| 発明の名称 |
熱間鍛造用非調質鋼 |
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| 発行国 |
日本国特許庁(JP) |
| 公報種別 |
公開特許公報(A) |
| 公開番号 |
特開平9−310152 |
| 公開日 |
平成9年(1997)12月2日 |
| 出願番号 |
特願平8−126152 |
| 出願日 |
平成8年(1996)5月21日 |
| 代理人 |
【弁理士】 【氏名又は名称】植木 久一
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| 発明者 |
岩崎 克浩 / 安部 聡 / 松島 義武 |
| 要約 |
目的
構成
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特許請求の範囲
【請求項1】C :0.30〜0.80%(以下、特記しない限り質量%を意味する) Si:0.1〜2.5%Mn:0.30〜2.0%Al:0.001〜0.06%N :0.005〜0.10%P :0.30%以下(0%を含む) S :0.12%以下(0%を含む) Cr:1.0%以下(0%を含む) Cu:0.3%以下(0%を含む) Ni:0.3%以下(0%を含む) の要件を満足すると共に、残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ下記式(1),(2)の関係を満たし、引張強さが600〜900N/mm2 であることを特徴とする熱間鍛造用非調質鋼。 A=[Si]+3.4・[Mn]+19.5・[P]-13.4・[S]+2.7・[Cr]≧3.5 ……(1) B=[C]+1.1・[Mn]-1.9・[S]+1.5・[Cu]+1.8・[Ni]+0.6・[Cr] ≦2.6 ……(2) (式中の[元素]は、夫々の元素の含有率:質量%を表わす) 【請求項2】 更に他の元素として、Pb:0.3%以下(0%を含まない) Zr:0.2%以下(0%を含まない) Ca:0.010%以下(0%を含まない) Te:0.10%以下(0%を含まない) Bi:0.1%以下(0%を含まない) の1種以上を含有するものである請求項1に記載の非調質鋼。 【請求項3】 更に他の元素としてTi:0.05%以下(0%を含まない)を含有し、且つ任意の横断面におけるTiの炭化物、窒化物、硫化物もしくはそれらの複合化合物からなる平均粒径10nm以上の析出物が、1μm2 当たり3個以上存在する請求項1または2に記載の非調質鋼。
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発明の詳細な説明
【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車や建設機械等のエンジン部品や足回り部品等に用いられる機械構造用非調質鋼に関するものであり、特に熱間鍛造後に実施される焼入れ・焼戻しの調質処理を省略し非調質のままでも高い強度を得ることのできる安価な熱間鍛造用非調質鋼に関するものである。 【0002】 【従来の技術】自動車や建設機械等に用いられる機械構造用部品は、通常機械構造用炭素鋼や機械構造用合金鋼を素材とし、必要な強度と靭性を確保するため熱間鍛造後に焼入れ・焼戻し処理を行なうことによって製造されてきた。しかし近年、上記の様な調質処理に要するエネルギーの節約と仕掛り品のコスト低減を目的として、例えばJIS G 4051に規定される機械構造用炭素鋼やJIS G 4106に規定される機械構造用マンガン鋼などに、VやNb等の析出硬化型元素を添加した非調質鋼が開発され、自動車のエンジン部品や足回り部品あるいは建設機械部品等に適用されている。 【0003】これらの非調質鋼は、熱間鍛造の後冷却して組織をフェライト・パーライト混合組織とし、フェライト部にVやNb等の炭化物や窒化物を析出させることによって目標強度を得るものであり、この様な非調質鋼を使用すると、熱間鍛造後の焼入れ・焼戻し処理を省略することができ、更には焼入れ時に発生する熱処理歪みが減少するためその後の矯正加工が簡略化されるといった利点に加えて、焼割れが発生しにくくなって焼割れによる不良品の発生率も減少し、部品製造コストを大幅に低減することが可能となる。