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発明の名称 ブレーキ制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平9−66824
公開日 平成9年(1997)3月11日
出願番号 特願平7−190743
出願日 平成7年(1995)7月26日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】神戸 典和 (外2名)
発明者 小池 伸 / 野村 佳久
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 低圧源と、その低圧源から作動液をくみ上げるポンプと、少なくともそのポンプによってくみ上げられた作動液のホイールシリンダへの流入を許容する増圧状態と、ホイールシリンダの作動液の前記低圧源への流出を許容する減圧状態とに切換え可能な弁装置と、その弁装置を少なくとも増圧状態と減圧状態とに切り換えることによって、ホイールシリンダの液圧を、駆動スリップ状態が適正状態になるように制御するトラクション制御手段と、前記弁装置が前記増圧状態にある時期以外の時期の少なくとも一部において、前記ポンプの吐出圧を低減させる吐出圧低減装置とを含むことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】 前記低圧源がマスタシリンダに作動液を補給するマスタリザーバを含み、前記ポンプの吐出口がマスタシリンダと前記ホイールシリンダとを接続する主液通路の途中に接続され、前記弁装置が、前記主液通路の途中の前記ポンプの吐出口の接続部よりマスタシリンダ側に設けられ、前記ポンプの吐出口の接続部とマスタシリンダとを連通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに切換え可能な第一制御弁を含み、かつ、前記吐出圧低減装置が、その第一制御弁を連通状態に切り換える吐出圧低減用第一制御弁制御手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】 さらに、前記弁装置が、前記主液通路の前記ポンプの吐出口の接続部よりホイールシリンダ側に設けられ、第一制御弁をホイールシリンダに連通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに切換え可能な第二制御弁と、前記第二制御弁をバイパスするバイパス通路の途中に設けられ、ホイールシリンダからマスタシリンダへ向かう方向への作動液の流出は許容するが逆向きの流れは阻止する逆止弁とを含み、かつ、前記吐出圧低減用第一制御弁制御手段が、前記第一制御弁を連通状態と遮断状態とにデューティ制御することによってホイールシリンダの液圧を保持するホイールシリンダ圧保持手段を含むことを特徴とする請求項2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】 前記弁装置が、前記ポンプによってくみ上げられた作動液のホイールシリンダへの供給を許容する供給許容状態と供給を阻止する供給阻止状態とに切換え可能な増圧弁と、前記ホイールシリンダの作動液の低圧源への流出を許容する流出許容状態と流出を阻止する流出阻止状態とに切換え可能な減圧弁とを含み、かつ、前記吐出圧低減装置が、少なくとも一時期において、前記減圧弁を流出許容状態にすると共に前記増圧弁を供給許容状態にする吐出圧低減用増,減圧弁制御手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項5】 前記吐出圧低減装置が、作動液の温度上昇に関連した温度上昇関連情報に基づいて当該吐出圧低減装置の作動を許可するか禁止するかを決定する温度上昇関連情報対応許可禁止手段を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
【請求項6】 前記温度上昇関連情報対応許可禁止手段が、作動液の温度を検出する作動液温検出装置と、その作動液温検出装置によって検出された温度が設定温度以上である場合に前記吐出圧低減装置の作動を許可する作動液温対応許可手段とを含むことを特徴とする請求項5に記載のブレーキ制御装置。
【請求項7】 前記温度上昇関連情報対応許可禁止手段が、トラクション制御の継続に関連する時間を検出するトラクション制御関連時間検出手段と、そのトラクション制御関連時間検出手段によって検出された制御関連時間が設定時間以上である場合に前記吐出圧低減装置の作動を許可する制御関連時間対応許可手段とを含むことを特徴とする請求項5あるいは6に記載のブレーキ制御装置。
【請求項8】 前記温度上昇関連情報対応許可禁止手段が、当該ブレーキ制御装置を搭載した車両がスタック状態にあることを検出するスタック状態検出手段と、そのスタック状態検出手段によって車両がスタック状態にあることが検出された場合に前記吐出圧低減装置の作動を許可するスタック状態対応許可手段とを含むことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
【請求項9】 当該ブレーキ制御装置がマスタシリンダと、そのマスタシリンダとホイールシリンダとを接続する主液通路と、前記マスタシリンダと前記低圧源とを接続する副液通路に設けられ、その副液通路を連通させる連通状態と遮断する遮断状態とに切換え可能なリザーバ連通弁装置と、前記ポンプの吐出口と前記マスタシリンダとを接続するリリーフ通路の途中に設けられたリリーフ弁と、前記ホイールシリンダの液圧を、制動スリップ状態がほぼ適正状態になるように制御するアンチスキッド制御手段とを含み、前記弁装置が、前記主液通路に設けられ、その主液通路を連通させる連通状態と、遮断する遮断状態とに切換え可能なマスタカット弁と、前記主液通路の前記マスタカット弁とホイールシリンダとの間に設けられ、少なくとも、ホイールシリンダへの作動液の流入を許容する増圧状態と、ホイールシリンダから低圧源への作動液の流出を許容する減圧状態とに切換え可能なホイールシリンダ圧制御弁装置とを含み、前記ポンプが、前記主液通路の前記マスタカット弁とホイールシリンダ圧制御弁装置との間の部分である主液通路中間部と前記低圧源とを接続するポンプ通路の途中に設けられ、前記アンチスキッド制御手段が、前記マスタカット弁を連通状態、リザーバ連通弁装置を遮断状態とし、かつ、ホイールシリンダ圧制御弁装置を少なくとも増圧状態と減圧状態とに切り換えるものであり、前記トラクション制御手段が、前記マスタカット弁を遮断状態、リザーバ連通弁装置を連通状態とし、かつ、ホイールシリンダ圧制御弁装置を少なくとも増圧状態と減圧状態とに切り換えるものであり、前記吐出圧低減装置が、前記ホイールシリンダ圧制御弁装置が前記増圧状態にある時期以外の時期の少なくとも一部において、前記ポンプの吐出圧を低減させるものであることを特徴とする請求項1,5ないし8のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トラクション制御可能なブレーキ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】実開平3─60468号公報にはこの種のブレーキ制御装置の一つが記載されている。このブレーキ制御装置は、(1) 低圧源と、(2) その低圧源から作動液をくみ上げるポンプと、(3) 少なくともそのポンプによってくみ上げられた作動液のホイールシリンダへの流入を許容する増圧状態と、ホイールシリンダの作動液の前記低圧源への流出を許容する減圧状態とに切換え可能な弁装置と、(4) その弁装置を少なくとも増圧状態と減圧状態とに切り換えることによって、ホイールシリンダの液圧を、駆動スリップ状態が適正状態になるように制御するトラクション制御手段とを含むものである。
【0003】このトラクション制御手段によって、弁装置が少なくとも増圧状態と減圧状態とに切り換えられることによって、ホイールシリンダの液圧が、駆動スリップ状態が適正状態になるように制御される。増圧状態に切り換えられれば、ポンプによってくみ上げられた作動液がホイールシリンダに流入させられ、減圧状態に切り換えられれば、ホイールシリンダの作動液が低圧源に流出させられる。また、従来のブレーキ制御装置においては、ホイールシリンダの最大液圧を規定するために、ポンプの吐出口と低圧源との間にリリーフ弁が設けられている。弁装置が減圧状態等増圧状態以外の状態にある場合には、ポンプによって吐出された作動液はホイールシリンダに供給されないため余分になり、リリーフ弁を経て低圧源に戻される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、従来のブレーキ制御装置においては、ポンプを駆動するためのモータにおいて無駄なエネルギが消費されるという問題があった。ポンプによって吐出された作動液をマスタシリンダに戻すためには、ポンプの吐出圧をリリーフ弁のリリーフ圧より高くしなければならず、モータに掛かる負荷が大きくなり、無駄なエネルギが消費されることを避け得ないのである。
【0005】そこで、第一発明および第九発明の課題は、ブレーキ制御装置において、ポンプを駆動するためのモータにおける無駄なエネルギ消費を少なくすることである。また、第二ないし第四発明の課題は、弁装置を制御することによってモータにおける無駄なエネルギ消費を少なくすることにあり、第五発明ないし第八発明の課題は、無駄なエネルギ消費を少なくするとともに作動液温度の大きな上昇を防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】第一の課題は、ブレーキ制御装置に、前記(1) 低圧源,(2) ポンプ,(3) 弁装置,(4) トラクション制御手段の他に、前記弁装置が増圧状態にある時期以外の時期の少なくとも一部において、前記ポンプの吐出圧を低減させる吐出圧低減装置を設けることによって解決される。当該ブレーキ制御装置は、少なくともトラクション制御手段を含むものであれば、アンチスキッド制御手段やそれ以外の液圧制御手段等も含むものであってもよい。また、弁装置は、1個の制御弁を含むものであっても、2個以上の制御弁を含むものであってもよく、少なくとも増圧状態と減圧状態とに切換え可能なものであれば、他に保持状態等にも切換え可能なものであってもよい。
【0007】さらに、吐出圧低減装置によってポンプの吐出圧が低減させられる時期は、弁装置が増圧状態にある時期以外の時期の少なくとも一部であればよく、弁装置が増圧状態と減圧状態とに切換え可能な制御弁である場合には、減圧状態にある時期の全部または一部である。また、弁装置が増圧状態と減圧状態との他に保持状態にも切換え可能な制御弁である場合には、弁装置が減圧状態と保持状態との少なくとも一方にある時期の全部または一部が、吐出圧低減装置によってポンプの吐出圧が低減させられる時期とされる。吐出圧低減装置は、第二ないし第四発明におけるように、弁装置を制御する弁装置制御手段を含むものであっても、弁装置以外のポンプの吐出圧を低減させるための装置等を制御する低減装置制御手段を含むものであってもよい。
【0008】上記課題は、第二発明によれば、前記低圧源をマスタシリンダに作動液を補給するマスタリザーバを含むものとし、前記ポンプの吐出口をマスタシリンダとホイールシリンダとを接続する主液通路の途中に接続し、前記弁装置を、主液通路の途中のポンプの吐出口の接続部よりマスタシリンダ側に設けられ、ポンプの吐出口の接続部とマスタシリンダとを連通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに切換え可能な第一制御弁を含むものとし、かつ、前記吐出圧低減装置を、第一制御弁を連通状態に切り換える吐出圧低減用第一制御弁制御手段を含むものとすることによって解決される。
【0009】また、第三発明によれば、前記弁装置を、前記主液通路の前記ポンプの吐出口の接続部よりホイールシリンダ側に設けられ、第一制御弁をホイールシリンダに連通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに切換え可能な第二制御弁と、前記第二制御弁をバイパスするバイパス通路の途中に設けられ、ホイールシリンダからマスタシリンダへ向かう方向への作動液の流出は許容するが逆向きの流れは阻止する逆止弁とを含むものとし、かつ、前記吐出圧低減用第一制御弁制御手段を、前記第一制御弁を連通状態と遮断状態とにデューティ制御することによってホイールシリンダの液圧を保持するホイールシリンダ圧保持手段を含むものとすることによって解決される。ここで、ホイールシリンダ圧保持手段は、第一制御弁のみを連通状態と遮断状態とにデューティ制御するものであっても、第二制御弁も連通状態と遮断状態とにデューティ制御するものであってもよい。
【0010】第四発明によれば、前記弁装置を、前記ポンプによってくみ上げられた作動液のホイールシリンダへの供給を許容する供給許容状態と供給を阻止する供給阻止状態とに切換え可能な増圧弁と、前記ホイールシリンダの作動液の低圧源への流出を許容する流出許容状態と流出を阻止する流出阻止状態とに切換え可能な減圧弁とを含むものとし、かつ、前記吐出圧低減装置を、少なくとも一時期において、減圧弁を流出許容状態にするとともに増圧弁を供給許容状態にする吐出圧低減用増,減圧弁制御手段を含むものとすることによって解決される。ここで、吐出圧低減用増,減圧弁制御手段は、減圧弁が流出許容状態にある時期の少なくとも一時期において増圧弁を供給許容状態に切り換える手段であっても、増圧弁が供給許容状態にある時期の少なくとも一時期において減圧弁を流出許容状態に切り換える手段等であってもよく、いずれにしても、減圧弁が流出許容状態に、増圧弁が供給許容状態にある時期が少なくとも一時期あるように制御する手段であればよい。
【0011】また、前記課題は、第五発明によれば、前記吐出圧低減装置を、作動液の温度上昇に関連した温度上昇関連情報に基づいて吐出圧低減装置の作動を許可するか禁止するかを決定する温度上昇関連情報対応許可禁止手段を含むものとすることによって解決される。つまり、第一ないし第四発明,第九発明は、吐出圧低減装置の作動が、温度上昇関連情報に基づいて制限される場合と、温度上昇関連情報によっては制限されない場合とを含むのであるが、第五発明においては、温度上昇関連情報に基づいて制限される。例えば、第五発明においては、作動液温度が現に大きく上昇した場合あるいは大きく上昇する可能性が高い場合等に吐出圧低減装置の作動が許可され、そうでない場合には禁止されるようにされて、無駄なエネルギ消費と作動液温度の大きな上昇との両方が生じるかその可能性が高い場合にのみ吐出圧低減装置の作動が許可される。それに対し、第一ないし第四発明,第九発明においては、作動液温度の大きな上昇とは無関係に吐出圧低減装置の作動が許容され、無駄なエネルギ消費の回避が一層積極的に図られることもあるのである。
【0012】ここで、温度上昇関連情報は、作動液の温度上昇に関連する情報であり、作動液の実際の温度を表す情報,作動液の温度推定の基礎となる情報,作動液の温度が近い将来大きく上昇する可能性が高いことを示す情報等が含まれる。例えば、作動液の温度推定の基礎となるトラクション制御継続時間を表す情報やトラクション制御継続時間の推定の基礎となる車両走行状態を表す情報も、温度上昇関連情報たり得るのである。
【0013】第六発明においては、前記温度上昇関連情報対応許可禁止手段が、作動液の温度を検出する作動液温検出装置と、その作動液温検出装置によって検出された温度が設定温度以上である場合に吐出圧低減装置の作動を許可する作動液温対応許可手段とを含むものとされ、第七発明においては、前記温度上昇関連情報対応許可禁止手段が、トラクション制御の継続に関連する時間を検出するトラクション制御関連時間検出手段と、そのトラクション制御関連時間検出手段によって検出された制御関連時間が設定時間以上である場合に前記吐出圧低減装置の作動を許可する制御関連時間対応許可手段とを含むものとされる。トラクション制御の継続に関連する時間には、トラクション制御が継続して行われた継続時間や、トラクション制御中に弁装置が減圧状態にある間の累積減圧時間等が含まれる。また、弁装置が、保持状態にも切換え可能なものである場合には、累積減圧時間と累積保持時間との和の時間や、弁装置が保持状態にある場合の累積保持時間等も含まれる。
【0014】第八発明においては、前記温度上昇関連情報対応許可禁止手段が、車両がスタック状態にあることを検出するスタック状態検出手段と、そのスタック状態検出手段によって車両がスタック状態にあることが検出された場合に吐出圧低減装置の作動を許可するスタック状態対応許可手段とを含むものとされる。
【0015】第九発明によれば、前記課題は、当該ブレーキ制御装置を、マスタシリンダと、そのマスタシリンダとホイールシリンダとを接続する主液通路と、マスタシリンダと前記低圧源とを接続する副液通路に設けられ、その副液通路を連通させる連通状態と遮断する遮断状態とに切換え可能なリザーバ連通弁装置と、前記ポンプの吐出口とマスタシリンダとを接続するリリーフ通路の途中に設けられたリリーフ弁と、前記ホイールシリンダの液圧を、制動スリップ状態がほぼ適正状態になるように制御するアンチスキッド制御手段とを含むものとし、前記弁装置を、主液通路に設けられ、その主液通路を連通させる連通状態と、遮断する遮断状態とに切換え可能なマスタカット弁と、主液通路のマスタカット弁とホイールシリンダとの間に設けられ、少なくとも、ホイールシリンダへの作動液の流入を許容する増圧状態と、ホイールシリンダから低圧源への作動液の流出を許容する減圧状態とに切換え可能なホイールシリンダ圧制御弁装置とを含むものとし、前記ポンプを、主液通路のマスタカット弁とホイールシリンダ圧制御弁装置との間の部分である主液通路中間部と低圧源とを接続するポンプ通路の途中に設け、前記アンチスキッド制御手段を、マスタカット弁を連通状態、リザーバ連通弁装置を遮断状態とし、かつ、ホイールシリンダ圧制御弁装置を少なくとも増圧状態と減圧状態とに切り換えるものとし、前記トラクション制御手段を、マスタカット弁を遮断状態、リザーバ連通弁装置を連通状態とし、かつ、ホイールシリンダ圧制御弁装置を少なくとも増圧状態と減圧状態とに切り換えるものとし、前記吐出圧低減装置を、ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧状態にある時期以外の時期の少なくとも一部において、ポンプの吐出圧を低減させるものとすることによって解決される。
