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発明の名称 薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドおよびそれを用いたハードディスクドライブ装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平7−93727
公開日 平成7年(1995)4月7日
出願番号 特願平5−239693
出願日 平成5年(1993)9月27日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小鍜治 明 (外2名)
発明者 水上 和宏
要約 目的
本発明はオフトラック特性の左右非対称性を低減し、またオフトラック特性の片側に生じる逆極性の再生出力を低減することで優れたオフトラック特性を有し、極めて高いトラック密度を達成することができる薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドおよびそれを用いたハードディスクドライブ装置の提供を目的とする。

構成
薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、磁気抵抗効果膜層20の一面にもしくは非磁性絶縁層21を介して積層された軟磁性層22を備え、磁気抵抗効果膜層20に流す電流により軟磁性層22を磁化し、この磁化によって磁気抵抗効果膜層20にバイアス磁界を印加する薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドであって、軟磁性層22の膜厚と飽和磁化の積が、磁気抵抗効果膜層20の膜厚と飽和磁化の積の30%〜50%である構成を有している。
特許請求の範囲
【請求項1】磁気抵抗効果層の一面にもしくは非磁性絶縁層を介して積層された軟磁性層を備え、前記磁気抵抗効果層に流す電流により前記軟磁性層を磁化し、この磁化によって前記磁気抵抗効果層にバイアス磁界を印加する薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドであって、前記軟磁性層の膜厚と飽和磁化の積が、前記磁気抵抗効果層の膜厚と飽和磁化の積の30%〜50%であることを特徴とする薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッド。
【請求項2】磁気抵抗効果層の一面にもしくは非磁性絶縁層を介して積層された軟磁性層を備え、前記磁気抵抗効果層に流す検出電流により前記軟磁性層を磁化し、この磁化によって前記磁気抵抗効果層にバイアス磁界を印加する薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドであって、前記検出電流による前記軟磁性層の磁化領域における孤立波再生出力の正側出力をEp、負側出力をEnとしたとき、A Asym=〔(Ep−En)/(Ep+En)〕×100〔%〕で定義される振幅上下非対称性A Asymが−10%〜0%であることを特徴とする薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッド。
【請求項3】請求項1または2の薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドと、磁気記録層の残留磁束密度(Br)と磁気記録層の膜厚(δ)がBr・δ≦185〔Gauss・μm〕である磁気記録媒体とを備えたことを特徴とするハードディスクドライブ装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は再生用磁気抵抗効果素子と記録用電磁誘導型素子を有する複合型の薄膜MR効果型磁気ヘッドであって、超高密度記録が可能なハードディスクドライブ装置(以下、HDD装置という)に使用される薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドおよびそれを用いたハードディスクドライブ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記憶装置であるHDD装置の小型化、大容量化の要求が急速に増大している。それに伴いHDD装置で用いられる磁気ディスクや磁気ヘッドにおいても記録密度の向上が急務となっている。これら大容量化のためには、トラック密度を高くすることや線記録密度を高くすること、変調方式の最適化を図ること等が必要であり、そのために磁気ディスクとして高保磁力、高残留磁束密度、低ノイズの特徴を有する金属薄膜ディスクが開発され、磁気ヘッドとしてはメタルインギャップヘッドや薄膜ヘッド、更に金属磁性膜を積層した積層型磁気ヘッドなどが開発されてきた。
