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発明の名称 量子素子
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平9−8267
公開日 平成9年(1997)1月10日
出願番号 特願平7−180953
出願日 平成7年(1995)6月23日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
発明者 宇賀神 隆一
要約 目的
金属配線を用いることなく、光入力分布を時系列の電荷分布として読み出すことができ、撮像素子に用いることができる量子素子を実現する。

構成
螺旋状の一次元量子ドットアレーにより量子細線QWの周囲を取り巻いた構成の電荷移動チャネル21を複数互いに平行に並列配置する。各電荷移動チャネル21に隣接して量子ドットからなる受光部23を配置する。受光部23に関して電荷移動チャネル21と反対側の部分に、電荷移動チャネル21と平行に正孔保持チャネル24を設ける。電荷移動チャネル21から正孔保持チャネル24に向かう方向の外部電場を印加した状態で光を照射し、受光部23に生成された電子−正孔対のうちの電子を電荷移動チャネル21に入力する。外部電場の印加方向をその面内で回転させることにより、量子細線QWに沿って入力電子を移動させ、その出力端の電極22fから時系列に沿って出力される電荷を検出する。
特許請求の範囲
【請求項1】 その延在方向に電荷が移動することができる細線と、上記細線の一端から他端に向かって前進するように上記細線の周囲を取り巻いて設けられた一次元量子箱アレーとを有し、上記細線の延在方向と交差する面内の外部電場を印加し、その印加方向を上記面内で回転させることにより上記細線に沿って電荷を移動させるようにした電荷移動チャネルと、上記電荷移動チャネルに隣接して設けられた量子箱からなる受光部とを有することを特徴とする量子素子。
【請求項2】 上記受光部は上記受光部と上記一次元量子箱アレーとの間の距離が上記受光部と上記細線との間の距離よりも小さい位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の量子素子。
【請求項3】 上記受光部を構成する上記量子箱はタイプIIの化合物半導体ヘテロ接合からなることを特徴とする請求項1記載の量子素子。
【請求項4】 上記受光部に関して上記電荷移動チャネルと反対側の部分に上記細線とほぼ平行に正孔保持チャネルが設けられていることを特徴とする請求項1記載の量子素子。
【請求項5】 上記電荷移動チャネルから上記受光部に向かう方向の上記外部電場を印加した状態で少なくとも上記受光部を含む領域に光を照射することにより上記受光部に電子−正孔対を生成し、上記電子−正孔対のうちの電子を上記細線に移動させて上記細線中に閉じ込め、上記外部電場を上記面内で回転させることにより上記細線中に閉じ込められた上記電子を上記細線に沿って移動させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の量子素子。
【請求項6】 上記電荷移動チャネルから上記正孔保持チャネルに向かう方向の上記外部電場を印加した状態で少なくとも上記受光部を含む領域に光を照射することにより上記受光部に電子−正孔対を生成し、上記電子−正孔対のうちの電子を上記細線に移動させて上記細線中に閉じ込めるとともに、上記電子−正孔対のうちの正孔を上記正孔保持チャネルに移動させて上記正孔保持チャネル中に閉じ込め、上記外部電場を上記面内で回転させることにより上記細線中に閉じ込められた上記電子を上記細線に沿って移動させるようにしたことを特徴とする請求項4記載の量子素子。
【請求項7】 上記細線中に閉じ込められた上記電子の分布を入力情報とすることを特徴とする請求項5記載の量子素子。
【請求項8】 上記細線中に閉じ込められた上記電子の分布を入力情報とすることを特徴とする請求項6記載の量子素子。
【請求項9】 上記細線の上記一端および上記他端にそれぞれ電極が設けられていることを特徴とする請求項1記載の量子素子。
【請求項10】 上記電荷移動チャネルが複数互いに平行に並列配置されていることを特徴とする請求項1記載の量子素子。
【請求項11】 円筒座標系(r、θ、z)において、上記細線の中心軸をz軸上に設置し、上記一次元量子箱アレーを構成する任意の一つの量子箱の中心座標を(rn 、θn 、zn )と表示したとき、θp ≠θq を満たす量子箱が存在することを特徴とする請求項1記載の量子素子。
【請求項12】 円筒座標系(r、θ、z)において、上記細線の中心軸をz軸上に設置し、上記一次元量子箱アレーを構成する任意の一つの量子箱の中心座標を(rn 、θn 、zn )と表示したとき、方程式θn =ξzn (ただし、ξは定数)で表される螺線上に上記一次元量子箱アレーが配置されていることを特徴とする請求項11記載の量子素子。
【請求項13】 円筒座標系(r、θ、z)において、上記細線の中心軸をz軸上に設置し、上記一次元量子箱アレーを構成する任意の一つの量子箱の中心座標を(rn 、θn 、zn )と表示したとき、θn =a1 (0≦n<m1 )、θn =a2 (m1 ≦n<m2 )、…(ただし、a1 、a2 、…は定数)を満たす量子箱が存在することを特徴とする請求項11記載の量子素子。
