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発明の名称 チャイニーズハムスター卵巣細胞変異株
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平7−203958
公開日 平成7年(1995)8月8日
出願番号 特願平6−7460
出願日 平成6年(1994)1月27日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸 (外3名)
発明者 瀧澤 稔 / 松尾 登 / 野村 知子 / 芋川 玄爾
要約 目的


構成
N−グリコリルノイラミン酸生産性の低下したチャニナーズハムスター卵巣(CHO)細胞変異株、及び当該変異株を宿主細胞として用いた遺伝子組換えによる糖蛋白質の製造法。
特許請求の範囲
【請求項1】 N−グリコリルノイラミン酸生産性の低下したチャイニーズハムスター卵巣細胞変異株。
【請求項2】 N−グリコリルノイラミン酸生産性が、未変異株の1/2以下である請求項1記載の変異株。
【請求項3】 シチジン−5′−モノリン酸化N−アセチルノイラミン酸水酸化酵素の活性が、未変異株の1/5以下である請求項1又は2記載の変異株。
【請求項4】 チャイニーズハムスター卵巣細胞を突然変異誘発処理することにより得られるものである請求項1、2又は3項記載の変異株。
【請求項5】 糖蛋白質をコードする遺伝子を有する組換えベクターを請求項1記載の変異株に導入し、得られた形質転換体を培養することを特徴とする糖蛋白質の製造法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はチャイニーズハムスター卵巣(以下、CHOと略す)細胞の変異株に関し、更に詳細には遺伝子組換え技術の宿主細胞等として有用なCHO細胞の変異株及びその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】遺伝子組換え技術を利用して、生体内に微量に存在するヒト由来の生理活性物質を大量に生産し、医薬品などに応用する試みが盛んに行なわれている。かかる遺伝子組換え技術において、組換えベクターの導入対象である宿主細胞としては、取り扱い性、増殖能、培養手段の容易性等の観点から大腸菌が最も広く利用されている。しかし、本来ヒト由来の生理活性物質は糖蛋白質である場合が多いのに対し、大腸菌などの微生物中で発現させると糖鎖がつかないことが多い。そこで、近年、ヒト本来の生理活性物質により近い形の目的物を得る目的で、宿主細胞として大腸菌に代えて哺乳動物細胞を用いて生産する方向へ移りつつある。CHO細胞は当該哺乳動物由来宿主細胞として広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、糖鎖構造には種特異性があることから、CHO細胞などヒト以外の細胞を利用した場合、ヒト本来のものと異なる糖鎖が付与される結果、生産物がヒトに対して抗原性を有してしまう可能性があることが指摘されている〔Hokke,C.H.ら:FEBS Letters,275,9−14(1990)〕。
【0004】CHO細胞も例外ではなく、ヒトとCHO細胞とではシアル酸組成が異なる。すなわち、ヒトは通常N−グリコリルノイラミン酸を有していないが、CHO細胞はN−グリコリルノイラミン酸を有しているため、CHO細胞を用いて生産された糖蛋白質は、N−グリコリルノイラミン酸を含む複合糖質が付与されたものとなってしまう。このN−グリコリルノイラミン酸を含む複合糖質は、ヒトに対して強い抗原性を有しており、古くからH−D抗原(Hanganutziu−Deicher抗原)として知られている。このようにCHO細胞を利用して生産した糖蛋白質は、H−D抗原に由来する抗原性を有する可能性が高いという欠点を有していた。
【0005】従って、本発明の目的はH−D抗原に由来する抗原性を生じない生理活性物質の生産に利用できる新しいCHO細胞変異株、及び当該変異株を宿主細胞として利用した糖蛋白質の製造法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らはCHO細胞を突然変異誘発処理し、得られた変異株のシアル酸組成、糖質関連酵素活性等について検討した結果、N−グリコリルノイラミン酸産生能が低下している新規変異株の採取に成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明はN−グリコリルノイラミン酸生産性の低下したCHO細胞変異株に係るものである。
