| 発明の名称 |
バイト工具による主軸回転角制御式切削加工方法 |
|
| 発行国 |
日本国特許庁(JP) |
| 公報種別 |
公開特許公報(A) |
| 公開番号 |
特開平8−118115 |
| 公開日 |
平成8年(1996)5月14日 |
| 出願番号 |
特願平6−255557 |
| 出願日 |
平成6年(1994)10月20日 |
| 代理人 |
【弁理士】 【氏名又は名称】三好 秀和 (外3名)
|
| 発明者 |
伊達 隆夫 / 河野 真 / 覚張 勝治 / 荒木 正文 |
| 要約 |
目的 バイト半径に関係なく一本のバイト工具により任意の内径の穴加工などの粗加工、中仕上げ加工、仕上げ加工、面取り加工を工具交換を必要とすることく行うこと、【構成】 自身の中心軸線周りの回転角を定量的に制御可能な主軸66に、その中心軸線を中心として複数個の切刃54〜60を放射線状に有するバイト工具50を取り付け、主軸中心Csの被加工物Wに対する相対的な移動軌跡が切削すべき形状に適合したものになるように主軸66と被加工物Wとを軸制御により少なくとも主軸66の回転軸線に直交する平面に沿って相対変位させて主軸66と被加工物Wとの間に相互補間運動を行わせ、主軸66の回転角をその軸制御に対して所定の相関関係をもって同期制御することにより主軸66の全回転角位置にて被加工物Wの加工面に対するバイト工具50の刃先方向を所定の方向に保ち、前記複数個の切刃より選択された一つの切刃によって前記相互補間運動による補間軌跡Lにより決まる形状に被加工物Wを切削する。
構成 自身の中心軸線周りの回転角を定量的に制御可能な主軸66に、その中心軸線を中心として複数個の切刃54〜60を放射線状に有するバイト工具50を取り付け、主軸中心Csの被加工物Wに対する相対的な移動軌跡が切削すべき形状に適合したものになるように主軸66と被加工物Wとを軸制御により少なくとも主軸66の回転軸線に直交する平面に沿って相対変位させて主軸66と被加工物Wとの間に相互補間運動を行わせ、主軸66の回転角をその軸制御に対して所定の相関関係をもって同期制御することにより主軸66の全回転角位置にて被加工物Wの加工面に対するバイト工具50の刃先方向を所定の方向に保ち、前記複数個の切刃より選択された一つの切刃によって前記相互補間運動による補間軌跡Lにより決まる形状に被加工物Wを切削する。 |
特許請求の範囲
【請求項1】 自身の中心軸線周りの回転角を定量的に制御可能な主軸に、その中心軸線を中心として複数個の切刃を放射線状に有するバイト工具を取り付け、主軸中心の被加工物に対する相対的な移動軌跡が切削すべき形状に適合したものになるように主軸と被加工物とを軸制御により少なくとも前記主軸の回転軸線に直交する平面に沿って相対変位させて主軸と被加工物との間に相互補間運動を行わせ、前記主軸の回転角を前記軸制御に対して所定の相関関係をもって同期制御することにより主軸の全回転角位置にて被加工物の加工面に対するバイト工具の刃先方向を所定の方向に保ち、前記複数個の切刃より選択された一つの切刃によって前記相互補間運動による補間軌跡により決まる形状に被加工物を切削することを特徴とする主軸回転角制御式切削加工方法。 【請求項2】 前記複数個の切刃は各々被加工物に実質的に点接触するシングルポイントバイトであることを特徴とする請求項1に記載の主軸回転角制御式切削加工方法。 【請求項3】 前記複数個の切刃は粗削り用切刃と中削り用切刃と仕上げ削り用切刃と面取り用切刃のうちの少なくとも二つを含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の主軸回転角制御式切削加工方法。
|
発明の詳細な説明
