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発明の名称 磁気抵抗効果多層膜、磁気抵抗効果素子および磁気抵抗効果素子の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平8−213671
公開日 平成8年(1996)8月20日
出願番号 特願平7−36311
出願日 平成7年(1995)2月1日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】石井 陽一
発明者 新庄 輝也 / 荒木 悟
要約 目的
印加磁場が例えば0〜40Oe程度のきわめて小さい範囲で直線的なMR変化の立ち上がり特性を示し、磁場感度が高い磁気抵抗効果多層膜とそれを用いた磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子の製造方法とを提供する。

構成
基板上に、非磁性層を介して設層された少なくとも2層の磁性層を有する磁気抵抗効果多層膜において、前記磁性層と非磁性層の各界面が、XおよびY方向に波打っていることを特徴とする。上記界面の波は、基板表面に、そのXおよびY方向に分布する凹凸を設け、この上に磁性層、非磁性層を設層することにより形成される。
特許請求の範囲
【請求項1】 基板上に、非磁性層を介して設層された少なくとも2層の磁性層を有する磁気抵抗効果多層膜において、前記磁性層と非磁性層の各界面が、XおよびY方向に波打っていることを特徴とする磁気抵抗効果多層膜。
【請求項2】 前記XおよびY方向の波のうち少なくとも一方向の波が、その平均高さをh、磁気抵抗効果多層膜の全厚をD、および非磁性層1層の層厚をdとしたとき、2d≦D−h≦9D/10を満足する請求項1の磁気抵抗効果多層膜。
【請求項3】 前記XおよびY方向の波のうち少なくとも一方向の波が、その平均周期をλ、平均高さをhとしたとき、0.7≦λ/h≦3.5を満足する請求項1または2の磁気抵抗効果多層膜。
【請求項4】 前記波が、基板上に多数の微小な凸部を形成し、その上に磁性層と非磁性層を設層することにより形成されたものである請求項1ないし3のいずれかの磁気抵抗効果多層膜。
【請求項5】 前記凸部の形状が半球状、半楕円面状、双曲面状または正弦波面状である請求項4の磁気抵抗効果多層膜。
【請求項6】 前記波が、基板表面に、1方向に延びる多数の第1平行溝と、この第1平行溝と交差する方向に延びる多数の第2平行溝とを形成し、その上に磁性層と非磁性層を設層することにより形成されたものである請求項1ないし3のいずれかの磁気抵抗効果多層膜。
【請求項7】 前記溝の断面形状が、半楕円形、双曲線状、正弦波状、U字形またはV字形である請求項6の磁気抵抗効果多層膜。
【請求項8】 前記波が周期的な波である請求項1ないし7のいずれかの磁気抵抗効果多層膜。
【請求項9】 請求項1ないし8のいずれかの磁気抵抗効果多層膜を感磁部に備える磁気抵抗効果素子。
【請求項10】 請求項2ないし8のいずれかの磁気抵抗効果多層膜を感磁部に備える磁気抵抗効果素子であって、測定電流の流れる方向と前記1方向の波の方向を一致させた磁気抵抗効果素子。
【請求項11】 請求項9または10の磁気抵抗効果素子を製造する方法であって、磁気抵抗効果素子の感磁部分である磁気抵抗効果多層膜の下地部分に対応する基板の表面部分に、その表面のXY方向に分布する多数の微小凸部または凹部、あるいはこれらの双方を形成し、その上に磁性層と非磁性層を交互に設層して、磁気抵抗効果多層膜を形成する磁気抵抗効果素子の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気記録媒体等の磁界強度を信号として読み取るための磁気抵抗変化素子のうち、特に小さな磁場変化を大きな電気抵抗変化信号として読み取ることのできる磁気抵抗効果素子と、それに好適な磁気抵抗効果多層膜と、上記磁気抵抗効果素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気センサの高感度化や磁気記録における高密度化が進められており、これに伴い磁気抵抗変化を用いた磁気抵抗効果型磁気センサ(以下、MRセンサという。)や、磁気抵抗効果型磁気ヘッド(以下、MRヘッドという。)の開発が盛んに進められている。MRセンサもMRヘッドも、磁性材料を用いた読み取りセンサ部の抵抗変化により、外部磁界信号を読み出すものであるが、MRセンサやMRヘッドでは、記録媒体との相対速度が再生出力に依存しないことから、MRセンサでは高感度が、MRヘッドでは高密度磁気記録においても高い出力が得られるという特長がある。
【0003】しかし、従来の異方性磁気抵抗効果によるNi0.8 Fe0.2 (パーマロイ)やNiCo等磁性体を利用したMRセンサでは、抵抗変化率△R/Rがせいぜい2〜5%位と小さく、数GBPIオーダーの超高密度記録の読み出し用MRヘッド材料としては感度が不足する。
【0004】ところで、金属の原子径オーダーの厚さの薄膜が周期的に積層された構造をもつ人工格子は、バルク状の金属とは異なった特性を示すために、近年注目されてきている。このような人工格子の1種として、基板上に強磁性金属薄膜と反強磁性金属薄膜とを交互に積層した磁性多層膜があり、これまで、鉄−クロム型、ニッケル−クロム型および鉄−マンガン型(特開昭60−189906号公報)等の磁性多層膜が知られている。このうち、鉄−クロム型(Fe/Cr)については、超低温(4.2K)において40%を超える磁気抵抗変化を示すという報告がある(Phys. Rev. Lett 第61巻、2472頁、1988年)。しかし、この人工格子磁性多層膜では最大抵抗変化の起きる外部磁場(動作磁界強度)が十数kOe 〜数十kOe と大きく、このままでは実用性がない。この他、Co/Cu,Co/Ag等の人工格子磁性多層膜も提案されているが、これらでも動作磁場強度が大きすぎる。