【0003】これらの磁気ヘッドは全て電磁誘導現象を利用した誘導型ヘッドと呼ばれるものであり、その再生出力は磁気ヘッド、磁気ディスク間の相対速度に比例する。そのため磁気ディスクが小型になり再生トラックの径が小さくなると、磁気ヘッドと磁気ディスク間の相対速度が低くなり、その結果十分な再生出力が得られなくなってしまう。そこで、これらの問題点を解決するものとして特開平4−137211号公報には、磁気抵抗効果を利用して磁気ディスクからの磁束を感磁する薄膜MR効果型磁気ヘッドが開示されている。薄膜MR効果型磁気ヘッドを用いることにより、媒体速度に出力が依存せず高出力を得ることができ、さらに高トラック密度を得ることができる。
【0004】しかしながら薄膜MR効果型磁気ヘッドは従来の誘導型ヘッドにはないバルクハウゼン・ノイズやオフトラック特性の左右非対称性等及び再生波形の前記振幅上下非対称性等の薄膜MR効果型磁気ヘッド特有の問題を有していることが明らかになった。薄膜MR効果型磁気ヘッド特有の問題は、例えばジョセフ エス.フェング (Joseph S.Feng)により、アイ・イー・イー・イートランザクション オブ マグネチックス 28巻 3月 1992年 第1031頁乃至第1037頁(IEEE Trans. Mag. Vol.28.March(1992) pp1031〜1037)でオフトラック特性の左右非対称性はMR素子部の高さ等の形状に強く依存すると指摘されている。また本文献では再生波形の振幅上下非対称性は磁気抵抗素子部高さ、及び磁気抵抗素子部の上下に絶縁層を介して配置される上部シールド及び下部シールドと磁気抵抗素子部の位置関係に影響を受けると指摘している。
【0005】更に、オフトラック特性の左右非対称性はエー.ウォラッシュ,エム.サロ(A. Wallash, M.Salo)らがジャーナル オブ アプライドフィジックス 69巻 No.8,15 4月 1991年 第5402頁乃至5404頁(J. Appl. Phys. Vol.69,No.8,15April (1991) pp5402〜5404)等によって論じられているように、磁気抵抗素子部の高さ等の形状に強く依存することが知られている。
【0006】またジー.エー.ギプソン(G.A.Gibson)等により、アイ・イー・イー・イー トランザクション オブ マグネチックス 28巻 No.5 9月 1992年(IEEE Trans. Mag.,Vol.28,No.5,September 1992)に、薄膜MR効果型磁気ヘッドの磁気抵抗素子部の片側端部には、負の感度領域が存在することが報告されている。しかしながら、この負の感度分布とオフトラック特性の関係を明確に論じたものはなく、またオフトラック特性の片側に本来の信号と逆極性の再生信号が発生するという問題についてもその発生原因及び対策について明確に論じたものは未だ見当たらず、実用上これらの問題点をいかに解決するかについては何ら示唆を与えるものもない。
【0007】また、軟磁性膜の膜厚と飽和磁化の積(B sdSAL)と磁気抵抗効果膜の膜厚と飽和磁化の積(B sdMR)の比(B sdSAL/B sdMR)によって、軟磁性膜による磁気抵抗素子部のバイアス角度を抑制し、ヘッド再生特性における感度、線形応答性、バルクハウゼン雑音抑制等の最適化を図る技術は種々開示されている。例えば特開昭62−184616号公報では、前記バイアス角度は45度、つまり前記B sdSAL/B sdMR比は1/√2(約70%)が感度及び線形応答性の点で最適であると開示し、特開昭64−76415号公報では、前記B sdSAL/B sdMR比が60%以上90%以下の範囲がバルクハウゼンノイズの抑制の観点で最適範囲であると指摘している。更に特開平3−116510号公報では、前記B sdSAL/B sdMR比が51.3%以上58.8%以下の範囲がバルクハウゼンノイズ抑制の観点で最適範囲であると開示している。しかしながらこれらの文献はオフトラック特性と前記バイアス角度もしくは前記B sdSAL/B sdMR比の関係を論じたものではなく、オフトラック特性を改善し、トラック密度を向上させるための最適バイアス条件について何ら検討もされておらず示唆も与えていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら薄膜MR効果型磁気ヘッド特有のオフトラック特性の左右非対称性及びオフトラック特性の片側に生じる逆極性の再生出力の問題はトラック密度を向上させるためには解決しなければならない問題点である。また、HDD装置の記録密度が未だ不十分という問題点がある。
