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発明の名称 ストロジン化合物、その製法、味覚修飾剤、及び配合物
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平8−73490
公開日 平成8年(1996)3月19日
出願番号 特願平6−238349
出願日 平成6年(1994)9月6日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
発明者 栗原 良枝 / 赤羽 丈明 / 杉山 宏 / 山下 治之
要約 目的
味覚修飾活性を有する新規ストロジン化合物、その製法、味覚修飾剤及び味覚修飾配合物を提供する。

構成
一般式(I)のストロジン化合物又はその塩:【化1】
特許請求の範囲
【請求項1】 一般式(I):【化1】

(式中、Aはヒドロキシル基が場合によりエーテル化又はアシル化されていることのあるヘキサピラノース残基であり、Bはヒドロキシル基が場合によりエーテル化又はアシル化されていることのあるヘキサピラノース残基、ヒドロキシル基が場合によりエーテル化又はアシル化されていることのあるペントピラノース残基、あるいはこれらのピラノース残基の第一アルコール基がカルボキシル基となったウロン酸残基であり、nは1〜3の整数であり、nが2又は3である場合にはBは同一又は異なる基であることができるものとし、そしてR1 、R2 及びR3 は、同一又は異なり、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基又は炭素数2〜4個のアシル基である)で表されるストロジン化合物又はその塩。
【請求項2】 キツネノマゴ科に属する植物より請求項1記載の一般式(I)で表されるストロジン化合物又はその塩を得ることを特徴とする、前記ストロジン化合物又はその塩の製造方法。
【請求項3】 請求項1記載の一般式(I)で表されるストロジン化合物又はその塩を含むことを特徴とする、味覚修飾剤。
【請求項4】 請求項1記載の一般式(I)で表されるストロジン化合物又はその塩を味覚修飾剤として含むことを特徴とする、味覚修飾配合物。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規のストロジン化合物、その製造方法、その新規のストロジン化合物からなる味覚修飾剤、及びその新規のストロジン化合物を味覚修飾剤として含む味覚修飾配合物に関する。
【0002】
【従来の技術】テルペノイド系味覚修飾物質としては、これまでにギムネマ酸やジジフィンなどが知られている。しかし、これらに甘味を消失させる作用はあるが、無味を甘味に変化させる作用はない。このような作用をもつ物質としては、クルクリンというタンパク質系味覚修飾物質が知られている(例えば、特開平2−104263号公報)。しかし、クルクリンはタンパク質であるため、熱及び有機溶媒等に対する安定性が劣るという欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、非タンパク質系の化合物であって、無味を甘味に変化させる作用を有する化合物を探索したところ、キツネノマゴ科に属する植物から分離・精製した新規配糖体・ストロジンが前記の点で優れた化合物であることを見出した。本発明は、こうした知見に基づくものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、一般式(I):【化2】

(式中、Aはヒドロキシル基が場合によりエーテル化又はアシル化されていることのあるヘキサピラノース残基であり、Bはヒドロキシル基が場合によりエーテル化又はアシル化されていることのあるヘキサピラノース残基、ヒドロキシル基が場合によりエーテル化又はアシル化されていることのあるペントピラノース残基、あるいはこれらのピラノース残基の第一アルコール基がカルボキシル基となったウロン酸残基であり、nは1〜3の整数であり、nが2又は3である場合にはBは同一又は異なる基であることができるものとし、そしてR1 、R2 及びR3 は、同一又は異なり、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基又は炭素数2〜4個のアシル基である)で表されるストロジン化合物又はその塩に関する。