【0016】ここで、ホイールシリンダ圧制御弁装置は少なくとも減圧状態と増圧状態とに切換え可能なものであれば、減圧状態と増圧状態との他に保持状態にも切換え可能なものであってもよい。また、ホイールシリンダ圧制御弁装置は、それ自体が増圧位置と減圧位置とに切り換えられることによって増圧状態と減圧状態とに切り換えられるもの、すなわち、マスタカット弁等ホイールシリンダ圧制御弁装置以外の制御弁の状態の影響を受けないで増圧状態と減圧状態とに切り換えられるものであっても、ホイールシリンダ圧制御弁装置自体の位置が切り換えられなくても、マスタカット弁が遮断状態と連通状態とに切り換えられることによって、結果的に増圧状態や減圧状態や後述するそれ以外の状態に切り換えられるもの、すなわち、マスタカット弁等他の制御弁の状態の影響を受けるものであってもよい。また、図21に示す実施形態におけるように、ホイールシリンダ圧制御弁装置は、上述の減圧位置,増圧位置および保持位置以外の位置に切り換えられる場合もある。
【0017】例えば、ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧位置にあり、マスタカット弁が遮断状態にある場合には、ホイールシリンダへの作動液の流入が許容される増圧状態にあるが、マスタカット弁が連通状態に切り換えられると、ホイールシリンダの作動液の主液通路中間部への流出が許容される状態に切り換えられるタイプのホイールシリンダ圧制御弁装置がある。つまり、ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧位置にある場合に、マスタカット弁が遮断状態と連通状態とに切り換えられることによって、ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧状態とそれ以外の状態とに切り換えられることになる。このような状態を減圧状態を区別して、以下、作動液流出状態と称する。なお、ホイールシリンダ圧制御弁装置がマスタカット弁の状態の影響を受ける場合について説明したが、図19,20に示す実施形態において詳述するように、マスタカット弁,リザーバ連通弁装置以外の制御弁の状態の影響を受ける場合もある。第九発明と第一ないし第三発明との関係の一例として、例えば、マスタリザーバがマスタシリンダに含まれ、サブリザーバが低圧源に該当するものとすることができる。そして、第一制御弁がマスタカット弁の一態様であり、第二制御弁,逆止弁がホイールシリンダ圧制御弁装置に含まれるものと考えることができる。
【0018】吐出圧低減装置によってポンプの吐出圧を低減させる時期は、ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧状態にある時期以外の時期の少なくとも一部であればよく、ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧状態と減圧状態とに切換え可能な制御弁である場合には、減圧状態にある時期の全部または一部である。また、上述のように、ホイールシリンダ圧制御弁装置が減圧状態以外の作動液流出状態にもなるものである場合には、ホイールシリンダ圧制御弁装置が作動液流出状態にある時期の全部または一部において、ポンプの吐出圧が低減させられるようにしてもよい。すなわち、ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧位置にあっても、ホイールシリンダは増圧状態にない場合があるが、その場合に、ポンプの吐出圧が低減させられるようにしてもよいのである。さらに、ホイールシリンダ圧制御弁装置が、増圧状態と減圧状態との他に保持状態にも切換え可能な制御弁である場合には、ホイールシリンダ圧制御弁装置が減圧状態と保持状態との少なくとも一方にある時期の全部または一部が、吐出圧低減手段によってポンプの吐出圧を低減させる時期とされる。また、吐出圧低減装置はトラクション制御手段と別個に設けてもよいが、吐出圧低減装置の一部または全部がトラクション制御手段に含まれるものとしてもよい。吐出圧低減制御は、通常、トラクション制御中に実行されるため、トラクション制御手段に含まれるものとしても差し支えないのである。
【0019】
【作用】第一発明のブレーキ制御装置においては、トラクション制御手段によって、弁装置が少なくとも増圧状態と減圧状態とに切り換えられることによってホイールシリンダの液圧が駆動スリップ状態が適正状態となるように制御される。また、吐出圧低減装置が設けられているため、弁装置が増圧状態にある時期以外の時期の少なくとも一部において、ポンプの吐出圧が低減させられ、モータにおいて無駄なエネルギが消費されることが回避される。
【0020】弁装置が、増圧状態にある場合には、ポンプによって吐出された作動液はホイールシリンダに供給されるため、吐出圧はそれほど高くならないことが多い。減圧状態等増圧状態以外の状態にある場合には、ホイールシリンダには作動液が供給されないため、ポンプによって吐出された作動液は不要であるか、もしくは余る。この余分な作動液は、従来のブレーキ制御装置においては、すべてリリーフ弁を経て低圧源に戻されていたため、吐出圧がリリーフ圧に等しくなり、モータにおいて無駄なエネルギが消費される。しかし、本発明のブレーキ制御装置においては、増圧状態にある時期以外の時期の少なくとも一部において吐出圧が低減させられるため、その分、モータにおいて消費される無駄なエネルギが少なくなる。特に、弁装置が増圧状態にある時期以外のすべての時期においてポンプの吐出圧が低減させられれば、ポンプの吐出圧が無駄に高くなる時期がなくなるため、無駄なエネルギ消費が最も良好に回避される。
【0021】なお、本ブレーキ制御装置が、従来のブレーキ制御装置におけるように、ポンプの吐出口と低圧源とを接続するリリーフ通路の途中に設けられたリリーフ弁を含む場合において、ポンプの吐出容量が弁装置を通過可能な作動液の流量より大きい場合には、弁装置が増圧状態にある時期にあってもポンプの吐出圧がリリーフ圧に達し、ポンプによって吐出された作動液の一部がリリーフ弁を経て低圧源に戻されることがある。しかし、これは、ホイールシリンダ液圧の上昇勾配を十分に大きくするために必要なものであるため、無駄なエネルギ消費ではない。また、ポンプの吐出容量が弁装置を通過可能な作動液の流量より小さい場合でも、ホイールシリンダの液圧がリリーフ圧に近くなった場合には、弁装置が増圧状態にあってもポンプによって吐出された作動液の一部しかホイールシリンダには供給されず、残りは低圧源に戻されることもあり得る。しかし、これは、リリーフ圧をできる限り低くしながらホイールシリンダ液圧を所望の高さにするために必要なことであるため、無駄なエネルギ消費ではない。
【0022】第二発明のブレーキ制御装置には、マスタシリンダとポンプの吐出口とを連通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに切換え可能な第一制御弁が設けられる。第一制御弁が遮断状態にされれば、ポンプの吐出口とマスタシリンダとが遮断されるが、連通状態にされれば、これらが連通させられる。したがって、第一制御弁が吐出圧低減用第一制御弁制御手段によって連通状態に切り換えられれば、ポンプによって吐出された作動液の余剰分は連通状態にある第一制御弁を経てマスタシリンダに戻される。そのため、従来のブレーキ制御装置におけるように、作動液をリリーフ弁を経てマスタシリンダに戻す必要がなくなり、吐出圧が低減させられる。
【0023】第二発明のブレーキ制御装置においてトラクション制御は、第一制御弁が遮断状態に切り換えられた状態、すなわち、ホイールシリンダがマスタシリンダから遮断された状態で行われる。したがって、従来のブレーキ制御装置においては、ポンプによって吐出された作動液が余分になれば、その余分な作動液はリリーフ弁を経てマスタシリンダに戻さければならなった。それに対して、本発明の吐出圧低減用第一制御弁制御手段によって、例えば、トラクション制御中の弁装置が減圧状態にある場合に第一制御弁が連通状態に切り換えられれば、余分な作動液が第一制御弁を経てマスタシリンダに戻される。作動液をリリーフ弁を経てマスタシリンダに戻す必要がなく、ポンプの吐出圧がリリーフ圧まで高くなることがなくなる。なお、トラクション制御中には、マスタシリンダの液圧はほぼ大気圧にあるため、トラクション制御中においてはマスタシリンダを低圧源と考えることができる。それに対し、マスタシリンダに作動液を補給するマスタリザーバは、トラクション制御以外の時期においても、低圧源と見なし得る。
【0024】第三発明のブレーキ制御装置には、第一制御弁の他に、ポンプの吐出口とホイールシリンダとを連通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに切換え可能な第二制御弁と、第二制御弁をバイパスするバイパス通路の途中にホイールシリンダから第一制御弁への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁とが設けられる。トラクション制御は、前述のように、第一制御弁が遮断状態に切り換えられた状態において行われる。第二制御弁が連通状態に切り換えられれば、ポンプによって吐出された作動液がホイールシリンダに供給され、遮断状態に切り換えられれば、ホイールシリンダには作動液は供給されない。また、第二制御弁を経て作動液が流出させられることもない。
【0025】しかし、第二制御弁が遮断状態にあっても、第一制御弁が連通状態に切り換えられれば、ホイールシリンダの作動液は逆止弁および第一制御弁を経てマスタシリンダに戻されてしまう。吐出圧の低減を図りつつホイールシリンダ液圧を保持することができないのである。そこで、ホイールシリンダ圧保持手段によって、デューティ制御により第一制御弁が連通状態と遮断状態とに繰返し切り換えられ、ポンプの吐出圧を低減させつつホイールシリンダ圧が保持される。
【0026】第二制御弁が連通状態に保たれ、第一制御弁が連通状態と遮断状態とにデューティ制御されれば、ホイールシリンダにおいて、作動液が流出させられる状態と、流入させられる状態とが交互に繰り返されるため、ホイールシリンダ液圧が保持される。第二制御弁が連通状態、第一制御弁が遮断状態にある場合には、ポンプによって吐出された作動液はホイールシリンダに供給され、第一制御弁が連通状態にある場合には、ポンプによって吐出された作動液とホイールシリンダから流出した作動液とが第一制御弁を経てマスタシリンダへ流出する。そのため、第二制御弁が連通状態にある間において第一制御弁が連通状態と遮断状態とに切り換えられれば、ポンプの吐出圧が高くなる時期が殆どなくなり、吐出圧を低減させることができる。
【0027】また、第二制御弁が遮断状態に保たれ、第一制御弁がデューティ制御される場合には、ポンプによって吐出される作動液量と第一制御弁からマスタシリンダに戻される作動液量とがほぼ同じであれば、主液通路のポンプの吐出口の接続部付近の液圧、すなわち、バイパス通路との接続部付近の液圧がほぼ一定に保たれ、液圧が保持される。この場合には、ポンプによって吐出された作動液の殆どすべてが第一制御弁を経てマスタシリンダに戻されるため、ポンプの吐出圧は殆ど高くならない。なお、第二制御弁を、第一制御弁と共に連通状態と遮断状態とにデューティ制御しても差し支えない。
【0028】第四発明においては、ホイールシリンダへの作動液の供給を許容する供給許容状態と供給を阻止する供給阻止状態とに切換え可能な増圧弁と、ホイールシリンダの作動液の流出を許容する流出許容状態と流出を阻止する流出阻止状態とに切換え可能な減圧弁とが設けられる。これら増圧弁および減圧弁を備えたブレーキ制御装置においては通常、減圧弁が流出阻止状態にされるとともに増圧弁が供給許容状態にされることによりホイールシリンダの液圧が増圧され、減圧弁が流出許容状態にされるとともに増圧弁が供給阻止状態にされることにより、ホイールシリンダの液圧が減圧される。しかし、本発明においては少なくも一時期において増圧弁が供給許容状態とされると同時に減圧弁が流出許容状態とされる。この場合、ポンプから増圧弁を経て供給される作動液の量が、減圧弁を経て低圧源に流出させられる作動液の量より少なければホイールシリンダの液圧が減圧される。例えば、ポンプの吐出容量より減圧弁の許容流量の方が大きい場合には、増圧弁が連続的に供給許容状態にされるとともに減圧弁も連続的に流出許容状態にされることによってホイールシリンダの液圧が減圧される。また、減圧弁がデューティ制御等により繰返し切り換えられることによってホイールシリンダの液圧が減圧され、あるいは保持されるようにしてもよい。いずれにしてもポンプによって吐出された作動液は、増圧弁および減圧弁を経てポンプに還流させられることになるのであり、従来のブレーキ制御装置におけるようにポンプによって吐出された作動液をリリーフ弁を経て低圧源に戻す必要がなくなるため、ポンプの吐出圧が低くて済む。
【0029】第五発明のブレーキ制御装置においては、吐出圧低減装置の作動が、温度上昇関連情報対応許可禁止手段により温度上昇関連情報に基づいて許可されたり禁止されたりする。吐出圧低減装置の作動が許可されれば、作動液温度の大きな上昇が抑制され、例えば、作動液の劣化が早くなったり、気泡が発生し易い状態になることが回避される。作動液の温度が高くなり、作動液に溶解していた気体が気泡となれば、制動時にこれが圧縮されることによりブレーキ操作部材の操作フィーリングが悪くなるのであるが、この不都合が回避できるのである。なお、作動液温度の大きな上昇とは、例えば、作動液温度の上昇量が設定上昇量以上であること、あるいは作動液温度が設定温度以上となることであり、設定上昇量あるいは設定温度は回避すべき現象に応じて設定される。
【0030】第六発明のブレーキ制御装置においては、作動液温検出装置によって作動液の温度が設定温度以上であることが検出された場合に、作動液温対応許可手段によって吐出圧低減装置の作動が許可され、ポンプの吐出圧が低減させられる。本発明においては、作動液の温度自体が検出される。作動液の実際の温度を表す情報は、温度上昇関連情報として最も直接的な情報である。また、作動液の温度を推定するわけでないため、情報が正確である。
【0031】第七発明のブレーキ制御装置においては、トラクション制御関連時間検出手段によってトラクション制御の継続に関連する時間が設定時間以上であると検出された場合に、制御時間対応許可手段によって吐出圧低減装置の作動が許可される。制御関連時間を表す情報に基づいて作動液の温度を推定し得るため、制御関連時間を表す情報を温度上昇関連情報として利用することができる。
【0032】トラクション制御関連時間の一例は、弁装置が減圧状態にある時間の総和である累積減圧時間である。前述のように、本ブレーキ制御装置が、ポンプの吐出口と低圧源との間を接続するリリーフ通路の途中に設けられたリリーフ弁を含む場合において、弁装置が減圧状態にあり、作動液をリリーフ弁を経て低圧源に戻さなければならない場合には、ポンプの吐出圧がリリーフ圧まで高くなり、ポンプを駆動するモータの消費エネルギが多くなるとともに、その分作動液の温度上昇が大きくなる。そのため、減圧状態にある場合には作動液の温度が特に上昇し易い。それに対して、弁装置が増圧状態にある場合には、ポンプの吐出圧がリリーフ圧より低くて済むため、減圧状態にある場合より、作動液の温度上昇が少ない。したがって、作動液の温度は累積減圧時間に応じて高くなると推定することは妥当なことである。
【0033】トラクション制御関連時間の別の例は、トラクション制御継続時間である。弁装置が増圧状態と減圧状態とに切換え可能である場合には、トラクション制御継続時間は、上述の累積減圧時間と累積増圧時間との和であり、累積減圧時間の増加に伴って増加する。また、増圧状態にある場合でも作動液の温度が全く上昇しないわけではないので、累積減圧時間ほど明瞭ではないまでも、トラクション制御継続時間と作動液温度上昇量との間にはある程度の相関関係が存在し、トラクション制御継続時間に基づいて作動液の温度を推定することができるのである。
【0034】さらに、弁装置が保持状態にも切換え可能なものである場合には、累積減圧時間と累積保持時間との和や累積保持時間も作動液の温度上昇と密接な関係があり、有力なトラクション制御関連時間となる。弁装置が保持状態にある場合にも、作動液がリリーフ弁を経て低圧源に戻され、作動液の温度上昇が大きいからである。
【0035】第八発明のブレーキ制御装置においては、スタック状態検出手段によって、車両がスタック状態にあることが検出された場合には、スタック状態対応許可手段によって吐出圧低減装置の作動が許可される。本発明においては、近い将来、作動液温度が大きく上昇する可能性が高いという情報が得られる。車両がスタック状態になれば、通常、トラクション制御継続時間が長くなり、作動液の温度が上昇する可能性が高い。例えば、車輪がぬかるみに入って発車できなくなった場合には、車輪が空転するため駆動スリップが過大となり、トラクション制御が開始される。しかも、そのトラクション制御継続時間は長くなる可能性が高いため、車両がスタック状態にあることを温度上昇関連情報とすることは妥当なことである。
【0036】第九発明のブレーキ制御装置において、通常は、マスタカット弁が連通状態に,ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧状態に、リザーバ連通弁装置が遮断状態にされている。そのため、通常制動時には、マスタシリンダの作動液が、マスタカット弁およびホイールシリンダ圧制御弁装置を経てホイールシリンダに供給される。
【0037】アンチスキッド制御が行われる場合には、マスタカット弁が連通状態、リザーバ連通弁装置が遮断状態にされた状態において、ホイールシリンダ圧制御弁装置が、少なくとも減圧状態と増圧状態とに切り換えられることによってホイールシリンダの液圧が制動スリップ状態がほぼ適正状態になるように制御される。
【0038】ホイールシリンダ圧制御弁装置が、減圧状態にある場合には、ホイールシリンダの作動液がホイールシリンダ圧制御弁装置を経て低圧源に流出させられ、増圧状態にある場合には、ホイールシリンダに、マスタシリンダの作動液がマスタカット弁およびホイールシリンダ圧制御弁装置を経て流入させられる。また、低圧源に流出させられた作動液はポンプによって汲み上げられ、マスタシリンダ(付属のリザーバを有する場合には、このリザーバも含めて「マスタシリンダ」と称する)へ戻される。ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧状態にある場合には主としてホイールシリンダに供給され、余ればマスタシリンダへ戻されるが、ホイールシリンダ圧制御弁装置が減圧状態あるいは保持状態にある場合には、マスタシリンダへ戻されるのである。