【請求項14】 上記電荷移動チャネルが複数互いに平行に並列配置されており、それぞれの上記電荷移動チャネルの上記細線に関する上記定数ξの値は複数の上記細線間で同一または符号も含めて異なることを特徴とする請求項12記載の量子素子。
【請求項15】 上記電荷移動チャネルが複数互いに平行に並列配置されており、それぞれの上記電荷移動チャネルの上記細線に関する上記定数an の値は複数の上記細線間で同一または符号も含めて異なることを特徴とする請求項13記載の量子素子。
【請求項16】 上記細線と上記一次元量子箱アレーとの間に障壁層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の量子素子。
【請求項17】 上記細線と上記一次元量子箱アレーとの間に障壁層が設けられていないことを特徴とする請求項1記載の量子素子。
【請求項18】 上記細線は量子細線であることを特徴とする請求項1記載の量子素子。
【請求項19】 上記細線は一次元量子箱アレーであることを特徴とする請求項1記載の量子素子。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、量子素子に関し、特に、量子細線や量子箱(量子ドットとも呼ばれる)などの量子構造を用いた量子素子に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体素子の微細化に伴い、空乏層を金属配線を介して制御する従来の動作方式が近い将来限界を迎えると考えられている。この微細化は単体素子の特性の向上を求めたものでもあるが、それ以上に大規模集積化のために行っているものであり、VLSIとしての性能を念頭に置く必要がある。半導体素子を超高密度に集積化した場合には、金属配線が複雑に構成され、論理ICに限らず、メモリICにとっても、配線遅延が最も重要な問題として浮かび上がってきている。
【0003】ところで、電荷を移動させる半導体素子としては、従来より電荷結合素子(CCD)がよく知られており、超高集積のものがすでに実現され、実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述のCCDにおいても、空乏層を金属配線を介して制御することにより電荷を移動させており、多くの複雑な金属配線が用いられている。このため、やはり配線遅延が重要な問題として存在する。
【0005】このような背景の下に、金属配線によらずに系を制御することができる素子が広く求められているが、これまで報告例はないのが実情である。
【0006】従って、この発明の目的は、金属配線を用いることなく、光入力分布を時系列の電荷分布として読み出すことができ、撮像素子として用いることができる量子素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明による量子素子は、その延在方向に電荷が移動することができる細線と、細線の一端から他端に向かって前進するように細線の周囲を取り巻いて設けられた一次元量子箱アレーとを有し、細線の延在方向と交差する面内の外部電場を印加し、その印加方向を上記面内で回転させることにより細線に沿って電荷を移動させるようにした電荷移動チャネルと、電荷移動チャネルに隣接して設けられた量子箱からなる受光部とを有することを特徴とするものである。
【0008】この発明において、細線としては、電子を一次元的に閉じ込めることができる量子細線や、電子を零次元的に閉じ込めることができる量子箱をトンネル効果により相互に結合するように互いに隣接して配列した一次元量子箱アレーなどを用いることができる。
【0009】この発明において、受光部は、この受光部と一次元量子箱アレーとの間の距離がこの受光部と細線との間の距離よりも小さい位置に設けられる。
【0010】この発明においては、電荷移動チャネルから受光部に向かう方向の外部電場を印加した状態で少なくとも受光部を含む領域に光を照射することにより受光部に電子−正孔対を生成し、その電子−正孔対のうちの電子を細線に移動させて細線中に閉じ込め、外部電場を上記面内で回転させることにより細線中に閉じ込められた電子を細線に沿って移動させる。ここで、受光部から移動して細線中に閉じ込められた電子の分布は、入力情報とすることができる。
【0011】この発明においては、典型的には、受光部に関して電荷移動チャネルと反対側の部分に細線とほぼ平行に正孔保持チャネルが設けられる。
【0012】このように正孔保持チャネルが設けられる場合には、電荷移動チャネルから正孔保持チャネルに向かう方向の外部電場を印加した状態で少なくとも受光部を含む領域に光を照射することにより受光部に電子−正孔対を生成し、その電子−正孔対のうちの電子を細線に移動させて細線中に閉じ込めるとともに、その電子−正孔対のうちの正孔を正孔保持チャネルに移動させて正孔保持チャネル中に閉じ込め、外部電場を上記面内で回転させることにより細線中に閉じ込められた電子を細線に沿って移動させる。ここで、受光部から移動して細線中に閉じ込められた電子の分布は、入力情報とすることができる。また、このとき、この細線に沿っての電子の移動に伴い、正孔保持チャネル中に閉じ込められた正孔もこの正孔保持チャネルに沿って移動する。
【0013】この発明においては、細線の一端および他端にそれぞれ電極が設けられる。これらの電極のうちの一方は電荷入力用であり、他方は電荷出力用である。
【0014】この発明においては、典型的には、電荷移動チャネルが複数互いに平行に並列配置される。
