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発明の名称 電子素子およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平8−195136
公開日 平成8年(1996)7月30日
出願番号 特願平7−183108
出願日 平成7年(1995)7月19日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
発明者 小関 秀昭 / 六本木 康伸 / 小野 泰一 / 蛸島 武広 / 柿原 良亘 / 竹谷 元伸 / 佐藤 春悦
要約 目的
樹脂バインダーに炭素材料が混入された導電性材料において、従来のものよりも低い抵抗値が得られ、また機械的強度の高いものとする。

構成
フェノール系樹脂などの炭素系高分子材料と、熱吸収性導電部材としてのカーボンブラックなどの炭素材料2と溶媒が混合されたものを焼成して硬化させる。その後にレーザ光を照射する。レーザ光は炭素材料2に吸収されて炭素材料2が加熱される。この熱は炭素材料2の周囲の樹脂に伝わり、炭素材料2の周囲のαの領域で樹脂が炭化させられ炭化層が形成される。したがって炭素材料間の導電パスが構成されやすくなり、導電性が高められ、低抵抗のものとなる。また樹脂に炭素材料が混入され樹脂の一部が加熱されて炭化されたものとなる導電性材料は硬度が高く摩耗しにくい機械的強度の高いものとなる。
特許請求の範囲
【請求項1】 微小な熱吸収性導電部材が混入された炭素系高分子材料層が形成され、少なくとも熱吸収性導電部材の周囲に、炭素系高分子材料が炭化された炭化層が形成されていることを特徴とする電子素子。
【請求項2】 熱吸収性導電部材は炭素材料である請求項1記載の電子素子。
【請求項3】 炭化層は対向する導電体の表面に形成されており、対向する前記炭化層間で電気接点が構成されている請求項1または2記載の電子素子。
【請求項4】 導電体は平坦な形状を有しており、この平坦部分に炭化層が形成されている請求項3記載の電子素子。
【請求項5】 請求項1記載の電子素子を製造する方法であって、微小な熱吸収性導電部材が混入された炭素系高分子材料層を形成し、この炭素系高分子材料層の任意の位置にレーザ光を照射し、前記熱吸収性導電部材をレーザ光のエネルギーにより加熱し、この熱により熱吸収性導電部材の周囲の炭素系高分子材料を炭化させることを特徴とする電子素子の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リーフスイッチその他のスイッチやリレーなどの接点、あるいは平面パターンの導電路などとして用いられる電子素子に係り、特に、電気抵抗値が小さく且つ強度の高い接点を構成できる電子素子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】薄膜スイッチなどのスイッチの接点や可変抵抗器の抵抗体層などの電子素子では、高分子材料層に炭素材料が混入された導電性材料が使用されている。炭素材料を含んだ導電性材料は、金や銀などの貴金属粉を導電性フィラーとして使用したもののような酸化や硫化の問題がなく、また貴金属粉末を使用したものに比べて安価に製造できる。
【0003】従来、上記導電性材料に混入される炭素材料としては、カーボンブラック(微粉炭素)や、結晶層が積層されたグラファイトの微小片などが一般的に使用されている。また、炭素材料を混入しない導電性材料として、炭素系高分子材料にレーザ光を照射して高分子材料を炭化(増炭)させ、抵抗体などとして使用するものがある。この高分子を炭化させる技術は、例えば特開昭55−148401号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のカーボンブラックやグラファイトの微小片などの炭素材料を高分子材料層に混入した導電性材料は、高分子内で炭素材料間に導電パスが形成されることにより導電体として機能するものである。この導電性材料は、高分子内での炭素材料の体積分率を高めることにより、電気抵抗値を下げることが可能であるが、高分子内での炭素材料の混入量を増加させていくと、逆に電気的抵抗値が高くなっていく。これは、炭素材料が増えることにより高分子のバインダーとしての機能が低下し、炭素材料間を引き付ける高分子の内部応力が低下して、導電パスが構成されにくくなるからであると予想される。
