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発明の名称 層状構造酸化物および二次電池
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平8−55624
公開日 平成8年(1996)2月27日
出願番号 特願平6−247281
出願日 平成6年(1994)9月14日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】石井 陽一
発明者 丸山 哲 / 近藤 亮
要約 目的
層状構造酸化物における結晶子サイズを大きくし、この化合物の特性を向上させる。特に二次電池の正極材料に用いた場合の放電容量を大きくする。

構成
式AMO2 (A=Li、Na、M=Co、Ni、Fe、Cr)で示される組成を含む層状構造酸化物であって、添加元素ZとしてBi、Pb、BをZ/Mの原子比が0.1以下となるように添加して焼成する。
特許請求の範囲
【請求項1】 式AMO2 (ここで、AはLiおよびNaのうちの1種以上を表わし、MはCo、Ni、FeおよびCrのうちの1種以上を表わす。)で示される組成を含む層状構造酸化物の結晶子を有し、この結晶子の表面または結晶子間にBi、PbおよびBから選ばれる少なくとも1種の添加元素Zが酸化物の形で存在する層状構造酸化物。
【請求項2】 前記Aの原料化合物および前記Mの原料化合物と、前記層状構造酸化物の原料粉体との少なくとも一方に対し、前記Zを添加して焼成した請求項1の層状構造酸化物。
【請求項3】 前記Mに対する前記Zの原子比Z/Mが0.1以下である請求項1または2の層状構造酸化物。
【請求項4】 前記Z/Mが0.0001以上である請求項1〜3のいずれかの層状構造酸化物。
【請求項5】 さらに前記元素AをA/Zが2以下となるように添加して焼成した請求項1〜4のいずれかの層状構造酸化物。
【請求項6】 結晶子の平均径が2μm 以上である請求項1〜5のいずれかの層状構造酸化物。
【請求項7】 X線回折スペクトルの(003)ピークと(104)ピークとの強度比I003 /I104 が2以上である請求項1〜6のいずれかの層状構造酸化物。
【請求項8】 前記焼成を1000℃以上の温度で行う請求項7の層状構造酸化物。
【請求項9】 前記焼成を加圧下で行う請求項7または8の層状構造酸化物。
【請求項10】 さらに、100〜500℃の温度で加熱処理を行った請求項1〜9のいずれかの層状構造酸化物。
【請求項11】 前記加熱処理により、抵抗率を増加させ、抵抗率の温度変化のヒステリシスを減少させた請求項10の層状構造酸化物。
【請求項12】 請求項1〜11のいずれかの層状構造酸化物を正極に用いた二次電池。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、配向したLiCoO2 等の層状構造酸化物の製造方法、およびこの層状構造酸化物とこれを用いた二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、層状化合物はその特異な性質により諸特性との関連において注目されてきた。すなわち、これらの化合物は層状構造を有することにより、その層間へのゲスト物質の挿入反応を可能にし、また結晶構造上の異方性から電気特性に異方性を示すからである。このような性質を利用した適用例としては、リチウムイオンの層間挿入を利用したリチウム電池正極や配向させた超伝導酸化物を用いた線材が挙げられる。
【0003】こうした層状化合物は、LiNiO2 を例にすると図11に示される構造をもち、図11に示される層間をイオンが二次元的に移動することによってLiイオンの挿入反応が可能になる。従って、二次電池正極材料として用いるような場合、この特徴を最大限に活用する方が望ましく、この化合物が必要な限り連続して存在(例えば単結晶として)することが理想的である。反対に多結晶体である場合は境界領域がイオンの移動の阻害となる。
【0004】一方、近年電子機器の軽量化およびコードレス化に伴いその駆動用電源として、小型軽量で高エネルギー密度を有するリチウム二次電池の研究開発が進んでおり、一部で実用化されている。こうしたリチウム二次電池の正極材料として、AMO2 (A=Li、Na、M=Co、Mn等の遷移金属)等の層状構造複合酸化物を用いることが提案されている。例えば、特公昭63−59507号公報には、LixMyO2 (MはCoまたはNi、xは0.8以下であり、yはほぼ1に等しく、イオン導電体中のLi+ 陽イオン空格子点がLi+ 陽イオン抽出によってつくられている。)が、また特開平4−253162号公報には、LiCoO2 のCoの一部をPb、Bi、Bの中から選ばれた少なくとも1種の元素で置換したもの(実施例に示されるものはLiCo0.90Pb0.102 の組成やこの組成においてPbのかわりにBi、Bとしたもの)が、さらに特開平5−290849号公報には、原料粉末をバインダーと共に混合し、造粒し、焼成して得られたLiCoO2 が示されている。このなかで、特開平5−290849号公報では焼結前段階における造粒工程により焼結体粒径(必ずしも単結晶とは限らない)を増加させることが試みられており、これにより自己放電率を低減させ、特性の向上を図ることができることが示されている。
【0005】上記公報では特性が向上する理由づけはなされていないが、粒径が大きくなると自己放電率が低下するのは、焼結体粒子中から外へ拡散するリチウムイオンの割合が減少するからであることが類推できる。従って、層状化合物において、この考えを適用すれば、結晶子(マイクロクリスタライト)の大きさ(結晶子サイズ)を増すことによって特性の向上を図ることができると推定できる。
【0006】以上述べてきたように、層状化合物においては、正極材料としてその特徴を最大限に活用するためには、結晶子サイズを増大し、さらにはこの化合物を必要なかぎり連続して存在させることが重要であることが判明した。すなわち、個々の粒子の結晶子化を促進し、かつ結晶子サイズを増大させることは重要であると考えられ、本発明者らはこの点に着目し、従来にない結晶子化した層状化合物の開発を試みた。