【0039】トラクション制御が行われる場合には、マスタカット弁が遮断状態,リザーバ連通弁装置が連通状態にされた状態において、ホイールシリンダ圧制御弁装置が少なくとも減圧状態と増圧状態とに切り換えられることによってホイールシリンダの液圧が駆動スリップ状態がほぼ適正状態になるように制御される。ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧状態にある場合には、ポンプによりリザーバ連通弁装置を経てマスタシリンダから汲み上げられた作動液が、ポンプ通路,主液通路中間部およびホイールシリンダ圧制御弁装置を経てホイールシリンダに供給され、余ればマスタシリンダへ戻される。
【0040】ホイールシリンダ圧制御弁装置が減圧状態にある場合には、ホイールシリンダの作動液が、ホイールシリンダ圧制御弁装置を経て低圧源に流出させられる。低圧源に流出させられた作動液は、ポンプにより汲み上げられ、主液通路中間部へ戻される。減圧状態においては主液通路中間部へ戻された作動液はホイールシリンダには流入不可能である。したがって、トラクション制御中にマスタカット弁が遮断状態に保たれれば、これを通過してマスタシリンダへ戻ることも不可能であるため、リリーフ弁を経てマスタシリンダへ戻らなければならない。そのため、ポンプの吐出圧がほぼリリーフ圧となり、ポンプを駆動するモータの負荷が大きくなる。
【0041】また、ホイールシリンダ圧制御弁装置が保持状態にも切り換えられるタイプである場合には、ポンプはホイールシリンダから作動液が排出されない時期でもマスタシリンダから副液通路を経て作動液を汲み上げ、主液通路中間部へ供給するため、この作動液もリリーフ弁を経てマスタシリンダへ戻らざるを得ず、モータの負荷が大きくなる。
【0042】リリーフ圧は、トラクション制御時にホイールシリンダに供給されるべき作動液の最大液圧以上に設定されるが、ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧状態にある時期には、ポンプは流路抵抗等を加味してもホイールシリンダの液圧よりやや高い吐出圧で作動液を吐出すればよく、殆どの場合、ポンプの吐出圧はリリーフ圧より低い。それに対して、ホイールシリンダ圧制御弁装置が減圧状態にある場合等増圧状態以外の状態にある場合には、マスタカット弁が遮断状態にある限り、作動液をリリーフ弁を経てマスタシリンダに戻さなければならないため、ポンプの吐出圧がリリーフ圧よりやや高くなり、モータの負荷が大きくなるのである。
【0043】しかるに、本発明のブレーキ制御装置においては、ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧状態にある時期以外の時期の少なくとも一部において、ポンプの吐出圧が低減させられる。ポンプの吐出圧を低減させるには、例えば、ポンプの吐出口から吐出された作動液をリリーフ弁を経ないでマスタシリンダに戻すようにすればよい。作動液をリリーフ弁をバイパスしてマスタシリンダに戻すことができれば、ポンプの吐出圧をリリーフ圧より高くする必要がなくなるからである。また、ポンプの吐出口から吐出された作動液は、マスタシリンダに戻さなくても、サブリザーバに戻したり、ポンプの吸入口に戻したりしてもよい。
【0044】
【発明の効果】第一発明のブレーキ制御装置においては、弁装置が増圧状態にある時期以外の時期の少なくとも一部において、ポンプの吐出圧が低減させられる。そのため、モータにおける無駄なエネルギ消費量を少なくすることができ、かつ、モータの負荷を軽減して寿命を長くすることができる。また、作動液の温度の上昇を抑制することができ、その結果、作動液の劣化を抑制し得、寿命を長くすることができる。さらに、気泡の発生を回避してブレーキ操作部材の操作フィーリングの低下を良好に回避することができる。
【0045】第二発明のブレーキ制御装置においては、第一制御弁を連通状態に切り換えることによってポンプの吐出圧を低減させることができ、第三発明のブレーキ制御装置においては、弁装置が逆止弁を含む場合にも、第一制御弁をデューティ制御することによって、ポンプの吐出圧を低減させつつホイールシリンダの液圧を保持し得るという特有の効果が得られる。また、第四発明のブレーキ制御装置においては、減圧弁を流出許容状態にすると共に増圧弁を供給許容状態にすることによってポンプの吐出圧を低減させることができる。
【0046】第五発明のブレーキ制御装置においては、ポンプの吐出圧が温度上昇関連情報に基づいて低減させられるため、作動液温度の大きな上昇を効果的に回避することができる。第六発明のブレーキ制御装置においては、作動液の温度自体が検出されるため、作動液温度の大きな上昇を一層確実に回避することができる。第七発明のブレーキ制御装置においては、作動液の温度が、トラクション制御の継続に関連する時間を表す情報に基づいて推定される。つまり、制御関連時間を表す情報を温度上昇関連情報として利用することができる。そのため、第五発明の効果に加え、作動液の温度を検出する専用の温度検出装置を設ける必要がなくなり、その分コストダウンを図ることができる。第八発明のブレーキ制御装置においては、車両がスタック状態にあることに基づいて、近い将来、作動液の温度が大きく上昇する可能性が高いことが推定される。したがって、専用の温度検出装置を省略できるとともに、作動液温度の大きな上昇を事前に回避することができる。
【0047】また、第九発明のブレーキ制御装置においては、ホイールシリンダ圧制御弁装置が連通状態にある時期以外の少なくとも一部において、ポンプの吐出圧が低減させられるため、第一発明のブレーキ制御装置における場合と同様の効果を得ることができる。
【0048】
【発明の補足説明】以下、本発明の望ましい実施態様を列記し、必要に応じてそれぞれに関連する説明を行う。
(1)前記吐出圧低減装置が、前記弁装置を制御する吐出圧低減用弁装置制御手段を含む請求項1,5ないし9のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
(2)前記吐出圧低減装置が、前記弁装置以外のポンプの吐出圧を低減させるための吐出圧低減弁装置と、その吐出圧低減弁装置を制御する吐出圧低減弁装置制御手段とを含む請求項1,5ないし9のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。吐出圧低減装置は、弁装置を制御する吐出圧低減用弁装置制御手段を含むものであっても、弁装置以外の吐出圧低減弁装置を制御する吐出圧低減弁装置制御手段を含むものであってもよい。吐出圧低減用弁装置制御手段には、例えば、第二ないし第四発明の吐出圧低減用第一制御弁制御手段、ホイールシリンダ圧保持手段、吐出圧低減用増,減圧弁制御手段等が含まれる。吐出圧低減用弁装置制御手段は、トラクション制御手段に含まれるものとしても、別個のものとしてもよい。別個のものである場合には、弁装置は、トラクション制御手段によっても吐出圧低減用弁装置制御手段によっても制御されることになる。吐出圧低減弁装置には、例えば、後述する態様5のリリーフ弁バイパス制御弁等が含まれ、吐出圧低減弁装置制御手段には、リリーフ弁バイパス制御弁制御手段等が含まれる。
(3)前記低圧源がマスタシリンダに作動液を補給するマスタリサーバを含み、当該ブレーキ制御装置が、前記マスタシリンダに液圧が発生した状態において、弁装置を少なくとも増圧状態と減圧状態とに切り換えることによってホイールシリンダの液圧を、制動スリップ状態が適正状態になるように制御するアンチスキッド制御手段を含む請求項1〜8,態様1,2のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。本ブレーキ制御装置は、少なくともトラクション制御が可能であれば、アンチスキッド制御が可能なものであっても、それに以外の液圧制御が可能なものであってもよい。また、態様1の吐出圧低減用弁装置制御手段は、アンチスキッド制御手段に含まれる手段であってもよい。アンチスキッド制御中においてもポンプの吐出圧を低減させる必要がある場合があるからである。
(4)当該ブレーキ制御装置が、前記ポンプの吐出口と低圧源とを接続するリリーフ通路の途中に設けられたリリーフ弁を含み、前記吐出圧低減装置が、前記作動液を前記リリーフ弁をバイパスして前記低圧源または前記ポンプの吸入口に戻すリリーフ弁バイパス装置を含む請求項1〜9,態様1〜3のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。ホイールシリンダの最大液圧を規定したり、ポンプの吐出圧が最大許容液圧を越えることを回避したりするために、ポンプの吐出口と低圧源との間にリリーフ弁が設けられる。しかし、ポンプによって吐出された作動液が余分になった場合には、リリーフ弁を経て低圧源に戻さなければならず、ポンプの吐出圧がリリーフ圧まで高くなる。それに対して、ポンプによって吐出される作動液が、リリーフ弁をバイパスしてリザーバやポンプの吸入口に戻されるようにすれば、ポンプの吐出圧はリリーフ圧より低くて済み、モータにおいて消費される無駄なエネルギ量を少なくすることができる。請求項2〜4のブレーキ制御装置に、リリーフ弁が設けられる場合には、第一制御弁および吐出圧低減用第一制御弁制御手段、ホイールシリンダ圧保持手段、増圧弁,減圧弁および吐出圧低減用増,減圧弁制御手段は、いずれも本態様のリリーフ弁バイパス装置に含まれる。これらの場合には、弁装置の一部が、態様5に記載のリリーフ弁バイパス制御弁を兼ねることになる。
(5)前記低圧源がマスタシリンダに作動液を補給するマスタリザーバを含むとともに、前記リリーフ弁が前記ポンプの吐出口とマスタシリンダとを接続するリリーフ弁通路の途中に設けられたマスタ側リリーフ弁を含み、かつ、前記リリーフ弁バイパス装置が、前記マスタ側リリーフ弁とも前記第一制御弁とも並列に前記ポンプの吐出口とマスタシリンダとを接続するリリーフ弁バイパス通路の途中に設けられて作動液の流通を許容する連通状態と流通を阻止する遮断状態とに切換え可能なリリーフ弁バイパス制御弁と、そのリリーフ弁バイパス制御弁を連通状態に切り換えるリリーフ弁バイパス制御弁制御手段とを含む態様4に記載のブレーキ制御装置。トラクション制御は、通常、ホイールシリンダをマスタシリンダから遮断した状態において行われる。したがって、ポンプによって吐出された作動液が余分になった場合には、リリーフ弁を経てマスタシリンダに戻さなければならず、ポンプの吐出圧がリリーフ圧まで上昇することを避け得なかった。しかし、本態様においては、リリーフ弁バイパス制御弁が連通状態に切り換えられれば、ポンプによって吐出された作動液がリリーフ弁バイパス制御弁を経てマスタシリンダに戻される。そのため、作動液をリリーフ弁を経て戻す必要がなくなり、ポンプの吐出圧が低減させられる。本態様のリリーフ弁バイパス制御弁は、ホイールシリンダの液圧を制御するための弁装置とは別個に設けられるものであり、ポンプの吐出圧を低減させるために設けられるものである。本態様によれば、第二発明におけるように、第一制御弁を連通状態に切り換えなくても、ポンプの吐出圧を低減させることができる。なお、前述のように、本態様のリリーフ弁バイパス制御弁は態様2の吐出圧低減弁装置に含まれ、リリーフ弁バイパス制御弁制御手段は、吐出圧低減弁装置制御手段に含まれる。
(6)前記ホイールシリンダとマスタシリンダとを接続する主液通路とポンプの吐出口とを接続するポンプ通路の途中であって、前記リリーフ通路や前記リリーフ弁バイパス通路への分岐点より主液通路側の部分に、ポンプから主液通路への作動液の流れは許容するが、逆向きの流れは阻止するポンプ通路逆止弁を含む態様5に記載のブレーキ制御装置。ポンプ通路逆止弁が設けられていれば、リリーフ弁バイパス制御弁が連通状態に切り換えられてもホイールシリンダからの作動液の流出はポンプ通路逆止弁により防止され、液圧は低下しない。したがって、リリーフ弁バイパス制御弁をデューティ制御しなくてもホイールシリンダ液圧を保持することができる。第一制御弁をデューティ制御する必要もない。
(7)さらに、前記低圧源が、前記マスタリザーバの他にサブリザーバを含み、前記弁装置が、前記サブリザーバとホイールシリンダとを接続するリザーバ通路の途中に設けられてサブリザーバとホイールシリンダとを連通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに切換え可能な第三制御弁を含み、かつ、前記ホイールシリンダ圧保持手段が、前記第三制御弁が遮断状態にある場合において、前記第一制御弁を連通状態と遮断状態とにデューティ制御することによってホイールシリンダの液圧を保持する第三制御弁遮断状態時ホイールシリンダ圧保持手段を含む請求項3,5〜8のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。トラクション制御は、第一制御弁が遮断状態に保たれたまま行われる。第二制御弁が連通状態に、第三制御弁が遮断状態に切り換えられれば、ホイールシリンダにはポンプによって吐出された作動液が第二制御弁を経て供給され、増圧が行われる。第二制御弁が遮断状態に、第三制御弁が連通状態に切り換えられれば、ホイールシリンダの作動液は第三制御弁を経てサブリザーバに流出させられ、減圧が行われる。第二制御弁,第三制御弁が共に遮断状態に切り換えられれば、ホイールシリンダには作動液が供給されず、かつ、流出させられないため液圧が保持される。しかし、第二制御弁,第三制御弁が共に遮断状態にある場合において第一制御弁が連通状態に切り換えられると、ホイールシリンダの作動液はサブリザーバへ流出させられることはないが、逆止弁,第一制御弁を経てマスタシリンダに戻されてしまう。すなわち、第二,第三制御弁が共に遮断状態にあっても、ポンプの吐出圧を低減させるために第一制御弁が連通状態に切り換えられれば、ホイールシリンダの液圧を保持することができなくなってしまうのである。そこで、第三制御弁が遮断状態にある場合に、第一制御弁が連通状態と遮断状態とにデューティ制御され、ポンプの吐出圧を低減させつつホイールシリンダ液圧を保持することが行われる。請求項3のホイールシリンダ圧保持手段によれば、第三制御弁を、連通状態と遮断状態とに切り換えても差し支えないが、本態様の第三制御弁遮断時ホイールシリンダ圧保持手段においては、第三制御弁がデューティ制御されることは除外される。第一制御弁をデューティ制御することによってホイールシリンダ液圧を保持する場合に、第三制御弁が連通状態に保たれたり、連通状態と遮断状態とにデューティ制御されたりすることは通常行われない。
(8)前記低圧源がマスタシリンダに作動液を補給するマスタリザーバとそのマスタリザーバとは別のサブリザーバとを含み、前記ポンプの吐出口が、マスタシリンダとホイールシリンダとを接続する主液通路の途中に接続され、前記弁装置が、その主液通路の前記ポンプの吐出口の接続部のマスタシリンダ側に設けられ、マスタシリンダとポンプの吐出口とを連通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに切換え可能な第一制御弁と、前記主液通路の途中の前記ポンプの吐出口の接続部よりホイールシリンダ側に設けられ、第一制御弁をホイールシリンダに連通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに切換え可能な第二制御弁と、前記ホイールシリンダと前記サブリザーバとを接続するリザーバ通路の途中に設けられ、ホイールシリンダをサブリザーバに連通させる連通状態とサブリザーバから遮断する遮断状態とに切換え可能な第三制御弁とを含み、前記吐出圧低減装置が、前記第一制御弁が遮断状態にある間の少なくとも一時期において、前記第二制御弁と第三制御弁とを共に連通状態にする吐出圧低減用第二,第三制御弁制御手段を含む請求項1,4〜9,態様1,3,4のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。トラクション制御が行われる場合には、第一制御弁が遮断状態に切り換えられた状態において、第二制御弁,第三制御弁が連通状態,遮断状態に切り換えられる。第二制御弁と第三制御弁とが共に連通状態に切り換えられれば、ポンプによって吐出された作動液が、第二制御弁および第三制御弁を経てポンプへ還流させられるため、ポンプの吐出圧を低減させることができる。第一制御弁が遮断状態に保たれたまま、ポンプの吐出圧を低減させることができるのである。なお、アンチスキッド制御が、第一制御弁が遮断状態に切り換えられた状態において行われる場合において、ポンプによって吐出された作動液が余分になった場合にも、本態様を適用することができる。本態様のブレーキ制御装置と、請求項4のそれとにおいて、請求項4の増圧弁が第二制御弁によって構成され、減圧弁が第一制御弁および第三制御弁によって構成されると考えることも、増圧弁が第一制御弁および第二制御弁によって構成され、減圧弁が第三制御弁によって構成されると考えることもできる。このように、増圧弁が第二制御弁を含み、減圧弁が第三制御弁を含めば、第一制御弁はいずれか一方に含まれても、いずれにも含まれなくてもよい。また、請求項9のホイールシリンダ圧制御弁装置は、本態様の第二制御弁および第三制御弁によって構成されるものであると考えることができる。
(9)前記吐出圧低減用第二,第三制御弁制御手段が、第二制御弁が連通状態にある場合において、第三制御弁を連通状態と遮断状態とにデューティ制御することによってホイールシリンダ液圧を保持するホイールシリンダ圧保持手段を含む態様8に記載のブレーキ制御装置。第一制御弁が遮断状態にあり、第二制御弁が連通状態,第三制御弁が遮断状態にある場合には、ポンプによって吐出された作動液がホイールシリンダに供給されるが流出させられないため増圧が行われる。第二制御弁,第三制御弁が共に連通状態にある場合には、ポンプによって吐出された作動液がサブリザーバに供給されるとともにホイールシリンダの作動液もサブリザーバに流出させられ、減圧が行われる。したがって、第二制御弁が連通状態にある場合において、第三制御弁が連通状態と遮断状態とにデューティ制御されれば、第一制御弁を遮断状態に保ったまま、ポンプの吐出圧を低減させつつホイールシリンダ液圧を保持することができる。