【0005】このように高分子材料層に炭素材料が混入された導電性材料では、電気抵抗値を低下させることに限界があり、例えばバインダーとしてフェノール系樹脂を使用し、これに炭素材料としてカーボンブラックを混入した導電性材料では、体積抵抗値を1Ω・cm程度まで低下させるのが限界である。
【0006】また、炭素系高分子材料をレーザ光により炭化(増炭)する導電性材料では、レーザ光の波長が炭素系高分子材料の吸収領域内のものであることが必要であり、炭素系高分子材料の吸収領域以外の波長のレーザ光を照射しても高分子に炭化が生じない。また、炭素系高分子材料が吸収する領域のレーザ光を照射した場合であっても、炭化の度合は小さく、電気抵抗値を低下させることに限界があり、また高出力のレーザ光を照射しまたはレーザ光の照射時間を長くしなければならないので、製造コストが高くなるという問題がある。一方、このように炭化の度合を高くしようとすると、高分子材料が脆くなり機械的強度が著しく低下することになる。したがって、この高分子材料を炭化させた導電材料を、スイッチの接点を覆う材料または接点が摺動する可変抵抗器の抵抗体層などとして使用することは不可能に近い。
【0007】本発明は上記従来の課題を解決するものであり、例えばスイッチなどの接点のように機械的応力が作用する電子素子において、導電性の炭素系高分子材料層の抵抗値を低く維持できしかも従来のものに比べて電気的特性や寿命の点で優れた電子素子およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の電子素子は、微小な熱吸収性導電部材が混入された炭素系高分子材料層が形成され、少なくとも熱吸収性導電部材の周囲に、炭素系高分子材料が炭化された炭化層が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】上記熱吸収性導電部材は、導電性を有するものが好ましく例えば炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、カーボンブラック(微粉炭素)、炭素の六角網目平面が積層されたグラファイトの微小片、または円筒状に配列する炭素の六角網目平面が円筒の半径方向へ積層されたグラファイト微細繊維、あるいはこれらを組み合わせたものなどが使用される。さらに熱吸収部材は炭素に限定されるものではなく、それ自体が導電性を有し且つレーザ光のエネルギーを吸収しやすいものであればどのようなものでもよく、例えば金、銀、スズ、アルミニウムなどの導電性を有する微小な材料(粒状、小片状など)の表面に、熱吸収性を有する染料や顔料などの各種着色物が付着しているもの、あるいはレーザ光の波長により活性化し発熱しやすい微小材料などが使用される。
【0010】本発明の電子素子をスイッチに適用する場合、少なくとも二つの相対向する導電体の表面に、微小な熱収縮性導電部材が混入された炭素系高分子材料層を形成し、この表面にレーザ光を照射して炭化層を形成し、この炭化層を含む領域間で電気接点が構成されているものとすることが可能である。
【0011】特にこの電気接点は、導電体に平坦部を形成し、この平坦部上に前記炭化層を設けた構造とすることが好ましい。本発明での炭素系高分子材料は、例えばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、またはクレゾール系樹脂などである。
【0012】また本発明の電子素子の製造方法は、微小な熱収縮性導電部材が混入された炭素系高分子材料層を形成し、この炭素系高分子材料層の任意の位置にレーザ光を照射して前記熱収縮性導電部材を加熱し、この熱により熱収縮性導電部材の周囲の炭素系高分子材料を炭化させることを特徴とするものである。
