米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 電気素子 -> 株式会社島津製作所

発明の名称 超伝導トランジスタおよびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平8−102558
公開日 平成8年(1996)4月16日
出願番号 特願平6−236848
出願日 平成6年(1994)9月30日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】西田 新
発明者 上田 雅弘 / 品田 恵 / 長町 信治 / 吉井 光良
要約 目的
超伝導体のコヒーレンス長よりも短い理想的なブリッジ長を持つ弱結合ブリッジを容易に得ることのできる構造を持つ高性能の超伝導トランジスタと、そのような超伝導トランジスタを良好な生産性のもとに、均一な特性のもとに製造することのできる方法を提供する。

構成
2つの超伝導薄膜1,2を、金属超伝導体の酸化物または窒化物、もしくは超伝導薄膜1,2に対し近接効果を有する物質の酸化物または窒化物からなる絶縁膜3を介して積層し、その絶縁膜3に、局所的な酸素または窒素の低濃度領域4・・4を複数箇所において形成し、その各領域4・・4に近接して、これらと磁気的に結合された制御電流経路5を配置する。
特許請求の範囲
【請求項1】 2つの超伝導薄膜が、金属超伝導体の酸化物または窒化物、もしくは、上記超伝導薄膜に対して近接効果を発揮する物質の酸化物または窒化物からなる絶縁膜を介して積層され、かつ、その絶縁膜には、局所的な酸素または窒素の低濃度領域が複数箇所において形成され、その複数の酸素または窒素の低濃度領域のそれぞれが、上記2つの超伝導薄膜を相互に弱結合する弱結合ブリッジを形成しているとともに、その各弱結合ブリッジの近傍に、これらと磁気的に結合してその各弱結合ブリッジを流れる電流を変調する制御電流経路が配設されてなる超伝導トランジスタ。
【請求項2】 2つの超伝導薄膜が複数の弱結合ブリッジによって相互に接合され、かつ、その各弱結合ブリッジの近傍には、これらと磁気的に結合してその各ブリッジを流れる電流を変調する制御電流経路が配設された超伝導トランジスタの製造方法において、上記2つの超伝導薄膜と複数の弱結合ブリッジを作成する工程が、2つの超伝導薄膜を、金属超伝導体の酸化物または窒化物、もしくは、上記超伝導薄膜に対して近接効果を発揮する物質の酸化物または窒化物からなる絶縁膜を介して積層した後、上記絶縁膜に対して複数箇所に渡って局所的に粒子を注入することにより、その注入部分に上記2つの超伝導薄膜を相互に弱結合する弱結合ブリッジを複数個形成することを特徴とする、超伝導トランジスタの製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速電子回路や超伝導コンピュータ等に使用される超伝導トランジスタとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】2つの超伝導薄膜を複数の弱結合ブリッジによって接合するとともに、その各弱結合ブリッジに流れる電流を、各弱結合ブリッジに近接配置されて磁気的にこれらと結合された電流経路に制御電流を流すことによって変調し、2つの超伝導薄膜間の電圧とこれらの間にに流れる電流との関係を、半導体を用いた通常のトランジスタのコレクタ電圧とコレクタ電流との関係に近似したものとした、いわゆる超伝導磁束フロートランジスタが知られている(D. S. Ginley et al., "Su-perconducting Flux Flow Digital Circuits" IEEE Transaction on ElectronDevice, Vol. 40 No. 3, March 1993)。
【0003】このような超伝導磁束フロートランジスタには、従来、TlCaBaCuO やYBaCuOなどの酸化物高温超伝導体が使われており、その構造は、図7に示すように、基板70上に隣接して形成された2つの超伝導薄膜71,72を、同じく基板70上に形成された複数の弱結合ブリッジ73・・73によって弱結合するとともに、その各弱結合ブリッジ73・・73に対して磁気的に結合されるよう、これらに隣接して制御電流が流されるコントロール線54を形成した構造を採っている(上記文献)。
