| 発明の名称 |
鋼帯の冷間圧延方法 |
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| 発行国 |
日本国特許庁(JP) |
| 公報種別 |
公開特許公報(A) |
| 公開番号 |
特開平8−99105 |
| 公開日 |
平成8年(1996)4月16日 |
| 出願番号 |
特願平6−235710 |
| 出願日 |
平成6年(1994)9月29日 |
| 代理人 |
【弁理士】 【氏名又は名称】西教 圭一郎
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| 発明者 |
佃 宣和 |
| 要約 |
目的 最小のパス回数で効率的に冷間圧延することのできる極薄冷間圧延鋼帯の冷間圧延方法を提供する。
構成 予め設定された初期条件に基づき(S2)、出側板厚を定め(S4)、それと予め定める関係式によって圧延荷重を算出し(S6)、算出された圧延荷重が最大圧延荷重以下であるか否かを判定し(S7)、その条件が満たされていないときには、その条件が満たされるように出側板厚を補正し(S8)、板厚減少量と圧延荷重との比が予め定める限界値以上であると判定されるとき(S9)、出側板厚を次の圧延パスの入側板厚として(S10)、次の圧延パスにおける圧延荷重および出側板厚を求めることを繰返して行い、板厚減少量と圧延荷重との比が予め定める限界値未満となるまでのパススケジュールを設定して、極薄冷間圧延鋼帯を冷間圧延する。 |
特許請求の範囲
【請求項1】 鋼帯を冷間圧延する際に、1パス当たりの板厚減少量Δhと圧延荷重Pとの比Δh/Pを求め、前記比Δh/Pが予め定める限界値α未満となるときには冷間圧延を行わないことを特徴とする鋼帯の冷間圧延方法。 【請求項2】 入側板厚h1、圧下率r、鋼帯の二次元変形抵抗km、ワークロールのロール径D、圧延ロールと鋼帯との間の摩擦係数μ、入出平均張力σtおよび最大圧延荷重Pmaxを含む初期条件を設定し、設定された初期条件に基づき、冷間圧延1パス当たりの出側板厚h2を算出し、入側板厚h1と算出された出側板厚h2との差である板厚減少量Δhを算出し、板厚減少量Δhおよび前記初期条件から予め定める関係式によって圧延荷重Pを算出し、算出された圧延荷重Pが前記最大圧延荷重Pmax以下でないときは、この条件が満たされるように前記出側板厚h2を補正し、板厚減少量Δhと圧延荷重Pとの比Δh/Pが予め定める限界値α以上となるとき、出側板厚h2を次の圧延パスの入側板厚h1として、次の圧延パスにおける圧延荷重Pおよび出側板厚h2を求めることを繰返して行い、Δh/P<αとなるまでのパススケジュールを設定して、鋼帯を圧延することを特徴とする鋼帯の冷間圧延方法。 【請求項3】 前記圧延荷重Pは、前記ワークロールのロール径Dに基づいて予め定める関係式に従って算出される偏平ロールの半径Rと、前記摩擦係数μについての予め定める関数値f(μ)と、前記二次元変形抵抗km、入出平均張力σt、板厚減少量Δhとから、関係式P=(km−σt)√(R・Δh)・f(μ) に従って算出することを特徴とする請求項2記載の鋼帯の冷間圧延方法。 【請求項4】 前記パススケジュールに従う鋼帯の冷間圧延中に、圧延中のパスnについての比(Δh/P)nおよび前パスn−1についての比(Δh/P)n-1と、圧延中のパスnの出側板厚hnおよび前パスn−1の出側板厚hn-1とに基づいて、次パスn+1の出側板厚hn+1から比(Δh/P)n+1 を、【数1】
に従って算出し、算出された(Δh/P)n+1が前記限界値α未満となるとき、(Δh/P)n+1≧αとなるように、前記入出平均張力σtを補正することを特徴とする請求項2または3に記載の鋼帯の冷間圧延方法。 【請求項5】 前記パススケジュールに従う鋼帯の冷間圧延中に、圧延中のパスnについて、圧延荷重の設定値Pnと圧延荷重の実測値Pactとを求め、その比β=Pact/Pnに基づいて、次のパスn+1における圧延荷重Pn+1 をパススケジュールでの設定値Pcal,n+1 を用いて、Pn+1 =β×Pcal,n+1と補正することを特徴とする請求項2〜4に記載の鋼帯の冷間圧延方法。 【請求項6】 前記初期条件における最大圧延荷重Pmaxを、中間の圧延パスでは圧延機の能力の限界値に近く設定し、最初の圧延パスおよび最終の圧延パスでは圧延機の能力に対して余裕を持たせて設定することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の鋼帯の冷間圧延方法。 【請求項7】 前記限界値αを、10×10-6mm/kgf/mmとすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の鋼帯の冷間圧延方法。