【0009】本発明は上記従来の問題点を解決するもので、磁束検知部のトラック幅方向の再生感度分布を均一化し、オフトラック特性の左右非対称性を低減し、またオフトラック特性の片側に生じる逆極性の再生出力を低減することで、極めて高いトラック密度を達成することができるとともに、高精度のトラック位置決め用のサーボ信号としての優れたオフトラック特性を有する薄膜MR効果型磁気ヘッドを提供することであり、また優れたオフトラック特性を有する薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドおよびそれを用いたハードディスクドライブ装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明の薄膜MR効果型磁気ヘッド及び薄膜MR効果型磁気ヘッドを用いたHDD装置は、次の構成からなる。
【0011】請求項1に記載の薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、磁気抵抗効果層の一面にもしくは非磁性絶縁層を介して積層された軟磁性層を備え、前記磁気抵抗効果層に流す電流により前記軟磁性層を磁化し、この磁化によって前記磁気抵抗効果層にバイアス磁界を印加する薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドであって、前記軟磁性層の膜厚と飽和磁化の積が、前記磁気抵抗効果層の膜厚と飽和磁化の積の30%〜50%である構成を有しており、請求項2に記載の薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、磁気抵抗効果層の一面にもしくは非磁性絶縁層を介して積層された軟磁性層を備え、前記磁気抵抗効果層に流す検出電流により前記軟磁性層を磁化し、この磁化によって前記磁気抵抗効果層にバイアス磁界を印加する薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドであって、前記検出電流による前記軟磁性層の磁化領域における孤立波再生出力の正側出力をEp、負側出力をEnとしたとき、A Asym=〔(Ep−En)/(Ep+En)〕×100〔%〕で定義される振幅上下非対称性A Asymが−10%〜0%である構成を有しており、請求項3に記載のHDD装置は、請求項1または2の薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドと、磁気記録層の残留磁束密度(Br)と磁気記録層の膜厚(δ)がBr・δ≦185〔Gauss・μm〕である磁気記録媒体とを備えた構成を有している。
【0012】ここで、軟磁性層の膜厚と飽和磁化の積が磁気抵抗効果層の膜厚と飽和磁化の積の比が30%未満では線形応答性及び再生感度が劣化する傾向があり好ましくなく、また、50%を越えるとオフトラック特性の左右対称性が劣化する傾向があり好ましくない。バイアス角度が17°未満では線形応答性及び再生感度が劣化する傾向があり好ましくなく、また、30°を越えると磁束検知部のトラック幅方向の再生感度分布の均一性が劣化する傾向があり好ましくない。
【0013】またA Asymが−10%未満では線形応答性及び再生感度が劣化する傾向があり好ましくなく、また、0%を越えると磁束検知部のトラック幅方向の再生感度分布の均一性が劣化してオフトラック特性の左右対称性が劣化する傾向があり好ましくない。磁気記録媒体の磁気記録層の残留密度(Br)と膜厚(δ)の積Br・δは185〔Gauss・μm〕以下〜120〔Gauss・μm〕が好ましい。Br・δが185〔Gauss・μm〕を越えると振幅上下非対称性が劣化する傾向が認められ、また、120〔Gauss・μm〕未満では再生出力が低下するので好ましくない。
【0014】
【作用】この構成によって、軟磁性層の膜厚と飽和磁化の積が磁気抵抗効果膜の膜厚と飽和磁化の積の比が30%〜50%またはバイアス角度が17°〜30°とすることができるのでオフトラック特性の左右非対称性を著しく低減することができるとともにオフトラック片側に生じる逆極性の再生出力を低減させることができる。振幅上下非対称性(A Asym)を−10%〜0%とすることにより、オフトラック特性の左右非対称性を著しく低減することができるとともにオフトラック片側に生じる逆極性の再生出力を低減することができる。更に残留磁束密度(Br)×磁気記録層の膜厚(δ)≦185〔Gauss・μm〕の磁気記録媒体と本発明の薄膜MR効果型磁気ヘッドを組み合せたHDD装置とすることにより、高いトラック密度を達成し、再生感度の劣化を極めて少なくすることができる。
【0015】