【0007】さらに、電池特性としてサイクル特性が挙げられ、充放電特性とともに、この特性を向上させることが望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、第1に、層状構造化合物として利用されているAMO2 酸化物において、この酸化物の結晶子サイズを増加させ、それに伴う特性(例えば電池充放電特性、イオン導電性、電荷移動性等)の向上を図ることができ、二次電池の正極材料、固体電解質材料、ガスセンサー材料などの用途が期待できる層状構造酸化物を提供することである。第2に、二次電池の正極材料として用いたとき、さらにサイクル特性の向上を図ることができる層状構造酸化物を提供することにある。第3に、上記の層状構造酸化物を正極に用いて、充放電特性に優れる二次電池を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
(1)式AMO2 (ここで、AはLiおよびNaのうちの1種以上を表わし、MはCo、Ni、FeおよびCrのうちの1種以上を表わす。)で示される組成を含む層状構造酸化物の結晶子を有し、この結晶子の表面または結晶子間にBi、PbおよびBから選ばれる少なくとも1種の添加元素Zが酸化物の形で存在する層状構造酸化物。
(2)前記Aの原料化合物および前記Mの原料化合物と、前記層状構造酸化物の原料粉体との少なくとも一方に対し、前記Zを添加して焼成した上記(1)の層状構造酸化物。
(3)前記Mに対する前記Zの原子比Z/Mが0.1以下である上記(1)または(2)の層状構造酸化物。
(4)前記Z/Mが0.0001以上である上記(1)〜(3)のいずれかの層状構造酸化物。
(5)さらに前記元素AをA/Zが2以下となるように添加して焼成した上記(1)〜(4)のいずれかの層状構造酸化物。
(6)結晶子(マイクロクリスタライト)の平均径が2μm 以上である上記(1)〜(5)のいずれかの層状構造酸化物。
(7)X線回折スペクトルの(003)ピークと(104)ピークとの強度比I003 /I104 が2以上である上記(1)〜(6)のいずれかの層状構造酸化物。
(8)前記焼成を1000℃以上の温度で行う上記(7)の層状構造酸化物。
(9)前記焼成を加圧下で行う上記(7)または(8)の層状構造酸化物。
(10)さらに、100〜500℃の温度で加熱処理を行った上記(1)〜(9)のいずれかの層状構造酸化物。
(11)前記加熱処理により、抵抗率を増加させ、抵抗率の温度変化のヒステリシスを減少させた上記(10)の層状構造酸化物。
(12)上記(1)〜(11)のいずれかの層状構造酸化物を正極に用いた二次電池。
【0010】
【作用】本発明では、AMO2 (A;LiおよびNaのうちの1種以上、M;Co、Ni、FeおよびCrのうちの1種以上)で示される組成を含む層状構造酸化物を製造するに際し、AMO2 で表わされる組成および結晶構造を有する酸化物の粉末、あるいはその原料粉末を出発原料とし、これにBi、PbおよびBから選ばれる少なくとも1種の添加元素Zを、MとZとの原子比が所定値となるように添加し焼成する。この結果、生成するAMO2 層状構造酸化物の結晶子化および結晶子の成長を促進させることができ、その特性を向上させることができる。
【0011】このような化合物は、原料化合物を焼成して得られるが、この際の焼結過程を詳細に検討した結果、AMO2 で表わされる組成および結晶構造を有する酸化物の粉末、あるいはその原料粉末に対し微量添加物としてBi、Pb、Bを添加することにより低融点のガラス成分を再焼結過程に存在させることができ、これにより焼結体中のAMO2 層状化合物結晶子の生成および成長を著しく促進させることができることを見出した。
【0012】AMO2 で表わされる組成および結晶構造を有する酸化物の粉末、あるいはその原料粉末にBi等を酸化物の形で微量添加することにより、無添加の従来のものに比べ巨大化した六角板状の形状をもつLiCoO2 等のAMO2 の結晶子が焼結体中に観察される。この結果、本発明の層状構造酸化物を二次電池の正極材料とした場合、充放電特性に優れた二次電池が得られる。
【0013】また、ビスマス等のZの添加を行った上で、1000℃以上の温度で焼成することにより部分的あるいは全域に亘って層状化し、結晶化し、配向化したより大きな径の不定形の結晶子粒子が得られる。また加圧焼成によっても同様に配向化した結晶子粒子が得られる。従来のものは配向性が小さいが、配向化させることにより充放電容量が増加する。近年負極材料として用いられている炭素材料の一つにメソフェーズカーボンと呼ばれるものがある。これはカーボン微粒子内部がグラファイト化したもので、結晶子化および配向化しており、リチウム二次電池負極材料として用いると充放電容量が増加することが示されており注目されている。これは各粒子内部の配向性および結晶性が増加して、粒子の安定性およびリチウムイオンの拡散が促進されるからであろうと考えられ、これと同様に、配向した結晶子の二次粒子あるいは結晶子化した二次粒子の作製を検討した結果、ビスマス等のZを添加した上で、かつ1000℃以上の条件や加圧下で焼成することにより結晶子化および配向化した粒子を得ることが可能となった。
【0014】本発明の層状構造酸化物は焼成して得られるが、得られた焼結体をさらに100〜500℃の温度で加熱処理を行うことで、二次電池の正極材料として用いたとき、二次電池のサイクル特性が向上する。サイクル特性が劣ることについて正極活物質の特性との関連を検討した結果、抵抗率が低いとサイクル特性が劣ることを見い出した。この知見に基づき、抵抗率を増加させることについて種々の検討を行ったところ、上記の加熱処理が有効であることがわかった。上記の加熱処理によって、LiCoO2 等の層状構造酸化物の抵抗増加が起こるのは、例えばLiCoO2 において、当初結晶中のLi、Coの秩序構造が乱れて低抵抗化していた結晶が上記の加熱処理を行うことにより秩序が回復したものと考えられる。従って、上記の加熱処理により一旦上昇した抵抗は、その後、維持され、加熱処理を施す以前の層状構造酸化物の抵抗率の温度変化においてみられたヒステリシス(履歴現象)は減少し、観測されなくなる。
【0015】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0016】本発明における層状構造酸化物、そして本発明の一実施態様で出発原料として用いる層状構造酸化物は、AMO2 で示される基本組成を含有する酸化物である。そして、このAMO2 あるいはAおよびMの原料化合物に対し、Bi、PbおよびBのうちの少なくとも1種の添加元素Zを添加して製造される。