【0005】また、本発明は、キツネノマゴ科(Acanthaceae )に属する植物より前記一般式(I)で表されるストロジン化合物又はその塩を得ることを特徴とする、前記ストロジン化合物又はその塩の製造方法にも関する。更に、本発明は、前記一般式(I)で表されるストロジン化合物又はその塩を含むことを特徴とする、味覚修飾剤に関する。更にまた、本発明は、前記一般式(I)で表されるストロジン化合物又はその塩を味覚修飾剤として含むことを特徴とする、味覚修飾配合物に関する。
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。前記一般式(I)において、基Aはヘキサピラノース残基、例えば、D−グルコース、D−ガラクトース、L−ガラクトース若しくはD−マンノース、又は好ましくは6−デオキシヘキソース(例えば、L−ラムノース又はL−フコース)であり、それらのヒドロキシル基が場合によりアシル化又はエーテル化されていることができる。また、基Aは、任意のヒドロキシル基を介して5環式化合物部分の環炭素原子と結合していることができるが、1位のヒドロキシル基を介して5環式化合物部分の環炭素原子と結合しているのが好ましい。従って、好ましい基Aは、例えば、一般式(II):【化3】

(式中、R4 、R5 及びR6 は、それぞれ同一又は異なり、水素原子、炭素原子数1〜4個のアルキル基又は炭素原子数2〜4個のアシル基である)で表される基である。
【0007】基Bは、ペントピラノース残基、例えば、L−アラビノース、D−キシロース又はD−リボースの残基、ヘキサピラノース残基、例えばD−グルコース、D−ガラクトース、L−ガラクトース、D−マンノース、L−ラムノース、L−フコースの残基であるか、又はウロン酸残基、特に6炭糖から誘導されるウロン酸の残基、例えば、グルクロン酸、マンヌロン酸、イズロン酸又はガラクツロン酸の残基であり、それらのヒドロキシル基が場合によりアシル化又はエーテル化されていることができる。また、基Bが2個以上存在する場合には、それらの5炭糖、6炭糖又はウロン酸は、同一又は異なる5炭糖、6炭糖又はウロン酸残基であることができ、それらのヒドロキシル基も同一又は異なる置換基で置換されていることができる。更に、2個又は3個の基Bはそれぞれ1,3−結合、1,4−結合又は好ましくは1,2−結合のいずれによって結合していてもよい。例えば、好ましいB−B−は、一般式(III):【化4】

(式中、R7 、R8 、R9 、R10及びR11は、それぞれ同一又は異なり、水素原子、炭素原子数1〜4個のアルキル基又は炭素原子数2〜4個のアシル基である)で表される基である。
【0008】本明細書において、炭素原子数1〜4個のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、又はtert−ブチル基である。また、炭素原子数2〜4個のアシル基は、例えば、アセチル基、プロピオニル基又はブチリル基である。
【0009】前記一般式(I)で表されるストロジン化合物の塩は、COOR12基の基R12が水素原子である化合物において、基R12が各種の金属原子によって置換された化合物であり、それらの金属原子は、例えば、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム又はリチウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム又はバリウム)、アルミニウム、鉄、亜鉛、銅、ニッケル又はコバルトであり、原子価(n)が2以上の金属とは、1/n塩を形成する。
【0010】前記一般式(I)で表されるストロジン化合物の5環式化合物部分には、置換基として、5炭糖、6炭糖又はウロン酸置換基(B−、B−B−又はB−B−B−)1個、6炭糖置換基(A)1個、メチル基6個、−CH2 OR1 基1個、−CH2 OR3 基1個、及びOR2 基1個が存在する。これら置換基の立体配置は特に制限されるものではないが、例えば、後述する式(IV)で表されるストロジンの立体配置と同様の配置であることが好ましい。
【0011】本発明による前記一般式(I)で表される化合物は、例えば、キツネノマゴ科に属する植物から抽出して単離することができる。すなわち、キツネノマゴ科に属する植物の植物体より、ストロジンを含む成分の抽出を行い、次に抽出液を、合成吸着剤を使用した吸着カラムクロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、及び/又は逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、ストロジンの精製品を得ることができる。
