| 発明の名称 |
工具保持装置 |
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| 発行国 |
日本国特許庁(JP) |
| 公報種別 |
公開特許公報(A) |
| 公開番号 |
特開平8−155774 |
| 公開日 |
平成8年(1996)6月18日 |
| 出願番号 |
特願平6−298647 |
| 出願日 |
平成6年(1994)12月1日 |
| 代理人 |
【弁理士】 【氏名又は名称】佐藤 一雄 (外3名)
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| 発明者 |
深 瀬 泰 志 / 宮 内 幹 由 |
| 要約 |
目的 ワーク加工時に発生する工具ホルダ取付面のフレッチングコロージョンを防ぐ。
構成 工作機械の主軸1の端部に工具ホルダを装着するための工具取付用テーパ面2を設ける。工具取付用テーパ面2の内面に、複数の環状をなす溝3を設ける。各溝3の内部に、固体潤滑剤と固体潤滑剤を固着させる接着剤とからなる複合層4を形成する。この複合層4により工具ホルダとの間を潤滑するとともに、工具ホルダからの負荷は、溝3以外の非溝面5で受ける。 |
特許請求の範囲
【請求項1】工作機械の主軸に形成された工具取付用テーパ面に、工具ホルダに形成されたテーパ軸部を嵌合させて工具を主軸に保持する工具保持装置において、前記工具取付用テーパ面の内面または前記テーパ軸部の外面のうちの少なくともいずれか一方に溝を設け、この溝の内部に、固体潤滑剤と固体潤滑剤を固着させる接着剤とを有する複合層を形成したことを特徴とする工具保持装置。 【請求項2】複合層をポーラスとし、溝に供給される潤滑油を、毛細管現象により複合層表面に浸透させることを特徴とする請求項1記載の工具保持装置。 【請求項3】溝には潤滑油供給路が連通され、前記潤滑油供給路を介して前記溝内に潤滑油が供給可能とされている請求項1記載の工具保持装置。
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発明の詳細な説明
【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、工作機械の主軸に形成された工具取付用テーパ面に、工具ホルダのテーパ軸部を嵌合させて工具を主軸に保持する工具保持装置に係り、特にワーク加工時に発生する異常摩耗(フレッチングコロージョン)を防止することができる工具保持装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、主軸先端の工具取付用テーパ面に、工具ホルダのテーパ軸部を嵌合させて工具を主軸に保持するようにした工作機械が知られている。 【0003】ところで、この種の工作機械、例えばマシニングセンターを用い、ラフィングカッターやエンドミルカッターにより荒削り加工を行なうと、工具ホルダのテーパ軸部と主軸の工具取付用テーパ面との間に、赤錆を伴なうフレッチングコロージョン現象が発生する。これは、加工時に工具ホルダのテーパ軸部と主軸の工具取付用テーパ面との間で微小な滑りが連続的に発生するため、両者の材料間で凝着が発生するためである。 【0004】そこで一部では、このようなフレッチングコロージョンを防止するため、例えば特公昭62−40133号公報に示されているように、固体潤滑剤の皮膜を形成する方法、あるいは実開昭60−153732号公報に示されているように、セラミックスコーティングを施す方法が採られている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】前記従来のフレッチングコロージョン防止方法は、固体潤滑剤の場合も、またセラミックスコーティングの場合も、嵌合部の凝着を低減する効果は得られるが、被膜層自体の強度が非常に小さいため、重切削により被膜層に剥離や割れ等が短時間で発生するおそれがある。そして、剥離や割れ等が発生した場合には、フレッチングコロージョン防止効果が極端に低下し、また被膜層を修復する場合には、機械を分解して被膜を形成し直さなければならず、その作業に多大な労力と時間を要するという問題がある。 