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発明の詳細な説明
【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、鋼帯特に極薄冷間圧延鋼帯の効率的な冷間圧延方法に関する。 【0002】 【従来の技術】ステンレス鋼や普通鋼などの冷間圧延薄鋼帯は、自動車、家電、建材等様々な分野で広く使用されている。また最近では、板厚0.1mm以下の極薄冷間圧延鋼帯の需要が電子機器部品を中心に拡大しつつある。前記冷間圧延薄鋼帯の冷間圧延技術については、これまでの長年にわたる研究開発によって理論、実践の両面とも目覚ましい発展を遂げ、現在ほぼ完成の域に近付きつつある。しかしながら前記極薄冷間圧延鋼帯の冷間圧延技術については、理論面の発展が充分でなく、極薄冷間圧延技術の向上を阻害している。この理論面の発展が充分でない1つの例としては、たとえば圧延限界板厚の予測精度不良の問題がある。圧延限界板厚は、圧延荷重を増大しても板厚減少が生じなくなる板厚であり、ステンレス鋼帯のような硬質で変形抵抗が高くかつ加工硬化の激しい材料を冷間圧延する場合には、それは比較的厚くなる。 【0003】従来圧延限界板厚は、ストーンの式やロバートの式によって求められていた。圧延限界板厚をhmin、ワークロール径をD、摩擦係数をμ、二次元変形抵抗をkm、入出平均圧延張力をσt、ワークロールのヤング率をEとすれば、ストーンの式ならびにロバートの式は次式(1)、(2)でそれぞれ表される。 【0004】 hmin=1.16Dμ(km−σt)/E …(1) hmin=3.58Dμ(km−σt)/E …(2) しかしながらこれらの式には未知数として摩擦係数μがあり、これを推定することが困難であること、最大圧延荷重等実際の圧延作業条件が反映されないこと等の問題点がある。このため実際の圧延で得られる板厚と一致した結果はいずれの式を用いても得られていない。したがって従来技術においては、前記極薄冷間圧延鋼帯の冷間圧延パススケジュールは、理論的な計算に基づき設定されるのではなく、経験的な方法で設定され勘と経験によって極薄冷間圧延が行われているのが現状である。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】前述のように前記極薄冷間圧延鋼帯の冷間圧延は、経験的な方法で行われているので、次のような問題点がある。 【0006】■従来技術では、冷間圧延鋼帯開始前のパススケジュールの設定を理論的計算に基づいて行っていないので、冷間圧延機の能力を最大限活用したパススケジュールの設定が困難であり、前記極薄冷間圧延鋼帯の目標板厚に到達するまでの冷間圧延のパス回数が増大する。このため冷間圧延の能率および生産性が低い。 【0007】■従来技術では、圧延限界板厚の論理的判定指標がないので、圧延限界の判定が遅れ、無駄な冷間圧延が行われる場合がある。この場合圧延限界板厚近辺における前記極薄冷間圧延鋼帯の板厚は極めて薄いので、通板時間が長くなり、冷間圧延の能率および生産性が大幅に低下する。 【0008】■従来技術では、冷間圧延中、得られた冷間圧延データから理論的に次パスの予測を行い、それに基づいて次パスの条件を補正する制御方法の採用が困難である。このため様々な状況変化に迅速に対応することが困難であり、圧延トラブルが生じやすく能率および生産性が大幅に低下する。 【0009】本発明の目的は、前記問題点を解決し鋼帯特に極薄冷間圧延鋼帯の冷間圧延において、理論的に設定されたパススケジュールに従って最小パス回数で冷間圧延することができ、圧延限界板厚を論理的に判定することができ、かつ冷間圧延中の圧延データから次パスの予測を行い、それに基づいて次パスの条件を補正することができる効率的な鋼帯の冷間圧延方法を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は、鋼帯を冷間圧延する際に、1パス当たりの板厚減少量Δhと圧延荷重Pとの比Δh/Pを求め、前記比Δh/Pが予め定める限界値α未満となるときには冷間圧延を行わないことを特徴とする鋼帯の冷間圧延方法である。