(10)前記吐出圧低減用増,減圧弁制御手段が、増圧弁が供給許容状態にある場合において減圧弁を流出許容状態と流出阻止状態とにデューティ制御することによってホイールシリンダ液圧を保持するホイールシリンダ圧保持手段を含む請求項4〜8,態様3,4のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。増圧弁が供給許容状態、減圧弁が流出阻止状態にある場合には、ポンプによって吐出された作動液がホイールシリンダに供給されるが流出させられないため増圧が行われる。増圧弁が供給許容状態、減圧弁が流出許容状態にある場合には、ホイールシリンダの作動液がポンプによって吐出された作動液とともに低圧源に流出させられ、減圧が行われる。本態様によれば、態様9と同様に、ポンプの吐出圧を低減させつつホイールシリンダ液圧を保持することができる。
(11)前記吐出圧低減装置が、前記ポンプによって吐出された作動液をリリーフ弁をバイパスしてポンプの吸入口に還流させる作動液還流回路を形成する還流回路形成手段を含む請求項1,4〜9,態様3,4のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。リリーフ弁をバイパスして作動液を還流させる作動液還流回路が形成されれば、ポンプによって吐出された作動液をリリーフ弁を経ないでポンプに還流させることができるため、ポンプの吐出圧を低減させることができる。本態様の還流回路形成手段は、リリーフ弁バイパス装置に含まれる。
(12)前記低圧源がマスタシリンダに作動液を補給するマスタリザーバとそのマスタリザーバとは別のサブリザーバとを含み、当該ブレーキ制御装置がそのサブリザーバとマスタシリンダとを接続する副液通路の途中に、マスタシリンダとサブリザーバとを連通させる連通状態と、これらを遮断する遮断状態とに切換え可能なリザーバ連通弁装置を含む請求項1〜8,態様1〜11のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。トラクション制御開始当初においては、ホイールシリンダ液圧は大気圧であり、サブリザーバには作動液が収容されていないことが多い。そのため、トラクション制御開始時や制御中に、ホイールシリンダに供給されるべきサブリザーバの作動液が不足することがある。しかし、本態様においてはリザーバ連通弁装置が連通状態に切り換えられることにより作動液がマスタリザーバから副液通路に供給される。マスタリザーバから供給された作動液は、サブリザーバに供給されても、ポンプによって直接くみ上げられもよい。
(13)前記リザーバ連通弁装置が、副液通路を連通させる連通状態と遮断する遮断状態とに切換え可能な第四制御弁を含み、前記トラクション制御手段が、トラクション制御開始時にその第四制御弁を連通状態に切り換える第四制御弁制御手段を含む請求項9または態様12に記載のブレーキ制御装置。トラクション制御が開始された場合に、第四制御弁が連通状態に切り換えられれば、マスタシリンダから作動液がリザーバ通路に供給されるため、その作動液をホイールシリンダに供給することができ、作動液不足が回避される。また、サブリザーバの作動液が第四制御弁を経てマスタシリンダに戻されることもある。
(14)前記リザーバ連通弁装置が、常には閉状態にあるが、マスタシリンダ液圧とサブリザーバ液圧との差が設定圧以上になると開状態に切り換わる作動液補給リリーフ弁を含む請求項9または態様12に記載のブレーキ制御装置。
(15)前記リザーバ連通装置が、サブリザーバに収容された作動液が設定量以上の場合には閉状態にあるが、設定量より少なくなると開状態に切り換わる収容液量対応開閉弁を含む請求項9または態様12に記載のブレーキ制御装置。サブリザーバに収容された作動液量が設定量より少なくなると、作動液を補給する必要がある。態様14,15における場合には、サブリザーバに収容された作動液が副液通路を経てマスタシリンダに戻されることはない。
(16)前記吐出圧低減装置が、前記ポンプの吸入口と前記低圧源とを接続するポンプ通路の途中に設けられ、ポンプの吸入口と低圧源とを連通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに切換え可能なくみ上げ制御弁と、そのくみ上げ制御弁を遮断状態に切り換えるくみ上げ制御弁制御手段とを含む請求項1,5〜9,態様3,12〜15のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。くみ上げ制御弁が連通状態に切り換えられれば、低圧源の作動液がポンプによってくみ上げられ、ホイールシリンダへ供給可能となる。遮断状態に切り換えられれば、ポンプは空回りすることになり、ホイールシリンダへの作動液の供給が不可能となる。くみ上げ制御弁が遮断状態に切り換えられれば、ポンプによって作動液が吐出されないため、作動液が余分になることはなく、吐出圧が高くなることを回避できる。くみ上げ制御弁は、弁装置の一構成要素とすることも、吐出圧を低減させるために弁装置とは別個に設けることもできる。換言すれば、くみ上げ制御弁は、前記増圧弁や第二制御弁に含まれるようにすることも可能であるが、上記第一〜第三制御弁や減圧弁,増圧弁の他に設けてもよいのである。同様に、くみ上げ制御弁は、請求項9のホイールシリンダ圧制御弁装置に含まれるものとしても、別個のものとしてもよい。くみ上げ制御弁が弁装置に含まれ、くみ上げ制御弁が連通状態に切り換えられることによって弁装置が増圧状態にされ、くみ上げ制御弁の遮断状態への切換えを伴って弁装置が減圧状態に切り換えられる場合には、常に吐出圧が低減させられることになる。吐出圧低減装置が常に作動させられることになるのである。
(17)前記ホイールシリンダ圧保持手段が、前記弁装置が増圧状態に切り換えられた時間の合計である累積増圧時間と減圧状態に切り換えられた時間の合計である累積減圧時間とに基づいて保持液圧を決定する保持液圧決定手段と、その保持液圧決定手段によって決定された保持液圧に基づいてデューティ制御比を決定するデューティ制御比決定手段とを含む請求項3,5〜8,態様3,4,7,9,10,12〜15のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。累積増圧時間と累積減圧時間とに基づいて現在のホイールシリンダ液圧を推定することができ、保持液圧を決定することができる。また、保持液圧が高いほどデューティ制御の増圧時間が長くなる。現在のホイールシリンダ液圧は、圧力センサによって検出されることができるが、本態様におけるように推定すれば、圧力センサが不要になるため、その分コストダウンを図ることができる。
(18)前記トラクション制御関連時間検出手段が、前記トラクション制御手段によるトラクション制御時における前記ポンプの作動時間をトラクション制御関連時間として検出するポンプ作動時間検出手段を含む請求項7〜9,態様1〜17のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。ポンプの作動時間が長いほど作動液の温度が上昇させられる。また、トラクション制御中においてポンプが継続して作動させられる場合には、ポンプの作動時間はトラクション制御継続時間に対応することになる。
(19)前記吐出圧低減装置が、前記弁装置が減圧状態にある時期にポンプの吐出圧を低減させるものである減圧時吐出圧低減装置を含む請求項1〜9,態様1〜18のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。ブレーキ制御装置において、前記ポンプの吐出口と低圧源とがリリーフ弁を介して接続されている場合において、弁装置が減圧状態にある時期には、ポンプによって吐出された作動液をリリーフ弁を経て低圧源に戻さなければならないことが多い。そのため、ポンプの吐出圧がリリーフ圧まで高くなる。それを回避するために、減圧状態にある時期には常にポンプの吐出圧を低減させるのである。弁装置が保持状態にも切換え可能なものである場合には、保持状態にある場合においてもポンプの吐出圧を低減させることも可能であるが、少なくとも減圧状態においては常に吐出圧を低減させることが望ましい。
(20)前記トラクション制御手段が、前記ホイールシリンダの液圧を増圧する増圧モードと、減圧する減圧モードと、保持する保持モードとのうちの1つを選択する制御モード選択手段とを含み、前記吐出圧低減装置が、その制御モード選択手段によって減圧モードと保持モードとの少なくとも一方が選択された場合において、ポンプの吐出圧を低減させる制御モード対応吐出圧低減手段を含む請求項1〜9,態様1〜18のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。本態様においては、ポンプの吐出圧が、弁装置の状態でなく、選択された制御モードに基づいて低減させられる。減圧モードと保持モードとの少なくとも一方が選択される時期が、弁装置が増圧状態にある時期以外の時期に当たる。
(21)前記吐出圧低減装置が、前記マスタカット弁を連通状態に切り換える吐出圧低減用マスタカット弁制御手段を含む請求項9に記載のブレーキ制御装置。
(22)前記ホイールシリンダ圧制御弁装置が、前記ホイールシリンダと主液通路中間部とを接続するバイパス通路に設けられ、ホイールシリンダから主液通路中間部へ向かう方向への作動液の流出を許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁を備え、かつ、前記吐出圧低減装置が、少なくともマスタカット弁を連通状態と遮断状態とにデューティ制御することによってホイールシリンダの液圧を保持するホイールシリンダ圧保持手段を含む請求項9に記載のブレーキ制御装置。請求項9に記載のブレーキ制御装置においては、マスタカット弁を連通状態に切り換えれば、ポンプの吐出圧を低減させることができる。また、マスタカット弁を連通状態と遮断状態とに切り換えれば、ホイールシリンダ圧制御弁装置が逆止弁を含む場合にも、ホイールシリンダ液圧を保持することができる。
(23)当該ブレーキ制御装置が、マスタシリンダと、そのマスタシリンダとホイールシリンダとを接続する主液通路の途中に設けられ、主液通路を連通状態と遮断状態とに切換え可能なマスタカット弁と、そのマスタカット弁をバイパスするバイパス通路の途中に設けられ、マスタシリンダからホイールシリンダへの作動液の流れを許容するが、逆向きの流れを阻止する逆止弁とを含む請求項1〜9,態様1〜22のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。逆止弁を設けることによって、マスタカット弁の大形化を回避したり、マスタカット弁が遮断状態にある場合においてブレーキペダルが踏み込まれた場合のブレーキの効き遅れを抑制したりすることができる。マスタカット弁においては、常には、ソレノイドが消磁状態にあり、図示しない弁子が弁座から離間させられており、主液通路は連通状態にあるが、ソレノイドが励磁されると、弁子が弁座に着座させられ、遮断状態となる。この遮断状態においては、通常、弁子がマスタシリンダ側の液圧により弁座に押し付けられる状態となる。そのため、マスタカット弁の前後(主液通路のマスタカット弁の上流側および下流側)に大きな液圧差が生じると、ソレノイドの消磁により弁子を弁座から離間させるために、弁子を弁座から離間する向きに付勢するスプリングの弾性力を大きくしなければならず、それに応じてソレノイドも大きなものとしなければならなくなって、マスタカット弁が大形化してしまう。それに対して、本態様においては、逆止弁が設けられているため、マスタカット弁が遮断状態にあっても、マスタシリンダの液圧が逆止弁を経てマスタカット弁の下流側にも伝達され、マスタカット弁において大きな液圧差が生じることを回避できるため、マスタカット弁の大形化を回避することができるのである。また、マスタカット弁が遮断状態にある場合にブレーキペダルが踏み込まれた場合には、マスタカット弁の前後において液圧差が大きくなるため、マスタカット弁が連通状態に切り換わり難くなり、ブレーキの効き遅れが生じる。それに対して、本態様によれば、マスタシリンダの液圧が逆止弁を経てマスタカット弁の下流側にも伝達されるため、大きな液圧差が生じることが回避され、連通状態に切り換わり難くなることが回避される。したがって、ブレーキの効き遅れが生じることを回避することができるのである。
【0049】
【発明の実施の形態】以下、第一ないし第三発明,第五ないし第九発明に共通の一実施形態であるブレーキ制御装置を備えたブレーキ装置について図面に基づいて詳細に説明する。図2において、10はマスタシリンダであり、12は駆動輪13に設けられたホイールシリンダであり、14は低圧源としてのサブリザーバである。駆動輪13,ホイールシリンダ12は、左右両方の駆動輪およびそれに設けられたホイールシリンダを代表して表すものである。マスタシリンダ10とホイールシリンダ12とを接続する主液通路16の途中には、第一制御弁としての開閉弁18が設けられている。開閉弁18は、電磁制御弁であり、通常は、図示する主液通路16を連通させる連通状態にあるが、ソレノイド20の励磁によって、遮断状態に切り換えられる。ソレノイド20は、後述する液圧制御装置22の指令に基づいて図示しない駆動回路により制御される。
【0050】また、主液通路16のホイールシリンダ12と開閉弁18との間には、第二制御弁としての開閉弁24が設けられ、開閉弁24をバイパスするバイパス通路25の途中には、逆止弁26が設けられている。バイパス通路25は、ホイールシリンダ12と、主液通路16の開閉弁18と開閉弁24との間の主液通路中間部28とを接続している。逆止弁26は、ホイールシリンダ12から主液通路中間部28への作動液の流れを許容するが、逆方向の流れを阻止するものである。逆止弁26は、制動終了時やトラクション制御終了時に、ホイールシリンダ12の作動液を早急にマスタシリンダ10に戻すために設けられたものである。また、アンチスキッド制御中にブレーキペダル29の踏込みが解除された場合にホイールシリンダ12の作動液をマスタシリンダ10に戻す機能も有している。また、ホイールシリンダ12とサブリザーバ14とを接続するリザーバ通路30の途中には、第三制御弁としての開閉弁32が設けられている。
【0051】開閉弁24は、常には、図示する連通状態にあるが、ソレノイド36が励磁されると遮断状態に切り換えられる。開閉弁32は、常には、図示する遮断状態にあるが、ソレノイド38が励磁されると連通状態に切り換えられる。弁装置34は、通常は、ホイールシリンダ12に作動液が流入することを許容する増圧状態にあるが、アンチスキッド制御やトラクション制御が行われる場合には、ソレノイド20,36,38が図示しない駆動回路により液圧制御装置22の指令に基づいて制御され、減圧状態,保持状態に適宜切り換えられる。本実施形態においては、開閉弁18,24,32および逆止弁26等によってホイールシリンダ12の液圧を制御する弁装置34が構成されているのである。
【0052】また、開閉弁18等によってマスタカット弁が構成され、開閉弁24,32および逆止弁26等によってホイールシリンダ圧制御弁装置が構成される。したがって、ホイールシリンダ圧制御弁装置は、開閉弁24が連通状態に、開閉弁32が遮断状態に切り換えられることによって増圧位置に、開閉弁24が遮断状態に、開閉弁32が連通状態に切り換えられることによって減圧位置に、開閉弁24,32が共に遮断状態に切り換えられることによって保持位置にそれぞれ切り換えられる。そして、アンチスキッド制御時には、増圧位置にある場合には増圧状態に、減圧位置にある場合には減圧状態に、保持位置にある場合には保持状態にある。しかし、後述するように、トラクション制御時には、これら増圧位置,減圧位置,保持位置が増圧状態,減圧状態,保持状態に対応しない場合がある。例えば、ホイールシリンダ圧制御弁装置が増圧位置にあるが、開閉弁18が連通状態に切り換えられると、逆止弁26によりホイールシリンダ12の作動液の流出を許容する減圧状態(作動液流出状態)になる。
【0053】また、マスタシリンダ10とサブリザーバ14とを接続する副液通路40の途中には、リザーバ連通弁装置としての開閉弁42が設けられている。開閉弁42は、通常は、遮断状態にあるが、トラクション制御が開始されるとソレノイド44が励磁されて連通状態に切り換えられる。サブリザーバ14と主液通路中間部28とを接続するポンプ通路46の途中には、逆止弁48,50,ポンプ52,逆止弁54が設けられている。主液通路中間部28にはポンプ52の吐出口が接続されるため、以下、吐出口接続部28と称する。ポンプ52にはモータ56が接続され、モータ56の駆動により作動させられる。モータ56は、図示しない駆動回路を介して液圧制御装置22に接続されている。逆止弁48は、所定の小さな開弁圧を有したものであり、後述するトラクション制御終了後にモータ56が完全に停止するまでの間、ポンプ52がホイールシリンダ12から作動液を吸引してしまい、ホイールシリンダ圧が負圧になるのを防止するために設けられたものである。
【0054】吐出口接続部28とマスタシリンダ10とを接続するリリーフ通路60の途中には、マスタ側リリーフ弁62が設けられている。マスタ側リリーフ弁62は、トラクション制御時に吐出口接続部28の最大液圧を規定するものであり、吐出口接続部28の液圧がリリーフ圧より高くなる場合には、作動液がマスタ側リリーフ弁62を経てマスタシリンダ10に戻される。トラクション制御時にはホイールシリンダ12に供給される作動液の液圧がリリーフ圧より高くなる必要がないからである。このように、トラクション制御中には、マスタシリンダ10の液圧はホイールシリンダ12の液圧より低いためマスタシリンダ10を低圧源とみなすことができる。それに対して、マスタシリンダ10に作動液を補給するマスタリザーバ64は、トラクション制御中に限らず、常に、低圧源とみなすことができる。したがって、本実施形態においては、請求項1にいう低圧源には、前記サブリザーバ14およびマスタリザーバ64が含まれ、弁装置34が減圧状態にある場合には、ホイールシリンダ12の作動液がサブリザーバ14に流出させられる場合とマスタリザーバ64に流出させられる場合とがある。それに対して、請求項9にいう低圧源はサブリザーバ14に対応するものであり、マスタシリンダは、マスタシリンダ10とマスタリザーバ64とを含むものである。