【0012】本発明による前記一般式(I)で表される化合物を抽出することのできる植物は、キツネノマゴ科に属する植物であり、具体的には、イセハナビ属(Strobilanthes )に属する植物、例えば、ウラムラサキ(dyerianus )、リュウキュウアイ(cusia )、イセハナビ(japonica)、スズムシソウ(oligantha )又はマインガイ(maingayi);キツネノマゴ属(Justicia)に属する植物、例えば、キツネノマゴ(procumbens)又はリスノシッポ(betonica);ヤハズカズラ属(Thunbergia)に属する植物、例えば、ヤハズカズラ(alata )、コダチヤハズカズラ(erecta)、ベンガルヤハズカズラ(grandiflora )、ローレルカズラ(laurifolia)、ムラサキヤハズカズラ(affinis )、ニオイヤハズカズラ(fragrans)、ホソバヤハズカズラ(kirkii)又はフォゲルヤハズカズラ(vogeliana );コエビソウ属(Beloperone)に属する植物、例えば、コエビソウ(guttat);スタウロギネ属(Staurogyne)に属する植物、例えば、メルゲンシス(merguensis)、セチゲル(setiger )、キンギアナ(kingiana)、エロンガタ(elongata);ヒグロフィラ属(Hygrophila)に属する植物、例えば、フィロモイデス(phlomoides);ルエルリア属(Ruellia )に属する植物、例えば、レペンス(repens)を挙げることができる。スタウロギネ・メルゲンシス(Staurogyne merguensis)を用いるのが特に好ましい。
【0013】前記の植物の一部分(葉、茎、根など)又は全体をそのまま又は乾燥させた後、好ましくは若干細かく破砕して用いる。乾燥させた葉を使用するのが好ましい。抽出には水を使用することができる。水の温度は限定されず、0〜100℃の水であれば抽出は可能であるが、40〜60℃の水を用いるのが好ましい。また、純水の代わりに、アルコールを添加した水、又はアルコールで抽出することもできる。アルコール−水のアルコール濃度は特に限定されないが、1%(v/v%)〜40%(v/v%)が好ましい。アルコールの添加量が40%(v/v%)〜100%(v/v%)であっても抽出は可能であるが、抽出操作後に、抽出液のアルコール濃度を40%(v/v%)以下にする必要がある。抽出に使用することのできるアルコールとしては、低級アルコール、特にはメタノール又はエタノールが好ましい。
【0014】抽出操作は、植物体原料に対し5容量倍以上の水(常温水、温水又は熱水)あるいは低級アルコール添加水を加え、撹拌する。撹拌時間は、5分以上である。撹拌後、濾過を行ない抽出液を得る。この抽出操作は、抽出液にストロジンの存在が確認されなくなるまで繰り返し行なうのが好ましい。ストロジンの存在確認は、例えば、官能試験によって行う。
【0015】次に、得られた抽出液を、各種のクロマトグラフィー処理によって精製する。具体的には、最初に合成吸着剤を使用した吸着クロマトグラフィー、続いてシリカゲルクロマトグラフィー、最後に逆相シリカゲルクロマトグラフィーで処理するか、或いは、最初は前記と同様に合成吸着剤を使用した吸着クロマトグラフィーで処理し、続いてシリカゲルクロマトグラフィーによる処理をし、好ましくは2回以上繰り返すことにより、高純度のストロジンを得ることができる。
【0016】合成吸着剤を使用した吸着クロマトグラフィーでは、例えば、スチレンとジビニルベンゼンとが重合したハイポーラスポリマーの担体を使用する。合成吸着剤のカラムに、上記の抽出液を添加する。この場合、抽出液のアルコール濃度は、40%(v/v%)以下であることが好ましい。またカラムに添加する際の抽出液のpHは、7以下であれば良いが、ストロジンをゲルに強く吸着させるためには、抽出液をpH4以下に下げるのが好ましい。pHの調整には、有機酸又は無機酸を使用することができるが、塩酸、硫酸、硝酸又は酢酸等が好ましい。
【0017】吸着したストロジンの溶出は、例えば、有機溶媒/水の混合溶液で行なう。有機溶媒としては、低級アルコール(例えば、メタノール又はエタノール)、又はアセトン等を用いることができる。混合溶出液中の低級アルコールの濃度は、60%(v/v%)〜90%(v/v%)であることが好ましい。有機溶媒にアセトンを使用した場合は、40%(v/v%)〜60%(v/v%)の濃度が、好ましい。上記の混合溶出液をゲル体積の1倍量以上流すことにより、ストロジンの粗抽出物を得ることができる。