また本発明は、入側板厚h1、圧下率r、鋼帯の二次元変形抵抗km、ワークロールのロール径D、圧延ロールと鋼帯との間の摩擦係数μ、入出平均張力σtおよび最大圧延荷重Pmaxを含む初期条件を設定し、設定された初期条件に基づき、冷間圧延1パス当たりの出側板厚h2を算出し、入側板厚h1と算出された出側板厚h2との差である板厚減少量Δhを算出し、板厚減少量Δhおよび前記初期条件から予め定める関係式によって圧延荷重Pを算出し、算出された圧延荷重Pが前記最大圧延荷重Pmax以下でないときは、この条件が満たされるように前記出側板厚h2を補正し、板厚減少量Δhと圧延荷重Pとの比Δh/Pが予め定める限界値α以上となるとき、出側板厚h2を次の圧延パスの入側板厚h1として、次の圧延パスにおける圧延荷重Pおよび出側板厚h2を求めることを繰返して行い、Δh/P<αとなるまでのパススケジュールを設定して、鋼帯を圧延することを特徴とする鋼帯の冷間圧延方法である。また本発明は、前記圧延荷重Pは、前記ワークロールのロール径Dに基づいて予め定める関係式に従って算出される偏平ロールの半径Rと、前記摩擦係数μについての予め定める関数値f(μ)と、前記二次元変形抵抗km、入出平均張力σt、板厚減少量Δhとから、関係式P=(km−σt)√(R・Δh)・f(μ) に従って算出することを特徴とする。また本発明は、前記パススケジュールに従う鋼帯の冷間圧延中に、圧延中のパスnについての比(Δh/P)n および前パスn−1についての比(Δh/P)n-1と、圧延中のパスnの出側板厚hn および前パスn−1の出側板厚hn-1とに基づいて、次パスn+1の出側板厚hn+1から比(Δh/P)n+1を、【0011】 【数2】
【0012】に従って算出し、算出された(Δh/P)n+1が前記限界値α未満となるとき、(Δh/P)n+1≧αとなるように、前記入出平均張力σtを補正することを特徴とする。また本発明は、前記パススケジュールに従う鋼帯の冷間圧延中に、圧延中のパスnについて、圧延荷重の設定値Pnと圧延荷重の実測値Pactとを求め、その比β=Pact/Pnに基づいて、次のパスn+1における圧延荷重Pn+1 をパススケジュールでの設定値Pcal,n+1 を用いて、Pn+1 =β×Pcal,n+1と補正することを特徴とする。また本発明は、前記初期条件における最大圧延荷重Pmaxを、中間の圧延パスでは圧延機の能力の限界値に近く設定し、最初の圧延パスおよび最終の圧延パスでは圧延機の能力に対して余裕を持たせて設定することを特徴とする。また本発明は、前記限界値αを、10×10-6mm/kgf/mmとすることを特徴とする。 【0013】 【作用】本発明に従えば、鋼帯を冷間圧延する際に、1パス当たりの板厚減少量と圧延荷重との比が予め定める限界値α未満となるときには冷間圧延が行われない。このように圧延限界の論理的な判定基準を設定することによって、圧延限界の判定遅れに起因する無駄な冷間圧延の実施を回避することができるので、冷間圧延のパス回数が低減される。 【0014】また本発明に従えば、予め設定された初期条件に基づき、出側板厚を定め、それと入側板厚との差である板厚減少量を算出し、それと予め定める関係式によって圧延荷重を算出し、算出された圧延荷重が最大圧延荷重以下でないときは、この条件が満足されるように出側板厚を補正し、板厚減少量と圧延荷重との比が予め定める限界値以上となるとき、出側板厚を次の圧延パスの入側板厚として、次の圧延パスにおける圧延荷重および出側板厚を求めることを繰返して行い、板厚減少量と圧延荷重との比が予め定める限界値未満となるまでのパススケジュールを設定して、鋼帯の圧延が行われる。このように理論的に設定されたパススケジュールに従って、鋼帯の圧延が行われるので、圧延機の能力を最大限活用することが可能となり、最小のパス回数で冷間圧延することができる。 【0015】また本発明に従えば、圧延荷重はワークロールのロール径に基づいて予め定められる関係式に従って算出される偏平ロールの半径と、摩擦係数についての予め定める関数値と、二次元変形抵抗と、入出平均張力と、板厚減少量とから、関係式に従って算出される。このように圧延荷重は適正な関係式を用いて理論的に算出されるので、圧延荷重の計算精度が大幅に向上し、板厚予測精度の良好な極薄冷間圧延パススケジュールを設定することができる。 【0016】また本発明に従えば、パススケジュールに従う鋼帯の冷間圧延中に、圧延中のパスnについての板厚減少量と圧延荷重との比および前パスn−1についてのその比と、nパスの出側板厚および前パスn−1の出側板厚とに基づいて、次パスn+1の出側板厚から次パスn+1の板厚減少量と圧延荷重との比を関係式に従って算出し、算出された次パスn+1のその比の値が予め定める圧延限界を判定する限界値未満となるとき、次パスn+1のその比の値が予め定めるその限界値以上となるように、入出平均張力が補正される。