【0017】ここで、AはLiおよびNaのうちの1種以上を表わし、LiとNaとが任意の割合で混在していてもよい。Aとしては、なかでもLiを必須として20〜100%含むものであることが好ましい。
【0018】Mは、Co、Ni、FeおよびCrのうちの1種以上を表わし、これらの元素の2種以上が任意の割合で混在していてもよい。
【0019】このような化合物は層状構造(図11参照)を有することが知られており、本発明においてもX線回折分析(XRD)によりこの構造が確認される。
【0020】本発明においては、上記のように、Bi、PbおよびBのうちの少なくとも1種の添加元素Zを添加するが、このときの添加量は、前記Mに対するZの原子比Z/Mが0.1以下となるようにする。このようにZを添加することによって、本発明の層状構造酸化物中で粒子の結晶子化が進み、さらに結晶子の成長が促進され、結晶子サイズが大きくなる。また、添加元素Zによる第2相の出現もなく単結晶として存在することが可能になる。これに対し、Z/Mが0.1をこえるようなZの添加を行うと、添加元素Zによる第2相成分が存在するようになって単結晶として存在することが不可能になり、この第2相成分が不純物となって特性が劣化する。
【0021】本発明におけるZ/Mの下限には特に制限はないが、実用上0.0001であり、さらには0.0005、特には0.001であることが好ましい。ただし、Z/Mが0.0001未満(ZがMに対して100ppm 未満)の場合においても局所的には、結晶子化が進行していることが確認できる。これは、フェライトやZnOバリスタにおいて、添加量が100ppm 未満の場合にも、添加元素が有効に作用することから推量すれば妥当な結果であるといえる。以上のことから、Z/Mは0.001〜0.1、さらには0.003〜0.07、特には0.008〜0.04の範囲にあることが好ましい。添加元素Zは、1種のみを添加しても2種以上を併用してもよいが、特にBiの添加を必須とすることが好ましい。
【0022】本発明における層状構造酸化物は、層状構造酸化物を出発原料としたときでも、また後述のAおよびMの化合物を原料としたときでも、Zを添加して焼成したのちに、基本組成物AMO2 の層状構造を有しており、このことはX線回折分析の結果から容易に確認することができる。また、添加元素Zは、ほぼ添加量を維持したまま焼成後の層状構造酸化物中に存在しており、添加元素Zの存在は、最終生成物である層状構造酸化物を蛍光X線分析することにより確認することができる。一般に、Zの含有量は、添加量の原子比の80〜100%程度である。また最終生成物中のA/Mの原子比は百分率で表わして通常15%〜110%程度である。なお、添加元素Zを添加しない場合、あるいは添加量が著しく少ない場合は、結晶子はほとんど観察されず、従って特性の改善もみられない。
【0023】最終生成物としての層状構造酸化物は、微小な空隙を介して相互に連続して存在する六角板状ないしそれに近い形に成長した結晶子を含有していることが、走査型電子顕微鏡(SEM)により容易に観察できる。すなわち、通常は結晶子粒子が2次粒子化している。
【0024】最終生成物としての層状構造酸化物中に含有される結晶子は、その平均径が2μm 以上、特に2.5μm 以上、さらに3μm 以上であることが好ましい。その上限には、特に制限はないが、通常、1000℃未満の焼成温度や、非加圧下の焼成では10μm 程度、特に8μm 以下、さらに6.5μm 以下である。また、結晶子の平均板状比(最大径/厚さ)は2〜10程度である。
【0025】この場合、結晶子の平均径は、SEM観察下で、板状、特に六角板状に成長している結晶子を10〜20個選択し、それらの結晶子の主面の最大径をSEM観察により求め、その平均値として算出すればよい。
【0026】一方、後述のように、Zの存在下、1000℃以上の温度で焼成したり、加圧下で焼成を行うと、結晶子が溶融し、それらが凝集し、さらに巨大化した結晶子粒子となる。この粒子は、2次粒子内の結晶子間で溶融が生じ、通常不定形化しており、その内部の一部あるいは全部は部分的あるいは全域に亘って結晶化、層状化しており、しかも配向化が生じている。このときの粒子もこの明細書では結晶子と称するが、そのサイズは10μm 以上、0.5mmにも及ぶ。
【0027】他方、前記の比較的小径の結晶子が生成する条件では、配向化はほとんど生じず、結晶子の生成および成長のみで充放電容量が増大している。この場合、配向度は、X線回折スペクトルのAMO2 の(003)ピーク(例えばLiCoO2の場合は2θ=18.94°付近)と(104)ピーク(例えばLiCoO2 の場合は2θ=45.26°付近)の強度比I003 /I104 を指標とすればよいが、その値は0.5〜2程度である。しかし、さらに結晶化が部分的あるいは全域に亘って生じる不定形の結晶子となる条件ではI003 /I104 は2以上、特に3〜50程度、さらに5〜20程度が得られる。
【0028】本発明によって得られる層状構造酸化物では、そのX線回折分析の結果から、主成分である純粋なAMO2 組成物の他に、添加元素Zの酸化物(例えばBi23 )の存在が確認される。従って、主組成物のAMO2 の単結晶結晶子が生成するほか、少量のZの酸化物やAとZとの複合酸化物が結晶子間に生成するものである。すなわち、ZはMを一部置換した形でAMO2 結晶子中に存在するのでなく、Z自体の酸化物やAとの複合酸化物を何らかの形で形成し、前述したように、これが焼結過程でガラス相として結晶子間に存在し、結晶子の成長のための物質移動を容易にし、AMO2 の結晶子の成長に寄与していると考えられる。また、さらに結晶子を凝集化させ、巨大化させた場合にも、結晶子の表面や、結晶子間にはZがそれ自体の酸化物やAとの複合酸化物の酸化物の形で存在する。すなわち、巨大化させる場合においても、結晶子間の第2相が存在することが重要で、結晶子の凝集化を促進させる。通常こうした第2相が介在しないものは巨大化が起こらない。
【0029】なお、特開平4−253162号公報には、前述のとおり、LiCoO2 のCoの一部をPb、Bi、Bの中から選ばれた少なくとも1種の元素で置換したものが開示されている。そして、その実施例には、LiCo0.90Pb0.102 とこの組成においてBiまたはBをPbと代替した組成が示されている。上記公報には、Coの一部をPb等で置換すると明記されており、本発明による添加元素の効果と全く異なっている。また、Z/Mの値も本発明の範囲とは全く異なる。従って、上記公報に開示された発明と本発明とは、構成のみならず、その添加元素の作用および効果が全く異なるものである。