【0005】そこで、このような事情から、非磁性層を介して保磁力の異なる2つの磁性層を積層した誘導フェリ磁性による巨大MR変化を示す3元系人工格子磁性多層膜が提案されている。例えば、この出願の先願である特願平3−78824号では、非磁性層を介して隣合う磁性薄膜のHcが異なっており、各層の厚さが200A 以下であるものが提案されている。また、下記の文献が発表されている。
【0006】a.Journal of The Physical Society of Japan, 59(1990)3061T.Shinjo and H.Yamamoto【0007】[Co(30)/Cu(50)/NiFe(30)/Cu(50)]×15[( )内は各層の膜厚(A )、×の数値は繰り返り数、以下同]において印加磁場3kOe で9.9%、500Oeでは約8.5%のMR変化率を得ている。
【0008】b.Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 99(1991)243H.Ymamamoto, T.Okuyama, H.Dohnomae and T.Shinjo【0009】aに加えて構造解析結果、MR変化率や比抵抗の温度変化、外部磁場の角度による変化、MR曲線のマイナーループ、積層回数依存性、Cu層厚依存性、磁化曲線の変化について述べられている。
【0010】このような3元系人工格子磁性多層膜では、Fe/Cr,Co/Cu,Co/Ag等に比較してMR変化率の大きさは劣るものの、数100Oe以下の印加磁場で10%程度の巨大なMR変化率を示している。しかし、これらの文献等で開示されている内容は数10〜100Oe程度の印加磁場でのMR変化についてのみである。
【0011】ところで、実際の超高密度磁気記録におけるMRヘッド材料としては印加磁場0から40〜50OeまでのMR変化曲線が重要である。しかし、これら従来の3元系人工格子は、印加磁場0でのMR変化はあまり増加しておらず、ほとんど0に近い。MR変化の増加率は60Oe程度で最大となり、このとき9%程度のMR変化率を示す。すなわち、変化曲線の立ち上がりが遅い。一方、パーマロイ(NiFe)の場合は、0磁場におけるMR変化の傾きはほぼ0であり、ほとんどMR変化率はかわらず、MR変化率の微分値は0に近く、磁場感度が低く、超高密度磁気記録の読み出し用MRヘッドとしては適さない。
【0012】このような特性を解決する手段として、特開平6−318515号公報では、「強磁性層と非強磁性層とを交互に積層してなる磁気抵抗効果膜を備えた磁気抵抗素子において、隣接する前記強磁性層と前記非強磁性層の界面が前記磁気抵抗効果膜の膜面に対して傾斜しており、且つ、電流が前記磁気抵抗効果膜内を前記界面と交差して流れることを特徴する磁気抵抗効果素子」を提案している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特許公報で提案された磁気抵抗素子は、その多層構造の磁気抵抗効果膜を、例えば次のようにして製造しなければならず、製造が極めて困難であり、現実的でない。
【0014】まず、スパッタ法を用いて、成膜用のシリコン基板の表面(上面)に、厚さ15Aのコバルト(Co)層と厚さ9Aの銅(Cu)層を交互に30周期、積層する。これによって、基板上に、多層構造の磁気抵抗効果膜が得られる。
【0015】次に、磁気抵抗効果膜の表面にノブラック系フォトレジストの膜を形成した後、そのレジスト膜を熱軟化させることにより、テーパのついたマスクを形成する。このマスクは、膜の右端から左端(上記公報の図面において、以下同じ)に向かって厚さが徐々に減少している。
【0016】続いて、テーパつきマスクの上からアルゴンイオンAr+ を照射し、磁気抵抗効果膜のイオンミリングを行なう。その結果、膜の左端側が右端側に比べて多く除去される。残った膜の全体は10μm で、その厚さはマスクの形状を反映して右端から左端に向かって減少する。
【0017】こうして得たテーパつきの磁気抵抗効果膜の表面に、CVD法等により、基体となる厚さ0.1mmのアルミナ(Al2 3 )膜を被着する。基体は、膜の傾斜した面(これは新たに第1の膜面となる)にほぼ均一な厚さで形成される。
【0018】次に、シリコン基板の裏面(下面)に、ノブラック系フォトレジストの膜を形成した後、そのレジスト膜を熱軟化させることにより、上記と同様のテーパつきマスク(図示せず)を形成する。このマスクの断面形状は、上記のシリコン基板の表面(上面)に形成されたマスクとは逆に、左端から右端に向かって厚さが減少するテーパとなっている。両マスクのテーパ度は同一である。
【0019】続いて、基板の裏面に形成したマスクの下からアルゴンイオンAr+ を照射し、基板と磁気抵抗効果膜のイオンミリングを行なう。その結果、基板は完全に除去され、また、膜はマスク形状を反映してテーパ状に除去される。これによって形成される膜の傾斜した面は、新たに第2の膜面となる。こうして、第1の膜面と第2の膜面が平行で厚さが均一の磁気抵抗効果膜が、基体に固着された状態で得られる。
【0020】以上のように上記特許公報で提案された磁気抵抗素子における磁気抵抗効果膜を形成するには、マスクを用いたイオンミリングを2回行なわなければならないことなど、工程が多く、しかも困難な作業を伴い、現実的でない。また、上記特許公報で提案された磁気抵抗素子においては、隣接する強磁性層と非強磁性層の界面が磁気抵抗効果膜の膜面に対して傾斜しているが、製造上等の問題からこの傾斜角を30°程度以上にできないので、伝導電子の上記界面における垂直成分の増大をあまり期待できないという問題も有している。
【0021】そこで、本発明の目的は、印加磁場が例えば0〜40Oe程度のきわめて小さい範囲で直線的なMR変化の立ち上がり特性を示し、磁場感度が高い磁気抵抗効果多層膜とそれを用いた磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子の製造方法とを提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記(1)〜(11)の本発明により達成される。
