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発明の名称 エレベータ装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平8−59121
公開日 平成8年(1996)3月5日
出願番号 特願平6−199256
出願日 平成6年(1994)8月24日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
発明者 伊藤 正信
要約 目的
非常停止時の駆動シーブとロープ間におけるロープ滑りの発生防止したエレベータ装置を提供する。

構成
駆動シーブ4と,電動機と,巻上機3とを備え、ブレーキ装置17を、巻上機3の回転部材に制動力を付勢する制動力付勢手段20と,制動力付勢手段20を開放してその付勢力を変化させる制動力開放手段19と,非常制動時に制動力開放手段19を制御する制動力制御手段とから構成される。
特許請求の範囲
【請求項1】一端に乗かごを連結し他端につり合いおもりを連結したロープを巻き掛ける駆動シーブと,上記駆動シーブを駆動する電動機と,上記駆動シーブを制動するブレーキ装置とを有する巻上機を備え、上記ブレーキ装置を、上記巻上機の回転部材に制動力を付勢する制動力付勢手段と,上記制動力付勢手段を開放してその付勢力を変化させる制動力開放手段と,非常制動時に上記制動力開放手段を制御する制動力制御手段とを含むエレベータ装置において、上記制動力制御手段は、非常制動中の上記乗かご側とつり合いおもり側のロープ張力比が所定値以下のときに上記制動力付勢手段による大きな制動力を与え、ロープ張力比が所定値以上のときに上記制動力より弱い制動力を与え、上記非常制動中の上記エレベータの運転要件を入力し、上記運転要件に応じて制動力指令値を出力して上記制動力制御手段に入力する制動力設定手段を備えたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】請求項1において、上記ブレーキ装置は、通電電流に応じて制動力を発生する励磁コイルを有し、上記制動力制御手段は、上記所定のロープ張力比以上のときに上記励磁コイルへの通電電流を制限するコイル電流制限手段を有し、このコイル電流制限手段によって弱い制動力を与えるようにしたエレベータ装置。
【請求項3】請求項1または2において、上記乗かごの運転要件は乗かご側およびつり合いおもり側のロープ張力であるエレベータ装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はエレベータ装置に係り、特に、非常制動時の制動中に制動力を制御する制動力制御手段を有するエレベータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、エレベータ装置は、図9に示すように、昇降路1の頂部に機械室2を形成し、この機械室2に設置した巻上機3の駆動シーブ4及びそらせ車5にロープ6をつるべ状に巻き掛け、ロープ6の両端に乗かご7およびつり合いおもり8をそれぞれ連結し、巻上機3を運転させることによって乗かご7を昇降運転するように構成されている。巻上機3は、駆動シーブ4と、これを回転駆動する電動機と、これを制動するブレーキ装置とから構成され、ブレーキ装置は巻上機3の回転部に制動力を付勢する制動力付勢手段と、制動力付勢手段を開放操作してその付勢力を除去するように変化させる制動力開放手段とから構成され、ブレーキ装置および電動機は制御手段14によって制御される。また、乗かご7およびつり合いおもり8の下部間は、つり合いプーリ10を巻き掛けたつり合いロープ9によって接続されており、このつり合いプーリ10によってつり合いロープ9の緩みを取り除いている。乗かご7からは照明用の電線や操作用あるいは各種検出器用の信号線などをまとめたテールコード11が引き出され、テールコード11は昇降路1の壁に設けられた接続箱12および配線13を経由して機械室2内に設けた制御装置14に接続されている。
【0003】エレベータ装置の運転は、まずブレーキ装置の制動力開放手段を操作して制動力を開放した状態にし、制御装置14により制御される巻上機3の電動機を駆動して駆動シーブ4を回転させ、ロープ6を介して乗かご7を駆動する。従って巻上機3の速度が乗かご7およびつり合いおもり8の速度となる。エレベータの通常運転時の停止時は、通常制動指令によって電動機の速度を下げて巻上機3の速度、すなわち、乗かご7の速度を零にし、その後、ブレーキ装置の制動力付勢手段により制動力を加えてブレーキ装置で発生する摩擦力を巻上機3および乗かご7を静止状態に保持する。
