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発明の名称 田植機
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平8−19315
公開日 平成8年(1996)1月23日
出願番号 特願平6−155606
出願日 平成6年(1994)7月7日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修
発明者 奥田 浩史
要約 目的
走行機体の後進時の苗植付装置の自動上昇を迅速に行う。

構成
走行機体を後進させる操作に連動してクラッチ機構Cを切り操作を開始し、この後進操作を基準に設定時間経過後に苗植付装置を上昇させる制御装置25を備え、この設定時間を、苗植付装置の重量が大きいほど短くするよう制御動作を設定。
特許請求の範囲
【請求項1】 走行機体(3)を後進させる操作に連動して走行機体(3)から苗植付装置(A)に動力を伝えるクラッチ機構(C)を切り操作し、又、この走行機体(3)を後進させる操作から設定時間経過後に該走行機体(3)に昇降自在に連結した苗植付装置(A)を自動上昇させる制御手段(25)を備えると共に、苗植付装置(A)の重量を求める検出手段(23)を備え、この検出手段で求めた苗植付装置(A)の重量が大きいほど前記設定時間を小さい値に設定する、若しくは、前記設定時間を人為的に変更することにより走行機体(3)を後進させる操作から苗植付装置(A)を自動上昇を開始するまでの設定時間を変更自在に構成してある田植機。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、田植機に関し、詳しくは、走行機体を後進させた際に苗植付装置を自動的に上昇させる制御技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来からの田植機では走行機体を後進させる変速操作が行われると、この操作を検出して、苗植付装置を駆動する伝動系に介装したクラッチ機構を切り操作し、この切り操作の完了後、油圧シリンダ等のアクチュエータを作動させて苗植付装置を自動的に上昇させるよう制御動作の順序を設定している。
【0003】又、従来からの田植機では、電動モータ等の駆動力でクラッチ機構の切り操作を行うものが多く、切り操作時には植付けアームの先端が圃場に接触する姿勢を回避するよう決まった回転位相で該クラッチ機構の切り操作を許容する機械的な連係が形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、走行機体を後進させる変速操作時にクラッチ機構を切り操作し、この切り操作の完了後、苗植付装置の上昇を開始するよう制御の順序が決められているものでは、苗植付装置の上昇開始タイミングに遅れを生じやすく、走行機体が後進を開始する際においても整地フロートが圃場面に接触したままとなり既植苗を傷める弊害も発生していた。この弊害は、クラッチ機構の切り操作を電動モータ等で行う際の時間遅ればかりで無く、クラッチ機構が所定の回転位相に達してから切り状態に達することに起因する時間遅れによっても発生するものであり、市販されている田植機では走行機体を後進する変速操作が行われてから植付けクラッチが切り状態に達するまで0.6秒以上の時間を必要とすることもある。
【0005】苗植付装置の上昇動作の開始が遅れる現象は、前述した制御の順序だけが原因で無く、苗の残量が多く苗植付装置の重量が大きい場合、あるいは、圃場の泥土の粘性が高く苗植付装置の整地フロートを圃場面に強く吸着する場合も原因として考えられ、このような外的な原因に起因する場合にも走行機体が後進を開始する際においても整地フロートが圃場面に接触した状態に陥ることがあった。
【0006】本発明の目的は、走行機体を後進させる操作が行われ、実際に走行機体が後進を開始する際には苗植付装置の整地フロートが圃場面から離間させ既植苗を傷めることのない田植機を合理的に構成する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴は、走行機体を後進させる操作に連動して走行機体から苗植付装置に動力を伝えるクラッチ機構を切り操作し、又、この走行機体を後進させる操作から設定時間経過後に該走行機体に昇降自在に連結した苗植付装置を自動上昇させる制御手段を備えると共に、苗植付装置の重量を求める検出手段を備え、この検出手段で求めた苗植付装置の重量が大きいほど前記設定時間を小さい値に設定する、若しくは、前記設定時間を人為的に変更することにより走行機体を後進させる操作から苗植付装置を自動上昇を開始するまでの設定時間を変更自在に構成してある点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0008】