【0055】マスタシリンダ10と従動輪70のホイールシリンダ72とを接続する主液通路76の途中にも同様に、開閉弁78が設けられ、それのソレノイド80が、液圧制御装置22の指令に基づいて図示しない駆動回路により制御される。ここで、従動輪70は、左右両従動輪を代表して表すものであり、ホイールシリンダ72は、左右両従動輪のホイールシリンダを代表して表すものである。また、主液通路76のホイールシリンダ72と開閉弁78との間には、開閉弁82が設けられ、開閉弁82をバイパスするバイパス通路84の途中には、逆止弁86が設けられている。また、ホイールシリンダ72とサブリザーバ14とを接続する液通路90の途中には、開閉弁92が設けられている。これら開閉弁82,92のそれぞれのソレノイド96,98は液圧制御装置22の指令に基づいて図示しない駆動回路により制御される。
【0056】また、サブリザーバ14から延び出させられたポンプ通路100の途中には、逆止弁102,ポンプ104,逆止弁106が設けられており、ポンプ104にはモータ108が接続されている。ポンプ通路100は、主液通路76の吐出口接続部110に接続されている。従動輪70のホイールシリンダ72の液圧については、トラクション制御が行われないため、駆動輪13のホイールシリンダ12の液圧の制御には必要であったマスタ側リリーフ弁62や開閉弁42等は不要である。
【0057】本実施形態の液圧制御装置22は、アンチスキッド制御コンピュータ122,トラクション制御コンピュータ124,ソレノイド・モータ制御コンピュータ126,スリップ率等演算コンピュータ128等複数個のコンピュータを備えたものである。スリップ率等演算コンピュータ128の図示しない入力部には、各車輪の車輪速センサ130,132,車体速センサ134等が接続され、そのROMには、スリップ率演算プログラム,車体速度演算プログラム,車体加速度演算プログラム等が記憶されている。スリップ率等演算コンピュータ128によって求められたスリップ率,車体速度,車体加速度等は、それの出力部に接続されたアンチスキッド制御コンピュータ122やトラクション制御コンピュータ124等に供給される。
【0058】アンチスキッド制御コンピュータ122の入力部には、スリップ率等演算コンピュータ128の他に、ブレーキスイッチ136等が接続されるとともに、出力部には、ソレノイド・モータ制御コンピュータ126が接続されている。ROMには、図示しないフローチャートで表されるアンチスキッド制御モード決定プログラム等が記憶されている。
【0059】トラクション制御コンピュータ124の入力部には、前述のスリップ率等演算コンピュータ128の他に、アクセルスイッチ138,温度センサ140等が接続され、出力部には、ソレノイド・モータ制御コンピュータ126が接続されている。また、ROMには、図7のフローチャートが示すトラクション制御モード決定プログラムの他、図9のグラフが示すデューティ制御比決定テーブル等が記憶されている。トラクション制御モードやアンチスキッド制御モードは、スリップ率,車体速度,車体加速度等に基づいて決定されるようになっている。
【0060】ソレノイド・モータ制御コンピュータ126は、アンチスキッド制御コンピュータ122,トラクション制御コンピュータ124によって決定された制御モードに基づいて各ソレノイドおよびモータを制御するものである。出力部には、各開閉弁18,24,32,42のソレノイド20,36,38,44および開閉弁78,82,92のソレノイド80,96,98,ポンプ52,104を駆動するモータ56,108等が図示しない駆動回路を介して接続され、ROMには図8のフローチャートが示すソレノイド制御プログラムや、図11ないし図13のテーブルが示す制御モード対応ソレノイド制御テーブルや、図示しないモータ制御プログラムが記憶されている。
【0061】車輪速センサ130,132は、車輪の回転速度を検出するセンサであり、車体速センサ134はドップラ式対地車速センサであり、このセンサの出力信号に基づいて車体速度演算プログラムが実行され、車体速度が検出される。なお、車体速度演算プログラムを車輪の回転速度から車体速度を推定するものとすることも可能である。ブレーキスイッチ136は、ブレーキペダル29が踏み込まれたことを検出するセンサであり、アクセルスイッチ138は、図示しないアクセルペダルが踏み込まれたことを検出するセンサである。温度センサ140は、トラクション制御アクチュエータの一構成要素であるポンプ52の吐出口周辺に取り付けられたもので、ポンプ通路46内の作動液の温度を検出する作動液温検出装置である。
【0062】以上のように構成されたブレーキ装置の作動を説明する。通常は、駆動輪13側の開閉弁18,24,32,42および従動輪70側の開閉弁78,82,92は図示する原位置にある。ブレーキペダル29が踏み込まれると、マスタシリンダ10の作動液が、開閉弁18,開閉弁24を経てホイールシリンダ12に供給されるとともに、開閉弁78,開閉弁82を経てホイールシリンダ72に供給され、車輪13,70の回転が抑制される。ブレーキペダル29が緩められると、ホイールシリンダ12の作動液は、開閉弁24,18を経てマスタシリンダ10に戻されるものも、逆止弁26,開閉弁18を経てマスタシリンダ10に戻されるものもある。また、同様に、ホイールシリンダ72の作動液は、開閉弁82,78を経て、あるいは、逆止弁86,開閉弁78を経てマスタシリンダ10に戻される。
【0063】ブレーキペダル29が踏み込まれた状態において、少なくとも一輪のスリップが過大傾向になる等アンチスキッド制御開始条件が満たされると、アンチスキッド制御が開始される。アンチスキッド制御は、駆動輪13についても、従動輪70についても同様にそれぞれ独立に行われるのであるが、ここでは駆動輪13の制動スリップが過大となってアンチスキッド制御が開始される場合について代表的に説明する。
【0064】アンチスキッド制御コンピュータ122によって、制御モードが決定される一方、その制御モードに応じて、ソレノイド・モータ制御コンピュータ126によって、各ソレノイドやモータ等が制御される。アンチスキッド制御モード決定プログラムは5ms毎に実行されるが、ソレノイド制御プログラムはそれより短いサイクルタイム、例えば1ms毎に実行される。図8のフローチャートのステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様)において、制御モードが読み取られ、S2において、その制御モードが後述する吐出圧低減保持モード(トラクション制御時に設定される)か否かが判定される。アンチスキッド制御中においては読み取られた制御モードが吐出圧低減保持モードであることはないため、判定がNOとなり、S3において、読み取られた制御モードに応じて各ソレノイドが制御される。各ソレノイドは図11に示す制御モード対応ソレノイド制御テーブルに基づいて制御される。モータ56は、図示を省略するモータ制御プログラムの実行によって、最初に減圧モードまたは保持モードが設定されてアンチスキッド制御が開始されたときに起動され、アンチスキッド制御の終了後設定時間が経過したとき停止させられる。サブリザーバ14に収容された作動液をマスタシリンダ10にすべて戻すためである。
【0065】アンチスキッド制御が行われる場合には、ソレノイド20,44は励磁されず、開閉弁18が連通状態に、開閉弁42が遮断状態に保たれる。減圧モードが設定された場合には、ソレノイド36,38が励磁され、開閉弁24が遮断状態,開閉弁32が連通状態にされる。弁装置34が減圧状態にされ、ホイールシリンダ12の作動液が、開閉弁32を経てサブリザーバ14に流出させられ、ホイールシリンダ圧が減圧される。増圧モードが設定された場合には、ソレノイド36,38は励磁されず、開閉弁24が連通状態,開閉弁32が遮断状態にされる。弁装置34が増圧状態にされる。マスタシリンダ10の作動液が開閉弁18,24を経てホイールシリンダ12に流入させられ、ホイールシリンダ圧が高められる。保持モードが設定された場合には、ソレノイド36が励磁され、ソレノイド38は励磁されない。開閉弁24,32が共に遮断状態にされ、弁装置34が保持状態にされる。ホイールシリンダ12における作動液の流入,流出が阻止され、ホイールシリンダ圧が保持される。
【0066】なお、アンチスキッド制御中モータ56は連続して駆動されるため、サブリザーバ14に供給された作動液は、ポンプ52によって汲み上げられる。その汲み上げられた作動液は、弁装置34が増圧状態にある場合にはホイールシリンダ12に供給され、残ればマスタシリンダ10に戻される。弁装置34が減圧状態あるいは保持状態にある場合には、作動液はホイールシリンダ12には供給されず、マスタシリンダ10に戻される。
【0067】次にトラクション制御を説明する。アクセルペダルが踏み込まれ、駆動輪のうち少なくとも一輪の駆動スリップが過大傾向になる等トラクション制御開始条件が満たされると、トラクション制御が開始される。本実施形態においては、トラクション制御は、通常トラクション制御と、吐出圧低減トラクション制御とが選択的に行われるようになっている。吐出圧低減トラクション制御は、後述するように予め定められた条件が満たされた場合に許可され、満たされない場合には禁止されて、通常トラクション制御が行われる。
【0068】まず、通常トラクション制御について説明する。これは、一般的に知られたトラクション制御と同様である。トラクション制御コンピュータ124によって制御モードが決定されると、前述と同様に、図8に示すフローチャートに基づいて、制御モードが読み取られ、各ソレノイドが図12のテーブルに基づいて制御される。図12から明らかなように、通常トラクション制御中には、ソレノイド20,44が励磁されて開閉弁18が遮断状態に、開閉弁42が連通状態に保たれる。なお、モータ56は、図示しないモータ制御プログラムの実行によって、最初の増圧モードの設定に応じて起動され、トラクション制御の解除後設定時間の経過後に停止させられる。アンチスキッド制御時と同様に、サブリザーバ14に収容された作動液をマスタシリンダ10に戻すためである。
【0069】通常増圧モードが設定された場合には各開閉弁が図3に示す位置にされる。ソレノイド36,38は励磁されず、開閉弁24が連通状態に,開閉弁32が遮断状態にされて、弁装置34は増圧状態にされる。マスタシリンダ10の作動液がポンプ52によって開閉弁42を経て汲み上げられて、ポンプ通路46,吐出口接続部28,開閉弁24を経てホイールシリンダ12に供給される。ホイールシリンダ圧制御弁装置は増圧位置にされ、かつ、増圧状態にされる。
【0070】通常増圧モードが設定された場合には、ポンプ52は、流路抵抗等を考慮してもホイールシリンダ12の液圧よりやや高い吐出圧で作動液を吐出すればよい。そして、本実施形態においては、開閉弁24を通過し得る作動液の流量がポンプ52の吐出容量より大きくされ、かつ、マスタ側リリーフ弁62のリリーフ圧がホイールシリンダ12に供給されるべき作動液の最大液圧より十分高くされているため、ポンプ52の吐出圧がリリーフ圧より高くなることはなく、ポンプ52から吐出された作動液のほぼ全量がホイールシリンダ12に流入する。
【0071】なお、リリーフ圧がホイールシリンダ12に供給されるべき作動液の最大液圧に等しいかそれに近い大きさに設定された場合は、増圧モードにおいてもポンプ52の吐出圧がリリーフ圧より高くなることがある。ホイールシリンダ12の液圧をリリーフ圧近くに制御する必要が生じた場合には、ポンプ52の吐出口とホイールシリンダ12との間の液圧差が小さくなるため、ホーイルシリンダ12への作動液の流入量が減少し、ポンプ52の吐出容量より小さくなることがあり、開閉弁24が連通状態にあっても、ポンプ56の吐出圧がリリーフ圧に達し、ポンプ52から吐出された作動液の一部がマスタ側リリーフ弁62を経てマスタシリンダ10に戻されることがあるのである。また、ポンプ52の吐出容量が開閉弁24を通過可能な作動液の流量より大きくされている場合には、開閉弁24が連通状態にあっても、ポンプ52から吐出される作動液の全てがホイールシリンダ12に供給されず、一部がマスタ側リリーフ弁62を経てマスタシリンダに戻されることになる。しかし、これらは、リリーフ圧をできる限り低く設定するために、あるいはホイールシリンダ圧の上昇勾配をできる限り大きくするために必要なことであるから、ポンプ52の吐出圧がリリーフ圧より高くなることによって生じるモータ56のエネルギ消費量の増加は無駄なものではない。
【0072】一方、通常減圧モードが設定されると、図4に示すように、開閉弁24が遮断状態、開閉弁32が連通状態にされ、弁装置34は減圧状態にされる。ホイールシリンダ12の作動液は、開閉弁32を経てサブリザーバ14に流出させられ、サブリザーバ14に受けられた作動液は、ポンプ52により汲み上げられる。この場合には、開閉弁18が遮断状態にあるとともに開閉弁24が遮断状態にあるため、ポンプ52によって吐出された作動液をマスタシリンダ10に戻すには、マスタ側リリーフ弁62を経なければならずポンプ52の吐出圧がリリーフ圧よりやや高くなる。また、サブリザーバ14に受けられた作動液の一部は連通状態にある開閉弁42を経てマスタシリンダ10に戻される。ホイールシリンダ圧制御弁装置は減圧位置にされ、かつ、減圧状態にされる。
【0073】通常保持モードが設定された場合には、図5に示すように、開閉弁24,32が共に遮断状態にされ、弁装置34は保持状態にされる。ホイールシリンダ12における開閉弁24,32を経ての作動液の流入,流出が阻止される。また、ポンプ52は作動状態にあるため、作動液がマスタシリンダ10から汲み上げられ、副液通路40,ポンプ通路46,リリーフ通路60を経てマスタシリンダ10に戻される。作動液が、マスタ側リリーフ弁62を通過することになるため、ポンプ52の吐出圧がリリーフ圧より高くなる。したがって、ホイールシリンダ12の作動液が逆止弁26を経て吐出口接続部28へ流出することもなく、ホイールシリンダ液圧が保持される。ホイールシリンダ圧制御弁装置は保持位置にされ、かつ、保持状態にされる。
【0074】このように、通常トラクション制御中に通常減圧モードあるいは通常保持モードが設定された場合には、作動液をマスタ側リリーフ弁62を経てマスタシリンダ10に戻さなければならないため、ポンプ52はリリーフ圧に抗して作動液を吐出し続けなければならない。モータ56に掛かる負荷が大きくなり、無駄なエネルギが消費されることになる。また、ポンプ52の吐出圧が高い状態が保たれると、作動液の温度上昇が大きくなり、作動液の劣化が促進されるとともに、作動液の溶解していた気体が気泡となるおそれが生じる。それを回避するために、本実施形態においては、作動液の温度上昇関連情報に基づいて、吐出圧低減トラクション制御の実行が許可されるようになっている。
【0075】以下、吐出圧低減トラクション制御について説明する。この場合には、各ソレノイドは図13のテーブルに基づいて制御される。吐出圧低減増圧モードが設定された場合には、通常トラクション制御時の通常増圧モードにおける場合と同様な制御が行われる。開閉弁18が遮断状態にあり、ポンプ52によって加圧されたサブリザーバ14の作動液がホイールシリンダ12に供給され、ホイールシリンダ液圧が高められる。
【0076】吐出圧低減減圧モードが設定された場合には、図1に示すように、開閉弁18が連通状態に切り換えられるとともに、開閉弁24が遮断状態に、開閉弁32が連通状態に切り換えられる。ホイールシリンダ12の作動液は、開閉弁32を経てサブリザーバ14に流出させられ、サブリザーバ14の作動液はポンプ52によって、ポンプ通路46,吐出口接続部28,開閉弁18を経てマスタシリンダ10に戻される。また、開閉弁18が連通状態にあるため、吐出口接続部28の液圧がホイールシリンダ12の液圧より低くなり、ホイールシリンダ12の作動液が、逆止弁26,開閉弁18を経てもマスタシリンダ10に戻される。作動液が、マスタ側リリーフ弁62をバイパスしてマスタシリンダ10に戻されるのである。弁装置34は減圧状態にされ、ホイールシリンダ圧制御弁装置は、減圧位置にされるとともに減圧状態にされ、かつ、作動液流出状態にされる。
【0077】このように、吐出圧低減減圧モードが設定された場合には、開閉弁18が連通状態にされるため、作動液をマスタ側リリーフ弁62を経てマスタシリンダ10側に戻す必要がなくなる。そのため、ポンプ52の吐出圧が低くなり、ポンプ52を駆動するためのモータ56における無駄なエネルギの消費を回避し得、作動液温度の大きな上昇を回避し得る。
【0078】吐出圧低減保持モードが設定された場合には、開閉弁24が連通状態に、開閉弁32が遮断状態に保たれたまま、開閉弁18が連通状態と遮断状態とにデューティ制御される。開閉弁24,32を共に遮断状態に切り換えても、開閉弁18を連通状態にすれば、吐出口接続部28の液圧がホイールシリンダ12の液圧より低くなるため、ホイールシリンダ12の作動液が逆止弁26を経て吐出口接続部28に流出してしまう。つまり、開閉弁18が連通状態にある場合には、逆止弁26により、ホイールシリンダ12の液圧を保持することができないのである。
【0079】そのため、本実施形態においては、デューティ増圧モードとデューティ減圧モードとが交互に設定され、図3に示す増圧状態と、図6に示す減圧状態とに、後述の方法で決定されたデューティ制御比で切り換られることになる。デューティ増圧モードが設定された場合における弁装置34の状態は、通常増圧モードが設定された場合におけるそれと同じである。ホイールシリンダ12には、ポンプ52によって吐出された作動液が供給され、液圧が増圧される。デューティ減圧モードが設定された場合には、開閉弁24が連通状態,開閉弁32が遮断状態に保たれたまま、開閉弁18が連通状態に切り換えられる。ホイールシリンダ12の作動液は、逆止弁26,開閉弁18を経てマスタシリンダ10に戻されるものも、開閉弁24,18を経てマスタシリンダ10に戻されるものもあり、液圧は減圧される。このように、本実施形態においては、開閉弁24が連通状態に、開閉弁32が遮断状態に保たれたまま開閉弁18が連通状態と遮断状態とにデューティ制御されることによって、ホイールシリンダ12の液圧が保持されるのである。また、弁装置34は増圧状態と減圧状態とに交互に切り換えられ、ホイールシリンダ圧制御弁装置は、増圧状態と作動液流出状態とに交互に切り換えられることになる。