【0004】このような構成において、外部から超伝導薄膜71,72を介して各ブリッジ73・・73に電流を流すことによりブリッジ73・・73に沿って電圧を発生させた状態で、コントロール線74に流れる制御電流によって発生する磁界をブリッジ73・・73が発生する磁界と結合させ、その制御電流が発生する磁界でブリッジ73・・73の臨界電流と∂I/∂Vを変調させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、以上のような高温超伝導体を用いた超伝導磁束フロートランジスタにおいては、まず、実際には、電気的に良質で化学的に安定な薄膜の成膜方法が確立できていないため、実用的な電子デバイスの作成は困難である。また、同様な理由により、半導体デバイスやニオブ系超伝導デバイスと違い、リソグラフィ技術による微細加工に種々の制約があり、製造が極めて困難である。更に、高温超伝導体に接触してその性能を損なわせない適当な絶縁膜が未だ見つかっていないので、図7に例示したような単層構造のデバイスしか作成できない、等の問題があり、結局、高温超伝導体を用いた超伝導磁束フロートランジスタは、現時点において事実上、実用に供することはできないと考えられる。
【0006】そこで、図7の構造をニオブ等の金属超伝導体によって形成することにより、上記した各問題点のうちの幾つかは解決できるが、金属超伝導体で図7の構造を得る場合には、次のような問題がある。
【0007】すなわち、弱結合ブリッジの長さは、超伝導体のコヒーレンス長よりも短いことが理想とされている。例えばニオブのコヒーレンス長は、0Kで約400Åであり、ニオブ系超伝導デバイスの通常の動作温度である4.2Kではこれよりも短くなる。従って、サブミクロン程度の精度が限界と言われているフォトリソグラフィ技術によるパターニングでは、このような短い弱結合ブリッジを平面的に形成することは不可能であり、結局、図7の構造をニオブ系等の金属超伝導体によって形成しても、良質な超伝導トランジスタはできない。
【0008】本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、超伝導体のコヒーレンス長よりも短いブリッジ長を持つ理想的な弱結合ブリッジを容易に得ることができる構造を持つ高性能の超伝導トランジスタと、そのような超伝導トランジスタを良好な生産性で、かつ、均一な特性のもとに製造することのできる方法の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の超伝導トランジスタは、実施例図面である図1〜図3に示すように、2つの超伝導薄膜1および2が、金属超伝導体の酸化物または窒化物、もしくは、上記超伝導薄膜に対して近接効果を発揮する物質の酸化物または窒化物からなる絶縁膜3を介して積層され、かつ、その絶縁膜3には、局所的な酸素または窒素の低濃度領域4・・4が複数箇所において形成され、その複数の酸素または窒素の低濃度領域4・・4のそれぞれが、2つの超伝導薄膜1,2を相互に弱結合する弱結合ブリッジを形成しているとともに、その各弱結合ブリッジ4・・4の近傍に、これらと磁気的に結合してその各弱結合ブリッジ4・・4を流れる電流を変調する制御電流経路5が配設されていることによって特徴づけられる。
【0010】また、本発明の超伝導トランジスタの製造方法は、以上のような構造を持つ超伝導トランジスタを製造する方法において、2つの超伝導薄膜1,2と複数の弱結合ブリッジを4・・4を作成する工程が、2つの超伝導薄膜1,2を、金属超伝導体の酸化物または窒化物、もしくは、上記超伝導薄膜に対して近接効果を発揮する物質の酸化物または窒化物からなる絶縁膜3を介して積層した後、絶縁膜3に対して複数箇所に渡って局所的に粒子を注入することにより、その注入部分に2つの超伝導薄膜1,2を相互に弱結合する弱結合ブリッジ4・・4を複数個形成することによって特徴づけられる。
【0011】
【作用】本発明方法において、絶縁膜3に局所的に粒子を注入すると、その注入部分の酸素または窒素が反跳してその近傍の超伝導薄膜1まはた2に捕獲される結果、絶縁膜3にはその部分に酸素または窒素の低濃度領域が形成され、その部分の絶縁が破壊される。絶縁膜3は超伝導体もしくは超伝導薄膜1ないし2に近接効果を発揮する物質の酸化物または窒化物であるため、絶縁破壊された領域により超伝導薄膜1と2が弱く結合され、弱結合ブリッジ4が得られる。このような局所的な粒子注入を複数領域において行うことにより、超伝導薄膜1と2が複数の弱結合ブリッジ4・・4によって弱結合された構造が得られる。