【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、バイト工具による切削加工方法に関し、特に同時多軸制御機能を有するNC工作機械などによる切削加工に使用するバイト工具による主軸回転角制御式の切削加工方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、ボーリング工具などのバイト工具による切削加工は、バイト工具を主軸に装着し、主軸の回転数を制御して主軸を軸線方向、即ちZ軸方向へ移動させることによりバイト工具の切刃によってワークテーブル上の被加工物に対してバイト半径の穴加工を行う。 【0003】この切削加工は、ボーリング加工と云われ、バイト工具のバイト半径により一義的に決まる内径のストレート穴の加工に限定される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】従来のバイト工具による切削加工は、バイト工具を単に回転させるだけの単純な主軸回転式切削加工であり、この切削加工においては、ストレート穴の加工に限定され、しかもバイト工具のバイト半径により加工穴径が一義的に決まるため、加工穴径毎に所要のバイト半径を有するバイト工具を準備し、また加工穴径の変更の度に主軸に装着するバイト工具を加工穴径に適合するバイト工具に交換する必要がある。 【0005】また従来のバイト工具による切削加工では、一つの穴加工において、粗加工、中仕上げ加工、仕上げ加工を行う場合には、粗削り用バイト工具、中削り用バイト工具、仕上げ削り用バイト工具が個々に必要で、一つの穴加工でも工具交換を行わなければならない。 【0006】更に、面取り加工がある場合には、更に面取り用バイト工具が必要で、面取り加工に際して更に工具交換を行う必要がある。 【0007】工具交換はマシニングセンタなどの工作機械の稼動率を低下させる原因になる。 【0008】本発明は、上述の如き問題点に着目してなされたものであり、バイト半径に関係なく一本のバイト工具により任意の内径の穴加工、任意の外径の外周面加工、その他、テーパ加工、球面加工、多角形加工、ねじ切り加工、フランジ面加工、自由形状加工を回転切削方式にて効率よく行い、しかも粗加工、中仕上げ加工、仕上げ加工、面取り加工に際して工具交換を必要としない新規な主軸回転角制御式の切削加工方法を提供することを目的としている。 【0009】 【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明による主軸回転角制御式切削加工方法は、自身の中心軸線周りの回転角を定量的に制御可能な主軸に、その中心軸線を中心として複数個の切刃を放射線状に有するバイト工具を取り付け、主軸中心の被加工物に対する相対的な移動軌跡が切削すべき形状に適合したものになるように主軸と被加工物とを軸制御により少なくとも前記主軸の回転軸線に直交する平面に沿って相対変位させて主軸と被加工物との間に相互補間運動を行わせ、前記主軸の回転角を前記軸制御に対して所定の相関関係をもって同期制御することにより主軸の全回転角位置にて被加工物の加工面に対するバイト工具の刃先方向を所定の方向に保ち、前記複数個の切刃より選択された一つの切刃によって前記相互補間運動による補間軌跡により決まる形状に被加工物を切削することを特徴としている。 【0010】本発明による主軸回転角制御式切削加工方法においては、前記複数個の切刃は各々被加工物に実質的に点接触するシングルポイントバイトであることを詳細な特徴としている。 【0011】また本発明による主軸回転角制御式切削加工方法においては、前記複数個のバイト工具は粗削り用切刃と中削り用切刃と仕上げ削り用切刃と面取り用切刃のうちの少なくとも二つを含んでいることをもう一つの詳細な特徴としている。 【0012】 【作用】上述の如き構成によれば、主軸と被加工物との相対的な軸制御により主軸と被加工物との間に相互補間運動が行われつつ軸制御に対する主軸の回転角の同期制御によって主軸の全回転角位置にて被加工物の加工面に対するバイト工具の刃先方向が所定値に保たれ、複数個の切刃より選択された一つの切刃によって前記相互補間運動による補間軌跡により決まる形状に被加工物が切削される。 