【0030】また、特公昭63−59507号公報には、LixMyO2 (MはCoまたはNi、xは0.8以下であってyはほぼ1に等しく、イオン導電体中のLi+ 陽イオン空格子点がLi+ 陽イオン抽出によって作られている。)が、また特開平5−290849号公報には、原料粉末を造粒し、その後に焼成して得られたLiCoO2 が、それぞれ開示されている。しかし、これらのものでは、いずれにおいても微量元素の添加については示唆すらされていない。従って、上記公報に開示された発明と本発明とは明らかに異なるものである。
【0031】本発明の層状構造酸化物を製造するには、Aの化合物とMの化合物の原料化合物の原料粉末を所定量混合したものに対し、あるいはこれを一旦焼成して得られたAMO2 に対し、さらに場合によってはこれらの混合物に対し、前記条件を満たすように、後述のZの化合物の原料粉末を添加し、これを焼成すればよく、具体的には、公知のセラミックス製造方法を用いればよい。
【0032】原料粉末として用いられるAMO2 は以下のように合成される。Aの化合物およびMの化合物としては、酸化物や炭酸塩などが挙げられる。具体的には、Aの化合物として、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムなどが用いられる。また、Mの化合物としては、塩基性炭酸コバルト、酸化コバルト(Co34 等)、炭酸ニッケル、酸化ニッケル、酸化鉄(Fe23 、Fe34 等)、酸化クロム(Cr23 等)などが挙げられる。なお、これらの原料において炭酸塩等の塩を用いるときは予め溶液化して用いることもできる。
【0033】これらの原料酸化物粉末の形状は、粒状、鱗片状、フレーク状等のいずれであってもよく、その平均粒径は1〜2μm 程度のものを用いる。このときの平均粒径は、粉末形状が球でないときには、投影面積を円に換算してその直径を求めて算出したものである。
【0034】本発明では、これらの原料粉末を混合する。混合は湿式、乾式のいずれであってもよいが、通常は湿式混合とする。湿式混合は、イソプロピルアルコール等の溶媒を用い、アルミナボールあるいはジルコニアボール、あるいはこれらに樹脂等をライニングしたボールを使用して行えばよい。
【0035】この際、第1の態様では、所定の量比のAの化合物とMの化合物とに対して、Zの化合物を添加して混合する。Zの化合物としては、酸化ビスマス(Bi23 )、二酸化鉛、酸化ホウ素(B23 )などの酸化物や炭酸塩を用いればよい。なお、これらの原料においても炭酸塩を用いるときは、予め溶液化して用いることもできる。この際、Zの化合物に加え、さらに前述のAの化合物を同時添加することもできる。Aの化合物添加によりAとZとの複合酸化物の結晶子間生成量が増大し、AMO2 の結晶子化を促進させることに寄与する。
【0036】Li等のAを添加する場合、あえて後添加しない場合もほぼ同等の効果が得られる。また、過剰のLiが最終的に存在したと仮定しても、水洗により除去可能である。Bi等のZ添加量が増加するにつれて、LiBiO2 成分も生成されやすくなり、Li欠損型のAMO2 になることが予想されるが、Li等の後添加はこの欠損を防止する。しかし、Liを添加しないときにも最終的には正極として機能する。上記の範囲のBi添加量ではLiMO2 の結晶構造が保てない程度の欠損型のAMO2 は生成しないからである。なお、Aの添加量はA/Zで2以下、特に1.7以下、一般に1.2〜1.5であることが好ましい。なお、添加するZやAの化合物の平均粒径は0.5〜2μm 程度とする。
【0037】その後、この混合した原料を乾燥し、粉砕し、仮焼を行う。仮焼は、酸化性雰囲気中(空気中あるいは酸素気流中)で、500〜700℃程度の温度で2〜15時間程度行う。
【0038】このようにして得られた仮焼粉を、そのままあるいは適宜成形したのち、焼成する。焼成は、酸化性雰囲気中で通常700〜1000℃、特に750〜950℃程度の温度で2〜80時間程度行う。また、焼成温度を1000℃以上、特に1000〜1200℃、特に1000〜1100℃とすれば、結晶化と配向化とを行うことができる。
【0039】また、本発明では、単に混合するかわりに、混合の際にバインダー(例えばポリビニルアルコール)を加え湿式で造粒を行う造粒法を適用してもよい。バインダー量は一般に10wt% 以下とする。そして、このように造粒によって得られた顆粒を上記と同条件で焼成すればよい。さらにまた、焼成に際しては加圧を行うこともできる。加圧は10〜2000kg/cm2、特に50〜500kg/cm2の圧力でホットプレス、熱間静水圧加圧等を用いればよい。これによっても結晶化と配向化とを行うことができる。
【0040】あるいは第2の態様では、Aの化合物とMの化合物とを混合し、これを、そのままあるいは適宜成形したのち、焼成する。焼成は、酸化性雰囲気中で600〜950℃程度の温度で2〜80時間程度行う。酸化性雰囲気としては、酸素分圧0.1atm 以上、特に0.2〜1atm が好ましい。
【0041】その後粉砕して粉体を得る。得られた層状構造酸化物AMO2 を含有する一次粒子粉体の平均粒径は、一般に0.1〜1μm 、特に0.5〜1μm とする。また、原料粉体AMO2 を得る方法としては、共沈法や、凍結乾燥法あるいは超音波噴霧法等の微粉化プロセスを用いてもよい。
【0042】このようにして得られたAMO2 の粉体に対してZの化合物を前述の添加量添加して混合する。あるいはさらにAの化合物を前記の量添加する。そして、前記の条件で焼成する。なお、場合によっては、AMO2 粉体、Aの化合物、Mの化合物を所定の比となるように混合し、これにZの化合物やAの化合物を添加して混合して焼成してもよい。この場合、1μm 程度のAMO2 の核を中心とした結晶子化が起こる。
【0043】また、この場合も、加圧を行ってもよく、あるいは単に各成分を混合するかわりに、混合の際にバインダー(例えばポリビニルアルコール)を加え湿式で造粒を行ってもよい。そして、混合物を焼成する。このようにして得られた焼結体は、前記のとおり、所定サイズの結晶子の存在が確認されるものである。
