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発明の名称 バイト工具による回転切削加工方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平8−108308
公開日 平成8年(1996)4月30日
出願番号 特願平6−244015
出願日 平成6年(1994)10月7日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外3名)
発明者 伊達 隆夫 / 河野 真 / 覚張 勝治 / 荒木 正文
要約 目的
切り屑を確実に不連続化し、切り屑がボーリング工具のボーリングバーなどに巻き付くことを回避すること。

構成
主軸中心Csを回転中心としてバイト工具23を主軸回転数をもって回転駆動し、主軸中心Csの被加工物Wに対する相対的な移動軌跡が切削すべき形状に適合したものになるようにバイト工具23と被加工物Wとを軸制御により少なくとも主軸19の回転軸線に直交する平面に沿って相対変位させてバイト工具23と被加工物Wとの間に相互補間運動を行わせ、この相互補間運動による補間軌跡により決まる形状にバイト工具23によって被加工物Wをバイト工具23の一回転ごとに間欠切削する。
特許請求の範囲
【請求項1】 主軸に取り付けられたバイト工具を主軸の回転により主軸の回転軸線周りに回転させて被加工物を切削加工する回転切削加工方法において、主軸中心を回転中心としてバイト工具を主軸回転数をもって回転駆動し、主軸中心の被加工物に対する相対的な移動軌跡が切削すべき形状に適合したものになるようにバイト工具と被加工物とを軸制御により少なくとも主軸の回転軸線に直交する平面に沿って相対変位させてバイト工具と被加工物との間に相互補間運動を行わせ、前記相互補間運動による補間軌跡により決まる形状に前記バイト工具によって被加工物を前記バイト工具の一回転ごとに間欠切削することを特徴とするバイト工具による回転切削加工方法。
【請求項2】 前記バイト工具として被加工物に実質的に点接触するシングルポイントバイト工具を使用することを特徴とする請求項1記載のバイト工具による主軸回転角制御式切削加工方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、バイト工具による回転切削加工方法に関し、特に同時多軸制御機能を有するNC工作機械などにおけるバイト工具による回転切削加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ボーリング工具などのバイト工具による回転切削加工は、バイト工具を主軸に装着し、主軸の回転数を制御して主軸を軸線方向へ移動させることによりワークテーブル上の被加工物に対してバイト半径の穴加工、即ちボーリング加工を行う。
【0003】このボーリング加工においては、連続切削により、特に軟鋼やアルミニウムなど、展延性の大きい被削材の切削では切り屑が連続した形態で生成され、この切り屑がボーリング工具のボーリングバーに巻き付くことがある。この切り屑の巻き付きは、切削加工を連続的に行うことに支障を与える。
【0004】またボーリングバーに絡み付いた切り屑が工具ホルダの自動工具交換用のV溝部にまで達し、工具の自動交換を行えなくしたり、工具の落下事故の原因になったりする。
【0005】このため従来、展延性の大きい被削材を切削する場合には、刃先にチップブレーカなどを設けて切り屑を短く破断したり、被削材に予めボーリング加工における取り代に応じた深さのキー溝状の分断溝を切削面部に加工し、この分断溝をもって非連続切削加工とし、切り屑が不連続化するなどの方策が取られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】チップブレーカなどによる切り屑の破断は、切削条件に左右され、切り屑の不連続化を完璧に行うことはできず、問題を完全に解決するには至らない。
【0007】分断溝による場合には、切り屑を確実に不連続化することができるが、しかし、分断溝の加工が必要で、工数が増える。
【0008】本発明は、上述の如き問題点に着目してなされたものであり、チップブレーカの装着や分断溝の加工を必要とすることなく切り屑を確実に不連続化し、切り屑がボーリング工具のボーリングバーなどに巻き付くことを回避し、展延性の大きい被削材の切削加工でも切り屑による障害を受けることなく連続的に行えるようにするバイト工具による回転切削加工方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の如き目的を達成するために、本発明によるバイト工具による回転切削加工方法は、主軸に取り付けられたバイト工具を主軸の回転により主軸の回転軸線周りに回転させて被加工物を切削加工する回転切削加工方法において、主軸中心を回転中心としてバイト工具を主軸回転数をもって回転駆動し、主軸中心の被加工物に対する相対的な移動軌跡が切削すべき形状に適合したものになるようにバイト工具と被加工物とを軸制御により少なくとも主軸の回転軸線に直交する平面に沿って相対変位させてバイト工具と被加工物との間に相互補間運動を行わせ、前記相互補間運動による補間軌跡により決まる形状に前記バイト工具によって被加工物を前記バイト工具の一回転ごとに間欠切削することを特徴としている。