【0018】次に、上記粗抽出物を更にシリカゲルクロマトグラフィーで処理する。添加の方法は、粗抽出物をあらかじめ少量のシリカゲルに吸着させておく(溶出分離法)か、もしくは少量の溶出液に溶解したものを添加する。溶出液としては、例えば、アルコール/非アルコール系有機溶媒/水の3成分からなる混合溶液の下層を使用する。使用することのできるアルコールは、例えば、メタノール又はエタノール等である。また非アルコール系有機溶媒としては、塩化メチレン又はクロロホルム等を用いることができる。それらの混合比は、例えば、アルコールが30%(v/v%)以上で、非アルコール系有機溶媒が50%(v/v%)以上である。アルコールとしてメタノール、非アルコール系有機溶媒として塩化メチレンを使用した場合は、メタノールが30%(v/v%)〜35%(v/v%)で、塩化メチレンが52%(v/v%)〜57%(v/v%)であることが好ましい。
【0019】ストロジンの検出は、薄層クロマトグラフィー(以下、TLC)又は高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLC)を用いて行なうことができる。TLCでは、順相シリカゲルプレートを使用し、展開溶媒としてシリカゲルクロマトグラフィーの溶出液と同組成の混合溶液を使用することができる。展開溶媒として用いる混合溶液の組成比は、例えば、アルコールが30%(v/v%)以上であり、非アルコール系有機溶媒が50%(v/v%)以上である。アルコールとしてメタノール、非アルコール系有機溶媒としてクロロホルムを使用した場合は、メタノールが35%(v/v%)〜38%(v/v%)で、クロロホルムが53%(v/v%)〜56%(v/v%)であるのが好ましい。
【0020】また、HPLCでストロジンを検出する場合は、逆相HPLCカラムを使用して、分離・検出を行なうことができる。検出は、紫外吸収もしくは示差屈折を測定する。紫外吸収は、200nm〜240nmの波長が好ましく、205nm〜215nmが特に好ましい。さらに溶出液としては、例えば、アルコール及び水の2成分からなる混合液を使用する。使用するアルコールは、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール等である。またその混合比は、例えば、アルコールが40%(v/v%)〜80%(v/v%)である。さらにアルコールとして、2種類のアルコールを混合することができる。この場合、極性の高いアルコールの混合比が50%(v/v%)〜70%(v/v%)で、極性の低いアルコールが1%(v/v%)〜10%(v/v%)であることが好ましい。好ましくは、極性の高いアルコールが50%(v/v%)〜60%(v/v%)で、極性の低いアルコールが5%(v/v%)〜10%(v/v%)であることが好ましい。また0.1%(v/v%)〜1%(v/v%)の酢酸を添加するのが特に好ましい。
【0021】また、シリカゲルクロマトグラフィーによる分離操作の後に、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行なう場合には、溶解液及び溶出液として水溶性有機溶媒と水の混合液を使用することができる。水溶性有機溶媒としては、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はアセトンなどがある。水溶性有機溶媒の濃度は、例えば、10%(v/v%)〜50%(v/v%)である。さらに0.01%(v/v%)〜1.0%(v/v%)の酢酸を含ませるのが好ましい。アセトニトリルの場合、35%(v/v%)〜40%(v/v%)アセトニトリル水溶液に、酢酸0.05%(v/v%)〜0.2%(v/v%)を含有するのが好ましい。
【0022】上記の抽出法によって得られた前記一般式(I)で表される新規ストロジン化合物において、種々の置換基を別の置換基に変換することができる。例えば、糖類置換基上の遊離のヒドロキシル基を有するストロジン化合物を、カルボン酸、酸無水物又は酸ハロゲン化物で処理することによって、相当するアシル基を導入することができる。また、アシル化されたヒドロキシル基を有するストロジン化合物をアルカリで処理することによって相当する遊離のヒドロキシル基を有するストロジン化合物に変換することができる。