【0044】上記のようにして得られた層状構造酸化物は、100〜500℃、さらには120〜400℃、より好ましくは120〜300℃、特に150〜250℃の温度で加熱処理に供することが好ましい。このような加熱処理により層状構造酸化物の結晶構造の秩序の乱れが解消されて抵抗が増加し、この結果二次電池の正極活物質として用いたとき、二次電池のサイクル特性が向上する。これに対し、加熱温度が100℃未満ではサイクル特性改善の効果がみられず、500℃をこえる加熱処理を行っても効果の向上はみられない。
【0045】上記の加熱処理によって一旦増加した抵抗は、その後一定値を示すようになる。また、初回の加熱処理においてみられた抵抗率の温度変化におけるヒステリシス(履歴現象)は減少し、観測されなくなる。加熱処理は、通常、1回のみで十分であり、1回の加熱処理によって上記のヒステリシスは観測されなくなるが、上記のヒステリシスが観測されなくなるまで、加熱処理を繰り返せばよい。
【0046】上記温度に達するまでの昇温速度には特に制限はない。また、室温に戻すためには自然放冷するなど、その降温速度にも特に制限はない。
【0047】また、上記温度における保持時間にも特に制限はなく、1分〜24時間程度とすればよいが、通常10分〜1時間程度とすることが好ましい。
【0048】加熱処理を行うことによって、室温(15℃〜30℃)における抵抗率がほぼ一桁上昇する。
【0049】本発明の二次電池は、上記の層状構造酸化物を正極材料として用いたものであり、他の構成については限定されず、種々のものであってよい。
【0050】通常、正極は、本発明の製造方法による層状構造酸化物を粉末として適宜導電助剤(例えばアセチレンブラック)、バインダー(例えばテトラフルオロエチレン)等を混合して得られる正極合剤を用いて加圧成形、塗布等の方法で形成すればよい。層状構造酸化物量は60〜90wt% 程度とし、導電助剤は5〜20wt%、バインダーは5〜20wt% 程度とする。また、負極材料としては、リチウム金属、リチウム合金(Li−Al、Li−Sn、Li−Pb等)、リチウムイオン挿入グラファイトなどを用いればよい。
【0051】電解液には、有機溶剤に電解質を溶解したものを用いることができる。有機溶剤としては例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、置換テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ピランおよびその誘導体、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等のエーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の3置換−2−オキサゾリジノン類が挙げられ、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。また電解質としては、過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウム、リンフッ化リチウム、塩化アルミン酸リチウム、ハロゲン化リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等を使用することができる。
【0052】また、このような電解液に代えて固体電解質を使用してもよい。電池の形状についても特に制限はなく、円筒形、角形、コイン形、ボタン形等種々の形状にすることができる。
【0053】本発明の二次電池は放電容量が1サイクル当り130〜150Wh/kg 、充放電効率が90%以上であり、二次電池として優れた性能を有するものである。このときの放電容量は、充電上限電圧を4.1V とし、上限電圧に達した後、充電時間を10時間として4.1V で定電圧充電を行い、次に放電の下限電圧を3.1V として求めたものである。
【0054】また、前記のように加熱処理を行った層状構造酸化物を正極材料に用いた場合、充放電サイクルに伴う容量変化が少なくなりサイクル特性が向上する。
【0055】本発明の層状構造酸化物は、上記のように、アルカリイオンの酸化物結晶格子中への挿入反応を利用した電池正極材料とできるほか、アルカリイオン導電性を利用した固体電解質を用いた固体電池、さらにはコバルト酸化物およびニッケル等の酸化物との接合を利用したガスセンサーに用いることができる。
【0056】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0057】実施例1炭酸リチウム(平均粒径2μm )81.29g と塩基性炭酸コバルト(平均粒径2μm )260.8g とに、酸化ビスマス(平均粒径2μm )を、Bi/Coの原子比が0.01となるように添加し、これらのものをボールミル(アルミナボールを使用)によりイソプロピルアルコール50g を加えて湿式混合した。
【0058】この混合物を乾燥し、粉砕したのち、空気中で、588℃の保持温度で10時間仮焼を行った。こうして得られた仮焼粉を成形圧力1ton/cm2 で成形し、電気炉にて、焼成雰囲気を空気とし、850℃の保持温度で20時間焼成した。これを焼結体サンプルNo. 1とする。サンプルNo. 1において、Biを添加しないものとするほかは同様にしてサンプルNo. 2を作製した。
【0059】サンプルNo. 1、No. 2についてSEM観察を行った。このときのSEM写真を図1、図2にそれぞれ示す。図1から明らかなように、ビスマス添加により板状に成長したLiCoO2 が観測される。これに対し、ビスマスを添加しないサンプルでは結晶子はほとんど観察されない(図2)。
【0060】また、サンプルNo. 1の結晶子の平均径(平均結晶子径)は4.5μm であった。このときの平均径は、SEMを用い六角板状に成長している結晶子を選択しその最大径を結晶子径とし、試料内の結晶子の平均値を算出して求めた。
【0061】さらに、サンプルNo. 1のX線回折分析を行った。結果を図3に示す。このX線回折結果では純粋なLiCoO2 が観測され、またBi23 も検知された。従って添加したビスマスは、何らかの形で酸化物やリチウムとの複合酸化物を形成し粒界に偏析するなどして結晶子の成長のための物質移動を容易にしたものと考えられる。
【0062】さらに、サンプルNo. 1では蛍光X線分析によりBiの存在が確認された。また、サンプルNo. 1、No. 2について、焼結密度を求めたところ、サンプルNo.1では、3.55g/cm3 、サンプルNo. 2では3.40g/cm3 であり、後述のように、この組成域では焼結密度は無添加時に比べ若干増加傾向にあるが、両者の差は小さい。また収縮率も90%前後であり、焼結が進んだというよりも結晶子サイズのみ増加したと考えられる。