こうしたことから最近では、引張強度が90kgf/mm2 以上といった高強度が要求される機械構造用部品に対しても適用可能な非調質鋼が開発されている(例えば特開昭63−199848号公報等)。 【0004】ところで上記の様な非調質鋼は、いずれもV等の炭・窒化物形成元素を添加し、それら炭・窒化物の析出硬化によって引張強さや耐力等の強度特性を高めており、そのため特に高強度タイプの非調質鋼を得るには、V等の元素を多量添加しなければならない。しかし、これらの元素は高価であるため素鋼材コストが高くなり、非調質化によるコスト低減の利点が有効に生かせなくなる。 【0005】また、引張強さが90kgf/mm2 レベル以上の鋼材として、2mmUノッチのシャルピー衝撃値で6kgf・m/cm2 以上といった高強度・高靭性タイプの非調質鋼が提案されているが(例えば特開昭61−238941号公報)、この高強度・高靭性非調質鋼は、高靭性を得るためにC量を極力低減している。そのため、熱間鍛造の後放冷したままの状態で高強度を得るため、C量の低減に見合った多量のMnやCr等の強化元素を添加しなければならず、やはり素鋼材コストの上昇が避けられない。またこれら強化元素量の低減を狙って、熱間鍛造の後に水焼入れ等の急冷を行なう方法も試みられているが、この方法では焼入れによる熱処理歪みや焼割れを起こすという大きな問題が生じてくる。また上記の様な非調質鋼は、組織の粗いオーステナイトから変態したフェライト・パーライト組織を主体とするものであるから、靭性不足の問題も指摘される。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、V等の高価な炭・窒化物生成による析出硬化型元素を添加することなく、非調質のままでV等添加鋼並みの高耐力と疲労特性を有し、更には被削性も良好な熱間鍛造用非調質鋼を提供しようとするものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決することのできた本発明に係る熱間鍛造用非調質鋼は、C :0.30〜0.80%Si:0.1〜2.5%Mn:0.30〜2.0%Al:0.001〜0.06%N :0.005〜0.10%P :0.30%以下(0%を含む) S :0.12%以下(0%を含む) Cr:1.0%以下(0%を含む) Cu:0.3%以下(0%を含む) Ni:0.3%以下(0%を含む) の要件を満足すると共に、残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ下記式(1),(2)の関係を満たし、引張強さが600〜900N/mm2 であるところにその特徴を有している。 A=[Si]+3.4・[Mn]+19.5・[P]-13.4・[S]+2.7・[Cr]≧3.5 ……(1) B=[C]+1.1・[Mn]-1.9・[S]+1.5・[Cu]+1.8・[Ni]+0.6・[Cr] ≦2.6 ……(2) (式中の[元素]は、夫々の元素の含有率:質量%を表わす) 上記非調質鋼においては、更に他の元素としてPb:0.3%以下(0%を含まない) Zr:0.2%以下(0%を含まない) Ca:0.010%以下(0%を含まない) Te:0.10%以下(0%を含まない) Bi:0.1%以下(0%を含まない) の1種以上を含有させることによって、被削性を一段と高めることができ、更には、Ti:0.05%以下(0%を含まない)を含有せしめ、且つ任意の断面におけるTiの炭化物、窒化物、硫化物もしくはそれらの複合化合物からなる平均粒径10nm以上の析出物が、1μm2 当たり3個以上存在するものとすれば、上記の特性に加えて、靭性も良好な非調質鋼となる。 【0008】 【発明の実施の形態】本発明者らは、焼入れ・焼戻し処理が省略可能で、VやNb等の高価な析出硬化型元素を含有させた従来の非調質鋼並みの強度特性と疲労特性を有する安価な熱間鍛造用非調質鋼を開発すべく、熱間鍛造・冷却後の組織がフェライト・パーライトとなる鍛造品の耐力や疲労特性などの強度特性、更には被削性に及ぼす各種合金元素の影響について鋭意研究を進めてきた。 