【0023】糖類置換基上に遊離のヒドロキシル基を有するストロジン化合物は、アルカリ金属を作用させて相当するアルコラートに変換した後、これをハロゲン化アルキルで処理することによって相当するアルコキシ基を導入することができる。また、エーテル化されたヒドロキシル基を有するストロジン化合物を熱鉱酸で処理することによって、相当する遊離のヒドロキシル基を有するストロジン化合物に変換することができる。
【0024】遊離のカルボキシル基(R1 =H)を有するストロジン化合物を、任意の強酸を加えたアルコールで処理することによってエステル基を導入することができる。逆に、エステル化されたカルボキシル基(R1 =アルキル基)を有するストロジン化合物をカルボン酸で処理することによって相当する遊離のカルボキシル基(R1 =H)を有するストロジン化合物に変換することができる。更に、遊離のカルボキシル基(R1 =H)を有するストロジン化合物を、塩を含むアルカリ溶液又は塩を含む塩化物溶液などで処理することによって、相当する塩に変換することができ、逆に塩を酸で処理することによって相当する遊離カルボン酸に変換することもできる。なお、本発明による一般式(I)で表されるストロジン化合物は、化学合成法によって調製することもできる。
【0025】本発明による一般式(I)で表されるストロジン化合物は、味覚修飾剤として用いることができる。例えば、本発明のストロジン化合物又はその塩を、そのまま又は溶液などの形で口に含んだ後に、無味物質又は水を飲食すると、それらの無味物質又は水に甘味を感じさせる効果を有する。更に、ストロジン化合物又はその塩を口に含むと、その後に呼吸する空気までも甘く感じさせる効果をもっている。
【0026】本発明の味覚修飾剤は、前記の一般式(I)で表されるストロジン化合物又はその塩からなり、場合により、適当な溶媒(例えば、水性アルコール溶媒、水、弱酸溶液又は弱アルカリ溶液)に溶解した溶液形、又は適当な分散媒(例えば、メチルセルロース、デンプン、乳糖、カルボキシメチルセルロース、糖、糖アルコール、アルギン酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、又はコロイド状シリカゲル)に分散した分散形、更には、フィルム状、錠剤状、乳化物状又はスプレー状であることができる。更に、本発明の味覚修飾剤は、ストロジンの味覚修飾効果を損なわず、かつ可食性を有する任意の物質を含有することもできる。
【0027】本発明の味覚修飾剤を事前に食しておくことにより、無味物質(例えば、水又は空気)又は緑茶などを飲食した際に甘味を感じさせることができる。この場合、本発明の味覚修飾剤の1回の投与量(飲量)は、ストロジン化合物に換算して0.001〜0.5mg、好ましくは0.01〜0.2mgである。
【0028】また、本発明のストロジン化合物又はその塩は、それ自体も弱い甘味を呈しているので、食品又は飲料に添加することにより、甘味を持続させ、更に味覚を修飾させることができる。本発明の味覚修飾剤を配合することのできる食品又は飲料は特に限定されるものではないが、特に飲食時に保温されていない(室温以下に冷やされた)食品又は飲料に配合するのが好ましい。
【0029】更に、食品又は飲料用の容器を成形するプラスチック材料中に、前記のストロジン化合物又はその塩を配合することができる。特に、プラスチック製容器内に食品や飲料を収容しておくと、容器材料から苦み成分などが滲み出て食品や飲料に移行して、容器内容物の味覚を損なう現象を改善することができる。すなわち、本発明による味覚修飾剤を配合したプラスチック材料から成形した容器に食品や飲料を収納すると、前記の苦み成分が滲み出てくるだけでなく、本発明によるストロジン化合物又はその塩も滲み出してくるので、前記の苦み成分の活性がストロジン化合物又はその塩によって抑制される。
【0030】本発明による前記の一般式(I)で表されるストロジン化合物又はその塩を、味覚修飾剤として食品に配合する場合には、1回の摂取量(例えば、缶ジュース1本)当たり、0.001〜1mg、好ましくは0.01〜0.5mgであり、プラスック材料(例えば、容器成形用プラスック材料)に配合する場合には、0.001〜1重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0031】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1(1)抽出スタウロギネ・メルゲンシス・クンツエ(Staurogyne merguensis Kuntze:マレーシア産)の葉を乾燥し、細かく粉砕して得た破砕物20gに水600mlを加えて50℃に保温し、撹拌した後、綿栓ろ過した。このろ液は、茶褐色を示し、味覚修飾活性を有していた。またろ別された葉破砕物にも味覚修飾活性が確認された。さらにろ別された葉破砕物に水500mlを加え、50℃に保温し、撹拌した後、再度これを綿栓ろ過した。このろ液は、茶褐色で、味覚修飾活性を有したが、ろ別された葉には、味覚修飾活性はなかった。この2回分のろ液を合わせ、ストロジンを含む抽出液を得た。なお、味覚修飾活性は、官能試験によって確認した。