【0015】この発明においては、典型的には、円筒座標系(r、θ、z)において、細線の中心軸をz軸上に設置し、一次元量子箱アレーを構成する任意の一つの量子箱の中心座標を(rn 、θn 、zn )と表示したとき、θp ≠θq を満たす量子箱が存在する。
【0016】この発明の一実施形態においては、円筒座標系(r、θ、z)において、細線の中心軸をz軸上に設置し、一次元量子箱アレーを構成する任意の一つの量子箱の中心座標を(rn 、θn 、zn )と表示したとき、方程式θn =ξzn (ただし、ξは定数)で表される螺線上に一次元量子箱アレーが配置される。
【0017】ここで、特に、電荷移動チャネルが複数互いに離れて平行に並列配置される場合、それぞれの細線に関する定数ξの値は、細線間で同一または符号も含めて異なる。
【0018】この発明の他の一実施形態においては、円筒座標系(r、θ、z)において、細線の中心軸をz軸上に設置し、一次元量子箱アレーを構成する任意の一つの量子箱の中心座標を(rn 、θn 、zn )と表示したとき、θn =a1 (0≦n<m1 )、θn =a2 (m1 ≦n<m2 )、…(ただし、a1 、a2 、…は定数)を満たす量子箱が存在する。
【0019】ここで、特に、電荷移動チャネルが複数互いに離れて平行に並列配置される場合、それぞれの細線に関する定数an の値は、細線間で同一または符号も含めて異なる。
【0020】この発明においては、細線と一次元量子箱アレーとの間に障壁層が設けられていても、設けられていなくてもよい。
【0021】この発明において、量子細線および一次元量子箱アレーを構成する量子箱は、典型的には、化合物半導体ヘテロ接合により形成される。この化合物半導体ヘテロ接合としては、GaAs/AlGaAsヘテロ接合、GaAs/AlAsヘテロ接合、InAs/AlGaSbヘテロ接合などを用いることができる。これらの量子細線および一次元量子箱アレーを構成する量子箱はまた、半導体と絶縁体との接合により形成することもできる。この半導体と絶縁体との接合において、典型的には、半導体は一種または複数種のIV族元素からなり、絶縁体はIV族元素と酸素との化合物からなる。一例を挙げると、半導体はSiであり、絶縁体はSiO2 である。二種類のIV族元素からなる半導体の例としては、例えばSiCが挙げられる。
【0022】この発明において、受光部を構成する量子箱は、典型的には、いわゆるタイプIIの化合物半導体ヘテロ接合、例えばInAs/AlSbヘテロ接合により形成される。
【0023】
【作用】上述のように構成されたこの発明による量子素子における電荷移動チャネルにおいて、細線と一次元量子箱アレーとからなる系の電子密度が一次元量子箱アレーを構成する量子箱一つ当たり一つの電子に対応する電子密度よりも小さくなるようにしておく。この状態においては、外部電場を印加しないときには、細線の量子状態の方が量子箱の量子状態よりもエネルギーが低く、電子は細線中に存在する。
【0024】次に、細線の延在方向と交差する面内の外部電場を印加すると、この細線の周囲を取り巻いて設けられた一次元量子箱アレーのうちの外部電場の印加方向と反対側の高電位の部分(以下この項において「第1の部分」という。)に細線から電子が引き寄せられる。この場合、一次元量子箱アレーを構成する量子箱間の間隔や障壁の高さを適切に設定しておくことにより、この第1の部分の量子箱にモット(Mott)絶縁体的に電子が分布し、この第1の部分の量子箱に電子が局在するようにすることができる。このとき、細線のうちのこの第1の部分に対応する部分(以下この部分も「第1の部分」という。)は、一次元量子箱アレーの第1の部分の量子箱中の電子によるクーロンポテンシャルにより実効的に低電位となる。従って、細線から一次元量子箱アレーに移り切らなかった残りの電子があったとしても、それらは細線の第1の部分の両側のより高電位の部分(以下この項において「第2の部分」という。)に溜まる。
【0025】そこで、この状態で、何らかの方法で細線と一次元量子箱アレーとからなる系に電子を生成すると、この電子はこの系で最もエネルギーが低い細線の第2の部分に溜まる。この場合、一次元量子箱アレーは、細線の一端から他端に向かって前進するように細線の周囲を取り巻いて設けられているので、細線には第1の部分および第2の部分が交互に形成されることになるが、この第1の部分には、一次元量子箱アレーの第1の部分の量子箱中の電子によって電子に対する高いポテンシャル障壁が存在しているので、第2の部分に溜まった余分な電子、すなわち入力された電子は隣の第2の部分に移ることができない。
【0026】この状態で、外部電場の印加方向を細線の延在方向と交差する面内で回転させる。すると、これに伴い、電子に対して低エネルギーとなる量子箱が替わり、局在電子が存在する量子箱のある一次元量子箱アレーの第1の部分は、細線の延在方向に移動する。そして、この移動に伴い、入力された電子が溜まっている細線の第2の部分も細線の延在方向に移動する。すなわち、外部電場の回転により、金属配線を用いることなく、細線に沿って電荷を移動させることができることがわかる。
【0027】さて、この発明による量子素子において、情報を入力するためには、電荷移動チャネルから受光部に向かう方向の外部電場を印加した状態で少なくとも受光部を含む領域に光を照射することによりこの受光部に電子−正孔対を生成する。すると、この電子−正孔対のうちの電子は、印加された外部電場によりこの外部電場と逆の方向に加速されて電荷移動チャネルの細線に移動し、この細線中に閉じ込められる。このようにして細線中に閉じ込められた電子の分布は光入力分布に対応しており、入力情報となる。