【0009】その結果、前記式(1)の要件を満たす様に鋼材中に含まれる各元素の含有量を適正に調整してやれば、部品設計強度として重要な特性である耐力を効果的に高めると共に、被削性を低下させる要因となる引張強さ(硬さ)の過度の上昇を抑えることができ、即ち引張強さに対する耐力の比である降伏比を上げると共に被削性を高めることができることをつきとめた。 【0010】即ちフェライト・パーライト鋼の疲労強度は、組織的に弱い初析フェライト部の強度に依存しており、微小歪みを加えた時の変形抵抗を示す耐力も初析フェライト部のすべり変形のし易さと関係するので、非調質鋼の疲労強度は引張強さ(硬さ)よりも耐力との相関性が高く、従って耐力を上げることによって疲労強度の向上を果たすことができるのである。そして上記式(1)の要件を満たす様に成分調整すれば、被削性の低下が可及的に抑えられると共に耐力が高められ、高レベルの疲労特性を備えた非調質鋼を得ることができるのである。 【0011】ちなみに前記式(1)の値が3.5未満である鋼材では、後記実施例でも明らかにする様に満足な降伏比が得られず、疲労特性向上の目的が果たせなくなる。該式(1)で定めるより好ましい値は3.8以上である。 【0012】また前記式(2)で規定する要件は、熱間鍛造後の冷却時に生成する過冷却組織であるベイナイトの生成を防止し、耐力および疲労強度の低下を抑えるための要件として定めたものであり、この値が2.6を超えると、後記実施例でも明らかにする如く耐力および疲労強度が低下するばかりでなく被削性も低下してくる。 【0013】以下、本発明において鋼材の成分組成を規定した理由を主体にして詳細に説明していく。まず鋼材の化学成分を定めた理由を明らかにする。 【0014】C:0.30〜0.80%Cは、熱間鍛造・冷却後における鍛造品の金属組織中のパーライト量を増大させて必要な強度を確保するのに欠くことのできない元素であり、そのためには少なくとも0.30%以上含有させなければならない。しかしながらC量が多くなり過ぎると、靭性が低下すると共に被削性も大幅に低下してくるので、0.80%以下に抑えなければならない。強度と靭性および被削性を考慮してより好ましいC量は0.35〜0.60%の範囲である。 【0015】Si:0.1〜2.5%Siは、鋼材溶製時の脱酸に有効に作用する他、鋼材のフェライト地に固溶して熱間鍛造・冷却後の鍛造品を強化するのに有効な元素であり、特に該鍛造品の耐力や疲労強度の向上に有効に作用する。こうした作用を有効に発揮させるには少なくとも0.1%以上含有させなければならないが、多過ぎると被削性に悪影響が現れてくるので、2.5%を上限とする。Siのより好ましい範囲は0.15〜1.5%である。 【0016】Mn:0.3〜2.0%Mnは、鋼材溶製時の脱酸・脱硫元素として有効な元素であり、また鍛造品のパーライト焼入れ性を高めてパーライト量を増大させると共にパーライト中のラメラー間隔を細かくして強度増大に寄与する。こうした効果を有効に発揮させるには、少なくとも0.3%以上含有させなければならないが、多過ぎると、熱間鍛造・冷却後の金属組織中にベイナイトが生成して被削性に悪影響を及ぼす様になるので、2.0%以下に抑えなければならない。Mnのより好ましい含有率は0.5〜1.6%の範囲である。 【0017】Al:0.001〜0.06%Alは、鋼材溶製時の脱酸元素として有効に作用するほか、窒化物の生成によりオーステナイト結晶粒を微細化して靭性向上に寄与するものであり、それらの効果を有効に発揮させるには0.001%以上含有させなければならない。しかし、多過ぎるとオーステナイト結晶粒がかえって粗大化して靭性に悪影響を及ぼす様になるので、0.06%以下に抑えなければならない。こうした利害得失を考慮してAlのより好ましい範囲は0.003〜0.05%である。 【0018】N:0.005〜0.10%Nは、鋼材のフェライト地に固溶して熱間鍛造・冷却後の鍛造品を強化する作用を有しており、それにより硬さや引張強さを高める他、AlやTi等の窒化物形成元素と結合してオーステナイト結晶粒を微細化し、靭性や疲労強度を高めるうえでも有効に作用する。こうした効果は0.005%以上で有効に発揮されるが、多過ぎるとかえって靭性に悪影響を及ぼし、また熱間加工性を阻害して鋳造や熱間加工時に割れを起こし易くなり、更には過度の硬質化によって被削性も悪化させるので0.10%以下に抑えなければならない。