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発明の名称 車両の挙動制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平9−39761
公開日 平成9年(1997)2月10日
出願番号 特願平7−196807
出願日 平成7年(1995)8月1日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
発明者 杉山 瑞穂
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 車両の走行時に各車輪の制動力を制御して車両挙動の安定化を図る車両の挙動制御装置において、各車輪毎に、減衰力及びバネ定数の少なくとも一方を変更する接地性変更手段と、少なくとも制動力制御の実行されている車輪の減衰力及びバネ定数の少なくとも一方を、通常走行時に比して低下させる接地性制御手段と、を備えることを特徴とする車両の挙動制御装置。
【請求項2】 車両の走行時に各車輪の制動力を制御して車両挙動の安定化を図る車両の挙動制御装置において、各車輪毎に、減衰力及びバネ定数の少なくとも一方を変更する接地性変更手段と、各車輪におけるバネ上とバネ下との相対速度を検出する相対速度検出手段と、少なくとも制動力制御の実行されている車輪の減衰力及びバネ定数の少なくとも一方を、前記相対速度に基づいて、通常の走行時に比して車輪の路面追従性が向上するように制御する接地性制御手段と、を備えることを特徴とする車両の挙動制御装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の挙動制御装置に係り、特に、車両の走行状態に応じて各車輪の制動力を制御することにより車両挙動の安定化を図る車両の挙動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開平2−70561号公報に開示される如く、車両の走行状態に応じて各車輪の制動力を制御して、車両挙動の安定化を図る装置が知られている。車両の旋回時に、例えば、旋回外輪側に位置する前輪に制動力を与えれば、その制動力は車両の旋回を妨げるトルクとして車両に作用する。一方、旋回内輪側に位置する後輪に制動力を与えれば、その制動力は車両の旋回を助勢するトルクとして車両に作用する。
【0003】このように、各車輪に発生する制動力は、車両の旋回性に影響を与える。従って、車両の旋回状態に応じて各車輪の制動力を制御することにより、旋回速度が過剰である場合にはその旋回を抑制する方向のトルクを、また、旋回速度が不足している場合にはその旋回を助勢する方向のトルクを発生させることとすれば、旋回時における車両挙動の安定化を図ることができる。
【0004】上記従来の装置においては、車両の実ヨーレート(車両の旋回角速度)γと、車速Vおよび操舵角δに対応する目標ヨーレートγ0 との偏差Δγが演算され、そのΔγが“0”となるように各車輪の制動力が制御される。かかる制御によれば、車両の旋回時に、ほぼ目標ヨーレートγ0 と等しい実ヨーレートγを発生させることができ、安定した車両挙動を維持することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、車輪と路面との間に生ずる制動力の大きさは、その車輪の接地荷重によって変動する。しかしながら、上記従来の装置は、各車輪の接地荷重の変動について何ら考慮することなく制動力制御を実行する。このため、上記従来の装置においては、車輪の接地荷重が大きく変化するような状況下では、その荷重変化に影響されて、車両挙動の制御性が悪化し易いという問題が生じていた。
【0006】本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、車両挙動の安定化を目的とした制動力制御を行う際に、サスペンションの特性を接地荷重が変動し難い特性に変更することで、上記の課題を解決する車両の挙動制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、請求項1に記載する如く、車両の走行時に各車輪の制動力を制御して車両挙動の安定化を図る車両の挙動制御装置において、各車輪毎に、減衰力及びバネ定数の少なくとも一方を変更する接地性変更手段と、少なくとも制動力制御の実行されている車輪の減衰力及びバネ定数の少なくとも一方を、通常走行時に比して低下させる接地性制御手段と、を備える車両の挙動制御装置により達成される。
【0008】本発明において、車両挙動の安定化を図るべく制動力の制御が開始されると、前記接地性制御手段による前記接地性変更手段の制御が実行される。その結果、少なくとも制動力制御が実行されている車輪の減衰力及びバネ定数の少なくとも一方が、通常走行時に比して低下される。減衰力及びバネ定数の少なくとも一方が低下されると、路面からの入力に対するアクスルの追従性が向上する。路面からの入力に対するアクスルの追従性が向上すると、タイヤに変形が生じ難くなり、タイヤと路面との接地荷重が変動し難くなる。このため、本発明においては、少なくとも制動力制御が実行されている車輪については、接地荷重が変動し難い状態となる。
【0009】また、上記の目的は、請求項2に記載する如く、車両の走行時に各車輪の制動力を制御して車両挙動の安定化を図る車両の挙動制御装置において、各車輪毎に、減衰力及びバネ定数の少なくとも一方を変更する接地性変更手段と、各車輪におけるバネ上とバネ下との相対速度を検出する相対速度検出手段と、少なくとも制動力制御の実行されている車輪の減衰力及びバネ定数の少なくとも一方を、前記相対速度に基づいて、通常の走行時に比して車輪の路面追従性が向上するように制御する接地性制御手段と、を備える車両の挙動制御装置によっても達成される。