この補正によって、次パスn+1は圧延限界ではなくなるので、冷間圧延を継続することが可能となり、目標板厚まで冷間圧延することができる。このように冷間圧延中、得られた冷間圧延データから理論的に次パスの予測を行い、それに基づいて次パスの条件を補正することができるので、様々な状況変化にも迅速に対応することができる。 【0017】また本発明に従えば、パススケジュールに従う鋼帯の冷間圧延中に、圧延中のパスnについての圧延荷重の実測値と圧延荷重の設定値との比が求められ、次のパスn+1における圧延荷重がその比と次のパスn+1におけるパススケジュールでの圧延荷重設定値との積となるように補正される。この補正によって次のn+1パスにおける圧延荷重の予測精度が向上するので、極薄冷間圧延パススケジュールの板厚予測精度が向上する。 【0018】また本発明に従えば、最大圧延荷重は中間の圧延パスでは圧延機の能力の限界値に近く設定され、最初の圧延パスおよび最終の圧延パスでは圧延機の能力に対して余裕を持たせて設定される。このような最大圧延荷重の設定によって、中間の圧延パスでは圧延機の能力を最大限発揮させることが可能となり、冷間圧延のパス回数を大幅に低減することができる。また最初の圧延パスでは、被圧延鋼帯の板厚、形状等の変動を修正することができるので、次パス以降における圧延トラブルが生じにくくなる。また最終パスでは、板厚精度の向上ならびに形状の改善を主眼に冷間圧延を行うことができるので、鋼帯の板厚精度ならびに形状が大幅に向上する。さらに必要に応じて次工程に適合した形状を有する鋼帯を造り込むことができる。 【0019】また本発明に従えば、限界値αを10×10-6mm/kgf/mmとすることによって、ステンレス鋼帯などに対して、より一層確実に冷間圧延のパス回数を低減することができる。 【0020】 【実施例】図1は本発明を好適に実施することのできる12段クラスタ型冷間圧延機の簡略化された構成を示す斜視図であり、図2は図1に示す12段クラスタ型冷間圧延機のミル本体の簡略化された構成を示す斜視図である。本実施例においては、被圧延鋼帯としてステンレス鋼帯を使用する。 【0021】12段クラスタ型冷間圧延機10は、ミル本体1と、ステンレス鋼帯9の巻取りまたは巻戻しを行う前面リール2および後面リール8と、ステンレス鋼帯9の張力やその分布から形状の測定を行う前面シェイプメータ4および後面シェイプメータ6、ミル本体1の前後面に複数個配設されているアンチクリッピングロール5と、X線板厚計18と、前面デフレクタロール3および後面デフレクタロール7とを含んで構成される。これら前面シェイプメータ4および後面シェイプメータ6は、軸線方向に複数区間に分割された分割ロールによって構成されている。また前記アンチクリッピングロール5は、極薄冷間圧延鋼帯の冷間圧延時に生じやすいしわの発生を抑制するために設けられる。 【0022】ミル本体1は、ステンレス鋼帯9の一方の表面(図1の上方側)に当接するワークロール11と、ワークロール11を支持する2本の中間ロール12と、中間ロール12を支持する3本の補強ロール13と、ステンレス鋼帯9を挟んで下方に上下対象に配設されているこれら各ロール群と、中間ロール12を収納する第1トップロールフレーム14および第1ボトムロールフレーム14aと、補強ロール13を収納する第2トップロールフレーム15および第2ボトムロールフレーム15aと、第2ボトムロールフレーム15aを昇降させる油圧シリンダ17と、第2トップロールフレーム15の上部に設けられる圧延荷重検出用ロードセル16とを含んで構成される。この補強ロール13は軸線方向に間隔を保って分割された2本のサイド補強ロール13aと、1本のセンター補強ロール13bとを含んで構成される。このサイド補強ロール13aの各分割ロールは、それぞれ独立してロール軸線方向と直角な方向に変位することができるので、冷間圧延中にステンレス鋼帯9への押圧力を幅方向で強制的に変化させ、ステンレス鋼帯9の形状制御を行うことができる。 【0023】前記12段クラスタ型冷間圧延機10による極薄冷間圧延は次のようにして行われる。被圧延鋼帯であるステンレス鋼帯9としては、焼鈍、デスケーリング済熱間圧延ステンレス鋼帯または焼鈍、デスケーリング済冷間圧延ステンレス鋼帯が適用される。ステンレス鋼帯9は、コイル状態で前面リール2に装着された後、巻戻され前面デフレクタロール3、アンチクリッピングロール5および前面シェイプメータ4を介してミル本体1に通板される。