【0080】また、開閉弁18が連通状態と遮断状態とにデューティ制御されれば、ポンプ52の吐出圧が低くなる。デューティ増圧モードが設定され、弁装置34が図3に示す増圧状態にされた場合には、ホイールシリンダ12に供給される作動液の液圧は、前述のようにリリーフ圧より低いため、ポンプ52の吐出圧がリリーフ圧より高くなることはない。また、デューティ減圧モードが設定され、弁装置34が図6に示す減圧状態にされた場合には、開閉弁18が連通状態にされているため、ポンプ52の吐出圧がリリーフ圧より高くなることは勿論ない。要するに、ポンプ52はホイールシリンダ圧とほぼ等しい吐出圧で作動液を吐出すればよいことになるのである。また、開閉弁18を連通状態と遮断状態とにデューティ制御すれば、ホイールシリンダ12の液圧を保持することができるため、開閉弁24,32を切り換える必要はない。
【0081】次にデューティ制御比の決定について説明する。デューティ制御比は、その時点のホイールシリンダ12の推定液圧に基づいて決定される。本実施形態においては、ホイールシリンダ12の液圧を検出する圧力センサが設けられていないため、ホイールシリンダ12の液圧が、累積増圧時間と累積減圧時間とに基づいて推定される。累積増圧時間は、トラクション制御が開始されてから通常増圧モードと吐出圧低減増圧モードとのいずれか一方が設定された場合の累積時間であり、累積減圧時間は、通常減圧モードと吐出圧低減減圧モードとのいずれか一方が設定された場合の累積時間である。換言すれば、累積増圧時間は、通常増圧モードが設定された場合の累積通常増圧時間と、吐出圧低減増圧モードが設定された場合の累積吐出圧低減増圧時間との和の時間であり、同様に、累積減圧時間は、累積通常減圧時間と累積吐出圧低減減圧時間との和の時間である。
【0082】トラクション制御中においては、増圧勾配と減圧勾配とがほぼ等しいと仮定すれば、累積増圧時間と累積減圧時間とが等しい場合には、ホイールシリンダ12の液圧は制御以前の大気圧であると推定することができる。また、簡単のため、本実施形態においては、通常減圧モードが設定された場合においても、吐出圧低減減圧モードが設定された場合においても、それぞれ減圧勾配は同じであると仮定する。なお、上記仮定が成立しない場合には、累積増圧時間と累積減圧時間とに増圧勾配と減圧勾配との比に応じた係数を掛けてそれらの差を求めればよい。また、通常減圧モードの実行時と吐出圧低減減圧モードの実行時とで減圧勾配が異なる場合も、それら減圧勾配の比に応じた係数を各減圧時間に掛けてそれらの和を求めればよい。
【0083】累積増圧時間から累積減圧時間を引いた時間が実質的にホイールシリンダ12を増圧した増圧制御時間であり、上記仮定が成立する限り、増圧制御時間が長いほど、ホイールシリンダ12の液圧が高いと推定することができる。この増圧制御時間とホイールシリンダ12の液圧との関係を表す図示しないテーブルが、トラクション制御コンピュータ124のROMに記憶されている。この推定されたホイールシリンダ12の液圧を以下推定液圧と称する。
【0084】本実施形態においては、この推定液圧からデューティ減圧時間Tg が、図9に示すグラフに基づいて決定される。図9のグラフから推定液圧が高いほどデューティ減圧時間Tg が短いことがわかる。単位時間にホイールシリンダ12から流出する作動液の量は、推定液圧が高いほど多いため、デューティ減圧時間Tg が短くされるのである。また、デューティ増圧時間Ti は、本実施形態においては、吐出圧低減保持モードが設定された場合の制御周期が50msであるため、50msからデューティ減圧時間Tg (ms)を引くことによって(50−Tg )求められる。このようにデューティ制御比が決定されれば、図10に示すように、ホイールシリンダ12における作動液の流入量と流出量とがほぼ同じになり、その時点におけるホイールシリンダ圧を保つことができる。
【0085】通常トラクション制御から吐出圧低減トラクション制御への切換えは、前述のように、作動液の温度上昇関連情報に基づいて行われる。温度上昇関連情報は、作動液の温度上昇に関連する情報であり、実際の作動液の温度を表す情報や、作動液の温度を推定し得る情報や、近い将来、作動液の温度が上昇する可能性が高いことを表す情報等である。これら情報のうちいずれか1つが、実際の温度が設定温度以上であること、作動液の温度が設定温度以上であることを推定し得ること、近い将来、温度が設定温度以上になる可能性が高い状態にあることの条件を満たせば、吐出圧低減トラクション制御の実行が許可され、満たさなければ禁止される。
【0086】なお、トラクション制御時には、常に吐出圧低減トラクション制御が許可され、通常トラクション制御が実行されないようにすれば、作動液の温度が上昇することを良好に回避し得るが、その場合には、上述のように、保持モードが設定された場合に常にデューティ制御を行わなければならず、液圧制御精度が低下するおそれがある。それを回避するために、本実施形態においては、作動液の温度上昇関連情報に基づいて吐出圧低減トラクション制御の実行が許可されたり、禁止されたりするようにされているのである。
【0087】具体的には、温度センサ140の検出値が設定値(本実施形態においては70℃)以上になれば、吐出圧低減トラクション制御の実行が許可される。作動液の温度が高くなると、作動液への気体の溶解度が低下し、それまで溶解していた気体が気泡となるおそれがあるからである。
【0088】通常トラクション制御中の累積通常減圧時間と累積通常保持時間とを合わせた時間が設定時間(本実施形態においては10秒)以上になると、作動液の温度が設定温度以上になったと推定され、吐出圧低減トラクション制御の実行が許可される。前述のように、通常減圧モードが設定された場合や通常保持モードが設定された場合には、作動液がマスタ側リリーフ弁62を経てマスタシリンダ10に戻されるため、ポンプ52の吐出圧がリリーフ圧より高く、作動液の温度上昇が大きくなる。それに対して、通常増圧モードが設定された場合には、ポンプ52の吐出圧をリリーフ圧より高くする必要がないため、通常減圧モードや通常保持モードが設定された場合より、作動液の温度上昇が小さい。したがって、減圧累積時間と保持累積時間との和の時間が長くなるのに伴って作動液の温度が高くなると推定されるようになっているのである。
【0089】また、車両がスタック状態になると、作動液の温度が近い将来設定温度以上になる可能性が高い状態にあると推定され、吐出圧低減トラクション制御の実行が許可される。スタック状態は、例えば、駆動輪13の片輪あるいは両輪がぬかるみに入る等の原因により少なくも1輪が空転し車両が発車できない状態(車体速度が非常に遅い状態)が設定時間以上継続している状態である。そこで、駆動輪13の少なくとも片輪がトラクション制御中となり、かつ、車体速度が4km/h(1.1m/s)以下の状態が設定時間(本実施形態においては5秒)以上継続した場合には、車両がスタック状態になったと判定される。
【0090】この状態においては、その空転している車輪の駆動スリップが過大になるため、トラクション制御が開始されるのであるが、実際には、車両がこのスタック状態から脱出するためには、むしろ大きな駆動トルクを供給する方がよいことが多い。そのため、この状態において、トラクション制御が開始されて駆動トルクが抑制されると、一層脱出し難くなり、トラクション制御時間が長引くおそれがあるのである。したがって、車両がスタック状態になると、トラクション制御が長くなり(累積減圧時間や累積保持時間が長くなり)、作動液の温度が設定温度以上になる可能性が高い状態にあると推定することができる。
【0091】以下、トラクション制御の実際について、図7のフローチャートに基づいて説明する。トラクション制御モード決定プログラムは本実施形態においては1ms毎に実行される。S9において、トラクション制御フラグがセットされているか否かが判定される。トラクション制御フラグはトラクション制御が開始されるとセットされ、終了するとリセットされるフラグである。最初にS9が実行される場合には、フラグはリセットされているため、判定はNOとなり、S10において、カウンタ1〜5のカウント値が0にされる。カウンタ1は、前述の累積通常増圧時間と累積吐出圧低減増圧時間とを合わせた累積増圧時間を計測するカウンタであり、カウンタ2は、累積通常減圧時間を計測するカウンタで、カウンタ3は累積通常保持時間を計測するそれである。また、カウンタ4は、累積吐出圧低減減圧時間を計測するカウンタであり、カウンタ5は、吐出圧低減保持モードが設定された場合の経過時間を計測するそれである。
【0092】S11において、トラクション開始条件が満たされたか否かが判定される。アクセルペダルが踏み込まれた状態において、駆動輪13の駆動スリップが過大傾向になる等トラクション開始条件が満たされた場合には、判定がYESとなり、S12以降が実行されるが、開始条件が満たされない場合には、判定がNOとなり、S9の実行に戻され、開始条件が満たされるまで、S9〜11の実行が繰り返し行われる。
【0093】開始条件が満たされた場合には、S12において、トラクション制御フラグがセットされた後、S13において、終了条件が満たされるか否かが判定される。最初にS13が実行される場合には、終了条件が満たされることがないため、判定がNOとなり、S14以降が実行されるが、トラクション制御中にアクセルペダルの踏込みが解除される等トラクション制御終了条件が満たされれば、判定がYESとなり、S25,26においてトラクション制御フラグがリセットされ、終了モードが設定され、S9に戻される。
【0094】S14ないしS16において、作動液の温度上昇関連情報に基づいて、吐出圧低減トラクション制御の実行が許可されるか禁止されるかが決定される。S14ないしS16において、すべてのステップにおける判定がNOであり、温度情報関連情報に基づいてポンプ52の吐出圧を低減させる必要がないと判定された場合には、S17以降において、通常トラクション制御が行われる。吐出圧低減トラクション制御の実行が禁止されるのである。S14ないしS16において、いずれか1つのステップにおける判定がYESであり、ポンプ52の吐出圧を低減させる必要があると判定された場合には、吐出圧低減トラクション制御の実行が許可され、S27以降が実行される。
【0095】通常トラクション制御が行われる場合には、S17において、増圧条件が満たされるか否かが判定され、満たされる場合には、判定がYESとなり、S18,19において、通常増圧モードが設定され、カウンタ1のカウント値が1増加させられる。
【0096】一方、増圧条件が満たされない場合には、S17における判定がNOとなり、S20において減圧条件が満たされるか否かが判定される。減圧条件が満たされ、YESと判定されれば、S21,22において通常減圧モードが設定され、カウンタ2のカウント値が1増加させられる。増圧条件も減圧条件も満たされない場合には、S23,24において通常保持モードが設定され、カウンタ3のカウント値が1増加させられる。
【0097】通常トラクション制御中において、車両がスタック状態にあることが検出された場合、カウンタ2のカウント値に相当する累積通常減圧時間とカウンタ3のカウント値に相当する累積通常保持時間との和の時間が、設定時間以上になった場合、温度センサ140の検出値が設定値以上になった場合のいずれか1つの条件が満たされた場合には、S14ないしS16における判定のいずれか1つがYESとなり、吐出圧低減トラクション制御の実行が許可される。
【0098】通常トラクション制御が行われる場合と同様に、増圧条件が満たされた場合には、S28において吐出圧低減増圧モードが設定され、減圧条件が満たされた場合には、S31において吐出圧低減減圧モードが設定される。また、吐出圧低減増圧モードが設定された場合、および吐出圧低減減圧モードが設定された場合には、それぞれS29およびS32において、カウンタ1,4のカウント値が1増加させられる。いずれの条件も満たされない場合には、S33において吐出圧低減保持モードが設定される。吐出圧低減保持モードが設定された場合には、前述のように、デューティ制御比が決定される。この場合には、カウンタ1のカウント値に相当する時間が累積増圧時間であり、カウンタ2のカウント値に相当する累積通常減圧時間とカウンタ4のカウント値に相当する累積吐出圧低減減圧時間との和が累積減圧時間である。したがって、累積増圧時間から累積減圧時間を引いた時間が増圧制御時間となり、その増圧制御時間に基づいて推定液圧が求められる。この推定液圧に基づいてデューティ減圧時間Tg が図9に示すグラフに基づいて決定され、デューティ制御比が決定されるのである。
【0099】吐出圧低減保持モードが設定されれば、図8のS2における判定がYESとなり、S41以降が実行される。吐出圧低減保持モードが設定された場合には、前述のように、デューティ増圧モードがデューティ増圧時間Ti の間設定され、その後,50ms経過するまでデューティ減圧モードが設定され、S3において、それに応じた制御が行われるのである。S41において、カウンタ5のカウント値がデューティ増圧時間Ti に相当する時間になったか否かが判定される。最初にS41が実行される場合には、カウンタ5のカウント値は0であるため、判定はNOとなる。S42,43において、デューティ増圧モードが設定され、カウンタ5のカウント値が1増加させられ、S3において、デューティ増圧モードに応じた制御が行われる。図3に示す増圧状態になるように各ソレノイドが制御されるのである。なお、本実施形態においては、ソレノイド制御プログラムが1ms毎に行われるため、カウンタ5のカウント値はそのまま時間(ms) に対応することになる。
【0100】次に、ソレノイド制御プログラムが実行される場合に、S1において、読み取られた制御モードが吐出圧低減保持モードである場合には、上述と同様な制御が行われるが、吐出圧低減保持モードが設定されてからデューティ増圧時間Ti 経過すれば、S41における判定がYESとなり、S44において、さらに吐出圧低減保持モードの制御周期である50msが経過したか否かが判定される。つまり、デューティ増圧時間Ti 経過後、デューティ減圧時間Tg が経過したか否かが判定されるのである。
【0101】最初にS44が実行される場合には、デューティ増圧時間経過Ti 直後であるため、判定がNOとなる。S45,46において、デューティ減圧モードが設定され、カウンタ5のカウント値が1増加させられ、そのデューティ減圧モードに応じた制御がS3において行われる。開閉弁18が連通状態に切り換えられ、弁装置34が図6に示す減圧状態にされるのである。
【0102】また、カウンタ5のカウント値に相当する時間が50msを経過した場合には、S44における判定がYESとなる。S47においてカウンタ5のカウント値が0にされ、S42においてデューティ増圧モードが設定され、以下、同様な制御が行われる。本実施形態においては、吐出圧低減保持モードが継続して設定されている間は、デューティ制御比が変わることはない。前述のように、デューティ制御比は、増圧制御時間に基づいて決定されるからである。そのため、保持モードの制御周期である50ms経過後に、未だ、吐出圧低減保持モードが設定されていれば、前回と同様なデューティ比で制御が行われる。
【0103】一方、吐出圧低減トラクション制御の実行中に、S14ないしS16における判定がすべてNOになれば、吐出圧低減トラクション制御の実行が禁止され、通常トラクション制御が実行される。以下、温度上昇関連情報(S14ないしS16における判定結果)に基づいて適宜、吐出圧低減トラクション制御の実行が禁止されたり、許可されたりするのである。
【0104】以上のように、本実施形態のブレーキ装置においては、トラクション制御中において吐出圧低減減圧モードが選択された時期、吐出圧低減保持モードが選択された時期等増圧状態にある時期以外の時期の少なくとも一部において、開閉弁18が連通状態に切り換えられる。そのため、作動液をマスタ側リリーフ弁62を経てマスタシリンダ10に戻す必要がなくなり、ポンプ52の吐出圧を低下させることができる。したがって、ポンプ52を駆動するためのモータ56における無駄なエネルギ消費量を少なくし得、かつ、モータ56に掛かる負荷を小さくしてモータ56の寿命を長くすることができる【0105】また、吐出圧低減保持モードが設定された場合には、開閉弁18が連通状態と遮断状態とにデューティ制御されるため、逆止弁26を設けて制動終了時の作動液のマスタシリンダ10への戻りを早くしながら、ホイールシリンダ12の液圧を保持することができる。さらに、保持モードが設定される場合には、開閉弁24が連通状態に保たれたまま、開閉弁18が連通状態と遮断状態とにデューティ制御されるため、開閉弁24も連通状態と遮断状態とにデューティ制御される場合より制御を容易にし得る。また、ホイールシリンダ12の液圧が、累積減圧時間と累積増圧時間とに基づいて推定されるようになっているため、圧力センサが不要となり、その分コストダウンを図ることができる。
【0106】さらに、ポンプ52の吐出圧を作動液の温度上昇関連情報に基づいて低減させることができる。そのため、常に、吐出圧低減トラクション制御が行われる場合に比較して、液圧制御精度の低下を抑制しつつモータ56におけるエネルギ消費量を少なくすることができる。また、作動液温度の大きな上昇が抑制され、作動液の劣化が抑制されて、作動液の寿命が長くなる。さらに、作動液に溶解していた気体が気泡となることを回避することができるため、制動時にこれが圧縮されることにより生じるブレーキペダル29の操作フィーリングの悪化を防止することができる。
【0107】以上のように、本実施形態においては、開閉弁18,ソレノイド20および液圧制御装置22のソレノイド・モータ制御コンピュータ126の、吐出圧低減減圧モード,吐出圧低減保持モードが設定された場合に、ソレノイド20を励磁して開閉弁18を連通状態に切り換える部分(S1,3を実行する部分)等によって、吐出圧低減装置が構成される。弁装置34の一部である開閉弁18が吐出圧低減装置の構成要素も兼ねているのである。また、開閉弁18が連通状態に切り換えられれば、作動液がマスタ側リリーフ弁62をバイパスしてマスタシリンダ10に戻されるため、この吐出圧低減装置は、特にリリーフ弁バイパス装置の態様を成していることになる。なお、吐出圧低減装置は、開閉弁18が含まれないものとしてもよく、トラクション制御手段に含まれるものとしてもよい。
【0108】さらに、上記吐出圧低減装置のうちの、S1,3を実行する部分等吐出圧低減減圧モードが設定された場合や、吐出圧低減保持モードが設定された場合に、開閉弁18を連通状態に切り換える部分等によって吐出圧低減用第一制御弁制御手段が構成され、吐出圧低減用第一制御弁制御手段のうちの、吐出圧低減保持モードが設定された場合に、開閉弁18を連通状態と遮断状態とにデューティ制御する部分等によってホイールシリンダ圧保持手段が構成される。これら吐出圧低減用第一制御弁制御手段,ホイールシリンダ圧保持手段は、トラクション制御手段に含まれるものとすることも、別個のものとすることもできる。