(1)基板上に、非磁性層を介して設層された少なくとも2層の磁性層を有する磁気抵抗効果多層膜において、前記磁性層と非磁性層の各界面が、XおよびY方向に波打っていることを特徴とする磁気抵抗効果多層膜。
(2)前記XおよびY方向の波のうち少なくとも一方向の波が、その平均高さをh、磁気抵抗効果多層膜の全厚をD、および非磁性層1層の層厚をdとしたとき、2d≦D−h≦9D/10を満足する上記(1)の磁気抵抗効果多層膜。
(3)前記XおよびY方向の波のうち少なくとも一方向の波が、その平均周期をλ、平均高さをhとしたとき、0.7≦λ/h≦3.5を満足する上記(1)または(2)の磁気抵抗効果多層膜。
(4)前記波が、基板上に多数の微小な凸部を形成し、その上に磁性層と非磁性層を設層することにより形成されたものである上記(1)ないし(3)のいずれかの磁気抵抗効果多層膜。
(5)前記凸部の形状が半球状、半楕円面状、双曲面状または正弦波面状である上記(4)の磁気抵抗効果多層膜。
(6)前記波が、基板表面に、1方向に延びる多数の第1平行溝と、この第1平行溝と交差する方向に延びる多数の第2平行溝とを形成し、その上に磁性層と非磁性層を設層することにより形成されたものである上記(1)ないし(3)のいずれかの磁気抵抗効果多層膜。
(7)前記溝の断面形状が、半楕円形、双曲線状、正弦波状、U字形またはV字形である上記(6)の磁気抵抗効果多層膜。
(8)前記波が周期的な波である上記(1)ないし(7)のいずれかの磁気抵抗効果多層膜。
(9)上記(1)ないし(8)のいずれかの磁気抵抗効果多層膜を感磁部に備える磁気抵抗効果素子。
(10)上記(2)ないし(8)のいずれかの磁気抵抗効果多層膜を感磁部に備える磁気抵抗効果素子であって、測定電流の流れる方向と前記1方向の波の方向を一致させた磁気抵抗効果素子。
(11)上記(9)または(10)の磁気抵抗効果素子を製造する方法であって、磁気抵抗効果素子の感磁部分である磁気抵抗効果多層膜の下地部分に対応する基板の表面部分に、その表面のXY方向に分布する多数の微小凸部または凹部、あるいはこれらの双方を形成し、その上に磁性層と非磁性層を交互に設層して、磁気抵抗効果多層膜を形成する磁気抵抗効果素子の製造方法。
【0023】
【作用】本発明においては、単に、基板の表面に、多数の微小な半球状等の凹凸を形成しさえすれば、後は、従来の成膜方法と同じ方法で磁気抵抗効果多層膜を成膜することができるので、極めて容易に磁気抵抗効果多層膜、ひいては磁気抵抗効果素子を製造することができる。また、本発明の磁気抵抗効果多層膜においては、以上のようにして製造されるので、磁性層と非磁性層の界面が極めて微細に波打つので、電流が極めて多くの界面を貫通し、しかもこの界面と膜面のなす角度を大きく設定することができるので、伝導電子の上記界面に対しての垂直成分が大きく増大し、したがって、磁気抵抗変化率も向上する。
【0024】なお、基板表面に多数の平行な畝を形成し、この上に磁気抵抗効果多層膜を形成して、上記界面をうねらせ、電流が貫通する界面数を増大する方法も考えられるが、この場合には、電流方向と上記畝の方向を直角に設定しなければならないので、製造に制限が加わるとともに、磁気抵抗変化率も本発明のようには大きくならない。
【0025】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0026】本発明の磁気抵抗効果多層膜は、基板上に、非磁性層を介して設層された少なくとも2層の磁性層を有し、上記磁性層と非磁性層の各界面が、XおよびY方向に波打っていることを必要とする。波を構成する線分は、全てが直線であっても、曲線であってもよく、また、それらの混合であってもよい。例えば、磁気抵抗効果多層膜のある垂直断面で見た界面が、3角波形状、4角波形状等の波の形状がすべて直線で構成されたもの、連続した半円形からなる波状、連続した半楕円形からなる波状、連続した双曲線形からなる波状、正弦波状等の波の形状がすべて曲線で構成されたもの、波の側辺が湾曲し、上面および下面が直線状の波状、上部のみが半円形等の曲線で形成され、他がすべて直線で形成されたもの等のどのような形状であってもよい。要するに、膜面の面方向(広がりの方向)の任意の方向に延びる直線に対して上記界面の波の各成分(各凸凹)の一部が交差してさえすればい。したがって、上記の波は、規則的なものでも、不規則なものであってもよい。換言すれば、上記の波は、周期性をもっていても、なくてもよい。
【0027】以上のように、磁気抵抗効果多層膜の磁性層と非磁性層の間の各界面を波打たせるには、その表面のXY方向に分布する多数の微小凸部または凹部、あるいはこれらの双方を形成し、その上に磁性層と非磁性層を交互に設層すればよい。
【0028】上記凸部の形状は、半球状(この例を図1に示した。この図において、符号1が基板であり、符号2が凸部である。以下、これを第1形状基板と称することがある)、円錐状、円錐台状、4角錐状(この例を、図2に示した。これを第2形状基板と称することがある)、4角錐台状、半楕円面状、双曲面状、正弦波面状あるいはこれらの形状の少なくとも1部が変形した形状等とすることができる。また、凹部は、基板表面に、1方向に延びる多数の第1平行溝と、この第1平行溝と交差する方向に延びる多数の第2平行溝であることが好ましく、その断面形状は、半楕円形、双曲線状、正弦波状、U字形またはV字形等であることが好ましい。
【0029】上記界面の波においては、上記XおよびY方向の波のうち少なくとも一方向の波が、その平均高さをh、磁気抵抗効果多層膜の全厚をD、および非磁性層の層厚をdとしたとき、2d≦D−h≦9D/10であることが好ましい。
【0030】以下その理由を説明するが、簡単のため、磁性層10(10−1および10−2)と非磁性層20の間の界面30の形状を、図3に示すように、磁気抵抗効果多層膜mrの1方向の垂直断面で見たとき、上記1方向の垂直断面が周期的な3角波形状であるとして説明する。