【0013】各切刃がシングルポイントバイトであることにより、ヘール加工用の総形バイト工具による場合に比して切削抵抗が小さく、このことにより軸制御による相互補間運動の速度、即ち切削速度を速めることが可能になる。 【0014】また複数個の切刃は粗削り用切刃と中削り用切刃と仕上げ削り用切刃と面取り用切刃のうちの少なくとも二つを含んでいることにより、それら切刃の選択使用によって一つのバイト工具で、粗加工、中仕上げ加工、仕上げ加工、面取り加工などの複数種類の加工が行われる。 【0015】 【実施例】以下に本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。 【0016】図1、図2は本発明による主軸回転角制御式切削加工方法による切削加工を内周面加工に適用した実施例を示している。 【0017】バイト工具50は、バー部分52を有し、バー部分52の先端部に粗削り用切刃54と仕上げ削り用切刃56と二つ面取り用切刃58、60の4個の切刃をバー部分52の中心軸線を中心として放射線状に互いに90度の位相角をもって取り付けられている。 【0018】バー部分52の根元部にはATCアーム係合用周溝部62と主軸係合用テーパ軸部64とがバー部分52と同心に設けられており、バイト工具50は主軸係合用テーパ軸部64をもって工作機械の主軸66に形成されているテーパ状の工具受け入れ孔68に同心嵌合する。これによりバー部分52は主軸66の中心軸線Csに同心に装着される。 【0019】主軸66にはキー70が取り付けられており、キー70は、ATCアーム係合用周溝部62に形成されている位置決めキー溝72に係合し、バイト工具50の回り止めと回転方向の位置決めとを行う。位置決めキー溝72は、粗削り用切刃54に対して90度回転変位した位置に形成されている。 【0020】主軸66はサーボモータ21(図4参照)により自身の中心軸線Cs周りに回転角を定量的に制御され、この回転角の原点をキー70の主軸回転方向の配置位置に設定されている。 【0021】上述のキー係合によりバイト工具50は主軸66に対して回転方向に一義的に位置決め装着され、主軸66が原点位置にある場合には、粗削り用切刃54は、図2に示されているように、その原点位置より90度回転変位した位置に位置する。 【0022】本発明による主軸回転角制御式切削加工方法では、主軸中心Csの被加工物Wに対する相対的な移動軌跡が切削すべき形状に適合したものになるように、主軸66と被加工物Wとを軸制御、この場合、X軸制御とY軸制御とにより主軸66の回転軸線に直交する平面に沿って相対変位させて主軸66と被加工物Wとの間に真円の相互補間運動を行わせ、主軸66の回転角をX軸制御とY軸制御とに対して所定の相関関係をもって同期制御することにより主軸66の全回転角位置にて被加工物Wの内周面に対するバイト工具50の刃先方向を所定の方向に保ち、図示例では粗削り用切刃54と被加工物Wの内周面との角度β(図3参照)を一定に保ち、粗削り用切刃54が、前記相互補間運動による補間軌跡(主軸中心軌跡)L(図3参照)により決まる形状、即ち真円の横断面形状に被加工物Wの内周面を粗切削する。 【0023】図3に示されているように、バイト工具50の中心から粗削り用切刃54の刃先までの距離、即ちバイト半径をTr、被加工物Wの加工半径Rとすると、主軸中心Csと被加工物Wの中心CwとはR−Tr=eだけ偏心しており、補間軌跡Lは(R−Tr)を半径とし、被加工物Wの中心Cwと同心の真円となる。 【0024】図3に示されて状態より主軸66の回転角を、X軸制御およびY軸制御との同期制御において180度進めると、仕上げ削り用切刃56が被加工物Wの内周面に対して角度βを一定に保ち、粗削り用切刃54に代わって仕上げ削り用切刃56が、前記相互補間運動による主軸中心軌跡Lにより決まる真円の横断面形状に被加工物Wの内周面を仕上げ切削する。 