発生するようになる(図4参照)。従って、キャンバが発生しない適正な遮蔽板位置を見出すことが重要である。また、幅方向の冷却を制御する手段としては、幅方向に冷却水の吐出水量密度分布を調整する方法もある。吐出水量密度を鋼板中央部よりもエッジ部で小さくすれば遮蔽板を突出させたと同じ効果がある。この場合には、キャンバが発生しない適正な吐出水量密度分布を見出すことが重要である。これらのためには、鋼板の条切りキャンバを正確且つ迅速に推定する必要がある。
【0007】特開昭63−168209号公報には、加速冷却直後の鋼板表面温度分布の特徴値を求め、条切りキャンバを推定する方法が示されている(以下、「先行技術1」という)。
【0008】また、「加速冷却型鋼板の条切断における横曲がり量のオンライン予測システム」(神戸製鋼技報/Vol.41 No.4(1991))には、矯正後温度分布から条切りキャンバを予測する方法が示されている(以下、「先行技術2」という)。
【0009】残留応力を低減する手段としては、コールドレベラや応力除去焼鈍が用いられている。また、条切りキャンバを低減する方法として、特開平4−66271号公報においては、ホットレベラによる矯正の際エッジ部を加熱し温度差が50℃以下として且つ強いレベリング(塑性変形率0.5以上)を行う方法が開示されている(以下、「先行技術3」という)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】加速冷却工程の冷却制御や次工程の修正制御を適切に行うには、条切りキャンバを定量的に正確に且つ迅速に把握する必要がある。しかしながら、先行技術1に示されている、温度分布の特徴値から条切りキャンバを推定する方法は、以下の問題を有している。即ち、鋼板の温度分布は複雑で鋼板の幅方向にも長手方向にも大きく変動しており、特にエッジ部では、冷却水流の乱れが起こりやすく温度分布パターン自体が変化してしまう場合があり、温度分布の特徴値だけから条切りキャンバを精度良く推定するのは極めて困難である。
【0011】先行技術2に示されている矯正後温度分布から条切りキャンバを予測する方法においては、矯正後の鋼板に生じている温度むらが室温で一様温度となるために発生する熱応力から条切りキャンバを予測しており、この推定法では矯正後温度むらが同一であれば、どのような板厚の鋼板でも全く同一の条切りキャンバが発生することになる。しかしながら、本発明者らは、矯正後温度むらが同一でも、板厚が異なると条切りキャンバはかなり違うという知見を有しており、この点から先行技術2の推定法の精度が悪いことは明らかである。
【0012】残留応力を低減する手段としては、コールドレベラによる残留応力除去や応力除去焼鈍が有効であるが、前述したように鋼板の残留応力を測定するのは困難なため、条切りキャンバが許容値以下であることを保証するためには、結局全ての鋼板においてこのような残留応力を低減する手段を講じなければならず、非常にコスト高である。
【0013】また、本発明者らは、先行技術3に示されるように、ホットレベラ矯正を強く行うと、かえって条切りキャンバが大きくなることを見出している。この発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、精密且つ迅速な条切りキャンバ推定方法、それに基づき低コストで且つ確実に条切りキャンバを抑制できる条切りキャンバの少ない鋼板の製造方法、および、条切りキャンバを抑制できるホットレベラの矯正方法からなる条切りキャンバの少ない鋼板の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】加速冷却直後の鋼板では、表面の温度は低く板厚中央部の温度は高い。時間が経過するにつれ板厚中央部の熱は表面に流れていくため、表面と中央部との温度差は次第に減少していく。この過程を復熱と呼ぶ。復熱中には表面の温度分布は時々刻々変化している。復熱は板厚25mmの鋼板では15秒程度、板厚50mmの鋼板では40秒程度で終了する。復熱終了後では板厚方向の温度分布はほぼ一様となるが、鋼板表面の温度分布ははっきりと残りその時間変化は非常に遅く安定している。また、復熱終了後では内部応力の時間変化も非常に遅く安定している。
【0015】本願第1発明では、加速冷却後の復熱終了後のなるべく早い時期に鋼板表面の温度分布を測定する。加速冷却された鋼板をホットレベラによって矯正する製造方法では、通常矯正は加速冷却後板厚25mmの鋼板では20秒程度、板厚50mmの鋼板では50秒程度経過した時点で行われるため、復熱は終了しており、測定は矯正前、矯正後および矯正中のうちのいずれかで行うと良い。そして、鋼板上に幅300mm〜500mmの条切り材を多数想定し、この仮想的な条切り材のキャンバを、測定した鋼板温度分布から推定する。この推定法として、室温での鋼板の残留応力は、矯正後の鋼板に生じている温度むらが室温で一様温度になることにより発生するものとし、その残留応力から条切りキャンバを推定する方法が公知である。
【0016】しかしながら、発明者らの研究により、加速冷却により発生して復熱終了後に存在している内部応力のうち、不均一冷却により発生して条切りキャンバを引き起こす幅方向に不均一な応力は、ホットレベラ矯正が行われない場合にはそのまま残存し、ホットレベラ矯正を行う場合でも矯正後もその大部分が残存し、鋼板が室温になった際のこの矯正後内部応力に起因する条切りキャンバは非常に大きく、従って、これを考慮しなければ精度良い条切りキャンバ予測はできないことが明らかになった。本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。