上記の利害得失を考慮してより好ましいN含有量は0.007〜0.07%の範囲である。 【0019】P:0.30%以下(0%を含む)Pは、鋼材のフェライト地に固溶して熱間鍛造・冷却後の鍛造品を強化し、耐力や疲労強度を高めるのに有効に作用するが、多過ぎると靭性を著しく悪化させるばかりでなく、熱間加工性にも悪影響を及ぼして鋳造時あるいは熱間加工時に割れを起こし易くなるので、0.30%以下に抑えなければならない。 【0020】本発明で使用する鋼材の上記以外の成分は、Feと不可避不純物であるが、更に他の元素として下記の様な元素を適量含有させることによって、非調質鋼としての特性を更に改質することが可能である。 【0021】S:0.12%以下(0%を含む)Sは、MnSを形成して被削性を高める作用を有する他、MnSを核とする粒内フェライトを生成して組織を微細化し靭性の向上にも寄与する。こうした効果を積極的に活用しようとする場合は0.035%程度以上含有させることが望ましいが、多くなりすぎると熱間での変形能が著しく低下してくるので、0.12%以下に抑えなければならない。 【0022】Cr:1.0%以下(0%を含む)Crは、Mnと同様にパーライト焼入性を増加させて強度向上に寄与する元素であり、こうした効果を積極的に活かしたいときは0.2%程度以上含有させることが望ましい。しかしながら多過ぎると、硬くなり過ぎると共にベイナイトが生成し易くなって被削性に悪影響を及ぼしてくるので、1.0%以下に抑えなければならない。 【0023】Cu:0.3%以下(0%を含む)Cuは、鋼材のフェライト地に固溶して熱間鍛造・冷却後の鍛造品を強化するのに有効に作用するが、多過ぎると靭性を劣化させる他、熱間加工性にも悪影響を及ぼして鋳造時や熱間加工時に割れを起こし易くなるので、0.3%以下に抑えなければならない。 【0024】Ni:0.3%以下(0%を含む)Niは、ベイナイト焼入性を高める作用を有しているが、多過ぎると強度特性を不安定にするばかりでなく被削性にも悪影響を及ぼすので、0.3%以下に抑えなければならない。 【0025】Pb:0.3%以下,Zr:0.2%以下,Ca:0.010%,Te:0.10%以下,Bi:0.1%以下から選ばれる1種以上これらの元素は、前記Sと同様に被削性向上に作用する元素であり、またZr,Ca,Te,Biは、MnSを粒状化して鍛造品の異方性を改善する作用も発揮する。しかしながら、上記各元素の含有量が多過ぎると、靭性や耐食性に悪影響を及ぼす様になるので、それぞれ上限値以下に抑えなければならない。 【0026】Ti:0.003〜0.05%Tiは、炭化物、窒化物、硫化物もしくはそれらの複合化合物からなる析出物を生成してオーステナイト結晶粒を微細化し、靭性、耐力、疲労特性(疲れ限度比)の向上に寄与する有効な元素であり、その効果は0.003%以上含有させることによって有効に発揮される。しかしながらTi含有量が多くなり過ぎると、硬質な析出物の数の過度の増加によって被削性が劣化するので0.05%以下に抑えなければならない。こうした利害得失を考慮してTiのより好ましい含有率は0.005〜0.03%の範囲である。 【0027】尚上記の様にTiを含有させると、Tiの炭化物、窒化物、硫化物もしくはそれらの複合化合物よりなる析出物が生成し、オーステナイト結晶粒の微細化によって各種物性が高められるが、こうした改質効果は、該析出物のサイズと量によっても変わり、本発明者等が確認したところによると、該析出物によってもたらされる上記の作用効果は、平均粒径が10nm以上の析出物が1μm2 当たり3個以上存在するときに有効に発揮される。平均粒径が10nm未満である極端に微細な析出物でもその効果は有効に発揮されるが、工業的に評価することが困難であるので、10nm以上の平均粒径の個数で評価した。但し、該析出物の平均粒径が余りに大きくなり過ぎると被削性に悪影響が現われてくるので、析出物の平均粒径は10μm程度以下に抑えることが望ましい。また該析出物の数については、硬質介在物の量が多くなると被削性に悪影響が現われてくるので、1μm2 当たり500個程度以下に抑えることが望ましい。 【0028】尚該析出物のサイズや個数は、圧延品の任意の横断面で測定されるが、たとえばサンプルを切り出し、抽出レプリカ法などによる透過電子顕微鏡で倍率10万倍、10視野の写真撮影を行ない、Ti系析出物のサイズと個数を求め、1μm2 当たりの個数に換算する方法等によって確認することができる。 