【0031】Dとhとの条件を考える。全層厚がDの時、少なくとも(つまり最小の単位では)3つの層が含まれる。すなわち、第1の磁性層10−1、非磁性層20、第2の磁性層10−2である。ここで、L=D−hは電圧が印加されたときに電子がその電位差に沿って直線的に移動できる膜厚方向の距離を表す。このとき、Lが小さくなると電子は作製された波hに邪魔をされ、波の形状で物理的に散乱されてしまう。すなわち、比抵抗が急激に増加してしまいMR変化率が小さくなってしまう。このLは2d以上であることが必要である。この大きなMR変化を起こすメカニズムとしては、電子が相対角度をもった異なる磁性層を多数回横切ることによる。したがって、最小構成としては非磁性層と磁性層との間の界面で電子が散乱を受ければよいから磁性層厚は関係しない。最も薄い場合は非磁性層dの2倍の厚みがあればよい。2dよりLが小さくなってしまうと比抵抗が大きくなり大きなMR変化が得られなくなる。好ましくは3d以上、より好ましくは4d以上である。
【0032】また、上限は9D/10である。この値は、大きくなっていても、理想的に磁気抵抗効果多層膜が形成されていれば、実質的にLを流れる電流は常に同様の磁気的な散乱を受け、大きなMR変化を示す。しかし、あまりこの値が大きくなってしまうと、相対的にhが小さくなってしまうので、9D/10以下が好ましい。
【0033】また、上記波の平均的な周期λも大切である。これは、波の高さによって好ましい平均周期が規定される。すなわち、0.7≦λ/h≦3.5である。これは実験の結果、波を生じさせる凹凸の寸法とその平均距離を様々に変化させて評価した結果、この範囲の時に電子はほぼ30〜70度の角度をもって界面に入射し、その結果、平坦な界面をもつ場合と比較して大きなMR変化率とMR傾きが得られた。これより小さくなると積層した多層膜の構造の欠陥が増加しその結果MR変化率が小さくなる。また、これより大きくなると波が穏やかになり実質的に界面を多数回電子が横切ることが少なくなる。したがって大きなMR変化が得られなくなる。なお、上記Dは、100〜20000A程度、hは30〜10000A程度、λは20〜50000A程度が好ましい。
【0034】本発明の磁性薄膜に用いる磁性体の種類は特に制限されないが、具体的には、Fe,Ni,Co,Mn,Cr,Dy,Er,Nd,Tb,Tm,Ce,Gd等が好ましい。また、これらの元素を含む合金や化合物としては、例えば、Fe−Si,Fe−Ni,Fe−Co,Fe−Al,Fe−Al−Si(センダスト等),Fe−Y,Fe−Gd,Fe−Mn,Co−Ni,Cr−Sb,Fe系アモルファス合金、Co系アモルファス合金、Co−Pt,Fe−Al,Fe−C,Mn−Sb,Ni−Mn,Co−O,Ni−O,Fe−O,Fe−Al−Si−N,Ni−F,フェライト等が好ましい。本発明では、これらの磁性材料のうちから保磁力の異なる2種またはそれ以上を選択して磁性薄膜を形成する。
【0035】各磁性薄膜の膜厚の上限は、200A である。一方、磁性薄膜の厚さの下限は特にないが、4A 未満ではキューリー点が室温より低くなって実用性がなくなってくる。また、厚さを4A 以上とすれば、膜厚を均一に保つことが容易となり、膜質も良好となる。また、飽和磁化の大きさが小さくなりすぎることもない。膜厚を200A より大としても効果は落ちないが、膜厚の増加に伴って効果が増大することもなく、膜の作製上無駄が多く、不経済である。
【0036】用いる非磁性層は、磁性層間の磁気相互作用を弱める役割をはたす材料であり、その種類に特に制限はなく各種金属ないし半金属非磁性体や非金属非磁性体から適宜選択すればよい。金属非磁性体としては、Au,Ag,Cu,Pt,Al,Mg,Mo,Zn,Nb,Ta,V,Hf,Sb,Zr,Ga,Ti,Sn,Pb等やこれらの合金が好ましい。半金属非磁性体としては、Si,Ge,C,B等やこれらに別の元素を添加したものが好ましい。非金属非磁性体としては、SiO2 ,SiO,SiN,Al23 ,ZnO,MgO,TiN等やこれらに別の元素を添加したものが好ましい。
【0037】非磁性層の厚さは、200A 以下が望ましい。一般に層厚が200A を超えると、抵抗は非磁性層により決定してしまい、スピン散乱を設ける割合が小さくなってしまい、その結果、磁気抵抗変化率が小さくなってしまう。一方、層厚が小さすぎると、磁性層間の磁気相互作用が大きくなり過ぎ、両磁性層の磁化方向が相異なる状態が生じにくくなるとともに、連続層の形成が困難となるので、層厚は4A 以上が好ましい。なお、磁性層や非磁性層の層厚は、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、オージェ電子分光分析等により測定することができる。また、層の結晶構造は、X線回折や高速電子線回折等により確認することができる。
【0038】上記磁気抵抗効果多層膜において、磁性層の層数は、2〜100程度、非磁性層の層数は1〜99程度であることが好ましい。その理由は、積層数が増加するに従って、MR変化率は増加するが、同時に生産性が悪くなり、コストアップにつながり、また、応用上は薄いほど記録感度の高い磁気抵抗効果素子が作製できることから、上限は上述の程度とする。
【0039】以上のように磁性層と非磁性層の間の各界面をXおよびY方向に波打たせることにより、成膜直後の磁気抵抗効果多層膜は、4〜20%程度の高いMR変化率とともに、0磁場にてリニアリティーが高く、勾配の大きいMR変化を示す。より具体的には、MR傾き(微分値MR変化率)が0.3〜0.9%程度となり、超高密度記録の読み出し用のMRヘッドとして十分な特性が得られる。
