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磁気記録媒体の製造装置および製造方法 - 松下電器産業株式会社
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発明の名称 磁気記録媒体の製造装置および製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平7−121871
公開日 平成7年(1995)5月12日
出願番号 特願平5−262176
出願日 平成5年(1993)10月20日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小鍜治 明 (外2名)
発明者 東間 清和 / 吉本 和也 / 杉田 龍二 / 石田 達朗
要約 目的
優れた記録再生特性を有する磁気記録媒体の連続真空蒸着製造装置を実現する。

構成
蒸発原子の高分子フィルム基板1への入射の範囲を規制する入射初期および入射終期の遮蔽板61、62に構成された開口部を有し、蒸発源5が開口部の鉛直下にあり、高分子フィルム基板の走行方向における蒸発源の幅Wsが、高分子フィルム基板の走行方向で鉛直方向からみた開口部の開口幅Woより大なること、および蒸発源における電子ビーム8照射の範囲WeがWoより大なる範囲に及ぶ構成とする。
特許請求の範囲
【請求項1】回転する円筒状キャンの周面に沿って走行しつつある高分子フィルム基板上に、薄膜型磁気記録媒体を製造する連続真空蒸着装置において、蒸発原子の前記高分子フィルム基板への入射の範囲を規制する入射初期および入射終期の遮蔽板で構成される、前記蒸発原子が通過する開口部を有し、蒸発源が前記開口部の鉛直下にあり、前記高分子フィルム基板の走行方向における前記蒸発源の幅が、前記高分子フィルム基板の走行方向で鉛直方向からみた前記開口部の開口幅より大なること、および前記蒸発源の加熱の手段が電子ビーム照射であり、前記蒸発源における前記電子ビーム照射の範囲が、前記高分子フィルム基板の走行方向で鉛直方向からみた前記開口部の開口幅より大なる範囲に及ぶことを特徴とする磁気記録媒体の製造装置。
【請求項2】請求項1記載の磁気記録媒体の製造装置で、高分子フィルム基板上に直接あるいは下地膜を介して、開口部を円筒状キャンの回転中心軸の略鉛直下とし、略垂直入射蒸着によってCo基磁性材料からなる薄膜型磁気記録媒体を製造する方法において、蒸発源を加熱するための電子ビームの掃引を制御して、前記高分子フィルム基板の走行方向で鉛直方向からみた前記開口部の開口範囲内よりも前記開口範囲外における蒸発速度を高くすることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】請求項1記載の磁気記録媒体の製造装置で、高分子フィルム基板上に直接あるいは下地膜を介して、斜方入射蒸着によってCo基磁性材料からなる薄膜型磁気記録媒体を製造する方法において、蒸気の入射方向と前記高分子フィルム基板の法線とのなす角を入射角と定義するとき、膜形成初期が高入射角で膜形成終期が低入射角となるように、前記高分子フィルム基板走行方向に対して開口部を配置し、蒸発源を加熱するための電子ビームの掃引を制御して、前記高分子フィルム基板の走行方向で鉛直方向からみた前記開口部の初期入射部および終期入射側の開口範囲外における蒸発速度を、前記開口部の開口範囲内における終期入射側の蒸発速度よりも、高くすることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】請求項1記載の磁気記録媒体の製造装置で、高分子フィルム基板上に直接あるいは下地膜を介して、斜方入射蒸着によってCo基磁性材料からなる薄膜型垂直磁気記録媒体を製造する方法において、蒸気の入射方向と前記高分子フィルム基板の法線とのなす角を入射角と定義するとき、膜形成初期が低入射角で膜形成終期が高入射角となるように、前記高分子フィルム基板走行方向に対して開口部を配置し、蒸発源を加熱するための電子ビームの掃引を制御して、前記高分子フィルム基板の走行方向で鉛直方向からみた前記開口部の終期入射部および初期入射側の開口範囲外における蒸発速度を、前記開口部の開口範囲内における初期入射側の蒸発速度よりも、高くすることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高密度記録再生特性に優れた磁気記録媒体を製造する磁気記録媒体の製造装置および製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、磁気記録再生装置は小型化、高密度化の傾向にあり、従来の塗布型媒体の高密度化の限界を越えるものとして金属薄膜型媒体が注目されている。これに関しては、Co−Ni−Oから成る金属薄膜型媒体がVTR用の磁気テープとして実用化されている。