【0028】次に、外部電場の印加方向をその面内で回転させることにより、上述のようにして電荷移動チャネルの細線に入力された電子分布をこの細線に沿って移動させる。このとき、細線中に光による入力電子が存在する場合には、それがない場合に比べてより多くの電荷が細線の他端に設けられる電荷出力用の電極において観測されるため、この電極において時系列に沿った電荷を検出することにより、細線に沿ったどの場所において電子の入力があったのかを知ることができる。これによって、光入力分布を知ることができ、撮像機能を得ることができる。
【0029】また、正孔保持チャネルが設けられる場合には、受光部に生成された電子−正孔対のうちの正孔は、印加された外部電場の方向に加速されてこの正孔保持チャネルに移動し、この正孔保持チャネル中に閉じ込められる。この正孔保持チャネル中に閉じ込められた正孔の分布は、電子−正孔間に働くクーロン引力により、電荷移動チャネルの細線中に閉じ込められた電子の分布の移動に伴い、この正孔保持チャネルに沿って移動する。従って、この正孔保持チャネルの出力端に電極を設け、この電極において電荷の変化を検出することにより光入力分布を知ることもできる。ここで、電荷移動チャネルの細線に沿って移動する電子の電荷と、この電子の移動に伴って正孔保持チャネルに沿って移動する正孔の電荷とは、釣り合っており、全体として電気的に中性になっている。
【0030】なお、上述の外部電場による一次元量子箱アレーの局部的な絶縁体化は、モット(Mott)−シュタルク(Stark)効果を利用したものである。そこで、以下にこのモット−シュタルク効果の概略を説明しておく。
【0031】まず最初に、金属−絶縁体相転移の一種であるモット転移(N. F. Mott, Philos. Mag. 6, 287(1961) およびMetal-insulator transitions (Taylor & Francis Ltd, London, 1974)) をハバード(Hubbard)の描像(J. Hubbard, Proc. Roy.Soc.(London), A276, 238(1963), A277, 237(1963), A281, 401(1964)) で説明する。
【0032】量子箱アレーの互いに隣接する量子箱間の電子の動きやすさを表す物理量としてトランスファー・エネルギーがあり、これをTと書くことにする。このトランスファー・エネルギーTは、電子間相互作用を考えないときには、バンド幅と考えてよい。また、一つの量子箱に電子が二つ入ったときのクーロン・エネルギーをオンサイト・クーロン・エネルギーと呼び、これをUと書くことにする。
【0033】このときの、一電子当たりに縮約されたエネルギーバンド図は図25Aに示すようになる。この図25Aにおける高エネルギー側のサブバンドをアッパー・ハバード・バンド(UHB)、低エネルギー側のサブバンドをローワー・ハバード・バンド(LHB)と呼ぶ。一つの量子箱当たり電子が一つ入った状態に対応するハーフ・フィルド(half-filled)の場合、LHBとUHBとが互いに分離しているとき、つまりUが大きいか、またはTが小さいときは、LHBにのみ電子が詰まっていることになる(図25B)。このときは、電子の低エネルギー励起がギャップ(ハバード・ギャップ)を有し、系は絶縁体的になる。一方、Uが小さいか、またはTが大きくなると、LHBとUHBとは互いに重なり、LHBの一部に空き状態が生じてその分の電子はUHBに入ることになる(図25C)。この結果、系は半金属的に振る舞うことになる。そして、この傾向がより強くなれば、系は完全に金属的に振る舞うのである。
【0034】量子箱を近接させて配列した一次元量子箱アレーでは、量子箱を小さくすることにより、Uを大きくすることができる。また、隣接量子箱間の間隔を大きくしたり、量子箱間の障壁の高さを大きくすることにより、Tを小さくすることができる。従って、これらのTおよびUの調節により、モット転移を起こさせることができることがわかる。
【0035】さて、いま、一次元量子箱アレーに一つの量子箱当たり電子が一つ入っている場合、すなわちハーフ・フィルドの場合を考える。この場合、量子箱間のトランスファー・エネルギーTとオンサイト・クーロン・エネルギーUとの比η=T/Uを外部電場を印加して変化させることにより、モット転移を起こさせることができる。これがモット−シュタルク効果である。
【0036】
【実施例】以下、この発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【0037】この発明の一実施例による量子素子について説明する前に、この量子素子に用いられる電荷移動素子について説明する。
【0038】図1はこの電荷移動素子の第1の例を示す。
【0039】図1に示すように、この電荷移動素子においては、z軸方向に細長い円柱状の量子細線QWが延在しており、この量子細線QWの周囲を取り巻くように、互いに隣接して配列された複数の球状の量子ドットQDからなる螺旋状の一次元量子ドットアレーがこの量子細線QWに隣接して設けられている。この場合、この一次元量子ドットアレーを構成する量子ドットQDと量子細線QWとの間には障壁層が存在しているが、これらの量子ドットQDと量子細線QWとは、それらの間の障壁層を介して電子がトンネル効果により移動することができる程度に近接している。また、ここでは、これらの量子細線QWおよび一次元量子ドットアレーからなる系の電子密度は、一次元量子ドットアレーを構成する量子ドットQD一つ当たり電子が一つ入った状態、すなわちハーフ・フィルドの状態に対応する電子密度よりも小さく抑えられているものとする。