【0040】本発明では、非磁性層(以下、この層を非磁性薄膜と称することもある)を介して隣合った磁性層(以下、この層を磁性薄膜と称することもある)の保磁力は互いに異なっていることが好ましい。その理由は、本発明の原理の1つが、隣合った磁性層の磁化の向きがズレているとき、伝導電子がスピンに依存した散乱を受け、抵抗が増え、磁化の向きが互いに逆向きに向いたとき、最大の抵抗を示すことにあるからである。すなわち、図5で示すように外部磁場が第1の磁性薄膜の保磁力Hc1 と第2の磁性薄膜層の保磁力Hc2 の間(Hc1 <H<Hc2 )であるとき、隣合った磁性薄膜の磁化の方向が互いに逆向きの成分が生じ、抵抗が増大するのである。
【0041】ここで、3元系人工格子多層磁性膜の外部磁場、保磁力および磁化の方向の関係を説明する。図4は、本発明による人工格子磁性多層膜101の1例の断面図である。図4において、人工格子磁性多層膜101は、基板104上に磁性薄膜M1 ,M2 …,Mn-1 ,Mn を有し、隣接する2層の磁性薄膜の間に、非磁性薄膜N1 ,N2 …,Nn-2 ,Nn-1 を有する。
【0042】今、簡素化して、保磁力の異なる2種類の磁性薄膜のみを有する場合について説明する。図5に示されるように、2種類の磁性薄膜層■、■のHcをそれぞれHc1 およびHc2 とする(0<Hc1 <Hc2 )。また、第1の磁性薄膜■の異方性磁界をHk、第2の磁性薄膜■の磁化が飽和する外部磁界をHmとする。最初、外部磁場Hを、H<−Hcmとなるようにかけておく。第1および第2磁性薄膜層■、■の磁化方向は、Hと同じ−(負)方向に向いている。次に外部磁場を上げていくと、H<−Hkの領域(I)では、まだ両磁性薄膜の磁化方向は一方向を向いている。外部磁場を上げて−Hk<H<Hc2 の領域(II)になると、磁性薄膜■の1部の磁化方向が反転をはじめ、磁性薄膜■、■の磁化方向は互いに逆向きの成分が生じる。そしてHk<H<Hc2 の範囲で磁性薄膜■、■の磁化方向は完全に反平行となる0さらに外部磁場を大きくしたHcm<Hの領域(III )では、磁性薄膜■、■の磁0方向は、+方向に揃って向く。
【0043】今度は外部磁場Hを減少させると、Hk<Hの領域(IV)では磁性薄膜■、■の磁化方向は+方向のままであるが、−Hm<H<Hkの領域(V)では、磁性薄膜層■の磁化方向は一方向に反転をはじめ、磁性薄膜■、■の磁化方向が互いに逆向きの成分が生じる。さらに、H<−Hcmの領域(VI)では、磁性薄膜■、■の磁化方向は一方向に揃って向く。この磁性薄膜■、■の磁化方向が互いに逆向きになっている領域(II)および(V)で、伝導電子がスピンに依存した散乱を受け、抵抗は大きくなる。領域(II)のうち、−Hk<H<Hkの範囲において、磁性薄膜■はほとんど磁化反転はしないが、磁性薄膜■は直線的にその磁化を増加させるため、磁性薄膜■の磁化変化に対応し、スピンに依存した散乱を受ける伝導電子の割合が徐々に大きくなる。すなわち、第1の磁性薄膜■に例えばHcの小さなNi0.8 Fe0.2 (Hc2 数Oe以下)を選び、適当なHkを付与し、第2磁性薄膜層■にHcのやや大きく、かつ角型比の大きい、例えばCo(Hc3 数十Oe)を選ぶことにより、Hk付近以下の数Oe〜数10Oeの範囲の小外部磁場で大きな抵抗変化率を示すMR素子が得られる。
【0044】各磁性層(薄膜)の保磁力Hcは、適用される素子における外部磁界強度や要求される抵抗変化率等に応じて、例えば上記のように、0.001Oe〜10kOe、特に0.01〜1000Oeの範囲から適宜選択すればよい。これは、隣接する磁性層(薄膜)の保磁力を異ならせない場合も、異ならせる場合も同じである。また、隣接する磁性薄膜の保磁力を異ならせる場合の比Hc2 /Hc1 は、1.2〜100、特に1.5〜100より好ましくは2〜80、特に3〜60、さらに好ましくは5〜50、特に6〜30であることが好ましい。比が大きすぎるとMR曲線がブロードになってしまい、また小さすぎるとHcの差が近すぎ、反平行状態が有効に働かなくなってしまう。
【0045】なお、Hc等の磁気特性の測定に際しては、磁気抵抗効果素子中に存在する磁性薄膜の磁気特性を直接測定することはできないので、通常、下記のようにして測定する。すなわち、測定すべき磁性薄膜を、磁性薄膜の合計厚さが200〜400A 程度になるまで非磁性薄膜と交互に蒸着して測定用サンプルを作製し、これについて磁気特性を測定する。この際、磁性薄膜の厚さ、非磁性薄膜の厚さおよび非磁性薄膜の組成は、磁気抵抗効果測定素子におけるものと同じものとする。
【0046】本発明では、0磁場からリニアリティーの高いMR曲線と高い耐熱性を得るために、Hcの小さい第1の磁性薄膜とHcの大きい第2の磁性薄膜との0磁場での残留磁化Mr、すなわち角型比SQ=Mr/Msを制御することが好ましい。第1の磁性薄膜では、好ましくは0.01≦SQ1 ≦0.5、より好ましくは0.01≦SQ1 ≦0.4、特に0.01≦SQ1 ≦0.3とし、第2の磁性薄膜では、0.7≦SQ2 ≦1.0とする。第1の磁性薄膜は、0磁場近傍でのMR変化の立ち上がりを規定するものであるので、その角型比SQ1 は小さいほどよい。より詳細には、SQ1 が小さければ0磁場付近で磁化は漸次回転し、反平行状態が漸次増加していくので、0磁場をはさんで直線的なMR曲線とすることができる。そして、SQ1 が0.5より大きくなると直線的なMR変化が得られにくくなる。ただし、SQ1 の製造上の限界は0.01程度までである。
【0047】このような第1の磁性薄膜と組み合わせる第2の磁性薄膜は、0磁場付近で角形比SQ2 が1に近いほどよい。角型比を0.7以上にすれば0磁場近傍でのMR変化の立ち上がりはシャープになり、大きなMR変化率を得ることができる。なお、第1の磁性薄膜の異方性磁界Hkは1〜20Oe、より好ましくは2〜12Oe、特に3〜10Oeとすることが好ましい。Hk>20では直線性を示す磁場の範囲は広がるが、MR曲線の傾きが小さくなり、分解能が落ちてしまう。またHk<1Oeでは直線性を示す磁場の範囲が狭くなり、MR素子としての機能を果たさなくなってくる。
【0048】なお、SQ2 /SQ1 は2〜100、特に2〜50であることが好ましい。