【0025】また図3に示されて状態より主軸66の回転角を、X軸制御およびY軸制御との同期制御において90度あるいは270度進めると、面取り用切刃58あるいは60が被加工物Wの面取り加工面に対して角度βを一定に保ち、面取り用切刃58あるいは60が、前記相互補間運動による主軸中心軌跡Lにより決まる真円の横断面形状に被加工物Wの面取り加工を行う。 【0026】このような主軸66の回転角制御により、内周面の粗加工、仕上げ加工、面取り加工を、工具交換を必要とすることなく一つのバイト工具50で行うことができる。 【0027】なお、バイト工具50の切刃の個数は、4個に限定されることはなく、隣接する切刃が相互に干渉しない範囲で、4個以上の複数個であってもよい。また切刃の組み合わせも上述の実施例のものに限定されることはなく、中仕上げ削り用切り刃が設けられてもよい。またバイト半径Trは各切刃54、56、58、60で、互いに同一であっても、異なっていてもよい。 【0028】ここで使用されるバイト工具50の各切刃54、56、58、60はシングルポイントバイトである。ここで云うシングルポイントバイト工具は、被加工物に実質的に点接触する形式のバイト工具、換言すれば非総形のバイト工具の総称であり、これには、穴ぐりバイト、中ぐりバイト、突切りバイト、ねじ切りバイト、丸こまバイト、旋削バイトなどがある。 【0029】図4は外周面加工の例を示している。なお、図4において図3に対応する部分は図3に付した符号と同一の符号を付けてその説明を省略する。 【0030】バイト工具50は、内周面加工用のものと同様の構成のものであってよく、バー部分52の先端部に粗削り用切刃54と仕上げ削り用切刃56と二つ面取り用切刃58、60の4個の切刃をバー部分52の中心軸線を中心として放射線状に互いに90度の位相角をもって取り付けられている。 【0031】この場合もバイト工具50は、図示されていないが、上述の実施例のものと同様に、主軸係合用テーパ軸部をもって主軸66に形成されているテーパ状の工具受け入れ孔に同心嵌合する。これによりバー部分52は主軸66の中心軸線Csに同心に装着される。またバイト工具50は、図示されていないが、上述の実施例のものと同様に、主軸66にキー係合することにより、主軸66に対して回転方向に一義的に位置決め装着される。 【0032】この場合も、X軸制御とY軸制御とにより主軸66の回転軸線に直交する平面に沿って相対変位させて主軸66と被加工物Wとの間に真円の相互補間運動を行わせ、主軸66の回転角をX軸制御とY軸制御とに対して所定の相関関係をもって同期制御することにより主軸66の全回転角位置にて被加工物Wの外周面に対するバイト工具50の刃先方向を所定の方向に保ち、図示例では粗削り用切刃54と被加工物Wの内周面との角度βを一定に保ち、粗削り用切刃54が、前記相互補間運動による補間軌跡Lにより決まる形状、即ち真円の横断面形状に被加工物Wの外周面を粗切削する。 【0033】図4に示されて状態より主軸66の回転角を、X軸制御およびY軸制御との同期制御において180度進めると、仕上げ削り用切刃56が被加工物Wの内周面に対して角度βを一定に保ち、粗削り用切刃54に代わって仕上げ削り用切刃56が、前記相互補間運動による主軸中心軌跡Lにより決まる真円の横断面形状に被加工物Wの外周面を仕上げ切削する。 【0034】また図4に示されて状態より主軸66の回転角を、X軸制御およびY軸制御との同期制御において90度あるいは270度進めると、面取り用切刃58あるいは60が被加工物Wの面取り加工面に対して角度βを一定に保ち、面取り用切刃58あるいは60が、前記相互補間運動による主軸中心軌跡Lにより決まる真円の横断面形状に被加工物Wの面取り加工を行う。 【0035】このような主軸66の回転角制御により、外周面の粗加工、仕上げ加工、面取り加工を、工具交換を必要とすることなく一つのバイト工具50で行うことができる。 