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発明の名称 ナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルト及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平8−64236
公開日 平成8年(1996)3月8日
出願番号 特願平6−198576
出願日 平成6年(1994)8月23日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
発明者 奥野 晃康 / 堀川 豊 / 杉本 宏次
要約 目的
ナトリウム−硫黄電池の陽極室内に収容されたとき、陽極容器との間の接触抵抗を低減し、かつナトリウムイオンの移動を容易にして充電反応を促進し、電池抵抗低減と充電回復率の向上を図ることができるようにする。

構成
ポリアクリロニトリル繊維の耐炎化繊維によるフェルト7は200℃に加熱されて耐炎化処理される。このフェルト7に対してニードルパンチングが施され、フェルト7の繊維15がフェルト7の側面より突出して突出繊維が形成される。約2000℃での焼成により黒鉛化処理されたフェルト7が電池の陽極室6内に収容され、突出繊維が陽極容器1に接触して陽極容器1との間の接触抵抗が低減され、かつ充電反応が円滑に行われる。
特許請求の範囲
【請求項1】 筒状の陽極容器内にナトリウムイオンを選択的に透過させる有底筒状の固体電解質管を配置し、陽極容器と固体電解質管との間に形成される陽極室に陽極活物質としての硫黄を収容するとともに、固体電解質管内の陰極室に陰極活物質としてのナトリウムを収容したナトリウム−硫黄電池の前記陽極室に硫黄を含浸させるためのナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルトにおいて、前記フェルトは、その厚さ方向へ配向した繊維がフェルトの片側面より突出しているナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルト。
【請求項2】 筒状の陽極容器内にナトリウムイオンを選択的に透過させる有底筒状の固体電解質管を配置し、陽極容器と固体電解質管との間に形成される陽極室に陽極活物質としての硫黄を収容するとともに、固体電解質管内の陰極室に陰極活物質としてのナトリウムを収容したナトリウム−硫黄電池の前記陽極室に硫黄を含浸させるためのナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルトの製造方法において、前記フェルトは、その厚さ方向へ深くニードルパンチングが施され、フェルトのニードルの侵入面と反対の側面より繊維が突出されるナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルトの製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】 この発明は、二次電池として電力貯蔵などに利用されるナトリウム−硫黄電池用のカーボンフェルト及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】 近年、電力需要の増加に伴って、夜間電力の利用を図るために、活物質の利用率が高く、充放電反応の効率が良いナトリウム−硫黄電池が研究されている。このナトリウム−硫黄電池においては、陽極室内に陽極活物質としての硫黄が含浸されたフェルトが収容されている。このフェルトはカーボン繊維よりなり、湾曲形成されて陽極室内に複数個収容される。
【0003】そして、放電時にはナトリウムと硫黄がフェルトの繊維表面で反応して多硫化ナトリウムを生成し、充電時には多硫化ナトリウムがナトリウムと硫黄に戻る。前記フェルトは、一般に次のように成形される。すなわち、ポリアクリロニトリル繊維が200℃程度まで加熱されて耐炎化処理される。この耐炎化繊維はフェルト化され、ニードルパンチングが施される。その後、このフェルトは約2000℃で焼成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】 ところが、このような従来の製造方法により得られたカーボンフェルトをナトリウム−硫黄電池の陽極室に収容すると、カーボンフェルトの外周面と陽極容器との間の接触抵抗が大きく、かつナトリウムイオンの移動が抑制され、充電時に陽極室内の陽極容器側で多硫化ナトリウムが残存しやすい。その結果、電池の抵抗が大きく、充電回復率が低いという問題があった。