【0010】請求項2記載の発明において、前記相対速度検出手段は、各車輪におけるバネ上とバネ下との相対速度を検出する。各車輪の路面追従性は、各車輪に与えられる減衰力およびバネ定数によって決定される。従って、路面入力に対する車輪の追従性を向上させるためには、減衰力及びバネ定数を適切な関係に制御する必要がある。
【0011】ところで、各車輪には、バネ上とバネ下との相対速度に応じた減衰力が発生する。従って、バネ上とバネ下とに相対速度が生ずる環境下で適切な路面追従性を維持するためには、それらの相対速度に応じて減衰力及びバネ定数の少なくとも一方を制御し、減衰力とバネ定数との関係を適正に維持することが必要である。本発明においては、車両挙動制御を目的とする制動力制御が開始されると、前記接地性制御手段によって、バネ上とバネ下との相対速度に基づいて、少なくとも制動力制御が実行されている車輪の減衰力及びバネ定数の少なくとも一方が制御される。このため、少なくとも制動力制御が実行されている車輪に関しては、路面入力に対して高い追従性を示す。
【0012】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例のシステム構成図を示す。本実施例のシステムは、後述する電子制御ユニット(ECU)10によって制御されている。図1においてFL,FR,RL,RRは、それぞれ車両の左前輪、右前輪、左後輪、右後輪を示す。FL,FR,RL,RRには、それぞれ減衰力可変式ショックアブソーバ(以下、単にショックアブソーバと称す)12FL,12FR,12RL,12RR(以下、これらを総称する場合には、符号12を付して表す)が連結されている。
【0013】ショックアブソーバ12は、外部から信号を供給することで、減衰力をリニアに変更できる機能を有している。ショックアブソーバ12は、そのピストンロッドにおいて各車輪FL,FR,RL,RRのアクスルに固定されており、一方、そのアブソーバシェルにおいて車体に固定されている。尚、本実施例のシステムでは、ショックアブソーバ10の減衰力がリニアに変化する必要はなく、最低限2段階の減衰力切り換えが可能であれば足りる。
【0014】各車輪FL,FR,RL,RRには、それぞれ図示しないホイルシリンダが配設されている。それぞれのホイルシリンダは、油圧が供給された際に、その油圧に応じた制動トルクを発生する。各車輪FL,FR,RL,RRのホイルシリンダには、それぞれ油圧制御弁14FL,14FR,14RL,14RR(以下、これらを総称する場合には、符号14を付して表す)が接続されている。また、油圧制御14には、油圧通路16およびリザーバタンク18が連通している。油圧制御弁14は、外部から供給される信号に応じて作動する2位置弁であり、ホイルシリンダと油圧通路16とを連通する増圧位置と、ホイルシリンダとリザーバタンク18とを連通する減圧位置とを実現する。
【0015】油圧通路16には、油圧源切り換え弁20が連通している。油圧源切り換え弁20には、また、油圧ポンプ22およびアキュムレータ24からなる高圧源と、マスタシリンダ26とが連通している。油圧源切り換え弁20は、外部から供給される信号に応じて作動する2位置弁であり、油圧通路16と油圧ポンプ22とを連通する制御実行位置と、油圧通路16とマスタシリンダ26とを連通する通常位置とを実現する。
【0016】油圧ポンプ22は、油圧切り換え弁20が制御実行位置とされる状況下で、ブレーキフルードをリザーバタンク22から汲み上げてアキュムレータ24側に圧送する。アキュムレータ24は、その際に生ずる油圧を蓄えて脈動の少ない安定した油圧を油圧切り換え弁20に供給する。このため、油圧切り換え弁20が制御実行位置である場合、油圧通路16には、油圧ポンプ22の吐出能力に応じた所定の油圧が導かれる。マスタシリンダ26は、ブレーキペダル28に加えられたブレーキ踏力に応じた油圧を発生する。従って、油圧切り換え弁20が通常位置である場合、油圧通路16には、ブレーキ踏力に応じた油圧が導かれる。
【0017】本実施例において、上述したショックアブソーバ12、油圧制御弁14、および油圧源切り換え弁20は、ECU10によって制御される。ECU10には、各車輪FL,FR,RL,RRそれぞれの車輪速VWFL,WFR,WRL,WRR (以下、これらを総称する場合には、車輪速VW と称す)を検出する車輪速センサ30FL,30FR,30RL,30RR(以下、これらを総称する場合には、符号30を付すして表す)、ステアリングホイル32の操舵角δを検出する操舵角センサ34、車両に作用する横加速度Gyを検出する横Gセンサ36、および車両の重心回りに生ずる旋回角速度、すなわち、車両のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ38が接続されている。
【0018】図2は、左旋回中の車両を平面視で表した図を示す。図2において“C”は、車両の重心を表す。同図に示す如く、車両が左旋回を行っている場合、車両の重心C回りには、反時計回り方向にヨーレートγが生ずる。車両の走行中に、車速Vや操舵角δに応じた適切なヨレートγが得られていれば、車両は安定な状態で旋回走行を行っていると推定できる。これに対して、Vやδに対してγが過剰であれば、車両の旋回速度が過剰である、すなわち、車両がスピン傾向にあると推定でき、また、γが不足していれば、車両が適切に旋回していない、すなわち、車両がドリフトアウト傾向にあると推定できる。
【0019】ところで、車両の旋回中に、図2中に実線矢線で示す如く、旋回外輪側に位置する前輪FRが制動力FBRK を発生すると、その制動力FBRK は、重心Cに対して車両の旋回を妨げる方向のトルクとして作用する。従って、車両の旋回中に旋回外輪側の前輪FL又はFRに制動力を発生させれば、車両に発生しているヨーレートγを抑制することができる。