【0049】そして、さらに第1および第2の磁性薄膜の膜厚を最適化することにより、より積極的に角型比すなわちMR変化曲線の立ち上り特性と耐熱性とを制御することが好ましい。今、上記の文献aおよびbに示されるほとんどの具体例と同様、第1および第2の磁性薄膜の厚さを同一とするときには、膜厚が厚くなるほど両薄膜の角型比はともに1.0に近づく。このため磁化曲線では明確な磁化の折れ曲がりを示さない。その結果、MR変化曲線は数10Oeで始めて立ち上がる0磁場での直線性の悪いものになってしまう。従って、磁性薄膜の膜厚は両方とも薄い方が直線性がよく、良好な立ち上がり特性を示す。ただし、両薄膜とも、例えば10A 程度と薄い場合、耐熱性に問題がある。より具体的には350℃程度で真空中で加熱を行うと、第2の磁性薄膜では角型比の劣化による影響は余り受けないが、第1の磁性薄膜では角型比の劣化が激しい。第1の磁性薄膜は厚くした方が角型が1.0に近づく。従って、第2の磁性薄膜とは独立に第1の磁性薄膜を多少厚くした方が、プロセスでの熱処理後のMR特性がよいものが得られる。そして、第1の磁性薄膜の熱処理後の角型比の劣化を抑えて耐熱性を向上させるのである。
【0050】すなわち、SQ1 とSQ2 との規制に加えて、第1および第2の磁性薄膜の膜厚をそれぞれd2 およびd1 としたとき、4A ≦d2 <30A 、20A <d1 ≦200A かつd2 <d1 、より好ましくは、4A ≦d2 ≦28A 、22A ≦d1 ≦100A かつ1.05d2 <d1 に規制することが好ましい。d2 が30A 以上となると全体の比抵抗が増大し、結果的にMR変化率が小さくなってしまう。ただし、d2 が4A 未満では、前記のとおり連続膜の形成が不可能となる。d1 が20A 未満となると耐熱性が悪化する。
【0051】なお、d1 の上限は直線性の点で200A 、特に100A が望ましい。さらに、d2 ≧d1 となると、耐熱性が悪化し、製造プロセス中で熱が加わる工程を通過した後に、MR変化率が小さくなってしまう。
【0052】このように第1および第2の磁性薄膜の角型比と膜厚とを規制することにより、成膜直後の磁性多層膜は、より高いMR変化率とともに、0磁場にてリニアリティーがより高く、勾配のより大きいMR変化を示す。
【0053】また、本発明では、上記のとおりd2 、d1 を規制すれば、耐熱性が向上し、熱処理による特性劣化、特にMR変化率の劣化がきわめて少なくなる。すなわち、例えば真空中、350℃までの熱処理によってもMR変化率を熱処理前の70%以上に維持することができ、5%以上、特に6%以上のMR変化率を示す。この熱処理は前記のとおり、例えばMRヘッドの製造プロセスにて生じるものであるが、条件を選択すれば、印加磁場−3Oe〜+3OeまでのMR変化率の差で表わされる0磁場での傾きはかえって向上することもあり、熱処理前の25%減から100%増の値とすることができ、超高密度磁気記録の読み出し用MRヘッドに必要な0.5%以上、例えば1〜2%の傾きを熱処理後も示すことができる。なお、熱処理後、SQ1 は0.01〜0.5、SQ2 は0.7〜1.0の値を維持する。
【0054】本発明において、人工格子磁性多層膜の繰り返し積層回数nに特に制限はなく、目的とする磁気抵抗変化率等に応じて適宜選択すればよいが、十分な磁気抵抗変化率を得るためには、nを2以上にするのが好ましい。また、積層数を増加するに従って、抵抗変化率も増加するが、生産性が悪くなり、さらにnが大きすぎると素子全体の抵抗が低くなりすぎて実用上の不便が生じることから、通常、nを50以下とするのが好ましい。なお、長周期構造は、小角X線回折パターンにて、くり返し周期に応じた1次2次ピーク等の出現により確認することができる。
【0055】特に1Gbit/in2 を越えるような超高密度磁気記録に用いるようなMRヘッドに適用する場合には、上記nが5以下で、磁性多層膜を構成する各層は薄いほどよい。これは、シールド長が小さくなり、より高密度の信号読み出しが可能になるからである。しかし、あまり薄すぎるとそれぞれの層に要求される軟磁気特性や強磁性、反強磁性等の特性が失われてしまい、耐熱性も不良になる。本発明では磁性層の積層数を少なくすることを特徴とするが、この場合、各々の磁性層が十分に機能しないと良好な磁気抵抗効果特性は実現できない。また、磁性層の積層数が少ない磁性多層膜では、各々の層間にはたらく静磁結合および直接交換相互作用が実質的に小さくなるので、積層数が多く厚い磁性多層膜に比べ磁性層を厚くしてもよいが、各々の層厚があまり厚いと、2種の磁性層のスピンのなす相対角度によって伝導電子が散乱される確率が減ってしまい、磁気抵抗効果が逆に小さくなる。また、比抵抗自体も大きくなり、応用上都合が悪い。非磁性金属層が厚すぎると、伝導電子がほとんどこの非磁性金属層内を流れてしまい、磁性層で散乱される割合が減ってしまうので、MR変化率が小さくなってしまう。一方、非磁性金属層が薄すぎると磁性層間の磁気的相互作用が大きくなりすぎ、両磁性層の磁化方向が相異なる状態が生じにくくなってしまう。このようなことから、上記nが5以下の磁性多層膜では、第1の磁性層の厚さをd1 、第2の磁性層の厚さをd1 、非磁性金属層の厚さをdとしたとき、10A ≦d1 ≦80A 、20A ≦d2 ≦90A 、20A ≦d≦90Aとし、好ましくは20A ≦d1,d2,d≦80Aとし、より好ましくは20A ≦d1,d2,d≦70Aとする。なお、各層の厚さは、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、オージェ電子分光分析等により測定することができる。また、各層の結晶構造は、X線回折や高速電子線回折等により確認することができる。