【0017】請求項1に記載の、本願第1発明の要旨とするところは、鋼板を熱間圧延後または熱間矯正後に加速冷却して製造するに当たり、前記加速冷却後の前記鋼板の温度分布が板厚方向にほぼ一様となる復熱終了後に前記鋼板の表面温度分布を測定して前記鋼板上に設定された条切り線上で前記鋼板が冷却後に条切りされた時のキャンバを推定する方法において、条切り材を長手方向に細分割したスライスを幅方向に不均一に加速冷却した際の、前記復熱終了後における前記スライスの幅方向表面温度変化と、前記加速冷却後にホットレベラにより前記鋼板を矯正して製造する場合には前記矯正後の、前記矯正を行わずに製造する場合には前記復熱終了後の幅方向に不均一な内部応力により発生する前記スライスの冷却後条切りキャンバの曲率との関係を、あらかじめ計算手段により求めておき、前記鋼板の表面温度分布から前記条切り材の幅方向表面温度変化の長手方向分布を算出し、前記条切り材の幅方向表面温度変化の長手方向分布から、前記関係を用いて矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の前記内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバの曲率の長手方向分布を求め、前記曲率の長手方向分布から前記条切り材における矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の前記内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバのたわみ曲線を計算し、更に、前記鋼板の表面温度分布が鋼板冷却後に一様温度となることにより発生する条切りキャンバのたわみ曲線を計算し、前記条切りキャンバのたわみ曲線を前記矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の前記内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバたわみ曲線に加算して条切り材のキャンバを求めることを特徴とする条切りキャンバの推定方法である。
【0018】請求項2に記載の、本願第2発明の要旨とするところは、鋼板の表面温度分布を加速冷却開始時および復熱終了後に測定し、前記鋼板の矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の幅方向に不均一な内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバの曲率の長手方向分布を、条切り材を長手方向に細分割したスライスを幅方向に不均一に加速冷却する際の、加速冷却開始時における前記スライスの幅方向表面温度変化をパラメータとした、復熱終了後における前記スライスの幅方向表面温度変化と、矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の前記内部応力により発生する前記スライスの冷却後条切りキャンバの曲率との関係を、あらかじめ計算手段により求めておき、前記加速冷却開始時の鋼板表面温度分布から条切り材の幅方向表面温度変化の長手方向分布を算出し、更に、前記復熱終了後の鋼板表面温度分布から条切り材の幅方向表面温度変化の長手方向分布を算出し、算出した前記加速冷却開始時および前記復熱終了後の前記二つの条切り材の幅方向表面温度変化の長手方向分布から、前記関係を用いて求めることを特徴とする請求項1記載の条切りキャンバの推定方法である。
【0019】請求項3に記載の、本願第3発明の要旨とするところは、矯正後の幅方向に不均一な内部応力により発生する前記スライスの冷却後条切りキャンバの曲率を、復熱終了後、または、復熱終了後および加速冷却開始時の前記スライスの幅方向表面温度変化と矯正前の幅方向に不均一な内部応力により発生する前記スライスの冷却後条切りキャンバの曲率との関係をあらかじめ計算手段により求めておき、鋼板の表面温度分布の測定から得られた、復熱終了後、または、復熱終了後および加速冷却開始時の条切り材の幅方向表面温度変化から、前記関係を用いて矯正前の条切りキャンバの曲率を求め、前記曲率に0〜1の値を取る残存率を乗ずることにより求めることを特徴とする請求項1または2記載の条切りキャンバの推定方法である。
【0020】請求項4に記載の、本願第4発明の要旨とするところは、幅方向表面温度変化を表す量として、幅方向表面温度分布を直線で最小二乗近似したときの勾配である幅方向表面温度勾配を用い、矯正前あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の幅方向に不均一な内部応力により発生する前記スライスの冷却後条切りキャンバの曲率を、復熱終了後、または、復熱終了後および加速冷却開始時の前記幅方向表面温度勾配から下記式を用いて求めることを特徴とする請求項1、2または3記載の条切りキャンバの推定方法である。
【0021】一般部条切り材は、C={(−17.65+0.326t)Tg+(−11.12+0.222t)Tgo}×10-6エッジ部条切り材の左エッジは、C={(−10.7+0.19t)Tg+(0.40−0.0068t)}×10-6エッジ部条切り材の右エッジは、C={(−10.7+0.19t)Tg−(0.40−0.0068t)}×10-6ただし、C:矯正前あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の幅方向に不均一な内部応力により発生するスライスの冷却後の条切りキャンバ曲率(1/mm)(長手方向を見て左に凸のキャンバを引き起こす曲率が正)
t:板厚(mm)
Tg:復熱終了後の幅方向表面温度勾配(℃/mm)(左から右へ温度が増加する場合が正)
Tgo:加速冷却開始時の幅方向表面温度勾配(℃/mm)
本発明者らは、本願第1発明から第4発明により、鋼板の条切りキャンバを高精度且つ迅速に推定することに成功し、これを低コストで且つ確実に条切りキャンバを抑制できる鋼板の製造方法に適用すべく以下の発明に至った。
【0022】請求項5に記載の、本願第5発明の要旨とするところは、鋼板の加速冷却時に鋼板両縁上に遮蔽板を配置し、前記遮蔽板を前記鋼板の幅方向に突出または退去させて前記鋼板のエッジ部の冷却水量を制御してあるいは幅方向に冷却水の吐出水量密度分布を調整して前記鋼板のエッジ部の冷却水量を制御して冷却するに当たり、請求項1から4のうちのいずれか1つの方法により鋼板の条切りキャンバを推定し、前記推定値に基づいて前記遮蔽板の突出量を制御するあるいは前記冷却水の吐出水量密度分布を制御することを特徴とする条切りキャンバの少ない鋼板の製造方法である。
【0023】請求項6に記載の、本願第6発明の要旨とするところは、請求項1から4のうちのいずれか1つの方法により鋼板の条切りキャンバを推定し、前記推定値が許容値を超えている場合には、以後の製造工程において前記鋼板の残留応力を低減する手段を適用することを特徴とする条切りキャンバの少ない鋼板の製造方法である。