【作用】上記特徴によると、走行機体を後進させる操作を行った場合には苗植付装置に対するクラッチ機構が切り操作され、又、走行機体を後進させる操作の開始から設定時間の経過後には苗植付装置を上昇させる制御を開始すると共に、この設定時間を変更自在に構成し、しかも、この設定時間を苗植付装置の重量が大きい場合には小さくし、又、人為的に調節することによって走行機体を後進させる操作から所定時間経過後には苗植付装置の上昇動作を開始できるものとなる。
【0009】つまり、クラッチ機構は切り操作を開始すると所定時間の経過後には間違い無く切り状態に達するものであるので、この切り操作が開始された後には該クラッチ機構の状態に拘わらず、所定時間の経過後には苗植付装置の上昇動作を開始することにより、外的な原因によって苗植付装置の上昇開始が遅れる場合でも、逆に苗植付装置の上昇開始が早まる場合でも、走行機体を後進する操作の開始から実際に苗植付装置が上昇を開始するまでの時間の短縮を可能にすると同時に、この上昇開始時には既にクラッチ機構を切り状態にすることも可能にするものとなる。
【0010】
【発明の効果】従って、走行機体を後進させる操作が行われ、実際に走行機体が後進を開始する際には苗植付装置の整地フロートを圃場面から離間させ既植苗を傷めることのない田植機が合理的に構成できたのである。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1に示すように、ステアリング操作される駆動型の前車輪1、及び、駆動型の後車輪2を備えた走行機体3の前部にエンジン4、及び、このエンジン4からの動力を無段階に変速するベルトテンション式の無段変速装置5を搭載すると共に、この走行機体3の中央部に運転座席6を配置し、該走行機体3の後端部に対し油圧シリンダ7で駆動昇降するリンク機構8を介して苗植付装置Aを着脱自在に連結して乗用型の田植機を構成する。
【0012】前記運転座席6の右側部に苗植付装置Aの昇降制御とクラッチ機構としての植付クラッチCの入切り操作とを行う昇降レバー9を備え、運転座席6の左側部に前記無段変速装置5を操作するシフト変速レバー10を備え、更に、ステアリングハンドル11のハンドルポストの左側面には走行速度を図2に「F1,F2」で示す如く前進2段の位置と、「N」で示す中立(停止)位置と、「R」で示す後進位置とに切換え自在な主変速レバー12を備え、更に、ステアリングハンドル11の近傍位置には、その操作によって苗植付装置Aを所定レベルまで強制上昇させ、再度の操作によって該苗植付装置Aを作業レベルまで下降させる切換えレバー13を備えている。尚、植付クラッチCは、植付けアーム(後述する)が圃場に接触する姿勢を回避した回転位相でのみ切り操作が許容されるよう機械牽制系(詳述せず)が形成されている。
【0013】昇降レバー9は図4に示す経路に沿って操作するよう構成され、該昇降レバー9を経路内の「下降」位置より前方側に設定すると苗植付装置Aを下降させ、「上昇」位置より後方側に設定すると苗植付装置Aを上昇させ、「中立」位置に設定すると苗植付装置Aをそのレベルに維持する。又、該昇降レバー9を「入」位置に設定すると植付クラッチCを入り操作し、「切」位置に設定すると植付クラッチCを切り操作し、更に、該昇降レバー9を「自動」位置に設定すると前記切換えレバー12の操作に従って苗植付装置Aの昇降を許容すると同時に苗植付装置Aの上昇時には植付クラッチCを自動的に切り操作し、苗植付装置Aの下降時には植付クラッチCを自動的に入り操作する。
【0014】苗植付装置Aはマット状苗Wを載置する苗載せ台14、走行機体3から動力が伝えられる伝動ケース15、この伝動ケース15からチェーンケース16を介して伝えられる動力で回転するロータリケース17、このロータリケース17に一対ずつ備えられた植付アーム18、複数の整地フロート19夫々を備えて複数条植え用に構成され、作業時には苗載せ台14に載置されたマット状苗Wの下端から苗を植付アーム18が1株ずつ切出して圃場面に植え付けるものとなっている。
【0015】この田植機では作業時において走行機体3を後進させる際に、前記主変速レバー12を後進位置「R」に設定すると、植付けクラッチCを切り操作すると共に、苗植付装置Aを所定レベルまで強制的に上昇させる制御系が構成され、この苗植付装置Aの上昇動作を、より迅速に行う制御系を備えることにより、走行機体3が後進する際には植付けクラッチCが切り状態に達し、苗植付装置Aが圃場面から離間するように構成されている。