【0020】一方、車両の旋回中に、図2中に破線矢線で示す如く、後輪RL,RRに制動力FBRK を発生させると、車両の重心が前輪FL,FR側に移行して、旋回方向内方へ向かう求心力が増加する。また、旋回内輪側に位置する後輪RLが発生する制動力FBRK は、重心Cに対して車両の旋回を助勢する方向のトルクとして作用する。従って、車両の旋回中に後輪RL,RRに制動力を発生させれば、ヨーレートγを助勢することができる。
【0021】そこで、本実施例のシステムでは、車両の旋回走行中に挙動推定を行い、推定した挙動に応じて、車両がドリフトアウト傾向であると判断される場合には、後輪RL,RRのホイルシリンダに適当な油圧を供給し、また、車両がスピン傾向である場合には、旋回外輪側の前輪FL又はFR(以下、foutと称す)のホイルシリンダに、適当な油圧を供給することにより、車両挙動の安定化を図ることとしている。
【0022】本実施例においては、車両の挙動が安定しているか否かを判定する基準として、スピン度SVおよびドリフト度DVなる概念を導入している。スピン度SVは旋回時におけるオーバーステア傾向の度合いであり、ドリフト度DVは旋回時におけるアンダーステア傾向の度合いである。以下、図3を参照して、それらを求める手法について説明する。
【0023】図3は、車両の旋回時における挙動を推定するために用いる4輪車の等価的な2輪車モデルを示す。図3において、Cは車両の重心、Vは車体速度、βは車軸に対する重心の進行方向角度(以下、車体スリップ角と称す)、γは重心回りのヨーレート、2CFff は前輪FL,FRのコーナリングフォースの合力、2CFrは後輪RL,RRのコーナリングフォースの合力、δは操舵角を示す。
【0024】図3に示す2輪車モデルにおいて、車両重量をmとすると、重心Cを通るY軸上で、次式に示す運動方程式が成立する。
mV( dβ/dt +γ)=2CFf+2CFr ・・・(1)
上記(1)式中左辺第1項(mV・ dβ/dt )は、車両の重心Cに作用する並進方向の加速度(V・ dβ/dt )と車両重量(m)との乗算値である。また、(1)式中左辺第2項(mVγ)は、車両に作用する遠心力である。それらの合計値は車両に作用する横力の合計値となり、右辺に表される2CFf+2CFrと均衡する。
【0025】車両に作用する横力の合計値が2CFf+2CFrであると、車両に作用する横方向加速度Gyは次式の如く表すことができる。
Gy=(2CFf+2CFr)/m ・・・(2)
上記(1)式、及び(2)式を整理すると、並進加速度(V・ dβ/dt )は、次式の如く表すことができる。
【0026】
V・ dβ/dt =Gy−V・γ ・・・(3)
従って、車両のスリップ角βの変化率 dβ/dt 、及びスリップ角βは、それぞれ以下の如く表すことができる。
dβ/dt =(Gy/V)−γ ・・・(4) β=∫{(Gy/V)−γ)}dt ・・・(5)
上記(4)式、及び(5)式で用いられるパラメータGy,V,γは、それぞれ横Gセンサ36、車輪速センサ30、ヨーレートセンサ38によって実測することができる。従って、本実施例のシステムによれば、車両のスリップ角β、及びその変化率 dβ/dt は、正確に演算することができる。
【0027】ところで、車両のスリップ率βは、車両の旋回速度が高速であるほど大きな値となるパラメータである。従って、その値が大きいほど、車両挙動がスピン傾向である判断することができる。また、スリップ率βの変化率 dβ/dt は、車両の旋回速度が急激に増大される際に大きな値となるパラメータである。従って、その値が大きいほど、車両がスピン傾向にあると判断することができる。そこで、本実施例においては、スピン度SVを、定数k1 、k2 を用いて次式の如く定義している。
【0028】
SV=k1 ・β+k2 ・ dβ/dt ・・・(6)
一方、ドリフト度DVは、ヨーレートγに基づいて定義している。すなわち、車両がニュートラルステア状態で安定に旋回している場合、重心C回りには、操舵角δおよび車速Vに応じたヨーレートγが発生する。従って、ヨーレートセンサ38により測定される実ヨーレートγが、操舵角δおよび車速Vから想定されるヨーレートに対して小さい場合には、車両挙動がドリフト傾向であると判断することができる。そこで、本実施例においては、操舵角δ及び車速Vとの関係で決定される目標ヨーレートγ0 と、実際に車両に作用する実ヨーレートγとの偏差Δγ、及び定数k3 を用いて、次式の如くドリフト度DVを定義している。
【0029】
DV=k3 ・Δγ ・・・(7)
本実施例において、ECU10は、上記の手法に従ってスピン度SV、及びドリフト度DVを演算し、その演算結果に基づいて各車輪の制動力を制御することで、旋回走行時の車両挙動の安定化を図っている。図4及び図5は、かかる機能を実現すべくECU10が実行する制動力制御ルーチンのフローチャートの一例を示す。
【0030】図4に示す如く、本ルーチンが起動されると、先ずステップ100において、本ルーチンの実行に必要とされる各種パラメータが読み込まれる。具体的には、車両に作用する横加速度Gyおよびヨーレートγ、車両の速度V、及び操舵角δが読み込まれる。
【0031】ステップ102では、上記(4)式に従って、車体スリップ角βの変化率 dβ/dt =(Gy/V)−γが演算される。また、ステップ104では、上記(5)式に従って、すなわち、上記ステップ102の演算値を積分することで、車体スリップ角β=∫{(Gy/V)−γ}dtが演算される。そして、ステップ106において、それらの演算値を上記(6)式に代入することにより、スピン度SV=k1 ・β+k2 ・ dβ/dt が演算される。
【0032】ステップ108では、車速V、および操舵角δに対応する目標ヨーレートγ0を求める処理が実行される。ECU10には、Vおよびδとの関係で目標ヨーレートγ0 を定めたマップが記憶されており、本ステップでは、そのマップを検索することによりγ0 が演算される。次にステップ110では、上記の如く求めた目標ヨーレートγ0 と、上記ステップ100で読み込んだ実ヨーレートγとの偏差Δγ=γ0 −γが演算される。そして、ステップ112において、Δγを上記(7)式に代入することにより、ドリフト度DV=k3 ・Δγが演算される。