その後このステンレス鋼帯9は、ミル本体1のワークロール11に噛み込まれて1パス目の所定板厚になるよう冷間圧延される。なおこのミル本体1では、予め定める圧延パススケジュールに従って前記油圧シリンダ17によって圧下調整が行われている。前記ワークロール11を通過したステンレス鋼帯9は、後面シェイプメータ6、アンチクリッピングロール5および後面デフレクタロール7を介して後面リール8に巻取られる。その後、このステンレス鋼帯9は加速され、所定の入側圧延張力ならびに出側圧延張力がそれぞれ付与される。1パス目の冷間圧延終了後、予め定める圧延パススケジュールに従って同様に油圧シリンダ17によって圧下調整が行われ、引続き1パス目とは逆方向に2パス目の冷間圧延が行われる。このレバース圧延は、ステンレス鋼帯9の板厚が目標板厚に達するまで繰返して行われる。冷間圧延中、ロードセル16によって圧延荷重の測定が行われ、前後面シェイプメータ4,6によって圧延張力ならびに板形状の測定が行われ、X線板厚計18によってステンレス鋼帯9の板厚の測定が行われる。 【0024】次に本発明にかかわるステンレス極薄冷間圧延鋼帯の冷間圧延パススケジュールの計算方法について、図3〜図6によって説明する。図3は本発明にかかわる冷間圧延パススケジュールの計算方法を示すフローチャートであり、図4はステンレス鋼帯の全冷間圧下率と耐力との関係を鋼種別に示す特性図であり、図5はステンレス鋼帯の全冷間圧下率と摩擦係数との関係をワークロールの材質別に示す特性図であり、図6は単位圧延荷重当たりの板厚減少量Δh/Pと圧延限界板厚との関係を示す特性図である。 【0025】図3においてステップn1では、極薄冷間圧延のパススケジュールの計算が開始される。ステップn2では、初期条件の設定が行われる。初期条件としては、ステンレス鋼帯9の入側板厚h1、冷間圧延機のワークロール径D、最大圧延荷重Pmax、ステンレス鋼帯9の入出平均張力σt、ワークロールのポアソン比ν、二次元変形抵抗km、摩擦係数μ等が設定される。これらのうちワークロール径Dやワークロールのポアソン比ν等は冷間圧延中一定の定数として設定される。しかしながら入出平均張力σtと最大圧延荷重Pmaxとは通板パスによって異なる値が設定される場合もある。この入出平均張力σtは、冷間圧延機の入側張力値と出側張力値との平均値であり、通常初期のパスにおいてはその他のパスに比べて低い値に設定される。また最大圧延荷重Pmaxは、中間の圧延パスでは冷間圧延機の能力の限界値に近く設定され、最初の圧延パスおよび最終の圧延パスでは圧延機の能力に対して余裕をもたせて設定される。最初の圧延パスにおける最大圧延荷重Pmaxが圧延機の能力に対して低く設定されるのは、被圧延鋼帯であるステンレス鋼帯9の板厚、形状等の変動を考慮し、それらの修正を主眼として初パスの冷間圧延が行われるからであり、最終の圧延パスにおける最大圧延荷重Pmaxが同様に低く設定されるのは、板厚精度ならびに形状の向上を主眼として最終パスの冷間圧延が行われるからである。一方中間の圧延パスにおける最大圧延荷重Pmaxが冷間圧延機の能力の限界値に近く設定されるのは、冷間圧延機の能力を最大限活用して冷間圧延のパス回数を少なくするためである。また二次元変形抵抗kmならびに摩擦係数μについては、それらを算出するための算出式が設定される。 【0026】二次元変形抵抗kmは、ステンレス鋼帯9の加工硬化特性の調査によって求められる。図4には、ステンレス鋼帯9の全冷間圧下率と耐力との関係を鋼種別に示す。図4においてL1はSUS301の特性図であり、L2はSUS304の特性図であり、L3はSUS430の特性図である。図4から全冷間圧下率と耐力との関係は各鋼種とも1次式または2次式で示されることが判る。二次元変形抵抗kmと耐力とは比例関係にあるので、図4から二次元変形抵抗kmは鋼種毎に全冷間圧下率の関数として表すことができる。このため二次元変形抵抗kmは全冷間圧下率が定まれば容易に算出することができる。 【0027】摩擦係数μは、冷間圧延実験によって求められる。この冷間圧延実験は、前記図1に示す12段クラスタ型冷間圧延機10を用いて行った。この冷間圧延実験で用いた出発材料は板厚0.1mm、板幅1000mmの焼鈍、デスケーリング済ステンレス冷延鋼帯であり、その鋼種は変形抵抗の大きく異なるSUS304とSUS430の2鋼種であった。またこの冷間圧延実験で用いたワークロールの材質は、鋼(ハイス)製と超硬合金(WC)製の2種類であり、その直径はいずれも60〜65mmであった。この冷間圧延実験から得られた冷間圧延データを用いて摩擦係数を求めるに際しては、圧延理論式として広く知られているロバートの式とヒッチコックの式を圧延荷重算出式ならびにロール偏平算出式としてそれぞれ用いた。 【0028】入側板厚をh1(mm)、出側板厚をh2(mm)、板厚減少量をΔh=h1−h2、冷間圧下率をr=Δh/h1、ワークロールのヤング率をE(kgf/mm2 )、ワークロールのポアソン比をν、ワークロールの直径をD(mm)、偏平後のワークロールの半径をR(mm)、摩擦係数をμ、二次元平均変形抵抗をkm(kgf/mm2 )、圧延荷重をP(kgf/mm)、入出平均張力をσt(kgf/mm2 )とすれば、ロバートの式ならびにヒッチコックの式は次式(3)、(4)でそれぞれ示される。 【0029】 【数3】