【0013】
【作用】本発明では、硬化した炭素系高分子材料層に、微小な炭素材料などの熱吸収性導電部材(レーザ光のエネルギーを吸収しやすい部材)が混入されているものに対してレーザ光が照射される。熱吸収性導電部材として炭素材料が使用された場合、炭素材料は、全ての波長領域のレーザ光を吸収して活性化して加熱される。この熱により、炭素材料の周囲の炭素系高分子材料が加熱されて炭化が促進される。炭化が促進されて形成された炭化層が炭素材料間の導電パスとなって電気抵抗値を低下させることが可能になる。すなわち、レーザ光照射前は、炭素系高分子材料層内の導電パスが熱吸収性導電部材間の直接接触等によるものであるが、レーザ光照射後は、熱吸収性導電部材の周囲の炭素系高分子材料が炭化されてなる炭化層により形成された導電パスが前記導電パスに新たに加わること等により低抵抗化される。また炭素系高分子材料にレーザ光を照射したときに、高分子の架橋が促進されて高分子が炭素材料に与える応力が増大し、これによっても炭素材料間の導電パスを増大させる効果を期待できる。
【0014】このように本発明では、炭素系高分子材料の炭化を適度に促進することにより、炭素材料間の導電パスが構成されやすくなって、レーザ光を照射しないものに比べて電気抵抗値(体積抵抗値)を低下させることが可能になる。
【0015】また、炭素系高分子材料層内に炭素材料などの熱吸収性導電部材が混入・分散された構造であるため、機械的強度の低下がなく、むしろ適度なエネルギーのレーザ光を照射することにより、電気抵抗値を下げることが可能である。特に、炭素材料などの熱吸収性導電部材の周囲部分のみが炭化されたものでは、機械的な強度が高くなる。また炭素系高分子材料の広い領域が炭化されたものであっても、炭素系高分子材料内にて炭素材料が補強剤としての機能を発揮することになり、従来のように炭素系高分子材料のみを炭化させたものに比べて非常に高い機械的強度を有するものとなる。
【0016】また、上記の炭化促進されしかも機械的強度の高くなった導電性材料が金属など導電体の表面に形成された電子素子を、リーフスイッチなどの接点として使用した場合には、接点寿命が高くなり、接離動作を繰返したときに、初期の抵抗値の増大が少なくなる。すなわち、適度に炭化が促進されてなる炭化層で構成された電気接点は、接離動作が繰り返されても、単に高分子材料を混入分散してなる導電性材料にみられるような、炭素材料の離脱・移動などによる抵抗値増大などの接点障害を生じることがなく、信頼性がより高いものとなる。また炭素材料などの熱吸収性導電部材が混入された導電性材料にレーザ光を照射するときに、必要最小限のエネルギーのレーザ光を炭素系高分子材料層の表面に効率よく照射することが必要である。そこで、例えば接点を構成する一対の導電体あるいは少なくとも一方の導電体を平坦な形状にし、この平坦面に形成された炭素系高分子材料層にレーザ光を照射し、炭素材料などの熱吸収性導電部材の周囲の炭素系高分子材料を炭化させるようにすると、レーザ光の照射部分が平面であるために、炭素系高分子材料内の炭素材料などに効果的にレーザ光のエネルギーを与えることができ、また、炭素系高分子材料をむらなく均一に炭化させることができるので、機械的・電気的特性等が均一な炭化層を形成することができる。したがってレーザ光の過剰照射を防止でき炭化層を含む領域が脆くなるのを防止できる。
【0017】また、電気接点を構成する場合に、平坦面状の炭化を含む領域層が接触する構成とすると、電気接点どうしの真の接触面積が大きくなり接点間の実質的な接触圧が小さくなるため、電気接点の接触時に炭素系高分子材料層に作用する衝撃応力を分散でき、接離衝撃による電気接点となる炭化層を含む領域の劣化を防止できる。また、この電気接点間の接触面積も広くなり、これによっても電気接点の接触抵抗を低減できる。
【0018】