【0003】以下、図面を参照しながら従来の蒸着法の一例について説明する。図8および図9は従来の連続真空蒸着装置の断面の概略を示す。図8および図9はそれぞれ垂直磁気異方性を有する磁性層および斜方磁気異方性を有する磁性層を作製する連続真空蒸着装置を示している。図8、9において、1は高分子フィルム基板、2は円筒状キャン、3および4は高分子フィルム基板の供給ロールあるいは巻き取りロールである。7は蒸発源であり、蒸発源の加熱手段は高い蒸発速度を得るために、通常、電子ビーム加熱である。また、幅の広い高分子フィルム基板を用いる場合には、電子ビームを高分子フィルム基板の幅方向に掃引して、幅方向での膜特性の均一化する工夫がなされている。61および62は蒸発原子の入射を制限し蒸気の高分子フィルム基板への入射角を規定する遮蔽板である。入射角は、通常、蒸発原子の入射方向と高分子フィルム基板の法線とのなす角で定義される。高分子フィルム基板が矢印Aの方向である場合、遮蔽板61が初期入射角を規定する遮蔽板となり、遮蔽板62が終期入射角を規定する遮蔽板となる。遮蔽板の位置によって入射角を制御し膜の磁気特性を制御し磁気記録に適した磁性層を形成する。矢印AおよびBのいずれの走行方向においても、入射角は入射初期の入射角から終期の入射角へと連続的に変化する。そのために、膜を構成する柱状粒子は湾曲する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】円筒状キャンを用いる連続真空蒸着法においては、初期入射側と終期入射側とで入射角が連続的に変化するために、薄膜を構成する柱状粒子が湾曲して成長することが避けられない。柱状粒子が湾曲していると、例えば膜の充填率が膜厚方向で変化すること、磁気特性が膜厚方向で変化することなどの原因となる。また、膜の磁気異方性に対して膜を構成する粒子の形状磁気異方性の寄与が大なる場合には、柱状粒子の湾曲は磁気異方性の分散を大きくしてしまう。膜の信頼性や記録再生特性を改善するためには、膜厚方向における特性の均一化や磁気異方性の分散を小さくすることが望まれる。これらを実現するためにの一つの方法として、基板への蒸発原子の入射の範囲を狭くすることが考えられる。しかし、この方法では、膜の生産性が悪く、実際に大量生産することを考えると実用的でない。円筒状キャンを用いた連続真空蒸着法における、膜特性の均一性と生産性の確保とをともに満足する磁気記録媒体の製造装置及び製造方法の実現が強く望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記観点から高密度記録再生特性に優れた磁気記録媒体を製造する装置および方法を提供するものであり、第1の発明は、回転する円筒状キャンの周面に沿って走行しつつある高分子フィルム基板上に、薄膜型磁気記録媒体を製造する連続真空蒸着装置において、蒸発原子の前記高分子フィルム基板への入射の範囲を規制する入射初期および入射終期の遮蔽板で構成される、前記蒸発原子が通過する開口部を有し、蒸発源が前記開口部の鉛直下にあり、前記高分子フィルム基板の走行方向における前記蒸発源の幅が、前記高分子フィルム基板の走行方向で鉛直方向からみた前記開口部の開口幅より大なること、および前記蒸発源の加熱の手段が電子ビーム照射であり、前記蒸発源における前記電子ビーム照射の範囲が、前記高分子フィルム基板の走行方向で鉛直方向からみた前記開口部の開口幅より大なる範囲に及ぶことを特徴としており、第2の発明は、上記第1の発明の磁気記録媒体の製造装置を用いた製造方法で、高分子フィルム基板上に直接あるいは下地膜を介して、開口部を円筒状キャンの回転中心軸の略鉛直下とし、略垂直入射蒸着によってCo基磁性材料からなる薄膜型磁気記録媒体を製造する方法において、蒸発源を加熱するための電子ビームの掃引を制御して、前