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発明の名称 六チタン酸アルカリ金属複合化合物粉末およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平9−40423
公開日 平成9年(1997)2月10日
出願番号 特願平7−188725
出願日 平成7年(1995)7月25日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 新八郎
発明者 東 健司
要約 目的
自動車用ブレーキパッド等の摩擦材,樹脂補強材,塗料充填材等として有用なチタン酸アルカリ金属複合化合物粉末を提供する。

構成
この粉末は、六チタン酸アルカリ金属とチタニアとの微細結晶粒が混在結合した球状粒子(例えば平均粒径40μm)からなる。チタン化合物とアルカリ金属化合物を、TiO2 /M2 O>6(Mは、K,Na,Li,Rb等のアルカリ金属元素)となる割合に配合した微細粉末混合物を造粒し、約700〜1300℃で焼成処理した後、解砕処理(振動ふるい)することにより得られる。粉末の球状粒子径は、例えば100μm以下であり、これは原料粉末混合物の造粒粉の粒径により任意に制御することができる。
特許請求の範囲
【請求項1】 六チタン酸アルカリ金属〔M2 Ti6 13〕(Mはアルカリ金属元素)の結晶粒とチタニアの結晶粒とが結合した球形状を有する粒子からなることを特徴とする六チタン酸アルカリ金属複合化合物粉末。
【請求項2】 TiO2 または加熱によりTiO2 を生成するチタン化合物と、M2 O〔Mはアルカリ金属元素〕または加熱によりM2 Oを生成するアルカリ金属化合物とを、TiO2 /M2 O(モル比)>6となる割合に混合した粉末混合物を造粒し、700〜1300℃で焼成処理することを特徴とする請求項1に記載の六チタン酸アルカリ金属複合化合物粉末の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摩擦材,強化プラスチックの補強材,樹脂塗料充填材等として有用な、耐摩耗性,補強性,耐熱性等にすぐれた六チタン酸アルカリ金属複合化合物の球状粒子からなる粉末およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】チタン酸アルカリ金属は、一般式:M2 Tin 2n+1〔式中,Mはアルカリ金属元素,nは2〜8〕で示される合成無機化合物である。なかでも、トンネル型結晶構造を有する六チタン酸アルカリ金属(M2 Ti6 13)は、耐熱性,耐摩耗性,補強性,化学的安定性等にすぐれ、アスベスト繊維の代替材として各種分野での工学的応用が期待され、例えば自動車用ブレーキ装置の摩擦材料,強化プラスチック用補強材,樹脂塗料用充填材,断熱材,耐熱材等として実用化が試みられている。
【0003】チタン酸アルカリ金属の代表的な合成法の一つとして焼成法が知られている。焼成法によれば、二酸化チタン(TiO2 )または加熱によりTiO2 を生成するチタン化合物と、酸化アルカリ金属(M2 O)または加熱によりM2 Oを生成するアルカリ金属化合物とを所定の比率に混合し、焼成処理することにより、反応生成物としてチタン酸アルカリ金属が生成する。通常チタン酸アルカリ金属の粉末は、微細単結晶繊維(ウィスカー)または多結晶繊維として製造されている。これは、繊維形状に基づく配向性により、樹脂等の他材種との複合材を製造する場合の補強作用を高めることを意図したものである。他方、粉末の形態を球状粒子とすることにより、粉末の流動性や他材種に配合する場合の分散性等を高め、複合成形品の均質性・寸法精度等を改善すること等も提案されている(特開平7-53214 号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、チタン酸アルカリ金属の特性を改良することを目的とするものであり、六チタン酸アルカリ金属とチタニアとを混在させた球状粒子からなる粉末が六チタン酸アルカリ金属単相の繊維または球形状を有する粉末では得られない改良された特性を有することを見出してなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の六チタン酸アルカリ金属複合化合物粉末は、六チタン酸アルカリ金属〔M2 Ti6 13〕(Mはアルカリ金属元素)の結晶粒とチタニアの結晶粒とが結合した球形状を有する粒子からなることを特徴としている。本発明の上記粉末は、TiO2 または加熱によりTiO2 を生成するチタン化合物と、M2 O〔Mは上記と同じ〕または加熱によりM2 Oを生成するアルカリ金属化合物とを、TiO2 /M2 O(モル比)>6となる割合に混合した粉末混合物を造粒し、700〜1300℃で焼成処理する工程により製造される。
