米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 計算機;電気通信 -> 松下電器産業株式会社

発明の名称 磁気記録媒体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平7−161034
公開日 平成7年(1995)6月23日
出願番号 特願平6−68370
出願日 平成6年(1994)4月6日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小鍜治 明 (外2名)
発明者 関 博司 / 桑原 賢次 / 植田 英之 / 高橋 喜代司 / 小田桐 優 / 村居 幹夫
要約 目的
本発明は、デジタルビデオテープレコーダや高精細度ビデオテープレコーダに最適の強磁性金属薄膜を磁気記録層とする磁気記録媒体に関するもので、走行耐久性・耐候保存性に優れた特性を示す磁気記録媒体を得ることを目的とする。

構成
非磁性基板1上に強磁性金属薄膜2を形成し、強磁性金属薄膜上に、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムから選ばれた少なくとも一つの元素の濃度、あるいはスズ、インジウムから選ばれた少なくとも一つの元素とホウ素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する炭素膜3を形成し、さらに潤滑剤層4を配した磁気記録媒体。
特許請求の範囲
【請求項1】非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成し、前記強磁性金属薄膜上にケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する炭素膜を設け、さらにこの炭素膜上に潤滑剤層を設けることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】炭素膜中のケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素と炭素の一重結合およびC−O結合に関与するケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた一つの元素と炭素および酸素の総和が3.0原子%以上であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】炭素膜表面近傍の、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の炭素に対する原子比率が1.0%以上であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項4】炭素膜表面近傍の、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の酸素に対する原子比率が10.0%以上であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項5】炭素膜表面近傍の、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の炭素に対する原子比率が1.0%以上であり、且つケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の酸素に対する原子比率が10.0%以上であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項6】炭素膜中の、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の炭素に対する原子比率が1.0%以上である部分の厚さが、前記炭素膜の最表面から4.0nm以下であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項7】非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成し、前記強磁性金属薄膜上にスズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素とホウ素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する炭素膜を設け、さらにこの炭素膜上に潤滑剤層を設けることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項8】炭素膜中の、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素と炭素の一重結合およびB−C結合およびC−O結合に関与するスズ、インジウムの中から選ばれた一つの元素と炭素、酸素およびホウ素の総和が3.0原子%以上であることを特徴とする請求項7記載の磁気記録媒体。
【請求項9】炭素膜表面近傍の、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素とホウ素の炭素に対する原子比率が1.0%以上であることを特徴とする請求項7記載の磁気記録媒体。
【請求項10】炭素膜表面近傍の、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素とホウ素の酸素に対する原子比率が10.0%以上であることを特徴とする請求項7記載の磁気記録媒体。
【請求項11】炭素膜表面近傍の、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素とホウ素の炭素に対する原子比率が1.0%以上であり、且つスズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素とホウ素の酸素に対する原子比率が10.0%以上であることを特徴とする請求項7記載の磁気記録媒体。
【請求項12】炭素膜中の、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素とホウ素の炭素に対する原子比率が1.0%以上である部分の厚さが、前記炭素膜の最表面から4.0nm以下であることを特徴とする請求項7記載の磁気記録媒体。
【請求項13】炭素膜のビッカース硬度が2000kg/mm2 以上であることを特徴とする請求項1または7に記載の磁気記録媒体。