【0040】いま、この電荷移動素子に外部電場が印加されていない場合を考える。この状態においては、量子細線QWの量子状態の方が量子ドットQDの量子状態よりもエネルギーが低いため、図2に示すように、電子(e- )は量子細線QW中にのみ存在し、量子ドットQD中には存在しない。
【0041】次に、図3に示すように、この電荷移動素子にx−y面に平行な方向の外部電場Eを印加する場合を考える。この外部電場Eを印加すると、螺旋状の一次元量子ドットアレーのうちの外部電場Eの印加方向と反対側の高電位の部分に、これに隣接する部分の量子細線QWから電子が引き寄せられる。ここでは、このようにして電子が引き寄せられた部分の一次元量子ドットアレーおよびそれに対応する部分の量子細線QWをA領域と呼び、その他の部分の一次元量子ドットアレーおよびそれに対応する部分の量子細線QWをB領域と呼ぶことにする。
【0042】さて、螺旋状の一次元量子ドットアレーは、それを構成する量子ドットQD間の間隔が大きいか(量子ドットQD間の障壁の高さが0.5eV程度ならば、間隔5nm以上)、または量子ドットQD間の障壁高さが大きいときには、上述のように外部電場Eによりこの一次元量子ドットアレーのA領域に電子が引き寄せられると、モット絶縁体的に電子がこのA領域の各量子ドットQDに分布し、従ってこのA領域の各量子ドットQDに電子が局在した状態をとることになる。このとき、量子細線QWのA領域の部分は、一次元量子ドットアレーのA領域の量子ドットQD中の電子によるクーロンポテンシャルにより、量子細線QWのB領域の部分に比べて実効的に低電位になるため、量子細線QWから量子ドットQDに移り切らなかった電子が残されたとしても、これらの電子はこの量子細線QWのB領域の部分に溜まっていることになる。
【0043】次に、この状態で、この電荷移動素子に以下のようにして電子を入力する。
【0044】すなわち、電子を入力するためには、図4に示すように、外部電場Eを印加した状態で、量子細線QWと一次元量子ドットアレーとからなる量子構造に例えば光Lを照射することによって電子−正孔対を生成し、このうち正孔は除去し、電子だけを残す。この残された電子は、この量子構造のうちで最もエネルギーが低い、量子細線QWのB領域に溜まる。
【0045】さて、この場合、一次元量子ドットアレーは螺旋状であるので、図5に示すように、A領域およびB領域は交互に形成される。量子細線QWの各A領域には、一次元量子ドットアレーのA領域の量子ドットQD中の局在電子によるポテンシャル障壁が存在するので、量子細線QWのB領域に溜まった余分な電子(この場合は光Lの照射により生成された電子)は、隣のB領域に移ることはできない。このようにして電子の入力が行われる。
【0046】この電荷移動素子において電荷の移動は次のようにして行うことができる。
【0047】いま、外部電場Eの印加方向をx−y面内で回転させることを考える。図6に示すように、外部電場Eの印加方向をx−y面内で回転させると、これに伴い電子に対して低エネルギーとなる量子ドットQDが替わっていき、局在電子が存在する量子ドットQDがあるA領域はz軸方向に移動することになる。このとき、一次元量子ドットアレーを構成する隣接する量子ドットQD同士はトンネル効果により互いに結合しているので、電子はこの一次元量子ドットアレー中をトンネル効果によって速やかに移動することができる。これは、結合量子ドットアレーのモット絶縁体的量子状態を用いることの利点である。
【0048】この一次元量子ドットアレーに沿った電子の移動に伴い、量子細線QWのうちの光Lの照射により入力された電子が溜まっているB領域も、クーロン障壁が存在するA領域とともに、z軸方向に移動する。これによって、量子細線QWに沿ってz軸方向に電子、すなわち電荷が移動することになる。
【0049】この場合、この電荷の移動方向は、この第1の例においては、−z方向から+z方向を見たときの螺旋状の一次元量子ドットアレーの回転方向が時計方向であるので、外部電場Eの回転方向が時計方向である場合には+z方向であり、外部電場Eの回転方向が反時計方向である場合には−z方向である。一方、−z方向から+z方向を見たときの螺旋状の一次元量子ドットアレーの回転方向が反時計方向であるときには、外部電場Eの回転方向が時計方向である場合には−z方向であり、外部電場Eの回転方向が反時計方向である場合には+z方向である。また、外部電場Eの一回転により電荷が移動する距離は、螺旋状の一次元量子ドットアレーのピッチと等しい。
【0050】以上のように、第1の例による電荷移動素子によれば、z軸方向に延在する量子細線QWの周囲を取り巻くように螺旋状の一次元量子ドットアレーを設け、これらの量子細線QWおよび一次元量子ドットアレーからなる量子構造に対してx−y面内の外部電場Eを印加し、その印加方向をx−y面内で回転させることにより、金属配線を用いることなく、量子細線QWに沿って電荷を移動させることができる。
【0051】図7は電荷移動素子の第2の例を示す。
【0052】図7に示すように、この電荷移動素子は、螺旋状の一次元量子ドットアレーが量子細線QWの外周面に接した状態、従ってこの一次元量子ドットアレーを構成する量子ドットQDと量子細線QWとの間に障壁層が存在しない状態でこの量子細線QWを取り巻くようにして設けられていることが、上述の第1の例による電荷移動素子と異なる。