【0032】(2)吸着クロマトグラフィーによる分離実施例1(1)で得られた抽出液に塩酸を加え、pHを3に調整した。次に、抽出液を、合成吸着剤充填カラムクトマトグラフィー(Diaion HP−21カラム:直径2.7cm×14cm;ベット体積120ml;三菱化成社製)に添加し、ストロジンを吸着させた。ついで40%(v/v%)アセトン水溶液をゲル体積の5倍量流し、不純物を溶出した。さらにゲル体積の5倍量の60%(v/v%)アセトン水溶液でストロジン活性画分を溶出し、減圧乾固した。その結果、茶褐色の結晶230mgを得た。
【0033】(3)シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離実施例1(2)の茶褐色結晶230mgを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーの溶媒である塩化メチレン/メタノール/水(60:38:14)混合液(下層)10mlに溶解した。この溶液をシリカゲル(シリカゲル60 No.7734;メルク社製)カラム(直径2.2cm×33cm;乾燥ゲル重量60g)に添加した。塩化メチレン/メタノール/水(60:38:14)混合液(下層)を流し、溶出液を200mlずつ分取した。分取したフラクションは、薄層クロマトグラフィー(メルク社製)で確認した。展開溶媒は、クロロホルム/メタノール/水(6:4:1)を使用した。薄層クロマトグラフィーで確認されたストロジンの溶出フラクションは、まとめて減圧乾固し、粗精製物90mgを得た。
【0034】(4)逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製実施例1(3)の粗精製物90mgを、少量の0.1%酢酸を含む38%アセトニトリル水溶液に溶解した。この溶液を、上記実施例1(3)の溶解液と同じ溶液で予め充填した逆相シリカゲルRP−2(シリカゲル 60 シラナイズド;メルク社製)カラム(直径1.7cm×40cm;乾燥ゲル重量45g)の上部にのせ、0.1%酢酸を含む38%アセトニトリル水溶液で展開した。活性画分を集め減圧乾固したところ、白色の高純度ストロジン30mgを得た。
【0035】上記方法により得たストロジンの各種の理化学的データを以下に示す。
(a)色及び形状;白色粉末(b)元素分析値;C=57.56%;H=7.96%(c)分子式;C538222・2H2 O(d)マススペクトル(FAB−MS);m/z 1070 (図1)
(e)融点;252〜253℃(f)紫外部及び可視部吸収スペクトル(図2)
【0036】(g)赤外部吸収スペクトル(図3)(KBr cm-1):3404,2978,2926,1745,1612,1416,1373,1230,1175,1132,1045,797,602(h) 1H−NMRスペクトル(400MHz、CD3 OD)(図4)
δ(ppm) 0.70(3H,s),0.95(3H,s),0.96(3H,s),0.98(3H,s),1.01(3H,s),0.89〜1.09(4H,m),1.16(3H,d),1.23(3H,s),1.29(2H,m),1.40(1H,br m),1.50(1H,br m),1.56〜1.77(4H,m),1.89(5H,m),1.96(3H,s),2.04(3H,s),2.13(3H,s),2.30(2H,br s),2.92(1H,d),3.13(1H,dd),3.22(2H,m),3.31(1H,dd),3.39(1H,d),3.42〜3.54(4H,m),3.59(2H,m),3.75(1H,br s),3.79(2H,dd),3.98(1H,br d),4.14(1H,m),4.54(2H,dd),4.91(1H,br s),5.01(1H,dd),5.23(1H,brs),5.31(1H,dd),5.41(1H,dd)
【0037】(i)13C−NMRスペクトル(100MHz、CD3 OD)(図5)