【0008】また、本発明は糖蛋白質をコードする遺伝子を有する組換えベクターをこのN−グリコリルノイテミン酸生産性の低下したCHO細胞変異株に導入し、得られた形質転換体を培養することを特徴とする糖蛋白質の製造法に係るものである。
【0009】本発明の変異株はN−グリコリルノイラミン酸(以下、NeuGcと略す)の生産性が未変異株に比べて低下している以外は通常のCHO細胞と同様の性質を有するものである。本発明変異株のNeuGc生産性は、未変異株の1/2以下であるのが好ましい。本発明の変異株のNeuGc生産性の低下は、シチジン−5′−モノリン酸化N−アセチルノイラミン酸水酸化酵素の活性が、未変異株に比べて低下しており、シチジン−5′−モノリン酸化N−アセチルノイラミン酸(CMP−NeuAc)からシチジン−5′−モノリン酸化N−グリコリルノイラミン酸(CMP−NeuGc)への変換がおこらないために生じるものであり、当該水酸化酵素活性が未変異株に比べ1/5以下に低下していることが好ましい。
【0010】本発明の変異株は、CHO細胞を突然変異誘発処理し、NeuGc生産性が低下している株を選択することにより製造される。
【0011】用いられるCHO細胞としては、通常培養細胞系として確立しているものであれば特に制限されないが、例えばCHO−K1細胞、CHO−AA8細胞、CHO−EM9細胞、CHO−Pro-5細胞、CHO/dhFr-細胞等が挙げられる。
【0012】突然変異誘発処理としては、物理的変異原又は化学的変異原のいずれの変異原による処理でもよい。物理的変異原としては、紫外線、X線等が挙げられる。化学的変異原としては、エチルメタンスルホネート(EMS)、N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルニトロソ尿素(ENU)等のアルキル化剤;ブロモデオキシウリジン(BrdUrd)、N4−アミノシチジン等の塩基アナログ;インターカレーターのICR化合物等が挙げられる。このうち、化学的変異原、特にアルキル化剤、更にEMSが好ましい。
【0013】CHO細胞の突然変異誘発処理は、例えば化学的変異原による誘発の場合には、CHO細胞が増殖できる培地中、対数増殖期にある106〜109個のCHO細胞を、生存率が10〜50%となる量の化学的変異原の存在下で、25〜40℃で0.5〜30時間培養することにより行なわれる。ここで用いられる培地としては、5〜10%の牛胎児等の血清を含有するハムF−12培地、D−MEM培地、RPMI 1640培地、無血清培地等が好ましい。また変異原としてEMSを用いた場合には、100〜1000μg/mlのEMSを含む培地で、25〜40℃で5〜30時間培養することにより、突然変異誘発するのが好ましい。
【0014】突然変異処理したCHO細胞群から本発明変異株をスクリーニングするには、直接シアル酸分析によりNeuGlc含有量を測定する方法、CMP−NeuAc水酸化酵素活性を測定する方法、H−D抗原性の有無を測定する方法等が挙げられるが、抗GM3(NeuAcα2→3Galβ1→4Glcβ1→1Cer)抗体を利用して細胞表面のGM3量が低下している細胞を選択する方法、糖脂質のin situアッセイ法、シアル酸分析及びCMP−NeuAc水酸化酵素活性の測定を適宜組み合せて行なうのが好ましい。特に、抗GM3抗体を利用して細胞表面のGM3量が低下している細胞を選択する方法及び糖脂質のinsituアッセイを組み合せてスクリーニングした後、シアル酸分析又はCMP−NeuAc水酸化酵素活性の測定により変異株の性質を確認するのが好ましい。
【0015】このようにして得られた本発明変異株の1例である1A51株は、親株であるCHO−K1細胞に比べてNeuGc含有量(生産性)が約5/14であり、CMP−NeuAc水酸化酵素活性が1/5以下であった。当該1A51株は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−14066として寄託されている。