【0010】本発明によるバイト工具による回転切削加工方法は、前記バイト工具として被加工物に実質的に点接触するシングルポイントバイト工具を使用することを詳細な特徴としている。
【0011】
【作用】上述の如き構成によれば、バイト工具が主軸回転数をもって回転(自転)している状態にて、バイト工具と被加工物との相対的な軸制御によりバイト工具と被加工物との間に相互補間運動が行われ、相互補間運動による補間軌跡により決まる任意の形状にバイト工具をもって回転切削が行われる。この場合、バイト工具の回転半径(バイト半径)と被加工物の切削半径とは異なったものになり、バイト工具は自転により一回転ごとに被加工物を間欠的に切削することになり、間欠切削によって切り屑が不連続になる。
【0012】バイト工具としてシングルポイントバイト工具を使用することにより、エンドミルなどによる場合に比して切削抵抗が小さく、このことにより軸制御による相互補間運動の速度、即ち切削速度を速めること、あるいはステム部(ボーリングバー)が長いバイト工具を使用して深穴など、軸長が長い加工物を高精度に切削加工することが可能になる。
【0013】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
【0014】図1は本発明による回転切削加工方法の実施例に使用するNC工作機械の一例を示している。NC工作機械は、ベッド1と、ベッド1上にY軸方向に移動可能に設けられてY軸テーブル3と、Y軸テーブル3上にX軸方向に移動可能に設けられてX軸テーブル5とを有し、X軸テーブル5上に被加工物Wを固定載置される。Y軸テーブル3はY軸サーボモータ7によってY軸方向に駆動され、X軸テーブル5はX軸サーボモータ9によってX軸方向に駆動され、X軸テーブル5上の被加工物Wは、Y軸サーボモータ7によるY軸テーブル3のY軸方向の移動とX軸サーボモータ9によるX軸テーブル5のX軸方向の移動により、X軸とY軸による水平面に沿ってX座標とY座標による任意に座標位置に軸制御する。
【0015】NC工作機械のコラム11にはZ軸スライダ13が上下方向、即ちZ軸方向に移動可能に装着されており、Z軸スライダ13はZ軸サーボモータ15によってZ軸方向に駆動される。
【0016】Z軸スライダ13には主軸頭17が取り付けられており、主軸頭17には主軸19がZ軸と同一方向の軸線周り、即ちC軸周りに回転可能に装着されている。主軸19は主軸モータ21により回転駆動される。主軸19にはバイト工具23が装着される。
【0017】ここで使用されるバイト工具23はシングルポイントバイト工具であってよい。ここで云うシングルポイントバイト工具は、被加工物に実質的に点接触する形式のバイト工具であり、これには、穴ぐりバイト、中ぐりバイト、突切りバイト、丸こまバイト、旋削バイトなどがある。
【0018】なお、X軸とY軸による被加工物Wの移動平面は、主軸19の回転軸線、即ちC軸(Z軸)に直交する平面である。
【0019】X軸サーボモータ9、Y軸サーボモータ7、Z軸サーボモータ15、主軸モータ21の各々にはロータリエンコーダ25、27、29、31が装着されており、このロータリエンコーダ25、27、29、31は各軸のサーボモータ9、7、15、主軸モータ21の回転角を検出し、回転角情報をNC装置33へ出力する。
【0020】NC装置33は、図2に示されているように、NC加工プログラムを実行して各軸指令と主軸回転数指令を出力するプログラム実行部35と、プログラム実行部35より軸指令を入力して補間演算を行う補間演算部37と、主軸制御部39とを有している。
【0021】補間演算部37は、X、Y、Zの各軸の移動量を指令値として各軸の位置制御・駆動部41、43、45へ出力する。
【0022】位置制御・駆動部41、43、45は、各々同軸のロータリエンコーダ25、27、29より回転角情報を入力し、位置フィードバック補償制御により演算される各軸の操作量をもって各軸のサーボモータ9、7、15の駆動を制御する。
【0023】主軸制御部39は、プログラム実行部35より主軸回転数指令を与えられ、ロータリエンコーダ31より回転角情報を入力し、フィードバック補償制御により演算される回転数をもって主軸モータ21の駆動を制御する。
【0024】本発明による回転切削加工方法においては、主軸中心の被加工物Wに対する相対的な移動軌跡が切削すべき形状に適合したものになるように、X、Y、Zの各軸の指令量をNC加工プログラムで設定しておき、このNC加工プログラムの実行によってバイト工具23と被加工物WとをX、Y、Zの軸制御、少なくともX、Yの軸制御によって主軸19の回転軸線に直交する平面に沿って相対変位させてバイト工具23と被加工物Wとの間に相対補間運動を行わせ、被加工物Wを相対補間運動による補間軌跡により決まる形状に、主軸19の回転によって主軸19の中心軸線周りに回転しているバイト工具23によって切削する。
【0025】この場合、バイト工具23の回転半径と被加工物Wの切削半径とは異なったものになり、バイト工具23は、主軸19の中心軸線周りの回転により被加工物Wを、主軸19の一回転ごとに間欠的に切削することになる。これにより切り屑は不連続のものになる。