【0053】この第2の例による電荷移動素子によっても、第1の例による電荷移動素子と同様な利点を得ることができる。
【0054】図8は電荷移動素子の第3の例を示す。
【0055】図8に示すように、この電荷移動素子においては、z軸方向に細長い四角柱状の量子細線QWが延在しており、この量子細線QWの周囲を取り巻くように、互いに隣接する直方体状の量子ドットQDからなる一次元量子ドットアレーがこの量子細線QWに隣接して設けられている。
【0056】この場合、量子ドットQDの中心座標は、量子細線QWの延在方向をz軸とする円筒座標系(r、θ、z)においては、θn =a1 (0≦n<m1 )、θn =a2 (m1 ≦n<m2 )、…(ただし、a1 、a2 、…は定数)を満たす。より具体的には、連続する四つの量子ドットQD毎に、θn =0°、θn =90°、θn =180°、θn =270°、θn =360°(≡0°)のように、θn が90°ずつ段階的に変化している。
【0057】この第3の例による電荷移動素子によれば、一次元量子ドットアレーが螺旋状ではなく、四つの量子ドットQD毎にθn が90°ずつ変化するように量子ドットQDが配列されたものであるため、電荷移動素子の製造が容易であるという利点を有する。
【0058】次に、電荷移動素子の第4の例について説明する。この第4の例においては、電荷移動素子の具体的な構造例について説明する。この第4の例による電荷移動素子は、第3の例による電荷移動素子と同様な構成を有するが、量子ドットQDが円柱状であること、および、量子細線QWに対する一次元量子ドットアレーの回転の方向が逆であることが、第3の例による電荷移動素子と異なる。
【0059】図9〜図18はこの第4の例による電荷移動素子の製造方法を示す。
【0060】図9に示すように、まず、AlGaAs基板1上に例えば有機金属化学気相成長(MOCVD)法によりGaAs層2をエピタキシャル成長させる。このGaAs層2の厚さは例えば10nm程度とする。この後、GaAs層2上に例えば円形のレジストパターン3を電子ビームリソグラフィー法により形成する。
【0061】次に、このレジストパターン3をマスクとしてGaAs層2を例えば反応性イオンエッチング(RIE)法により基板表面に垂直な方向にエッチングする。このRIE法によるエッチングにおいては、反応ガスとして塩素系のガスを用いることにより、AlGaAs基板1をエッチングストップ層として用いてGaAs層2のエッチングを選択的に行うことができる。これによって、図10に示すように、GaAs層2が円柱状にパターニングされる。
【0062】次に、図11に示すように、例えばMOCVD法によりAlGaAs層4をエピタキシャル成長させることにより、上述のエッチングにより除去された部分をこのAlGaAs層4により埋める。
【0063】次に、レジストパターン3を除去した後、図12に示すように、例えばMOCVD法により全面にAlGaAs層5をエピタキシャル成長させる。このAlGaAs層5の厚さは例えば5nm程度とする。
【0064】次に、図13に示すように、例えばMOCVD法により全面にGaAs層6をエピタキシャル成長させる。このGaAs層6の厚さは例えば10nm程度とする。この後、このGaAs層6上に円形および細線状のレジストパターン7を電子ビームリソグラフィー法により形成する。
【0065】次に、このレジストパターン7をマスクとしてGaAs層6を例えばRIE法により基板表面に垂直方向にエッチングする。このRIE法によるエッチングにおいては、反応ガスとして塩素系のガスを用いることにより、AlGaAs層5をエッチングストップ層として用いてGaAs層6のエッチングを選択的に行うことができる。これによって、図14に示すように、GaAs層6が円柱状および細線状にパターニングされる。
【0066】次に、図15に示すように、例えばMOCVD法によりAlGaAs層8をエピタキシャル成長させることにより、上述のエッチングにより除去された部分をこのAlGaAs層8により埋める。
【0067】次に、レジストパターン7を除去した後、図16に示すように、例えばMOCVD法により全面にAlGaAs層9およびGaAs層10を順次エピタキシャル成長させる。このAlGaAs層9の厚さは例えば5nm程度、GaAs層10の厚さは例えば10nm程度とする。この後、GaAs層10上に例えば円形のレジストパターン11を電子ビームリソグラフィー法により形成する。
【0068】次に、このレジストパターン11をマスクとしてGaAs層10を例えばRIE法により基板表面に垂直方向にエッチングする。このRIE法によるエッチングにおいては、反応ガスとして塩素系のガスを用いることにより、AlGaAs層9をエッチングストップ層として用いてGaAs層10のエッチングを選択的に行うことができる。これによって、図17に示すように、GaAs層10が円柱状にパターニングされる。
【0069】次に、図18に示すように、例えばMOCVD法によりAlGaAs層12をエピタキシャル成長させることにより、上述のエッチングにより除去された部分をこのAlGaAs層12により埋めた後、レジストパターン11を除去する。この後、例えばMOCVD法により全面にAlGaAs層13をエピタキシャル成長させる。このAlGaAs層13の厚さは例えば50nm程度とする。