【0016】本発明変異株は、NeuGc生産性が低下しているため、遺伝子組換え技術における宿主細胞として利用すると、NeuGc含量の低い糖蛋白質を生産できる。すなわち、糖蛋白質をコードする遺伝子を有する組換えベクターを本発明変異株に導入し、得られた形質転換体を培養することによりNeuGc含量の低い、H−D抗原を含まない糖蛋白質を製造することができる。ここで、本発明の変異株は、NeuGc生産性が低い以外は通常のCHO細胞と同様の性質を有することから、当該変異株を宿主細胞として利用する場合の外来遺伝子導入方法、培養方法、生成糖蛋白質の分離方法等は従来のCHO細胞を利用した場合と同じ方法を採用することができる。
【0017】目的とする糖蛋白質としては、ヒト由来の糖蛋白質が好ましく、例えばエリスロポエチン、組織型プラスミノーゲン活性化因子、顆粒球コロニー形成刺激因子、ウロキナーゼ、B型肝炎ワクチン等が挙げられる。また、この糖蛋白質をコードする遺伝子が組み込まれるベクターとしては、CHO細胞でその遺伝子を発現し得るベクターであれば特に制限されないが、一般的な安定発現用ベクターとしてpcD2、pL2neoSRαIII 、pMIKHygB、pMKITNeo、pSV2bsr、pRC/CMV、pRC/RSC、pcDNA3、pMAM−neo等が挙げられ、dhfr−の細胞を用いて高発現させるための好ましいベクターとしてpAdD26SVp(A)、p91023(B)、pSVMdhfr、pSV2dhfr等が挙げられる。かかる組換えベクターを本発明変異株に導入するには、例えばコンピテント細胞法、リン酸カルシウム共沈法、電気穿孔法、DEAEデキストラン法、リポフェクチン法などを用いて導入すればよい。
【0018】目的とする糖蛋白質は、得られた形質転換体細胞を培養し、該培養細胞及び/又は培養液から抽出、分離することにより製造される。形質転換体細胞の培養に際しては、種々の天然培地、合成培地が用いられるが、NeuGcを含まない培地が好ましい。また、培地は、糖類、アルコール類、有機酸塩などの炭酸源;蛋白質混合物、アミノ酸類、アンモニウム塩などの窒素源;無機塩類を含んでいることが望ましい。更に、ビタミン類、選択マーカー遺伝子に対応した抗生物質類を添加することが望まれる。発現の制御が可能なベクターであれば、培養途中で遺伝子発現を誘導する操作を加える必要がある。培養後、遠心処理を行い、培養液と培養細胞とに分別する。糖蛋白質が培養細胞中に蓄積する様な場合は、例えば凍結融解、超音波処理、フレンチプレス、酵素処理、ホモジナイザーなどを用いて細胞を破壊した後に、例えばEDTA、界面活性剤、尿素、塩酸グアニジンなどを用いて糖蛋白質を可溶化する必要がある。
【0019】得られた糖蛋白質を含む培養液又は培養細胞抽出液を種々のカラムクロマトグラフィーに付すことにより、精製された糖蛋白質を得ることができる。カラムクロマトグラフィーとしては、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルフィルトレーションクロマトグラフィーなどを単独で又は組合せて用いることができる。
【0020】このようにして得られた糖蛋白質はH−D抗原を含まず、医薬品、診断薬等として有用である。
【0021】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0022】実施例(1)CHO−K1細胞の突然変異の誘発突然変異の誘発は、CHO−K1細胞(大日本製薬)を400μg/mlのEMS(エチルメタンスルホン酸)を含んだ培地〔10%牛胎児血清を含むハムF−12培地(大日本製薬)〕中で33℃、18時間培養することにより行なった。
【0023】(2)抗GM3抗体を用いた補体依存性細胞傷害反応によるGM3発現量が少ない細胞の選択(1)で突然変異誘発処理を行なったCHO細胞をフラスコ上で、10%牛胎児血清を含むハムF−12培地中で37℃、5%CO2存在下に培養し〔この条件下での培養を、以下単に「培養」という)、その細胞を、トリプシン−EDTA処理によりはがし、緩衝液A〔20mM HEPES(pH7.3),10%牛胎児血清を含むハムF−12培地,以下同じ〕で洗浄後、90xgで2分間遠心した。上清を除き、細胞のペレットに抗GM3モノクローナル抗体(M2590,コスモ・バイオ社,1mg/ml)150μlとウサギ補体(大日本製薬)150μlを加え、37℃で1.5時間反応した。反応後培地で1回洗浄し、37℃、5%CO2存在下で培養した。以上の操作を2回行い、100mmディッシュで培養することにより、突然変異誘発処理CHO細胞200万個からGM3発現量が少ないと考えられる細胞株約1000株のコロニーを得た。