【0026】この回転切削加工方法は、X、Yの同時2軸制御、あるいはX、Y、Zの同時3軸制御との組み合わせにより、穴加工、外周面加工、テーパ加工、球面加工、多角形加工、ねじ切り加工、フランジ面加工、自由形状加工に適用できる。
【0027】次に本発明による回転切削加工方法を円筒内外面加工に適用した場合について詳細に説明する。
【0028】図3、図4に示されているように、円筒面の半径をR、1回転当たりのZ軸方向送り量をp、Z軸方向送り開始位置のZ軸座標をZoとすると、各回転角位置における刃先の座標位置(Xt,Yt,Zt)はX軸方向を原点とする角度θを媒体変数として下式の関数式により与えられる。
【0029】Xt=RcosθYt=RsinθZt=Zo−(p/2π)θ図3に示されている円筒内面加工では刃先軌跡のXY平面における加工面外向き法線ベクトル→n=(nx,ny)は下式により示される。
【0030】nx=−cosθny=−sinθ従って、円筒内面加工においては、主軸中心軌跡Lを定義する主軸中心座標位置(Xs,Ys,Zs)は下式により示される。
【0031】Xs=Xt+nx・Tr=Rcos−Trcosθ=(R−Tr)cosθYs=Yt+ny・Tr=Rsin−Trsinθ=(R−Tr)sinθZs=Zt−Tz図4に示されている円筒外面加工では刃先軌跡のXY平面における加工面外向き法線ベクトル→n=(nx,ny)は下式により示される。
【0032】nx=−cosθny=−sinθ従って、円筒外面加工においては、主軸中心軌跡Lを定義する主軸中心座標位置(Xs,Ys,Zs)は下式により示される。
【0033】Xs=Xt+nx・Tr=Rcos+Trcosθ=(R+Tr)cosθYs=Yt+ny・Tr=Rsin+Trsinθ=(R+Tr)sinθZs=Zt−Tzただし、何れの場合もTrはバイト工具23のバイト半径、Tzは工具長さ(主軸19のZ軸原点からバイト部24の刃先までのZ軸方向の軸長)である。
【0034】この場合、主軸中心座標位置(Xs,Ys)によるX軸とY軸との同時2軸制御により、バイト工具23と被加工物Wとの間に相互円弧補間運動が行われ、その円弧補間軌跡として、主軸中心軌跡LはR−TrあるいはR+Trを半径とする真円をなす。
【0035】これにより、バイト工具23が主軸19により主軸中心Csを回転中心として回転駆動され、上述の条件を満たしてX、Y、Zの各軸の軸制御が行われることにより、任意の半径Rの円筒内面加工あるいは円筒外面加工が行われる。
【0036】この円筒内外面加工においては、バイト工具23の回転により被加工物Wが間欠的に切削され、被加工物Wの肉部の切削除去は、取り代を図3、図4に符号Bで示されている量として、主軸19の一回転の度に図3、図4に符号Aで示されているように略三ヵ月状に行われ、この切削により生成される切り屑は略三ヵ月状の断片的なものになる。即ち、切り屑は不連続に生成される。
【0037】これにより、切り屑が確実に不連続化し、切り屑がバイト工具23のステム部に巻き付くことがなく、展延性の大きい被削材の切削加工でも切り屑による障害を受けることなく連続的に行われるようになる。
【0038】また生成される切り屑が分断されているから、切り屑の後処理性がよくなる。
【0039】またバイト工具23としてシングルポイントバイト工具が使用されることにより、エンドミルなどによる場合に比して切削抵抗が小さくなる。このことによって軸制御による相互補間運動の速度、即ち切削速度を速めること、あるいはステム部(ボリングバー)が長いバイト工具23を使用して深穴など、軸長が長い加工物を高精度に切削加工することが可能になる。
【0040】上述の軸制御は、上述の関数式の演算をNC装置内部で行って座標位置データを得る方法と、NC加工プログラム作成時点で予め座標位置データを点群データとしてプログラムに記述しておく方法の何れにより行われてもよい。
【0041】以上に於ては、本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の範囲内にて種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0042】
【発明の効果】以上の説明から理解される如く、本発明による回転切削加工方法によれば、バイト工具は、バイト工具と被加工物との間に相互補間運動による補間軌跡により決まる任意の形状に被加工物を間欠的に切削するから、切り屑が不連続になり、チップブレーカの装着や分断溝の加工を必要とすることなく切り屑が確実に不連続化する。これにより切り屑がボーリング工具のボーリングバーなどに巻き付くことが回避され、展延性の大きい被削材の切削加工も切り屑による障害を受けることなく無人で連続的に行えるようになる。また生成される切り屑が分断されているから、切り屑の後処理性がよくなる。
【0043】またバイト工具としてシングルポイントバイト工具が使用されることにより、エンドミルなどによる場合に比して切削抵抗が小さくなり、このことにより軸制御による相互補間運動の速度、即ち切削速度を速めること、あるいはステム部が長いバイト工具を使用して深穴など、軸長が長い加工物を高精度に切削加工することが可能になる。
 

 
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