【0033】上述の如く車両のスピン度SVおよびドリフト度DVを演算したら、それらの値に基づいて、旋回走行時の車両挙動を安定させるための制動力制御が実行される。すなわち、ステップ114では、車両がスピン傾向である場合を想定して、旋回外輪側の前輪foutで実現すべき目標スリップ率S0fout が、スピン度SVに基づいて演算される。
【0034】上述の如く、旋回外輪側の前輪foutが発生する制動力は、ヨーレートγを抑制するトルクとして車両に作用する。従って、旋回外輪側の前輪foutに、スピン度SVに応じた制動力を発生させれば、適切に車両のスピン傾向を抑制することができる。
【0035】ところで、制動時において車輪には、その車輪のスリップ率に応じた制動力が発生する。すなわち、車輪の制動力は、車輪に作用するブレーキトルクによってタイヤと路面とにスリップが生ずることにより発生される。そして、その制動力は、タイヤの特性に応じた所定のスリップ率(以下、限界スリップ率と称す)で最大値を示し、限界スリップ率以下の領域では、ほぼスリップ率に比例した値となる。従って、制動力制御を行う場合、スリップ率が限界スリップ率を超えないようにブレーキ油圧の制御を行うことで、常に車輪のグリップ状態を適正に維持することができる。また、スリップ率が限界スリップ率を超えない領域では、スリップ率が目標値となるようにブレーキ油圧を制御することで、タイヤと路面との間に発生する制動力を精度良く制御することができる。
【0036】このため、本実施例においては、各車輪の制動力を各車輪のスリップ率に基づいて制御することとしている。上記の理由により、ステップ114では、スピン度SVに基づいて、旋回外輪側の前輪foutで実現すべき目標スリップ率S0foutが算出される。
【0037】上記ステップ114では、具体的には、スピン度SVで図6に示すマップを検索することで目標スリップ率S0fout が算出される。車両が安定旋回走行中であっても、スピン度SVが小さな値で算出される場合があることから、目標スリップ率マップは、所定値SV0 以下の領域が不感帯とされている。また、タイヤの限界スリップ率を超える目標スリップ率S0fout が算出されるのを防止するため、目標スリップ率マップは、所定値SV1 以上の領域では目標スリップ率S0fout が飽和するように設定されている。
【0038】図6に示すマップに従って目標スリップ率S0fout が設定され、旋回外輪側の前輪foutでそのスリップ率が実現された場合、SV0 <SVの領域では、車両のスピン傾向の度合いに応じて、そのスピン傾向を抑制する方向に適切な大きなの制動力が発生されることになる。
【0039】また、ステップ116では、車両がドリフト傾向である場合を想定して、旋回外輪側の後輪RL又はRR(以下、routと称す)、及び旋回内輪側の後輪RL又はRR(以下、rin と称す)で実現すべき目標スリップ率S0rout ,S0rinがドリフト度DVに基づいて演算される。上述の如く、後輪RL,RRが発生する制動力は、旋回走行時において車両の求心力を増大させる力として車両に作用する。従って、旋回外輪側の後輪rout及び旋回内輪側の後輪rin それぞれに、ドリフト度DVに応じた制動力を発生させれば、適切に車両のドリフト傾向を抑制することができる。
【0040】本ステップ116では、旋回外輪側の後輪routで実現すべき目標スリップ率S0rout が図7に示すマップに従って、また、旋回内輪側の後輪rin で実現すべき目標スリップ率S0rinが図8に示すマップに従ってそれぞれ演算される。図7および図8に示すマップは、上記図6に示すマップと同様の理由により、DV≦DV0 の領域が不感帯として設定されていると共に、DV1 <DVの領域では目標スリップ率S0rout ,S0rinが飽和するように設定されている。
【0041】これらのマップに従って目標スリップ率S0rout ,S0rinが設定され、旋回外輪側の後輪routおよび旋回内輪側の後輪rin で、それぞれそのスリップ率が実現された場合、DV0 <DVの領域では、車両のドリフト傾向の度合いに応じて、そのドリフト傾向を抑制する方向に、適当な大きさの制動力が発生されることになる。
【0042】上記の処理が終了したら、次にステップ118において、車両の旋回方向が特定される。ヨーレートセンサ38は、車両の旋回方向に応じて符号の異なるヨーレート信号を出力する。本ステップでは、その符号に基づいて車両の旋回方向が特定される。このようにして旋回方向が特定されると、その結果に基づいて、旋回外輪、及び旋回内輪が決定される。
【0043】ステップ118の処理が終了したら、次に図5に示すステップ120の処理が実行される。ステップ120では、車輪速センサ30の出力信号に基づいて、推定車体速Vが演算される。上述の如く、本実施例のシステムでは、車両の旋回走行時に、旋回外輪側の前輪fout及び左右の後輪rout,rinに制動力を発生させて車両挙動の安定化を図る。従って、これら旋回外輪側の前輪fout及び左右の後輪rout,rinの車輪速VW と、車体速度との間には多少の差異が発生する。これに対して、旋回内輪側の前輪FL又はFR(以下、fin と称す)は、制動力を発することがない。従って、旋回内輪側の前輪fin の車輪速VW は、常に車体速と対応した値となる。このため、ステップ120では、旋回内輪側の前輪fin の車輪速VWFL 又はVWFR を基に推定車体速Vが演算される。