【0029】 A=[Si]+3.4・[Mn]+19.5・[P]-13.4・[S]+2.7・[Cr]≧3.5 …(1)この要件は、被削性を劣化させることなく、前述の如くV等の析出硬化型元素を添加した従来の非調質鋼に匹敵する降伏比を確保して優れた疲労特性を得るうえで欠くことのできない要件であり、これらの値が3.5未満では降伏比が大幅に低下し、同一引張強さに対する耐力や疲れ限度が乏しくなって本発明の目的が達成できなくなる。 【0030】 B=[C]+1.1・[Mn]-1.9・[S]+1.5・[Cu]+1.8・[Ni]+0.6・[Cr] ≦2.6 …(2)この要件は、先に説明した様に熱間鍛造後の冷却過程で組織をフェライト・パーライトとし、耐力や疲労強度に悪影響を及ぼすベイナイト組織の生成を抑えるうえで重要な要件であり、この値が2.6を超えると、鍛造品の内部組織中にベイナイトが生成し、耐力や疲労強度が悪くなるばかりでなく被削性も劣化し、やはり本発明の目的が達成できなくなる。 【0031】引張強さ:600〜900N/mm2機械構造用鋼では、塑性変形に対する抵抗や疲労強度などの強度設計面から600N/mm2 以上の引張強さを必要とするが、900N/mm2 を超える引張強さになると被削性が大幅に劣化してくる。 【0032】 【実施例】次に実施例を挙げて本発明の構成および作用効果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。 【0033】実施例1表1,2に示す化学組成の鋼材を真空炉または転炉によって溶製した後、熱間鍛造あるいは熱間圧延によって直径35mmの丸棒に鍛伸してから所定長さに切断する。次いで鋼種1〜32については、1250℃に加熱してから直径25mmの丸棒に鍛造加工し、その後空冷した。尚鋼種32は、従来のV添加型非調質鋼である。また鋼種33は、JISのS45Cに相当する鋼であり、これについては直径25mmの丸棒に鍛造した後、870℃×1時間の条件で加熱し、油焼入れを施した後500℃×2時間/水冷の焼戻し処理(調質処理)を施し、調質鋼の例とした。 【0034】得られた各丸棒における横断面のHB硬さを測定すると共に、該丸棒から平行部の直径が10mmの引張試験片を作製し、また同じく平行部の直径が8mmの小野式回転曲げ試験片を作製し、引張試験および疲労試験を行なった。結果を表3,4に示す。 【0035】 【表1】
【0036】 【表2】
【0037】 【表3】
【0038】 【表4】
【0039】表1〜4からも明らかである様に、鋼種1〜14は本発明の規定要件を全て満足する実施例あり、いずれも600〜900N/mm2 の引張強さを有しており、降伏比および疲れ限度比ともに高い値を示しており、鋼種32のV添加型非調質鋼や鋼種33の調質鋼と同等の強度および疲労特性を有している。 【0040】これらに対し、鋼種15,16はC量が不足し、鋼種19はMn量が不足するため強度が低く、しかも鋼種19はAの値が3.5未満であるため、降伏比と疲れ限度比がともに低い。他方、鋼種17はC量が、鋼種18はSi量が、鋼種20はMn量が、鋼種22はN量が、鋼種23はCr量が、鋼種24はCu量が、鋼種25はNi量が夫々規定範囲を超えているため、硬さおよび引張強さが過度に高くなり、被削性が著しく悪くなる。鋼種21は、P量が規定範囲を超えているため鍛造時に割れを生じ、実用にそぐわないものであった。 【0041】また鋼種26〜28は、各含有元素量については規定要件を満たしているが、Aの値が3.5未満であるため降伏比と疲れ限度比が低く、鋼種29〜31は、Bの値が2.6を超えているため、内部にベイナイト組織が生成して過度に硬くなり、切削性に悪影響を及ぼすことが明らかであるばかりでなく、降伏比や疲れ限度比も低くなっている。 【0042】実施例2前記表1,2に示したもののうち鋼種1,4,10,18,30,32を選択し、真空炉または転炉によって溶製した後、熱間鍛造あるいは熱間圧延によって直径80mmの丸棒に鍛伸してから所定長さに切断し、次いで1100℃に加熱し20分間保持してから空冷した。 【0043】得られた各丸棒における横断面のHB硬さを測定すると共に、ドリル加工時の工具寿命試験を行なった。切削条件は、工具としてSKH9、直径10mmのストレートドリルを使用し、送り0.5mm/rev(乾式)で溶損または折損が起こった時を工具寿命とした。硬さ測定結果および、切削速度20m/minの時のドリル寿命[L20]を評価した結果を表5に示す。 【0044】 【表5】