【実施例】図1は本発明の電子素子の一例を示す断面図、図2はこの電子素子がリーフスイッチの電気接点を構成する実施例を示す斜視図、図3はリーフスイッチの電気接点部分を拡大して示すものであり、図2のIII−III線の拡大断面図である。図1に示すように、本発明の電子素子を構成する導電性材料Cは、硬化された炭素系高分子材料層となる樹脂バインダー1内に、微小な熱吸収性導電部材の一例である炭素材料2が分散して混入されている。図1に示す炭素材料2は、粒径が1μm程度のカーボンブラック(微粉炭素)である。樹脂バインダー1(炭素系高分子材料層)は例えばフェノール系樹脂である。またはエポキシ系樹脂やクレゾール系樹脂などであってもよい。炭素材料2の周囲部分(αで示す領域)にて、前記樹脂バインダー1が炭化されまたは増炭された炭化層が形成されている。炭素材料の間は炭化または増炭された領域α、すなわち炭化層が存在しているために、炭素材料2どうしの導電パスが形成されやすくなり、導電性が高くなり電気抵抗が低下する。
【0019】このように、導電性材料Cとして、樹脂バインダー1内に適度な量の炭素材料2が分散されて混入されたものを用いたので、炭素系高分子材料層のみからなるものと比較して炭化の度合いを低く抑えることができ、機械的強度が低下せず、スイッチの接点や可変抵抗器の抵抗体層などとして使用されたときに、接触強度が高く、摩耗などの少ないものとなる。特に図1に示すように、レーザ光の照射エネルギーおよび照射時間を適当に設定して炭化すると、炭化または増炭された炭化層が炭素材料2の周囲のα領域にのみ形成され、樹脂バインダー1に炭化または増炭されていない領域が残されているため、炭化により炭素系高分子材料層が脆くなることがなく、機械的強度の低下は生じない。
【0020】また炭素材料2としては、カーボンブラックの他、炭素の六角網目平面が積層されたグラファイトの微小片、または円筒状に配列する炭素の六角網目平面が円筒の半径方向へ積層されたグラファイト微細繊維などが使用できる。また微小な熱吸収性導電部材は、炭素材料2に限られず、例えば金、銀、スズ、アルミニウムなどの導電性の微小な材料(粒状、小片状など)の表面に、熱吸収性を有する染料や顔料などの各種着色物が付着しているもの、あるいはレーザ光の波長により活性化し発熱しやすい微小材料などが使用される。この導電性材料Cは、例えば図2に示すリーフスイッチ3の接点基体4,5の先端部4a,5aを被覆するものとして使用される。
【0021】図1に示す導電性材料Cの製造方法は、フェノール系高分子などの樹脂バインダーと、カーボンブラックなどの炭素材料2と、メチルエチルケトンまたはその代替品などの溶媒とを混練しペースト状とする。このペースト状のものを、リーフスイッチ3の接点基体4,5の先端部4a,5aにディップ・塗布し、その後に焼成して樹脂バインダー1を硬化させる。なお、接点基体4,5はリン青銅などの弾性(ばね性)を有する導電性金属材料の表面にすずメッキが施されたものである。
【0022】次に、硬化した炭素系高分子材料層であるバインダー1にレーザ光を照射するが、リーフスイッチ3の接点の場合には、図3にて領域βで示すように、接点基体4,5の先端部4a,5aの対面部、すなわち実際に接触する電気接点として機能するβ領域にレーザ光を照射する。レーザ光は、樹脂バインダー1が吸収できる波長領域のものに限られず、どの波長のレーザ光であっても炭素材料2に吸収させることができる。炭素材料2がレーザ光により加熱されると、その周囲のα領域の高分子が加熱されて炭化または増炭される。
【0023】次に、図2に示すリーフスイッチの電気接点に導電性材料を被覆形成した実施例および比較例での電気抵抗値の変化と強度変化について説明する。
(比較例)樹脂バインダーとしてのフェノール系高分子と、炭素材料としてカーボンブラックと、溶媒としてメチルエチルケトンまたはその代替品とを混合した導電ペーストを製造した。カーボンブラックの体積分率は40体積%とした。図2に示すリーフスイッチ3の接点基体4,5の先端4a,5aに上記導電ペーストをディップし、180℃で40分間焼成したものを比較例とした。