【0070】図18において、円柱状のGaAs層2がAlGaAs基板1、AlGaAs層4およびAlGaAs層5により囲まれた構造により一段目の量子ドットQDが構成され、円柱状のGaAs層6がAlGaAs層5、AlGaAs層8およびAlGaAs層9により囲まれた構造により二段目の量子ドットQDが構成され、円柱状のGaAs層10がAlGaAs層9、AlGaAs層12およびAlGaAs層13により囲まれた構造により三段目の量子ドットQDが構成されている。そして、これらの三段の量子ドットQDにより一次元量子ドットアレーが構成されている。また、細長い四角柱状のGaAs層6がAlGaAs層5、AlGaAs層8およびAlGaAs層9により囲まれた構造により量子細線QWが構成されている。
【0071】以上のようにして、量子ドットQDが円柱状であること、および、量子細線QWに対する一次元量子ドットアレーの回転の方向が逆であることが異なることを除いて、第3の例による電荷移動素子と同様な構造を有する第4の例による電荷移動素子が容易に製造される。
【0072】なお、この第4の例においては、電荷移動素子を構成する各層のエピタキシャル成長をMOCVD法により行っているが、このエピタキシャル成長は、例えば分子線エピタキシー(MBE)法により行ってもよい。
【0073】上述の第1の例〜第4の例において詳述したように、図19に示すように、一次元量子ドットアレー(図示せず)によってその周囲が取り巻かれた一つの量子細線QWについて、x−y面内の外部電場Eの回転によって、量子細線QWに沿う方向、すなわちz軸方向に電荷の並列移動が可能である。
【0074】そこで、次に、この一次元量子ドットアレーにより取り巻かれた量子細線QWを複数用いることにより、超並列的な電荷移動を行うことが可能な第5の例について説明する。
【0075】図20はこの第5の例による電荷移動素子を示す。
【0076】図20に示すように、この第5の例による電荷移動素子においては、図示省略した一次元量子ドットアレーによってその周囲が取り巻かれたz軸方向に平行な量子細線QWが複数互いに離れてかつ互いに平行に並列配置されている。
【0077】この第5の例においては、これらの量子細線QWに対してx−y面内の外部電場Eを印加し、その印加方向をx−y面内で回転させることにより、各量子細線QWに沿って電荷を超並列的に移動させることができる。この場合、これらの量子細線QWのうちの任意の量子細線QWの周囲を取り巻く一次元量子ドットアレーの回転の向きを他の量子細線QWの周囲を取り巻く一次元量子ドットアレーの回転の向きと逆にすることにより、x−y面内での外部電場Eの一方向の回転により、前者の量子細線QWに沿っての電荷の移動の方向と後者の量子細線QWに沿っての電荷の移動の方向とを互いに逆にすることができる。また、例えば、一次元量子ドットアレーが螺旋状である場合、そのピッチを量子細線QW間で異ならせることによって、x−y面内での外部電場Eの一回転当たりの電荷の移動距離を量子細線QW間で変えることもできる。
【0078】さて、この発明の一実施例においては、上述のような電荷移動素子を複数用いて量子素子を構成する。ここでは、第1の例による電荷移動素子を用いるものとする。図21にこの一実施例による量子素子の構成を示す。
【0079】図21に示すように、この一実施例による量子素子においては、z軸方向に平行な量子細線QWの周囲が図示省略した一次元量子ドットアレーによって取り巻かれた構造の電荷移動素子からなる電荷移動チャネル21が複数、互いに離れてかつ互いに平行に並列配置されている。この電荷移動チャネル21の数は、量子素子の用途などに応じて決められる。量子細線QWは、具体的には、例えばInAsからなる細線状の量子井戸部の周囲が例えばAlSbからなる障壁層によって取り囲まれた構造を有する。また、一次元量子ドットアレーを構成する量子ドットも、例えばInAsからなるドット状の量子井戸部の周囲が例えばAlSbからなる障壁層によって取り囲まれた構造を有する。
【0080】各電荷移動チャネル21の量子細線QWの一端には電極22iが設けられ、他端には電極22fが設けられている。いま、図21の+z方向に電荷(電子)を移動させるとすると、電極22iは電荷の入力に用いられ、電極22fは電荷の出力に用いられる。これらの電極22iおよび電極22fは、金属により形成される。
【0081】各電荷移動チャネル21に隣接して量子ドットからなる受光部23が配置されている。この場合、この受光部23は、この受光部23と電荷移動チャネル21の一次元量子ドットアレーとの間の距離が、この受光部23と電荷移動チャネル21の量子細線QWとの間の距離よりも小さくなる位置に設けられている(図22参照)。また、この受光部23は、x−y面内での外部電場Eの一回転当たりの電荷の移動距離と等しいピッチで量子細線QWに沿って複数配置されている。この受光部23を構成する量子ドットは、例えばInAsからなるドット状の量子井戸部の周囲が例えばAlSbからなる障壁層により取り囲まれた構造を有する。
【0082】さらに、各電荷移動チャネル21に対して、受光部23に関してこの電荷移動チャネル21の反対側の部分に、z軸方向に平行、従って電荷移動チャネル21に平行な正孔保持チャネル24が設けられている。この正孔保持チャネル24の一端にも電極25iが設けられ、他端には電極25fが設けられている。この正孔保持チャネル24は、具体的には例えばGaSbからなる細線状の量子井戸部の周囲が例えばAlSbからなる障壁層によって取り囲まれた構造を有する。