【0056】伝導電子の散乱に寄与しているのは第1の磁性層と第2の磁性層の両者のスピンである。最も効率よく散乱が起きるのは、この両者のスピンの大きさが同程度のときである。つまり、層数N1 の第1の磁性層がもつ磁化の全量と、層数N2の第2の磁性層がもつ磁化の全量とが同程度であることがよい。N1 >N2 なので、第1の磁性層の1層あたりの磁化量を第2の磁性層の1層あたりの磁化量よりも小さくしたほうが、散乱がより効率よく行われる。具体的には、第1の磁性層1層あたりの磁化量をM1 、第2の磁性層1層あたりの磁化量をM2 としたとき、0.3≦M1 /M2 ≦0.8、好ましくは0.4≦M1 /M2 ≦0.8となるように各磁性層1層あたりの厚さを調整すれば、伝導電子の散乱効率が良好となる。すなわち、磁性多層膜中において伝導電子の散乱に寄与しない領域を減らすことができる。M1 /M2 は、各磁性層について磁化(単位体積あたりの磁気モーメント)と厚さとの積を求め、第1の磁性層についての積を第2の磁性層についての積で除すればよい。各磁性層の磁化は、前述した保磁力測定用のサンプルを用いて測定することができる。なお、例えば、複数の第1の磁性層がすべて同じ厚さではない場合には、1層あたりの磁化量は第1の磁性層の平均厚さを用いて求める。これは、第2の磁性層についても同様である。
【0057】なお、以上の説明では、磁性薄膜として保磁力の異なる2種類の磁性薄膜だけを用いているが、保磁力がそれぞれ異なる3種以上の磁性薄膜を用いれば、磁化方向が逆転する外部磁界を2箇所以上設定でき、動作磁界強度の範囲を拡大することができる。
【0058】基板材料と、上記人工格子をも含めた磁気抵抗効果多層膜を構成する材料との表面エネルギーの違いを緩和し、両者のぬれ性を向上し、広い範囲で平坦な界面をもった積層構造を実現させるため、下地層として、10〜100A 程度のCr、Fe、Co、Ni、W、Ti、V、Mnあるいはこれらの合金の薄膜を設けてもよい。さらに、最上層の磁性層(薄膜)の表面には、窒化ケイ素や酸化ケイ素等の酸化防止膜が設けられてもよく、電極引出のための金属導電層が設けられてもよい。
【0059】次に、本発明の磁気抵抗効果多層膜の製造方法について説明する。
【0060】磁気抵抗効果多層膜の製造にあたっては、まず、基板表面上に上記したような凹凸を形成する。基板としては、ガラス、ケイ素、Al2 3 −TiC、MgO、GaAs、フェライト、CaTiO等を用いることができる。次に、上記凹凸の例として、上記図1および図2に示した第1および第2形状基板の形成について説明する。
【0061】まず、図6を参照して、第1形状基板の形成について説明する。
【0062】まず、ステップS1で基板1の表面処理等の任意の処理工程のあと、その表面に硬化用レジストを塗布し、硬化用レジスト層3を形成する。上記処理工程としては、例えば、プラズマに曝すことによる表面のクリーニングや活性化、表面エネルギーを下げるための界面活性剤等でのクリーニングが挙げられる。また、硬化用レジストとしては、ノブラック系フォトレジスト、ポリイミド系フォトレジスト等を用いることが好ましい。
【0063】上記硬化用レジスト層3は、素子を作製する際の絶縁層を目的として形成されるものであり、その厚さは、薄い程望ましく、具体的には、0.005〜1.0μm程度であることが好ましい。
【0064】このように形成された硬化用レジストは硬化される。この硬化は、例えば、110〜400℃程度の温度でのキュアによる。
【0065】また、硬化用レジストの代わりに、Al2 3 、SiO2 等の絶縁層を物理成膜してもよい。
【0066】次に、ステップS2またはステップS3に移る。まず、ステップS2の方の工程について説明すると、上記硬化用レジスト層3の表面に、凸部形成用のレジストを塗布し、第2レジスト層4を形成する。この凸部形成用のレジストとしては、絶縁性かつ熱硬化性を有する材料で、上記硬化用レジストに対して、融点が低く、濡れ性が悪いものが好ましく、具体的には、高分子系絶縁材料やノブラック系レジスト等を使用することが好ましい。なお、この第2レジスト層4の厚さについては、後に説明する。
【0067】次いで、ステップS4で、上記第2レジスト層4を加熱し、レジスト材料を液状化し、その表面張力により、多数の微細な半球状の粒子5を形成し、そのまま乾燥することにより、粒子5を硬化レジスト層3上に固定化する。このとき、各粒子5の高さ(波の高さhと同じ)や分布密度(波の平均周期λと同じ)が、磁気抵抗効果多層膜の全厚Dとの関係を示す上記式(1)および(2)を満足するように、上記粒子を形成する。このため、上記第2レジスト層4の厚さは、このような粒子が形成できるような厚さに設定する。具体的には、この第2レジスト層4の厚さは、0.003〜1.0μm程度が好ましい。
【0068】以上により、上記第1形状基板を形成する。
【0069】一方、ステップS3の工程の場合は、上記硬化用レジスト層3の上に、金属、誘電体、絶縁体等の材料の溶解物を直接極薄膜状に被着させ、その材料のもつ表面張力により自然に多数の微細な半球状の粒子5を形成する。
【0070】上記金属としては、Au,Ag,Cu,Pt,W,Ti,Al,Mg,Mo,Zn,V,Hf,Zr,Cr等を、誘電体としては、Ta2 5 ,TiO2 ,BaTiO3 ,SrTiO3 等を、絶縁体としては、SiO、SiO2 Al2 3、ZnO、MgO等を好ましく用いることができる。
【0071】上記粒子の材料として金属を用いた場合には、この粒子の乾燥、固定化の後、ステップS5でその上に絶縁層を形成する。この絶縁層の材料は、上記の粒子で用いて望ましい絶縁材料を用いることができ、また、この絶縁層の厚さは、50〜500A程度であることが好ましい。
【0072】以上により第1形状基板が形成される。
【0073】一方、第2形状基板の作製は、図7に示すような工程で行なわれる。
【0074】まず、第1形状基板の作製の場合と同様、ステップS1およびステップS2で、硬化用レジスト層3の形成、および第2レジスト層4の形成を行なう。レジストとしては、上記第1形状基板の場合と同様のものを用いることができる。
【0075】なお、第2レジスト層4の厚さは、より詳細なパターンを形成する目的で、硬化用レジスト層3の厚さより、薄く形成する。