δ(ppm) 13.1q,16.6q,17.6q,17.7q,17.7q,18.8t,20.6q,20.7q,20.7q,22.1q,24.7t,26.5t,27.3t,27.3q,27.9t,33.1t,37.5s,39.6t,40.1s,41.2s,41.2t,41.7s,42.9s,43.6d,44.0s,47.8d,48.9d,64.1t,67.1t,67.9d,69.2t,70.9d,71.1d,72.3d,73.0d,76.2d,76.3d,77.7d,77.8d,78.1d,79.4d,79.9d,82.9d,83.3d,100.7d,104.5d,106.2d,123.6d,145.1s,171.7s,171.7s,171.8s,173.2s【0038】(j)呈色反応;10%硫酸、硫酸−オルシノール反応に陽性(k)溶解性;メタノール、ピリジンに溶け、水、アセトンに溶けにくく、クロロホルム、酢酸エチルに溶けない。
(l)薄層クロマトグラフィー;担体シリカゲルプレート(メルク社製)
■展開溶媒系〔クロロホルム/メタノール/水(6:4:1)〕の場合:Rf値=0.6■展開溶媒系〔塩化メチレン/メタノール/水(60:38:12、下層)の場合:Rf値=0.68(m)塩基性、酸性、中性の区別;弱酸性物質【0039】(5)ストロジンの酸加水分解実施例1(4)で得た高純度ストロジン約2mgを封入管に正確に秤量し、4N硫酸1mlに溶解した。これを封管後、100℃で4時間加熱した。この反応液を室温に戻し、陰イオン交換樹脂(Amberlite IRA-400 )(炭酸塩型)に加えて中和した。これをフィルターろ過し、加水分解液を得た。
(6)遊離糖のトリメチルシリル化実施例1(5)の加水分解液を減圧乾固した後、水2mlに溶解した。この水溶液にクロロホルム5mlを加え、単糖類以外の水不溶物をクロロホルム層に抽出した。この抽出操作を5回繰り返した後、水層を減圧乾固した。得られた減圧乾固物に対してトリメチルシリル(TMS)化を行なった。TMS化剤としては、ピリジン/ヘキサメチルジシラザン/トリメチルクロロシラン(10:2:1)混合物を使用した。前記の減圧乾固物にTMS化剤0.24mlを加え、30秒撹拌した後、30分間室温で放置した。次に、クロロホルムと水とを各々0.6mlずつ加え、撹拌した。静置後、水層を捨て、新たに水0.6mlを加えて撹拌した。この操作を5回繰り返した後、クロロホルム層を乾固し、ピリジンを除いた。これをクロロホルム約1mlに再度溶解した。標準糖としてL−ラムノース、D(+)−キシロース、グルクロン酸を同様の方法で酸加水分解及びTMS化した。これらをガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)法で分析した。
【0040】(7)ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)法による単糖組成分析実施例1(6)の試料を下記条件で分析した。
装置;JMS−DX303HF(日本電子)
カラム;DBI−3000初期温度;100℃最終温度;220℃昇温;10℃/分インジェクション温度;200℃キャリアガス;Heガス流速;10.5ml/分上記条件で分析した結果の各糖の溶出時間を比較した(図6)。
【0041】以上の解析結果、並びに、Correlation Spectroscopy (COSY) 、 HomonuclearHartmann-Hahn (HOHAHA) 、 Nuclear Overhauser and Exchange Spectroscopy(NOESY) 、 1H-Detected Multiple Quantum Coherrence Spectrum (HMQC) 、 1H-Detected Multiple-bond Heteronuclear Multiple Quantum Coherrence Spectrum (HMBC) 及び Relayed COSY Spectrumの解析結果により、前記実施例1(4)で得られたストロジンの構造は以下の式(IV)で表されることが分かった。
【化5】

(式中、Meはメチル基であり、Acはアセチル基である)
【0042】実施例2:ストロジンの甘味度実施例1(4)で得られた高純度ストロジン粉末を水に溶解し、0.2%、0.1%、0.05%、0.025%、0.0125%、0.00625%及び0.003125%水溶液を調製した。このストロジン水溶液0.5mlを口に含んた時の甘味の強さを各濃度のショ糖水溶液と比較した。その結果、0.1%ストロジン水溶液を口に含んだ時に、甘味度が最大となり、この時の甘味度は0.4Mショ糖水溶液の甘味度に相当した。