【0005】この発明は、このような従来技術に存在する問題に鑑みてなされたものである。その目的とするところは、ナトリウム−硫黄電池の陽極室内に収容されたとき、陽極容器との間の接触抵抗が低減され、ナトリウムイオンの移動が容易となって充電反応が促進され、電池抵抗を低減するとともに、充電回復率の向上を図ることができるナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルト及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成するために、請求項1のナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルトの発明では、フェルトは、その厚さ方向へ配向した繊維がフェルトの片側面より突出しているものである。
【0007】また、請求項2のナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルトの製造方法の発明では、フェルトはその厚さ方向へ深くニードルパンチングが施され、フェルトのニードルの侵入面と反対の側面より繊維が突出されるものである。
【0008】
【作用】 この発明のナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルトの製造方法では、フェルトの厚さ方向へ深くニードルパンチングが施され、フェルトの繊維がそのニードルの侵入面と反対の側面より突出形成されている。
【0009】このように形成されたカーボンフェルトを繊維が突出した部分を陽極容器側にして、ナトリウム−硫黄電池の陽極室内に収容すると、突出した繊維が陽極容器に密着して接触抵抗が低減される。そのため、電池抵抗が低減し、かつナトリウム−イオンの移動が容易となって、充電反応が促進され、充電回復率の向上を図ることができる。
【0010】
【実施例】 以下に、この発明のナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルト及びその製造方法を具体化した実施例について、図1〜6に基づいて説明する。まず、ナトリウム−硫黄電池について説明する。図1,2に示すように、アルミニウム合金よりなる陽極容器1は円筒状に形成されてその底部に底蓋2が接合されるとともに、上部外周面に陽極端子3が取付けられている。アルファアルミナ製の絶縁リング4は陽極容器1の上端部に接合固定されている。有底円筒状をなすナトリウムイオン透過性の固体電解質管5はベータアルミナにより形成され、その上端外周面が絶縁リング4の内周面に接合されている。陽極室6は陽極容器1と固体電解質管5との間において環状に形成されている。陽極用のフェルト7は、カーボン繊維により形成され、陽極室6内に収容されて陽極活物質である硫黄Sが含浸されている。
【0011】カートリッジ8は固体電解質管5の内側に形成される陰極室14内に配置され、密閉状に形成されて内部に陰極活物質である溶融した金属ナトリウムNaが収容されている。ナトリウムの供給孔8aはカートリッジ8の底部に透設され、カートリッジ8内のナトリウムNaを固体電解質管5側へ導出する。安全管9は固体電解質管5とカートリッジ8との間隙に配置され、固体電解質管5の破損によるカートリッジ8の損傷を防止している。陰極蓋10は絶縁リング4の上端面に固着され、その上面には陰極端子11が取付けられている。なお、コイルスプリング12はカートリッジ8の上端面と陰極蓋10の内面間に介装され、カートリッジ8の浮き上がりを防止している。
【0012】そして、電池は300〜350℃という高温で動作し、充電及び放電反応が行われる。すなわち、放電時には陽極室6内のフェルト7中でナトリウムNaと硫黄Sが反応して多硫化ナトリウム(Na2 X )が生成し、充電時には多硫化ナトリウムがナトリウムNaと硫黄Sに戻り、ナトリウムNaはナトリウムイオンとなって陰極室14内へ戻る。
【0013】次に、陽極室6内の前記フェルト7の製造方法及び陽極室6内へのフェルト7の収容方法について説明する。まず、有機繊維としてのポリアクリロニトリル繊維が、所定の厚さを有するフェルト7に成形される。このフェルト7は耐炎化工程において200℃程度に加熱されて酸化され、黒色の耐炎化繊維に形成される。次いで、図5に示すように、ポリアクリロニトリル繊維の耐炎化繊維によるフェルト7に対してニードルパンチングが施される。このニードルパンチングは、フェルト7を構成する繊維15がフェルト7のニードル侵入面と反対の側面より突出するようにニードルがフェルトを深く貫通することにより行われる。そして、マット7の突出繊維15aがフェルト7の側面よりわずかに、例えば1mm程度突出する。
