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発明の名称 発話対認識装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平7−160718
公開日 平成7年(1995)6月23日
出願番号 特願平5−311652
出願日 平成5年(1993)12月13日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小鍜治 明 (外2名)
発明者 八木 鉄也 / 平井 誠 / 高野 敦子 / 北橋 忠宏
要約 目的
大局的な話者のプラン認識を行うことなく、質問発話と応答発話から成る発話対を認識する発話対認識装置を提供すること。

構成
発話意味内容抽出手段1は、入力された発話から言明対象、文型、発話の働きなどから成る発話の意味内容を抽出する。発話前提抽出手段2は、発話の意味内容から発話の前提を抽出する。発話対認識手段5は、語彙知識記憶手段3に記憶されている事象の概念構造から導かれる語彙知識と、質問応答関係構造記憶手段4に記憶されている質問発話と応答発話との関係を記述した構造と、入力発話の意味内容および前提とを参照し、質問応答関係を認定し発話対を認識する。
特許請求の範囲
【請求項1】入力された発話から言明対象、文型、発話の働きなどから成る発話の意味内容を抽出する発話意味内容抽出手段と、前記発話の意味内容から発話の前提を抽出する発話前提抽出手段と、事象を表す語句に付随する事象の概念構造を記憶する語彙知識記憶手段と、発話対における質問発話と応答発話の関係を記述した構造を記憶する質問応答関係構造記憶手段と、前記発話の意味内容と、前記発話の前提と、前記語彙知識と、前記質問応答関係構造とを参照して、質問応答関係を認定し発話対を認識する発話対認識手段とを有することを特徴とする発話対認識装置。
【請求項2】語句が表す対象間の概念関係を記憶する概念関係記憶手段を有し、発話対認識手段において、前記概念関係をも参照して、質問応答関係を認定し発話対を認識することを特徴とする請求項1記載の発話対認識装置。
【請求項3】プランゴール構造を含めた領域に依存した知識を記憶する領域知識記憶手段を有し、発話対認識手段において、前記領域知識をも参照して、質問応答関係を認定し発話対を認識することを特徴とする請求項1または2記載の発話対認識装置。
【請求項4】プランゴール構造に基づいて木構造により表現された対話構造を動的に管理する対話構造管理手段を有し、発話対認識手段において、前記対話構造をも参照して、発話の順序として互いに隣接しない発話対をも認識することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発話対認識装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発話対を認識する装置に関し、特に自然言語を用いた質問応答システムなどに用いられ、自然言語で行われる対話を処理する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の発話対認識手法には、特開平1−233619号公報に示されるような、対話全体を通しての話者のプラン認識を前提として、領域情報を含めた十分な情報を用いた解析によって認識する手法があった。
【0003】それ以前には、発話の構文解析結果を用いて、発話の意味内容の相似性から判定するといったような、解析結果の表層的特徴を用いて認識する手法があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の手法のうち前者の手法では、話者のプラン知識を管理するために、知識間の矛盾の取扱いや知識量の増加に伴う処理量の増加など問題が多く、実現が困難である。
【0005】後者の手法では、一見して認識できない発話対を見逃してしまう場合が多い。例として、次のような発話の組を考える。
A1 広辞苑はどこにありますか?
B2 今、売り切れているのです。
B2の発話では、A1の発話で直接的答として求められている広辞苑の置き場所が与えられないため、この発話の組を認識することができない。
【0006】本発明の目的は、対話全体を通じての話者のプラン認識を行うことなく、隣接する発話対の認識を行うことである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、入力された発話から言明対象、文型、発話の働きなどから成る発話の意味内容を抽出する発話意味内容抽出手段と、発話の意味内容から発話の前提を抽出する発話前提抽出手段と、語彙知識記憶手段と、質問応答関係構造記憶手段と、発話の意味内容と、発話の前提と、語彙知識と、質問応答関係構造とを参照して、質問応答関係を認定し発話対を認識する発話対認識手段とを備えて構成される。
【0008】
【作用】上記構成により、入力される発話の組から発話の意味内容および前提を抽出し、それらの情報と語彙知識および質問応答関係構造とを参照して、質問応答関係を認定し、発話対を認識することができる。
【0009】
【実施例】本発明の一実施例の構成を表すブロック図を図1に示す。
【0010】まず図1を用いて、本発明の一実施例の構成について説明する。発話意味内容抽出手段1は、入力された発話から言明対象、文型、発話の働きなどから成る発話の意味内容を抽出する。言明対象は、発話の中心となる語句の持つ格構造に関する情報を基に、述語名と、引数の役割及びその値の組のリストによる記述形式に変換する。例えば、前出の質問発話A1については、exist((S 広辞苑)(P ?))