【0024】(実施例A)上記比較例と同じ工程で接点基体4,5の先端部4a,5aに導電性材料Cの層を形成し樹脂バインダーを硬化させたものにおいて、図3にて領域βで示されている接触する電気接点として機能する部分にレーザ光を照射した。レーザ光の波長は1064nm、導電性材料Cの表面に照射するレーザ光のスポット径を2.0mmとした。レーザ照射装置は、1秒間に10パルス分のレーザ光を発するものであり、照射したレーザ光はそのうちの1パルス分とした。レーザ光の1パルスのパルス長は4ms、1パルス分のレーザ光のエネルギー(発光強度)を0.01ジュールとし、これを実施例Aとした。
【0025】(実施例B)実施例Aと同様に領域βに1パルス分のレーザ光を照射した。1パルスのパルス長は4msであるが、1パルス分のレーザ光のエネルギーを0.02ジュールとし、これを実施例Bとした。
【0026】(実施例C)実施例A,Bと同様に領域βに1パルス分のレーザ光を照射した。1パルスのパルス長は4msであるが、1パルス分のレーザ光のエネルギーを0.03ジュールとし、これを実施例Cとした。
【0027】上記比較例および実施例A,B,Cにより導電性材料Cの層が形成されたリーフスイッチをそれぞれ8個ずつ製造した。それぞれ8個の試料について、最初に接点の4,5の先端4a,5aを接触させたときの端子部4bと5b間の抵抗値を初期抵抗値として測定した。この測定結果を示したのが図5である。図5では、横軸が各実施例にて照射したレーザ光のエネルギー(ジュール)を示し、縦軸が測定された初期抵抗値を示している。
【0028】図5では、比較例および実施例A,B,Cのそれぞれの8個の試料の初期抵抗値の平均値を線で結んだものとして示している。この図から、図3の領域βにレーザ光を照射することにより、導電性材料Cの初期抵抗値が低下し、また照射したレーザ光のエネルギーが高くなるにつれて初期抵抗値が低下することが解る。
【0029】図1に示すように、樹脂バインダー1内に炭素材料2が混入されたものに対してレーザ光が照射されると、このレーザ光が炭素材料2に吸収されて、炭素材料が発熱し、その熱により炭素材料2の周囲のα領域にて炭素系高分子材料が炭化または増炭されて炭化層が形成され、その結果、炭素材料間に導電パスが形成されやすくなって、抵抗値が低下するものとなる。また、フェノール系高分子などの熱硬化性高分子が使用されている場合、炭素材料2の発熱によりα領域が加熱されると、加熱された部分の炭素系高分子材料の架橋が促進され、この炭素系高分子材料が炭素材料間を引き付ける応力が増大し、その結果導電性材料Cの導電パスの増大により導電性が高められることも予測できる。その結果、図5に示すように、レーザ光を照射することにより、導電性材料Cの体積抵抗値が小さくなる。したがって、レーザ光を照射することにより、低抵抗の電気接点を有するスイッチを構成できる。
【0030】次に、図6は前記比較例と実施例Bのそれぞれの試料の接点の寿命を調べた結果を示している。前記比較例と実施例Bのそれぞれのリーフスイッチを4個ずつ試料とし、それぞれの試料において、接点基体4の先端部4aに力Fを繰返し与えて、接点基体4と5の先端部4aと5aの接触を繰返した。先端部4aと5aの接触圧力は4〜15g/cm2程度とした。
【0031】図6では、横軸に接点の接触の繰り返し回数を示し、縦軸はリーフスイッチ3の端子部4bと5b間の抵抗値(Ω)を示している。また図6では比較例の電気接点の接触回数に対する抵抗値の変化を実線で示し、実施例Bの抵抗値の変化を破線で示している。図6に示すように、比較例は樹脂バインダーにカーボンブラックが混入されたものであるが、この導電性材料では、耐摩耗性などの機械的強度があまり高いものではなく、よって電気接点の接触の繰返し回数が多くなると、導電性材料の摩耗により、端子部4bと5b間の抵抗値が徐々に増大していくことが解る。また電気接点の接触回数が50000回に達した比較例を観察したところ、接点基体4,5の先端4a,5aを被覆する導電性材料がほとんど除去され接点基体4,5の地肌が露出したものとなっていることが確認できた。