【0006】本発明の複合化合物粉末は、六チタン酸アルカリ金属とチタニアの混相効果および球形粒子である形状効果として、例えば摩擦材の用途においては、六チタン酸アルカリ金属単相からなる繊維状ないし球状粉末では得られない高摩擦係数を確保することを可能にする。球状粒子の粒径は、焼成原料粉末の造粒粉の粒径により、また六チタン酸アルカリ金属結晶とチタニアの複合比率(量比)は、原料粉末混合物のTiO2 /M2 Oのモル比によりそれぞれ任意に制御される。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の複合化合物粉末は、チタン化合物とアルカリ金属化合物とからなる原料粉末混合物を、TiO2 /M2 O(モル比)>6となるように調合し、これを造粒し、焼成処理することにより製造される。複合化合物粉末を構成する六チタン酸アルカリ金属とチタニアの結晶相の量比は、原料混合物のTiO2 /M2 Oのモル比により制御される。すなわち、原料混合物中のTiO2 とM2 Oは、TiO2 /M2 O=6の比率(モル比)で反応して六チタン酸アルカリ金属の結晶を生成し、その結晶中に、余剰のTiO2 量が混在した複合化合物が得られる。原料混合物のTiO2 /M2 O(モル比)をNで表すと、複合化合物を構成する両相の量比(チタニア結晶/六チタン酸アルカリ金属結晶のモル比)は、(N−6)/1である。
【0008】本発明の複合粉末を製造するための焼成原料粉末の一方の成分であるチタン化合物は、精製アナターゼ粉末,精製ルチル粉末等であり、またハロゲン化物,硫酸塩,硝酸塩,水和物等を使用することもできる。チタン化合物に配合されるアルカリ金属(Na,K,Rb,Li等)の化合物は、酸化物,炭酸塩等が好ましく、この他に,硫酸塩,硝酸塩,ハロゲン化合物,水酸化物等を使用することもできる。これらの粉末は比較的微細な粒度のものが好ましく使用される。
【0009】チタン化合物とアルカリ金属化合物とからなる原料粉末混合物は、これに適量の水(例えば、粉末重量の約1〜3倍量)を加えてスラリーとし、湿式噴霧乾燥処理に付し、乾燥物として適度の粒度を有する造粒粉を得、ついでこれを焼成処理する。焼成処理は、温度約700〜1300℃で行なうことを要する。700℃を下限とするのは、それより低い温度域では、六チタン酸アルカリ金属結晶の生成反応が生起しないからである。好ましくは、800℃以上の温度が適用される。1300℃を上限とするのは、それを越えると、六チタン酸アルカリ金属の繊維成長が助長され、より高温化すると、生成したチタン酸アルカリ金属結晶の溶融を生じ、結果として製品粉末の球状粒子形態が損なわれるからである。なお、焼成反応で生成する六チタン酸アルカリ金属の結晶中に混在するチタニアの結晶相は焼成温度により異なる。比較的低温度(約900℃以下)の焼成処理を行った場合のチタニアはアナターゼ型であり、比較的高温域(約950℃以上)の処理ではルチル型のチタニアとなり、その中間の温度域ではアナターゼ型とルチル型の混合となる。
【0010】焼成処理の後、焼成反応生成物を、振動ふるい等の軽度の解砕処理に付すことにより、六チタン酸アルカリ金属とチタニアの結晶粒からなる球状粒子の粉末が収得される。得られる粉末は、原料粉末混合物の造粒粉の粒子形態をほぼそのまま受け継ぎ、真球に近似した球形状を有している。球状粒子からなる粉末の粒度は、粉末の用途・使用態様等により異なるが、例えば10〜100μm程度の粒径ものもが好適である。その粒径は上記のように原料粉末の造粒粉の粒径により制御することができる。
【0011】
【実施例】二酸化チタン粉末(精製アナターゼ粉末)とアルカリ金属炭酸塩の粉末を混合して出発原料とする。精製アナターゼ粉末の粒径は約1μm以下である。上記粉末混合物に、2倍量(重量比)の水を添加してスラリーを調製した後、湿式噴霧乾燥機(スプレードライヤー)で処理して造粒粉(平均粒径:約45μm)を得る。造粒粉をアルミナるつぼに入れ、電気炉で焼成処理し、焼成処理後、反応生成物を振動ふるいにかけ、解砕された粉末を得る。
【0012】表1に、原料粉末混合物の配合組成(TiO2 /M2 Oのモル比),焼成処理温度、および焼成反応生成物の結晶構成を示す。表中、No.1〜6 は発明例、No.11 および12は比較例(TiO2 /M2 O≦6)である。得られた粉末は、走査型電子顕微鏡により、造粒粉の粒子形態と同様の真球に近似した球状粒子であることが観察される(平均粒径は約40μm)。発明例No.1〜6 の製品粉末を構成する六チタン酸アルカリ金属とチタニアの結晶相は、原料粉末のTiO2 /M2 O比に対応した混相構成を有し、他方比較例No.11 (原料粉末のTiO2 /M2 O=6)の粉末は、六チタン酸アルカリ金属結晶の単相粒子からなる粉末であり、No.12 (原料粉末のTiO2 /M2 O=4)の粉末は、四チタン酸アルカリ金属の単相粒子からなる粉末である。
【0013】
【表1】