【請求項14】炭素膜上の潤滑剤層が、−COOH、−OH、−SH、−NH2 、=NH、−CONH2 、−CONHR、−CONR2 、−COOR、=PR、=PRO、=PRS、−OPO(OH)2 、−OPO(OR)2 、−SO3 M(ただし、Rは炭素数1〜22の炭化水素基、Mは水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属)から選ばれた少なくとも一つの極性基を有する含フッ素系潤滑剤層であることを特徴とする請求項1または7に記載の磁気記録媒体。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高密度磁気記録に適する強磁性金属薄膜を磁気記録層とする磁気記録媒体に関し、特にデジタルビデオテープレコーダーや高精細度ビデオテープレコーダーに適する磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録の分野において、記録再生装置の小型化・高性能化に伴い、高密度記録可能な磁気記録媒体の開発が盛んに行われている。最近では磁性体が樹脂中に分散した塗布型磁気記録媒体に代わって、短波長記録に極めて有利な連続薄膜型磁気記録媒体が実用化されつつある。
【0003】いずれの磁気記録媒体でも、記録・再生過程において媒体と磁気ヘッドは、接触摺動する。すなわち、ビデオテープ・フロッピーディスクでは連続的に接触摺動し、また磁気ディスクでは間欠的に接触摺動する。しかし、連続薄膜型磁気記録媒体では磁性層表面が極めて平滑で硬度が低く、塑性変形しやすいために、磁気ヘッドとの摩擦係数が大きくなりやすい。その結果、記録・再生過程における磁性層の摩耗・損傷が生じやすくなる。また、特に高湿度環境下にて、磁性層表面における酸化・腐食が進行し、その結果、磁気特性が劣化するという問題を有していた。従って走行耐久性の向上、すなわち媒体と磁気ヘッドの接触摺動による媒体の損傷防止と、耐候保存性の向上、すなわち高湿度環境下における磁性薄膜の腐食防止のために磁気媒体表面に保護膜および潤滑剤層が設けられている。
【0004】現状では非磁性基板として、ポリエステルフィルムや、ニッケル・リン合金の無電解メッキが施されたアルミニウム等が使用されている。これらの非磁性基板は必要に応じて媒体表面粗さを制御するために、下塗層を配したり、研磨加工したりする。強磁性金属薄膜の磁気記録層として、Co−Ni、Co−O、Co−Cr、Co−Cr−Ta、Co−Ni−Cr、Co−Pt等が真空蒸着法や、スパッタ法等で形成される。保護膜としては、非晶質炭素(特開昭61−142525号公報、特開昭61−208622号公報)や、ダイヤモンド状炭素膜(特開昭62−219314号公報、特開昭61−210518号公報)や、SiO2のような酸化物(特開昭59−229743号公報)、有機化合物のプラズマ重合膜やカーボンを主成分とするプラズマ重合膜(特開昭59−171029号公報、特開昭60−89818号公報)等が用いられる。特に、炭素を主成分とする保護膜に別の元素を添加し、磁気記録媒体の走行耐久性および耐候保存性を向上させる方法として、ホウ素、ケイ素等を含んだダイヤモンド状カーボン膜を設ける方法(特開昭60−29936号公報)、リンとクロムを含有した水素含有非晶質炭素膜を設ける方法(特開昭62−139871号公報)、金属を含有した炭化水素化合物からなるプラズマ重合保護膜を設ける方法(特開昭60−237640号公報)等が知られている。
【0005】潤滑剤層はパーフルオロポリエーテル、含フッ素カルボン酸、含フッ素リン酸等が用いられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記した構成では、磁気記録媒体と磁気ヘッドの接触摺動時の走行耐久性、高湿度環境下や腐食性ガス環境下における耐候保存性は向上するが、未だ充分なものとは言えない状況である。すなわち、保護膜の硬度が充分でない場合は、走行耐久性の面で効果を得る為にその膜厚を大きくしなければならないという問題点があった。一方、ダイヤモンド状炭素膜を保護膜として用いると、その硬度の大きさによって走行耐久性は向上する。しかしダイヤモンド状炭素膜が不活性であるために潤滑剤の配向性・付着強度が不十分で、磁気記録媒体の撥水性が低下する。その結果、高湿度環境下にて磁気記録媒体を長期間放置すると、強磁性金属薄膜層に錆が発生するという問題があった。あるいはダイヤモンド状炭素膜と強磁性金属薄膜層の界面にて剥離が発生し、出力信号が低下するという問題もあった。また、潤滑剤の配向性が不十分なので、磁気記録媒体の潤滑性低下という問題も生じる。その結果、ダイヤモンド状炭素膜を保護膜として使用した場合は、媒体と磁気ヘッドの接触摺動を重ねるに従って、摩擦係数が上昇する場合がある。また、ダイヤモンド状炭素膜に種々の元素を添加した場合は、膜の硬度が低下し、走行耐久性の面で劣るという問題点が残る。
【0007】本発明の目的は、電磁変換特性を損なうことなく、すなわち保護膜の膜厚を大きくすることなく、特にビデオテープレコーダー使用時の繰り返し走行における磁気ヘッドの目づまり・磁気テープの走行性低下等のない、走行耐久性能の高い磁気記録媒体を提供することである。さらに本発明の別の目的は、電磁変換特性を損なうことなく、耐候保存性に優れた磁気記録媒体を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するために、本発明は非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成し、前記強磁性金属薄膜上に、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する高硬度で緻密な炭素膜を形成し、さらに前記炭素膜上に潤滑剤層を配した構成を有するものである。
【0009】また本発明は非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成し、前記強磁性金属薄膜上に、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つとホウ素の元素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する高硬度で緻密な炭素膜を形成し、さらに前記炭素膜上に潤滑剤層を配した構成を有するものである。
【0010】これらの炭素膜はプラズマCVD法、イオンビームデポジション法、スパッタ法等により形成される。炭素膜中にケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウム、ホウ素等の元素が含有されている部分、すなわち、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の炭素に対する原子比率が1.0%以上である部分、またはスズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素とホウ素の炭素に対する原子比率が1.0%以上である部分の厚さが大きすぎると、炭素膜全体の硬度が低くなる。その結果、磁気記録テープの走行耐久性が著しく低下し、磁気記録テープ表面上に磁気ヘッドとの接触摺動により傷が発生しやすくなる。従って、炭素に対するこれらの元素の原子比率が1.0%以上である部分は、保護膜の硬度および潤滑剤との付着性・配向性という観点から、前記炭素膜の表面近傍に存在しなければならない。そしてその厚さは、前記炭素膜の最表面から4.0nm以下が最適である。また、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素、または、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つとホウ素を含有する部分は、これらの元素を含有しない炭素膜上に島状に形成されていてもよい。