【実施例】以下本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例における薄膜MR効果型磁気ヘッドのMR素子部の要部拡大図であり、図2は本発明の一実施例における薄膜MR効果型磁気ヘッドのMR素子の部分断面要部拡大斜視図である。1は下部シールドで少なくともMR素子の再生トラック領域である磁束検出幅A以上の幅を持ちパーマロイ、センダスト等の軟磁性材料を真空成膜法あるいはメッキ法により成膜したものか、フェライト等の軟磁性材料で形成されている。2は絶縁層でSiO2 やAl23 などの酸化物を蒸着あるいはスパッタ等の真空成膜法により成膜されている。3はMR素子であり、絶縁層2上に外部磁界に対し抵抗変化を示すFe−Ni合金やCo−Ni合金が外部磁界に対し感度を高めるために数十nm以下の特に薄い膜で成膜されている。これらの薄膜は真空蒸着法、スパッタ法、イオンビームスパッタ法などの真空成膜法によって成膜される。4はMR素子3に電流を供給しその電圧変化を検知するためのリード層であり、MR素子3と磁束検出幅Aの外部で接触している。リード層4には抵抗値の低い良導体としてAu,Al,Cu,Wあるいはそれらの積層膜などが用いられ、真空蒸着法、スパッタ法、イオンビームスパッタ法、CVD法などの真空成膜法によって成膜される。5は上部シールドで絶縁層2上に少なくともMR素子3の磁束検出幅A以上の幅を持ちパーマロイ、センダスト等の軟磁性材料を蒸着あるいはスパッタ等の真空成膜法あるいはメッキ法により成膜されている。6は記録ギャップで上部シールド5の上面にSiO2 やAl23 などの酸化物を蒸着あるいはスパッタ等の真空蒸着法により成膜されている。7は記録コアで記録ギャップ6の上にパーマロイ、センダスト等の軟磁性材料を蒸着あるいはスパッタ等の真空蒸着法あるいはメッキ法により成膜し、所定の形状に物理的あるいは化学的方法によって食刻して形成されている。8は保護層でSiO2 やAl23 などの酸化物を蒸着あるいはスパッタ等の真空蒸着法により成膜されている。9は記録対向面磁界、10はコイル、Bは記録を行う記録コア幅である。Cは、MR素子の幅である。
【0016】以上のようにして製造された薄膜MR効果型磁気ヘッドを用いて規格化出力のオフトラック特性等について検討を行った。
【0017】(オフトラック特性の評価)図3は本発明の一実施例における薄膜MRヘッド効果型磁気ヘッドのMR効果素子部の模式図である。20は磁気抵抗効果膜層、21は非磁性絶縁層、22は軟磁性層である。磁気抵抗効果膜層20に流れる検出電流による誘導磁界によって軟磁性層22を磁化し、この磁化によってMR効果層20はバイアス磁化され、バイアス角度は主に軟磁性層22の膜厚と飽和磁化の積(B sdSAL)と磁気抵抗効果膜層20の膜厚と飽和磁化の積(B sdMR)の比(B sdSAL/B sdMR)によって決定される。そこで、本実施例ではオフトラック特性を評価するため(表1)に示す構成条件で試料を作製して評価を行った。
【0018】
【表1】

【0019】(表1)における(B sdSAL/B sdMR)比のばらつきは主にサンプル作製に用いた基板内での磁気抵抗効果膜もしくは軟磁性膜の基板内位置に依存する膜厚分布によるものである。評価条件は試料を10サンプル作製し、Hc=1800[Oe]、磁性膜Br・δ=185〔Gauss・μm〕の薄膜磁気記録媒体を用い、周速v=5.6m/sec、記録周波数1.75[MHz]、ヘッド浮上量0.08[μm]で行い、オフトラックに対する規格化出力の依存性を求めた。オフトラック特性の測定方法は図4に示す模式図に従って行った。図4は薄膜MR効果型磁気ヘッドのオフトラックの測定方法を示す模式図である。薄膜MR効果型磁気ヘッドで磁気記録媒体に記録を行う記録対向面磁界9が発生し、記録状態は図4に示すようになる。磁気記録媒体上の記録幅はIで示される。このような記録を行った磁気記録媒体上でMR素子3を用いて再生した場合、MR素子3の位置を図4のFからGそしてHへと移動した場合、横軸をオフトラック量とすると縦軸に最大出力で規格化した出力変化が得られオフトラック特性を得ることができる。図5にその測定値の平均を示した。
【0020】図5は本発明の一実施例における薄膜MR効果型磁気ヘッドのオフトラックに対する規格化出力の依存性を表す図である。尚、縦軸は最大出力で規格化した規格化再生出力を表す。次に、オフトラック特性の改善効果確認のため同一試料を用いマイクロトラック・プロファイルを求めた。マイクロトラック・プロファイルの測定方法は図6に示す模式図に従って行った。図6は本発明の一実施例における薄膜MR効果型磁気ヘッドのマイクロトラック・プロファイルの測定方法を示す模式図である。マイクロトラック・プロファイルは図6のI′で示される磁束検出幅Aより狭い記録トラックを用いて、MR素子3の位置をFからGそしてHへと移動させた場合の縦軸は最大出力で規格化した出力変化を示しており、横軸はオフトラック量を示している。マイクロトラック・プロファイルの評価によって磁束検知部のトラック幅方向の再生感度分布を測定することができる。本実施例の評価ではマイクロトラック幅(I′)を0.8μmとして行った。その測定結果を図7に示した。図7は本実施例の薄膜MR効果型磁気ヘッドのマイクロトラック・プロファイルである。(表1)における(B sdSAL/B sMR)比のばらつきは主にサンプル作製に用いた基板内での磁気抵抗効果膜もしくは軟磁性膜の基板内位置に依存する膜厚分布によるものである。