【0036】図5は本発明による主軸回転角制御式切削加工方法の実施に使用するNC工作機械の一例を示している。NC工作機械は、ベッド1と、ベッド1上にY軸方向に移動可能に設けられてY軸テーブル3と、Y軸テーブル3上にX軸方向に移動可能に設けられてX軸テーブル5とを有し、X軸テーブル5上に被加工物Wを固定載置される。Y軸テーブル3はY軸サーボモータ7によってY軸方向に駆動され、X軸テーブル5はX軸サーボモータ9によってX軸方向に駆動され、X軸テーブル5上の被加工物Wは、Y軸サーボモータ7によるY軸テーブル3のY軸方向の移動とX軸サーボモータ9によるX軸テーブル5のX軸方向の移動により、X軸とY軸による水平面に沿ってX座標とY座標による任意に座標位置に軸制御する。 【0037】NC工作機械のコラム11にはZ軸スライダ13が上下方向、即ちZ軸方向に移動可能に装着されており、Z軸スライダ13はZ軸サーボモータ15によってZ軸方向に駆動される。 【0038】Z軸スライダ13には主軸頭17が取り付けられており、主軸頭17には上述の主軸66がZ軸と同一方向の軸線周り、即ちC軸周りの回転可能に装着されている。 【0039】主軸66は主軸モータであるC軸サーボモータ21により回転駆動されると共にC軸回転角を定量的に制御される。 【0040】ここで、X軸とY軸による被加工物Wの移動平面は主軸66の回転軸線、即ちC軸(Z軸)に直交する平面である。 【0041】X軸サーボモータ9、Y軸サーボモータ7、Z軸サーボモータ15、C軸サーボモータ21の各々にはロータリエンコーダ25、27、29、31が装着されており、このロータリエンコーダ25、27、29、31は各軸のサーボモータ9、7、15、21の回転角を検出し、回転角情報をNC装置33へ出力する。このうちC軸サーボモータ21のロータリエンコーダ31は、アブソリュート型のロータリエンコーダにより構成され、主軸66の回転角を、前記原点を絶対基準位置として計測する。 【0042】NC装置33は、図6に示されているように、NC加工プログラムを実行して各軸指令を出力するプログラム実行部35、プログラム実行部35より軸指令を入力して補間演算を行う補間演算部37とを有し、補間演算部37は、X、Y、Z、Cの各軸の移動量を指令値として各軸の位置制御・駆動部39、41、43、45へ出力する。 【0043】位置制御・駆動部39、41、43、45は、各々同軸のロータリエンコーダ25、27、29、31より回転角情報を入力し、位置フィードバック補償制御により演算される各軸の操作量をもって各軸のサーボモータ9、7、15、21の駆動を制御する。 【0044】本発明により主軸回転角制御式切削加工方法においては、主軸中心の被加工物Wに対する相対的な移動軌跡が切削すべき形状に適合したものになるようにX、Y、Zの各軸の指令量をNC加工プログラムで設定しておき、このNC加工プログラムの実行によってバイト工具50と被加工物WとをX、Y、Zの軸制御、少なくともX、Yの軸制御によって主軸66の回転軸線に直交する平面に沿って相対変位させてバイト工具50と被加工物Wとの間に相対補間運動を行わせ、主軸66の回転角をX、Y、Zの各軸の軸制御に対して所定の相関関係をもって同期制御し、主軸66の全回転角位置にて被加工物Wの加工面に対するバイト工具50の刃先方向を所定の方法、例えば法線方向に保って切刃54、56、58、60の何れ一つで、被加工物Wを相対補間運動による補間軌跡により決まる形状に切削する。 【0045】この場合、X、Yの2軸の各軸制御は相互に90度の位相差を有する三角関数を含む方程式により定義される軌跡を描くよう行われる。 