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発明の名称 多孔質吸音材の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平9−20574
公開日 平成9年(1997)1月21日
出願番号 特願平7−188598
出願日 平成7年(1995)6月30日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
発明者 今井 修
要約 目的
軽量で、かつ強度および吸音特性の優れた多孔質吸音材の製造方法を提供する。

構成
セメント粒子、起泡剤および水よりなる泥漿を略湿潤養生温度まで加温した状態で攪拌し、気泡を生成した後、湿潤養生し、更に、オートクレーブ養生することにより、連通気孔を有し、トバモライトを含有する多孔質吸音材の製造方法。
特許請求の範囲
【請求項1】 連通気孔を有し、トバモライトを含有する軽量固化物の製造方法であって、セメント粒子、起泡剤および水よりなる泥漿を略湿潤養生温度まで加温した状態で攪拌し、湿潤養生し、オートクレーブ養生することを特徴とする多孔質吸音材の製造方法。
【請求項2】 前記湿潤養生温度が40〜80℃である特許請求の範囲第1項に記載の多孔質吸音材の製造方法。
【請求項3】 シリカ質骨材の含有率が前記セメント粒子に対し重量比で20〜80%混合される特許請求の範囲第1項または第2項に記載の多孔質吸音材の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トバモライトを含有する多孔質吸音材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、騒音に対する要望より各種吸音板が開発されており、そのニーズも年々増加している。たとえば、セラミックス製吸音材がある。これは、高強度という点で優れているが、気孔率が低く、吸音特性が十分でなく、また、比重が大きいことも問題となっている。また、セメントコンクリート製吸音材は、一般にオートクレーブ養生した軽量気泡コンクリートであり、吸音特性はセラミックス製吸音材より良好なものの、十分満足できるものではなかった。また、強度の点でも満足できるものではなかった。これは、以下の理由に因るものと考えられる。セメントコンクリート製吸音材は、通常室温で湿潤養生されているため固化に時間がかかり、粒子の沈降が発生しやすく、そのため固化物の気孔分布が不均一になりやすかった。このため、湿潤養生を高温で行う方法も考えられるが、高温で養生した場合には気泡の潰れが発生しやすくなり、固化物の気孔分布が不均一となる問題が生じた。したがって、いずれの場合でも、強度および吸音率のばらつきが大きく満足できる強度、吸音率は得られなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような従来の問題点を解決して、軽量で、強度および吸音特性の優れた吸音材の製造方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するべく本発明にかかる多孔質吸音材の製造方法は、連通気孔を有し、トバモライトを含有する軽量固化物であって、セメント粒子、起泡剤および水よりなる泥漿を略湿潤養生温度まで加温した状態で攪拌し、湿潤養生し、次いで、オートクレーブ養生する工程とを含むことを特徴とするものである。そして、前記湿潤養生温度が40〜80℃であること、シリカ質骨材の含有率が前記セメント粒子に対し重量比で20〜80%混合されることを好ましい実施態様とするものである。
【0005】前記固化物の研磨断面に認められる気孔には、直径0.1mm以上の球状の気孔(以下、第1の気孔という。)と、直径0.1mm未満の気孔(BET法で測定される微細気孔も含む。)(以下、第2の気孔という。)とが有る。連通気孔とは、直径0.1mm以上の気孔同士が、連通状態になっており、その括れ部の直径が10μm以上であり、少なくとも一箇所は開気孔となっている気孔を意味する。連通気孔の括れ部とは、気孔同士が連通する部分の空隙をいう(連通孔ともいう。)。また、連通気孔の判定、連通気孔の平均気孔直径及び連通気孔の括れ部の平均直径の測定は固化物の研磨断面にて行う。なお、連通気孔の括れ部の直径は走査型電子顕微鏡写真(倍率100〜2000)にて測定する。トバモライトとは、(5CaO・6SiO2 ・5H2 O)で表されるカルシウムシリケート水和物をいう。セメント粒子とは、ポルトランドセメント、混合セメントおよびアルミナセメントをいう。ここで、略湿潤養生温度まで加温とは、湿潤養生温度±10℃以内のことをいう。
【0006】
【作用】