【0004】一方、非常停止の場合は、乗かご7が走行している状態で電動機の電源を遮断すると共に、ブレーキ装置の制動力開放を中止して制動力付勢手段により制動力を与え、まだ走行状態の乗かご7を減速し停止させる。すなわち、走行中の乗かご7をブレーキ装置の制動力で直接減速し停止させている。しかし、この非常停止の際に急激な減速を与えると、駆動シーブ4とロープ6間にロープ滑りが生じて停止距離が異常に増加し、昇降路1の下部に設けた緩衝器に高速で衝突する危険がある。
【0005】そこで、従来のエレベータ装置では、実開昭59−190769号公報に記載のようにエレベータの非常停止時または停電直後の非常制動時、乗かごが高速で走行している間はブレーキ装置の制動力を弱くし、乗かごが低速になった時点ではじめて全制動力を発生するようにブレーキ装置を制御する制動力制御手段を設けることが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】高速で運転中に非常停止または停電が発生して非常制動を行う場合、図10に示した乗かごの減速特性図のように、非常制動中に駆動シーブとロープ間に滑りが発生する。図中、点線はロープ滑りが発生しない場合の減速特性であり、これとの比較で分かるように実線で示す実際の減速特性は、ロープ滑りによって停止距離が異常に増加してしまう。このため、上述した非常停止時におけるロープ滑りにより緩衝器に高速で衝突する危険性が増大してしまう。
【0007】本発明の目的は、非常停止時の駆動シーブとロープ間におけるロープ滑りの発生防止したエレベータ装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、一端に乗かごを連結し他端につり合いおもりを連結したロープを巻き掛ける駆動シーブと、この駆動シーブを駆動する電動機と、上記駆動シーブを制動するブレーキ装置とを有する巻上機を備え、上記ブレーキ装置を、上記巻上機の回転部材に制動力を付勢する制動力付勢手段と、この制動力付勢手段を開放してその付勢力を変化させる制動力開放手段と、非常制動時に上記制動力開放手段を制御する制動力制御手段とを具備して成るエレベータ装置において、上記制動力制御手段は、上記非常制動中の上記乗かご側とつり合いおもり側のロープ引張力比が所定値以下のときに上記制動力付勢手段による大きな制動力を与え、上記ロープ張力比が所定値以上のときに上記制動力より弱い制動力を与えるように上記制動力開放手段を制御するように構成したことを特徴とする。
【0009】
【作用】本発明によるエレベータ装置は、上述のように非常制動時に、制動中の乗かご側およびつり合いおもり側のロープ張力の比に基づいて制動力制御手段により制動力開放手段を制御するようにし、ロープ張力比が所定値以下のときに制動力付勢手段による大きな制動力を与え、所定のロープ張力比以上のときに上述の制動力より弱い制動力を与えるようにしたため、ロープ滑りの発生を防止できる。
【0010】ロープ滑りが発生するか否かは、駆動シーブに巻き掛けられた両側のロープ張力の比で判定できる。すなわち、【0011】
【数1】

【0012】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面と共に説明する。
【0013】図1は本発明の一実施例によるエレベータ装置の系統図である。
【0014】巻上機3は、一端に乗かご7を連結し他端につり合いおもり8を連結したロープ6を巻き掛けた駆動シーブ4およびそらせ車と、この駆動シーブ4を駆動する電動機16と、駆動シーブ4に制動力を付与するブレーキ装置17とから構成されている。このブレーキ装置17は、巻上機3の回転部材であるブレーキドラム29にブレーキシュー33を介して制動力を付勢する制動力付勢手段20と、制動力付勢手段20の制動力を減少するように変化させる制動力開放手段19とを有して構成されいる。制御装置14は、乗かご7の速度,位置及びつり合いおもり8の位置を検出するパルスエンコーダ21の出力と、乗かご7の積載量検出器22の出力とを帰還入力として電動機16を制御しており、さらに制御装置14は、通常制動時あるいは非常制動時に与えられる制動指令23を受けて切り替えられるスイッチSWと、乗かご7側のロープ張力TC およびつり合いおもり8側のロープTW とで制動力指令81を設定する制動力設定手段80と、制動力開放手段19を制御する制動力制御手段26を有する。ロープ張力TC ,TW は、それぞれ乗かご7側、つり合いおもり8側のロープ6端に設けられるロープ張力検出手段91,92で検出される。