【0109】また、液圧制御装置22のトラクション制御コンピュータ124のS14ないしS16を実行する部分によって吐出圧低減制御許可禁止手段が構成される。そのうちの、S14の一部を実行する部分によってスタック状態検出手段が構成され、S14における判定がYESとなった場合にS27以降が実行されるようにされている部分によってスタック状態対応許可手段が構成されている。同様に、S15における判定がYESとなった場合にS27以降が実行されるようにされている部分によって制御時間対応許可手段が構成され、S16における判定がYESとなった場合にS27以降が実行されるようにされている部分によって作動液温対応許可手段が構成される。さらに、カウンタ2,3およびトラクション制御コンピュータ124のS22,24を実行する部分等によって制御時間検出手段が構成される。
【0110】なお、本実施形態においては、3つの条件のうちいずれか1つの条件が満たされた場合に吐出圧低減トラクション制御の実行が許可されるようになっていたが、少なくとも2つの条件が満たされた場合に、許可されるようにしてもよい。また、本実施形態における、設定時間や設定温度の値は、一例であり、他の値にしてもよい。さらに、上記実施形態においては、累積通常減圧時間と累積通常保持時間との和の時間が温度上昇関連情報の1つであったが、この和の時間の代わりに、累積通常減圧時間のみ、累積通常保持時間のみ、通常トラクション制御継続時間等を温度上昇関連情報としてもよい。
【0111】また、ホイールシリンダ12の液圧を圧力センサにより直接検出してもよい。その場合には、推定液圧でなく、直接検出された液圧に基づいてデューティ減圧時間Tg が決定されることになり、吐出圧低減保持モードにおける液圧制御精度を向上させることができる。
【0112】さらに、上記実施形態においては、上述の条件が満たされた場合に、吐出圧低減トラクション制御の実行が許可されるようになっていたが、第一ないし第三発明,第九発明においては、トラクション制御が行われる場合には、常に吐出圧低減トラクション制御の実行が許可されるようにしてもよい。この場合には、ポンプ52の吐出圧を常に低減させることができるため、無駄なエネルギ消費を有効に回避することができる。
【0113】また、吐出圧低減減圧モードが設定された場合には、開閉弁32が遮断状態にあってもよい。開閉弁18が連通状態に切り換えられれば、ホイールシリンダ12の作動液は逆止弁26および開閉弁18を経てマスタシリンダ10に流出させられるからである。この実施形態によれば、上記実施形態における場合より、減圧勾配が小さくなる。さらに、図6に示すように、デューティ減圧モードが設定された場合と同様に制御されるようにしてもよい。開閉弁32が遮断状態に、開閉弁24および開閉弁18が連通状態に切り換えられるようにするのである。
【0114】上記各実施形態においては、アンチスキッド制御は開閉弁18が連通状態に保たれたまま行われるようにされていたが、開閉弁18が遮断状態に保たれたまま行われるようにしてもよい。その場合には、アンチスキッド制御中のキックバックを回避することができる。このように開閉弁18が遮断状態に保たれたままアンチスキッド制御が行われる場合には、サブリザーバ14に収容された作動液が設定量以下になるおそれがある。したがって、サブリザーバ14に収容された作動液量を検出し、設定量以下になった場合には、開閉弁42あるいは開閉弁18が連通状態に切り換えられるようにしてもよい。
【0115】前記実施形態においては、ポンプ52の吐出口とマスタシリンダ10との間にマスタ側リリーフ弁62が設けられていたが、図14に示すように、ポンプ52の吐出口とサブリザーバ14とをリリーフ通路230によって接続し、このリリーフ通路230の途中にサブリザーバ側リリーフ弁232を設けてもよい。サブリザーバ側リリーフ弁232の設定圧は、前記マスタ側リリーフ弁60の設定圧と同様に、トラクション制御中の最大液圧とすればよい。ポンプ52の吐出圧がリリーフ圧に達すると、作動液はサブリザーバ側リリーフ弁232を経てサブリザーバ14に戻される。なお、サブリザーバ側リリーフ弁232は、ポンプ52の吐出口と、吸入口とを接続する液通路の途中に設けてもよい。
【0116】また、開閉弁42を電磁弁でなく、マスタシリンダ圧によるパイロット弁にすることも可能である。マスタシリンダ圧が設定圧より高い場合には遮断状態に、設定圧より低い場合には連通状態に切り換えられるようにするのである。このようにすれば、通常制動時やアンチスキッド制御時には、ブレーキペダル29が踏み込まれているためにマスタシリンダ10の液圧が高く、遮断状態に切り換えられる。トラクション制御時には、ブレーキペダル29は踏み込まれていないためにマスタシリンダ10の液圧は高くならず、連通状態に切り換えられる。
【0117】さらに、開閉弁42の代わりに、図15に示すように、副液通路40の途中に作動液補給リリーフ弁242を設けてもよい。作動液補給リリーフ弁242は、マスタリザーバ64の液圧とサブリザーバ14の液圧(ポンプ通路46の吸入側部分の液圧)との差が設定液圧差以上になると、マスタリザーバ64からサブリザーバ14へ向かう向きの作動液の流れを許容するものである。トラクション制御が開始されるとポンプ52が作動状態にされるが、サブリザーバ14には作動液が収容されていない。そのため、サブリザーバ14内が負圧になるとともにポンプ通路46が負圧になる。マスタリザーバ64の液圧とポンプ通路46の液圧との差が設定液圧差以上になり、マスタリザーバ64から作動液がポンプ52によって吸引され、加圧される。また、トラクション制御中においても、これらの液圧の差が設定液圧差以上になれば、マスタリザーバ64から作動液が流出させられるため、トラクション制御中に作動液が不足することが回避される。作動液が強い負圧になることは望ましくないため、作動液補給リリーフ弁242のリリーフ圧は、サブリザーバ14に作動液が残っている限りはマスタリザーバ64から作動液が吸入されない範囲で、できる限り小さく設定されることが望ましい。本実施形態においては、サブリザーバ14に収容された作動液が副液通路40を経てマスタリザーバ64に戻されることはない。
【0118】本実施形態によれば、前記開閉弁42の制御が不要になるため、その分制御を容易にすることができる。アンチスキッド制御中においても、マスタリザーバ64の液圧がサブリザーバ14の液圧より設定液圧差以上高くなれば、マスタリザーバ64から作動液が吸引されることになる。
【0119】また、開閉弁42およびサブリザーバ14の代わりに、図16に示すように、収容液量対応開閉弁としての流入制御弁250を備えたリザーバ252を設けてもよい。リザーバ252は、リザーバ室260,リザーバピストン262,スプリング264等を備えたものである。リザーバ室260は、ハウジングにリザーバピストン262が実質的に気密かつ摺動可能に嵌合されることによって形成される。そのリザーバ室260の容積が通常値から増加するときにはリザーバピストン262が図示する通常位置から容積増加位置に、減少するときには容積減少位置にそれぞれ移動させられる。リザーバピストン262の底部には、付勢手段としてのスプリング264がリテーナ266を介して係合させられる。
【0120】リテーナ266は、それのフランジ部がハウジングの段付き部に当接することによってリザーバ室260側への移動限度が規定されている。また、リテーナ266はリザーバピストン262に緩く係合されている。したがって、リザーバピストン262は、リザーバ室260の容積が減少すれば、リテーナ266を原位置に残したまま単独で図の上方の容積減少位置へ移動させられるが、リザーバ室260の容積が増加すれば、リテーナ266とともにスプリング264を圧縮しつつ下方の容積増加位置へ移動させられる。流入制御弁250は、弁子270と弁座272とを有しており、これらは互いに共同してマスタシリンダ10からリザーバ252に向かう作動液の流れは阻止するが、逆向きの流れを許容する。弁子270は付勢手段としてのスプリング274によって弁座272に着座する向きに常時付勢されている。
【0121】流入制御弁250は、常には、マスタシリンダ10内の作動液がリザーバ室260に流入することを阻止する流入阻止状態にある。トラクション制御が開始され、ポンプ52が作動させられてリザーバ室260の作動液が汲み上げられるとリザーバ室260内が負圧となり、リザーバピストン262が図示の通常位置から容積減少位置に移動させられる。リザーバピストン262に設けられた弁子駆動部としてのピン276によって弁子270が弁座272から離間させられ、マスタシリンダ10の作動液がリザーバ室260に流入することを許容する流入許容状態となり、マスタシリンダ10の作動液が副液通路40を経てリザーバ室260へ流入させられる。流入制御弁250は、トラクション制御の開始時のみに流入許容状態に切り換えられるのではなく、トラクション制御中等リザーバ室260が負圧になった時に流入許容状態に切り換えられる。このように、本実施形態においては、流入制御弁250を備えたリザーバ252が設けられているため、トラクション制御中において作動液が不足することを良好に回避することができる。
【0122】さらに付言すれば、前記実施形態においては、吐出圧低減保持モードが設定された場合には、開閉弁18のみがデューティ制御され、開閉弁24,32がデューティ制御されないようになっていたが、開閉弁24と開閉弁32との少なくとも一方も開閉弁18に同期して、デューティ制御されるようにしてもよい。また、弁装置34は、前記実施形態のものに限らず、開閉弁24,32を1つの3位置制御弁に変えても、開閉弁18,24、開閉弁18,32、あるいは、開閉弁18,24,32を1つの3位置制御弁に変えてもよい。ホイールシリンダ圧制御弁装置においても同様に、前記実施形態のものに限らず、開閉弁24,32を1つの3位置制御弁に変えてもよい。
【0123】さらに、第一,第二,第五ないし第九発明においては、図17に示すように、弁装置210やホイールシリンダ圧制御弁装置に前記逆止弁26が含まれていなくてもよい。その場合には、吐出圧低減保持モードが設定された場合に、開閉弁18をデューティ制御しなくてもホイールシリンダ12の液圧を保持することが可能となる。すなわち、開閉弁18が連通状態にあっても、開閉弁24,32が共に遮断状態に切り換えられれば、ホイールシリンダ12の液圧は保持されるのである。このブレーキ制御装置の液圧制御装置290には、図18に示す吐出圧低減制御モード対応ソレノイド制御テーブルが格納され、各ソレノイド等の制御は、図18に示すテーブルに基づいて行われる。
【0124】吐出圧低減トラクション制御の実行が許可された場合において、吐出圧低減増圧モードが設定された場合には、上記実施形態の吐出圧低減増圧モードが設定された場合と同様の制御が行われる。ホイールシリンダ12には、ポンプ52によって加圧された作動液が流入させられる。
【0125】吐出圧低減減圧モードが設定された場合には、開閉弁18が連通状態に切り換えられ、開閉弁24が遮断状態に、開閉弁32が連通状態にそれぞれ切り換えられる。ホイールシリンダ12の作動液が、開閉弁32を経てサブリザーバ14に流出させられる。ポンプ52によって吐出された作動液は、ポンプ通路46,吐出口接続部28,開閉弁18を経てマスタシリンダ10に戻される。吐出圧低減保持モードが設定された場合には、開閉弁18が連通状態に、開閉弁24,32が共に遮断状態に切り換えられる。本実施形態においては、逆止弁26が設けられていないため、開閉弁18を連通状態に切り換えてもホイールシリンダ12の作動液が流出させられることがないため、ホイールシリンダ12の液圧が保持される。開閉弁18をデューティ制御する必要がないのである。
【0126】本実施形態においては、逆止弁26が設けられていないため、制動終了時、アンチスキッド制御終了時、トラクション制御終了時等、ホイールシリンダ12の作動液をマスタシリンダ10に戻す場合に、作動液の戻りが多少遅くなるが、開閉弁18を連通状態にしたまま、マスタシリンダ12の液圧を保持できるため、吐出圧を低減させつつ開閉弁の切換え頻度を少なくし得、かつ、マスタシリンダ液圧の液圧制御精度を向上させることができる。
【0127】さらに、第一,第五ないし第九発明によれば、ブレーキ制御装置を図19に示すブレーキ装置に適用することができる。本実施形態においては、第一制御弁としての開閉弁18を連通状態に切り換えなくてもポンプ52の吐出圧が低減され、開閉弁18を連通状態と遮断状態とにデューティ制御しなくてもホイールシリンダ12の液圧が保持される。図19において、ポンプ52の吐出口側が吐出口接続部28に、ポンプ通路逆止弁としての逆止弁300を介して接続されると共に、リリーフ弁バイパス制御弁としての開閉弁302を介して、副液通路40の開閉弁42より下流側の部分に接続されている。逆止弁300は、ポンプ52からホイールシリンダ12への作動液の流れを許容するが、逆向きの流れを阻止するものであり、開閉弁302が連通状態にされてポンプ52の吐出圧が低下させられた場合に、ホイールシリンダ12の作動液が流出するのを防止するために設けられたものである。開閉弁302のソレノイド304は、液圧制御装置306の指令に基づいて図示しない駆動回路により制御される。液圧制御装置306には、図20に示す吐出圧低減トラクション制御対応ソレノイド制御テーブルが格納されている。
【0128】通常トラクション制御が行われる場合には、ソレノイド304は励磁されず、開閉弁302は遮断状態に保たれる。他のソレノイド20,36,38,44は、上記実施形態における場合と同様に制御されるため、その説明を省略する。吐出圧低減トラクション制御の実行が許可された場合において、吐出圧低減増圧モードが設定された場合には、通常増圧モードが設定された場合と同様に制御される。この場合には開閉弁302は、遮断状態に保たれる。マタシリンダ10の作動液は、ポンプ52によって加圧されて、逆止弁300,開閉弁24を経てホイールシリンダ12に供給される。吐出圧低減減圧モードが設定された場合には、開閉弁24が遮断状態に、開閉弁32が連通状態にされるとともに、ソレノイド304が励磁されて開閉弁302が連通状態に切り換えられる。ホイールシリンダ12の作動液は、開閉弁32を経てサブリザーバ14に流出させられ、サブリザーバ14の作動液は、ポンプ52により、ポンプ通路46,開閉弁302,開閉弁42を経てマスタシリンダ10に戻される。作動液を、マスタ側リリーフ弁62を経てマスタシリンダ10に戻す必要がないため、ポンプ52の吐出圧が低くて済む。また、逆止弁300が設けられているため、吐出口接続部28の液圧がホイールシリンダ12の液圧より低くならないため、作動液が逆止弁26を経て吐出口接続部28に流出することはない。
【0129】吐出圧低減保持モードが設定された場合には、開閉弁24,32が共に遮断状態とされるとともに、開閉弁302が連通状態とされる。開閉弁302が連通状態とされてポンプ52の吐出圧が低減させられても、吐出口接続部28から開閉弁302に向かう向きの作動液の流れは逆止弁300によって阻止されるため、ホイールシリンダ12の作動液が逆止弁26を経て流出することがなく、ホイールシリンダ圧が保持される。吐出圧低減保持モードが設定された場合にも、前述のように、ポンプ52の吐出圧を低減させることができる。なお、吐出圧低減保持モードが設定された場合には、開閉弁24が連通状態にあっても差し支えない。ホイールシリンダ12からの作動液の流出が、遮断状態にある開閉弁18と逆止弁300とによって阻止されるからである。
【0130】本実施形態のブレーキ装置は、前記実施形態におけるブレーキ装置に開閉弁302と逆止弁300とを設けたものである。開閉弁18は、連通状態における流路を大きくするために通常は大形のものである。そのため、開閉弁18をデューティ制御するためには、ソレノイドを大形のものとし、さらに、応答性が良好なものにしなればならず、開閉弁18が高価になる。それに対して、本実施形態においては開閉弁18や開閉弁302等をデューティ制御する必要がないため、開閉弁18を応答性のよいものとする必要がなくなると共に、開閉弁302として通常の開閉弁を使用し得る。その結果、ブレーキ装置全体としてのコストダウンを図ることが可能となり、制御精度の低下も回避することができる。
【0131】本実施形態においては、開閉弁302,ソレノイド304および液圧制御装置306のソレノイド・モータ制御コンピュータのソレノイド304を励磁して開閉弁302を連通状態にする部分等によって吐出圧低減装置が構成される。この場合、開閉弁302は、弁装置34の構成要素ではなく、吐出圧を低減させるために設けられた吐出圧低減弁装置であり、前記吐出圧低減装置の開閉弁302を制御する部分等によって吐出圧低減弁装置制御手段が構成されることになる。このように、吐出圧低減手段は、弁装置以外の弁装置を制御する場合もあるのである。なお、開閉弁302は、当然、ホイールシリンダ圧制御弁装置にも含まれないものである。
【0132】次に、第一,第四ないし第九発明に共通の一実施形態であるブレーキ制御装置について説明する。本ブレーキ制御装置を含むブレーキ装置は、図2に示すブレーキ装置に、さらに、図21に示すように、開閉弁18をバイパスするバイパス通路308と、そのバイパス通路308の途中のマスタシリンダ10から主液通路中間部28への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁310とを設けたものである。
【0133】この逆止弁310が設けられた理由の一つは、開閉弁18の大形化を回避することである。トラクション制御中に図示しないアクセルペダルの踏込みが解除され、メインスロットルバルブが全閉となる等トラクション制御終了条件が満たされれば、トラクション制御が終了させられる。ソレノイド20,36,38および44が消磁され、開閉弁18が連通状態に切り換えられるとともに開閉弁42が遮断状態に切り換えられ、かつ、開閉弁24が連通状態に、開閉弁32が遮断状態にされるのである。したがって、その後にブレーキペダル29が踏み込まれれば、マスタシリンダ10に発生した液圧がホイールシリンダ12に伝達され、ブレーキが作用させられる。しかし、アクセルペダルの踏込みが解除された後、直ちにブレーキペダル29が踏み込まれた場合には、開閉弁18が連通状態に切り換わる前にマスタシリンダ10の液圧が増圧され、開閉弁18の前後において液圧差が大きくなることがある。また、アクセルペダルが踏み込まれたままブレーキペダル29が踏み込まれることもあり、この場合にも開閉弁18の前後の液圧差が大きくなる。