【0016】図2に示すように制御系の概要を表すことが可能であり、この制御系では前記主変速レバー12が後進位置「R」に設定されたことを検出するバックスイッチ20と、前記切換えレバー13が操作された際に操作される植付けクラッチ操作用の第1スイッチ21、苗植付装置Aを昇降させる第2スイッチ22、油圧シリンダ7の内圧を計測する検出手段としての圧力センサ23、タイマの値を人為的に設定するマニュアル設定器24夫々からの信号を制御手段としての制御装置25に入力する入力系を備えると共に、この制御装置25からの信号を前記油圧シリンダ7を制御する電磁弁26、及び、前記植付けクラッチCを操作する電動モータ27を制御するリレー28夫々に対する出力系を備えている。
【0017】図5に示すように、前記油圧シリンダ7はエンジン4で駆動される油圧ポンプ29からの圧油が前記電磁弁26を介して供給されるよう構成され、苗植付装置Aの重量を油圧シリンダ7に作用する圧力に基づいて計測するよう油圧シリンダ7に連通する油路30に対して前記圧力センサ23を備えている。
【0018】又、主変速レバー12を後進位置「R」に設定した際に苗植付装置Aを上昇させる制御動作は図3に示す如く設定され、この制御では主変速レバー12を後進位置「R」に設定したことをバックスイッチ20で検出した際には、リレー28を介して電動モータ27を駆動して植付けクラッチCの切り操作を開始し、次にマニュアル設定器24でタイマの値が設定されている場合には、この値をタイマ値に設定し、マニュアル設定器24でタイマの値が設定されていない場合には、圧力センサ23からの信号に基づいてタイマの値を設定する(#101〜105ステップ)。
【0019】次に、タイマ(ソフトウエアで構成されている)をスタートさせ設定時間が経過した後には、電磁弁26を操作して苗植付装置Aの上昇制御を開始し、苗植付装置Aが上限に達すると電磁弁26を中立位置に戻し上昇作動を停止するようになっている(#106〜110ステップ)。
【0020】このように、走行機体3を後進させる操作が行われると、植付けクラッチCの切り操作を開始すると共に、植付けクラッチCの切り操作が完了するに充分に設定された設定時間経過後に苗植付装置Aを上昇させるので、クラッチ機構Cは所定時間の経過後には確実に切り状態に達し、マット状苗Wの残量、圃場の泥土の粘性等外的な原因によって苗植付装置Aの上昇開始が遅れる場合には上昇動作の開始タイミングを早めることにより、逆に、圃場の泥土の粘性が極めて低い場合等、苗植付装置Aの上昇開始が早まる場合には上昇動作の開始のタイミングを遅くすることにより、走行機体3を後進する変速操作の開始から実際に苗植付装置Aが圃場から上昇を開始するまでの時間の短縮を可能にすると同時に、実際に走行機体3が後進を開始する際には苗植付装置Aの整地フロート19を圃場面から離間させることが可能な田植機を構成できたのである。
【0021】又、この田植機では昇降レバー9の操作位置がポテンショメータ(図示せず)で検出され、この昇降レバー9が「自動」の位置から「上昇」の位置の側に外れると作業途中であっても植付けクラッチCを切り操作する制御と、苗植付装置Aを上昇させる制御とが開始されるので、作業時の振動等によって、短時間だけ昇降レバー9が自動位置から外れてもこれらの制御が開始されないよう、前記ポテンショメータの信号を極めて短いインターバル毎に取込むセンシング動作と、このセンシングで得られた信号で昇降レバー9が「自動」位置から外れたことを検出しても、この結果が継続して所定回数(所定時間)計測された場合にのみ制御の切換えを行い、この場合以外には昇降レバー9が「自動」の位置に保持されているものと同じ制御を継続して行うように制御動作が設定されている。
【0022】〔別実施例〕本発明は上記実施例以外に、例えば、植付けクラッチが切り状態に達したことを検出するセンサ類を備え、前述のように先ず植付けクラッチの切り操作を行い、次にタイマで設定された時間の経過後に苗植付装置を上昇制御を行うもので、実際に苗植付装置の上昇が開始されたタイミングで(苗植付装置の整地フロートが圃場面から僅かに上昇したタイミングで)植付けクラッチがまだ入り状態にある場合には、切り位置に達するまで上昇動作を停止させるよう制御動作を設定することも可能である。
【0023】又、本発明では苗植付装置の重量を求めるセンサをリンク機構に備えることが可能であり、更に、苗植付装置の重量によってのみ苗植付装置の上昇開始のタイミングを決定するよう制御動作を設定する、あるいは、人為的に値を入力することによってのみ苗植付装置の上昇開始のタイミングを決定するよう制御動作を設定することも可能である。
【0024】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。




 

 


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