【0032】これに対し、実施例Bのリーフスイッチでは、電気接点の接触回数を繰返しても、端子部4bと5bとの間の抵抗値の増大が比較例と比べて大巾に小さくなっていることが確認できた。また電気接点の接触回数が50000回に達した実施例Bの接点基体4,5の先端部4a,5aを観察したところ、接点基体4,5の先端部を被覆している導電性材料Cの層の表面の摩耗や削れは、比較例ほど多くは観察されなかった。
【0033】以上のように、導電性材料Cに照射されるレーザ光の強度が0.02ジュール程度の適度なものであると、導電性材料Cの体積抵抗値が低下するだけでなく、かえって機械的強度が高くなり、接触摩耗や摺動摩耗が生じにくいものとなる。その理由は、前述のように樹脂バインダーが熱硬化性高分子の場合に、炭素材料が加熱されて生じた熱により炭素系高分子材料が加熱され炭素系高分子材料の架橋が促進されてこの炭素系高分子材料の硬度および耐摩耗性が高められるからであると予測される。また、炭素系高分子材料が加熱され架橋が促進されることにより、補強材としての機能を発揮する炭素材料間の吸引応力が高まり、炭素材料による補強機能が向上されて、導電材料Cの炭化層を含む領域を中心としてその硬度および耐摩耗性が高くなるものと予測できる。この補強材との機能を充分に発揮させるために、熱収縮性導電部材として特に微細なグラファイト繊維等が好適である。
【0034】ここで、特開昭55−148401号公報などに開示されているような、炭素系高分子材料そのものをレーザ光により炭化または増炭させる従来例と、本発明の上記実施例とを比較してみる。前記従来例では、炭素系高分子材料を炭化または増炭させることにより導電性をもたせるものとしているため炭素系高分子材料の炭化または増炭をかなり促進しなければならない。高分子全体がかなりの炭化状態となってしまうと、高分子の架橋が破壊されまたは弱まって材料そのものが脆くなり、機械的強度が低下する。一方、レーザ光の照射強度が大きすぎたり照射時間が長すぎて炭化が進みすぎると、レーザ光照射後に膜が基板から剥離するなどして膜本来の原形をとどめないものもあるので、レーザ光の照射条件を適正に設定して炭化させることが必要となる。
【0035】ただし、本発明の実施例では、導電パスはあくまでも混入された炭素材料により発揮されるため、高分子材料の炭化または増炭を前記従来例ほどに促進させなくても、体積抵抗値を低下させることにおいて充分に効果を発揮できる。よって炭素系高分子材料は脆くなる程度にまで炭化させず、むしろ図6に示すように材料そのものの硬度と耐摩耗性が高められた時点まで炭化または増炭するように留めているため、かえって比較例のような未処理のものに比べて機械的強度を高くできることになる。
【0036】また、本発明では炭素系高分子材料にレーザ光を吸収させて加熱するのではなく、炭素材料を加熱し、その熱により炭素材料の周囲の炭素系高分子材料を加熱して炭化または増炭させて炭化層を形成しているため、炭素系高分子材料の発熱の程度が適度であり、その結果、材料が脆くならず、むしろ機械的強度が高くなった状態に留められることになる。
【0037】図7は前記導電性材料Cを接触する電気接点として設けたリーフスイッチの他の実施例を示している。図7に示す実施例では、接点基体4と5が、図2に示す実施例と同様に、リン青銅の線材の表面にすずメッキが施されたものである。ただし、接点基体4と5の先端部4cと5cは、加圧成形により共に平坦となっており、接点基体4と5は平坦部どうしが対向するものとなっている。この平坦面の部分に、微小な熱吸収性導電部材である炭素材料が混入された樹脂バインダーが硬化されて導電性材料Cが形成され、この導電性材料Cにレーザ光が照射され、炭素材料の周囲部分が炭化されまたは炭化が促進され炭化層が形成されている。
【0038】図7に示すように、接点基体4と5の先端部4cと5cが平坦面に形成され、この平坦面に導電性材料Cが形成されているものでは、レーザ光を平面に照射できるため、レーザ光のエネルギーを炭素系高分子材料層である樹脂バインダー内の炭素材料に効果的に吸収させることができる。また、接点基体4と5は、平坦面どうしが接離動作するため、接点基体4と5の接触面積を広く確保でき、導電性材料Cに与えられる衝撃応力を面積分で分散させることができる。したがって、図2に示す丸棒どうしが接離する接点構成に比べ、導電性材料の劣化を抑えることができる。さらに、接点基体4と5の接触面積が広くなるために、接触抵抗を低下させることが可能である。