【0024】本発明者らの研究により、ホットレベラ矯正を強く行って矯正前の内部応力を除去してしまうと、条切りキャンバが大きくなることが明らかになった。即ち、ホットレベラ矯正の強さを最小限に抑えることにより、条切りキャンバを抑制できることを知見し本願第7発明に至った。
【0025】請求項7に記載の、本願第7発明の要旨とするところは、鋼板を熱間圧延後または熱間矯正後に加速冷却した後、ホットレベラにより矯正して製造するに当たり、前記矯正時に塑性変形率λを0.5以下で矯正を行うことを特徴とする条切りキャンバの少ない鋼板の製造方法である。
【0026】
【発明の実施の形態】次に、この発明を図面を参照しながら説明する。本願第1発明の条切りキャンバの推定方法について詳説する。
【0027】まず、加速冷却後のホットレベラ矯正前あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後に発生している内部応力を推定する。この応力を推定することは困難であるので、有限要素法による熱弾塑性解析を行うことにより推定する。このためには高精度な解析が必要であり、特に、相変態(γ相からα相への変態)を精密に考慮する必要がある。相変態が起こると変態発熱が発生し、また、組織変化により熱伝導率が変化するため温度の分布および時刻歴が変化する。温度の変化は熱応力に影響を与え、更に、変態膨脹が起こり、また、変態組織により降伏応力等が変化するため、内部応力は相変態により大きな影響を受ける。
【0028】本発明者らは、このような相変態現象を精密に考慮できる熱応力解析システムを開発し、内部応力を高精度に推定することに成功した。このシステムでは、TTT線図(等温変態図)に基づき、時間変化する温度を階段状の表面温度変化に変換し、等温変態のつなぎ合わせで変態挙動を追跡するものである。図5に解析に用いたTTT線図(板厚50mm以下の鋼種のもの)を示し、図6、図7に熱伝導率と熱容量を示す。変態前の熱容量は、γ相のものであり、ある温度で変態するとそれまでの潜熱(斜線部分)が変態熱として発生し、以後はα相の熱容量となる。各組織の降伏応力を図8に示す。これらの物性値および材料定数値は、各組織の分率に応じた値とする。熱応力解析では、応力分布の幅方向不均一性に大きな影響を与える変態膨脹を正確に表現できなければならない。900℃から種々の冷却速度で冷却したときのディラート(歪)を加工フォーマスタを用いた実験により測定し、同一温度条件での計算結果と比較すると図9〜図11のようになる。図9〜図11には変態膨脹を開始する温度を書き込んである。冷却速度が大きいと変態が低温側にずれて変態膨脹する挙動を、計算において正確に再現できており、両者は良く一致している。
【0029】このように、相変態現象を精密に扱うことができる熱応力解析システムを用い、鋼板の加速冷却開始時から終了時、更に、復熱終了までの温度と応力を計算した。
【0030】図12に示す条切り材を長手方向にスライスしたモデルに対して解析を行う。条切り幅は500mmとした。冷却は上下面で同一とし、板厚方向に1/2のモデルであり、スライス切断面は平面を保持し、また、長手方向応力の切断面上積分値が零となるように平行移動する。加速冷却開始時の初期温度、初期変態率(別途計算により推定する)から計算を開始する。図13に示す水冷時熱伝達係数を図12に示すスライスモデルの左右エッジでそれぞれ(1+a)倍、(1−a)倍し、その中間は直線補間することにより、加速冷却における幅方向不均一冷却を表現し、加速冷却過程の温度、応力を計算する。更に、加速冷却後の復熱過程を計算し、復熱終了後のスライス幅方向表面温度変化と内部応力とを求める。
【0031】ホットレベラ矯正を行う場合は、ホットレベラ矯正前でのスライスの内部応力を求める。復熱終了後では内部応力の時間変化は遅くまた矯正は通常復熱終了後に行われるので、前記復熱終了後の内部応力を矯正前内部応力と見なしても良い。ホットレベラ矯正後の内部応力は、前記矯正前の内部応力を持つスライスモデルに対して矯正過程をシミュレーションする弾塑性解析を行って求める。
【0032】このようにして得られた矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力に対応する弾性歪みを求め、その弾性歪みと室温での弾性係数から応力を求め、その応力から条切りキャンバの曲率を計算することにより、矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力によって発生する冷却後条切りキャンバの曲率を求める。
【0033】室温での弾性係数から求めた上記応力状態において、切断面が平行移動するという境界条件を解放すると、切断面は平面を保持したまま板厚方向の軸回りに回転してスライスは扇型に変形するが、これがスライスの条切りキャンバである。本発明者らは、この切断面の回転角から曲率を求めた。長手方向応力によるスライス中央での板厚方向軸回りのモーメントを計算し、これを曲げ剛性で除して曲率を求めても良い。
【0034】このようにして、スライスモデルにおいて幅方向に不均一に加速冷却した際の、復熱終了後における幅方向表面温度変化と矯正後あるいは矯正を行わない場合は復熱終了後の幅方向に不均一な内部応力により発生する冷却後条切りキャンバの曲率との関係を求める。
【0035】本発明者らは、復熱終了後の幅方向表面温度変化が同一であれば、このように計算手段によって求めた冷却後の条切りキャンバの曲率は実際の鋼板のものと同一であることを見出した。
【0036】しかし、ホットレベラ矯正を行う場合、その矯正過程をシミュレーションするには、条切り材単体ではなく幅方向の鋼板全体に対してレベラロールの変形等を考慮した解析を行わなくてはならず、更に、実操業では鋼板の変形状態に応じてホットレベリングの強弱や回数を変更するため、種々の矯正条件に対して計算を行わなければならず、計算コストの点で困難を伴う。