【0011】また、炭素膜上の潤滑剤との付着性および配向性という観点から、炭素膜中のケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素と炭素の一重結合およびC−O結合に関与する元素の総和が3.0原子%以上であることが望ましい。同様の理由により、炭素膜中の、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素と炭素の一重結合およびB−C結合およびC−O結合に関与するスズ、インジウムの中から選ばれた一つの元素と炭素、酸素およびホウ素の総和が3.0原子%以上であることが望ましい。炭素膜中において、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウム、ホウ素を含有する部分は、やはり炭素膜上の潤滑剤との付着性および配向性という観点から、これらの元素の酸素に対する原子比率が10.0%以上であることが望ましい。上記で限定した範囲から逸脱すると、撥水性が低下することにより耐候保存性向上効果が充分に得られなかったり、摩擦特性が悪化することにより走行耐久性能向上効果が充分に得られなかったりする。また同様の観点より、酸素と結合しているリンまたはイオウのいずれかと、酸素の総和が1.0原子%以下であることが望ましい。
【0012】炭素膜全体の厚みは10nmから20nmが耐久信頼性と信号出力とのバランス上最適である。また、ビッカース硬度は少なくとも2000kg/mm2 以上であることが望ましく、さらに望ましくは2500kg/mm2 以上と高くすると優れた走行耐久性能を得ることができる。ただし、炭素膜中に含まれる水素濃度は50原子%以下が、炭素膜硬度および炭素膜と潤滑剤の付着力向上の観点から望ましい。
【0013】炭素膜上に設けられる潤滑剤層により、炭素膜と同様、磁気ヘッドとの接触摺動によって磁気テープが受けるダメージを防いでいる。潤滑剤層として、−COOH、−OH、−SH、−NH2 、=NH、−CONH2 、−CONHR、−CONR2 、−COOR、=PR、=PRO、=PRS、−OPO(OH)2 、−OPO(OR)2 、−SO3 M(ただし、Rは炭素数1〜22の炭化水素基、Mは水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属)から選ばれた少なくとも一つの極性基を有する含フッ素系潤滑剤層であることが望ましい。例としてはC511(CH210COOHやC511(CH211OH、C1223CH(SH)COOCH2CH2817、C511(CH211NH2、C715CH2NHC1429、C511(CH210CONH2、C511(CH210CONHC817、C511(CH210CON(C8172、C511(CH210COOC817、(C817242PC1837、C817(C817242PO、C817(C817242PS、(C81724O)PO(OH)2、(C81724)PO(OC8172、C511(CH210SO3Na等があげられる。例えば、含フッ素カルボン酸を単独使用、あるいは含フッ素カルボン酸エステルと混合して使用してもよい。厚みは1nmから5nmであるが、使用する潤滑剤の種類により最適膜厚が存在する。この潤滑剤層は湿式塗布法、有機蒸着法等により形成される。
【0014】強磁性金属薄膜上にケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する炭素膜または、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素とホウ素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する炭素膜を成膜する一例として、まずメタンやエチレン、アセチレン、ヘキサンのような炭化水素ガスとArの混合ガスを用いてプラズマCVD法により、これらの元素が含有されていない部分、すなわちケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウム、ホウ素の炭素に対する原子比率が1.0%以下である炭素膜を成膜する。例えば直流プラズマCVD法では、混合ガス圧を10mTorr〜10Torrとし、直流電圧を100〜5000V印可する。その後に、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウム、ホウ素を含有した重合性モノマーガスを導入し、炭化水素ガス等との混合比率を炭素膜が成膜されるにしたがって、連続的あるいは非連続的に変化させることにより、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウム、ホウ素等の濃度が炭素膜の最表面から深さ方向に向かって減少して行くような炭素膜を得ることができる。ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウム、ホウ素を含有した重合性モノマーガスとして、テトラメチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、ホスフィン、ジエチルホスフィン、トリエチルホスフィン、硫化トリメチレン、硫化エチレン、ブチルメルカプタン、チオフェン、チアゾール、テトラメチルスズ、四塩化スズ、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、B26、BCl3、BF3等を用いることができる。
【0015】非磁性基板としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド等のフィルムやアルミ基板、ガラス基板等が使用可能である。磁性層が成膜される基板表面は10nmから30nmの突起形成処理が施されているものが信頼性とRF出力を両立する観点から最適である。
【0016】強磁性金属薄膜としては、真空成膜法などで成膜されたCo−Ni−O、Co−O、Co−Cr等が使用可能である。その厚みは50nmから300nmが一般的である。
【0017】これらの強磁性金属薄膜、炭素膜、潤滑剤は真空中において、連続成膜が可能である。
【0018】