【0046】この主軸回転角制御式切削加工方法においては、主軸66の回転角制御と、X、Yの同時2軸制御、あるいはX、Y、Zの同時3軸制御との組み合わせにより、バイト工具50のバイト半径に関係なく一本のバイト工具によって任意の内径の穴加工、任意の外径の外周面加工、テーパ加工、球面加工、多角形加工、ねじ切り加工、フランジ面加工、自由形状加工を行うことができ、またシングルポイントバイト工具の使用のもとに、切削加工速度が総形バイト工具を使用したヘール加工に属する切削加工法による場合に比して3〜20倍に向上する。 【0047】次に本発明により主軸回転角制御式切削加工方法における移動制御と同期制御との詳細を円筒内外周面加工について個別に説明する。 【0048】円筒面の半径をR、1回転当たりのZ軸方向送り量をp、Z軸方向送り開始位置のZ軸座標をZoとすると、各回転角位置における刃先の座標位置(Xt,Yt,Zt)はX軸方向を原線とする角度θを媒体変数として下式の関数式により与えられる。 Xt=RcosθYt=RsinθZt=Zo−(p/2π)θ【0049】円筒内面加工では、図3に示されているように、刃先軌跡のXY平面における加工面外向き法線ベクトル→n=(nx,ny)は下式により示される。 nx=−cosθny=−sinθ【0050】従って、主軸中心軌跡、即ち主軸中心座標位置(Xs,Ys,Zs)は下式により示される。 【数1】Xs=Xt+nx・Tr=Rcosθ−Trcosθ=(R−Tr)cosθYs=Yt+ny・Tr=Rsinθ−Trsinθ=(R−Tr)sinθZs=Zt−Tz【0051】この場合、主軸中心座標位置(Xs,Ys)によるX軸とY軸との同時2軸制御により、バイト工具50と被加工物Wとの間に相互円弧補間運動が行われ、その円弧補間軌跡として、主軸中心軌跡は真円をなす。ただし、Trはバイト工具50のバイト半径、Tzは工具長さ(主軸66のZ軸原点から刃先までのZ軸方向の軸長)である。 【0052】円筒内面加工ではX軸方向を原線とする主軸回転角度αは下式により示される。 【数2】α=tan-1(ny/nx)+γ=tan-1(−sinθ/−cosθ)+γ=θ+π+γ【0053】ここで、γは切刃選択角であり、図示例では、γ=0度で面取り用切刃58が、γ=90度で粗削り用切刃54が、γ=180度で面取り用切刃60が、γ=270度で仕上げ削り用切刃56が選択される。 【0054】上述の条件を満たしてX、Y、Zの各軸の軸制御が行われ、この軸制御に対して主軸回転角度αが同期制御されることにより、切刃選択角γの設定によって選択された一つの切刃54、56、58あるいは60は、主軸66の全回転角位置にて被加工面に対して常に法線を向くようになり、切刃選択角γの設定によって選択された一つの切刃によって任意の半径Rの円筒内面加工が行われる。 【0055】これによりバイト半径に関係なく一本のバイト工具50により任意の半径の円筒内面加工を行うことができた上で、工具交換を必要とすることなく、粗加工、中仕上げ加工、仕上げ加工、面取り加工が行われる。このことにより工具交換の頻度が低下し、工作機械の稼動率が向上し、併せて必要工具個数が削減され、シールマガジンの小容量化が行われる。 【0056】円筒外面加工では、図4に示されているように、刃先軌跡のXY平面における加工面外向き法線ベクトル→n=(nx,ny)は下式により示される。 nx=cosθny=sinθ【0057】従って、主軸中心軌跡、即ち主軸中心座標位置(Xs,Ys,Zs)は下式により示される。 【数3】Xs=Xt+nx・Tr=Rcosθ+Trcosθ=(R+Tr)cosθYs=Yt+ny・Tr=Rsinθ+Trsinθ=(R+Tr)sinθZs=Zt−Tz【0058】円筒外面加工ではX軸方向を原線とする主軸回転角度αは下式により示される。 【数4】α=tan-1(ny/nx)+γ=tan-1(sinθ/cosθ)+γ=θ+γ従って、円筒内面加工時と同様に、上述の条件を満たしてX、Y、Zの各軸の軸制御が行われ、この軸制御に対して主軸回転角度αが同期制御されることにより、切刃選択角γの設定によって選択された一つの切刃54、56、58あるいは60は、主軸66の全回転角位置にて被加工面に対して常に法線を向くようになり、切刃選択角γの設定によって選択された一つの切刃によって任意の半径Rの円筒外面加工が行われる。 