【0037】本発明者らは、本願第3発明に示すごとく、ホットレベリングの強弱や回数に対応する内部応力の残存率という概念を導入すると、矯正前内部応力により発生する冷却後条切りキャンバの曲率から、矯正後内部応力により発生する冷却後条切りキャンバの曲率を精度良く推定できることを見出した。即ち、矯正前の内部応力に対応する弾性歪みを求め、その弾性歪みと室温での弾性係数を用いて応力を求め、その応力からスライスモデルの条切りキャンバ曲率を計算することにより、矯正前の内部応力により発生する冷却後の条切りキャンバ曲率を求め、それに適切な残存率を乗ずることにより矯正後の内部応力により発生する冷却後の条切りキャンバ曲率が得られるのである。残存率は0〜1の値であるが、残存率が1ということは、条切りキャンバを引き起こすような矯正前の内部応力は矯正を行なってもそのまま残存することを意味し、残存率が0ということは、そのような内部応力は矯正によって完全に消滅することを意味する。本発明者らの研究により、通常の矯正条件では、残存率は0.5〜1.0の値となることがわかっている。残存率は、ホットレベラ矯正の強弱や回数に対応するものであり、実験により求めておく。
【0038】鋼板エッジ部では、加速冷却開始時に図14に示すような温度降下があるため、鋼板エッジに隣接する条切り材における復熱終了後幅方向表面温度変化と冷却後条切りキャンバの曲率との関係は、鋼板エッジに隣接しない一般部条切り材のものとは異なるので、図14に示す初期温度および初期変態率を用いて、一般部条切り材とは別個に計算する。
【0039】復熱終了後の鋼板表面温度分布は、一般部条切り材では幅方向にほぼ直線となり、幅方向表面温度変化を表す量として、この分布を直線近似したときの勾配を用いることができる。しかしながら、エッジ部条切り材では、復熱終了後の幅方向表面温度分布は、図15に示すように複雑なものになる。本発明者らは、このような複雑な分布であっても、それを直線で最小二乗近似し、その直線の勾配を幅方向表面温度変化を表す量として採用すれば、不均一冷却の度合いをうまく表現できて冷却後条切りキャンバ曲率と一対一に対応することを見出し、本願第4発明に至った。条切り材のこのような幅方向表面温度勾配と矯正前あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力による冷却後条切りキャンバの曲率との関係を、板厚25mmおよび50mmの鋼板について、代表的な鋼種および加速冷却条件下で、前記熱応力解析システムを用いて計算したものを図16、図17に示す。このような関係は、各種の鋼種、鋼板の板厚、加速冷却の開始温度と停止温度について求めておく必要があるものの、本発明者らによる検討の結果、ほぼ本願第4発明である以下の式で表せることがわかった。
【0040】一般部条切り材は、 C={(−17.65+0.326t)Tg+(−11.12+0.222t)Tgo}×10-6・・・(1) 式(1)はここに示す3つの式全体を示す。
【0041】エッジ部条切り材の左エッジは、C={(−10.7+0.19t)Tg+(0.40−0.0068t)}×10-6エッジ部条切り材の右エッジは、C={(−10.7+0.19t)Tg−(0.40−0.0068t)}×10-6ただし、C:条切りキャンバ曲率(1/mm)(長手方向を見て左に凸のキャンバを引き起こす曲率が正)
t:板厚(mm)
Tg:復熱終了後の幅方向表面温度勾配(℃/mm)(左から右へ温度が増加する場合が正)
Tgo:加速冷却開始時の幅方向表面温度勾配(℃/mm)
鋼種と加速冷却条件、矯正条件が含まれていないのは、これらの条件は板厚によってほぼ決まってしまうためである。この式は、条切り幅300mm〜500mmについて適用できる。Tgoは、後述する加速冷却開始時の幅方向表面温度変化を考慮する場合に含める量である。
【0042】種々の鋼種、板厚や加速冷却条件および条切り幅での上記関係を求めてテーブルの形で表してもよい。その場合でも、本発明では、条切り材の幅方向表面温度変化は、温度分布を直線で最小二乗近似した時の温度勾配で表すのである。
【0043】本発明では、実際の条切り材においても、幅方向表面温度変化を表す量として測定された温度分布を直線で最小二乗近似したときの勾配を用いるのであるが、この場合、測定値に含まれるノイズが排除されるという効果もある。
【0044】以上のようにして、鋼板の復熱終了後の幅方向表面温度勾配と矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバ曲率との関係を求める。この関係は、長手方向に無限小厚さを持つ条切り材のスライスについて成立するものである。
【0045】そして、本発明者らは、復熱終了後の幅方向表面温度勾配が同一であれば、このように計算手段によって求めた矯正後のあるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバの曲率は、実際の鋼板の条切り材のものと同一であることを見出したのである。
【0046】次に、この関係を用いて、実際の鋼板における矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバを推定する方法を述べる。
【0047】本願第1発明では、加速冷却された鋼板の復熱終了後に鋼板の表面温度分布を測定する。この鋼板上に幅300mm〜500mmの条切り線を設定する。これを図化したものを図18に示す。3は条切り線、4は分割線を示す。図18では、簡単のために、1個の条切り材を示してあるが、実際には幅方向に多数の条切り材を設定する。図18には、同時に鋼板表面温度の等高線を示してある。図18に示すように条切り材を長手方向に細分割し、分割線上の温度分布を直線で最小二乗近似して幅方向表面温度勾配を算出する。これをすべての分割線について行ない、条切り材の復熱終了後の幅方向表面温度勾配の長手方向分布を求める。前記関係を用いて、復熱終了後の幅方向表面温度勾配から矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバの曲率を求めることができるので、条切り材の幅方向表面温度勾配の長手方向分布から矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバの曲率の長手方向分布を求めることができる。この曲率分布を長手方向に2回積分すると数1に示す次式(2)により、鋼板冷却後の条切りキャンバのたわみ曲線が得られる。