記高分子フィルム基板の走行方向で鉛直方向からみた前記開口部の開口範囲内よりも前記開口範囲外における蒸発速度を高くすることを特徴としており、第3の発明は、上記第1の発明の磁気記録媒体の製造装置を用いた製造方法で、高分子フィルム基板上に直接あるいは下地膜を介して、斜方入射蒸着によってCo基磁性材料からなる薄膜型磁気記録媒体を製造する方法において、蒸気の入射方向と前記高分子フィルム基板の法線とのなす角を入射角と定義するとき、膜形成初期が高入射角で膜形成終期が低入射角となるように、前記高分子フィルム基板走行方向に対して開口部を配置し、蒸発源を加熱するための電子ビームの掃引を制御して、前記高分子フィルム基板の走行方向で鉛直方向からみた前記開口部の初期入射部および終期入射側の開口範囲外における蒸発速度を、前記開口部の開口範囲内における終期入射側の蒸発速度よりも、高くすることを特徴としており、第4の発明は、上記第1の発明の磁気記録媒体の製造装置を用いた製造方法で、高分子フィルム基板上に直接あるいは下地膜を介して、斜方入射蒸着によってCo基磁性材料からなる薄膜型垂直磁気記録媒体を製造する方法において、蒸気の入射方向と前記高分子フィルム基板の法線とのなす角を入射角と定義するとき、膜形成初期が低入射角で膜形成終期が高入射角となるように、前記高分子フィルム基板走行方向に対して開口部を配置し、蒸発源を加熱するための電子ビームの掃引を制御して、前記高分子フィルム基板の走行方向で鉛直方向からみた前記開口部の終期入射部および初期入射側の開口範囲外における蒸発速度を、前記開口部の開口範囲内における初期入射側の蒸発速度よりも、高くすることを特徴とするものである。
【0006】
【作用】本発明の磁気記録媒体の製造装置の概略を図1および図2に示す。図1および図2はそれぞれ垂直磁気異方性を有する磁性層および斜方磁気異方性を有する磁性層を作製する連続真空蒸着装置を示している。図1、2において、1は高分子フィルム基板、2は円筒状キャン、3および4は高分子フィルム基板を供給ロールあるいは巻き取りロールである。61および62は蒸発原子の入射を制限し蒸気の高分子フィルム基板への入射角を規定する遮蔽板である。図8、9の従来例と異なるのは、蒸発源5である。
【0007】本発明に用いられる蒸発源について説明する。図1、2において破線で示しているのは、遮蔽板61および62によって構成される開口部分の鉛直方向からみたときの幅である。この幅をWoとする。蒸発源5の高分子フィルム基板走行方向における幅をWsとする。本発明の一つの特徴はWoよりもWsが大きいことである。8は蒸発源を加熱するための電子ビームを示している。電子ビーム8の掃引範囲をWeとする。本発明のもう一つの特徴はWoよりもWeが大きいことである。すなわち、開口部より広い蒸発源を有し、かつ、電子ビームの掃引により開口部よりも広い範囲で蒸発速度を全体的にも局所的にも制御できることが特徴である。
【0008】次に、上記装置を用いての本発明の磁気記録媒体の製造方法について説明する。
【0009】図1を用いる場合について説明する。略垂直入射蒸着でCoとCrあるいはCoとNiとCrを主成分とするCo基磁性材料からなる垂直磁気記録用の薄膜型磁気記録媒体を製造する場合、記録再生特性から見て重要であるのは初期入射角であり、信頼性の点で重要であるのは終期入射角である。
【0010】上記材料の特徴は基板に垂直な強い一軸異方性である。この一軸異方性は主に結晶磁気異方性に起因している。膜の結晶性および磁気特性は初期入射角に強く依存する。したがって、蒸発原子の基板への初期入射角をできるだけ0゜(垂直入射)にし、c軸を膜面垂直に高配向させることが必要である。
【0011】一方、終期入射角は結晶性に大きな影響を与えることはなく、むしろ、信頼性に影響を与える。終期入射角を大きくすると、膜表面近傍で膜の充填率が低下し、機械的強度が低下する。機械的強度を確保するためには、終期入射角を小さくする必要がある。
【0012】実際に膜を形成する際には、結晶性と膜の機械的強度とをともに満足させるために開口部を狭くしなくてはならいので、生産性が犠牲となっている。開口部を広く設定した状態でかつ上記2点の課題をともに満足するのが本発明である。
