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発明の名称 水田作業機
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平8−9726
公開日 平成8年(1996)1月16日
出願番号 特願平6−144197
出願日 平成6年(1994)6月27日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修
発明者 奥田 浩史
要約 目的
走行機体の前後バランスの低下を自動的に検出して走行速度の増大を抑制する。

構成
水田作業機の後端に連結される作業装置の重量を昇降用の油圧シリンダ7の内圧が作用する圧力センサSで計測し、この計測結果が所定値より小さい場合には走行速度を所定値以上に増速させない制御装置35を備える。
特許請求の範囲
【請求項1】 走行機体(3)の油圧シリンダ(7)で昇降作動する昇降機構に対し着脱自在に作業装置を備えると共に、前記油圧シリンダ(7)の内圧を計測するセンサ(S)、及び、このセンサ(S)の計測結果が所定値以下にある際に走行機体(3)の走行速度が所定値以上になることを阻止する制御装置(35)を備えている水田作業機。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水田作業機に関し、詳しくは、油圧シリンダで昇降操作される作業機を走行機体に対して着脱自在に構成したものの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】水田作業機として田植機を例に挙げると、乗用型の田植機では走行機体に後端に対して油圧シリンダで昇降動作するリンク機構を備え、このリンク機構に苗植付装置を着脱自在に備えたものが存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】また、水田作業としては苗植付装置を用いた苗植付作業以外に、施肥作業、薬剤散布作業、溝切り作業、除草作業等があり、これらの作業を行う目的から走行機体のリンク機構から苗植付装置を分離し、該リンク機構に溝切り作業装置等を備えることもあった。
【0004】しかし、これらの装置は苗植付装置と比較して軽量であり、田植え用の走行機体に対していずれかの装置を連結して走行した場合、あるいは、苗植付装置を分離したままの状態で走行した場合には、機体の前後方向での重量がアンバランスな状態に陥り走行姿勢が不安定になることもあった。
【0005】このように走行姿勢が不安定になる現象は、田植機のように苗植付装置を連結した状態で機体の前後方向のバランスが取れているものから苗植付装置を取外して比較的高速で走行した場合、あるいは、苗植付装置に代えて軽量の装置を連結して比較的高速で走行した場合に発生しやすいものであり適切な改善が望まれている。
【0006】本発明の目的は、走行機体に対し苗植付装置に代えて比較的軽量の装置を連結した状態で走行した場合にも、走行姿勢を安定化させ得る水田作業機を合理的に構成する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴は、走行機体の油圧シリンダで昇降作動する昇降機構に対し着脱自在に作業装置を備えると共に、前記油圧シリンダの内圧を計測するセンサ、及び、このセンサの計測結果が所定値以下にある際に走行機体の走行速度が所定値以上になることを阻止する制御装置を備えている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0008】
【作用】上記特徴によると、例えば、苗植付装置を備えた状態で機体前後方向の重量バランスが取れるよう構成した走行機体の昇降機構から苗植付装置を取外し、この昇降機構に作業装置を連結せずに走行した場合、あるいは、軽量の作業装置を連結して走行した場合には、油圧シリンダの内圧をセンサが計測し、この計測結果が所定値以下の場合には、走行速度を増す操作が行われても走行速度が所定値以上になることを制御装置が阻止するものとなる。
【0009】つまり、本発明は油圧シリンダに作用する荷重に基づいて該走行機体に連結された作業装置の重量を把握するので、走行機体から作業装置を取外した場合、あるいは、軽量の作業装置を連結した場合のように走行機体の重量バランスが低下している場合には、このアンバランス状態に対応してスイッチを操作するなど特別な人為操作を行わずとも、単一のセンサだけで作業装置の軽重を判別し、かつ、高速走行を自動的に阻止して走行姿勢が不安定になる現象を抑制する。
【0010】更に、同様の制御を行う目的で走行機体の側における作業装置の連結部位にスイッチを設け、このスイッチを作業装置の連結時に作業装置側の操作片等で操作するよう構成して作業装置の連結の有無、及び、作業装置の種類の判別を行うものを想定し、これと比較すると、本発明はスイッチを操作するための操作片等を作業装置の側に形成せずに済むばかりで無く、単一のセンサでありながら多種類の作業装置夫々の異なる重量を正確に把握でき、多様な作業に対応できるものとなる。