【0048】
【数1】

ただし、v1 (x):矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバのたわみ曲線x:条切り材の長手方向座標C1 (s):x=sにおける矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバの曲率この積分は、長手方向の分割線間隔を区分幅とした数値積分により求める。
【0049】
1 (x1 )=0 ・・・(3)’ v1 (xj+1 )=v1 (xj )+h(xj )Δx+{1/3C1 (xj )+1/6C1 (xj+1 )}Δx2 ・・・(3)’’ h(x1 )=0 ・・・(3)’’’ h(xj+1 )=h(xj )+1/2{C1 (xj )+C1 (xj+1 )}Δx ・・・(3)’’’’(j=1,・・・,L−1)
以上式(3)’〜式(3)’’’’を式(3)という。
【0050】ただし、xj :分割線のx座標Δx:分割線の間隔L :分割線の個数上記式(3)は、条切り材の下端を固定したときのたわみ曲線を与える。
【0051】このようにして、矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する鋼板の冷却後の条切りキャンバのたわみ曲線を求める。次に、復熱終了後の鋼板温度分布が冷却後に一様温度となることにより発生する条切りキャンバのたわみ曲線を計算する。この計算法は、先行技術2に示されている次式、数2、数3、数4、数5である。
【0052】
【数2】

【0053】
【数3】

【0054】
【数4】

【0055】
【数5】

ただし、v2 (x):復熱終了後鋼板温度分布が冷却後に一様温度となることにより発生する条切りキャンバのたわみ曲線2 (s):x=sにおける上記条切り材のキャンバ曲率w:鋼板の板幅α:線膨脹係数y:鋼板幅方向の座標T(s,y):復熱終了後の鋼板表面温度分布数6【0056】
【数6】

22(s)は、条切り材の復熱終了後の温度分布が冷却後に一様温度になることにより発生する条切りキャンバの曲率であり、上式ではこれを条切り材温度分布を幅方向に積分して求めているが、本発明では、幅方向表面温度勾配から計算することができる。この場合、C22(s)=αTg(s) ・・・(6)
ただし、Tg(s):x=sにおける復熱終了後の条切り材幅方向表面温度勾配上記二つの方法での差は小さいが、計算時間の点で後者が有利である。
【0057】本発明者らは、上記の矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバのたわみ曲線と復熱終了後表面鋼板温度分布が冷却後に一様温度となることにより発生する条切りキャンバのたわみ曲線を加算すると、実際の鋼板の条切りキャンバを精度よく推定できることを見出した。
【0058】
v(x)=v1 (x)+v2 (x) ・・・(7)
ただし、v(x):条切りキャンバたわみ曲線上式は、条切り材の下端を固定したときのたわみ曲線を与える。条切りキャンバは、条切り材の上端と下端とを結んだ直線からのずれである。このずれ、即ち、条切りキャンバは数7に示す次式(8)から求まる。
【0059】
【数7】

本願第1発明では、以上のようにして条切りキャンバを推定するのである。実際の演算は、次のように行う。条切りキャンバのたわみ曲線は、式(2)、式(4)、式(7)より数8に示す次式から計算できることになる。
【0060】
【数8】

被積分関数のうち、C21(s)は鋼板全体のキャンバに起因する条切りキャンバであり、すべての条切り材で同一なのであらかじめ定めておく。C1 (s)、C22(s)を条切り材で求め、これにC21(s)を加算して長手方向積分、即ち、式(3)の数値積分を行ない、v(x)を求める。このようにすると、数値積分が各条切り材で1回で済むため計算効率が良い。このような演算を各条切り材で行うのである。
【0061】鋼板圧延中のデスケーリング、ロール冷却水による不均一冷却およびスケールの不均一剥離等により、加速冷却開始時に鋼板には既に温度分布が付いていることがある。本発明者らは、このような加速冷却開始時の不均一温度分布が条切りキャンバに無視できない影響を与えることを見出し、本願第2発明に至った。本発明者らは、前記スライスモデルにおいて、加速冷却開始時の幅方向に変化する温度分布を初期条件として計算すれば、この影響を精度良く取り込むことができることを見出した。幅方向に変化する初期温度をパラメータとして、復熱終了後の幅方向表面温度変化と矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する冷却後の条切りキャンバの曲率との関係を求める。この場合も、ホットレベラ矯正を行う場合には、本願第1発明と同様に、矯正前内部応力により発生する冷却後の条切りキャンバの曲率を求め、それにホットレベラ矯正の強弱や回数に対応する残存率を乗ずることにより、矯正後内部応力により発生する冷却後の条切りキャンバの曲率を精度良く推定できる。また、幅方向表面温度変化を表す量として、幅方向温度分布を最小二乗近似したときの勾配を用いることができる。
【0062】図16に、板厚25mmの一般部条切り材で加速冷却開始時の温度勾配(Tgo)が±0.04℃/mmの場合の復熱終了後の温度勾配と矯正前あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する冷却後の条切りキャンバの曲率との関係を示す。板厚50mmの鋼板では、図17に示されるように加速冷却開始時の幅方向表面温度変化の影響はない。エッジ部における加速冷却開始時の温度降下のばらつきは、通常小さいため考慮する必要はない。しかしながら、圧延のパススケジュール等を変更すると、温度降下の量やパターンが変化する場合があり、このときは、そのような初期温度分布を用いてエッジ部条切り材の上記関係を計算し直す必要がある。
【0063】本発明者らの検討の結果、加速冷却開始時の幅方向温度勾配を考慮したときの、一般部条切り材における復熱終了後幅方向温度勾配と矯正前あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力による冷却後条切りキャンバの曲率との関係は、ほぼ式(1)で表せることがわかった。