【0063】なお、上記の焼結密度および収縮率は以下のようにして求めたものである。
【0064】焼結密度アルキメデス法により求めたペレット単位体積当りの重量である。
【0065】収縮率直径10mm、厚さ3mmの成形体の焼成後の直径と成形時の直径とを求め、成形時の直径に対する焼成後の直径の比を百分率で表わしたものである。
【0066】実施例2実施例1において、Bi/Coの原子比が0.0001、0.001、0.03、0.05、0.1、0.3となるようにするほかは同様にしてサンプルを作製した。これらのサンプルを順にサンプルNo. 3〜No. 8とする。これらのサンプルでは、蛍光X線分析によりBiの存在が確認された。
【0067】これらのサンプルNo. 3〜No. 8について、実施例1と同様にSEM観察を行った。これによれば、サンプルNo. 3〜No. 7では結晶子が観察されたが、Bi/Coが0.3のサンプルNo. 8では、実施例1のサンプルNo. 1のような六角板状に成長した結晶子は観察されなかった。また、X線回折の結果から、サンプルNo. 8では、明らかに単相ではなく、LiBiO2 が共存していることがわかった。
【0068】実施例1のサンプルNo. 1およびサンプルNo. 3〜No. 7における結晶子の平均径を求めた。また、サンプルNo. 2、No. 8では結晶子の存在がみられないため、サンプル中の結晶の平均径を求めた。これらの結果に基づき、Bi/Coの原子比に対する平均結晶径の関係を図4に示した。
【0069】また、図5には、サンプルNo. 1〜No. 8の焼結密度から、Bi/Coの原子比に対する焼結密度の関係を示した。
【0070】図4から、平均結晶子径が、Biの添加量の増加とともに増加していることがわかる。また、図5からは、Bi/Coが0.1付近までの範囲ではBiの添加量の増加にともない焼結密度は増加するが、0.01付近までの範囲では、その増加がわずかであること、および0.1付近をこえると、反対に焼結密度が減少することがわかる。0.1付近をこえたときの焼結密度の減少はBiの蒸発によると考えられる。
【0071】以上のことから、Bi/Coが0.01付近の範囲までのBi添加は焼結密度の増加には寄与せず、結晶子のサイズの増加に寄与していると考えられる。そして、Bi/Coが0.1までは、添加元素Biは結晶子サイズと焼結密度の増加の両方に寄与すると考えられ、さらに、この範囲ではBi/Coが0.3のときに観察される第二相成分の存在も無視できる。
【0072】従って、Bi/Coが0.1以下であれば、LiCoO2 を基本組成とする層状構造酸化物では、結晶子のサイズの増加が期待でき、さらに、このような化合物において特性を劣化させると考えられる第二相成分の影響も抑制されると推定される。これらの結果から、層状構造酸化物の特性の向上は、Bi/Coが0.1以下が妥当であると考えられる。
【0073】実施例3実施例1で作製したサンプルNo. 1を正極材料としてリチウム電池系を作製した。
【0074】正極は、以下のように作製し、負極にはリチウム金属、電解液は、電解質として過塩素酸リチウム(LiClO4 )を用い、1MのLiClO4 プロピレンカーボネート溶液を用いた。
【0075】正極の作製正極活物質としてサンプルNo. 1を用い、これをアセチレンブラックおよびポリテトラフルオロエチレンとともに、これらがこの順で100:20:3の重量比となるように混合し、その後加圧成形を行って直径15mmのペレットを作製し、これを正極とした。
【0076】このようにして作製した電池を電池Aとする。また、電池Aにおいて、正極材料としてサンプルNo. 1のかわりに、実施例1で作製したサンプルNo. 2、実施例2で作製したサンプルNo. 5およびNo. 8を各々用いて同様に電極を作製した。これらを順に電池B〜Dとする。
【0077】これらの電池A〜Dについてそれぞれ放電容量を求めた。放電容量は、充電上限電圧を4.1Vとし、上限電圧に達した後、4.1Vで定電圧充電を10時間行い、下限電圧を3.1Vとして求めた。
【0078】これらの結果を表1に示す。表1にはBi/Coの原子比、平均結晶子径、結晶子の板状比を併せて記す。
【0079】
【表1】

【0080】表1より、本発明のサンプルを正極材料に用いた電池は、放電容量が比較のサンプルを用いたものに比べ大きいことがわかる。特にBi/Coが0.008〜0.04の範囲内であると、放電容量が大きくなることがわかる。この範囲では結晶子のサイズが増加し、不純物である第二相成分の生成が抑制されるため、良好な特性が得られると考えられる。
【0081】実施例4実施例1のサンプルNo. 1において、酸化ビスマスのかわりに、二酸化鉛または酸化ホウ素を用いて、そのほかは同様にサンプルを作製した。これらのサンプルをサンプルNo. 11、No. 12とする。サンプルNo. 11ではPb/Coが0.01、サンプルNo. 12ではB/Coが0.01のものである。これらのサンプルについても結晶子の存在がみられた。
【0082】これらのサンプルを正極材料として実施例3と同様に電池系を作製し、放電容量を求めたところ、サンプルNo. 11を用いたものでは、137Wh/kg 、サンプルNo. 12を用いたものでは133Wh/kg であった。これらの値は同条件のBi添加のものより劣るものの無添加のものに比べれば向上している。
【0083】なお、実施例1、2のサンプルにおいて、炭酸リチウムのかわりに炭酸ナトリウムを用い、またこれらにおいて塩基性炭酸コバルトのかわりに炭酸ニッケルや酸化ニッケル、酸化鉄、酸化クロムを各々用いて、種々のサンプルを作製したが、実施例1、2のサンプルのZ/Mの原子比に応じて同様の傾向を示した。また、これらのサンプルを用いて実施例3と同様に電池系を作製し、放電容量を求めたが、Z/Mの原子比に応じて同様の傾向を示した。さらに、上記のサンプルにおいて、塩基性炭酸コバルト、炭酸ニッケル(あるいは酸化ニッケル)、酸化鉄および酸化クロムのなかの2種以上を任意の割合で添加した種々のサンプルを作製し、同様に特性を調べたが、この場合もZ/Mの原子比に応じて、同様の傾向を示した。