【作用】本発明は非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成し、強磁性金属薄膜上に、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する高硬度で緻密な炭素膜を形成し、さらに前記炭素膜上に潤滑剤層を配することによって、炭素膜表面に分布するケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素と潤滑剤の極性基とが強く付着する。その結果、炭素膜と潤滑剤層の付着力が向上し、同時に潤滑剤の配向性も向上する。従って、磁気記録媒体・磁気ヘッド間の摩擦係数が低くなる。以上の作用により、ビデオテープレコーダー使用時の繰り返し走行における磁気ヘッド目づまり・走行性低下・テープ劣化を防ぐことができ、走行耐久性が向上する。さらに潤滑剤層が配向性を持って保護膜に強固に付着するので媒体自体が高い撥水性を示す。従って、高湿度・腐食性ガス環境下において、従来以上に水分・腐食性ガスの保護膜透過を防止することができる。その結果、強磁性金属薄膜上の錆、あるいは強磁性金属薄膜と非磁性基板との界面における剥離等を防ぐことができ、走行耐久性・耐候保存性が向上する。特に、スズまたはインジウムの濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する炭素膜を形成し、さらに潤滑剤層を配した場合は、非常に大きな撥水性を示し、耐候保存性が大幅に向上する。
【0019】また、炭素膜の最表面から深さ方向に向かってケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の濃度が減少するので、炭素膜と強磁性金属薄膜との付着力が低下しない。そして同時に、炭素膜が組成的に硬質なダイヤモンド状カーボン膜に近づくので、炭素膜の硬度も低下しない。その結果、炭素膜と強磁性金属薄膜との間における膜の剥離が生じにくくなり、走行耐久性が向上する。
【0020】さらに、強磁性金属薄膜上に、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つとホウ素の元素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する炭素膜を形成し、さらに前記炭素膜上に潤滑剤層を配した場合も同様の理由で走行耐久性・耐候保存性が向上する。
【0021】以上のように本発明によれば、非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成し、強磁性金属薄膜上に、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する高硬度で緻密な炭素膜を形成し、さらに前記炭素膜上に潤滑剤層を配することによって、走行耐久性・耐候保存性に優れた信頼性の高い磁気記録媒体を得ることができ、その実用上の価値は大なるものがある。
【0022】さらに、非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成し、前記強磁性金属薄膜上に、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つとホウ素の元素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する炭素膜を形成し、さらに前記炭素膜上に潤滑剤層を配することによって、配走行耐久性・耐候保存性を大幅に向上することが可能となり、信頼性の高い磁気記録媒体を得ることができる。
【0023】特に、スズまたはインジウムの濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する炭素膜を形成し、さらに潤滑剤層を配した場合は、非常に大きな撥水性を示し、耐候保存性が大幅に向上する。
【0024】
【実施例】図1は本発明の金属薄膜型磁気記録テープの拡大断面図である。1は非磁性基板、2は強磁性金属薄膜、3は炭素膜である。4は含フッ素カルボン酸を主とする潤滑剤層である。5はバックコート層で、材料としてはポリウレタン、ニトロセルロース、ポリエステルとカーボン、炭酸カルシウム等を含んでいる。厚みは500nmである。以下、製造条件も含めてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】(実施例1)非磁性基板1は500mm幅のポリエチレンテレフタレート表面に、STM分析で高さが30nm、直径が200nmの突起が1mm2 あたり105 から109 個形成されたものである。この非磁性基板1上へ、斜方真空蒸着法により酸素を導入しながら、Co(80)−Ni(20)からなる強磁性金属薄膜2を180nmの厚みで形成する。その後、バックコート層5を乾燥後の厚みが500nmになるように塗布する。このバックコート層5は、リバースロールコータによってポリウレタン・ニトロセルロース・カーボンブラックから構成された固形分30%のメチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン溶液を用いて形成される。次に強磁性金属薄膜2上に、プラズマCVD法により、炭素に対するケイ素の原子比率が1%未満の炭素膜を15nmの厚みで形成した。成膜はアルゴンとヘキサンを1:4のガス圧力比で混合し、全ガス圧を0.3Torrに保って、直流1000Vを印加して行った。その後この炭素膜上に、プラズマCVD法により、炭素に対するケイ素の原子比率が1%以上の、即ちケイ素リッチ層を0.5nmの厚みで形成した。成膜はテトラメチルシランとヘキサンを1:5のガス圧力比で混合し、全ガス圧を0.1Torrに保って、直流2000Vを印加して行った。次にテトラメチルシランとヘキサンの混合比をガス圧力比で2:5とした以外は、上記と同様の成膜条件にてケイ素リッチ層を、0.5nmの厚みでさらに形成した。以下同様にテトラメチルシランとヘキサンを順次3:5、4:5、5:5のガス圧力比で混合し、炭素に対するケイ素の原子比率が1%以上の、即ちケイ素リッチ層の一部を各々0.5nmの厚みで形成した。結果として、ケイ素含有量が炭素膜最表面から深さ方向に向かって減少する厚み17.5nm、ビッカース硬度2500kg/mm2 の炭素膜3を得た。最後に、ケイ素を含有した炭素膜3上に、湿式塗布法(リバースロールコータ)により4nm厚の潤滑剤層4を形成した。潤滑剤塗布溶液として、含フッ素カルボン酸C511(CH210COOHのイソプロピルアルコール2000ppm溶液を用いた。以上のようにして、8mm幅テープ試料(54m長)を得た。
【0026】(実施例2)
(実施例1)のケイ素リッチ層を形成する際に使用したテトラメチルシランをオクタメチルシクロテトラシロキサンに変更し、オクタメチルシクロテトラシロキサンとヘキサンの混合比を順次ガス圧力比で1:9、2:8、3:7、4:6、5:5と変化させた以外は(実施例1)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0027】(実施例3)
(実施例2)のケイ素リッチ層を形成する際に使用したヘキサンをプロパルギルアルコールに変更し、オクタメチルシクロテトラシロキサンとプロパルギルアルコールの混合比を順次ガス圧力比で1:25、2:25、3:25、4:25、5:25と変化させた以外は(実施例2)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0028】(実施例4)
(実施例1)のケイ素リッチ層を形成する際の放電電圧を直流2000Vから直流1500Vに変更した以外は(実施例1)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0029】(比較例1)