【0013】本発明では、図3(a)において、Woで示される範囲内よりも外側の部分での蒸発速度を高くするわけである。開口部を広くしても、蒸発速度の高い両側からの斜め入射蒸気が、円筒状キャンの周面に沿って走行している高分子フィルム基板の法線に平行に入射することになる。この結果、本方法では、実質的な入射角が、初期入射から終期入射に至るまで、ほぼ0゜とすることが可能となる。すなわち、広い開口部でありながら、柱状粒子が湾曲がほとんど無い状態で形成され、結晶性が高く機械的強度に優れた膜を生産性よく形成できる。なお、蒸発速度を制御する方法としては、電子ビームの掃引において、蒸発速度を高くしたい部分での電子ビームの滞在時間が長くなるように制御することで可能である。
【0014】磁性層を構成するCo基磁性材料がCoとOあるいはCoとNiとOであるような、主成分としてOを含有する磁性層の場合には、結晶磁気異方性よりも形状磁気異方性の寄与が大きいとされている。このような場合においては、柱状粒子が湾曲しない本発明の方法では、磁気異方性の分散の小さい優れた膜が形成できる。なお、CoとOあるいはCoとNiとOを主成分とする磁性層を形成する場合には、蒸発源に仕込む材料はCoあるいはCoとNiであり、酸素は別に真空層内に導入して、反応蒸着法により磁性層を形成する。
【0015】図1を用いる場合、矢印AとBで示される高分子フィルム基板の走行方向は、どちらの方向でも基本的に同等性能の膜を得ることができる。
【0016】図2を用いる場合について説明する。斜方蒸着法で、CoとOあるいはCoとNiとOを主成分とするCo基磁性材料からなる薄膜型磁気記録媒体を製造する場合、上述したように形状磁気異方性を主に制御する必要がある。斜方蒸着法で形成される磁性層の異方性は斜方異方性であり、容易軸方向を所望の角度とし、かつ、異方性分散を小さく抑えることが要求される。この要求に対して、入射の範囲を狭くすることが対策の一つとして考えられる。しかし、この方法は生産性を犠牲にすることになる。本発明は、上記要求と生産性とをともに満足させる方法を提供するものである。
【0017】図3(b)において、高分子フィルム基板走行方向で開口部を鉛直方向からみたときの蒸発源での位置をWo1およびWo2とする。そして、Wo1を開口部の高入射側とし、Wo2を低入射側とする。すなわち、図2で矢印Aで示される高分子フィルム基板の走行方向の場合である。鉛直方向におけるWo1と高分子フィルム基板との距離は、Wo2と高分子フィルム基板との距離より大きくなる。さらに、高入射側は低入射角側よりも付着効率が低い。したがって、本発明では、Wo1における蒸発速度を高くし、Wo2における蒸発速度を低くするとともに、開口部の範囲Wo外のWo2の外側部分における蒸発速度を高くする。このようにして蒸発源の各部の蒸発速度を最適に設定することで、湾曲が抑制された柱状粒子からなる膜を形成することが可能となる。すなわち、膜形成初期から膜形成終期にいたる間の入射角の変化が抑制されているわけである。また、蒸発速度の高い部分が複数有ることから、あたかも複数の蒸発源が設置されているような状態になるため、従来法よりも開口部を広く設定することが可能となり、生産性の点で有利となる。
【0018】上記のような蒸発速度の設定で、図2における基板走行方向Aで形成される膜の磁気異方性の分散は小さい。これは記録再生特性を向上させる上で大変有利である。そして、図9に示した従来法に比べて酸素の導入量が少量でよいという特徴がある。従来法では、低入射角である膜形成終期側において膜の堆積速度が高い。このような膜の保磁力を高めるためには、膜形成終期部分に多量の酸素を供給する必要がある。多量の酸素は、蒸発原子を散乱させる効果が大きいので、膜全体の充填率が低下させるとともに膜の表面性を低下させる。一方、本発明においては、いわば、所望の入射角のみで膜が形成されるため少量の酸素で所望の磁気特性が得られる。導入する酸素量が少ないと膜の充填率が、たとえ高入射角でも、顕著に低下することはない。このことは耐食性を含めた信頼性の点で有利である。そして、記録再生特性の点からも、表面が平滑であるために、スペーシングロスが小さく有利である。