【0083】次に、上述のように構成されたこの一実施例による量子素子の動作について説明する。ここでは、x−y面内での外部電場Eの一回転当たりの電荷の移動距離は、各電荷移動チャネル21間で等しいものとする。また、この量子素子における各電荷移動チャネル21の動作に必要な電子は、ドーピングなどによってあらかじめ供給されているものとする。
【0084】図23Aに、図21のA−A線に沿う方向のエネルギーバンド図を示す。
【0085】まず、図21に示す量子素子において、−x方向に外部電場Eを印加する。このとき、図22に示すように、この外部電場Eによって、受光部に隣接する部分の電荷移動チャネルは電子不存在状態となっている。このときの図21のA−A線に沿う方向のエネルギーバンド図を図23Bに示す。この状況の下で、受光部23を含む領域に光を照射する。この光照射によって、この受光部23に電子−正孔対が生成される。この電子−正孔対のうちの正孔(h+ )は、外部電場Eにより−x方向に加速されて正孔保持チャネル24に移動し、そこに閉じ込められる。一方、この電子−正孔対のうちの電子(e- )は、+x方向に加速されて電荷移動チャネル21の量子細線QWに移動し、そこに閉じ込められる。このようにして量子細線QW中に閉じ込められた電子が入力電子となる。ここで、以上のようにして量子細線QW中に閉じ込められた入力電子の電荷と正孔保持チャネル21中に閉じ込められた正孔の電荷とは、釣り合っており、全体として電気的に中性になっている。
【0086】以上のようにして入力電子分布を形成した後、上述の電荷移動素子の原理に従って、電荷移動チャネル21に入力された電子を+z方向に移動させる。すなわち、外部電場Eの印加方向をx−y面内で回転させることにより、各電荷移動チャネル21にそれぞれ入力された電子を、その量子細線QWに沿って+z方向に移動させる。このとき、電極22fにおいて電荷の出力を観測すると、光による入力電子がある場合には、それがない場合に比べてより多くの電荷の出力が観測される。従って、この電極22fにおいて時系列に沿った出力電荷を観測することにより、電荷移動チャネル21に沿ったどの場所で電子の入力があったのかを知ることができる。これによって、量子素子に対する光入力分布を知ることができ、撮像機能を得ることができる。これは、従来のCCDと同様であるが、受光部23が量子ドットからなり、極めて微小である点が著しく異なる。
【0087】また、この場合、上述のようにして電荷移動素子の原理に従って電荷移動チャネル21に沿って入力電子分布が移動するのに伴い、この入力電子と電荷的に釣り合っている正孔保持チャネル24中の正孔分布も、それらの電子−正孔間に働くクーロン引力により、電荷移動チャネル21中の電子分布と一緒になって移動することになる。従って、この正孔保持チャネル24の電極25fにおいて電荷の出力を観測し、電荷の変化を検出することにより、光入力分布を知ることもできる。
【0088】以上のように、この一実施例による量子素子によれば、電荷移動チャネル21に隣接して量子ドットからなる受光部23が設けられていることにより、−x方向に外部電場Eを印加した状態で受光部23に光を照射したとき、その光入力分布に対応した電子分布を各電荷移動チャネル21に入力することができる。そして、外部電場Eをその印加面内で回転させることにより、このようにして各電荷移動チャネル21に入力された電子分布を各電荷移動チャネル21に沿って+z方向に移動させ、その出力端に設けられた電極22fから時系列に沿って出力される電荷を観測することにより、入力光分布を知ることができる。すなわち、この一実施例による量子素子は、撮像素子として用いることができる。
【0089】さらに、この場合、受光部23に関して電荷移動チャネル21と反対側の部分に正孔保持チャネル24が設けられているので、受光部23からこの正孔保持チャネル24に移動してそこに閉じ込められた正孔は、電荷移動チャネル21に沿った入力電子分布の移動に伴い、この正孔保持チャネル21に沿って+z方向に移動する。このため、この正孔保持チャネル21の出力端に設けられた電極25fから時系列に沿って出力される電荷を観測することにより光入力分布を知ることもできる。
【0090】以上、この発明の一実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0091】例えば、上述の一実施例においては、量子素子を構成する電荷移動チャネルとして第1の例による電荷移動素子からなるものを用いているが、電荷移動素子としては、例えば第2の例または第3の例による電荷移動素子を用いてもよい。
【0092】
【発明の効果】以上説明したように、この発明による量子素子によれば、その延在方向に電荷が移動することができる細線と、その細線の一端から他端に向かって前進するようにその細線の周囲を取り巻いて設けられた一次元量子箱アレーとを有し、その細線の延在方向と交差する面内の外部電場を印加し、その印加方向をその面内で回転させるようにした電荷移動チャネルと、この電荷移動チャネルに隣接して設けられた量子箱からなる受光部とを有することにより、金属配線を用いることなく、光入力分布を時系列の電荷分布として読み出すことができ、撮像素子として用いることができる。




 

 


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