【0011】
【発明の効果】従って、走行機体から作業装置を取外して走行した場合、あるいは、走行機体に対し苗植付装置に代えて比較的軽量の装置を連結した状態で走行した場合にも、走行姿勢を安定化させ得る水田作業機が合理的に構成された。
【0012】特に、本発明では苗植付装置に代えて溝切り装置等の軽量の作業装置を連結して作業を行う場合に、機体のバランスを取る目的で作業装置の側にバランスウエイトを備えてもセンサの信号に基づいてこの状態が判別され自動的に高速走行が許容されるという効果も奏する。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1に示すように、ステアリング操作される駆動型の前車輪1、及び、駆動型の後車輪2を備えた走行機体3の前部にエンジン4、及び、このエンジン4からの動力を変速するベルトテンション式の無段変速装置5を搭載すると共に、この走行機体3の中央部に運転座席6を配置し、該走行機体3の後端部に対し油圧シリンダ7で駆動昇降する昇降機構としてのリンク機構8を介して苗植付装置Aを着脱自在に連結して水田作業機の一例として乗用型の田植機を構成する。
【0014】前記運転座席6の右側部に苗植付装置Aの昇降制御と植付クラッチCの入切り操作とを行う昇降レバー9を備え、運転座席6の左側部に変速レバー10を備え、更に、ステアリングハンドル11の近傍位置には、その操作によって苗植付装置Aを所定レベルまで強制上昇させ、再度の操作によって該苗植付装置Aを作業レベルまで下降させる切換えレバー12を備えている。
【0015】昇降レバー は図4に示す経路に沿って操作するよう構成され、該昇降レバー9を経路内「入」位置に設定すると植付クラッチCを入り操作し、「切」位置に操作すると植付クラッチCを切り操作し、「下降」、「上昇」位置に設定すると夫々苗植付装置Aを下降させ、上昇させ、また、「中立」位置に設定すると苗植付装置Aをそのレベルに維持する。更に、昇降レバー9を「自動」位置に設定すると前記切換えレバー12の操作に従って苗植付装置Aの昇降を許容すると同時に苗植付装置Aの上昇時には植付クラッチCを自動的に切り操作し、苗植付装置Aの下降時には植付クラッチCを自動的に入り操作する。
【0016】苗植付装置Aはマット状苗Wを載置する苗載せ台13、走行機体3から動力が伝えられる左右一対の伝動ケース14、この伝動ケース14からチェーンケース15を介して伝えられる動力で回転するロータリケース16、このロータリケース16に一対ずつ備えられた植付アーム17、複数の整地フロート18夫々を備えて複数条植え用に構成され、作業時には苗載せ台13に載置されたマット状苗Wの下端から苗を植付アーム17が1株ずつ切出して圃場面に植え付けるものとなっている。
【0017】また、この苗植付装置Aには苗植付作業時に植付苗の近傍の圃場下に肥料を送り込む施肥装置D、及び、圃場面に除草剤等の薬剤を散布する薬剤散布装置Eとを備え、施肥装置Dは肥料を貯留するホッパー19と、このホッパー19からの肥料を苗植付作動と連係して設定量ずつ送り出す繰出し機構20と、繰出し機構からの肥料を下方に案内するホース21と、ホース21からの肥料を圃場面下に送り込む作溝器22とで構成され、図6に示すように、薬剤散布装置Eは粉状、あるいは、粒状の薬剤を貯留するホッパー23と、このホッパー23からの肥料を苗植付作動と連係して設定量ずつ送り出す繰出し機構24と、この繰出し機構24からの肥料を回転力で飛散させるよう電動モータ25の駆動力で前後向き軸芯周りで回転自在な一対の拡散ロータ26と、この拡散ロータ26からの薬剤を機体横方向に案内して散布量の平均化を図る案内部材27とを備えて構成されている。
【0018】この水田作業機は、施肥装置D、薬剤散布装置Eを有する苗植付装置Aを連結した状態で機体の前後方向でのバランスがとれるよう設計されたものであり、この苗植付装置Aを取外した場合、あるいは、図7に示す如く苗植付装置Aと比較して軽量に構成された溝切り作業装置Fを連結した場合には機体全体の前後方向での重量のアンバランスに起因して走行姿勢が不安定になる現象を抑制するよう、前記変速レバー10の操作位置に拘わらず走行速度が所定値以上になることを阻止する制御系を備えている。
【0019】図3に示すように、エンジン4で駆動される油圧ポンプ28からの作動油を電磁弁29を介して前記油圧シリンダ7に供給する油圧系が構成され、この油圧系では油圧シリンダ7の内圧が作用する油路に圧力センサSを備えている。