【0019】上記のような蒸発速度の設定で、図2における基板走行方向Bで形成される膜について説明する。従来法により図9における基板走行方向Bで形成した膜は機械的特性および耐食性に大きな問題があり、磁気記録媒体として完成することは困難であった。一方、本発明の方法で作製した膜は、図2における基板走行方向Aで形成された膜と大差がない。これは、上述したように、膜形成初期から膜形成終期に至るまでに実質的な入射角の変化が小さいからである。本方法で形成した膜の特徴は、膜を構成する柱状粒子の粒子径が基板側から膜表面に至るまで比較的均一であり、かつ小径なことである。これは、堆積速度の高い低入射角側が膜形成初期となっているためと考えられる。膜形成初期においては大きな粒径となりにくい。そして、徐々に膜堆積速度の低くなる高入射角側で堆積していくので粒径の増大が抑制される。基板走行方向がAの場合には、膜堆積速度の低い高入射角側が膜形成初期であり、膜形成初期では小粒径となるが、徐々に膜堆積速度の高くなる低入射角側で堆積していくにつれ粒径が増大していく。従来法で基板走行方向がAの場合にはさらにその傾向が強い。粒径が小さいことは媒体ノイズの低減につながるものである。
【0020】
【実施例】以下に本発明の実施例について説明する。
【0021】図1に示した本発明の一実施例の磁気記録媒体の製造装置を用いて、Co−Cr膜を形成した。Co−Cr膜は垂直磁気記録媒体の磁性層として注目されているものである。円筒状キャン2の直径は1mである。円筒状キャン2の温度は250゜とした。蒸発源5の幅Wsは40cmとし円筒状キャン2の中心から鉛直下の80cmに配置した。高分子フィルム基板1の走行方向は矢印Aの方向とした。遮蔽板61および62の開口は、図4に示すようにした。ここで、φiおよびφfは円筒状キャン2の中心からおろした鉛直線からの角度である。本実施例においては、φiおよびφfをそれぞれ10゜とした。蒸発源5にはCo−Cr合金を仕込み、70kWの電子ビームによって熔解した。電子ビームの掃引を調節して、図3(a)で示されるような蒸発速度分布とした。蒸発速度のピークの間隔は約30cmとした。Co−Cr膜の膜厚が約0.2μmとなるように高分子フィルム基板1の走行速度を調整し、Co−Cr膜を形成した。比較例として、電子ビームの掃引を調節して、図3(c)の(1)で示されるような蒸発速度分布とした場合についても、Co−Cr膜を形成した。本実施例および比較例で形成したCo−Cr膜について、X線回折法を用いて、c軸の配向性を評価した。評価は(002)面に関するロッキング曲線の半値幅を測定することによった。この評価方法では、半値幅が小さいほど配向性が高いと判断される。本実施例によって形成したCo−Cr膜の半値幅は約5゜であり、比較例で形成したCo−Cr膜の半値幅は約12゜であった。この評価から、本実施例で形成したCo−Cr膜は結晶は移行性に優れていることがわかる。なお、比較例で用いた蒸発速度分布で本実施例と同程度の半値幅を得るためには、図4で示したφiおよびφfをそれぞれ4゜以下にする必要があった。このことは、本実施例においては、開口幅が広くても実質的に垂直入射に近い状態が実現されていることを示すものである。また、図6(a)および(b)を見てもこのことがさらに明確となる。図6(a)および(b)は、Co−Cr膜を構成する柱状粒子の概略を示したものであり、(a)が本実施例、(b)が比較例の場合である。本実施例の場合、膜形成初期から膜形成終期に至るまで実質的に入射角がほとんど変化していないために、柱状粒子が図6(a)に示されるようにほぼ直線的に成長する。生産性について、高分子フィルム基板1の走行速度で評価すると、比較例の方が本実施例よりも約20%程度高かった。しかし、本実施例と同程度の配向性の膜が得られる狭い開口幅では、1/3程度に速度を低下させる必要があった。
【0022】つぎに、図1に示した本発明の一実施例の磁気記録媒体の製造装置を用いて、上記実施例および比較例と同様の構成でCo部分酸化膜を形成した。Co部分酸化膜もCo−Cr膜と同様に垂直磁気記録媒体の磁性層として注目されているものである。ただし、円筒状キャン2の温度は室温とした。蒸発源5にはCoのみを仕込んだ。部分酸化膜とするために、真空槽内に酸素を導入した。本実施例および比較例で形成したCo部分酸化膜を磁気異方性エネルギーKuで評価した。Kuは磁気トルク計を用いて得られるトルク曲線から評価できる。Kuが大きいほど磁気異方性の分散が小さいと言える。本実施例で形成したCo部分酸化膜のKuは2.3×106erg/ccであり、比較例の場合が1.9×106erg/ccであった。