【0021】(比較例)比較例として従来例の薄膜MR効果型磁気ヘッドを10サンプル準備し、実施例を同一の条件下で、オフトラックに対する規格化出力の依存性及びマイクロトラック・プロファイルを求め図8,図9に示した。図8は比較例の薄膜MR効果型磁気ヘッドのオフトラックに対する最大出力で規格化された規格化出力の依存性を表す図であり、図9は比較例の薄膜MR効果型磁気ヘッドのマイクロトラック・プロファイルである。尚、図8の縦軸は図5と同様に最大出力で規格化した規格化出力を表す。
【0022】この図5及び図8から明らかなように、本実施例ではオフトラック特性の左右非対称性が改善されており、またオフトラック型側に観察される負の再生出力が低減されているのがわかる。また、規格化出力50%ラインでの正,負のオフトラック幅をそれぞれK及びJとしたとき、L=〔(K−J)/(K+J)〕×100〔%〕で定義されるオフトラック特性左右非対称性Lは、図8の比較例で8.7%、それに対し本発明の実施例の図5では、L=4.2%と非対称性が著しく改善されていることがわかった。更に、オフトラック特性片側に発生する負の規格化出力Enは、図8の比較例がEn=0.10であるのに対し、図5の本発明の実施例ではEn=0.02と著しく低減されていることが明らかになった。
【0023】次に、マイクロトラック・プロファイルにおいて、図7,図9から明らかなように実施例がマイクロトラック・プロファイルの左右非対称性の低減とマイクロトラック・プロファイルの片側に発生する負の再生出力の低減に著しい効果があることがわかる。マイクロトラック・プロファイルは磁束検知部のトラック幅方向の再生感度分布を表すものであり、本発明におけるこの再生感度の位置的分布の均一化がオフトラック特性の改善効果を生み出しているといえる。
【0024】次に、MR効果層のバイアス角度とマイクロトラック・プロファイルの関係について、MR素子3の動作時磁化ベクトルを用いて考察した。図10,図11は比較例の薄膜MR効果型磁気ヘッドのMR素子部の動作時磁化ベクトル図であり、図12は本発明の一実施例における薄膜MR効果型磁気ヘッドのMR素子部の動作時磁化ベクトル図である。これらの図においてM0は磁気抵抗効果膜1−1の点Pの位置におけるバイアスされた状態での磁気抵抗効果膜の磁化ベクトルを表し、Hextは磁気媒体上QもしくはQ′の位置に記録された磁化部分によってP位置に生じる記録信号磁界ベクトルを表す。M0はこの記録信号磁界HextによってM0からM1で示されるベクトルへと磁化の回転を生じる。ここで、図10及び図11は磁気抵抗効果膜層20が45度にバイアスされた場合(∠M0=45°)を表しており、従来の構成による比較例の場合である。図12は磁気抵抗効果膜層20が30度にバイアスされた場合(∠M0=30°)を表しており、本発明の実施例の場合である。図10のごとく媒体磁化部分Q′が再生トラック幅内に存在する場合は記録信号磁界Hextは∠M0を増加させる作用をもつが、図11のごとく媒体磁化部分が再生トラック幅外Qの位置まで移動した場合、記録信号磁界Hextは逆に∠M0を減少させる作用をもつ。∠M0の増加は磁気抵抗効果膜層20の抵抗減少を意味し、∠M0の減少は磁気抵抗効果膜層20の抵抗増加を意味する。つまり媒体磁化部分の位置がQ′とQでは再生出力の極性が反転することがわかる。ところが図12のごとく∠M0=30°の場合、図11と同じQの位置においても記録信号磁界Hextは∠M0を増加する作用をもつため再生出力の極性は反転しない。この考え方は、オフトラック特性の方側にだけ負の再生出力が発生することを説明でき、また磁気抵抗効果膜層20のバイアス角度がオフトラック特性に強く影響を与え、バイアス角度を小さくすることによりオフトラック特性の左右非対称性を低減できることの理由もあわせて説明できる。
【0025】以上述べたようにMR効果層のバイアス角度を小さくすることでオフトラック特性の向上が可能となるが、例えば特開昭62−184616号公報で開示されているようにバイアス角度の減少は再生感度を減少させ、かつ記録磁界検出の線形応答性を劣化させることが知られている。