(実施例1)のケイ素リッチ層を形成せずに、炭素膜3の厚みを17nmとした以外は(実施例1)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0030】(比較例2)
(実施例2)のケイ素リッチ層を形成する際のオクタメチルシクロテトラシロキサンとヘキサンの混合比を順次ガス圧力比で1:9、2:8、3:7、4:6、5:5と変化させたのを、順次1:25、2:25、3:25、4:25、5:25と変化させた以外は(実施例2)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0031】(比較例3)
(実施例1)のケイ素リッチ層を各々1.5nmの厚み、合計7.5nmにて形成した以外は(実施例1)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0032】(比較例4)
(実施例1)の炭素膜のビッカース硬度2500kg/mm2 をビッカース硬度1300kg/mm2 の炭素膜にかえた以外は(実施例1)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0033】以上の各実施例および比較例で得られた8mm幅テープ試料について、それぞれX線光電子分光法(パーキンエルマーPHI社製、5400MC)による元素濃度分析と、以下に示す評価試験をおこなった。
(1)ヘッド目づまり、テープダメージRF出力測定用に改造した8mmVTRを用いて、各8mm幅テープ試料に映像信号を記録した。次にこの信号を記録した試料を40℃80%RHの環境下で300パス、300時間走行させる走行耐久性試験をおこなった。走行耐久試験中は、試験前に記録された信号は繰り返し再生され、RF出力として、ペンレコーダ(VP−6524A、松下通信(株)製)に記録した。RF出力が6dB以上低下したところをヘッド目づまりとし、その合計時間を計測した。
【0034】また、走行耐久性試験後のテープダメージを、目視により状態観察した。評価は5段階でおこない、実用的に全く問題のないものを5とし、実用的に問題を発生したものを1とした。
(2)摩擦係数変化(以下μk変化と略す)
走行耐久性試験前後に常温常湿環境下で摩擦係数を測定・評価した。測定条件は次の通りである。
【0035】直径4mm、表面粗さ0.2Sのステンレス(材質:MH15)円柱に磁性面が接するようにして180゜の抱き角で巻きつける。次に、入側張力を10gとし、14mm/秒で試料を走行させたときの出側張力を測定し、次式から摩擦係数を求めた。
【0036】
【数1】

【0037】(3)錆、剥離観察各8mm幅テープ試料を40℃90%RHの環境下で30日間放置する耐候性試験を行った。耐候性試験後にテープ試料を微分干渉顕微鏡により状態観察し、5段階評価を行った。評価は実用的に全く問題のないものを5とし、実用的に問題を発生したものを1とした。
(4)ドロップアウト変化(以下D.O.変化と略す)
(3)による耐候性試験に先だって、ドロツプアウトを測定した。ドロップアウト測定は、測定用に改造した8mmVTRを用い、各8mmテープ試料に映像信号を記録・再生して行われた。耐候性試験後にも同様にドロップアウトを測定を行い、試験前後のドロップアウトの変化率を評価した。なお、ドロップアウトの測定は、ドロップアウトカウンタ((株)シバソク製、VH01CZ)を用いた。設定条件を巾15μs、深さ16dBとし、それより大きい単位時間当りのドロップアウトを計数した。
(5)耐環境ガス性試験(H2 Sガス、HClガス)
各8mm幅テープ試料をH2 Sガス1000ppm含有空気中に72時間放置した後、錆の発生状態を微分干渉顕微鏡により、5段階評価をおこなった。評価は実用的に全く問題のないものを5とし、実用的に問題を発生したものを1とした。HClガスについてもH2 Sガスと同様の試験および5段階評価をおこなった。
【0038】得られた分析結果を(表1)に、評価結果を(表2)に各々示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】(表1)、(表2)から明らかなように、非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成し、強磁性金属薄膜上に、ケイ素の濃度が炭素膜最表面から深さ方向に向かって減少する高硬度で緻密な炭素膜を形成し、さらに潤滑剤層を配することによって、保護膜の硬度を低下させることなく、また保護膜と強磁性金属薄膜との付着力を低下させることなく、磁気テープ表面に潤滑剤を配向性をもたせて強固に付着させることができる。その結果、走行耐久性・耐候保存性に優れた信頼性の高い磁気記録媒体を得ることができる。実施例3、4からわかるように、炭素膜表面近傍のSi/C原子比、あるいはSi/O原子比が充分でなくなると、潤滑剤の配向性および保護膜に対する付着力が低下しはじめる。その結果走行耐久試験時の摩擦係数の変化が増大し、磁気テープ表面にダメージを与え始める。同時に磁気テープの撥水性が低下しはじめるので、耐候保存性も実施例1、2ほどではなくなる。しかし、従来の磁気テープ(比較例1)やSi,C,Oの原子比が最適な範囲からはずれた磁気テープ(比較例2)と比較すると、走行耐久性能および耐候保存性能を飛躍的に向上する事ができる。また、比較例3はSi,C,Oの原子比が最適な範囲内にあるものの、ケイ素を含有する部分の膜厚が4nm以上であるので、保護膜表面近傍における硬度が低下し、耐久走行時のテープダメージが大きくなる。また、保護膜全体の硬度が低下した場合(比較例4)においても、比較例3同様テープダメージが大きくなる。
【0042】(実施例5)次にケイ素を含有した炭素膜3のかわりに、リンを含有した炭素膜3を形成した第二の実施例について説明する。なお、本実施例の構成は、(実施例1)に示した図1と同じ構成である。
【0043】強磁性金属薄膜2上に、プラズマCVD法により、炭素に対するリンの原子比率が1%未満の炭素膜を15nmの厚みで形成した。その方法は、(実施例1)で述べた方法と同じである。その後この炭素膜上に、プラズマCVD法により、炭素に対するリンの原子比率が1%以上の、即ちリンリッチ層を0.5nmの厚みで形成した。成膜はホスフィンとヘキサンを1:10のガス圧力比で混合し、全ガス圧を0.1Torrに保って、直流2000Vを印加して行った。次にホスフィンとヘキサンの混合比をガス圧力比で2:10とした以外は、上記と同様の成膜条件にてリンリッチ層を、0.5nmの厚みでさらに形成した。以下同様にホスフィンとヘキサンを順次ガス圧力比で3:10、4:10、5:10の比で混合し、炭素に対するリンの原子比率が1%以上の、即ちリンリッチ層の一部を各々0.5nmの厚みで形成した。結果として、リン含有量が炭素膜最表面から深さ方向に向かって減少する厚み17.5nm、ビッカース硬度2500kg/mm2 の炭素膜3を得た。最後に、リンを含有した炭素膜3上に、(実施例1)に示したのと同じ方法で4nm厚の潤滑剤層4を形成した。このようにして、8mm幅テープ試料(54m長)を得た。