【0030】これらの式(3),(4)において、冷間圧延実験で圧延荷重Pをロードセル16で実測すれば、未知数は摩擦係数μのみとなるので、摩擦係数μを算出することができる。 【0031】図5には、ステンレス鋼帯9の全冷間圧下率と、前記の方法で求めた摩擦係数μとの関係をワークロールの材質別に示す。図5においてL4は鋼(ハイス)製ワークロールの特性図であり、L5は超硬合金(WC)製ワークロールの特性図である。図5から鋼(ハイス)製ワークロールにおいては、摩擦係数μは全圧下率の増加に伴い低下傾向にあり、2次式で近似できることが判る。この2次式は全圧下率をRedとすれば、次式(5)で示される。 【0032】 μ = 0.370Red2 −0.552Red−0.288 …(5) このように摩擦係数μは、全冷間圧下率Redの関数として表すことができるので、全冷間圧下率が定まれば容易に算出することができる。 【0033】ステップn3では、極薄冷間圧延パススケジュール計算の第1パスの諸データが設定され計算が開始される。ステップn4では、出側板厚h2が仮定される。出側板厚h2の仮定に際しては、圧延荷重Pが最大圧延荷重Pmaxに近付くように仮定される。前述のように最初の圧延パスと最終の圧延パスでは、最大圧延荷重Pmaxが圧延機の能力に対して低く設定されているので、この出側板厚h2は冷間圧下率が低めになるように仮定される。ステップn5では、二次元変形抵抗kmと摩擦係数μの算出が行われる。前述のように両者とも全圧下率が定まれば容易に求められるので、ステップn4で仮定した出側板厚h2を用いて全圧下率を定めれば、前記図4ならびに(5)式から二次元変形抵抗kmならびに摩擦係数μがそれぞれ算出される。ステップn6では、圧延荷重Pが計算によって求められる。圧延荷重Pは、前記(3)式で示すロバートの圧延荷重式と、前記(4)式で示すヒッチコックのロール偏平式から計算される。 【0034】ステップn7では、この圧延荷重Pが前記最大圧延荷重Pmax以下であるか否かが判定される。この圧延荷重Pが前記最大圧延荷重Pmaxを超えている場合には、ステップn8で出側板厚h2の修正が行われる。この修正は出側板厚h2を前記仮定値よりも大きくして、冷間圧下率を小さくし、圧延荷重Pが小さくなるように行われる。ステップn8で出側板厚h2を修正した後、再度ステップn5に戻り、修正した出側板厚h2を用いて前記と同様の方法で再計算が行われる。このような再計算は、圧延荷重Pが最大圧延荷重Pmax以下になるまで繰返し行われる。ステップn7においてこの圧延荷重Pが最大圧延荷重Pmax以下の条件を満足する場合には、次ステップn9に進む。このようにこの極薄冷間圧延パススケジュールは、圧延荷重Pが最大圧延荷重Pmaxを超えないように定められるので、前記12段クラスタ型冷間圧延機10や冷間圧延ロールを損傷することなく、冷間圧延を行うことができる。 【0035】ステップn9では、板厚減少量Δhと圧延荷重Pとの比Δh/Pが予め定める限界値α未満であるか否かが判定される。この比が予め定める限界値α以上である場合には、圧延限界に達していないと判定され、ステップn10に進む。ステップn10では、次パス第2パスの条件設定が行われ、第1パスで求めた出側板厚h2が第2パスの入側板厚h1として設定される。ステップn10で次パスの条件設定が行われた後、再度ステップn4に戻り、前述と同様の方法で第2パスの極薄冷間圧延パススケジュール計算が行われる。このような計算は、前記比Δh/Pが予め定める限界値α未満に達するまで繰返し行われる。ステップn9において、前記比Δh/Pが予め定める限界値α未満である場合には、板厚が減少しないで圧延荷重Pのみが増大するいわゆる圧延限界であると判定され、ステップn11に進み、極薄冷間圧延のパススケジュール計算を終了する。このようにこの極薄冷間圧延パススケジュールは、圧延限界の判定基準が定められているので、圧延限界に到達すれば冷間圧延が行われない。