【0014】
【参考例】
(自動車用ブレーキ・パッドの製作および摩擦特性の評価)
(1)供試ディスク・パッドの製造表2に示す組成物A,BおよびCを調製し、常法に従って予備成形(加圧力:15MPa,時間:1分)、および金型による結着成形(加圧力:15MPa,温度:170℃,時間:5分)を行い、離型後、熱処理(180℃に3Hr保持)し、ついで研摩加工を施して供試ディスク・パッドA,BおよびCを得る。表中、「基材欄」のS1 は、前記実施例欄の発明例No. 2の複合化合物粉末、S2 は、同No. 4の複合化合物粉末であり、S3 は比較例No.11 の六チタン酸カリウム単相粉末である。
【0015】(2)摩擦試験各供試ディスク・パッドについて、JASO C 406「乗用車ブレーキ装置ダイナモメータ試験方法」に準拠した第2効力試験を行うと共に、摩擦試験後の相手材表面の損傷状況から対面損傷性を判定し、表3に示す結果を得た。
制動初速度…50km/h,100km/h減速度…0.3G相手材…FC250 鋳鉄材表3に示したように、本発明の複合粉末を基材成分として製造されたディスク・パッドAおよびBは、チタン酸アルカリ金属単相粉末を基材としたディスク・パッドCを凌ぐ高い摩擦係数μを安定に維持している。また対面損傷性も良好である。
【0016】
【表2】

【0017】
【表3】

【0018】
【発明の効果】本発明の複合化合物粉末は、例えば自動車等の制動装置を構成する摩擦材料として適用することにより、改良された摩擦特性を付与するすることを可能にするる。また、その複合化合物粉末は球状粒子からなるので、微細針状形態のアスベスト繊維に指摘されているような環境汚染・健康上の懸念がなく、安全性にすぐれている。本発明の複合化合物粉末は、このほかプラスチック補強材,塗料充填材,断熱材,耐熱材等として有用である。




 

 


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