また、制動力設定手段80および制動力制御手段26は詳細を後述するが、制動力設定手段80は制動中のロープ張力TC ,TW が入力され、ロープ張力TC ,TW の比の結果が指令81として出力される。制動力制御手段26は、指令81、すなわち、ロープ張力TC ,TW の比の結果に応じて制動力開放手段19を制御して制動力付勢手段20の制動力を減少するようにブレーキ装置17を制御している。制動力開放手段19は、例えば、電磁力を利用した電磁駆動機構、または特開平5−43150号公報に記載された油圧力を利用した油圧駆動機構で構成することができ、また制動力付勢手段20は、例えば、金属ばねで構成することができる。
【0015】図2および図3は、巻上機3およびブレーキ装置17の一例を示す正面図および側面図で、制動力開放手段19は電磁力を利用した電磁駆動機構で構成し、また制動力付勢手段20は金属ばねで構成した場合を示している。
【0016】電動機16の回転軸27は一対の軸受28によって回転自在に支承され、回転軸27に駆動シーブ4とブレーキ装置17が設けられている。ブレーキ装置17は、図2に示すように駆動シーブ4と一体に形成されたブレーキドラム29と、ブレーキドラム29を挟むように配置した一対のブレーキレバー30とを有しており、ブレーキレバー30は、その下端をピン31で回転自在に支持し、ほぼ回転軸27の中心に対応する位置に各々ピン32を介して蝶番結合されると共に、ブレーキドラム29に押圧されて制動力を与えるブレーキシュー33を有し、また上端である自由端側には制動力開放手段19と制動力付勢手段20が設けられている。各ブレーキシュー33のブレーキドラム29に対抗する面には、ブレーキドラム29の外周面に合致するように凹曲面に成されたライニング材34が固定されている。
【0017】ブレーキレバー30の自由端側に構成した制動力付勢手段20は、一対のブレーキレバー30間が貫通したロッド35を設け、ロッド35の両端に取り付けたナット48とブレーキレバー30との間にそれぞれブレーキばね36を配置して構成され、両ブレーキばね36によりブレーキレバー30の上部間隔は狭める方向の力を発生させ、これによりブレーキシュー33のライニング材34がブレーキドラム29の外周面に押圧力PB で押付けられている。
【0018】制動力付勢手段20の上方に位置したブレーキレバー30の自由端間に設けられた制動力開放手段19は、ブレーキばね36による制動力を開放するもので、その両側には軸方向に伸縮可能な押圧ロッド37がそれぞれ設けられ、押圧ロッド37の端がそれぞれブレーキレバー30に連結されている。従って、制動力開放手段19が作動して押圧ロッド37がそれぞれ外側に伸ばされると、ブレーキレバー30間を押し広げて押圧力PB を変化させることになる。
【0019】図4は、上述した制動力開放手段19の一例を示す部分断面図である。
【0020】箱体を形成する継鉄38はその中心に沿って上下に開口を有し、上部開口には軸受部材46が配置され、下部開口には軸受部材45が配置されている。継鉄38内には、軸受部材45にその中空部を合致させた筒状の固定鉄心39が固定され、また、この固定鉄心39を包囲して円筒状の励磁コイル51が配置されている。固定鉄心39に対向して同軸的に配置した可動鉄心40は、軸受部材46内に摺動可能に配置され、上述の励磁コイル51は固定鉄心39と可動鉄心40の対向部を包囲するように配置されている。可動鉄心40の中心部には可動ロッド43がナット49によって固定され、その下端は軸受部材45内に摺動可能に配置されている。継鉄38から導出した可動ロッド43の下端側には、レバー42と押圧ロッド37がそれぞれ一対ずつ設けられている。レバー42はピン47によって揺動可能に支持され、一端に可動ロッド43の下端が当接し、他端に押圧ロッド37の一端が当接している。押圧ロッド37の他端は前述のようにブレーキレバー30の自由端に接続されている。継鉄38にはフランジ44が設けられており、フランジ44を利用して図3に示す軸受28の固定部分に取付けられ、前述のように一対のレバー42をピン47を介して回転可能に支持している。
【0021】励磁コイル51の未励磁状態で、図2に示した制動力付勢手段20は一対にブレーキレバー30の上部間隔を狭める方向の力を与え、これによりブレーキシュー33のライニング材34がブレーキドラム29の外周面に押圧力PB で押付けられている。従って、一対のレバー42は押圧ロッド37によって矢印a方向に力を受け、可動ロッド43の下端を押し上げ、固定鉄心39と可動鉄心40の対向間には空隙δgが形成されている。