【0134】常開弁である開閉弁18において、常には、ソレノイド20が消磁状態にあり、図示しない弁子が弁座から離間させられており、主液通路18は連通状態にあるが、ソレノイド20が励磁されると、弁子が弁座に着座させられ、遮断状態となる。この遮断状態においては、通常、弁子がマスタシリンダ10側の液圧により弁座に押し付けられる状態となる。もし、開閉弁18を、遮断状態において弁子がマスタシリンダ側の液圧に抗して弁座に着座した状態に保たれるものとすれば、マスタシリンダ側の液圧が高くなっても遮断状態を維持し得るようにするために、ソレノイドを大きくしなければならなくなるからである。
【0135】そして、開閉弁18が、弁子がマスタシリンダ10側の液圧により弁座に押し付けられるものである場合に、開閉弁18の前後に大きな液圧差が生じると、ソレノイド20の消磁により弁子を弁座から離間させるために、弁子を弁座から離間する向きに付勢するスプリングの弾性力を大きくしなければならず、それに応じてソレノイド20も大きなものとしなければならなくなって、開閉弁18が大形化してしまう。それに対して、本実施形態においては、逆止弁310が設けられているため、開閉弁18が遮断状態にあっても、マスタシリンダ10の液圧が逆止弁310を経て開閉弁18の後ろ側(開閉弁24側)にも伝達され、開閉弁18の前後に大きな液圧差が生じないため、開閉弁18の大形化を回避することができるのである。
【0136】逆止弁310が設けられたもう一つの理由は、開閉弁18が遮断状態にある場合にブレーキペダル29が踏み込まれた際のブレーキの効き遅れを小さくすることである。上述のように、開閉弁18と並列に逆止弁310が設けられていれば、開閉弁18が閉じている状態でも、マスタシリンダ10の液圧が開閉弁24に伝達される。したがって、このときもし開閉弁24が連通状態にあれば、マスタシリンダ10の液圧はそのままホイールシリンダ12に伝達され、ブレーキの効き遅れが完全に回避される。また、もし開閉弁24が遮断状態にあった場合には、逆止弁308を経て伝達されたマスタシリンダ10の液圧は、ホイールシリンダ12までは伝達されないが、開閉弁24までは伝達され、開閉弁24が連通状態とされた場合に速やかにホイールシリンダ12に伝達される。その上、前述のように開閉弁18の前後の液圧差が大きくならないために、ソレノイド20の消磁に伴って開閉弁18が速やかに連通状態となり、この点からもブレーキの効き遅れが減少させられる。開閉弁18の前後の液圧差が大きい場合には、ソレノイド20の消磁から、開閉弁18の弁子が弁座から離間させられるまでの時間が長くなることを避け得ないが、逆止弁308の配設によりこれを回避できるのである。
【0137】また、本実施形態における液圧制御装置には図22に示すテーブルが格納されている。吐出圧低減増圧モードが設定された場合には、図22に示すテーブルに基づく場合も制御は図13に示すテーブルに基づく場合と同じである。吐出圧低減減圧モードが設定された場合には、図13に示すテーブルに基づく場合には、開閉弁18が連通状態に切り換えられるが、本実施形態においては図22に示すテーブルに基づいて、開閉弁18は遮断状態のままで、図21に示すように、開閉弁24が連通状態に切り換えられる。
【0138】ポンプ52によって吐出された作動液は、吐出口接続部28,開閉弁24および開閉弁32を経てサブリザーバ14側に流れる。また、ホイールシリンダ12の作動液も開閉弁32を経てサブリザーバ14側に流れる。これら作動液の一部はポンプ52にくみ上げられるが、残りは開閉弁42を経てマスタシリンダ10へ流出する。すなわち、ポンプ52→開閉弁24→開閉弁32→ポンプ52と循環する循環回路を循環する作動液の流れと、ホイールシリンダ12→開閉弁32→開閉弁42→マスタシリンダ10の作動液の流れとが生じるのである。ポンプ52によって吐出された作動液をマスタ側リリーフ弁62を経てマスタシリンダ10に戻す必要がなく、ポンプ52の吐出圧を低く保ったままでホイールシリンダ12の液圧を減圧することができる。
【0139】また、吐出圧低減保持モードが設定された場合には、図13に示すテーブルに基づく場合には、開閉弁24が連通状態、開閉弁32が遮断状態にある場合において、開閉弁18が連通状態と遮断状態とにデューティ制御されるが、本実施形態においては図22に示すテーブルに基づいて、開閉弁18が遮断状態,開閉弁24が連通状態に保たれたまま、開閉弁32が遮断状態と連通状態とにデューティ制御される。開閉弁32が遮断状態に切り換えられれば、ポンプによって吐出された作動液がホイールシリンダ12に供給されるとともに作動液の流出が阻止されるため、ホイールシリンダ12の液圧は増圧される。連通状態に切り換えられれば、上述のように液圧が減圧される。したがって、開閉弁32の遮断状態と連通状態との時間比率を適切に定めておけば、ホイールシリンダ12の液圧を実質的に一定に保ち得る。
【0140】このように、吐出圧低減保持モードにおいては、開閉弁32が連通状態にある時期の一部において開閉弁24が連通状態に切り換えられる。それによって、ポンプ52によって吐出された作動液は、実質上、開閉弁24および開閉弁32を直列に含む還流回路によりポンプ52に還流させられることとなり、ポンプ52の吐出圧が低くて済む。
【0141】また、第一実施形態のブレーキ制御装置におけるより、ホイールシリンダ12の液圧制御精度を向上させ得るという利点もある。第一実施形態のブレーキ制御装置において吐出圧低減減圧モードが設定された場合には、開閉弁18が連通状態に切り換えられるため、図1に示すように、ホイールシリンダ12から流出させられる作動液には、開閉弁18を経てマスタシリンダ10に戻されるとともに、開閉弁32および開閉弁42を経てマスタシリンダ10に戻される。それに対して、本実施形態のブレーキ制御装置においては、開閉弁18は遮断状態に保たれたままであるため、作動液が開閉弁18を経て戻されることはなく、開閉弁42を経て戻されるだけである。したがって、その分ホイールシリンダ12の液圧の減圧勾配を小さくし得、液圧の制御精度を向上させることができるのである。
【0142】さらに、開閉弁18と開閉弁42とを比較すると、開閉弁42における方が流路面積を小さくし得る。制動時には、マスタシリンダ10の作動液が主液通路16を経てホイールシリンダ12に供給されるため、主液通路16の途中に設けられる開閉弁18の流路面積を小さくすることは望ましくない。それに対して、開閉弁42は副液通路40の途中に設けられたものであり、ポンプ52によりくみ上げ可能な流量の作動液の通過を許容し得るものであればよいため、開閉弁18より流路面積を小さくすることが可能である。この点においても、ホイールシリンダ12の減圧勾配を抑制し得、液圧制御精度を向上させることができるのである。
【0143】また、開閉弁18を連通状態と遮断状態とにデューティ制御しなくても、ホイールシリンダ液圧を保持することができるため、上述の理由と同様の理由により、ホイールシリンダ圧の制御精度を向上させることができる。
【0144】以上のように、本実施形態においては、増圧弁が開閉弁24によって構成され、減圧弁が開閉弁32によって構成される。開閉弁24が連通状態にある場合が供給許容状態で、遮断状態にある場合が供給阻止状態であり、開閉弁32が連通状態にある場合が流出許容状態であり、遮断状態にある場合が流出阻止状態である。なお、増圧弁が開閉弁18,24によって構成され、減圧弁が開閉弁32によって構成されると考えることも、増圧弁が開閉弁24によって構成され、減圧弁が開閉弁18,32によって構成されると考えることもできる。前者のように考えた場合には、開閉弁24が連通状態にあり、開閉弁18が遮断状態にある状態が供給許容状態に当たり、開閉弁24が遮断状態にある状態と、開閉弁18と開閉弁24とが共に連通状態にある状態とが、供給阻止状態に対応する。後者のように考えた場合には、ホイールシリンダ12の作動液のサブリザーバ14への流出が許容される状態が流出許容状態に当たると考え、開閉弁18が遮断状態にあり、開閉弁32が連通状態にある状態が流出許容状態に当たり、それ以外の状態は、ホイールシリンダ12の作動液がサブリザーバ14に流出させられるのを阻止する流出阻止状態に当たることになる。
【0145】また、本実施形態においては、開閉弁24および開閉弁32によってホイールシリンダ圧制御弁装置が構成される。吐出圧低減減圧モードが設定された場合には、開閉弁24および開閉弁32が共に連通状態に切り換えられるため、ホイールシリンダ圧制御弁装置は減圧状態にされるが、開閉弁24が遮断状態にないため減圧位置にあるわけではない。本実施形態のブレーキ制御装置においては、ホイールシリンダ圧制御弁装置が、前述の、増圧位置,減圧位置,保持位置以外の位置に切り換えられることになる。
【0146】なお、本実施形態のブレーキ制御装置を、図2,図14ないし図17の各々および図19に示す各ブレーキ装置に適用することもできる。また、逆に、上述の各実施形態のブレーキ制御装置が搭載された図2,14〜17の各々,19に示す各ブレーキ装置にバイパス通路308および逆止弁310を設けてもよい。さらに、吐出圧低減保持モードが設定された場合には、第一実施形態における場合と同様に、開閉弁18をデューティ制御してもよく、このようにすれば第三発明の一実施形態となる。また、第一発明においては、開閉弁24は不可欠ではない。図22に示すマップにおけるように、吐出圧低減トラクション制御は開閉弁24が連通状態に保たれたまま行われるからである。
【0147】次に、第一発明の一実施形態であるブレーキ制御装置を図23のブレーキ装置に適用した場合について説明する。マスタシリンダ10は後輪13のホイールシリンダ12と主液通路16により接続されている。主液通路16の途中には、3位置制御弁316が設けられている。3位置制御弁316は、常には、マスタシリンダ10をホイールシリンダ12に連通させ、サブリザーバ320から遮断する増圧状態にあるが、ソレノイド318の小電流による励磁により、ホイールシリンダ12をマスタシリンダ10からもサブリザーバ320からも遮断する保持状態に切り換えられ、大電流による励磁によりホイールシリンダ12をサブリザーバ320に連通させてマスタシリンダ10から遮断する減圧状態に切り換えられる。
【0148】サブリザーバ320からはポンプ通路322が延び出させられ、ポンプ通路322の途中にはポンプ324が設けられている。ポンプ324はモータ326の駆動によって作動させられる。モータ326は、アンチスキッド制御中あるいはトラクション制御中は連続して駆動される。また、ポンプ通路322のポンプの吸入口とサブリザーバ320との間には、くみ上げ制御弁としての開閉弁328が設けられている。開閉弁328は、常には、ポンプ324の吸入口からサブリザーバ320を遮断する遮断状態にあるが、ホイールシリンダ12の液圧を増圧する必要がある場合には、ソレノイド329が励磁され、これらを連通させる連通状態に切り換えられる。ポンプ通路322は、主液通路16の3位置制御弁316とホイールシリンダ12との間の吐出口接続部330に接続されている。
【0149】上記吐出口接続部330とマスタシリンダ10とはリリーフ通路332によって接続され、リリーフ通路332の途中には、リリーフ弁334が設けられている。リリーフ弁334のリリーフ圧は、上記各実施形態と同様に、トラクション制御時の最大液圧に設定されている。そのため、ポンプ324の吐出圧、すなわちホイールシリンダ12の液圧が最大液圧に達すると、作動液がリリーフ弁334を経てマスタシリンダ10に戻される。また、マスタシリンダ10とサブリザーバ320とは副液通路336によって接続され、副液通路336の途中には第四制御弁としての開閉弁338が設けられている。開閉弁338は常には、マスタシリンダ10とサブリザーバ320とを遮断する遮断状態にあるが、トラクション制御が開始されると、ソレノイド339が励磁され、これらを連通させる連通状態に切り換えられる。
【0150】上記各電磁弁のソレノイド318,329,339、モータ326等は液圧制御装置340の指示により図示しない駆動回路により制御される。液圧制御装置340は、上記各実施形態における場合と同様に、図示しないアンチスキッド制御コンピュータ,トラクション制御コンピュータ,ソレノイド・モータ制御コンピュータ等複数のコンピュータを備えたものであり、ソレノイド・モータ制御コンピュータのROMには、図24に示すトラクション制御用ソレノイド制御テーブルが格納されている。モータ326は、アンチスキッド制御中あるいはトラクション制御中は継続して駆動される。
【0151】本ブレーキ装置において、ブレーキペダル342が踏み込まれれば、マスタシリンダ10の作動液は、増圧状態にある3位置制御弁316を経てホイールシリンダ12に供給される。ブレーキペダル342の踏込みが解除されれば、ホイールシリンダ12の作動液は、主液通路16を経てマスタシリンダ10に戻される。アンチスキッド制御が行われる場合には、3位置制御弁316が保持状態または減圧状態に切り換えられることによりホイールシリンダ液圧が後輪13の制動スリップ状態が適正状態に保たれるように制御される。減圧モードが設定された場合には、3位置制御弁316が減圧状態に切り換えられ、ホイールシリンダ12の作動液がサブリザーバ320に流出させられる。保持モードが設定された場合には、保持状態に切り換えられ、ホイールシリンダ液圧が保持される。減圧モードや保持モードが設定された場合には、開閉弁328は遮断状態に保たれる。増圧モードが設定された場合には、3位置制御弁316が保持状態に、開閉弁328が連通状態に切り換えられる。サブリザーバ320の作動液がポンプ324によって汲み上げられてホイールシリンダ12に供給される。
【0152】アンチスキッド制御中は、開閉弁338は原則として遮断状態に保たれるが、サブリザーバ320の作動液が不足した場合には連通状態に切り換えられる。サブリザーバ320の作動液の不足は、サブリザーバ320に、それのピストンの位置を検出するなどによりサブリザーバ320内の作動液量を検出する作動液量検出器を設けて検出するのが最も確実であるが、本実施形態においては、作動液量検出器を省略するために、3位置制御弁316が減圧状態にある時間と開閉弁328が連通状態にある時間とに基づいてサブリザーバ320内の作動液量を推定することによって検出されるようになっている。なお、サブリザーバ320の作動液が不足した場合には、3位置制御弁316が増圧状態に切り換えられ、マスタシリンダ10からホイールシリンダ12に直接作動液が供給されるようにすることも可能である。
【0153】トラクション制御が行われる場合には、アンチスキッド制御が行われる場合と同様に、3位置制御弁316が保持状態,減圧状態に切り換えられることによってホイールシリンダ液圧が後輪13の駆動スリップ状態が適正状態に保たれるように制御される。ただし、開閉弁338が連通状態に保たれてマスタシリンダ10の作動液がサブリザーバ320に供給される。トラクション制御は図24に示すテーブルに基づいて行われる。増圧モードが設定されると、3位置制御弁316が保持状態に切り換えられるとともに、開閉弁328が連通状態に切り換えられ、サブリザーバ320の作動液がポンプ324により汲み上げられてホイールシリンダ12に供給される。減圧モードが設定されると、3位置制御弁316が減圧状態に切り換えられるとともに、開閉弁328が遮断状態に切り換えられる。その結果、ポンプ324によって作動液が汲み上げられることはなく、ポンプ324が空回りさせられるため、リリーフ弁334を経てマスタシリンダ10に作動液を戻す必要はない。保持モードが設定された場合には、3位置制御弁316が保持状態に、開閉弁328が遮断状態にそれぞれ切り換えられる。この場合においても、ポンプ324から作動液は吐出されず、リリーフ弁334を経てマスタシリンダ10に戻す必要はない。
【0154】以上のように、本実施形態においては、減圧モードや保持モードが設定された場合には、開閉弁328が遮断状態に切り換えられ、ポンプ324から作動液が吐出されないようにされている。そのため、ポンプ324から吐出された作動液をリリーフ弁334を経てマスタシリンダ10に戻す必要がなく、ポンプの吐出圧は結局0まで低下させられる。また、トラクション制御において通常制御と吐出圧低減制御との両方が設定されているわけではなく、常に吐出圧低減制御が行われることになるため、ポンプ324の吐出圧を最大限に低減させることが可能となる。
【0155】本実施形態においては、3位置制御弁316および開閉弁328によって弁装置が構成され、開閉弁328,ソレノイド329および液圧制御装置340のトラクション制御を実行する部分等によって吐出圧低減装置が構成される。吐出圧低減装置の開閉弁328を制御する部分等によって吐出圧低減手段が構成されるが、この吐出圧低減手段はトラクション制御手段の一部でもある。また、第一実施形態の弁装置との関係においては、3位置制御弁316が、第一制御弁と第三制御弁とに相当し、開閉弁328が第二制御弁に相当することになる。また、3位置制御弁316および開閉弁328によって増圧弁が構成され、3位置制御弁316によって減圧弁が構成されることになる。
【0156】なお、本記実施形態においては、減圧モードが設定された場合には、開閉弁328が遮断状態に切り換えられるようにされていたが、連通状態に切り換えられるようにしてもよい。3位置制御弁316が減圧状態に、開閉弁328が連通状態にある場合には、ポンプ324によって汲み上げられた作動液は、3位置制御弁316および開閉弁328を経てポンプ324に還流させられる。すなわち、作動液が、3位置制御弁316,開閉弁328およびポンプ324を循環する回路を循環させられることになり、リリーフ弁334を経てマスタシリンダ10に戻す必要がなくなる。この態様は第四発明の一実施形態である。その他、いちいち例示することはしないが、特許請求の範囲を逸脱することなく当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した態様で本発明を実施することができる。




 

 


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