| 発明の名称 |
工作機械の主軸 |
|
| 発行国 |
日本国特許庁(JP) |
| 公報種別 |
公開特許公報(A) |
| 公開番号 |
特開平8−66803 |
| 公開日 |
平成8年(1996)3月12日 |
| 出願番号 |
特願平6−200740 |
| 出願日 |
平成6年(1994)8月25日 |
| 代理人 |
【弁理士】 【氏名又は名称】佐藤 一雄 (外3名)
|
| 発明者 |
宮 内 幹 由 / 柿 島 浩 之 / 深 瀬 泰 志 |
| 要約 |
目的 低熱膨張の材料を主体に主軸を構成して主軸の熱変形を抑えかつ剛性を与えて加工精度の向上を図る。
構成 低熱膨張金属材料を材質とする主軸本体部10と、前記主軸本体部10の外周に形成された高剛性金属からなる剛性強化部14とから一体的に主軸を構成する。 |
特許請求の範囲
【請求項1】低熱膨張金属材料を材質とする主軸本体部と、前記主軸本体部の外周に形成された高剛性金属からなる剛性強化部とから一体的に構成したことを特徴とする工作機械の主軸。 【請求項2】前記剛性強化部は、分割したスリーブ状の各高剛性金属部材を主軸本体部に焼きばめまたは冷しばめした後に溶接により一体的に接合したことを特徴とする請求項1に記載の工作機械の主軸。 【請求項3】前記剛性強化部は、主軸本体部の外周に軸方向に延びる複数条の溝に高剛性金属を溶接肉盛りしてなることを特徴とする請求項1に記載の工作機械の主軸。 【請求項4】前記低熱膨張金属は、インバー合金からなり、高剛性金属は、鋼若しくは超硬合金からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの請求項に記載の工作機械の主軸。
|
発明の詳細な説明
【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、工作機械の主軸に係り、特に、主軸の材質を低熱膨張係数の金属を主体にして主軸の寸法変化を抑制すると同時に剛性を確保することにより、加工精度の向上を図った工作機械の主軸に関する。 【0002】 【従来の技術】マシニングセンタ、中ぐり盤、フライス盤等の工作機械では、その主軸は、金属材料その他セラミックス等の硬脆材料の切削あるいは研削に際し、過酷な条件下で使用される。主軸は、あらゆる方向から最も荷重のかかる部分であり、しかも片持ち支持される構造であるので、まず第1に剛性の高いことが要求される。 【0003】一般に、主軸材料には、構造用鋼または合金鋼が使用されている。構造用鋼、合金鋼はヤング率の大きな高剛性の材料であり、また表面処理により表面の硬度を高めることが可能である一方で、加工が容易であり、経済性の面で適当であるからである。 【0004】一方、加工精度の面からは、主軸は、高速回転時の遠心力による変形があり、また、加工中の温度上昇により膨張するので、主軸には寸法変化の小さいことが要求される。この点、鋼の熱膨張係数は11〜16×10-6/℃の範囲であり、これは、例えば、主軸の長さが2mであるとすれば、10℃の温度変化があると、2.2〜3.2×10-1mmの寸法変化を生じることになる。これは、例えば、中ぐり盤で平面を削り出そうとするとき、削り始めてから削る終わるまでの間に主軸の温度が10℃上昇するならば、0.3mm程度の切り込み深さの差を生じさせることを意味する。この変形は、加工の精度を保つ上で重大な問題となる。従来、熱膨張を可及的に抑制して、主軸の寸法安定性を保つために、主軸材料に鋼以外の熱膨張係数の小さい材料を用いた例が知られている。 【0005】現在のところ、利用可能な熱膨張係数の小さな機械材料には、インバー、スーパーインバー系の材料(以下、インバー合金という。)が注目されている。このインバー合金の特徴としては、鋼の熱膨張係数が11〜16×10-6/℃であることから比べると、熱膨張係数が小さく、1〜4×10-6/℃の範囲にある。その反面、インバー合金は、そのヤング率は、13000〜16000kgf/mm2 であり、鋼の21000kgf/mm2 に較べて小さいことで、剛性の面で劣り、また、難削材であることおよび高価であるという欠点がある。このようなインバー合金をはじめとする熱膨張係数の小さな材料を主軸材料に適用した従来技術としては、例えば、特開昭61−270042号公報、特開平2−24001号公報、特開平2−167602号公報に開示されている主軸がある。 【0006】特開昭61−270042号公報では、少なくとも軸受の両端よりも内側に位置する主軸の本体部を、低熱膨張係数ガラスで形成し、主軸本体部の先端にインバー合金からなる砥石取付板を固定した超精密平面研削盤の主軸が開示されている。また、特開平2−24001号公報では、主軸を低熱膨張材料単体で形成し、モータのロータ軸をその熱膨張率に近い熱膨張率の材料で形成し、主軸とロータ軸を結合してなる工作機械の主軸が提案されている。また、特開平2−167602号公報に記載されている工作機械の主軸は、熱膨張係数の低い材料として、炭素繊維強化プラスチック材料を採用したもので、主軸本体を繊維強化複合材料からなる中空円筒状部材から構成し、必要に応じて強度の要求される部分にセラミックス溶射を施し、または金属メッキや薄い金属製円環を嵌め込んで接着または焼きばめにより固着したものである。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の熱膨張係数の低い材料を採用した主軸の場合、いずれも剛性をある程度犠牲にした上で、主軸の熱膨張の抑制を達成するものであり、工作機械の主軸として備えるべき最も基本的な要求である剛性の面で課題を残している。特に重切削に不適であるという問題があった。そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、低熱膨張の材料を主体に主軸を構成して主軸の熱変形を抑えかつ剛性を与えて加工精度の向上を達成するようにした工作機械の主軸を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、本発明は、低熱膨張金属材料を材質とする主軸本体部と、前記主軸本体部の外周に形成された高剛性金属からなる剛性強化部とから一体的に構成したことを特徴とするものである。この主軸では、前記剛性強化部は、分割したスリーブ状の各高剛性金属部材を主軸本体部に焼きばめまたは冷しばめした後に溶接により一体的に接合し、または、主軸本体部の外周に軸方向に延びる複数条の溝に高剛性金属を溶接肉盛りして形成される。前記低熱膨張金属は、好ましくは、インバー合金からなり、高剛性金属には、鋼若しくは超硬合金が用いられる。 【0009】 【作用】本発明によれば、主軸の剛性を鋼と同程度の剛性を確保しながら、熱膨張係数を従来の鋼を材質とする主軸に較べて半分程度の低い主軸にすることができるので、重切削にも耐え、加工中の熱変形による寸法変化を抑え、一段と高い加工精度を達成することが可能となる。 【0010】 【実施例】以下、本発明による工作機械の主軸の一実施例について添付の図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施例による横中ぐり盤の主軸の縦断面を示す。主軸の本体部10は、中空状の軸で、この本体部10は、熱膨張係数の低い金属材料、好適には、インバー合金(商品名 K−EL52 東北特殊鋼製)を材質としているものである。この主軸本体部10は、一体形成された大径部12と小径部13とからなり、大径部12が図示省略した軸受で支持され、大径部12の先端に工具シャンク部が装着されるテーパ面11が形成されている。小径部13は、大径部12と主軸の後端部側で段部を介して一体に連続し、主軸はこの小径部13に取付けられた図示しない歯車などの回転伝達機構により回転を与えられるようになっている。 【0011】こうした主軸本体部10の外周には、剛性強化部として鋼を材質とする所定の厚さのスリーブ状のブッシュ部材14が主軸本体部10に一体的に固着されている。図2に示すように、円筒状の鋼材製のブッシュ部材14は、焼ばめまたは冷しばめにより一体的に主軸本体部10に嵌着されるもので、工作機械の主軸のように長さのあるものでは、一度に焼きばめするのが難しいので、ブッシュ部材を分割し、各ブッシュ14a、14b、…、14nを主軸本体部10に焼ばめした後で、溶接により一体的に接合している。 【0012】このような剛性強化部は、ブッシュの焼ばめによる他、高剛性の金属、すなわち鋼または超硬合金の肉盛りによって図1に示すブッシュ部材14に相当するものを形成するようにしてもよい。図3は、肉盛りにより剛性強化部を形成した実施例の横断面図であり、この実施例の場合、スプライン状に軸方向に延びる溝15を一定のピッチで本体部10の外周に形成し、この溝15に超硬合金16を肉盛りしたものである。 【0013】なお、工作機械の主軸には、実施例の主軸のように所定位置でクランプ装置のクランプ部17によって保持される形式のものがある。こうした主軸の場合、図4に示すように、剛性強化部を形成する肉盛り16またはブッシュ14は、主軸先端部からクランプ部17まで形成することで十分剛性を補強することが可能である。 【0014】次に、以上のような主軸について、有限要素法によった主軸の剛性の解析結果を表1に示す。 【0015】 【表1】
この有限要素法の解析は、全長2m、大径部12の長さが1.7m、外径は110mmで、内径は35mmの主軸について行ったものである。主軸本体部10に鋼材からなるブッシュ部材14を焼ばめした形式の主軸(第1実施例)、主軸本体部10にスプライン状の溝15を形成し、この溝15に超硬合金16を肉盛した形式の主軸(第2実施例)について、主軸先端中心部に30kgfの荷重を作用させた場合の主軸先端のたわみを求め、剛性の解析を行った。また、表1には、実施例と同一寸法の主軸を、それぞれ鋼とインバー合金のみの単一材料から構成した主軸を比較例として挙げ、実施例と比較できるようにした。 【0016】鋼材を焼ばめ、肉盛した主軸の場合、鋼の厚さが12mmでは、熱膨張係数が、6.2×10-6/℃で、鋼の単一材料の主軸と較べて約半分となり、熱膨張係数を低くすることができるとともに、逆に、曲げ剛性は、対鋼比が0.91と、工作機械の主軸として十分な剛性を確保することができる。 【0017】また、主軸の外周のスプライン溝に超硬合金を肉盛した主軸の場合(幅wが15mm、厚さdが5mm)、ヤング率のそれぞれ異なる4種類の超硬合金について比較した。その結果、いずれも熱膨張係数を低くしながらも曲げ剛性を強化した主軸を得ることができるが、特に、ヤング率40,000kgf/mm2 の超硬合金を用いた主軸の場合、曲げ剛性の対鋼比はほぼ鋼と等しくなる。しかも、熱膨張係数は、鋼単一材料の主軸とくらべて、3.3×10-6/℃と非常に小さな値となることがわかる。この点、インバー合金のみからなる主軸では、熱膨張係数は2.9×10-6/℃と低いが、曲げ剛性でかなり劣る。従って、剛性を犠牲にしないで熱膨張係数を低くするには、超硬合金の肉盛りが非常に有効であることがわかる。 【0018】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、低熱膨張金属材料からなる主軸本体部と、前記主軸本体部の外周に形成された高剛性金属からなる剛性強化部とから一体的に構成したので、主軸の剛性を鋼と同程度の剛性を持ちながら、熱膨張係数を従来の鋼を材質とする主軸に較べて半分以下に低くすることができるので、主軸としての十分な剛性を確保するとともに加工中の熱変形による寸法変化を抑え、一段と高い加工精度を達成することが可能となる。
|
|