このため無駄な冷間圧延が回避され、冷間圧延のパス回数の増大を防止することができる。 【0036】前記圧延限界を判定する限界値αは、10×10-6mm/kgf/mmに設定することが好ましい。図6に圧延限界板厚の計算値と前記比Δh/Pとの関係を示す。図6の計算に用いた被圧延ステンレス鋼帯9の入側板厚は0.1mmであり、その鋼種はSUS304であった。またワークロールの材質は、鋼(ハイス)製であり、そのヤング率は21000kgf/mm2 であった。さらに二次元変形抵抗kmと摩擦係数μは前記図4と(5)式から求めた。図6から前記比Δh/Pが10×10-6mm/kgf/mm未満では、圧延限界板厚の計算値がほぼ一定となり、それ以上の板厚減少が生じないことが判る。前記圧延限界を判定する限界値αを10×10-6mm/kgf/mmとしたのは、この理由によるものである。なおこの限界値αの値は、ステンレス鋼帯、普通鋼帯とも共通の限界値として使用できる。 【0037】ステンレス鋼帯9は、前記計算方法で設定された極薄冷間圧延パススケジュールに従って冷間圧延が効率的に行われる。この冷間圧延中にn+1パス目の板厚減少量Δhと圧延荷重Pとの比(Δh/P)n+1 が前記限界値α未満となることが予測され、目標板厚まで冷間圧延することができないおそれがあるときには、その比(Δh/P)n+1 が前記限界値α以上となるように、前記入出平均張力σtを補正することが好ましい。その比(Δh/P)n+1 の予測は次のような方法で行われる。 【0038】図7は、n+1パス目の板厚減少量Δhと圧延荷重Pとの比(Δh/P)n+1の予測方法を示す概念図である。n−1パス目の板厚hn-1と比(Δh/P)n-1とは図7において、点Tn-1 で表される。また冷間圧延中に定まるnパス目の板厚hn と、前記比(Δh/P)nとはn−1パス目のそれらに比べて小さいので、図7において、点Tnで表される。n+1パス目のhn+1と前記比(Δh/P)n+1を表す点、Tn+1が、点Tn-1と、点Tnとを結ぶ直線上にあると仮定すれば、n+1パス目の板厚hn+1が定まれば前記比(Δh/P)n+1は次式(6)から求めることができる。 【0039】 【数4】
【0040】このようにして予測される(Δh/P)n+1 の値が図7に示すように前記限界値αの値よりも小さいときには、前述のように前記入出平均張力σtを補正する。この入出平均張力σtの補正は次のようにして行えばよい。すなわち(6)式で求めた(Δh/P)n+1 の値が前記限界値α以上となるようにn+1パス目の圧延荷重Pn+1 の値を定め、前記(3)式の圧延荷重Pとしてこのn+1パス目の圧延荷重Pn+1 を代入し、前記(3)式から入出平均張力σtを算出し、これを補正入出平均張力σtとして前記極薄冷間圧延パススケジュールの入出平均張力σtと置換えればよい。この極薄冷間圧延パススケジュールの補正によって、この比(Δh/P)n+1 の値は前記限界値α以上となるので、n+1パス目も冷間圧延を継続することができ、目標板厚まで冷間圧延することができる。なおこの比(Δh/P)n+1 の値を前記限界値α以上とする他の方法としては、図7からも明らかなようにロールギャップを大きくしてn+1パス目の板厚を厚くすればよい。しかしながらこのロールギャップ調整法は得られる板厚が厚くなり目標板厚が得られないおそれがあるので好ましい方法ではなく、通常前記張力調整法が採用される。このように本発明では、冷間圧延中、得られた冷間圧延データから理論的に次パスの予測を行い、それに基づいて次パスの条件を補正することができるので、様々な状況変化にも迅速に対応することができる。このため、圧延トラブルが生じにくくなり能率および生産性が向上する。 【0041】また前記極薄冷間圧延パスケジュールに従うステンレス鋼帯9の冷間圧延中に、nパスにおける圧延荷重の設定値Pcal,nと、圧延荷重の実測値Pactとの比βを次式(7)から求め、 β = Pact / Pcal,n …(7) 次のn+1パスにおける圧延荷重Pn+1 を極薄冷間圧延パススケジュールでの設定値Pcal,n+1とこの比βとを用いて、 Pn+1 = β × Pcal,n+1 …(8) となるように補正することが好ましい。これによってn+1パスにおける圧延荷重Pn+1 の予測精度が向上するので、前記極薄冷間圧延パススケジュールの板厚予測精度が向上する。またこのn+1パスにおける圧延荷重Pn+1 を前記(6)式に適用すれば前記入出平均張力σtの補正をより一層正確に行うことができる。 【0042】前記計算方法で設定された極薄冷間圧延パススケジュールの予測精度を検証するため、ステンレス鋼帯の圧延限界板厚について計算値と実測値との比較を行った。表1に冷間圧延条件と圧延限界板厚の計算値ならびに実測値を示す。冷間圧延機としては、図1に示す12段クラスタ型冷間圧延機を使用し、ワークロールとしては直径65mmの鋼(ハイス)製ロールを使用した。表1から計算値と実測値とは極めて近い値を示しており、この極薄冷間圧延パススケジュールの予測精度が極めて優れていることが判る。 【0043】 【表1】