【0064】そして、加速冷却開始時および復熱終了後の鋼板温度分布を測定し、それらの温度分布の条切り材の分割線上で幅方向温度勾配を算出し、これら二つの幅方向温度勾配から前記関係を用いて矯正後あるいは矯正を行わない場合には復熱終了後の内部応力により発生する鋼板冷却後の条切りキャンバの曲率を求めれば精度良い条切りキャンバの推定を行えるのである。この曲率から条切りキャンバを求める過程は、本願第1発明と全く同様である。
【0065】本願第1発明による条切りキャンバの推定精度を工場実験を行ない検証した。実験は、板厚25mmおよび45mmの2種類について行ない、6条に条切りしてキャンバを測定し、本願第1発明による推定値と比較した。図19(板厚25mm)、図20(板厚45mm)に鋼板サイズ(mm)および条切り線を示す。鋼板の温度分布は、加速冷却開始時およびホットレベラ矯正前において測定した。
【0066】温度測定の都合上、加速冷却の開始および停止の温度が実操業の場合より120℃程度降下したため、この加速冷却条件での矯正時幅方向温度勾配と、矯正前内部応力により発生する冷却後条切りキャンバの曲率との関係をあらためて計算した。その結果を図21(板厚25mm)、図22(板厚45mm)に示す。残存率は他実験の結果より0.9とした。
【0067】前述の条切り線の設定、条切り材分割線上の温度勾配と曲率の算出および条切りキャンバの計算といった一連の手順は、すべてコンピュータで処理した。図23(板厚25mm)、図24(板厚45mm)に、条切りキャンバの測定値と本願第1発明による推定値との比較を示す(板厚25mmでは、一般部とエッジ部との条切り材でスケールを変えて示している)。図中2種類のプロットは、条切りキャンバをトライブ側(DS□)と、フリー側(FS▽)とで測定した実測値であり、実線(Est・0)は曲率C22(s)を式(5)を用いて計算した場合の推定値、点線(Est・1)は、式(6)を用いて計算した場合の推定値である。図面に示すように推定値(Est・0,Est・1)と実測値とは良く一致しており、本願第1発明の推定方法の精度が非常に良いことがわかる。
【0068】ちなみに、先行技術に示されるように、矯正時の鋼板温度分布が冷却後に一様温度となることにより発生する応力のみから条切りキャンバを求めて実測値と比較すると、図25(板厚25mm)、図26(板厚45mm)に示すようになる。図25、図26から明らかなように、従来の条切りキャンバ推定法の精度は非常に悪く、特にエッジ部条切り材では、板厚25mmでは推定値は非常に大きく、板厚45mmではキャンバの方向が逆になっている。
【0069】これらの比較から、本願第1発明による推定方法は、従来法よりもはるかに優れていることがわかる。図23に示す板厚25mmの鋼板において、2番および5番の条切り材の本願第1発明によるキャンバ推定精度がやや悪い。条切りキャンバの許容値は、通常10m当たりで5mmなのでやや精度不足である。この二つの条切り材では、加速冷却開始時に−0.02℃/mm程度の温度勾配があった。そこで、本願第2発明および第3発明による推定方法を用い、加速冷却開始時の温度勾配を考慮して条切りキャンバの推定を行った。本願第2発明による推定値と実測値との比較を一般部条切り材について行ったものを図27に示す。図27に示すように、2番および5番の条切りキャンバ材の推定精度が大幅に向上していることがわかる。
【0070】このように、本願第2発明による条切りキャンバ推定方法を用いれば、本願第1発明より更に精度が向上する。以上述べたように、本願第1〜第4発明によれば、高精度で且つ迅速に条切りキャンバを推定することができる。
【0071】本発明者らは、本願第1〜第4発明による条切りキャンバ推定方法を最もキャンバの発生し易いエッジ部条切り材でのキャンバ制御に適用すべく本願第5発明に至った。
【0072】前述したように、エッジ部条切り材のキャンバは、鋼板両エッジ部に遮蔽板を配置し、これを鋼板幅方向に突出または退去させて鋼板エッジ部の冷却水量を調整し、あるいは幅方向に冷却水の吐出水量密度分布を調整し、エッジ部温度分布を適正化することにより抑制できる。図2〜図4に示すように、遮蔽板の突出量は過大であっても過小であってもならず適正な量でなければならないが、従来は条切りキャンバの精度良い推定が不可能であったため、この適正量をオンラインで見出すのが困難であった。幅方向に冷却水の吐出水量密度分布を調整する場合も同様で、適正な水量密度分布をオンラインで見出すのが困難であった。本発明では、復熱終了後に鋼板温度分布を測定するだけで条切りキャンバを精度良く且つ迅速に推定できる。鋼板製造中に遮蔽板あるいは幅方向の冷却水吐出水量密度分布と条切りキャンバとの関係を把握し、この関係から条切りキャンバを発生させないか、あるいは、最大限抑制できる遮蔽板突出量あるいは幅方向の冷却水吐出水量密度分布を見出し、次鋼板の加速冷却時の突出量にフィードバックする。
【0073】このように、本発明では、高精度且つ迅速に条切りキャンバを推定し、その推定値に基づいて遮蔽板突出量あるいは冷却水吐出水量密度分布を制御するため、確実に条切りキャンバの少ない鋼板を製造できるのである。
【0074】本発明者らは、本願第1〜4発明の条切りキャンバ推定方法を、低コストで且つ確実に条切りキャンバを抑制できる鋼板の製造方法に適用すべく本願第6発明に至った。
【0075】本発明では、復熱終了後の、または、必要ならば復熱終了後および加速冷却開始時の、鋼板表面の温度分布を測定する。そして、鋼板上に幅300mm〜500mmの条切り材を多数想定しておき、本発明による推定方法によりこれらの条切り材のキャンバを測定した温度分布から推定する。この推定値が想定したすべての条切り材においてあらかじめ設定しておいた許容値以下であれば、残留応力を低減する手段は講じない。もし許容値を超えるキャンバが発生する条切り材があれば、その鋼板に対しては以後の製造工程において残留応力を低減する手段を適用する。即ち、具体的には、冷間レベリングや温間レベリングを行うか、あるいは、応力除去焼鈍を行う。