なお、比較例で用いた蒸発速度分布で本実施例と同程度のKuを得るためには、図4で示したφiおよびφfをそれぞれ5゜以下にする必要があった。このことは、本実施例においては、開口幅が広くても実質的に垂直入射に近い状態が実現されていることを示すものである。機械的強度について、スチル耐久時間で評価すると、本実施例で形成したCo部分酸化膜の方が比較例の膜よりほぼ2倍以上であった。スチル耐久時間は、テープ状に加工した媒体を市販のVTRデッキにかけ、スチル状態で再生したときの出力が初期出力より3dB低下した時間で評価した。本実施例で形成した膜が60分以上であり、比較例の膜が35分であった。以上のように磁気異方性エネルギーおよび機械的強度の点で本実施例で形成した膜が優れているのは、Co−Cr膜の場合に図4で示したような柱状粒子の形態の差が原因であると考えられる。
【0023】つぎに、斜方蒸着の場合について説明する。図2に示した本発明の一実施例の磁気記録媒体の製造装置を用いて、Co部分酸化膜を形成した。円筒状キャン2の直径は1mである。円筒状キャン2の温度は室温とした。蒸発源5の幅Wsは35cmとし円筒状キャン2の中心から鉛直下の60cmに配置した。また、蒸発源5の水平方向の位置は、図3において、Wo1が近接の蒸発源の端から約5cmとなるように配置した。高分子フィルム基板1の走行方向は矢印Aの方向とした。遮蔽板61および62の開口は、図5に示すようにした。ここで、φiおよびφfは円筒状キャン2の中心からおろした鉛直線からの角度である。本実施例においては、φiおよびφfをそれぞれ70゜および40゜とした。遮蔽板61は内側が円筒状キャン1の表面から1cm、遮蔽板62は外側が円筒状キャン1の表面から2cmとなるように設置した。蒸発源5にはCoを仕込み、70kWの電子ビームによって熔解した。部分酸化膜とするために、真空槽内に酸素を導入した。電子ビームの掃引を調節して、図3(b)で示されるような蒸発速度分布とした。蒸発速度のピークの位置はWo1とWo2から近接の蒸発源の端にむかって約7cmの位置とした。Co部分酸化膜の膜厚が約0.15μmとなるように高分子フィルム基板1の走行速度を調整し、Co部分酸化膜を形成した。比較例として、電子ビームの掃引を調節して、図3(c)の(2)で示されるような蒸発速度分布とした場合についても、Co部分酸化膜を形成した。この際、本実施例で得られた膜と同程度の飽和磁化とするためには、導入酸素量を約4倍程度増加させる必要があった。本実施例および比較例で形成したCo部分酸化膜を磁気異方性エネルギーKuで評価した。Kuは磁気トルク計を用いて得られるトルク曲線から評価できる。Kuが大きいほど磁気異方性の分散が小さいと言える。本実施例で形成したCo部分酸化膜のKuは2.8×106erg/ccであり、比較例の場合が1.4×106erg/ccであった。なお、トルク曲線から磁化容易軸方向も評価できる。本実施例の膜の場合、磁化容易軸方向は膜法線から約65゜であり、比較例の膜の場合が膜法線から約50゜であった。比較例で用いた蒸発速度分布で本実施例と同程度のKuを得るために、図5で示したφfを大きくしたが、本実施例と同程度のKuは得られなかった。φfが40゜から55゜までは徐々にKuは大きくなったがそれ以上では低下する傾向であった。これは、入射角を規制する遮蔽板が円筒状キャンの表面から離れているために、開口幅が狭くなってくると、散乱された蒸発原子の基板への堆積が無視できない状況になるためと考えられる。本実施例で形成した膜および比較例で形成した膜の柱状粒子の概略を図7(a)および(c)に示す。図7(a)に示した本実施例の膜の柱状粒子がより直線的に成長していることがわかる。本実施例においては、開口幅が広くても実質的に入射角がほぼ一定に近い状態が実現されていることを示すものである。Kuの差は柱状粒子の形状が原因と考えられる。両者についてスチル耐久時間を比較すると、本実施例の膜の場合が60分以上であり、比較例の膜の場合が10分以下であった。これは、本実施例の場合、導入酸素量が極めて小量であるために、膜の表面性および充填率の点で比較例の膜よりも顕著に優れているためと考えられる。