【0006】本発明は、このような点を考慮してなされたもので、フレッチングコロージョン減少の発生を、長期に亘って安定に防止することができ、また長時間の使用で修復が必要となった場合でも、機械を分解することなく容易に行なうことができる工具保持装置を提供することを目的とする。 【0007】本発明の目的は、フレッチングコロージョン現象の発生を、より確実に防止することができる工具保持装置を提供するにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため本発明は、工作機械の主軸に形成された工具取付用テーパ面に、工具ホルダに形成されたテーパ軸部を嵌合させて工具を主軸に保持する工具保持装置において、前記工具取付用テーパ面の内面または前記テーパ軸部の外面のうちの少なくともいずれか一方に溝を設け、この溝の内部に、固体潤滑剤と固体潤滑剤を固着させる接着剤とを有する複合層を形成するようにしたことを特徴とする。 【0009】本発明はまた、複合層をポーラスとし、溝に供給される潤滑油を、毛細管現象により複合層表面に浸透させるようにしたことを特徴とする。 【0010】 【作用】本発明においては、工具取付用テーパ面の内面またはテーパ軸部の外面のうちの少なくともいずれか一方に溝が設けられ、この溝内部に、固体潤滑剤と固体潤滑剤を固着させる接着剤とを有する複合層が形成されている。このため、工具取付用テーパ面とテーパ軸部との間の微小な隙間に固体潤滑剤が浸透し、フレッチングコロージョンを防止することが可能となる。 【0011】また本発明によれば、複合層は、工具取付用テーパ面とテーパ軸部との嵌合部に部分的に設けた溝内部に形成されているので、重切削による負荷は、溝以外の部分で保持され、複合層に剥離や割れ等が発生することがなく、長期に亘ってフレッチングコロージョンを安定に防止することが可能となる。また、複合層の補給、交換は、一部あるいは全部を溝から取出して再充填することにより容易に行なうことが可能となる。 【0012】さらに、本発明においては、複合層をポーラスとし、溝に供給される潤滑油を、毛細管現象により複合層表面に浸透させるようにしている。このため、フレッチングコロージョン現象の発生を、より確実に防止することが可能となる。 【0013】 【実施例】以下、本発明を図面を参照して説明する。 【0014】図1は、本発明の第1実施例に係る工具保持装置を示すもので、図中、符号1はマシニングセンター等の工作機械の主軸であり、この主軸1の先端部には、先端に向って次第に拡径するテーパ孔状の工具取付用テーパ面2が形成されている。そしてこの工具取付用テーパ面2には、図示しない工具ホルダのテーパ軸部が嵌入され、これにより工具が主軸1の先端に保持されるようになっている。 【0015】工具取付用テーパ面2には、例えば軸方向に10mm間隔で環状の溝3が5本設けられており、その内部には、上面が工具取付用テーパ面2とほぼ面一をなす複合層4が形成されている。 【0016】各溝3は、図2に示すように、開口端の幅が5mm、深さが5mm程度で、かつ開口端の幅よりも底端の幅の方が広い蟻溝状をなしており、これにより、複合層4を溝3内に安定に保持できるようになっている。 【0017】この複合層4は、固体潤滑剤と固体潤滑剤を固着させるための接着剤とから構成されている。固体潤滑剤としては、例えばMoS2、C、BN等が用いられ、また接着剤となる有機バインダーとしては、例えばエポキシ樹脂等が用いられている。そしてこれらは、重量比で、固体潤滑剤:接着剤=8:2〜9:1の割合で混合され、これを溝3内に充填することにより、複合層4として形成するのが望ましい。 【0018】次に、本実施例の作用について説明する。 【0019】主軸1の工具取付用テーパ面2に、図示しない工具ホルダのテーパ軸部を嵌入すると、工具が主軸1に保持される。この状態で、重切削等の加工を行なうと、工具取付用テーパ面2と工具ホルダのテーパ軸部との間の微小な隙間に、複合層4の固体潤滑剤が浸透し、両者間の潤滑が行なわれる。このため、フレッチングコロージョンが防止される。 