【0076】このように、本発明においては、高精度且つ迅速に条切りキャンバを推定できるため、許容値以上の条切りキャンバが発生する鋼板の選別が容易に且つ確実に行なえ、そのような鋼板に対してのみ残留応力低減手段を適用するため、コスト高である前記残留応力低減手段の適用を必要最小限に抑えることが出来、低コストで条切りキャンバが許容値以下となる鋼板を確実に製造することができる。
【0077】次に、本願第7発明の鋼板製造方法におけるホットレベラ矯正方法を説明する。本発明者らは、加速冷却から室温までの応力解析を行うことにより、ホットレベラ矯正前の内部応力は室温時に発生する条切りキャンバを抑制する働きを持ち、そのような働きを持つ応力分布は、鋼板表面からある程度板厚中央に入った位置に発生しており、その応力分布を矯正後も残存させることができれば室温時条切りキャンバを大幅に抑制できることを知見し、ホットレベラ矯正時に塑性変形率を0.5以下として矯正を行うという本願第7発明に至った。
【0078】板厚25mmのスライスモデルにおいて、幅方向の左右エッジで強冷側で図13に示す熱伝達係数の1.07倍、弱冷側で0.93倍とした不均一冷却を与え応力計算を行った(矯正なし)。図31に、室温時の左右エッジにおける長手方向応力の板厚方向分布を示す。その中間位置での応力は、ほぼ幅方向に直線変化している。この応力分布の板厚方向の平均値を取ると、強冷側では圧縮、弱冷側では引張りになっている。このスライスを条切りすると、強冷側は伸び、弱冷側は縮むため、強冷側に凸のキャンバが生ずる。ところが、図32に示すように、矯正前の時点での長手方向応力分布の板厚方向平均値は、強冷側で引張り、弱冷側で圧縮になっている。従って、このスライスを矯正前に仮想的に条切りすると、弱冷側に凸のキャンバが生ずる。つまり、矯正前に条切りすると室温時に生ずる条切りキャンバとは逆方向のキャンバが発生するのである。
【0079】本発明者らの検討により、このような現象は、程度の差はあるものの、板厚、鋼種、加速冷却条件のいかんに拘らず存在していることがわかった。前記現象は、矯正前内部応力には、室温時条切りキャンバを小さくする働きがある、即ち、室温時条切りキャンバの抑制効果があることを意味している。本願第1発明の説明で用いた図23と図25とのエッジ部条切り材のキャンバ推定値を比較すると、矯正後内部応力を考慮していない、即ち、矯正前内部応力はホットレベラ矯正により消滅するとしている従来法の条切りキャンバ推定値(図25)は非常に大きいのに対し、矯正前内部応力を考慮している本願第1発明の推定値は、かなり小さくなっており、これも、矯正前内部応力に室温時条切りキャンバの抑制効果があるためと解釈できるのである。
【0080】本発明者らは、このような矯正前内部応力による条切りキャンバ抑制効果は、表面からある程度内部に入った位置から板厚中心にかけて存在することを見出した。図32の矯正前応力分布を例として調べると、室温キャンバとは逆方向のキャンバを引き起こす矯正前内部応力、即ち、強冷側と弱冷側との応力の差は、板表面には存在せず、表面から半板厚の20%程度入った位置から板厚中心まで存在している。
【0081】ホットレベラ矯正では、鋼板に曲げおよび曲げ戻しの繰り返しを与えて鋼板を平坦に矯正する。この過程で鋼板表面から内部に向けて塑性域が発生するが、この塑性域の板厚方向の大きさの鋼板板厚に対する割合を塑性変形率と呼ぶ。矯正中に塑性変形が生ずる領域の内部応力は、ほぼ除去されるが、塑性変形を生じない板内部の弾性領域では、応力分布は引張り側または圧縮側にシフトするだけで、その応力差(相的分布)はそのまま残存する。
【0082】従って、室温時条切りキャンバの抑制効果が存在する板内部が弾性域に止まるように、塑性変形率を小さく抑えて矯正することにより、室温時条切りキャンバが抑制されるのである。
【0083】本発明者らの研究の結果、ホットレベラ矯正時の塑性変形率を0.5以下、より好ましくは、板厚によって塑性変形率を変え、板厚25mmでは0.25以下、板厚50mmでは0.45以下とすることにより、本発明による条切りキャンバ抑制効果は最大限に発揮されることが明らかになった。
【0084】このようにして、本発明では、ホントレベラ矯正時の塑性変形率を0.5以下とすることにより、条切りキャンバ抑制効果を持つ矯正前内部応力を矯正後に残存させることができるので、条切りキャンバの少ない鋼板を製造することができる。
【0085】
【実施例】次に、この発明を実施例により説明する。図28は、この発明の実施例に係る本発明による条切りキャンバの推定方法を組み込んだ鋼板製造設備の製造ラインを示す説明図である。図28に示すように、仕上げ圧延機5によって熱間圧延が終了した鋼板は、加速冷却装置6によって冷却され、ホットレベラ9により平坦に矯正される。加速冷却装置6の前(上流)およびホットレベラ9の前(上流)において、放射温度計7によって鋼板表面の温度分布が計測される。ホットレベラ9の前(上流)の放射温度計7は、ホットレベラ9の後(下流)またはその内部に配置してもよい。測定された温度データは演算装置10に送られ、鋼板の条切りキャンバが計算される。
【0086】演算装置10には、放射温度計7の視野内の各点(本実施例では水平256点、垂直100点)の温度データが取り込まれ、それを正平面図に変換した後、鋼板エッジが検出され、その板内部だけの温度データが作成される。この時、鋼板エッジは真っ直ぐな直線とはならず、板形状も長方形からずれるため、鋼板の直線の辺を持つ長方形になるように修正される(図18参照)。次に、鋼板は多数の格子に分割され、その格子点座標および格子点温度のデータが作成される。
【0087】このデータから、鋼板全体キャンバ曲率である式(5)のC21(s)の長手方向分布が計算される。この曲率は、条切り材で共通に用いられる。次に、あらかじめ入力されている条切り位置データより、鋼板上に条切り線3が図18に示すように設定される。この条切り材は長手方向に細分割され、各分割線4において幅方向温度分布を直線で最小二乗近似した時の勾配が算出される。この温度勾配の算出は、前記格子点の座標および温度のデータを用いて行われ、本願第1発明により条切りキャンバを推定する場合は、矯正時測温データについて行われ、本願第2発明による場合は、加速冷却時および矯正時の二つの測温データについて行なわれる。