【0012】以上の方法では、弱結合ブリッジ4・・4の寸法、すなわちブリッジ長と幅は、絶縁膜3の膜厚と粒子注入領域によって制御されるため、良好な生産性のもとに特性の均一な弱結合ブリッジ4・・4を再現性良く得ることができ、また、平面上での微細加工精度の限界に比して、膜厚制御精度の限界はより微細であるため、図6に示した構造のものに比して、ブリッジ長を大幅に短くすることが可能である。
【0013】そして本発明の超伝導トランジスタの構造は、以上のような本発明方法の採用を可能とする構造であり、例えば電気的および化学的に安定したニオブ系の超伝導体を超伝導薄膜1および2として用いる等により、実用的でしかも弱結合ブリッジ4・・4の長さを理想的なレベルにまで短くすることが容易であり、所期の目的を達成できる。
【0014】
【実施例】図1は本発明実施例の全体的な構造の説明図で、(A)模式的外観図、(B)および(C)はそれぞれそのB矢視部分拡大図およびC矢視部分拡大図である。
【0015】基板10上に直線状の下部電極1が形成され、その表面を部分的に跨ぐよう、絶縁膜3を介して上部電極2が積層されている。上部電極2は、3本の枝部2a〜2cがその根元部において一体化された、上面より見て全体としてE字形のパターンを有し、各枝部2a〜2cが下部電極1を跨ぎ、その間にそれぞれ絶縁膜3が介在している。
【0016】基板10上には、下部電極1に近接して、その長手方向に平行にコントロール線5が形成されており、このコントロール線5には、後述する制御信号が流される。
【0017】下部電極1と上部電極2、およびコントロール線5は、この例においていずれもNb超伝導薄膜であり、絶縁膜3はその酸化物、例えばNb2O5 である。下部電極1、絶縁膜3および上部電極2の全ての端面部は、基板10の法線方向に対して所定角度で傾斜した斜面によって形成されており、このうち、図示のように下部電極1の長手方向に沿った一端面を斜面E1 、上部電極2の枝部2aの長手方向に沿った一端面をE2 と称する。絶縁膜3の膜厚は、下部電極1の平坦な上面上で400Å、長手方向に沿った斜面E1 上およびこれに対向する斜面上でそれそれ100Å程度である。
【0018】そして、図1(A)に示すように、上部電極2の各枝部2a〜2cと下部電極1との間に介在する各絶縁膜3には、上部電極2の各枝部2a〜2cが下部電極1を跨いでいる部分における四隅部近傍に対応する位置に、従って合計12箇所に、以下に示すように、それぞれ酸素低濃度領域からなる弱結合ブリッジ4が形成されている。
【0019】図2は、図1(B)にA−Aで示した切断面に沿って切断した、斜面E1 と斜面E2 との交差部の近傍の断面拡大図である。斜面E1 上の絶縁膜3には、斜面E2 に沿って露出する面Pから僅かに内側に入った部分に、酸素の低濃度領域4が形成されており、この酸素低濃度領域4が下部電極1と上部電極2間を接合する弱結合ブリッジ4を形成している。すなわち、絶縁膜3中の酸素低濃度領域4は、絶縁膜3がNbの酸化物である関係上、絶縁が壊れてその組成はNbが支配的となり、下部電極1と上部電極2とが微小なNb超伝導体によって接合されることになる。なお、Sは後述する製造工程により生じる段差であり、この段差Sは存在していても存在していなくてもよい。
【0020】以上のような酸素の低濃度領域4、すなわち弱結合ブリッジ4は、上部電極2の枝部2aと下部電極1との間の絶縁膜3に関しては、上述した下部電極1の斜面E1 と上部電極2の枝部2aの斜面E2 との交差部の近傍のほか、枝部2aにおいて斜面E2 と対向する側の斜面と下部電極1の斜面E1 との交差部の近傍、下部電極1において斜面E1 と対向する側の斜面と枝部2aの斜面E2 との交差部の近傍、および、下部電極1において斜面E1 と対向する側の斜面と、枝部2aにおいて斜面E2 と対向する側の斜面との交差部の近傍にも形成されており、枝部2aと下部電極1とは合計4箇所の弱結合ブリッジ4によって接合されている。