【0045】表5からも明らかである様に、鋼種1,4,10の本発明鋼はいずれもドリル寿命[L20]が長く、鋼種32のV添加型非調質鋼並みの被削性を有している。これに対し比較例の鋼種18,30は、硬さが過度に高いためドリル寿命[L20]が非常に悪い。 【0046】実施例3表6に示した鋼種34,36を150kgの実験炉で、また鋼種35は3トン電気炉で、鋼種33は生産炉で夫々溶製し、鋳造後、鋼種34,36は熱間鍛造により、また鋼種33,35は熱間圧延により、直径35mmまたは直径80mmの丸棒に鍛伸し、所定の長さに切断した。尚鋼種33はJISのS45Cに相当する鋼である。 【0047】得られた直径35mmの丸棒のうち、鋼種34〜36は1250℃に加熱した後、直径25mmの丸棒に鍛造加工し、その後空冷処理した。また鋼種33は、直径25mmの丸棒に鍛造した後、870℃×1時間の条件で加熱処理してから油焼入れを行ない、更に500℃×2時間/水冷の条件で焼戻し処理を行なった。直径25mmの各丸棒について、横断面のHB硬さを測定すると共に、平行部の直径が10mmの引張試験片、平行部の直径が8mmである小野式回転曲げ疲労試験片およびJIS3号衝撃試験片を作製し、引張試験、回転曲げ疲労試験およびシャルピー衝撃試験を行なった。 【0048】尚Tiの炭化物、窒化物、硫化物もしくはそれらの複合化合物からなる析出物については、直径35mmの丸棒の横断面1/4 ・D(Dは丸棒の直径)の位置からサンプルを切り出し、抽出レプリカ法により透過電子顕微鏡で倍率10万倍で10視野の写真を撮影し、その長径が10nm以上である析出物の数を測定し、1μm2 内の個数に換算して求めた。 【0049】また直径80mmの丸棒については、鋼種34〜36は1100℃に加熱して20分間保持した後空冷処理した。鋼種33は870℃×1時間の条件で加熱した後油焼入れを行ない、更に470℃×2時間/水冷の条件で焼戻し処理を施した。直径80mmの丸棒について横断面のHB硬さを測定すると共に、実施例1と同様にしてドリル加工時の工具寿命試験を行なった。 【0050】硬さ測定結果、引張試験結果、疲労試験結果、衝撃試験結果、Ti炭化物・窒化物・硫化物ならびにそれらの複合化合物からなる析出物の個数密度測定結果、ドリル寿命試験結果を表7に示す。 【0051】 【表6】
【0052】 【表7】
【0053】表6,7からも明らかである様に、鋼種34の本発明鋼を用いて熱間鍛造後空冷処理したものは、引張強さが600〜900N/mm2 を満足すると共に、降伏比、疲れ限度比、衝撃値ともに高く、鋼種33の調質鋼と同等の強度特性を有している。 【0054】これに対し、鋼種35は、Ti系析出物の個数密度が3個/μm2 未満であるため、降伏比と疲れ限度比については前記表2に示した鋼種32のV添加型非調質鋼と同等の値を示しているが、衝撃特性に欠けることが分かる。これは、約3トンの鋳型を用いて造塊を行なったため、鋳造時の冷却速度の低下によってTi系析出物の過度の粗大化と個数密度の減少が起こり、該析出物によるオーステナイト結晶粒の微細化効果が有効に発揮されなかったためと考えられる。また鋼種36は、Ti量が本発明の規定要件を超えているため、やはりTi系析出物の粗大化が進み、被削性の低下によってドリル寿命[L20]が低下している。 【0055】 【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、鋼材の成分組成を特定すると共に、前記式(1),(2)で規定されるA,Bの値を特定することによって、V等の高価な炭・窒化物生成による析出硬化型元素を添加することなく、非調質のままでV等添加鋼並みの高耐力と疲労特性を有し、更には被削性も良好な熱間鍛造用非調質鋼を提供し得ることになった。
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