【0044】(実施例6)
(実施例5)のリンリッチ層を形成する際のホスフィンとヘキサンの混合比を順次ガス圧力比で1:10、2:10、3:10、4:10、5:10と変化させたのを、順次1:5、2:5、3:5、4:5、5:5と変化させた以外は(実施例5)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0045】(実施例7)
(実施例5)のリンリッチ層を形成する際に使用したヘキサンをプロパルギルアルコールに変更し、ホスフィンとプロパルギルアルコールの混合比を順次ガス圧力比で1:25、2:25、3:25、4:25、5:25とした以外は(実施例5)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0046】(実施例8)
(実施例5)のリンリッチ層を形成する際の放電電圧を直流2000Vから直流1500Vに変更した以外は(実施例5)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0047】(比較例5)
(実施例5)のリンリッチ層を形成する際のホスフィンとヘキサンの混合比を順次ガス圧力比で1:10、2:10、3:10、4:10、5:10と変化させたのを、順次1:25、2:25、3:25、4:25、5:25と変化させた以外は(実施例5)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0048】(比較例6)
(実施例5)のリンリッチ層を各々1.5nmの厚み、合計7.5nmにて形成した以外は(実施例5)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0049】(比較例7)
(実施例5)の炭素膜のビッカース硬度2500kg/mm2 をビッカース硬度1300kg/mm2 の炭素膜にかえた以外は(実施例5)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0050】以上の各実施例・比較例で得られた8mmテープ試料について、(実施例1)から(実施例4)で行なったのと同様の分析・評価試験をおこなった。
【0051】得られた分析結果を(表3)に、評価結果を(表4)に各々示す。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】(実施例9)次にリンを含有した炭素膜3のかわりに、イオウを含有した炭素膜3を形成した第三の実施例について説明する。なお、本実施例の構成は、(実施例1)に示した図1と同じ構成である。
【0055】強磁性金属薄膜2上に、プラズマCVD法により、炭素に対するイオウの原子比率が1%未満の炭素膜を15nmの厚みで形成した。その方法は、実施例1で述べた方法と同じである。その後この炭素膜上に、プラズマCVD法により、炭素に対するイオウの原子比率が1%以上の、即ちイオウリッチ層を0.5nmの厚みで形成した。成膜は硫化トリメチレンとヘキサンを1:10のガス圧力比で混合し、全ガス圧を0.1Torrに保って、直流2000Vを印加して行った。次に硫化トリメチレンとヘキサンの混合比をガス圧力比で2:10とした以外は、上記と同様の成膜条件にてイオウリッチ層を、0.5nmの厚みでさらに形成した。以下同様に硫化トリメチレンとヘキサンを順次ガス圧力比で3:10、4:10、5:10の比で混合し、炭素に対するイオウの原子比率が1%以上の、即ちイオウリッチ層の一部を各々0.5nmの厚みで形成した。結果として、イオウ含有量が炭素膜最表面から深さ方向に向かって減少する厚み17.5nm、ビッカース硬度2500kg/mm2 の炭素膜3を形成した。最後に、イオウを含有した炭素膜3上に4nm厚の潤滑剤層4を形成した。このようにして、8mm幅テープ試料(54m長)を得た。
【0056】(実施例10)
(実施例9)のイオウリッチ層を形成する際の硫化トリメチレンとヘキサンの混合比を順次ガス圧力比で1:10、2:10、3:10、4:10、5:10と変化させたのを、順次1:5、2:5、3:5、4:5、5:5と変化させた以外は(実施例9)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0057】(実施例11)
(実施例9)のイオウリッチ層を形成する際に使用したヘキサンをプロパルギルアルコールに変更し、硫化トリメチレンとプロパルギルアルコールの混合比を順次ガス圧力比で1:25、2:25、3:25、4:25、5:25と変化させた以外は(実施例9)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0058】(実施例12)
(実施例9)のイオウリッチ層を形成する際の放電電圧を直流2000Vから直流1500Vに変更した以外は(実施例9)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0059】(比較例8)
(実施例9)のイオウリッチ層を形成する際の硫化トリメチレンとヘキサンの混合比を順次ガス圧力比で1:10、2:10、3:10、4:10、5:10と変化させたのを、順次1:25、2:25、3:25、4:25、5:25と変化させた以外は(実施例9)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0060】(比較例9)
(実施例9)のイオウリッチ層を各々1.5nmの厚み、合計7.5nmにて形成した以外は(実施例9)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0061】(比較例10)
(実施例9)の炭素膜のビッカース硬度2500kg/mm2 をビッカース硬度1300kg/mm2 の炭素膜にかえた以外は(実施例9)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0062】以上の各実施例・比較例で得られた8mmテープ試料について、(実施例1)から(実施例4)で行なったのと同様の分析・評価試験をおこなった。
【0063】得られた分析結果を(表5)に、評価結果を(表6)に各々示す。
【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】(実施例13)次にイオウを含有した炭素膜3のかわりに、スズを含有した炭素膜3を形成した第四の実施例について説明する。なお、本実施例の構成は、(実施例1)に示した図1と同じ構成である。