【0021】また、他の枝部2bおよび2cと下部電極1との間の絶縁膜3についても全く同様であり、各枝部2b,2cも、枝部2aにおける弱結合ブリッジ4と同じ位置関係のもとにそれぞれ4箇所ずつ形成された弱結合ブリッジ4によって、下部電極1と接合されている。
【0022】以上の合計12箇所の弱結合ブリッジ4は、下部電極1に近接してこれと平行に基板10上に形成されたコントロール線5に近接することになり、各弱結合ブリッジ4に電流が流れることによって発生する磁界と、コントロール線5に電流が流れることによって発生する磁界とは相互に結合する。
【0023】このような本発明実施例において、各弱結合ブリッジ4に電流が流れている状態で、コントロール線5に制御電流を流すと、その制御電流が作る磁界によって各弱結合ブリッジ4に流れる電流が変調され、この制御電流をベース電流に見立てた場合、下部電極1と上部電極2間の電圧Vと、各弱結合ブリッジ4を流れる合計電流Iとの関係は、通常のトランジスタにおけるコレクタ電圧とコレクタ電流との関係に類似したものとなり、いわゆる超伝導磁束フロートランジスタとなる。しかも、各弱結合ブリッジ4の長さは、以下の製造方法の例から明らかなように、コヒーレンス長よりも短くすることが可能であり、従ってこの本発明実施例の超伝導磁束フロートランジスタは、理想的な弱結合ブリッジを多数個有する高性能の超伝導磁束フロートランジスタとなる。
【0024】さて、次に以上の構造の超伝導トランジスタの製造方法について述べる。まず、基板10上にNb超伝導薄膜を成膜し、表面を400Å程度酸化した後、フォトリソグラフィ技術等を用いて下部電極1をパターニングする。このとき同時に、コントロール線5をパターニングすることが望ましい。次に、その表面を更に100Å程度酸化させ、下部電極1の表面全面をNb2O5 等のNb酸化物膜からなる絶縁膜で覆う。このとき、その絶縁膜の厚さは下部電極1の上面平坦部で400Å、斜面E1 を含む各斜面部分で100Å程度となる。その後、その上から一様にNb超伝導薄膜を成膜した後、枝部2a〜2cを有する上部電極2のパターンが残るようにその超伝導薄膜および下部電極1とコントロール線5上の不要な絶縁膜をエッチングにより除去する。これにより、下部電極1の上に絶縁膜3を介して各枝部2a〜2cが部分的に積層された図1に示した形状の構造が得られる。また、この最終のエッチング工程により、図2に示した段差Sが生じる。
【0025】次に、この状態で、図3に示すように、斜面E1 上の斜面E2 の部分に、例えばNbイオン等のイオンを、20〜40keV程度のエネルギで基板10の法線方向から注入する。これにより、斜面E2 の表面から50〜200Å程度入ったところ(イオン種および注入エネルギに依存する)に、表面に沿ったイオン注入層6が形成される。このとき、イオン注入層6と絶縁膜3とが重なった領域4では、注入イオンにより酸素イオンが反跳し、その反跳した酸素イオンはその上下のNb層である下部電極1および上部電極2に捕獲される。これにより、この領域4は酸素濃度の低下により絶縁が破壊され、その組成はNbが支配的となり、弱結合ブリッジ4が形成される。
【0026】以上のイオン注入工程を、前記した合計12箇所に施すことにより、合計12箇所の弱結合ブリッジ4が得られる。ここで、イオン注入層6と重ならせるべき絶縁膜3の厚さは本質的に重要であり、薄すぎると(50Å程度以下)トンネル電流が流れてトンネル形の接合となってしまい、厚すぎると(例えば400Å程度)有効な弱結合が形成されないことが確かめられている。そして、50Å以上で100Å以下の絶縁膜3は、再現性よく得られることも確かめられている。
【0027】また、注入すべきイオンは、Nbのほか、Au、Cu、Siイオンであってもよく、これらのイオン種とその単位面積当たりの注入量と、得られた弱結合ブリッジ(1個)の臨界電流値の関係を図4に示す。なお、これらのイオンの注入エネルギは、1価イオンについては20keV、2価イオンについては40keVである。
【0028】この図4から明らかなように、臨界電流値とイオン注入量はほぼ直線的な関係を示す、制御性および再現性に優れていることが確かめられた。また、注入するイオン種によりその傾きは若干異なることも確かめられている。