【0044】上記の処理を終えたら、次にステップ122において、旋回外輪側の前輪foutに対して設定された目標スリップ率S0fout >0が成立するか否かが判別される。車両のスリップ傾向が強く、所定値(図6に示すSV0 )を超えるスリップ度SVが検出されている場合は本ステップの条件が成立する。この場合、以後ステップ124の処理が実行される。一方、車両のスリップ傾向が弱く、SVが所定値に満たない場合は本ステップの条件が不成立となる。この場合、以後ステップ124および126がジャンプされ、ステップ128の処理が実行される。
【0045】ステップ124では、旋回外輪側の前輪foutの理論車輪速V0fout が演算される。理論車輪速V0fout は、車両が推定車輪速Vで旋回走行している場合に、旋回外輪側の前輪foutに発生すると推定される車輪速であり、推定車輪速Vに基づいて演算される。尚、旋回外輪側の前輪foutに、かかる車輪速V0fout が発生している場合、その車輪のスリップ率は“0”となる。
【0046】上記の処理を終えたら、次にステップ126において、前輪foutの制動力をコントロールするための処理が実行される。具体的には、先ず理論車輪速V0foutと現実の車輪速Vfoutとに基づいて、旋回外輪側の前輪foutのスリップ率Sfout=(1−V0fout /Vfout)×100が演算される。次いで、そのスリップ率Sfoutが目標スリップ率S0fout と一致するように、旋回外輪側の前輪foutに供給するブレーキ油圧が制御される。かかる制御が実行されると、旋回外輪側の前輪foutでは、目標スリップ率S0fout を伴う制動状態が実現される。
【0047】ステップ126の処理が終了したら、次にステップ128へ進み、旋回外輪側の後輪routに対して設定された目標スリップ率S0rout >0が成立するか否かが判別される。車両のドリフト傾向が強く、所定値(図7に示すDV0 )を超えるドリフト度DVが検出されている場合は本ステップの条件が成立する。この場合、以後ステップ130の処理が実行される。一方、車両のドリフト傾向が弱く、DVが所定値に満たない場合は本ステップの条件が不成立となる。この場合、以後ステップ130および132がジャンプされ、ステップ134の処理が実行される。
【0048】ステップ130では、旋回外輪側の後輪routの理論車輪速V0rout が演算される。理論車輪速V0rout は、車両が推定車輪速Vで旋回走行している場合に、旋回外輪側の後輪routに発生すると推定される車輪速であり、推定車輪速Vに基づいて演算される。尚、旋回外輪側の後輪routに、かかる車輪速V0rout が発生している場合、その車輪のスリップ率は“0”となる。
【0049】上記の処理を終えたら、次にステップ132において、後輪routの制動力をコントロールするための処理が実行される。具体的には、先ず理論車輪速V0routと現実の車輪速Vroutとに基づいて、旋回外輪側の後輪routのスリップ率Srout=(1−V0rout /Vrout)×100が演算される。次いで、そのスリップ率Sroutが目標スリップ率S0fout と一致するように、旋回外輪側の後輪routに供給するブレーキ油圧が制御される。かかる制御が実行されると、旋回外輪側の後輪routでは、目標スリップ率S0rout を伴う制動状態が実現される。
【0050】ステップ132の処理が終了したら、次にステップ134へ進み、旋回内輪側の後輪rin に対して設定された目標スリップ率S0rin>0が成立するか否かが判別される。その結果、上記条件が不成立である場合は、ステップ136および138がジャンプされ、今回のルーチンが終了される。一方、目標スリップ率S0rin>0なる条件が成立する場合は、以後ステップ136および138において、上記ステップ130および132と同様の処理が実行され、旋回内輪側の後輪rin で目標スリップ率S0rinを伴う制動状態が実現される。
【0051】上述の如く、ECU10によって図4及び図5に示すルーチンが実行されると、車両がスピン傾向である場合には、旋回外輪側の前輪foutに適当な制動力が発生され、車両のスピン傾向が抑制される。一方、車両がドリフト傾向である場合は、左右の後輪rout,rin に適当な制動力が発生され、車両のドリフト傾向が抑制される。従って、本実施例のシステムを搭載する車両においては、旋回走行中に安定した車両挙動を実現することができる。
【0052】ところで、図9は、車輪と車体との連結構造をバネ・質量系モデルを用いて等価的に表した図を示す。図9において、Mはバネ上質量を、Cはショックアブソーバの減衰係数を、Kはサスペンションを構成するスプリングのバネ定数を、mはバネ下質量を、また、Ktはタイヤのバネ定数を、それぞれ表している。
【0053】車両の走行中は、路面の凹凸に応じてタイヤの接地面に上下方向の変位が伝達される。以下、この変位をuで表す。タイヤの接地面に入力された変位uは、タイヤを媒体としてアクスルに伝達される。以下、その結果アクスルに生ずる変位をx1 で表す。アクスルに入力された変位x1 は、ショックアブソーバおよびスプリングを介して車体に伝達される。以下、その結果車体に生ずる変位をx2 で表す。
【0054】上述の如く、車両の走行中には、タイヤの接地面、アクスル、車体に、それぞれ変位が生ずる。タイヤの接地面に生ずる変位uと、アクスルに生ずる変位x1とは通常同一ではない。従って、車両の走行中に、タイヤには、そのバネ力の変動を伴う方向の変形が生ずる。このような変形がタイヤに生ずると、タイヤが路面を押圧する力、すなわち、タイヤの接地力に変化が生ずる。このため、タイヤの接地力は、車両の走行中に随時変動している。
【0055】タイヤの接地力は、各車輪において発生される制動力に大きな影響を与える。すなわち、車輪のスリップ率が同等であったとしても、その際に僅かな接地力しか得られていない場合には、発生される制動力も比較的小さくなり、一方、その際に大きな接地力が得られているとすれば、発生される制動力は比較的大きなものとなる。