が言明対象である。ここでS,Pは引数の役割がそれぞれ主体、場所であることを表す。文型は、平叙文、疑問文、命令文、依頼文のいずれかで示される。発話の働きは、情報伝達、情報要求、行為要求などで示される。
【0011】以下の述語contents,type,forseは、それぞれ発話Uttの、発話の言明対象がUcontents、文型がUtype、発話の働きがUforseであることを表す。
contents(Utt,Ucontents)
type(Utt,Utype)
forse(Utt,Uforse)
発話前提抽出手段2は、発話意味内容抽出手段1で得られた発話の意味内容から発話の前提を抽出する。図2に発話の前提の分類を示す。以下に、それぞれの前提について説明する。
・存在前提。発話の中で確定記述された個体的対象が実際に存在すること。
・叙述前提。質問文において、質問の焦点以外に記述されている事象。
・応答者の知識に関する適切性。応答者が質問に対する直接的答を知っていること。
・文脈との関係に対する適切性。発話の意味内容における対象が先行対話中あるいは発話状況の対象に一意に対応可能であること。
・「も」、「さえ」、「でも」、「すら」、「だって」、「まで」によって導入される前提。助詞によって取り立てられたものと同類の他のもので質問文の内容を満たすものがあること。
・「は」によって導入される前提。助詞によって取り立てられたものと同類の他のもので質問文の内容を満たさないものがあること。
・「だけ」、「しか」、「ばかり」、「のみ」によって導入される前提。助詞によって取り立てられたものと同類の他のものは、質問文の内容を満たさないこと。
・「さえ」、「まで」、「も」によって導入される前提。発話の意味内容が表す事象が成立する可能性が低いこと。
【0012】以下の述語prepr_log,prepr_pra,prepr_intは、それぞれ発話Uttの、意味的前提がUprepr_log、語用論的前提がUprepr_pra、質問者の意図を導く前提がUprepr_intであることを表す。
prepr_log(Utt,Uprepr_log)
prepr_pra(Utt,Uprepr_pra)
prepr_int(Utt,Uprepr_int)
語彙知識記憶手段3は、事象を表す語句に付随する事象の概念構造を記憶する。事象間の因果関係及び時系列上の関係を記述した事象の概念構造を図3に示す。
【0013】例えば、事象を表す語句「返す」の持つ格構造情報はreturn((S 人1)(O 物)(OT 人2)(T 時))
である。ここでO,OT,Tは引数の役割がそれぞれ対象、目標、時間であることを表す。これに付随する事象として、対象にオブジェクト「本」を適用した事象「本を返す」の概念構造を図4に示す。have,move−1,readを述語とする事象は基本事象である。(α X−β)は、基本事象における格要素αが、事象「本を返す」の格要素βであることを表す。T(np)におけるnはその事象が事象「本を返す」のn個目の先行事象であることを表し、T(ns)におけるnはその事象が事象「本を返す」のn個目の後続事象であることを表す。また、T(n)におけるnは、その事象が事象「本を返す」を構成する基本事象のうちn個目の基本事象であることを表す。
【0014】この事象の概念構造から導かれる語彙知識の例として、以下の述語cause,pre_condはそれぞれ、事象Qが事象Pの後続状態である、すなわち事象Pが事象Qを引き起こすことと、事象Pが事象Qの前提条件であることとを表す。
cause(P,Q)
pre_cond(P,Q)
質問応答関係構造記憶手段4は、発話対における質問発話Quesと応答発話Ansの関係を記述した構造を記憶する。二発話間の関係pairは、質問発話からその直接的答となる情報である応答原情報Org_replyを導く推論ref_whatと、応答原情報から応答発話を導く推論ref_howとの二段階の推論により記述される。以下では各種の関係構造を、プログラム言語Prologのホーン節の形式を用いて記述する。
pair(Ques,Ans):−ref_what(Ques,Org_reply,Inf_org),ref_how(Org_reply,Im_rpl1,Inf_rpl1),………,ref_how(Im_rpln,Ans,Inf_ans).
応答原情報から応答発話を導く推論ref_howは、応答原情報を如何に対話相手に伝えるかという修辞的展開にあたる推論であり、0回以上繰り返される。上記発話間関係pairの記述において、Inf_*は質問応答関係名であり、Im_rpl*は各推論による中間段階における応答情報である。
【0015】質問発話Quesと応答原情報Org_replyとの関係構造の記述例を以下に示す。
(w1)正常応答。質問に対する直接的答をそのまま伝える。
ref_what(Ques,Org_reply,正常応答):−forse(Org_reply,情報伝達),contents(Ques,P),contents(Org_reply,Q),or(match(P,Q),match(P,not(Q))).
ここで、match(P,Q)は事象Pと事象Qとがほぼ等しいということを表し、具体的には、互いの事象においてその述語と引数とが類似を許して照合できることを示す。プログラム言語Prologを用いた計算機においては、Prologの操作の一つであるユニフィケーションにより実現できる。
(w2)誤解指摘。質問発話の意味的前提が成立しないことを伝える。
ref_what(Ques,Org_reply,誤解指摘):−forse(Org_reply,情報伝達),prepr_log(Ques,P),contents(Org_reply,Q),match(not(P),Q).