【0020】一方、加工時における工具ホルダの面圧は、工具取付用テーパ面2の溝3以外の非溝面5で受けられ、したがって複合層4に過大な負荷がかかることがない。このため、複合層4に剥離あるいは割れ等が生じることがなく、長期に亘ってフレッチングコロージョンの発生を安定に抑制することができる。この複合層4を補給、交換する場合には、複合層4の一部あるいは全部を溝3から取出して再充填する。 【0021】本発明者等は、図1に示す主軸1にエンドミルカッターを挿着し、最大切削量で連続切削を行なってフレッチングコロージョン発生の有無を確認する実験を行なった。 【0022】その結果、長時間連続切削を行なっても、フレッチングコロージョンの発生は全く認められなかった。また、複合層4に剥離や割れ等が発生しないことも確認された。 【0023】このように本実施例によれば、工具取付用テーパ面2に設けた溝3内に複合層4を形成するようにしているので、複合層4に剥離や割れ等を生じさせることなく、嵌合部でのフレッチングコロージョンの発生を防止することができる。 【0024】なお、複合層4の工具取付用テーパ面2に占める割合は、工具の保持力を確保するためには50%以下とすることが好ましく、またフレッチングコロージョンの防止の観点からは20%以上とすることが好ましい。 【0025】図3は、本発明の第2実施例を示すもので、複合層を主軸側ではなく、工具ホルダ側に設けるようにしたものである。 【0026】すなわち、工具ホルダ6のテーパ軸部7外面には、軸方向に任意の間隔で環状の溝8が、例えば5本設けられており、これら各溝8内には、前記第1実施例における複合層4と同一組成の複合層(図示せず)が形成されるようになっている。 【0027】なお、その他の点については、前記第1実施例と同一構成となっており、作用も同一である。 【0028】このように工具ホルダ6側に複合層を形成するようにしても、前記第1実施例と同一の効果が期待できるとともに、複合層の補給、交換の際の作業をより容易なものとすることができる。 【0029】図4は、本発明の第3実施例を示すもので、前記第1実施例における5本の溝3に代え、1本の溝13を設けるようにしたものである。 【0030】すなわち、この溝13は、工具取付用テーパ面2に軸方向に所定ピッチで設けた螺旋溝で構成されており、その内部には、複合層が形成されている。 【0031】なお、その他の点については、前記第1実施例と同一構成となっており、作用も同一である。 【0032】このように、螺旋状の溝13を用いても、前記第1実施例と同様の効果を得ることができる。そしてこの溝13を、例えば図3に示す溝8に代えてテーパ軸部7に設けるようにしても、同様の効果が期待できる。 【0033】図5は、本発明の第4実施例を示すもので、前記各実施例の場合と異なり、複合層を主軸側と工具ホルダ側との両方に設けるようにしたものである。 【0034】すなわち、主軸1の工具取付用テーパ面2の内面には、前記第1実施例と同様の溝3が例えば3本設けられており、また工具ホルダ6のテーパ軸部7の外面には、前記第2実施例と同様の溝8が、前記溝3と重ならないようにして例えば2本設けられている。そして、溝3内部には、複合層4が形成されるとともに、溝8内部には、複合層4と同一組成の複合層24が形成されるようになっている。 【0035】なお、その他の点については、前記第1実施例と同一構成となっており、作用も同一である。 【0036】このように、主軸1側と工具ホルダ6側との両方に複合層4、24を設けるようにしても、前記第1実施例と同様の効果が得られるとともに、両複合層4、24の補給、交換時期を変えるようにすれば、常に安定した潤滑効果が得られる。 【0037】図6は、本発明の第5実施例を示すもので、前記第1実施例における環状の溝3に代え、軸方向の溝33を設けるようにしたものである。 【0038】すなわち、主軸1の工具取付用テーパ面2の内面には、軸方向に延在する溝33が周方向に任意間隔で複数本設けられており、これら各溝33の内部には、複合層4がそれぞれ形成されている。 【0039】なお、その他の点については、前記第1実施例と同一構成となっており、作用も同一である。 