【0056】このため、タイヤの接地力が大きく変動する状況下では、上述の如く各車輪のスリップ率を目標スリップ率に整合させるべく制動力制御を行っても、精度良く所望の制動力を発生させることが困難な事態が生じ得る。かかる観点からすれば、車両の旋回時に常に安定した車両挙動を実現するためには、単に各車輪のスリップ率を目標スリップ率に制御するだけでは不十分であることになる。
【0057】ところで、路面変位に起因する変位uに対するアクスルの変位x1 の伝達関数x1 /uは、バネ上質M、ショックアブソーバの減衰係数C、スプリングのバネ定数K、バネ下質量m、タイヤのバネ定数Kt等を用いて、次式の如く表すことができる。但し、sはラプラス演算子であり、G(s) は“Kt(Ms2 +Cs+K)”を表す。
【0058】
1 /u =G(s) /{Mms4 +C(M+m)s3 +K(M+m)s2 +G(s) } ・・・(8)
車両走行中に生ずるタイヤの接地力変化は、x1 /uの変化が小さいほど抑制される。従って、上記(8)式に示すx1 /uが変化し難い設定を施せば、接地力の変化し難いサスペンション特性を実現することが可能である。x1 /uは、上記(8)式中右辺の分母に記される“Mms4 +C(M+m)s3 +K(M+m)s2 ”の値が小さいほど“1”付近で安定する。この際、減衰係数C又はバネ定数Kの少なくとも一方を小さな値とすれば、“Mms4 +C(M+m)s3+K(M+m)s2 ”の値を小さくすることができる。
【0059】本実施例のシステムにおいては、上述の如く、各車輪のサスペンションを、減衰力可変のショックアブソーバ12を用いて構成している。従って、制動力制御が実行されている車輪について、ショックアブソーバ12の減衰係数Cを低下させることとすれば、その車輪の接地力の変動を抑制し、安定した制動力を発生させることができる。
【0060】図10は、ショックアブソーバ12において実現し得る2つの減衰力特性を示す。図10中に実線で示す特性曲線は、安定した車両姿勢を維持し、かつ、走行振動を適切に減衰させることを目的として設定された減衰力特性である。従って、ショックアブソーバ12がかかる特性を実現する場合、通常の走行状態では、安定した車両挙動が維持される。また、図10中に破線で示す特性曲線は、路面からの入力を柔軟に吸収して、車体に高周波の振動が伝達されるのを防止する観点で設定された減衰力特性である。ショックアブソーバ12がかかる特性を実現する場合、柔軟な乗り心地が実現されると共に、タイヤの接地力変化を抑制することができる。
【0061】そこで、本実施例においては、通常の走行時、すなわち、旋回挙動の安定化を目的とする制動力制御が実行されていない状態での走行時には、図10中に実線で示す減衰力特性を、また、旋回挙動の安定化を目的とする制動力制御が実行されている状態での走行時には、図10中に破線で示す減衰力特性を、それぞれショックアブソーバ12に付与することととしている。
【0062】ショックアブソーバ12の減衰力特性が、このように切り換えられると、通常走行時には、優れた優れた乗り心地と安定した車両挙動とが得られ、また、制動力制御時には、制動力制御の効果を最大限に引き出すことにより、安定した車両挙動を得ることができる。
【0063】図11は、上記の機能を実現すべくECU11が実行するルーチンの一例のフローチャートを示す。同図に示すルーチンが起動すると、先ずステップ200において、何れかの車輪において、車両挙動の安定化を目的とした制動力制御が実行されているか否かが判別される。
【0064】その結果、何れの車輪においても制動力制御が実行されていないと判断された場合は、以後、ステップ202において、全ての車輪についてショックアブソーバ12の減衰力特性を通常の特性(図10中に実線で示す特性)とする処理が実行された後、今回の処理が終了される。
【0065】一方、上記ステップ200において、何れかの車輪において制動力制御が実行されていると判断された場合は、次にステップ204において、制動力制御が実行されている車輪について、ショックアブソーバ12の減衰力がソフト特性(図10中に破線で示す特性)に変更される。この場合、更にステップ206で、制動力制御が実行されていない車輪のショックアブソーバ12の減衰力が通常の特性に設定された後、今回の処理が終了される。
【0066】図12は、路面から入力される変位uの周波数と、その周波数に対して発生するx1 /uのゲインとの関係を表すシミュレーション結果を示す。図12中に実線で示す曲線は、ショックアブソーバ12の減衰特性をソフトに設定した場合の特性を、また、図12中に破線で示す曲線は、ショックアブソーバ12の減衰特性を通常特性に設定した場合の特性をそれぞれ表している。図12に示すシミュレーション結果は、減衰力特性がソフトに設定されている場合、減衰力特性が通常特性である場合に比して、より広い周波数領域でx1 /uのゲインを“0”近傍に抑制し得ることを表している。
【0067】図13は、路面から入力される変位uの周波数と、その周波数に対して発生するx1 /uの位相差との関係を表すシミュレーション結果を示す。図13中に実線で示す曲線は、ショックアブソーバ12の減衰特性をソフトに設定した場合の特性を、また、図13中に破線で示す曲線は、ショックアブソーバ12の減衰特性を通常特性に設定した場合の特性をそれぞれ表している。図13に示すシミュレーション結果は、減衰力特性がソフトに設定されている場合、高周波領域でのx1 /uの位相遅れを、通常の減衰力特性が設定されている場合に比して抑制できることを表している。
【0068】このように、ショックアブソーバ12の減衰力特性がソフトに設定されている場合、通常の減衰力特性が設定されている場合に比して広い周波数領域で、変位uとほぼ大きさが等しく、かつ、位相差の少ない変位x1 を発生させることができる。従って、ECU10によって上記図11に示すルーチンが実行された場合、制動力制御の実行されている車輪において、広い周波数領域に渡って高精度な制動力制御を実現することが可能となる。