【0043】実施例3:ストロジンの誘導甘味度実施例1(4)で得られた高純度ストロジン粉末を水に溶解し、0.43%、0.215%、0.1075%、0.05375%及び0.026875%水溶液を調製した。このストロジン水溶液0.5mlを2分間口に含んでから吐き出した後、1℃の冷水を飲食した。この時、ストロジンにより誘導される甘味の強さを各濃度のショ糖水溶液と比較した。その結果、0.215%ストロジン水溶液を口に含んだ時に、ストロジンによる甘味誘導活性が最大となり、この時の甘味度は6%ショ糖水溶液の甘味度に相当した。
【0044】実施例4:ストロジン配合錠剤実施例1(3)で得られた粗精製ストロジン粉末を使用して錠剤を作成した。その配合を以下に記す。
アラビアガム ; 8 重量%粗精製ストロジン粉末 ; 0.015重量%マンニトール ;91.985重量%上記配合で作成した錠剤1.3gを食した。その結果、マンニトールの甘さが増強された。また、錠剤1.3gを食した後では、水、緑茶及び空気が甘く感じられた。
【0045】実施例5市販のチューイングガム1枚(約3g)と実施例1(3)の粗精製ストロジン粉末約0.5mgとを同時に口に含み食した。その結果、チューイングガムのみを食したときと比べ、甘味を感じている時間が、2分間程度長く持続された。
【0046】実施例6市販の生クリームに実施例1(4)の高純度ストロジン0.0002重量%を添加し、ストロジン含有生クリームを作成した。一方、砂糖入りのコーヒーゼリーと、砂糖を含まないコーヒーゼリーを作成した。砂糖含有コーヒーゼリーには、市販の生クリームをのせ、砂糖不含のコーヒーゼリーには、ストロジン含有生クリームをのせ(各生クリームとコーヒーゼリーの割合は同一とする)、それぞれ試食した。その結果、砂糖不含のコーヒーゼリーでも、砂糖含有コーヒーゼリーと同様の甘味を感じた。
【0047】実施例7市販の冷缶ウーロン茶340gに実施例1(4)の高純度ストロジン1mgを添加して飲食した。その結果、ウーロン茶にまろやかな甘みが感じられた。また市販のウーロン茶を飲食した後に感じられる舌上の渋味が抑えられた。
【0048】実施例8下記の表1に示す配合によりプラスティック試験片を作製した。
【表1】
配合成分 重量部 ポリプロピレンランダム共重合体 100 テトラキス〔メチレン−β−(3,5−ジ第三ブチル 0.1 −4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト 0.1 ステアリン酸カルシウム 0.05 粗精製ストロジン粉末〔実施例1(3)〕 0.1【0049】上記の各配合成分をブレンドした後、250℃で押出加工を行ない、ペレットを作製した。次に、このペレットを250℃で射出成型後、60℃まで急冷し、厚さ1mmの試験片を作製した。この試験片10gと水200mlをガラス容器に入れ、60℃で24時間保温し、水に移る試験片の臭気(苦み)を調べた。ブランクとして粗精製ストロジン粉末〔実施例1(3)の生成物〕を含まない試験片を作製し、同様に試験を行なった。その結果、粗精製ストロジン粉末を含まない試験片と接触させた水は、試験片からの臭気がしみ出て、わずかに苦くなっていたのに対し、粗精製ストロジン粉末を含む試験片と接触させた水は、苦み及び臭みが感じられなかった。
【0050】実施例9タバコを吸った後に、実施例2に記載の0.05%ストロジン水溶液0.5mlを口に含んだ。10秒間程度、0.05%ストロジン水溶液を口に含むことにより、タバコを吸った後に口中に残る苦みが消え、口中にほのかな甘さを感じた。この甘さは、約15分間持続した。またこの15分間の間にタバコを吸うと、タバコの味が甘く感じられた。
【0051】実施例10実施例2に記載の0.05%ストロジン水溶液0.2mlを、市販の紙巻タバコ(1本)のフィルター部分に滲み込ませた。その後、40℃の乾燥機中で一晩乾燥させた。このタバコを吸ったところ、ほのかな甘味を感じた。また、タバコを吸い終わった後に口中に通常残る苦みが、甘味で薄らいだ。
【0052】
【発明の効果】本発明による新規物質ストロジン及びその塩は、すでに知られている味覚修飾物質・クルクリンとは異なり、タンパク質ではないために安定性に優れており、クルクリンが安定性の点から利用できない分野で利用することができる。また、呼吸する空気を甘く感じさせると言う特異な作用をもつので、甘味を持続させる必要のある食品や飲料等へ広範囲にわたり利用することができる。




 

 


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