【0026】再生感度及び線形応答性の最適バイアス角度は45度であり、バイアス角度が45度からずれるに従って再生感度が劣化すると共に線形応答性が劣化し、その結果再生出力の低下及び再生波形の振幅上下非対称性が増加することも知られている。
【0027】そこで、まずこの線形応答性を評価すべく検討を行った。
(線形応答性の評価)線形応答性は振幅上下非対称性と、再生信号の基本波周波数成分に対する2次高調波成分の比(デシベル表記)で定義される2次高調波歪率の関係で評価を行った。振幅上下非対称性(A Asym)は、検出電流による前記軟磁性膜の磁化領域における孤立波再生出力の正側出力をEp、負側出力をEnとしたとき、A Asym=(Ep−En)/(Ep+En)×100〔%〕で定義される。図13は本発明の一実施例における薄膜MR効果型磁気ヘッドの振幅上下非対称性に対する2次高調波歪率の依存性を示す図である。評価は、軟磁性層の膜厚と飽和磁化の積(B sdSAL)と磁気抵抗効果膜層20の膜厚と飽和磁化の積(B sdMR)の比(B sdSAL/B sdMR)を広範囲にわたって変化させ、故意に振幅上下非対称性をばらつかせて行った他は、オフトラック特性の評価条件と同一の条件で行った。一般に2次高調波歪率は30dB以下が実用可能範囲であり、図13の結果より振幅上下非対称性は−10%以上10%以下の範囲が実用可能な範囲であることがわかる。本結果は単純に振幅上下非対称性、つまり再生波形形状と2次高調波歪率の関係を表すものであり、磁気抵抗効果膜のバイアス角度と2次高調波歪率の関係は明らかに一義的には決定できない。なぜならば記録磁界検出の線形応答性は明らかに磁気抵抗効果素子の許容入力磁界幅と記録磁界強度に依存するからである。例えば使用する磁気記録媒体の磁気記録層の残留磁束密度をBrとし、前記磁気記録層の膜厚をδとした時のBr・δ〔Gauss・μm〕を低減させることで前記振幅上下非対称性を低減させることは可能である。よって図13に示された振幅上下非対称性の−10%以上10%以下の範囲は、磁気抵抗効果膜のバイアス角度によらず実用上達成する必要があることがわかる。
【0028】(再生感度の評価)次に再生感度の劣化を評価すべく、振幅上下非対称性と再生出力との関係で評価を行った。評価サンプルは今回作製した実施例の薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドと比較例として従来の薄膜磁気抵抗効果型磁気ヘッドを用いて行った。その結果を図14に示した。
【0029】また図14には併せて図8,図9記載の前記負の規格化出力En,En′も示した。図14は本発明の一実施例における薄膜MR効果型磁気ヘッドの振幅上下非対称性に対する再生出力及び負の規格化再生出力の依存性を示す図である。一般に再生出力は0.4mVp−p以上であれば実用可能であり、本結果及び図13の結果より、本発明の構成条件においても線形応答性及び再生感度において何ら実用上の問題がないことが明らかになった。更に図14で示されるように、本発明の実施例が従来の構成による比較例に対して前記負の規格化再生出力Enの著しい改善効果を有することがわかった。
【0030】以上述べた本発明の実施例と比較例の比較結果のまとめを(表2)に示す。
【0031】
【表2】

【0032】この(表2)から明らかなように、本実施例によれば、再生出力及び2次高調波歪率において実用上全く問題がなく、かつ比較例に対してオフトラック特性左右非対称性及び負の規格化再生出力Enを著しく改善することが可能となり、その結果トラック密度の極めて高い磁気抵抗効果型ヘッドを得ることができることが明らかになった。
【0033】(磁気記録媒体に対する検討)次に、実施例の薄膜MR効果型磁気ヘッドを用い磁気記録層の残留磁束密度(Br)と膜厚(δ)を種々変えて、磁気記録媒体の最適化について検討した。その結果、Br・δが185〔Gauss・μm〕を越えると、振幅上下非対称性が劣化するという傾向が認められた。またBr・δが120〔Gauss・μm〕よりも小さいと再生出力が低下するという傾向が認められた。
【0034】以上の結果より本発明の薄膜MR効果型磁気ヘッドを装着したBr・δ〔Gauss・μm〕は120≦Br・δ≦185が好ましいことがわかった。
【0035】
【発明の効果】以上のように本発明は、再生信号におけるオフトラック特性の左右非対称性を改善し、またオフトラック時に発生する負の再生信号を減少させることができ、その結果記録密度を著しく向上させることが可能な優れた磁気抵抗効果型ヘッドを実現できるものであり、また、高トラック記録密度を有するものである。




 

 


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