【0059】なお、Xs=(R+Tr)cosθ、Ys=(R+Tr)sinθは、主軸中心Csが、図4に示されているように、Z軸方向で見て被加工物Wの外側にある場合に成立し、主軸中心CsがZ軸方向で見て被加工物Wの内側にある場合には、Xs=(R−Tr)cosθ、Ys=(R−Tr)sinθとなる。 【0060】めねじ切り加工は円筒内面加工と同様の同期制御で、Zs=Zt−Tzがねじピッチに応じて適正値に設定されればよく、またおねじ切り加工は円筒外面加工と同様の同期制御で、Zs=Zt−Tzがねじピッチに応じて適正値に設定されればよく、何れの場合もR値の設定により任意のねじ径のめねじ或いはおねじのねじ切り加工が行われる。 【0061】テーパ加工、球面加工、多角形加工、フランジ面加工、自由形状加工などにおいても、それらの切削形状に応じて円筒面加工における場合と同等に、X、Y、Zの各軸の軸制御が行われ、この軸制御に対して主軸回転角度が同期制御されることにより、切刃選択角の設定によって選択された一つの切刃によって、テーパ加工、球面加工、多角形加工、フランジ面加工、自由形状加工が行われる。 【0062】テーパ加工、球面加工、多角形加工、フランジ面加工における軸制御について詳細な説明が必要ならば、本願出願人と同一の出願人による特願平6−211137号の明細書および図面を参照されたい。 【0063】上述の軸制御および主軸回転角制御は、上述の関数式の演算をNC装置内部で行って座標位置データを得る方法と、NC加工プログラム作成時点で予め座標位置データを点群データとしてプログラムに記述しておく方法の何れにより行われてもよい。 【0064】以上に於ては、本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の範囲内にて種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。 【0065】 【発明の効果】以上の説明から理解される如く、本発明によるバイト工具による主軸回転角制御式切削加工方法およびバイト工具によれば、バイト工具と被加工物との相対的な軸制御によりバイト工具と被加工物との間に相互補間運動が行われつつ軸制御に対する主軸回転角の同期制御によって主軸の全回転角位置にて被加工物の加工面に対するバイト工具の刃先方向が所定値に保たれ、相互補間運動による補間軌跡により決まる形状に切削が行われるから、バイト半径に関係なく一本のバイト工具により任意の内径の円筒内外周面加工、その他、テーパ加工、球面加工、多角形加工、ねじ切り加工、フランジ面加工、自由形状加工が行われる。 【0066】バイト工具としてシングルポイントバイト工具を使用することにより、総形バイト工具による場合に比して切削抵抗が小さくなり、このことにより軸制御による相互補間運動の速度、即ち切削速度を総形バイト工具を使用したヘール加工に属する切削加工法による場合に比して3〜20倍程度速くすることが可能になる。 【0067】円筒内外周面加工においては、従来のボーリング加工と同一のバイト工具で、同一の切削能率を得ながら、上述の相互補間運動の円弧補間径を変更することにより、一本のバイト工具で、任意の穴径あるいは外径を切削することができ、さらには、加工途中で円弧補間径を間欠的に、あるいは連続的に変更することで、テーパ加工、球面加工など、任意形状の加工を行うことができる。 【0068】さらに、バイト半径に関係なく一本のバイト工具により任意の半径の円筒内面加工を行うことができた上で、工具交換を必要とすることなく、粗加工、中仕上げ加工、仕上げ加工、面取り加工が行われることにより、工具交換の頻度が低下し、工作機械の稼動率が向上し、併せて必要工具個数が削減され、シールマガジンの小容量化が行われる。
|
|