【0024】(3)間接蛍光抗体法による細胞表面のGM3の検出(2)で得た細胞を35mmディッシュ又は、ラブティックチエンバー上で2〜3日間培養した。培地を除き、緩衝液A中で抗GM3モノクローナル抗体(10μg/ml)と0℃で30分間反応した。細胞を緩衝液Aで4回洗浄し、緩衝液A中でビオチン化抗マウスIgM抗体(フナコシ社,2.5μg/ml)と0℃で30分間反応した。細胞を緩衝液Aで4回洗浄し、緩衝液A中でSA−FITC(ストレプトアビジン−フルオレセインイソチオシアネート)結合体(コスモ・バイオ社,2.8μg/ml)と0℃で30分間反応した。細胞をPBSで4回洗浄し、PBS中でACAS570(メリディアン社)を用いてFITCの蛍光を検出した。この結果、(2)で得た約1000株のうち11株において細胞表面のGM3の発現が低下していた。この11株について限界希釈法にて培養し、再度上記の間接蛍光抗体法により細胞表面のGM3量を測定したところ、9株においてGM3の発現が低下していた。
【0025】(4)糖脂質合成系の酵素のin situアッセイ(3)で得られた9株のうちの4株について、in situの糖質合成を次の方法により検討した。フラスコ上で培養している細胞を、トリプシン−EDTA処理によりはがし、PBSで3回洗浄した。凍結融解により細胞膜に損傷を与え、糖ヌクレオチドの基質が細胞内に浸透しやすくした後、UDP−[14C]ガラクトースを含む反応液を加え、37℃で30分間振盪しながら反応した。
【0026】
【表1】反応液の組成は以下の通りである。50mM MES〔2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(水和物)バッファー、pH6.4、1mM NADH、5mM DTT(ジチオスレイトール)5mM MnCl2、2.5mM MgCl2、22.2μM UDP−[14C]ガラクトース(アマシャム社,12.2GBq/mmol)
【0027】反応終了後、細胞懸濁液を遠心により集めた。この沈澱をPBSにて3回洗浄した後、細胞を凍結乾燥した。これより、ラベルされた糖脂質をCHCl3:MeOH(2:1)、(1:1)、(1:2)で抽出し、TLCにより分析した。展開溶媒として、CHCl3:MeOH:0.02%CaCl2・2H2O=60:35:8を用いた。ラジオアイソトープの検出は、富士写真フィルム(株)製のバイオ・イメージングアナライザーBAS2000により行なった。露出は約16時間行なった。
【0028】得られた結果を図1に示す。図1のTLC像から、親株ではLacCer(Galβ1→4Glcβ1→1Cer)に相当するバンドが2本、GM3に相当するバンドが3本認められた。これに対し、1A51株ではLacCerに相当するバンドは親株同様2本であったが、GM3に相当するバンドは2本であった。そして、親株のGM3の上側の2本と1A51株のGM3の2本のバンドの移動度は一致し、これらの2本のバンドは標準のGM3(シアル酸はNeuAc)の移動度と一致した。シアル酸分子種が1種の場合、Cerが2種存在するために2本のバンドが生ずることがわかっている。従って、CHO細胞では、シアル酸分子種の異なる2種のGM3が存在するが、1A51株ではそのうちの一方が欠損していると考えられた。
【0029】このことを確認するために糖脂質合成のin situアッセイ時にCMP−NeuAc(シグマ社)又はCMP−NeuGcを加えて反応を行なった。その結果、図2に示すように、CMP−NeuAcを反応液に加えたものは、親株、1A51株ともに上側2本のバンドだけになり、上側2本はシアル酸としてNeuAcを含むGM3であると考えられた。CMP−NeuGcを反応液に加えたものは、下側2本のバンドが強くなり、下側2本はシアル酸としてNeuGcを含むGM3であることが示唆された。これらのうちから、1A51株はNeuGc生産性が低下している変異株と考えられた。