【0076】次いで、第2レジスト層4を、ステップS3でパターンニングする。このパターンニングは、ステッパー等により行うことが好ましい。このパターンニングにより、4角柱状の島状のレジスト部分4が所定の周期(あるいはピッチ)で基板1のXおよびY方向に配置された状態とする。
【0077】この後、ステップS4で、KOHやHF等のエッチング液によりエッチングを行い、XおよびY方向に延びるV型溝5を形成する。更に、ステップS5でエッチングを進めて、多数の微小な4角錐状の凸部6を形成し、残った第2レジストを除去して、第2形状基板を作製する。
【0078】以上のようにして作製された第1あるいは第2形状基板上に、ステップS6(図6および図7)で、磁性層(薄膜)と非磁性層(薄膜)を設層して、磁気抵抗効果多層膜を製造する。磁性層(薄膜)と非磁性層(薄膜)の設層(成膜)は、蒸着法、スパッタリング法、分子線エピタキシー法(MBE)等の方法で行う。上記の人工格子を製造する場合には、第1の磁性薄膜成膜時に、膜面内の一方向に好ましくは10〜300Oeの外部磁場を印加することが好ましい。これにより、SQ1 が低下し、Hkが大きくなる。
【0079】図8、図9には、本発明の磁気抵抗効果多層膜を用いて磁気抵抗効果素子、例えばMRヘッドを構成するときの例が示される。両図に示される磁気抵抗効果素子200は、上記の磁気抵抗効果多層膜mrまたは人工格子磁性多層膜101(以下、磁気抵抗効果多層膜mrを代表させて説明する)を絶縁層2内に形成して、磁気抵抗効果多層膜mrに測定電流を流すための例えばCu、Ag、Au等の電極203、203と、例えばTi等のシャント層202とを接続している。また、磁気抵抗効果多層膜mrは、例えばセンダスト、パーマロイ等のシールド206、206で被われている。さらに図9の例では、シャント層202下方に、例えばCoZrMo、NiFeRh等の比抵抗の大きな軟磁性材料のバイアス磁界印加層207が設けられている。ただし、本発明の磁性多層膜では、0磁場での立ち上がり特性が良好であるので、このバイアス磁界印加手段は設けなくてよい。
【0080】このような磁気抵抗効果素子の製造にあたっては、工程中パターニング、平坦化等の工程でベーキング、アニーリング、レジストのキュア等の熱処理を必要とする。しかし、本発明の多層膜は耐熱性が良好であるので、500℃以下、一般に50〜400℃、50〜350℃間程度の熱処理に十分対応できる。熱処理は通常真空中、不活性ガス雰囲気中、大気中等で行えばよい。
【0081】以上のような磁気抵抗効果素子を形成する際には、感磁部となるべき、すなわち、磁気抵抗効果多層膜を形成する部分のみを、上記図1または2に示したような基板形状とし、この上にのみ磁気抵抗効果多層膜を形成する。もしくは、基板全面に凹凸を形成し、その上にさらに磁性多層層膜を形成したのち、所望の素子パターンをレジストで保護し、その他不要な部分の多層膜を、イオンミリング等にて除去じてもよい。感磁部分以外の部分には、凹凸を設けず、電流の流れを妨げないようにすることが望ましい。
【0082】
【実施例】以下、本発明を具体的実施例によりさらに詳細に説明する。
【0083】基板としてAl2 3 −TiC基板を用い、実施例のサンプルNo. 1ないし10用として、その表面上に、Auをゆっくりと蒸着し、表1に示すような波の平均高さh、平均周期λとなるように、粒径および密度を調節した多数の半球状の微小凸部を形成した。粒径は主に、被着速度と被着時間とによりコントロールし、密度は主に、被着時間によって調節した。その後、SiO2 層を200A形成し、絶縁層とした。一方、比較例のサンプルNo. 11(磁気抵抗効果多層膜の各層の界面がうね状のもの)用として、上記図2に示したの第1形状基板の製造方法に準じた方法で、基板上に、平均高さhが400Aで平均周期λが350Aの平行な多数のうね(うねに交差する方向の垂直断面形状のみが三角波形状であり、その方向のみに高さが変化するもの)を形成した。また、比較例のサンプルNo. 12〜14(磁気抵抗効果多層膜の各層の界面が平坦なもの)として、上記の基板をそのまま用いた。
【0084】次いで、以上のようにして作製した基板を超高真空蒸着装置の中に入れ、10-9〜10-10 Torrまで真空引きを行った。基板温度は室温に保ったまま基板を回転させながら、その上に、表1に示すような[Ni0.8 Fe0.2 (厚さd2)/Cu(厚さd)/Co(厚さd1)/Cu(厚さd)]×n(繰り返し周期)の組成をもつ、全厚がD(nを変えることにより、調節した)の人工格子磁性多層膜のサンプルNo. 1〜14を作製した。この際、磁界を基板の面内方向に印加しながら、約0.3A /秒の成膜速度で、分子線エピタキシー法(MBE)による蒸着を行った。なお、d1およびd2は、10〜120Aの間の値とした。
【0085】
【表1】

【0086】各サンプルについての磁気抵抗変化率および磁気抵抗変化の傾きを測定した。その結果を表1に示す。
【0087】磁化およびB−Hループの測定は、振動型磁力計により行った。抵抗測定は、表1に示される構成の試料から0.5×10mmの形状のサンプルを作成し、外部磁界を面内に電流と垂直方向になるようにかけながら、−300〜300Oeまで変化させたときの抵抗を4端子法により測定し、その抵抗から比抵抗の最小値ρsat およびMR変化率ΔR/Rを求めた。MR変化率ΔR/Rは、最大比抵抗をρmax 、最小比抵抗をρsat とし、次式により計算した:ΔR/R=(ρmax −ρsat )×100/ρsat (%)。また、印加磁場−3Oe〜3OeまでのMR変化率の差を求め、これを0磁場での傾きとし、立ち上がり特性を評価した。
【0088】
【発明の効果】本発明によれば、数Oe〜数十Oe程度の小さい外部磁場で数%〜数十%の大きい抵抗変化率をもつ磁性多層膜が得られる。しかも、0磁場での立ち上がり特性はきわめて良好である。




 

 


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