【0069】図14は、本発明の第2実施例のシステム構成図を示す。尚、図4において上記図1に示す構成と同一の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施例のシステムにおいては、各車輪FL,FR,RL,RRに配設されるショックアブソーバ12それぞれに、ショックアブーソーバ12のストローク変化量、すなわち、サスペンションのバネ上に支持される車体とバネ下に支持されるアクスルとの相対変位量を検出するストロークセンサ14FL,14FR,14RL,14RR(以下、これらを総称する場合には、符号14を付して表す)が配設されている。
【0070】ストロークセンサ14の出力信号は、ECU10に供給されている。従って、ECU10は、各ストロークセンサ14の出力信号に基づいて、各車輪について、車体とアクスルとの相対変位量、すなわち、上記図9に示す(x1 −x2 )を検出することができる。
【0071】ところで、路面からタイヤに入力される変位uに対するアクスルの変位x1 の伝達関数x1 /uが、以下に示す式(8)で表せることは前記した通りである。
1 /u =G(s) /{Mms4 +C(M+m)s3 +K(M+m)s2 +G(s) } ・・・(8)
上述した第1実施例では、C又はKを小さくすることで、上記(8)式中右辺に記される“Mms4 +C(M+m)s3 +K(M+m)s2 ”の値を小さく、それによりタイヤの接地力の安定化を図っている。これに対して、ショックアブソーバ12の減衰係数C又はスプリングのバネ定数Kの少なくとも一方を制御して、“Mms4 +C(M+m)s3 +K(M+m)s2 =0”なる条件を成立させれば、常にx1 /u=1が成立し、タイヤの接地力を一定に維持することが可能である。
【0072】上記条件をバネ定数Kについて解くと、次式に示す関係式が成立する。
K=−{M・m/(M+m)}s2 −C・s ・・・(9)
また、上記条件を減衰係数Cについて解くと、次式に示す関係式が成立する。
C=−{M・m/(M+m)}s−K ・・・(10)
尚、上記(9)式、及び(10)式に示すsはラプラス演算子である。本実施例のシステムにおいては、例えば、ストロークセンサ14の出力値の2回微分値(d2x1/dt2−d2x2/dt2)を、ストロークセンサ14の出力値の1回微分値(dx1/dt−dx2/dt)で除算することにより求めることができる。
【0073】従って、上記(9)式又は(10)式に示す条件が成立する様に、バネ定数K又は減衰係数Cを制御すれば、タイヤの接地力を一定に維持することができる。本実施例のシステムは、上記の如くショックアブソーバ12の減衰特性をリニアに変更することができる。このため、本実施例にシステムによれば、上記(10)に示す条件が成立するように減衰力係数Cを制御することは可能である。
【0074】しかしながら、減衰力係数Cが上記(10)式に示す値に制御された場合、車両姿勢を安定に維持するために必要なショックアブソーバの剛性が不足する事態が生ずる。そこで、本実施例においては、車両姿勢を安定に維持するに十分な減衰係数C0 を基準値とし、その基準値と上記(10)式に示す減衰係数Cとの和を、制動力制御実行時における目標減衰係数C* として設定することとした。
【0075】かかる減衰係数C* が用いられた場合、制動力制御の実行中におけるx1 /uの変動幅を小さく抑制しつつ、車両姿勢を安定に維持することができる。従って、本実施例のシステムによれば、各車輪において発生される制動力を高精度に制御することが可能であり、制動力制御の効果を最大限に引き出すことができる。
【0076】図15は、上記の起動を実現すべくECU10が実行する減衰係数制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、本ルーチンは、各車輪毎に実行されるルーチンであり、ECU10は、4つの車輪それぞれについて本ルーチンの処理を実行する。
【0077】図15に示すルーチンが起動すると、先ずステップ300において、今回の制御対象である車輪について、車両挙動の安定化を目的とした制動力制御が実行されているか否かが判別される。その結果、制動力制御が実行されていないと判別された場合は、ステップ302において、通常の減衰力制御に従って決定された減衰特性がショックアブソーバ12に付与された後、今回のルーチンが終了される。
【0078】一方、ステップ300において制動力制御が実行されていると判別された場合は、次にステップ304の処理が実行される。ステップ304では、前回処理時と今回処理時のストロークセンサ40の出力値の偏差に基づいて、ショックアブソーバ12のストローク速度(dx1/dt−dx2/dt)が演算される。上記の処理が終了したら、次にステップ306において、前回処理時に演算されたストローク速度と、今回処理時に演算されたストローク速度との偏差に基づいて、ストローク速度の時間微分値(d2x1/dt2−d2x2/dt2)が演算される。
【0079】そして、それらの演算が終了したら、次に、ステップ308で、タイヤの接地力の変動を抑制し、かつ、車両姿勢を安定に維持するために実現すべきショックアブソーバの減衰係数C* が演算される。目標減衰係数C* は、上記の如く演算したストローク速度(dx1/dt−dx2/dt)、ストローク速度の微分値(d2x1/dt2−d2x2/dt2)を、次式に代入することにより演算される。
【0080】
* =C0 +α[{−M・m/(M+m)}
・{(dx1/dt−dx2/dt)/(d2x1/dt2−d2x2/dt2)}−K] ・・・(11)