【0040】このように、軸方向の溝33を用いても、前記第1実施例と同様の効果が得られる。そして、この溝33を、例えば図3に示す溝8に代えてテーパ軸部7に設けるようにしても、同様の効果が期待できる。 【0041】図7は、本発明の第6実施例を示すもので、工具取付用テーパ面とテーパ軸部との嵌合部に潤滑油を供給できるようにしたものである。 【0042】すなわち、主軸1の工具取付用テーパ面2の内面には、環状の溝3が軸方向に間隔を置いて例えば3本設けられており、これら各溝3間は、軸方向の連結溝41に連結され、また基端側の溝3は、主軸1の任意位置に設けた油溜まり42に連通孔43を介し連通している。そして、栓44を取外して油溜まり42に充填された潤滑油45は、連通孔43を介し各溝3、41に供給されるようになっている。 【0043】これら各溝3、41の内部には、前記第1実施例における複合層4と同一組成で、かつ50μm以下の気孔を有する多孔質の複合層(図示せず)が形成されるようになっており、各溝3、41に供給された潤滑油45は、毛細管現象により前記複合層表面に浸透し、工具取付用テーパ面2と工具ホルダのテーパ軸部(図示せず)との間に油膜を形成するようになっている。 【0044】なお、その他の点については、前記第1実施例と同一構成となっており、作用も同一である。 【0045】本発明者等は、図7に示す主軸1にエンドミルカッターを装着し、最大切削量で連続切削を行なってフレッチングコロージョン発生の有無を確認する実験を行なった。 【0046】その結果、長時間連続切削を行なっても、フレッチングコロージョンの発生は全く認められず、また複合層に剥離や割れ等が発生しないことが確認された。 【0047】このように本実施例によれば、主軸1の工具取付用テーパ面と工具ホルダのテーパ軸部との嵌合部が、複合層と潤滑油45とにより潤滑されるので、フレッチングコロージョンの発生をより有効に防止することができる。 【0048】図8および図9は、本発明の第7実施例を示すもので、前記第6実施例の構成を工具ホルダに適用するようにしたものである。 【0049】すなわち、工具ホルダ6のテーパ軸部7外面には、軸方向に任意の間隔で環状の溝8が例えば6本設けられており、一方テーパ軸部の内部には各溝8に連通する潤滑油封入路51が設けられている。そして、この潤滑油封入路51内には、栓52を取外すことにより潤滑油(図示せず)が封入されるようになっている。 【0050】一方、各溝8の内部には、前記第6実施例における複合層と同一の複合層54、すなわち前記第1実施例における複合層4と同一組成で、かつ50μm以下の気孔を有する多孔質の複合層54が形成されている。各溝8に潤滑油封入路51から供給された潤滑油は、毛細管現象により前記複合層54の表面に浸透し、図示しない工具取付用テーパ面と工具ホルダ6のテーパ軸部7との間に油膜を形成するようになっている。 【0051】なお、その他の点については、前記第1実施例と同一構成となっており、作用も同一である。 【0052】このように本実施例によれば、潤滑油封入路51を工具ホルダ6内に設けて潤滑油による潤滑を行なうようにしているので、潤滑油は工具ホルダ6の回転に伴なう遠心力により複合層54に積極的に浸透し、前記第6実施例の場合よりもさらに大きな潤滑効果が得られる。 【0053】 【発明の効果】以上説明したように本発明は、工具取付用テーパ面の内面またはテーパ軸部の外面のうちの少なくともいずれか一方に溝を設け、この溝内部に、固体潤滑剤と固体潤滑剤を固着させる接着剤とを有する複合層を形成するようにしているので、複合層に剥離や割れ等を発生させることなく潤滑剤の被覆層を形成でき、フレッチングコロージョン現象の発生を長期に亘って防止することができるとともに、複合層の修復も容易である。 【0054】本発明はまた、複合層をポーラスとし、溝に供給される潤滑油を、毛細管現象により複合層表面に浸透させるようにしているので、潤滑効果を増大させ、フレッチングコロージョン現象の発生を、より確実に防止することができる。
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