【0044】なおこれまで冷間圧延機としては、前記レバース式12段クラスタ型冷間圧延機を対象に述べてきたけれども、冷間圧延機としては複数スタンドから構成されるタンデム式冷間圧延機であってもレバース式冷間圧延機であってもよく、また4重または6重圧延機であっても、他のクラスタ型圧延機たとえば20段ゼンジミアミルであってもよい。 【0045】 【発明の効果】以上のように本発明によれば、鋼帯を冷間圧延する際、圧延限界の論理的な判定基準が定められているので、圧延限界を示す限界値に到達するときには冷間圧延が行われない。これによって、圧延限界の判定遅れに起因する無駄な冷間圧延の実施を回避することができるので、冷間圧延のパス回数が低減される。 【0046】また本発明によれば、最大圧延荷重や圧延限界板厚を考慮して理論的に設定されたパススケジュールに従って、鋼帯の冷間圧延が行われる。これによって冷間圧延機や冷間圧延ロールを損傷することなく圧延機の能力を最大限発揮させることができるので、最小パス回数で冷間圧延することが可能となる。このため冷間圧延の能率および生産性が大幅に向上する。 【0047】また本発明によれば、圧延荷重は適正な関係式を用いて理論的に算出される。このため圧延荷重の計算精度が大幅に向上し、板厚予測精度の良好な極薄冷間圧延パススケジュールを設定することができる。また冷間圧延機の能力を超えない範囲で冷間圧延機の能力を最大限発揮させることができるので、最小パス回数で冷間圧延することが可能となる。このため冷間圧延の能率および生産性が大幅に向上する。 【0048】また本発明によれば、冷間圧延中のパスnと前パスn−1についての圧延データから次パスn+1において圧延限界に到達することが予測されるときには、次パスn+1の張力条件を補正して圧延限界到達を回避することができる。これによって次パスn+1は冷間圧延を継続することができるので、目標板厚まで冷間圧延することが可能となる。このように冷間圧延中、得られた冷間圧延データから理論的に次パスの予測を行い、それに基づいて次パスの条件を補正することができるので、様々な状況変化にも迅速に対応することができる。このため圧延トラブルが生じにくくなり、能率および生産性が向上する。 【0049】また本発明によれば、パススケジュールに従う鋼帯の冷間圧延中に、圧延中のパスnについての圧延荷重の実測値と圧延荷重の設定値との比が求められ、次のパスn+1における圧延荷重がその比と次のパスn+1におけるパススケジュールでの圧延荷重設定値との積となるように補正される。この補正によって次のn+1パスにおける圧延荷重の予測精度が向上するので、極薄冷間圧延パススケジュールの板厚予測精度が向上する。このため鋼帯の品質ならびに歩留りが向上する。 【0050】また本発明によれば、最大圧延荷重は中間の圧延パスでは圧延機の能力の限界値に近く設定され、最初の圧延パスおよび最終の圧延パスでは圧延機の能力に対して余裕をもたせて設定される。このような最大圧延荷重の設定によって中間の圧延パスでは圧延機の能力を最大限発揮させることが可能となり、冷間圧延のパス回数を大幅に低減することができる。このため冷間圧延の能率および生産性が大幅に向上する。また最初の圧延パスでは、被圧延鋼帯の板厚、形状等の変動を修正することができるので、次パス以降における圧延トラブルが生じにくくなる。このため冷間圧延の能率および生産性が向上する。また最終パスでは、板厚精度の向上ならびに形状の改善を主眼に冷間圧延を行うことができるので、鋼帯の板厚精度ならびに形状が大幅に向上する。さらに必要に応じて次工程に適合した形状を有する鋼帯を造り込むことができる。このため鋼帯の品質、歩留りが大幅に向上する。 【0051】また本発明によれば、限界値αを10×10-6mm/kgf/mmとすることによって、ステンレス鋼などに対して、より一層確実に冷間圧延のパス回数を低減することができる。このため冷間圧延の能率および生産性が大幅に向上する。
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