【0067】強磁性金属薄膜2上に、プラズマCVD法により、炭素に対するスズの原子比率が1%未満の炭素膜を15nmの厚みで形成した。その方法は、(実施例1)で述べた方法と同じである。その後この炭素膜上に、プラズマCVD法により、炭素に対するスズの原子比率が1%以上の、即ちスズリッチ層を0.5nmの厚みで形成した。成膜はテトラメチルスズとヘキサンを1:5のガス圧力比で混合し、全ガス圧を0.1Torrに保って、直流1500Vを印加して行った。次にテトラメチルスズとヘキサンの混合比をガス圧力比で2:5とした以外は、上記と同様の成膜条件にてスズリッチ層を、0.5nmの厚みでさらに形成した。以下同様にテトラメチルスズとヘキサンを順次ガス圧力比で3:5、4:5、5:5の比で混合し、炭素に対するスズの原子比率が1%以上の、即ちスズリッチ層の一部を各々0.5nmの厚みで形成した。結果として、スズ含有量が炭素膜最表面から深さ方向に向かって減少する厚み17.5nm、ビッカース硬度2500kg/mm2 の炭素膜3を形成した。最後に、スズを含有した炭素膜3上に、4nm厚の潤滑剤層4を形成した。このようにして、8mm幅テープ試料(54m長)を得た。
【0068】(実施例14)
(実施例13)のスズリッチ層を形成する際のテトラメチルスズとヘキサンの全ガス圧を0.1Torrから0.15Torrに変更した以外は(実施例13)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0069】(実施例15)
(実施例13)のスズリッチ層を形成する際に使用したヘキサンをプロパルギルアルコールに変更した以外は(実施例13)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0070】(実施例16)
(実施例13)のスズリッチ層を形成する際の放電電圧を直流1500Vから直流1000Vに変更した以外は(実施例13)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0071】(比較例11)
(実施例13)のスズリッチ層を形成する際のテトラメチルスズとヘキサンの混合比を順次ガス圧力比で1:5、2:5、3:5、4:5、5:5と変化させたのを、順次1:20、2:20、3:20、4:20、5:20と変化させた以外は(実施例13)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0072】(比較例12)
(実施例13)のスズリッチ層を各々1.5nmの厚み、合計7.5nmにて形成した以外は(実施例13)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0073】(比較例13)
(実施例13)の炭素膜のビッカース硬度2500kg/mm2 をビッカース硬度1300kg/mm2 の炭素膜にかえた以外は(実施例13)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0074】以上の各実施例・比較例で得られた8mmテープ試料について、(実施例1)から(実施例4)で行なったのと同様の分析・評価試験と接触角測定をおこなった。接触角測定は、磁気記録媒体表面に0.1マイクロリットルの蒸留水を滴下し、60秒経過後の接触角を測定した。
【0075】得られた分析結果を(表7)に、評価結果を(表8)に各々示す。
【0076】
【表7】

【0077】
【表8】

【0078】(実施例17)次にスズを含有した炭素膜3のかわりに、インジウムを含有した炭素膜3を形成した第五の実施例について説明する。なお、本実施例の構成は、(実施例1)に示した図1と同じ構成である。
【0079】強磁性金属薄膜2上に、プラズマCVD法により、炭素に対するインジウムの原子比率が1%未満の炭素膜を15nmの厚みで形成した。その方法は、(実施例1)で述べた方法と同じである。その後この炭素膜上に、プラズマCVD法により、炭素に対するインジウムの原子比率が1%以上の、即ちインジウムリッチ層を0.5nmの厚みで形成した。成膜はトリメチルインジウムとヘキサンを1:5のガス圧力比で混合し、全ガス圧を0.1Torrに保って、直流1500Vを印加して行った。次にトリメチルインジウムとヘキサンの混合比をガス圧力比で2:5とした以外は、上記と同様の成膜条件にてインジウムリッチ層を、0.5nmの厚みでさらに形成した。以下同様にトリメチルインジウムとヘキサンを順次ガス圧力比で3:5、4:5、5:5の比で混合し、炭素に対するインジウムの原子比率が1%以上の、即ちインジウムリッチ層の一部を各々0.5nmの厚みで形成した。結果として、インジウム含有量が炭素膜最表面から深さ方向に向かって減少する厚み17.5nm、ビッカース硬度2500kg/mm2 の炭素膜3を得た。最後に、インジウムを含有した炭素膜3上に4nm厚の潤滑剤層4を形成した。このようにして、8mm幅テープ試料(54m長)を得た。
【0080】(実施例18)
(実施例17)のインジウムリッチ層を形成する際のトリメチルインジウムとヘキサンの全ガス圧を0.1Torrから0.15Torrに変更した以外は(実施例17)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0081】(実施例19)
(実施例17)のインジウムリッチ層を形成する際に使用したヘキサンをプロパルギルアルコールに変更した以外は(実施例17)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0082】(実施例20)
(実施例17)のインジウムリッチ層を形成する際の放電電圧を直流1500Vから直流1000Vに変更した以外は(実施例17)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0083】(比較例14)
(実施例17)のインジウムリッチ層を形成する際のトリメチルインジウムとヘキサンの混合比を順次ガス圧力比で1:5、2:5、3:5、4:5、5:5と変化させたのを、順次1:20、2:20、3:20、4:20、5:20と変化させた以外は(実施例17)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0084】(比較例15)
(実施例17)のインジウムリッチ層を各々1.5nmの厚み、合計7.5nmにて形成した以外は(実施例17)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0085】(比較例16)
(実施例17)の炭素膜のビッカース硬度2500kg/mm2 をビッカース硬度1300kg/mm2 の炭素膜にかえた以外は(実施例17)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0086】以上の各実施例・比較例で得られた8mmテープ試料について、(実施例1)から(実施例4)で行なったのと同様の分析・評価試験と接触角測定をおこなった。接触角測定は、磁気記録媒体表面に0.1マイクロリットルの蒸留水を滴下し、60秒経過後の接触角を測定した。
【0087】得られた分析結果を(表9)に、評価結果を(表10)に各々示す。
【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】(実施例21)次にインジウムを含有した炭素膜3のかわりに、ホウ素とインジウムを含有した炭素膜3を形成した第六の実施例について説明する。なお、本実施例の構成は、(実施例1)に示した図1と同じ構成である。