【0030】なお、上記の反応に用いたCMP−NeuGcは次の如くして製造した。すなわち、CMP−NeuGcの合成はHermanらの方法(J.Biol.Chem.260,8838−8849(1985))に従って行なった。蒸留水200μlに67mM CTP 100μl、22mM NeuGc 100μl、50mM MnCl2 126μl、50mM DTT 75μl、200mMTris−HCl(pH7.4)400μl、リコンビナントCMP−シアル酸合成酵素(コスモ・バイオ社)20μl(180mU)を加えて37℃で1時間反応した。反応後、9mlのエタノールを加え、CMP−NeuGcを沈澱させた。
【0031】(5)シアル酸分析CHO細胞及び1A51株のシアル酸分析を、Haraらの方法(Anal.Biochem.179,162−166(1989))に従って行なった。フラスコ上で培養している細胞を、トリプシン−EDTA処理によりはがし、PBSで3回洗浄した。細胞を2M酢酸水溶液200μlに懸濁し、80℃3時間処理により糖鎖の加水分解を行なった。反応後遠心により細胞残渣を除き、200μlのDMB(1,2−ジアミノ−4,5−メチレンジオキシベンゼン)溶液(7mM DMB、1.4M 酢酸、0.75M 2−メルカプトエタノール、18mM ハイドロサルファイトナトリウム)を加え、50℃で2.5時間反応し、シアル酸の蛍光ラベルを行なった。蛍光ラベルされたシアル酸の定量はHPLCを用いて行なった。バイオ・ラッド社のモデル2700システムに日立のF−1050蛍光検出器をつないで使用した。励起波長は373nm、放出波長は448nmにした。カラムは東ソーのTSKgel ODS−120T(250×4.6mm)を用い、溶離液はアセトニトリル:メタノール:水=9:7:84を用いた。流速は0.9ml/min.とした。その結果、CHO細胞中に存在する主要なシアル酸はNeuAcとNeuGcのみであり、NeuGc含有量は、親株で14.2%、1A51株で5%であった。
【0032】(6)CMP−NeuAc水酸化酵素活性の測定NeuGcは、CMP−NeuAcがCMP−NeuAc水酸化酵素により水酸化されることにより生ずるものであることから、1A51株のNeuGc含量低下の原因がこの酵素の欠損によるものであるか否かを検討するため、CHO細胞と1A51株のCMP−NeuAc水酸化酵素活性を測定した。CHO細胞のCMP−NeuAc水酸化酵素活性の測定は、Kawanoらの方法(Glycoconjugate J.10,109−115(1993))に従って測定した。フラスコ上で培養している細胞を、トリプシン−EDTA処理によりはがし、PBSで3回洗浄した。凍結融解により細胞膜に損傷を与えた後、10mM Tris−HCl(pH7.5)に懸濁したものを酵素原として用い、CMP−NeuAcを含む反応液を加え、37℃で60分間振盪しながら反応した。
【0033】
【表2】反応液(50μl)の組成は以下の通りである。
10mM Tris−HCl(pH7.5)
5μM シトクロムb512μg NADH依存シトクロムb5還元酵素40μM CMP−NeuAc1mM DTT0.7mM NADH【0034】反応終了後、冷エタノールを200μl加え、0℃で15分間静置後、15000rpmで5分間遠心し、蛋白質を沈澱させた。その上清中に含まれる酵素反応産物のCMP−NeuGcの定量はHPLCを用いて行なった。バイオ・ラッド社のモデル2700システムにモデル1706UV/VISモニターをつないで271nmの吸光度を測定した。カラムは東ソーのTSKgel ODS−80TM(250×4.6mm)を用い、溶離液は50mMりん酸二水素アンモニウムを用いた。流速は0.5ml/min.とした。蛋白質定量は牛血清アルブミンを標準蛋白質としてバイオラッド社のプロテインアッセイキットを用いて行なった。
【0035】その結果、図3に示す如く、1A51株のCMP−NeuAc水酸化酵素活性は、親株の1/5以下であった。従って、1A51株は、CMP−NeuAc水酸化酵素の欠損株であり、そのために細胞中のNeuGc含有量が少ない(生産性が低下した)細胞株であることが判明した。
【0036】
【発明の効果】本発明のCHO細胞変異株はNeuGc生産性が低下しているので、これを宿主細胞として利用した遺伝子組換え技術により製造した糖蛋白質はNeuGcをほとんど含まないものとなる。従って、本発明変異株はH−D抗原性のない糖蛋白質製造のための宿主細胞として有用である。




 

 


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