【0029】ところで、上述の弱結合ブリッジ4の形成メカニズムは、現時点において推測に止まるが、本発明実施例方法により得られる弱結合ブリッジが電流−電圧特性にヒステリシスを持たない弱結合ブリッジであることが確かめられたことと、注入するイオンはNbのほかにAu、Cu、Siであってもよいこと、および絶縁膜3の厚さがある程度以上に厚い部分にイオン注入を施しても弱結合ブリッジが形成されないこと等の根拠により、上述の推測は確からしいと言える。すなわち、絶縁膜3の厚さが適当である場合には任意のイオン注入によって確実に弱結合ブリッジが形成され、絶縁膜3の膜厚が厚すぎたときにどのようなイオンを注入しても有効な弱結合ブリッジが形成されないのは、イオン注入により酸素イオンが反跳し、その反跳した酸素イオンが、絶縁膜3の膜厚が適度であれば上下のNb層にまで至ってそこに捕獲され、膜厚が厚すぎると反跳した酸素イオンが上下のNb層にまで至らずに絶縁膜3内に止まるためであると考えられる。
【0030】このような弱結合ブリッジの形成メカニズムからすると、絶縁膜3に向けて注入するイオンは、実際に確認された前記したようなイオンのほか、酸素あるいは後述する窒素を反跳させることのできるイオンならば何でもよく、更にはイオンに限らず高速中性原子を注入してもよいことになる。
【0031】また、同じような理由により、絶縁膜3としては、Nb2O5 等の金属超伝導体の酸化物のほか、下部および上部電極1および2を形成する超伝導体に対して近接効果を発揮する物質、例えばAl等の金属やSi等の半導体、の酸化物または窒化物であってもよく、これらの材質のうちの任意の材質からなる絶縁膜3に対して、酸化物の場合には酸素を、窒化物の場合は窒素を、それぞれ反跳させることのできる任意のイオンまたは中性原子を注入することにより、酸素または窒素の低濃度領域を形成して弱結合ブリッジとすることができる。
【0032】更に、先に述べた実施例では、イオン注入層6と絶縁膜3とを交差させるため、基板10の法線に対して傾斜している部分の絶縁膜3に対して、基板10の法線方向からイオンを注入した例を示したが、本発明はこれに限らず、例えば図5に部分的に模式図を示すように、基板10の表面に平行に形成された絶縁膜3に対して、例えば基板10を傾ける等の方法によって、基板10の法線方向に対して斜め方向からイオンを注入することによって、絶縁膜3とイオン注入層6とを交差させてもよい。
【0033】一方、素子の全体構造については、下部および上部電極1および2、並びにコントロール線5をNb超伝導薄膜で形成する場合において、Nb超伝導薄膜は絶縁膜を挟んで容易に多層化できることを利用して、図6に平面図で示すように、コントロール線5を基板10上に形成せず、上部ないしは下部電極2ないしは1の上に積層し、あるいは、この図5とは逆にコントロール線5を下部電極1の下に積層することも可能である。この場合、コントロール線5と弱結合ブリッジ4との磁気的結合度をより向上できるばかりでなく、素子の集積度も高くできるという利点がある。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明方法によれば、2つの超伝導薄膜を、金属超伝導体の酸化物または窒化物、あるいは上記の超伝導薄膜に対して近接効果を発揮する物質の酸化物または窒化物からなる絶縁膜を介して積層し、その絶縁膜に対して、複数箇所にわたって局所的に粒子を注入することにより、絶縁膜中に酸素または窒素の低濃度領域を複数箇所形成して、これらの各領域により2つの超伝導薄膜間の弱結合ブリッジを形成するので、弱結合ブリッジのブリッジ長は、比較的容易に制御可能な絶縁膜の膜厚とほぼ等しくなり、良好な生産性のもとに均一な弱結合ブリッジを再現性良く得ることができ、しかも、平面上での微細加工に頼るブリッジに比して、著しく短いブリッジ長を実現でき、トンネル効果が生じず、しかも100Å以下のブリッジ長が得られる。
【0035】このような製造方法を採用可能とした構造を有する本発明の超伝導トランジスタは、従って、それぞれが100Å以下程度のブリッジ長を持つ複数の弱結合ブリッジにより2つの超伝導薄膜を接合することが可能となり、このブリッジ長は、例えば超伝導薄膜としてニオブ薄膜を用いた場合、そのコヒーレンス長(0Kで約400Å)に比較して十分にに短く、理想的なブリッジを持つ素子となり、高温超伝導薄膜を用いた従来の報告に基づく素子に比して、電気的並びに化学的に安定で、しかも高性能の素子となる。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013