応答原情報Org_replyと応答発話Ansとの関係構造の記述例を以下に示す。
(h1)直接的表現。応答原情報をそのまま発話する。
ref_how(Org_reply,Ans,直接的表現):−forse(Ans,forse(Org_reply)),contents(Org_reply,Q),contents(Ans,R),match(Q,R).
(h2)理由。応答原情報の成立する理由を伝える。
ref_how(Org_reply,Ans,理由):−forse(Ans,情報伝達),contents(Org_reply,Q),contents(Ans,R),or(cause(R,Q),pre_cond(not(R),not(Q))).
発話対認識手段5は、発話の意味内容と、発話の前提と、語彙知識と、質問応答関係構造とを参照して、質問応答関係を認定し発話対を認識する。
【0016】本発明の一実施例の具体的な動作を、前出の質問発話A1と応答発話B2とを用いて説明する。
【0017】発話意味内容抽出手段1は、入力された二発話の意味内容として以下に示すような情報を抽出する。
contents(A1,exist((S 広辞苑)(P ?)))
contents(B2,sold_out((S 広辞苑)(P 書店)))
forse(B2,情報伝達)
発話前提抽出手段2は、質問発話A1の意味内容から、存在前提として以下に示す情報を抽出する。
prepr_log(A1,exist((S 広辞苑)(P 書店)))
発話対認識手段5は、上記発話の意味内容および前提と、語彙知識記憶手段3に記憶されている事象「売り切れる」の概念構造から導かれる語彙知識cause(sold_out((S 物)(P 店)),not(exist((S 物)(P 店))))
と、質問応答関係構造記憶手段4に記憶されている誤解指摘と理由の二つの質問応答関係構造とを参照して、以下のように発話対を認識する。
ref_what(A1,Org_reply,誤解指摘):−forse(Org_reply,情報伝達),prepr_log(A1,P),contents(Org_reply,Q),match(not(P),Q).
ref_how(Org_reply,B2,理由):−forse(B2,情報伝達),contents(Org_reply,Q),contents(B2,R),cause(R,Q).
ただし、上記の関係構造において、P:=exist((S 広辞苑)(P 店))
Q:=not(exist((S 広辞苑)(P 店)))
R:=sold_out((S 広辞苑)(P 店))
である。従って、pair(A1,B2):−ref_what(A1,Org_reply,誤解指摘),ref_how(Org_reply,B2,理由).
となり、質問応答関係を誤解指摘および理由であると認定するとともに、質問発話A1と応答発話B2とを発話対として認識できる。
【0018】なお、本発明の第2の実施例として、語句が表す対象間の概念関係を記憶する概念関係記憶手段6およびプランゴール構造を含めた領域に依存した知識を記憶する領域知識記憶手段7を有し、発話対認識手段5において、概念関係および領域知識をも参照して、質問応答関係を認定し発話対を認識する実施例の構成を表すブロック図を図5に示す。以下、第2の実施例について説明する。
【0019】概念関係記憶手段6は、語句が表す対象間の概念関係を記憶する。この対象間の概念関係から導かれる知識として、以下の述語same_category,is_aはそれぞれ、対象Aと対象Bが同一の対象の直接の下位概念であること、対象Aが対象Bの下位概念であることを表す。
same_category(A,B)
is_a(A,B)
このような述語is_aを導入したことにより、質問応答関係構造記憶手段4において、次に示すような応答原情報と応答発話との関係構造の記述が可能となる。
(h3)判断の根拠。応答原情報の内容を判断した根拠を伝える。
ref_how(Org_reply,Ans,判断の根拠):−forse(Ans,情報伝達),contents(Org_reply,Q),contents(Ans,R),or(is_a(Q,R),cause(R,Q),pre_cond(Q,R)).
領域知識記憶手段7は、プランゴール構造を含めた領域に依存した知識を記憶する。プランゴール構造から導かれる知識として、以下の述語subplanは、事象Pが事象Qを構成するサブプランであることを表す。
subplan(P,Q)
このような述語subplanを導入したことにより、質問応答関係構造記憶手段4において、次に示すような質問発話と応答原情報との関係構造の記述が可能となる。
(w3)途中経過報告。質問に対する答を得ることをゴールとしてプランニングを実行し、その途中経過を伝える。
ref_what(Ques,Org_reply,途中経過報告):−forse(Org_reply,情報伝達),contents(Ques,P),contents(Org_reply,Q),subplan(Q,P).
【0020】
【発明の効果】上述のように本発明の発話対認識装置によれば、入力発話の意味内容および前提を抽出し、それらの情報と質問応答関係構造および語彙知識などの一般的な知識とを参照することにより、話者のプラン知識の管理などの複雑な処理をする事なく、応答発話の質問応答関係を認定し発話対を認識することができる。




 

 


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