【0014】この突出繊維15aは通常繊維束として突出されるが、繊維15が切れた状態であってもよい。突出繊維15aの密度は高く、反発力が大きい方が望ましい。この突出繊維15aの突出距離があまり長いと反発力が弱くなり、かえって陽極容器1との接触抵抗が大きくなって好ましくない。このニードルパンチングにより、フェルト7の繊維15がその厚さ方向Xに配向され、ナトリウムイオンが厚さ方向Xに配向された繊維15に沿って移動し易くなる。
【0015】次に、ニードルパンチングされたフェルト7は約2000℃での焼成により黒鉛化処理が施される。このフェルト7は、図3に示すように、所定の大きさの直方体状に切断される。
【0016】その後、図4に示すように、フェルト7はニードルパンチング面を内側にして幅方向に湾曲状に成形される。そして、湾曲状に成形された3つのフェルト7が円筒状に形成され、図2に示すように、これらのフェルト7が圧縮状態で陽極室6内に収容される。このとき、図6に示すように、フェルト7の突出繊維15が陽極容器1の内周面に接触し、接触抵抗が低減され、しかもナトリウムイオンの移動が容易になる。
【0017】そして、電池の放電時にカートリッジ8内のナトリウムNaがカートリッジ8底部の供給孔8aを経て安全管9内に移動し、さらに固体電解質管5と安全管9との間隙へと移動する。そして、ナトリウムイオンが固体電解質管5内を透過して陽極室6へ移動し、前記のように成形されたフェルト7内の繊維15表面で硫黄Sと反応して多硫化ナトリウムを生成する。
【0018】一方、充電時には、放電時とは逆に陽極室6内の多硫化ナトリウムが繊維15表面でナトリウムイオンと硫黄に戻る。生成したこのナトリウムイオンはフェルト7の厚さ方向Xに延びる繊維15に沿って移動し、固体電解質管5の外表面に至る。ナトリウムイオンはさらに固体電解質管5内を透過し、安全管9内から供給孔8aを経てカートリッジ8内へ戻る。
【0019】このように、この実施例のナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルトの製造方法では、ニードルパンチングにより得られたフェルト7は、その側面より所定長さだけ突出形成された突出繊維15aを有している。
【0020】そして、このフェルト7が突出繊維15aを陽極容器1側にして、ナトリウム−硫黄電池の陽極室6内に収容されると、突出繊維15aが陽極容器1に接触して接触抵抗が低減される。しかも、ナトリウム−イオンの移動が容易となる。その結果、電池の内部抵抗が低減され、かつ充電回復率が向上する。
【0021】ちなみに、ポリアクリロニトリル繊維を耐炎化処理した2デニール品の繊維を用い、フェルト7を製作した。このフェルト7にニードルパンチングを施して厚さ10mmのフェルト7を得た。この際、ニードルパンチングの深さを考慮して突出量が約1mmの突出繊維15aを形成したフェルト7と、繊維15を突出させないフェルト7の2種類を製作した。そして、これらのフェルト7を電池の陽極室6内に収容し、電池の内部抵抗と、充電回復率を測定した。その結果、前者は後者に比較して、内部抵抗が5%減少し、充電回復率が2%向上した。
【0022】なお、この発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば次のように構成を変更して具体化することも可能である。
(イ)フェルト7表面に、電子伝導性がなく多硫化ナトリウムの酸化還元反応を抑制するアルファアルミナ粉体やガラス繊維などよりなる高抵抗体13を散布すること。
(ロ)カーボンフェルトの原料となる有機繊維として、セルロース繊維、リグニンを原料とする繊維、石油系又は石炭系ピッチを出発原料とする繊維などを使用すること。
(ハ)フェルト7上にV字状の溝を設けること。
(ニ)フェルト7の分割数を変えること。
【0023】ちなみに、前記実施例より把握される請求項以外の技術的思想について、その効果とともに以下に記載する。
(1)ニードルパンチングは、所定長の突出繊維が形成されるようにニードルがフェルトを貫通して行われる請求項2に記載のナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルトの製造方法。この方法により、フェルトの突出繊維が所定密度をもって確実に形成される。
【0024】
【発明の効果】 以上詳述したように、この発明のナトリウム−硫黄電池用カーボンフェルト及びその製造方法によれば、ナトリウム−硫黄電池の陽極室内に収容されたとき、陽極容器との間の接触抵抗が低減され、かつナトリウムイオンの移動が容易となって充電反応が促進され、電池抵抗低減化と充電回復率の向上を図ることができる。


 

 


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