【0007】本発明に係る製造方法によれば、セメント粒子、起泡剤および水よりなる泥漿を略湿潤養生温度まで加温した状態で攪拌し、湿潤養生することにより、気泡は潰れることなく固化し連通気孔を形成する。この理由については定かではないが泥漿の加温により湿潤養生時の急激な温度変化が緩和され気泡の内圧膨張等が抑制されたことによると考えられる。また、湿潤養生は、室温より高い温度で行い、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜70℃の範囲である。この高温養生により固化が早まるため泥漿の沈降が防止されるとともに、気泡の合体による気泡径の増大も抑制される。40℃未満の温度では泥漿の沈降が発生しやすくなり、80℃を超えると気泡の潰れが発生し、連通気孔が生成しにくくなる。湿潤養生時間は吸音材の強度向上の点で2時間以上が好ましい。このように略湿潤養生温度まで加温した泥漿を、高温で湿潤養生することにより、各部分の気孔分布が均一となり、強度及び吸音特性の良好な多孔質吸音材の素材が得られる。セメント粒子は、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメントの粒子が強度上好ましい。コスト、作業性の面で普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントの粒子がより好ましい。なお、反応促進を図るため、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、石膏等を加えてもよい。
【0008】ここで起泡剤としては、洗浄剤(硫酸ラウリルソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、ノニルフェノキシジエトキシエチル硫酸塩、アルキルアリルエーテル塩、高級アルコール硫酸塩等のアニオン系界面活性剤、または、アルキルアリルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナフタリン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤)、植物性または動物性膠質、サポニン、変性した膠質ブチルスルホン酸ナフタリン、イソプロピルスルホン酸ナトリウム、塩化カルシウム、その他界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル等)、ゼラチン・カゼインなどのタンパク質の誘導体等が挙げられる。この中で40℃以上の温度でも起泡性能が特に安定しているアルキルアリルエーテル塩、高級アルコール硫酸塩がより好ましい。なお、起泡剤の添加量は強度特性および吸音特性の上から固形分に対して3重量%以下であることが好ましい。
【0009】シリカ質骨材はセメント粒子に対して重量比で20〜80%の範囲で混合することが強度上好ましく、40〜60%の範囲で混合することがより好ましい。この範囲内ではシリカ質骨材はオートクレーブ養生後も残存するためシリカ質骨材は骨材として機能し、強度が向上するものと考えられる。なお、シリカ質骨材としては、ケイ砂、ケイ石粉末、スラグ粉末、火山灰、けい藻土等が挙げられる。
【0010】ここで、加温した状態での攪拌については加温装置付き攪拌機によってセメント粒子、起泡剤、水を好ましくは300〜1500rpmの回転で、好ましくは5〜10分間の高速攪拌をする。この際、気泡安定剤を添加すると40℃以上の湿潤養生でも気泡の潰れおよび気泡の合体が起こりにくくなる。したがって、気泡安定剤を好ましくは固形分に対して2重量%以下添加する。気泡安定剤としては、PVA、メチルセルロース等が挙げられる。ここで、攪拌の際、減圧脱気を行うことも可能である。なお、吸音特性および強度向上の面から、水は、好ましくは固形分に対して30〜50重量%とし、従来の吸音材より低水分とする。こうして得られた泥漿を型に流し込み、湿潤状態で40〜80℃の温度で養生する。なお、攪拌時に起泡剤とともに、金属アルミニウム粉末等の発泡剤を添加することも連通気孔の形成に際して可能である。これは、発泡剤添加により、湿潤養生でガス(金属アルミニウム粉末の場合、水素)が発生し、このため固化物の気孔径及び気孔率が増大し、より軽量化が達成される。
【0011】連通気孔の平均気孔直径が研磨断面で100〜2000μmであることが好ましい。この範囲では幅広い周波数領域の吸音率が良好となる。また、連通気孔の括れ部の平均直径が30〜500μmであることが好ましい。この範囲であると吸音率が良好となる。ここで、連通気孔の括れ部とは、気孔同士が連通する部分の空隙をいう(連通孔ともいう。)。この連通気孔及び連通気孔の括れ部の直径は、アルキルアリルエーテル塩、高級アルコール硫酸塩等の起泡剤を用い、高速攪拌の回転数、攪拌時間、起泡剤量、安定化剤の種類およびその量等で制御できる。
【0012】ここで、多孔質吸音剤の気孔状態および構造の変化は、次のようになっていると考えられる。セメント粒子、起泡剤および水よりなる泥漿を略湿潤養生温度まで加温した状態で攪拌し、気泡を含んだ状態にした後、型枠(好ましくは加温する。)に流し込むと、流し込み直後では起泡剤による巻き込み気泡は気泡同士が合体せず、また、消泡せずに気泡およびセメント粒子が泥漿中に均一に分散されている。この泥漿を湿潤状態で40〜80℃の温度で養生すると水とセメント粒子とが反応して、C−S−Hゲルを生成する。この養生により、巻き込み気泡は連通気孔となる。また、シリカ質骨材を添加した場合には水、セメント粒子、シリカ質骨材とが反応してC−S−Hゲルを生成し、過剰シリカ質骨材はシリカ質骨材として残存する。したがって、湿潤養生後では連通状態になった巻き込み気泡が分散した多孔質体となり、水を含んだ柔らかい構造体となる。