【0024】つぎに上記実施例および比較例と同様の構成で、図2に示した本発明の一実施例の磁気記録媒体の製造装置を用い、高分子フィルム基板1の走行方向を矢印Bの方向とし、Co部分酸化膜を形成した。電子ビームの掃引を調節して、図3(b)で示されるような蒸発速度分布とした。蒸発速度のピークの位置は膜形成終期に当たるWo1と、膜形成初期に当たるWo2から近接の蒸発源の端にむかって約7cmの位置とした。Co部分酸化膜の膜厚が約0.15μmとなるように高分子フィルム基板1の走行速度を調整し、Co部分酸化膜を形成した。比較例として、電子ビームの掃引を調節して、図3(c)の(2)で示されるような蒸発速度分布とした場合についても、Co部分酸化膜を形成した。この際、本実施例で得られた膜と同程度の飽和磁化とするためには、導入酸素量を上記比較例と同様に約4倍程度増加させる必要があった。本実施例および比較例で形成したCo部分酸化膜を磁気異方性エネルギーKuで評価した。本実施例で形成したCo部分酸化膜のKuは2.7×106erg/ccであり、比較例の場合が0.8×106erg/ccであった。本実施例の膜のKuは、高分子フィルム基板の走行方向が矢印A方向である上記実施例の膜とほぼ同様な値が得られている。一方、比較例の膜のKuは、上記比較例の膜より著しく低い値となっている。これは上記比較例の場合に、膜形成初期における自己陰影効果が膜形成終期まで及んでいたのに対し、本比較例の場合には、膜形成初期における自己陰影効果が小さく、膜全体として粒子の磁気的分離が不十分になったためと考えられる。なお、磁化容易軸方向は、本実施例の膜の場合、膜法線から約60゜であり、比較例の膜の場合が膜法線から約45゜であった。磁化容易軸方向が上記実施例および比較例の膜と異なるのは、自己陰影効果の大きさが異なるためと考えられる。比較例で用いた蒸発速度分布で本実施例と同程度のKuを得るために、図5で示したφfを大きくしたが、上記比較例と同様に、本実施例と同程度のKuは得られなかった。本実施例で形成した膜および比較例で形成した膜の柱状粒子の概略を図7(b)および(d)に示す。図7(b)に示した本実施例の膜の柱状粒子がより直線的に成長していることがわかる。本実施例においては、開口幅が広くても実質的に入射角がほぼ一定に近い状態が実現されていることを示すものである。両者についてスチル耐久時間を比較すると、本実施例の膜の場合が60分以上であり、比較例の膜の場合が1分以下であった。これは、上述したように、本実施例の場合、導入酸素量が極めて小量であることが、膜の表面性および充填率の点で極めて好影響をあてえており、比較例の膜よりも顕著に優れた機械的強度を発現する原因と考えられる。
【0025】以上の斜方蒸着の2実施例および2比較例で形成したCo部分酸化膜磁性層の記録再生特性を評価した。評価には市販の8ミリVTRを用い、記録周波数7MHzでのC/Nを評価し比較した。その結果、本発明の2実施例の磁性層のC/Nは同程度であった。ただし、高分子フィルム基板走行方向が矢印Aの磁性層は矢印Bの磁性層より再生出力は+1dBであったがノイズも+1dBであった。2比較例の磁性層のC/Nは、本発明の実施例のC/Nを基準としてみると、高分子フィルム基板走行方向矢印Aの場合の磁性層が約−5dBであり、矢印Bの場合の磁性層が約−7dBであった。このように、本発明の製造装置と製造方法を用いれば、記録再生特性に優れた磁気記録媒体が作製できる。
【0026】上記においてはCo−Cr膜およびCo部分酸化膜について述べたが、他のCo基合金薄膜あるいは酸化部系の薄膜についても本発明が有効である。また、上記においては、単層磁性層についてのみ説明したが、同じ方法を繰り返して多層の磁性層とすることは高C/Nにつながることはよく知られており、本発明の場合にも同様である。同一の装置で、高分子フィルム基板走行方向を矢印AからB、あるいはBからAと言うように交互に膜を形成して多層にすることは、媒体の製造効率を高めるものであり、本発明の効果がより一層活かされる方法である。使用する高分子フィルム基板に予め下地層が形成されている場合も本発明は有効である。なお、本発明を効率よく実施するためには、予め蒸発源の位置あるいは大きさ、さらに、電子ビームの掃引方法などと膜特性との関連を装置毎に把握して置くことが必要である。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、優れた記録再生特性を有する磁気記録媒体が生産できる。




 

 


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