【0020】図2に示すように、水田作業機の制御系が構成され、この制御系では昇降レバー9の操作量を計測するポテンショメータ30、変速レバー10の操作量を計測するポテンショメータ31、この変速レバー10の操作時に無段変速装置5の操作量をフィードバックするフィードバックセンサ32、切換えレバー12で操作される昇降制御用の第1スイッチ33、クラッチ操作用の第2スイッチ34、前記圧力センサS夫々からの信号が入力する制御装置35を備えると共に、前記電磁弁29を制御する出力信号系、前記クラッチCを入り切り操作する電動モータ36を制御するためのリレー37を操作する出力信号系、前記変速装置5を操作する電動モータ38を制御するためのリレー39を操作する出力信号系、前記薬剤散布装置Eの拡散ロータ26駆動用の電動モータ25を制御するためのリレー40を操作する出力信号系夫々が形成されている。
【0021】そして、この制御系では変速レバー10の操作位置に拘わらず走行速度が所定値以上になることを阻止する制御動作を規制ルーチンとしてサブルーチンの形で設定してある。つまりこのルーチンでは図5に示すように、圧力センサSからの信号を入力して、この圧力センサSで計測される圧力の値が予め設定した所定の圧力値と比較して、比較の結果センサSの信号値が予め設定された圧力値より大きい場合には(#101〜#103ステップ)、変速レバー10のポテンショメータ31からの信号に基づき該変速レバー10の設定位置を入力し、この設定値を変速目標にすると共に、この変速目標に向かうよう前記フィードバックセンサ32からの信号をフィードバックしながら電動モータ38を駆動して無段変速装置5を操作する(#104〜#106ステップ)。
【0022】また、#103ステップで比較の結果センサSの信号値が予め設定された圧力値より小さい場合には変速レバー10のポテンショメータ31からの信号に基づき該変速レバー10の設定位置を入力すると共に、この設定位置と予め設定した走行速度の上限と比較して、この変速レバー10の設定位置が上限値以下の場合には前述の変速操作と同様に変速レバー10の設定位置を変速目標とする変速操作を行い、これとは逆に変速レバー10の設定位置が上限値以上の場合には、即ち、作業装置を連結しない状態、あるいは、軽量の作業装置が連結された状態で高速走行を行おうとする変速操作が行われた場合には、この上限値を変速目標に設定し、この変速目標に向かうよう前記フィードバックセンサ32からの信号をフィードバックしながら電動モータ38を駆動して無段変速装置5を操作する(#107〜#110ステップ)ことで高速走行を阻止する。
【0023】このように制御動作を設定したことにより、苗植付装置Aを走行機体3から取外した状態で走行した場合、あるいは、前述のように、リンク機構8の後端に対し苗植付装置Aに代えて比較的軽量の溝切り作業装置Fを連結して走行する際には、圧力センサSからの信号に基づいて機体後部が軽量化したことを制御装置35が認識すると共に、作業者が変速レバー10を高速側に操作しても走行機体3が予め設定した速度値以上に上昇することが無く、機体バランスを大きく崩さず快適な走行を可能にするものとなっている。
【0024】尚、前記溝切り作業装置Fは図6に示すように、前部を先鋭に成形した溝切り板41と、この溝切り板41の溝切り深さを調節する電動シリンダ42と、これらを支持するフレーム43とを有すると共に、このフレーム43を既植苗との相対位置関係に基づきリンク機構8に対して左右方向に移動させるアクチュエータ(図示せず)を備えて構成されている。
【0025】特に、本発明では例えば薬剤散布装置Eだけをリンク機構8の後端に連結して作業を行う場合に、ホッパーに貯留された薬剤の重量によって作業の初期には機体の前後バランスが良好な状態で、作業途中に薬剤の消耗に伴い機体のバランスが崩れた場合にも自動的に走行速度を低減して安定して走行状態を確保できるものとなっている。
【0026】尚、この作業機では前記切換えレバー12の操作によって作業装置を上昇させた場合、走行機体3を後進させる変速操作を行った場合、植付クラッチCを切る操作が行われた場合には、薬剤散布装置Eの拡散ロータ26を駆動する電動モータ25の駆動を停止し、また、植付クラッチCを入れる操作が行われた場合には、薬剤散布装置Eの拡散ロータ26を駆動する電動モータ25の駆動を開始する制御動作も設定されている。
【0027】〔別実施例〕本発明は上記実施例以外に、例えば、作業装置の重量が軽いほど走行速度の上限を低く設定するよう、作業装置に重量に対応して、走行速度の上限を可変に構成して実施することも可能である。
【0028】また、本発明は液状の薬剤を噴霧する装置を走行機体の後端に連結する作業機に適用することが可能であり、走行機体の側、あるいは、作業装置の側にバランサを備えた形態で実施することも可能である。
【0029】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。




 

 


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