【0084】実施例5炭酸リチウム(平均粒径2μm )81.29g と塩基性炭酸コバルト(平均粒径2μm )260.8g となるように添加し、これらのものをボールミル(アルミナボールを使用)によりイソプロピルアルコール50g を加えて湿式混合した。この混合物を乾燥し、粉砕したのち、空気中で、600℃から900℃の温度範囲の保持温度で10時間焼成した。
【0085】このようにして得られたコバルト酸リチウムを平均粒径1μm に粉砕し、さらにBiをBi/Co=0.01となるように酸化物Bi23 (平均粒径0.5μm )の形で添加し、またLiをLi/Bi=1.5となるように炭酸塩Li2CO3 (平均粒径0.5μm )の形で添加した。これらの原料粉末を湿式混合した。得られた混合物を成形圧力1ton/cm2 で成形し、電気炉にて、焼成雰囲気を空気とし、850℃の保持温度で10時間焼成した。これを焼結体サンプルNo.21とする。サンプルNo. 21において、Biを添加しないものとするほかは同様にしてサンプルNo. 22を作製した。
【0086】サンプルNo. 21、No. 22についてSEM観察を行ったところ、ビスマス添加により板状に成長したLiCoO2 が観測された。これに対し、ビスマスを添加しないサンプルでは結晶子はほとんど観察されなかった。
【0087】また、サンプルNo. 21の結晶子の平均径(平均結晶子径)は4.7μm であった。このときの平均径は、SEMを用い六角板状に成長している結晶子を選択しその最大径を結晶子径とし、試料内の結晶子の平均値を算出して求めた。
【0088】さらに、サンプルNo. 21のX線回折分析を行ったところ、純粋なLiCoO2 が観測され、またBi23 も検知された。また、微少ではあるがLiBiO2 と同定しうるピークも観察された。従って添加したビスマスは、何らかの形で酸化物やリチウムとの複合酸化物を形成し結晶子間に偏析するなどして結晶子の成長のための物質移動を容易にしたものと考えられる。
【0089】さらに、サンプルNo. 21では蛍光X線分析により焼成後においてもBiの存在が確認された。また、サンプルNo. 21、No. 22について、焼結密度を求めたところ、サンプルNo. 21では、3.48g/cm3 、サンプルNo. 22では3.44g/cm3 であり、後述のように、この組成域では焼結密度は無添加時に比べ若干増加傾向にあるが、両者の差は小さい。また収縮率も90%前後であり、焼結が進んだというよりも結晶子サイズのみ増加したと考えられる。
【0090】実施例6実施例5において、Bi/Coの原子比が0.0001、0.001、0.03、0.05、0.1、0.3となるようにしたほかは同様にしてサンプルを作製した。これらのサンプルを順にサンプルNo. 23〜No. 28とする。また、Liは実施例1と同様にLi/Bi=1.5とした。
【0091】これらのサンプルでは、蛍光X線分析によりBiの存在が確認された。これらのサンプルNo. 23〜No. 28について、実施例1と同様にSEM観察を行った。これによれば、サンプルNo. 23〜No. 27では結晶子が観察されたが、Bi/Coが0.3のサンプルNo. 28では、実施例4のサンプルNo. 21のような六角板状に成長した結晶子は観察されなかった。また、X線回折の結果から、サンプルNo. 8では、明らかに単相ではなく、LiBiO2 が共存していることがわかった。
【0092】実施例5のサンプルNo. 21およびサンプルNo. 23〜No. 27における結晶子の平均径を求めた。また、サンプルNo. 2、No. 8では結晶子の存在がみられないため、サンプル中の結晶の平均径を求めた。
【0093】Bi/Coが0.01付近の範囲までのBi添加は焼結密度の増加には寄与せず、結晶子のサイズの増加に寄与していると考えられる。そして、Bi/Coが0.1までは、添加元素Biは結晶子サイズと焼結密度の増加の両方に寄与すると考えられ、さらに、この範囲ではBi/Coが0.3のときに観察される第二相成分の存在も無視できる。
【0094】従って、Bi/Coが0.1以下であれば、LiCoO2 を基本組成とする層状構造酸化物では、結晶子のサイズの増加が期待でき、さらに、このような化合物において特性を劣化させると考えられる第二相成分の影響も抑制されると推定される。これらの結果から、層状構造酸化物の特性の向上は、Bi/Coが0.1以下が妥当であると考えられる。
【0095】実施例7実施例5で作製したサンプルNo. 21を正極材料としてリチウム電池系を作製した。正極は、以下のように作製し、負極にはリチウム金属、電解液は、電解質として過塩素酸リチウム(LiClO4 )を用い、1MのLiClO4 プロピレンカーボネート溶液を用いた。
【0096】正極の作製正極活物質としてサンプルNo. 21を用い、これをアセチレンブラックおよびポリテトラフルオロエチレンとともに、これらがこの順で100:20:3の重量比となるように混合し、その後加圧成形を行って直径15mmのペレットを作製し、これを正極とした。
【0097】このようにして作製した電池を電池Aとする。また、電池Aにおいて、正極材料としてサンプルNo. 21のかわりに、実施例4で作製したサンプルNo. 22、実施例5で作製したサンプルNo. 25およびNo. 28を各々用いて同様に電極を作製した。これらを順に電池X〜Wとする。
【0098】これらの電池X〜Wについてそれぞれ放電容量を求めた。放電容量は、充電上限電圧を4.1V とし、上限電圧に達した後、4.1V で定電圧充電を10時間行い、下限電圧を3.1V として求めた。
【0099】これらの結果を表2に示す。表2にはBi/Coの原子比、平均結晶子径、結晶子の板状比を併せて記す。
【0100】
【表2】

【0101】表2より、本発明のサンプルを正極材料に用いた電池は、放電容量が比較のサンプルを用いたものに比べ大きいことがわかる。特にBi/Coが0.008〜0.04の範囲内であると、放電容量が大きくなることがわかる。この範囲では結晶子のサイズが増加し、不純物である第二相成分の生成が抑制されるため、良好な特性が得られると考えられる。
【0102】実施例8実施例1のサンプルNo. 21において、酸化ビスマスのかわりに、二酸化鉛または酸化ホウ素を用いて、そのほかは同様にサンプルを作製した。これらのサンプルをサンプルNo. 31、No. 32とする。サンプルNo. 31ではPb/Coが0.01、サンプルNo. 32ではB/Coが0.01のものである。これらのサンプルについても結晶子の存在がみられた。
