発明の名称 |
光ディスク原盤の作製方法 |
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発行国 |
日本国特許庁(JP) |
公報種別 |
公開特許公報(A) |
公開番号 |
特開平7−50038 |
公開日 |
平成7年(1995)2月21日 |
出願番号 |
特願平5−195008 |
出願日 |
平成5年(1993)8月6日 |
代理人 |
【弁理士】 【氏名又は名称】粟野 重孝
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発明者 |
永島 道芳 / 植野 文章 / 藤田 佳児 / 貴志 俊法 / 宮本 寿樹 / 阿部 伸也 |
要約 |
目的 隣接するトラックで交互に信号ビット深さが異なる正確なトラッキング制御ができる光ディスク原盤の作製方法を提供する。
構成 ガラス基盤1上に第1のフォトレジスト薄膜2を形成し、第1のフォトレジスト薄膜2に第1のレーザービーム3を連続的に照射し、第1のレーザービーム3が照射された部分の第1のフォトレジスト薄膜2を除去して溝4を形成し、その溝が形成されたガラス基盤5上に金属薄膜6を形成し、残った第1のフォトレジスト薄膜2上の金属薄膜6を第1のフォトレジスト薄膜2とともに除去して金属薄膜6を螺旋状に残し、その上にさらに第2のフォトレジスト薄膜7を形成し、第2のレーザービーム8を螺旋状の金属薄膜6上および螺線状の金属薄膜6間にトラッキングしながら照射して信号を記録し、その第2のレーザビームが照射された部分の第2のフォトレジスト薄膜7を除去する。 |
特許請求の範囲
【請求項1】ガラス基盤上に第1のフォトレジスト薄膜を形成する工程と、前記第1のフォトレジスト薄膜に第1のレーザービームを連続的に照射する工程と、前記第1のレーザービームが照射された部分の第1のフォトレジスト薄膜を除去して溝を形成する工程と、その溝が形成されたガラス基盤上に金属薄膜を形成する工程と、残った第1のフォトレジスト薄膜上の金属薄膜を第1のフォトレジスト薄膜とともに除去して前記金属薄膜を螺旋状に残す工程と、その上にさらに第2のフォトレジスト薄膜を形成する工程と、第2のレーザービームを螺旋状の金属薄膜上および螺線状の金属薄膜間にトラッキングしながら照射して信号を記録する工程と、その第2のレーザービームが照射された部分の第2のフォトレジスト薄膜を除去して信号ビットを形成する工程を主体とする、隣合うトラックで深さの異なる信号ビット列を形成する光ディスク原盤の作製方法。 【請求項2】第1のフォトレジスト薄膜の厚さが金属薄膜の厚さより厚い請求項1記載の光ディスク原盤の作製方法。 【請求項3】イオンビームによりアシストしながらスパッタ法により貴金属薄膜を形成する請求項1記載の光ディスク原盤の作製方法。
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発明の詳細な説明
【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、高密度に情報を蓄積した光ディスク原盤の作製方法に関する。 【0002】 【従来の技術】光ディスクの高密度化には、再生用レーザーの短波長化や対物レンズの高NA化が考えられているが、現在では実用的には波長670nm、NA0.6が限界であり、短波長化や高NA化に頼らない方式も幾つか知られている。 【0003】その一つに、特開昭54−136303号公報で示された、隣接するトラックで信号ビットの深さを交互に変化させる方式がある。反射光を2つの光検出部に分割された検出器で受光し、一方の深さの信号ビット列の再生にはそれら2つの光検出部の和信号を用い、他方の信号ビット列の再生にはそれら2つの光検出部の差信号を用いれば、隣りのトラックからのクロストークは小さく、狭ビッチ化して高密度化することができる。 【0004】この方式の光ディスク原盤の作製方法を図2の(a)ないし(h)を用いて述べる。一旦、凹凸状の溝が形成された基盤を作製する必要があり、図2(a)に示すようにガラス基盤11にフォトレジスト12を塗布し、図2(b)に示すようにフォトレジスト12上にレーザービーム13を連続的に照射し、ついで図2(c)に示すように現像してレーザービーム13の照射部のフォトレジスト12を除去する。さらに図2(d)に示すようにCHF3 ガスを用いた反応性イオンエッチング法でガラス基盤11に溝14を形成し、その後図2(e)に示すようにフォトレジスト12を除去する。