【0039】樹脂バインダーに熱吸収性導電部材として炭素材料が混入された導電性材料Cにレーザ光を照射した場合に、図5と図6に示したように、レーザ光を照射していないものに比べて初期抵抗値を下げることができ、また接点寿命も延ばすことができる。ただし、レーザ光の照射量をさらに多くした場合には、樹脂バインダー1の機械的強度が低下し、導電性材料Cの強度は低下することになる。しかし、図7に示すように接点基体4と5が平坦面どうしにて当たるものでは、図5と図6に示した接点基体4が丸棒の場合と比べて衝撃応力を分散できるため、レーザ光の照射量を多くして導電性材料の機械的強度が低下しても、接点寿命の低下をさらに抑えることが可能である。
【0040】図8ないし図11は、図2に示すスイッチ接点と、図7に示すスイッチ接点において、導電性材料Cに照射されるレーザ光の量を多くした場合での、初期抵抗値および接点寿命を対比したものである。図8と図9に示すデータを得た電気接点は、図2に示すように接点基体4と5の先端部4aと4bに前記比較例で示したのと同じ導電性材料Cの層を形成し、βで示す領域にレーザ光を照射したものである。線図中での丸印(No.1)は、レーザ光の照射時間1msを1秒間に40ショット与えたもの、三角印(No.2)は、照射時間1msを1秒間に24ショット与えたもの、星印(No.3)は照射時間2msを1秒間に24ショット与えたもの、菱形印(No.4)は照射時間20msを1ショット与えたものである。測定試料はそれぞれにおいて複数個である。
【0041】図8は横軸が各ショットでのレーザ光のエネルギー(W)を示し縦軸にスイッチ全体の初期抵抗値を示している。図9は、図8に示した各試料のスイッチの接点を5万回接離させた後での、スイッチ全体の抵抗値(縦軸)を示している。図8と図9の測定に使用した試料のスイッチは同じ物であり、図8と図9に横軸に示したレーザ光のエネルギーの同じ値に位置する同じ印の測定値は、同じ試料に関するものである。
【0042】まず図8において、レーザ光の照射時間が長いのは、星印(No.3)、丸印(No.1)、三角印(No.2)、菱形(N.4)の順であるが、初期抵抗値は、必ずしもレーザ光の照射量が多いほうが低くなるものではなく、レーザ照射時間の短いNO.4が最も初期抵抗値が低く、レーザ照射量の多いNo.3は逆に初期抵抗値が高くなっている。また、図9によれば、いずれの試料においても、5万回の接離を繰返すと、抵抗値が全体的に高くなることが解る。さらにこれらの接点表面状態を観察したところ、炭化層の一部が剥離してなくなっているものがあることが解った。
【0043】一方、図10と図11に示すデータは、図7に示すように、接点基体4と5の先端部4cと5cを平坦面にしたスイッチに関するものである。平坦面な先端部4cと5cには前記比較例と同じ導電性材料Cを形成し、先端部4cと5cが対向する部分にて対向面にレーザ光を照射したものである。レーザの照射時間およびショット数は、丸印および三角印の双方において図8および図9でのNo.1およびNo.2と同じである。
【0044】図10は、横軸に各ショットでのレーザ光のエネルギー(W)を示し縦軸にスイッチ全体の初期抵抗値を示している。図11は、横軸に各ショットでのレーザ光のエネルギーを示し、縦軸に接点を5万回接離させた後の、スイッチ全体の抵抗値を示している。図10と図11では、図8と図9に示した丸棒の接点構成のものに比べ、初期抵抗値が全体として低く、また5万回の接離の後の抵抗値の上昇が少ないことが解る。以上から接点を平坦面どうしの接触構造とすると、初期抵抗値を低くできるとともに接点寿命が大巾に延びていることが解る。