【0103】これらのサンプルを正極材料として実施例7と同様に電池系を作製し、放電容量を求めたところ、サンプルNo. 21を用いたものでは、142Wh/kg 、サンプルNo. 22を用いたものでは104Wh/kg であった。これらの値は同条件のBi添加のものより劣るものの無添加のものに比べれば向上している。
【0104】なお、実施例5、6のサンプルにおいて、炭酸リチウムのかわりに炭酸ナトリウムを用い、またこれらにおいて塩基性炭酸コバルトのかわりに炭酸ニッケルや酸化ニッケル、酸化鉄、酸化クロムを各々用いて原料粉末を得、これから種々のサンプルを作製したが、実施例5、6のサンプルのZ/Mの原子比に応じて同様の結果が得られた。また、これらのサンプルを用いて実施例7と同様に電池系を作製し、放電容量を求めたが、Z/Mの原子比に応じて同一の傾向を示した。さらに、上記のサンプルにおいて、塩基性炭酸コバルト、炭酸ニッケル(あるいは酸化ニッケル)、酸化鉄および酸化クロムのなかの2種以上を任意の割合で添加した種々のサンプルを作製し、同様に特性を調べたが、この場合もZ/Mの原子比に応じて、同一の傾向を示した。また、実施例5のサンプルにおいて、Biと同時にNa/Bi=0.8〜2の範囲にてNa2 CO3 の後添加を行ったところ、同等の結果が得られた。
【0105】実施例9実施例1のサンプルNo. 1の作製において、焼成条件を1100℃、36時間としてサンプルNo. 31を得た。SEM写真を図6に示す。図6に示されるように、図1のサンプルNo. 1の結晶子が部分的に結晶化し、層状化し、不定形の大きな結晶子粒子となっていることがわかる。粒子径は約20〜100μm であった。
【0106】また、X線回折スペクトルを図7に示す。図7からI003 /I104 は12.2であり、サンプルNo. 1の図3と比較して配向度が格段と向上していることがわかる。
【0107】この結果、充放電容量も148Wh/kg に向上した。このような1000℃以上の焼成の効果は、前記本発明の各サンプルで同等に実現した。
【0108】実施例10実施例1のサンプルNo. 1の作製において、焼成条件を850℃、35時間とし、この際300kg/cm で加圧してホットプレス焼結してサンプルNo. 41を得た。この場合も結晶子が部分的に結晶化し、層状化し、不定形の大きな結晶子粒子となっており、粒子径は約60μm であった。また、I003 /I104 は8.0であり、配向度が格段と向上した。この結果、充放電容量も146Wh/kg に向上した。このような加圧焼成の効果も前記本発明の各サンプルで同等に実現した。
【0109】実施例11実施例1のサンプルNo. 1の作製において、焼成条件を950℃、36時間とするほかは同様にして焼結体を得た。この焼結体をサンプルNo. 51とする。
【0110】このサンプルNo. 51を加熱し、室温(21℃)から180℃程度の温度まで昇温し、この温度に30分程度保持し、その後再び室温まで降温した。この昇温過程と降温過程における抵抗率の変化を調べた。これを図8に示す。図8中、実線は昇温過程を、破線は降温過程を示している。また、比較のため、同様にしてLiMn24 の抵抗率の変化を調べ、図8中に併記する。
【0111】図8より、サンプルNo. 51(Bi添加LiCoO2 )は上記の加熱処理により室温における抵抗率が約一桁上昇することがわかる。また、このように一旦抵抗増加したものでは、抵抗率の温度変化において、図8にみられるような初期のヒステリシスを示さなくなることもわかった。
【0112】なお、二次電池の正極活物質として使用されるLiMn24 では、Bi添加LiCoO2 にみられるヒステリシスは全く観測されない(図8参照)。
【0113】実施例12実施例11のサンプルNo. 51およびサンプルNo. 51に実施例11の条件で加熱処理したサンプルNo. 52を各々正極材料として用いて、実施例3と同様にして二次電池を得た。サンプルNo. 51を用いた二次電池を電池M、サンプルNo. 52を用いた二次電池を電池Nとする。
【0114】これらの電池M、Nについて実施例3と同様にして放電容量を求めた。さらに容量のサイクル変化を調べた。このサイクル特性を図9(電池M)、図10(電池N)にそれぞれ示す。
【0115】電池M、Nの初期の放電容量は、ともに実施例3の電池Aとほぼ同程度であり、図9、図10では、この初期の放電容量を100%とし、これに対する割合(%)でサイクル変化した放電容量を示している。
【0116】図9、図10から、加熱処理したBi添加LiCoO2 を正極材料とすることにより、電池のサイクル特性が著しく改善することがわかる。
【0117】実施例13実施例5のサンプルNo. 21の作製において、焼成条件を950℃、36時間とするほかは同様にして焼結体を作製し、この焼結体をサンプルNo. 61とした。
【0118】このサンプルNo. 61に対し、実施例11と同様の加熱処理を行ったところ、実施例11のサンプルNo. 51と同様の現象を示した。
【0119】実施例14実施例13のサンプルNo. 61およびサンプルNo. 61に実施例11の条件で加熱処理を行ったサンプルNo. 62を各々正極材料として用いて、実施例7と同様にして二次電池を得た。サンプルNo. 61を用いた二次電池を電池P、サンプルNo. 62を用いた二次電池を電池Qとする。
【0120】これらの電池P、Qについて実施例7と同様にして放電容量を求めた。さらに容量のサイクル変化を調べた。
【0121】電池P、Qの初期の放電容量は、ともに、実施例7の電池Xとほぼ同程度であった。また、実施例12と同様にして調べた容量のサイクル変化は、加熱処理の有無に応じ、実施例12と同様の傾向を示した。
【0122】なお、実施例11〜14において、用いた焼結体サンプルを前記のような種々の組成の焼結体サンプルにかえて、同様に特性を調べたところ、加熱処理の有無に応じ、実施例11〜14の結果と同様の結果を示した。
【0123】
【発明の効果】本発明によれば、結晶子サイズを大きくすることができ、この結果、例えば二次電池の正極材料としたとき放電容量を大きくすることができる。また、さらに加熱処理した正極材料を用いることによってサイクル特性が向上する。




 

 


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