【0088】あらかじめ、計算手段により求めておいた関係、即ち、図16(板厚25mm)、図17(板厚50mm)、式(1)および残存率を用い、この幅方向温度勾配から矯正後の内部応力により発生する鋼板条切りキャンバの曲率である式(2)のC1 (s)の長手方向分布が計算される。更に、分割線4において式(6)よりC22(s)の長手方向分布が計算される。
【0089】これら三つの曲率分布は式(9)に示されるように加算され、式(3)の数値積分が実行されて条切りキャンバたわみ曲線が求められ、式(8)から条切りキャンバが計算される。演算装置10では、このような計算が位置データを入力されたすべての条切り材について行われ、それらの条切りキャンバが推定される。
【0090】前述した通り、このような本発明による推定方法は、公知の推定方法よりもはるかに高精度である。演算装置10からエッジ部条切り材のキャンバを抑制するために設置された遮蔽板11を鋼板幅方向に移動させる装置12に遮蔽板突出量指示信号が出力される。最大キャンバは、ほぼ条切り材中央に発生するので、式(8)からx=l/2、(l:条切り材長さ)におけるキャンバが求められ、これが10m当たりのキャンバに換算されて突出量が決定される。換算は求められたキャンバに(10/l)2 が乗じられて行なわれる。
【0091】遮蔽板11の突出量は、次の様に制御される。板厚、鋼種、加速冷却条件ごとに、遮蔽板11の突出量と10m当たりのキャンバ推定値との関係(従来の実績)は、データベース化されている。現鋼板に当てはまるデータに対し図29に示すように、キャンバが零となる付近のデータを直線近似して、この直線関係でキャンバが零となるように、最初の鋼板を加速冷却する際の遮蔽板11の突出量が決められる。同一の板厚、鋼種、加速冷却条件の鋼板を多数製造する場合、二枚目の鋼板では、図30に示すように、最初の鋼板の実績値から前記近似直線と同一の傾きの直線を引き、キャンバが零となる突出量(B点)が決められる。三枚目以後の鋼板では、それまでの突出量と条切りキャンバ推定値との関係から、キャンバを零とする突出量(C点)が決められ、より確実にキャンバを抑制することができる。このような遮蔽板11の突出量の制御は、左右エッジ部条切り材で別個に行なわれる。
【0092】本発明方法は、従来の遮蔽板突出量を固定する方法と比較し、エッジ部条切り材のキャンバは50%〜80%減少した。幅方向に吐出水量密度分布を制御する場合は、遮蔽板突出量の代わりに鋼板中央部の吐出水量密度とエッジ部の吐出水量密度との比を用いて、前記遮蔽板突出量の制御と同じ手順で、キャンバが発生しない適正な吐出水量密度の比を決める、その比からエッジ部の吐出水量密度を決める。これにより、前記遮蔽板突出量制御と同じ程度にエッジ部条切り材のキャンバを制御することができる。
【0093】ホットレベラ矯正終了後、鋼板は搬送分岐機13に送られる。その間に演算装置10によって、条切りキャンバ推定値に基づき残留応力低減手段を適用するか、その必要がないかの判定が行なわれる。即ち、条切り材の10m当たりのキャンバ推定値が許容範囲内にあるか否かがチェックされる。
【0094】搬送中の鋼板に対する残留応力除去手段の適用要否が判定された後、演算装置10からその信号が搬送分岐機13に出力される。残留応力手段が不要な場合には、鋼板はそのまま冷却床14に搬送され、必要な場合は一旦ストックヤード15に搬送される。
【0095】残留応力除去手段としては、レベラ16および加熱炉17による応力除去焼鈍が用意されている。極厚材においては、材質への影響がない温度、時間の範囲内で応力除去焼鈍が行なわれる。薄物材においては、レベラ16により残留応力が除去される。中厚材においては、レベリングまたは応力除去焼鈍が行なわれる。
【0096】従来までは、すべての鋼板に残留応力除去手段を適用していたが、本発明により、残留応力除去手段の適用鋼板数が減少し、生産コストが大幅に削減された。ホットレベラ9では、塑性変形率を0.5以下となるレベリングが行なわれる。前述したように、塑性変形率が小さいほど矯正前内部応力による室温時条切りキャンバの抑制効果が大きい。ホットレベラ9の前後(上下流)には、平坦度計8が設置されている。ホットレベラ前(上流)の平坦度計8により、板の面外変形が計測され、その度合いに応じてレベリングの塑性変形率が演算装置10により決定される。その値は必ず0.5以下であり、好ましくは板厚により塑性変形率を変え、板厚25mmでは0.25以下、板厚50mmでは0.45以下である。矯正後ホットレベラ後面の平坦度計8により、板の面外変形が計測される。それが許容値以上であれば再び矯正を行ない、許容範囲に収まるまで繰り返し矯正を行う。
【0097】本発明の効果を実証すべく、実際の鋼板で種々塑性変形率を変えてホットレベラ矯正を行ない、条切りキャンバを測定した。供試材は、板厚25mm(25t)および45mm(45t)で、幅2600mm、長さ12000mmであり、条切り幅500mmで5条切りとした。試験結果を表1に示す。キャンバは絶対値で示してある。
【0098】
【表1】

本発明において塑性変形率を0.5以下とすることにより、条切りキャンバは大幅に抑制されることを確認できた。
【0099】本発明のホットレベリングを行うことにより、残留応力低減手段が必要となる鋼板が、塑性変形率を0.5超としてレベリングをしていた場合と較べ、30%以上減少し、生産コストを大幅に低減できた。
【0100】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、下記の工業上有用な効果がもたらされる。
【0101】■ 鋼板の条切りキャンバを高精度で迅速に推定し、加速冷却時のエッジ水量を適正に制御するので、条切りキャンバの少ない鋼板を製造でき、また、高精度の推定により条切りキャンバが許容値を超える鋼板のみに残留応力除去手段を適用するので、コスト高であるこれらの手段の適用回数が大幅に減少する。
【0102】■ 本発明のホットレベラ矯正法を用いることにより条切りキャンバが抑制されて、残留応力除去手段の適用回数は更に減少する。
■ 以上■、■により、低コストで条切りキャンバの少ない鋼板を確実に製造できる。




 

 


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