【0022】今、励磁コイル51を励磁すると、可動鉄心40は固定鉄心39側に電磁吸引されて移動し、これと共に可動ロッド43を下方に移動させる。可動ロッド43の下方への移動により、レバー42はピン47を支点として図示の二点鎖線のように回動し、押圧ロッド37を矢印b方向に移動させる。押圧ロッド37の移動によって、図2に示した一対にブレーキレバー30は上部間隔を広げる方向に駆動され、制動力付勢手段20による制動力を解除する。上述の説明からも分かるように制動力開放手段19は、制動力付勢手段20による制動力、つまり、ブレーキシュー33によるブレーキドラム29へ押圧力PB を、励磁コイル51への通電電流を制御することによって変化させることができる。
【0023】図5は制動力設定手段80を示す。制動力設定手段80はロープ張力演算手段93と、ロープ張力比演算手段94と、比較手段95および所定値設定手段96とで構成される。まずロープ張力演算手段93に乗かご7側のロープ張力TC およびつり合いおもり8側のロープ張力TW が入力され、図1に示す駆動シーブ4の両側のロープ張力TA ,TB を(4),(5)式に基づいて演算する。
【0024】
【数2】
A =TC +wR ・HC …(4)
【0025】
【数3】
B =TW +wR ・HW …(5)
ここに、wR ;ロープ6の単位長当りの重量HC ;乗かご7から駆動シープ4までのロープ長HW ;つり合いおもり8からそらせ車5までのロープ長次に、このロープ張力TA ,TB はロープ張力比演算手段94に入力され、ロープ張力比TR が(6)式で演算される。
【0026】
【数4】
R =TA /TB …(6)
この際、TR >0となるように、TA とTB の大なるほうが分子になるように演算される。さらに、このロープ張力比TR は所定値設定手段96で設定された所定値TS とともに比較手段95に入力され、ロープ張力比TR >所定値TS の時に指令81が出力され、ロープ張力比TR <所定値TS の時には指令81が出力されない。この所定値TS は、通常(1)式で述べたトラクション駆動係数exp(μκθ)以下で設定される。
【0027】図6は、図2に示した押圧力PB を変化させる制動力制御手段26を示す回路図で、電磁力を利用した電磁駆動機構で制動力解放手段19を構成した場合の制動力制御手段26を示している。
【0028】通常電源装置70の電源ラインL3,L4間には、電動機主制御回路を動作させるリレーと連動して動作するリレーの接点52と、励磁コイル51とが直列に接続されており、この接点52はエレベータ走行時に閉成し、また停止時に開放される。励磁コイル51と並列に放電用抵抗53が接続されている。一方、無停電電源装置54の電源ラインL1,L2間にはリレー58が接続され、このリレー58は図5の指令81の出力により付勢され、指令81の出力がない時は消勢するように構成されている。また電源ラインL1,L2間には、図1の制動指令23により動作し、通常時は開放状態になされると共に、非常時つまり走行中の非常停止時または停電時に閉成状態になされる接点60と、非常停止検知リレー59とが直列に接続されている。さらに電源ラインL1,L2間には、リレー58の接点58aと、励磁コイル51への電流を制限する抵抗等から成るコイル電流制限手段55と、上述した励磁コイル51と、この励磁コイル51の両側に設けた非常停止検知リレー59の接点59aとが直列に接続されている。
【0029】通常状態において、接点60は開放されており、リレー59は未励磁でありその接点59aも開放されているため、励磁コイル51は無停電電源装置54から分離されている。また乗かごの走行中には接点52は閉じており、通常電源装置70の電源ラインL3,L4から励磁コイル51へ通電されているため、制動力解放手段19は図4の状態から可動鉄心40を下方の固定鉄心39に吸引して、可動ロッド43を下方に移動させ、レバー42を介して押圧ロッド37を矢印b側に駆動し、図2に示した制動力付勢手段20に抗してブレーキレバー30の上部対向距離を増大している。従って、ブレーキ装置は解除されている。
【0030】エレベータの通常運転時の停止は、通常制動指令によって電動機の速度を下げて巻上機3の速度、すなわち、乗かご7の速度を零にすると、図6に示す接点52が開放して通常電源装置の電源ラインL4,L5から励磁コイル51が分離される。従って、制動力解放手段19は図4の状態に復帰し押圧ロッド37を矢印a側に駆動し、図2に示したブレーキレバー30の上部対向距離を広げていた解放力を除去するため、制動力付与手段20によりブレーキレバー30の上部対向距離を縮小させてブレーキシュー33をブレーキレバー29に押圧して制動力を加えて巻上機3および乗かご7を静止状態に保持する。