【0045】次に図4は本発明の他の実施例を示している。図4では、基板7の表面に導電性材料Cの層8が薄膜状に形成されている。この層8は、炭素系高分子材料層を形成する樹脂バインダーと、微小な熱吸収性導電部材の一例としてのカーボンブラックなどの炭素材料と、溶媒とを混合したものを、基板7の表面に印刷またはパターン形成し、焼成して硬化させたものである。この層8に対しレーザ光を照射するが、このときのレーザ光の照射エネルギーを(イ)(ロ)(ハ)のそれぞれの領域で異ならせる。例えば領域(イ)にはレーザ光を照射せず、(ロ)の領域では0.01ジュールのレーザ光を均一に照射し、(ハ)の領域では0.02ジュールのレーザ光を均一に照射する。
【0046】その結果、(イ)の領域よりも(ロ)の領域の方が体積抵抗値が低く、(ハ)の領域ではさらに体積抵抗値が低くなる。すなわち、(ロ)と(ハ)の領域では図1に示すように、レーザ光で加熱された炭素材料の周囲の炭素系高分子材料が加熱されて炭化され炭化層が形成されたものとなるが、(ロ)と(ハ)の領域では、照射するレーザ光のエネルギーが異なるため、炭素材料の周囲部分の炭化または増炭の程度が相違するものとなる。その結果(イ)(ロ)(ハ)にて体積抵抗値が相違するものとなる。
【0047】図4に示すものを例えば可変抵抗値の抵抗体層として使用し、この抵抗体層8の表面を摺動接点が摺動する構造とすると、摺動接点の移動距離に対してリニアでない可変的な抵抗値変化を検出することが可能になる。また、レーザ光の照射により体積抵抗値を変える方法では、レーザ光の照射領域のパターンを自由に設定できる。よって、例えば図4にて(ニ)(ホ)(ヘ)で示すように抵抗体層の幅方向に異なる体積抵抗値を有する領域をストライプ状に形成することもできる。この場合、層8の表面を摺動する摺動接点と層8の端部との間で3種類の可変抵抗値を得ることが可能である。しかも、最初に印刷またはパターン形成する層8は、全体を同じ材料で構成できるため、製造はきわめて簡単である。
【0048】次に、上記各実施例では、レーザ光を専ら炭素材料2に吸収させている。炭素材料2は広い波長領域のレーザ光を吸収できる。よって樹脂バインダー1が吸収しない波長のレーザ光を使用して、炭素材料2を加熱し、その熱により炭素材料の周囲部分の炭素系高分子材料を加熱して炭化させるものとなっている。
【0049】しかも、この導電性は、炭素材料により主に発揮されるものとしたために、炭素系高分子材料の炭化をあまり促進させる必要がない。したがって、従来例のように炭素系高分子材料の炭化と増炭を促進させすぎてこの炭素系高分子材料が脆くなることがなく、機械的強度の高い導電性材料が得られる。また、仮に炭素系高分子材料の炭化と増炭をかなりの程度に促進させたとしても、この場合は炭素材料が補強材として機能するため、炭化された高分子のみから構成されたものに比べて機械的強度の高いものとなる。この補強材としては、グラファイトの微細繊維などが特に好適に用いられる。なお、樹脂バインダーは前記に列記したものの他、フッ素系高分子、またはアクリル系高分子などであってもよく、または熱可塑性高分子を使用してもよい。
【0050】
【発明の効果】以上のように本発明では、炭素系高分子材料層に炭素材料などの熱吸収性導電部材が混入された導電性材料において、少なくとも炭素材料などの周囲の炭素系高分子材料を炭化させまたは炭化を促進して炭化層を形成することにより電気抵抗値を低下させることができる。また適度な強度のレーザ光を照射し、炭素系高分子材料を適度に加熱することにより、導電性材料の機械的強度が低下せず、機械的強度が向上されるものとなる。
【0051】よって上記構成の電子素子をスイッチなどの電気接点として使用した場合に、接触抵抗が低く、また接点寿命の優れたものとなる。また接点の接触部分の少なくとも一方を平坦面とすると、さらに電気接点の接触抵抗を低下でき、また接点寿命の点で極めて優れたものとなる。
【0052】また製造方法としては、炭素系高分子材料層に熱吸収性導電部材が混入されたものに対しレーザ光を照射するだけで、前記各種電子素子を簡単に構成することができる。




 

 


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