【0091】強磁性金属薄膜2上に、プラズマCVD法により、ホウ素とインジウムの和の炭素に対する原子比率が1%未満の炭素膜を15nmの厚みで形成した。その方法は、(実施例1)で述べた方法と同じである。その後この炭素膜上に、プラズマCVD法により、ホウ素とインジウムの和の炭素に対する原子比率が1%以上の層を0.5nmの厚みで形成した。成膜はB26とトリメチルインジウムとヘキサンを1:1:10のガス圧力比で混合し、全ガス圧を0.1Torrに保って、直流1500Vを印加して行った。次にB26とトリメチルインジウムとヘキサンの混合比をガス圧力比で2:2:10とした以外は、上記と同様の成膜条件にてホウ素とインジウムを含有する層を、0.5nmの厚みでさらに形成した。以下同様にB26とトリメチルインジウムとヘキサンを順次ガス圧力比で3:3:10、4:4:10、5:5:10の比で混合し、炭素に対するホウ素とインジウムの原子比率が1%以上の層の一部を各々0.5nmの厚みで形成した。結果として、B26とインジウム含有量が炭素膜最表面から深さ方向に向かって減少する厚み17.5nm、ビッカース硬度2500kg/mm2 の炭素膜3を得た。最後に、B26とインジウムを含有した炭素膜3上に4nm厚の潤滑剤層4を形成した。このようにして、8mm幅テープ試料(54m長)を得た。
【0092】(実施例22)
(実施例21)のホウ素とインジウムを含有する層を形成する際のB26とトリメチルインジウムとヘキサンの混合ガス圧を0.1Torrから0.15Torrに変更した以外は(実施例21)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0093】(実施例23)
(実施例21)のホウ素とインジウムを含有する層を形成する際に使用したヘキサンをプロパルギルアルコールに変更した以外は(実施例21)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0094】(実施例24)
(実施例21)のホウ素とインジウムを含有する層を形成する際の放電電圧を直流1500Vから直流1000Vに変更した以外は(実施例21)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0095】(比較例17)
(実施例21)のホウ素とインジウムを含有する層を形成する際のB26とトリメチルインジウムとヘキサンの混合比を順次ガス圧力比で1:1:10、2:2:10、3:3:10、4:4:10、5:5:10と変化させたのを、順次1:1:40、2:2:40、3:3:40、4:4:40、5:5:40と変化させた以外は(実施例21)と同じ構成の8mm幅テープ試料を作製した。
【0096】(比較例18)
(実施例21)のホウ素とインジウムを含有する層を各々1.5nmの厚み、合計7.5nmにて形成した以外は(実施例21)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0097】(比較例19)
(実施例21)の炭素膜のビッカース硬度2500kg/mm2 をビッカース硬度1300kg/mm2 の炭素膜にかえた以外は(実施例21)と同様にして8mm幅テープ試料を作製した。
【0098】以上の各実施例・比較例で得られた8mmテープ試料について、(実施例1)から(実施例4)で行なったのと同様の分析・評価試験と接触角測定をおこなった。接触角測定は、磁気記録媒体表面に0.1マイクロリットルの蒸留水を滴下し、60秒経過後の接触角を測定した。
【0099】得られた分析結果を(表11)に、評価結果を(表12)に各々示す。
【0100】
【表11】

【0101】
【表12】

【0102】以上の評価結果より明らかなように、非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成し、強磁性金属薄膜上に、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素、あるいはスズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素とホウ素の濃度が炭素膜最表面から深さ方向に向かって減少する高硬度で緻密な炭素膜を形成し、さらに潤滑剤層を配することによって、保護膜の硬度を低下させることなく、また保護膜と強磁性金属薄膜との付着力を低下させることなく、磁気テープ表面に潤滑剤を配向性をもたせて強固に付着させることができる。その結果、走行耐久性・耐候保存性に優れた信頼性の高い磁気記録媒体を得ることができる。特に耐候保存性に関しては(表8)、(表10)、(表12)から明らかなように、ケイ素、リン、イオウを含有した炭素膜の場合と比べて、炭素膜中にスズ、インジウムを含有すると、潤滑剤が炭素膜表面に分布するスズ、インジウムと配向性良く、かつ強固に付着するので、磁気記録媒体の最表面における撥水性が顕著に向上し、類まれなる耐候保存性を示す。(比較例5)〜(比較例19)の特性が悪いのは、炭素膜にケイ素を濃度勾配をもたせて含有させた場合と同様の理由による。
【0103】(実施例21)〜(実施例24)にて炭素膜中にインジウムとホウ素を含有する例を示したが、インジウムのかわりにスズを含有させた場合も優れた耐候保存性を示す。
【0104】上記実施例では、炭素膜を形成する際に直流電流のみ用いたが、直流電流と交流電流を重畳させた場合でも全く同様の作用効果を有するものである。
【0105】なお、上記実施例では、8mmVTR用薄膜テープのみについて説明したが、これに限定されるものではない。他の強磁性金属薄膜型磁気テープ、磁気ディスク等についても適用できる。
【0106】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成し、強磁性金属薄膜上に、ケイ素、リン、イオウ、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つの元素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する高硬度で緻密な炭素膜を形成し、さらに前記炭素膜上に潤滑剤層を配することによって、走行耐久性・耐候保存性に優れた信頼性の高い磁気記録媒体を得ることができ、その実用上の価値は大なるものがある。
【0107】さらに、非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成し、前記強磁性金属薄膜上に、スズ、インジウムの中から選ばれた少なくとも一つとホウ素の元素の濃度が最表面から深さ方向に向かって減少する炭素膜を形成し、さらに前記炭素膜上に潤滑剤層を配することによって、配走行耐久性・耐候保存性を大幅に向上することが可能となり、信頼性の高い磁気記録媒体を得ることができる。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013