次にこの凹凸状の溝14が形成されたガラス基盤15上に再度フォトレジスト16を図2(f)に示すように塗布し、溝内および溝間に図2(g)に示すようにレーザービーム17をトラッキングしながら照射して信号を記録し、現像して記録部のフォトレジスト16を図2(h)に示すように除去することで、溝内と溝間で深さの異なる信号ビット18、19が形成された光ディスク原盤ができる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記する従来の光ディスク原盤の作製方法には次のような問題点があった。 【0006】すなわちフォトレジストの屈折率は約1.7、ガラスの屈折率は約1.5と余り差がないために、ガラスとフォトレジストの境界の反射率は0.4%と非常に小さい。溝が形成されたガラス基盤15にフォトレジスト16を塗布すれば、溝からのトラッキング信号が極めて小さく、原盤への信号記録時にトラッキング制御が正確にできなくなる。上記従来の問題点を解決するため、本発明は原盤への信号記録時に正確なトラッキング制御ができる光ディスク原盤の作製方法を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明の光ディスク原盤の作製方法はガラス基盤上に第1のフォトレジスト薄膜を形成し、第1のフォトレジスト薄膜に第1のレーザービームを連続的に照射し、第1のレーザービームが照射された部分の第1のフォトレジストを除去して溝を形成し、その溝が形成されたガラス基盤上に金属薄膜を形成し、残った第1のフォトレジスト薄膜上の金属薄膜を第1のフォトレジストとともに除去して金属薄膜を螺旋状に残し、その上にさらに第2のフォトレジスト薄膜を形成し、第2のレーザービームを螺旋状の金属薄膜上および金属薄膜間にトラッキングしながら照射して信号を記録し、その第2のレーザービームが照射された部分の第2のフォトレジスト薄膜を除去する方法により、隣合うトラックで深さの異なる信号ビットを形成した光ディスク原盤を作製するものである。 【0008】 【作用】上記の方法により、ガラス基盤に螺旋状の金属薄膜を形成するので、金属とフォトレジストの境界は反射率が高く、第2のフォトレジストを塗布しても、溝からのトラッキング信号は充分大きく、原盤への信号記録時に正確なトラッキング制御ができるようになる。 【0009】 【実施例】以下本発明の一実施例の光ディスク原盤の作製方法について図面を参照して説明する。 【0010】本実施例の光ディスク原盤の作製方法を示す図1(a)ないし(h)において、ガラス基盤1の上に第1のフォトレジスト薄膜2を形成し(図1(a))、第1のフォトレジスト薄膜2上から第1のレーザービーム3を連続的に照射し(図1(b))、現像して溝4を形成する(図1(c))。溝4が形成された基盤5上に金属薄膜6を形成し(図1(d))、第1のフォトレジスト薄膜2上の金属薄膜6を第1のフォトレジスト薄膜2とともに除去して金属薄膜6を螺旋状に残し(図1(e))、その上に再度第2のフォトレジスト薄膜7を形成し(図1(f))、第2のレーザービーム8を螺旋状の金属薄膜6の上およびその間にトラッキングしながら照射して信号を記録する(図1(g))。そして現像することで金属薄膜6上と金属薄膜6間で深さの異なる信号ビット列9、10を作製できる(図1(h))。 【0011】図1(e)のように残った第1のフォトレジスト薄膜2を溶剤で溶かして、その上の金属薄膜6も同時に除去して螺旋状の金属薄膜6を形成する。溶剤に第1のフォトレジスト薄膜2が溶け易くするためには、第1のフォトレジスト薄膜2が溶剤に触れなければならず、第1のフォトレジスト薄膜2の厚さが金属薄膜6より厚い方が良い。また、第1のフォトレジスト薄膜2に形成された溝4の端面に金属薄膜6が付着しない方がよく、指向性の高いイオンビーム・スパッタ法などの薄膜形成法を採用する。 【0012】ガラス基盤1上に形成する金属薄膜6はガラス基盤1との密着性が高い必要があり、そのような物質として、クロムなどがある。 【0013】第1のフォトレジスト薄膜2を溶かすにはアセトンなどの有機溶剤を用いる。しかし、金属薄膜6を形成する時に第1のフォトレジスト薄膜2が熱で変質し、有機溶剤では溶けなくなることがある。その場合でも、硫酸などの強酸では容易に溶かすことができる。金属薄膜6として金などの貴金属を用いれば、強酸にも溶けずに金属薄膜6を残すことができる。一般に、金などの貴金属はガラスとの密着性が低いが、アルゴンなどのイオンビームによりアシストしながらスパッタ法で形成すれば、密着性は向上する。 【0014】 【発明の効果】以上の説明により明かなように、本発明の光ディスク原盤の作製方法によれば、溝が形成されたガラス基盤上にフォトレジスト薄膜を形成して溝および溝間に信号記録する場合でも、溝からのトラッキング信号が大きく正確なトラッキング制御ができ、高密度な光ディスク原盤を作製することができる。
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