【0031】今、乗かごが高速で運転中に非常停止または停電が発生した場合の非常制動を考えると、電動機主制御回路が開放され、これに連動して動作する接点52も開放し励磁コイル51への通電が断たれる。この時点で図5に示すロープ張力比TR<所定値TSで指令81の出力がなければリレー58が消勢されて接点58aは開放しており、無停電電源装置54の電源ラインL1,L2間からも励磁コイル51は分離されている。これにより図4に示す制動力解放手段19は図4の実線の状態となり、図2に示したブレーキレバー30の上部対向距離を広げていた解放力を除去するため、制動力付与手段20によりブレーキレバー30の上部対向距離が縮まり、ブレーキシュー33をブレーキドラム29に押圧して制動力を加え、巻上機3および乗かご7を減速する。このとき制動力付与手段20は全制動力をブレーキドラム29に加えるため、急速に巻上機3は減速される。
【0032】そして、制動中のロープ張力比TR が増大し、所定値TS より大きくなると、制動力設定手段80から指令81が出力されると図6のリレー58は付勢されて接点58aは閉成され、また非常停止または停電によって図1のスイッチSWに連動する接点60が閉じてリレー59を励磁して接点59aを閉じる。これにより無停電電源装置54の電源ラインL2……接点58a……コイル電流制限手段55……接点59a……励磁コイル51……接点59a……電源ラインL1の回路が形成されて、コイル電流制限手段55により制限された電流が励磁コイル51に流れることになる。
【0033】図7は励磁コイル51に流れる電流Iと制動トルクTの関係を示したもので、電流I1 以下では制動トルクT1 が最大値となっている。電流I1 よりも多少大きな電流I2 は、図6の接点52が開放し接点59aおよび接点58aが閉成したときにコイル電流制限手段55によって制限されて励磁コイル51に流れる電流であり、制動トルクT2 は制動トルクT1 よりも小さくなる。なお電流I3 は接点59aが開放して接点52が閉成したときの電流であり、制動力は完全に開放され、制動トルクは0となる。
【0034】従って、コイル電流制限手段55により制限された電流が励磁コイル51に流れると、制動力解放手段19は図4の状態から可動鉄心40を下方の固定鉄心39側に所定の距離だけ吸引して、可動ロッド43を下方に移動させる。この移動により、レバー42を介して押圧ロッド37を矢印b側に所定の距離だけ駆動し、図2に示した制動力付勢手段20に抗してブレーキレバー30の上部対向距離を増大し、全制動力に対応する制動トルクT1 に比べて多少小さな制動力をブレーキドラム29に加えて、巻上機3および乗かご7を停止させる。
【0035】このように制動力制御手段26は、ロープ張力比TR が設定値TS より小さい範囲において制動トルクT1 の全制動力を加えるが、駆動シーブ4とロープ6間の摩擦力に余裕があるため滑ることなく図8の特性aのように減速する。そして制動力制御手段26は、A点で所定のロープ張力比TS に達すると、これを検出した図6のリレー58が付勢されて接点58aを閉成し、励磁コイル51の電流I2 を図7のようにし、制動トルクT1 より小さな制動トルクT2 を与える。この制動トルクが駆動シーブ4とロープ6間の摩擦力を越えない値、つまり、制動トルクT2 となるように励磁コイル51の電流I2 を設定しているので、駆動シーブ4とロープ6間が滑ることなく図8の特性bのように減速し停止する。従って、停止距離が異常に増加することないので、緩衝器に高速で衝突することもない。
【0036】なお、上述の図6に示した実施例においては、いずれの場合も制動力を2段階に変動させたが、コイル電流制限装置55を制動力設定手段80に連動して多段階に変動させても良い。
【0037】
【発明の効果】本発明のエレベータ装置によれば、エレベータの走行中の非常停止または停電時、非常制動中の乗かご側およびつり合いおもり側のロープ張力の比に基づいて制動力制御手段により制動力開放手段を制御するようにし、ロープ張力比が所定値以下のときに制動力付勢手段による大きな制動力を与え、所定のロープ張力比以上のときに上述の制動力より弱い制動力を与えるようにしたため、ロープ滑りの発生を防止できる。


 

 


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