【0013】その後、オートクレーブ養生することにより、C−S−Hゲルが結晶質のトバモライトに変化し、高強度化される。オートクレーブ養生は強度向上の点で、120〜250℃、3時間以上の条件が好ましく、150〜200℃、5時間以上の条件がより好ましい。なお、水中に浸漬した状態でのオートクレーブ養生は好ましくない。なお、X線回折および熱重量分析(TG)より、この多孔質吸音材のトバモライトとC−S−Hゲルの量比を測定するとセメント粒子としてポルトランドセメントを用いたものではトバモライトは重量比で6割以上であることが確認された。なお、本発明の吸音材ではゾノトライトは認められない。
【0014】このようにして得られるトバモライトを含有する多孔質吸音材は、多数の連通気孔を内在し、たとえば絶乾比重が1.0以下の軽量なものとなり、強度特性、吸音特性が良好となる。また、多孔質吸音材の厚さは、好ましくは30〜100mmである。また、気孔分布によっては吸水率の小さいものも可能となるため、水に対する寸法安定性の良好なものも得られ、湿潤状態での使用が可能である。また、本発明の固化物は耐火性、耐久性も良好である。
【0015】
【実施例】次に、本発明をシリカ質骨材として、ケイ砂を用いた実施例に基づき説明する。セメント粒子、シリカ質骨材、金属アルミニウム粉末、起泡剤及び水とを攪拌機で攪拌する際には、バインダ、減水剤、保水剤、防水剤、流動化剤、収縮低減剤等の混和剤を添加してもよく、また固化物の強度の向上、比重の調整、コストの低減などのために、パーライト、ALCの屑、ガラス繊維(好ましくは耐アルカリ性ガラス繊維)、合成繊維(ビニロン、ナイロン)、パルプ等を添加することもできる。ここで、減水剤としては、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、アルキルアリルスルホン酸、アルキルアリルスルホネート、ジエチルナフタリンのホルマリン縮合物等が挙げられる。なお、起泡剤はプレフォーム法(起泡剤によってあらかじめ微細気泡を作っておき、これを加温した泥漿に混入する方法)で用いてもよい。このように調製された原料を使用して流し込み成形方法等により所定の形状に成形する。また、型枠に鉄筋等の補強材を入れた状態で成形することも可能である。
【0016】(実施例1〜7)セメント粒子として、各種ポルトランドセメント、アルミナセメントを使用し、これらのセメントとケイ砂を重量比で100:10〜100:80とし、固形分に対して30〜50重量%の水と起泡剤を添加して攪拌機で攪拌し、気泡を含んだ各種の泥漿を調製した。ここで、攪拌機は加温装置付きミキサを用い300〜1500rpmの回転数で5〜10分間高速攪拌し、泥漿を湿潤養生温度±10℃以内に加温した各種の泥漿を調製した。ここで、起泡剤はアルキルアリルエーテル塩(商品名:第一工業製薬製ハイテノール)、高級アルコール硫酸塩(商品名:花王製エマール)を用い、それぞれ固形分に対して3重量%以下を添加した。この異なる種類の加温した泥漿を型枠(底面90×150mm)に流し込んで、40〜80℃、2〜48時間湿潤状態(相対湿度80%以上)で養生を行い、直方体の固化物素地(90×50×150mm)を得た。なお、起泡剤とともにPVAを固形分に対して2重量%以下を添加した。
【0017】このようにして得た固化物素地を120〜250℃、3〜48時間オ─トクレ─ブ養生を行った。こうして得られた固化物について、固化物の圧縮強度及び吸音率を測定して,これらの結果を表1に示す。
【0018】また、得られた固化物について気孔の状態を観察するため、研磨した試料を反射型顕微鏡で観察した。この結果を図1に示す。連通気孔を形成しており、連通気孔の直径は平均100〜2000μmであり、連通気孔の括れ部の大きさは平均30〜500μmである。なお、研磨面の観察では、直径0.1mm以上の気孔のうち60%以上、また直径1mm以上の気孔では80%以上が連通気孔である。また、得られた固化物のX線回折分析を行った。そのチャートを図2に示す。トバモライトの他、ケイ砂のα−石英のピークが認められる。
【0019】なお、圧縮強度の測定については,JIS A 1108 に従った。即ち、試料の上下面に直径50mmの金属板をのせ、この板に圧力をかける方法で、オートグラフを用いこれに圧力をかけ、5個の試料の平均を圧縮強度とし、その標準偏差をばらつきとした。吸音率はJIS A 1405 に従い、厚さ5cm、空気層なし、周波数500Hzで垂直入射吸音率を測定した。5個の試料の平均を吸音率とし、その標準偏差をばらつきとした。以上シリカ質骨材として、ケイ砂を用いた実施例について説明したが、本発明は、これに限るものではなく、高炉スラグ粉末、けい酸白土、火山灰、けい藻土等を用いても構わない。
【0020】(比較例1〜5)比較例1は泥漿の加温を行わずに70℃で湿潤養生を行った。比較例2は室温(25℃)で泥漿を作製し、湿潤状態下の室温(25℃)で養生した。比較例3は泥漿の加温し、70℃で湿潤養生を行った。オートクレーブ養生は行わなかった。比較例1〜3ともに上記以外は実施例と同様に行った。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【発明の効果】以上説明からも明らかなように、本発明による多孔質吸音材は、従来のセメントコンクリート製吸音材に比較し、強度および吸音率のばらつきを小さくでき、強度および吸音特性が良好である。従って、従来のセメントコンクリート製吸音材と同一強度、同一吸音特性を得るためには、本発明による多孔質吸音材の厚みは少なくて済みさらに軽量化を図ることができる。


 

 


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