尚、上記(11)式において、C0 は、上述の如く、車両挙動を安定に維持するために設定した減衰係数の基準値である。また、αは、タイヤの接地力を安定させることを目的として演算された減衰係数Cを目標減衰係数C* に反映させる度合いを表す定数である。本実施例においては、α=0.05に設定している。
【0081】目標減衰係数C* の演算が終了したら、次にステップ310において、目標減衰係数C* ≧0が成立しているかが判別される。目標減衰係数C* は、計算上負の値として求められる場合があるが、ショックアブソーバ12に負の減衰力を設定することはできない。このため、上記の条件が不成立であると判別された場合は、ステップ312において目標減衰係数C* に“0”が代入される。一方、上記ステップ310の条件が成立する場合は、ステップ314で、上記ステップ308の演算値が最終的な目標減衰係数C* として決定される。以後、ステップ316で、目標減衰係数C* がショックアブソーバ12に出力された後、本ルーチンが終了される。
【0082】図16は、路面から入力される変位uの周波数と、その周波数に対して発生するx1 /uのゲインとの関係を表すシミュレーション結果を示す。図16中に実線で示す曲線は、本実施例の手法に従ってショックアブソーバ12の減衰特性を制御した場合の特性を、また、図16中に破線で示す曲線は、ショックアブソーバ12の減衰特性を通常特性に設定した場合の特性をそれぞれ表している。図16に示すシミュレーション結果は、減衰力特性が本実施例の手法により制御された場合、減衰力特性が通常特性である場合に比して、より広い周波数領域でx1/uのゲインを“0”近傍に抑制し得ることを表している。
【0083】図17は、路面から入力される変位uの周波数と、その周波数に対して発生するx1 /uの位相差との関係を表すシミュレーション結果を示す。図17中に実線で示す曲線は、ショックアブソーバ12の減衰特性を本実施例の手法に従って制御した場合の特性を、また、図17中に破線で示す曲線は、ショックアブソーバ12の減衰特性を通常特性に設定した場合の特性をそれぞれ表している。図17に示すシミュレーション結果は、減衰力特性が本実施例の手法に従って制御された場合、高周波領域でのx1 /uの位相遅れを、通常の減衰力特性が設定されている場合に比して抑制できることを表している。
【0084】このように、ショックアブソーバ12の減衰力特性を本実施例の手法に従って制御した場合、通常の減衰力特性が設定されている場合に比して広い周波数領域で、変位uとほぼ大きさが等しく、かつ、位相差の少ない変位x1 を発生させることができる。従って、ECU10によって上記図15に示すルーチンが実行された場合、上述した第1実施例の場合と同様に、制動力制御の実行されている車輪において、広い周波数領域に渡って高精度な制動力制御を実現することが可能となる。
【0085】ところで、上述した第1および第2実施例では、何れかの車輪について制動力制御が実行されている際に、制御対象とされている車輪のショックアブソーバの減衰力特性をソフトに変更することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、何れかの車輪について制動力制御が実行されている場合に、全ての車輪についてショックアブソーバの減衰力特性をソフトに変更することとしても良い。
【0086】また、上述した第1及び第2実施例では、車両の旋回走行時にのみ制動力制御を行うこととしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば直進走行中に、横風等の影響で車両挙動が乱れた際に、その挙動の安定化を図るべく制動力制御を実行し、かつ、その際にショックアブソーバの減衰力特性を変更する等の制御を行うことも可能である。
【0087】更に、上述した第1及び第2の実施例では、ショックアブソーバの減衰係数Cを変更することで、通常走行時のサスペンション特性と、制動制御時のサスペンション特性とを変化させることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、スプリングのバネ定数Kを変更して、サスペンション特性を変更することとしても良い。
【0088】尚、上述した第1の実施例においては、ショックアブソーバ12FL,12FR,12RL,12RRが前記した接地性変更手段に相当する。また、ECU10が、上記ステップ202〜206の処理を実行することにより、前記した接地性制御手段が実現される。
【0089】また、上述した第2の実施例においては、第1の実施例と同様にショックアブソーバ12FL,12FR,12RL,12RRが前記した接地性変更手段に相当すると共に、ストロークセンサ40FL,40FR,40RL,40RRが前記した相対速度検出手段に相当する。更に、第2の実施例においては、ECU10が、上記ステップ304〜316の処理を実行することにより、前記した接地性制御手段が実現される。
【0090】
【発明の効果】上述の如く、請求項1記載の発明によれば、少なくとも制動力制御が実行されている車輪について、接地荷重が変動し難い状態を形成することができる。車輪の接地荷重が変動し難いと、車両の走行中に安定した制動力を車輪と路面との間に発生させることができる。このため、本発明に係る車両の挙動制御装置によれば、車両の走行中に、常に安定した制御精度で車両の挙動を制御することができる。
【0091】請求項2記載の発明によれば、少なくとも制動力制御が実行されている車輪について、路面からの入力に対して高い追従性が実現される。車輪に対して高い路面追従性が付与されると、車輪の接地荷重が変動し難い状態が形成される。従って、本発明に係る車両の挙動制御装置によれば、車両の走行中に各車輪の制動力を制御することで、常に安定した精度で車両の挙動を制御することができる。




 

 


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